(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】数値制御装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4155 20060101AFI20250701BHJP
B23Q 3/155 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
G05B19/4155 T
B23Q3/155 F
(21)【出願番号】P 2022058230
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2024-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174344
【氏名又は名称】安井 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 優伍
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-092235(JP,A)
【文献】特開2004-314236(JP,A)
【文献】特開2021-056827(JP,A)
【文献】特開平04-183544(JP,A)
【文献】特開2007-304848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18、4155
B23Q 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を装着する主軸と、
加工領域の上側に位置し、且つ前記主軸の軸方向の位置が前記加工領域と重なるATC領域に設けられ、工具を収納するマガジンと、
台上に治具で固定したワークの加工後、前記主軸を、前記軸方向と直交する方向に動かしても、前記主軸に装着した工具が前記ワーク及び前記治具に衝突しない前記軸方向における復帰位置に移動してから、前記加工領域と前記ATC領域との境界に位置し、前記ATC領域内の工具交換位置と前記軸方向において同一位置である工具交換準備位置を経由して、前記工具交換位置に移動する往路制御部と、
前記往路制御部が前記主軸を前記工具交換位置に移動した状態で、前記主軸の前記軸方向の往復移動に基づき、前記主軸に装着した工具と前記マガジンが収納する工具とを入れ替え交換する工具交換部と
を備えた数値制御装置において、
前記往路制御部は、前記復帰位置に基づき、前記主軸を前記復帰位置から前記工具交換準備位置に移動する経路を、第1経路と第2経路の何れかに切り替える往路切替え部を備え、
前記第1経路は、前記主軸を、前記復帰位置から前記工具交換準備位置に直接的に移動する経路であり、
前記第2経路は、前記主軸を、前記復帰位置から、前記復帰位置と前記軸方向において同一位置であり、且つ、前記加工領域と前記ATC領域との境界に位置する原点位置に移動後、当該原点位置から前記工具交換準備位置に移動する経路であり、
前記往路切替え部は、前記軸方向において、前記復帰位置が前記工具交換準備位置よりも機械原点とは反対側の場合、前記経路を前記第1経路に切り替え、前記復帰位置が前記工具交換準備位置よりも前記機械原点側の場合、前記経路を前記第2経路に切り替えること
を特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記主軸を、前記工具交換位置から前記工具交換準備位置を経由して前記復帰位置に移動した後で、指令点に移動する復路制御部を備え、
前記復路制御部は、前記復帰位置に基づき、前記主軸を前記工具交換準備位置から前記復帰位置に移動後、前記指令点に移動する経路を、第3経路と第4経路の何れかに切り替える復路切替え部を備え、
前記第3経路は、前記主軸を、前記工具交換準備位置から前記復帰位置に直接的に移動後、前記指令点に移動する経路であり、
前記第4経路は、前記主軸を、前記工具交換準備位置から前記工具交換準備位置と前記軸方向と直交する方向における位置が同一であり、且つ前記復帰位置と前記軸方向における位置が同一である位置に移動後、前記復帰位置に移動し、その後、前記指令点に移動する経路であ
り、
前記復路切替え部は、
前記復帰位置が前記工具交換準備位置よりも前記機械原点とは反対側の場合、前記経路を前記第3経路に切り替え、
前記復帰位置が前記工具交換準備位置よりも前記機械原点側の場合、前記経路を前記第4経路に切り替えること
を特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記復帰位置は、工具長をオフセットした位置であること
を特徴とする請求項1又は2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記復帰位置は、工具長をオフセットした位置であって、
前記往路制御部は、NCプログラムの制御指令に基づき、前記復帰位置を算出する第1復帰位置算出部を備え、
前記復路制御部は、前記NCプログラムの前記制御指令に基づき、前記復帰位置を算出し直す第2復帰位置算出部を備えたこと
を特徴とする請求項2に記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記主軸の前記軸方向は水平方向であること
を特徴とする請求項1から4の何れか一に記載の数値制御装置。
【請求項6】
加工領域の上側に位置し、且つ工具を装着する主軸の軸方向の位置が前記加工領域と重なるATC領域に設けられ、工具を収納するマガジンを備え、
台上に治具で固定したワークの加工後、前記主軸を、前記主軸の軸方向と直交する方向に動かしても、前記主軸に装着した工具が前記ワーク及び前記治具に衝突しない前記軸方向における復帰位置に移動してから、前記加工領域と前記ATC領域との境界に位置し、前記ATC領域内の工具交換位置と前記軸方向において同一位置である工具交換準備位置を経由して、前記工具交換位置に移動する往路制御ステップを備え、前記主軸を前記工具交換位置に移動した状態で、前記主軸の前記軸方向の往復移動に基づき、前記主軸に装着した工具と前記マガジンが収納する工具とを入れ替え交換する数値制御装置の制御方法において、
前記往路制御ステップは、前記復帰位置に基づき、前記主軸を前記復帰位置から前記工具交換準備位置に移動する経路を、第1経路と第2経路の何れかに切り替える往路切替えステップを備え、
前記第1経路は、前記主軸を、前記復帰位置から前記工具交換準備位置に直接的に移動する経路であり、
前記第2経路は、前記主軸を、前記復帰位置から、前記復帰位置と前記軸方向において同一位置であり、且つ、前記加工領域と前記ATC領域との境界に位置する原点位置に移動後、当該原点位置から前記工具交換準備位置に移動する経路であり、
前記往路切替えステップは、前記軸方向において、前記復帰位置が前記工具交換準備位置よりも機械原点とは反対側の場合、前記経路を前記第1経路に切り替え、前記復帰位置が前記工具交換準備位置よりも前記機械原点側の場合、前記経路を前記第2経路に切り替えること
を特徴とする制御方法。
【請求項7】
加工領域の上側に位置し、且つ工具を装着する主軸の軸方向の位置が前記加工領域と重なるATC領域に設けられ、工具を収納するマガジンを備え、
台上に治具で固定したワークの加工後、前記主軸を、前記主軸の軸方向と直交する方向に動かしても、前記主軸に装着した工具が前記ワーク及び前記治具に衝突しない前記軸方向における復帰位置に移動してから、前記加工領域と前記ATC領域との境界に位置し、前記ATC領域内の工具交換位置と前記軸方向において同一位置である工具交換準備位置を経由して、前記工具交換位置に移動する往路制御ステップを備え、前記主軸を前記工具交換位置に移動した状態で、前記主軸の前記軸方向の往復移動に基づき、前記主軸に装着した工具と前記マガジンが収納する工具とを入れ替え交換する数値制御装置を機能させるプログラムにおいて、
コンピュータに、
前記往路制御ステップにおいて、前記復帰位置に基づき、前記主軸を前記復帰位置から前記工具交換準備位置に移動する経路を、第1経路と第2経路の何れかに切り替える往路切替えステップを実行させ、
前記第1経路は、前記主軸を、前記復帰位置から前記工具交換準備位置に直接的に移動する経路であり、
前記第2経路は、前記主軸を、前記復帰位置から、前記復帰位置と前記軸方向において同一位置であり、且つ、前記加工領域と前記ATC領域との境界に位置する原点位置に移動後、当該原点位置から前記工具交換準備位置に移動する経路であり、
前記往路切替えステップは、前記軸方向において、前記復帰位置が前記工具交換準備位置よりも機械原点とは反対側の場合、前記経路を前記第1経路に切り替え、前記復帰位置が前記工具交換準備位置よりも前記機械原点側の場合、前記経路を前記第2経路に切り替えること
を特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の工作機械は横形であり、主軸の軸方向は水平方向である。工具交換領域を加工領域の上側に配置することで、軸方向の機械サイズを抑える。工具交換を行う際、工具がワーク及び治具に衝突しないよう、主軸を現在位置から復帰位置に移動後、軸方向と直交する方向の機械原点に移動してから工具交換準備位置に移動する。復帰位置は工具がワーク及び治具に衝突しない位置にユーザが設定する。機械原点は軸方向に最大逃避した位置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザが設定した復帰位置に関係なく、主軸は復帰位置から機械原点に一旦移動してから工具交換準備位置に移動するので、工具交換時間が長くなるという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、復帰位置に応じて工具交換時間を短縮できる数値制御装置、制御方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の数値制御装置は、工具を装着する主軸と、前記主軸の軸方向において加工領域と重なる領域に設けられ、工具を収納するマガジンと、台上に治具で固定したワークの加工後、前記主軸を、前記主軸に装着した工具が前記ワーク及び前記治具に衝突しない復帰位置に移動してから、前記領域内の工具交換位置と前記軸方向において同一位置である工具交換準備位置を経由して、前記工具交換位置に移動する往路制御部と、前記往路制御部が前記主軸を前記工具交換位置に移動した状態で、前記主軸の前記軸方向の往復移動に基づき、前記主軸に装着した工具と前記マガジンが収納する工具とを入れ替え交換する工具交換部とを備えた数値制御装置において、前記往路制御部は、前記復帰位置に基づき、前記主軸を前記復帰位置から前記工具交換準備位置に移動する経路を、第1経路と第2経路の何れかに切り替える往路切替え部を備え、前記第1経路は、前記主軸を、前記復帰位置から前記工具交換準備位置に直接的に移動する経路であり、前記第2経路は、前記主軸を、前記復帰位置から前記軸方向と直交する方向の原点位置に移動後、当該原点位置から前記工具交換準備位置に移動する経路であることを特徴とする。これにより、数値制御装置は、主軸を工具交換位置まで移動する往路において、復帰位置に基づき経路を切り替えることができるので、復帰位置に応じて工具交換時間を短縮しつつ、主軸に装着した工具がワーク及び治具に衝突するのを回避できる。なお、第1経路の「前記主軸を、前記復帰位置から前記工具交換準備位置に直接的に移動する経路」の「直接的」とは、軸方向への移動を伴い、その経路に頂点(角)を有さない経路を意味する。
【0007】
請求項2の数値制御装置の前記往路切替え部は、前記軸方向において、前記復帰位置が前記工具交換準備位置よりも前記原点位置側か否かで前記経路を切り替えてもよい。軸方向において、工具交換準備位置を基準として復帰位置が原点位置側にあるか否かで経路を切り替えるので、復帰位置に応じて工具交換時間を短縮しつつ、主軸に装着した工具がワーク及び治具に衝突するのを回避できる。
【0008】
請求項3の数値制御装置の前記往路切替え部は、前記復帰位置が前記工具交換準備位置よりも前記原点位置とは反対側の場合、前記経路を前記第1経路に切り替え、前記復帰位置が前記工具交換準備位置よりも前記原点位置側の場合、前記経路を前記第2経路に切り替えてもよい。軸方向において、工具交換準備位置を基準として復帰位置が原点位置とは反対側にある場合は第1経路、原点位置側にある場合は第2経路に経路を切り替えるので、第1経路では工具交換時間を短縮でき、第1経路及び第2経路の両方において、主軸に装着した工具がワーク及び治具に衝突するのを回避できる。
【0009】
請求項4の数値制御装置は、前記主軸を、前記工具交換位置から前記工具交換準備位置を経由して前記復帰位置に移動した後で、指令点に移動する復路制御部を備え、前記復路制御部は、前記復帰位置に基づき、前記主軸を前記工具交換準備位置から前記復帰位置に移動後、前記指令点に移動する経路を、第3経路と第4経路の何れかに切り替える復路切替え部を備え、前記第3経路は、前記主軸を、前記工具交換準備位置から前記復帰位置に直接的に移動後、前記指令点に移動する経路であり、前記第4経路は、前記主軸を、前記工具交換準備位置から前記軸方向の前記復帰位置に移動後、前記軸方向と直交する方向の前記指令点に移動し、その後、前記指令点に移動する経路であってもよい。これにより、数値制御装置は、主軸を工具交換準備位置から指令点に移動する復路においても、復帰位置に基づき経路を切り替えることができるので、復帰位置に応じて工具交換時間を短縮しつつ、主軸に装着した工具がワーク及び治具に衝突するのを回避できる。なお、第3経路の「前記主軸を、前記工具交換準備位置から前記復帰位置に直接的に移動後、前記指令点に移動する経路の「直接的」とは、軸方向への移動を伴い、その経路に頂点(角)を有さない経路を意味する。
【0010】
請求項5の数値制御装置の前記復帰位置は、工具長をオフセットした位置であってもよい。工具の先端を復帰位置に設定できるので、工具長が違っていても、経路の移動中に工具がワーク及び治具に衝突するのを回避できる。
【0011】
請求項6の数値制御装置の前記復帰位置は、工具長をオフセットした位置であって、前記往路制御部は、NCプログラムの制御指令に基づき、前記復帰位置を算出する第1復帰位置算出部を備え、前記復路制御部は、前記NCプログラムの前記制御指令に基づき、前記復帰位置を算出し直す第2復帰位置算出部を備えてもよい。復路では、往路のときに主軸に装着されていた工具とは別の工具が主軸に装着される可能性が高いので、往路と復路で工具長が異なる場合がある。復帰位置には工具長オフセットがかけられるので、工具長が異なると主軸の位置も変わる。そこで、復路制御部は、NCプログラムの制御指令に基づき、復帰位置を算出し直すので、復帰位置において主軸に装着する工具がワーク及び治具に接触するのを回避できる。
【0012】
請求項7の数値制御装置の前記主軸の前記軸方向は水平方向であってもよい。主軸の軸方向が水平方向である横形の機械に適用できる。
【0013】
請求項8の制御方法は、台上に治具で固定したワークの加工後、工具を装着する主軸を、前記主軸に装着した工具が前記ワーク及び前記治具に衝突しない復帰位置に移動してから、工具交換位置と前記主軸の軸方向において同一位置である工具交換準備位置を経由して、前記工具交換位置に移動する往路制御ステップを備え、前記主軸を前記工具交換位置に移動した状態で、前記主軸の前記軸方向の往復移動に基づき、前記主軸に装着した工具とマガジンが収納する工具とを入れ替え交換する数値制御装置の制御方法において、前記往路制御ステップは、前記復帰位置に基づき、前記主軸を前記復帰位置から前記工具交換準備位置に移動する経路を、第1経路と第2経路の何れかに切り替える往路切替えステップを備え、前記第1経路は、前記主軸を、前記復帰位置から前記工具交換準備位置に直接的に移動する経路であり、前記第2経路は、前記主軸を、前記復帰位置から前記軸方向と直交する方向の原点位置に移動後、当該原点位置から前記工具交換準備位置に移動する経路であることを特徴とする。数値制御装置は上記ステップを行うことで請求項1に記載の効果を得ることができる。
【0014】
請求項9のプログラムは、台上に治具で固定したワークの加工後、工具を装着する主軸を、前記主軸に装着した工具が前記ワーク及び前記治具に衝突しない復帰位置に移動してから、工具交換位置と前記主軸の軸方向において同一位置である工具交換準備位置を経由して、前記工具交換位置に移動する往路制御ステップを備え、前記主軸を前記工具交換位置に移動した状態で、前記主軸の前記軸方向の往復移動に基づき、前記主軸に装着した工具とマガジンが収納する工具とを入れ替え交換する数値制御装置を機能させるプログラムにおいて、コンピュータに、前記往路制御ステップにおいて、前記復帰位置に基づき、前記主軸を前記復帰位置から前記工具交換準備位置に移動する経路を、第1経路と第2経路の何れかに切り替える往路切替えステップを実行させ、前記第1経路は、前記主軸を、前記復帰位置から前記工具交換準備位置に直接的に移動する経路であり、前記第2経路は、前記主軸を、前記復帰位置から前記軸方向と直交する方向の原点位置に移動後、当該原点位置から前記工具交換準備位置に移動する経路であることを特徴とする。数値制御装置のコンピュータは上記ステップを実行することで請求項1に記載の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を説明する。本実施形態は、図中に示す矢印の向きで工作機械1の左右、上下、前後を説明する。
図1に示す工作機械1は主軸20の軸方向が水平方向の横形の工作機械である。工作機械1の左右、上下、前後は、X軸、Y軸、Z軸である。
【0017】
図1,
図2を参照し、工作機械1の構成を説明する。工作機械1は、基台2、コラム5、サドル本体10、主軸ヘッド18、主軸20、工具交換装置(ATC装置)40を備える。
【0018】
基台2は工作機械1下部に設けられ、平面視前後方向に長い略矩形状の鉄製土台である。基台2上面後側には、一対の案内レール3が設けられる。一対の案内レール3は左右方向に延び、且つ前後方向に互いに離間する。一対の案内レール3の間には、X軸モータ6が設けられる。基台2上面前側には、ワーク(図示略)が載置されるテーブル27(
図3参照、
図1,
図2では省略)が設けられる。基台2上面左右両側の夫々の前側には、左右一対の支持部材51,52が固定される。支持部材51,52の夫々の上端部には、後述のATC装置40のマガジン45が固定される。
【0019】
コラム5は、一対の案内レール3上に摺動駒4を介して左右方向(X軸方向)に移動自在に取り付けられる。コラム5はX軸モータ6の駆動で左右方向に水平移動する。コラム5は鋳物で形成された略柱状の構造体である。コラム5前面中央部には、大きな貫通穴7が設けられる。コラム5前面左右両側には、左右一対の案内レール8が設けられる。案内レール8は上下方向に延びる。コラム5頂上部には、Y軸モータ13が設けられる。コラム5の内側には、送りねじ14が設けられる。送りねじ14は上下方向に延び、その上端部はY軸モータ13の回転軸(図示略)と連結する。
【0020】
サドル本体10は、左右一対の案内レール8に摺動駒9(
図2参照)を介して上下方向(Y軸方向)に移動自在に取り付けられる。サドル本体10下端には、サドルベース11が一体して設けられる。サドル本体10下部には、大きな切り欠き12が形成され、サドルベース11との間に穴を構成する。サドルベース11後端部は、コラム5の貫通穴7内側に延出する。サドルベース11後端部には、Z軸モータ19が固定される。サドルベース11上部には、左右一対の案内レール16が設けられる。左右一対の案内レール16は前後方向に延び、且つ左右方向に互いに離間する。サドル本体10後面にはナット15が固定される。ナット15は、Y軸モータ13で回転駆動される送りねじ14に螺合する。これにより、サドル本体10及びサドルベース11は、Y軸モータ13の回転駆動に応じて、ナット15と共に上下方向に移動する。
【0021】
主軸ヘッド18は、サドルベース11上部の一対の案内レール16に摺動駒17を介して前後方向に移動自在に取り付けられ、Z軸モータ19の駆動で前後方向に水平移動する。主軸ヘッド18は、サドル本体10下部の切り欠き12とサドルベース11で構成される穴から前方に出没する。送りねじ14は前面中央から右に偏った位置に設けられる。それ故、サドル本体10とサドルベース11が上昇したとき、主軸ヘッド18と送りねじ14が相互に干渉しない。主軸ヘッド18の後端部には、主軸モータ21が固定される。
【0022】
主軸20は、主軸ヘッド18に回転自在に支持され、主軸モータ21により回転駆動される。主軸20は前後方向に延びる。主軸20の軸方向はZ軸方向である。主軸20の前端面には、工具ホルダ(図示略)を装着するテーパ穴が設けられる。工具ホルダには、工具が保持される。主軸20には、公知の工具クランプ装置(図示略)が組み込まれる。工具クランプ装置は、テーパ穴に装着した工具ホルダのプルスタッドを挟持して工具ホルダをクランプする。
【0023】
ATC装置40は、マガジン45と10個の把持部50を備える。略円柱状のマガジン45は、軸線を前後方向に向けた姿勢で、支持部材51,52によって、コラム5前面上部の前方に支持される。10個の把持部50は、マガジン45外周に沿って放射状に配列して支持される。把持部50はポットを備える。ポットには、工具ホルダが着脱自在に装着される。マガジン45は、マガジンモータ47(
図5参照)で軸線を中心に10個の把持部50を回転して位置決め可能である。
【0024】
図1~
図3を参照し、加工領域とATC領域について説明する。機械原点とは、X軸とY軸の夫々の機械座標が0の位置で、且つZ軸の機械座標が原点寸法の位置である。Z軸の原点寸法は、
図2に示す加工領域の後端であり、工作機械1の構造に応じて決まる。X軸の機械原点はX軸原点(X=0mm)、Y軸の機械原点はY軸原点(Y=0mm)、Z軸の機械原点はZ軸原点(Z=原点寸法)である。
【0025】
加工領域は、Y軸原点よりも基台2側(下側)の空間に設けられる。ATC領域は、Y軸原点に対して加工領域とは反対側(上側)の空間に設けられる。加工領域はテーブル27に固定されたワークの加工を行う領域である。ATC領域は工具交換を行う領域である。
図3に示すように、ATC領域はY軸方向において加工領域の上側で、且つZ軸方向において加工領域と重なる位置に設けられる。これにより、工作機械1は、ATC領域を加工領域の後方に設けた工作機械に比べて、Z軸方向の機械サイズをコンパクトにできる。それ故、工作機械1は、工場等における設置面積を小さくできる。
【0026】
図3,
図4を参照し、工具交換動作の概要について説明する。工作機械1がワークを切削する加工状態では、主軸20は加工領域に位置する。主軸20に装着した工具23による加工が終了した後、工作機械1は工具交換動作を実行する。工具交換動作は、主軸20が移動する経路について、往路と復路を備える。なお、本実施形態において「主軸20を移動する」とは、「主軸ヘッド18を移動する」と同義である。
【0027】
往路は、主軸20を現在位置からATC原点まで移動する経路(
図3参照)であり、復路は、主軸20をATC原点から指令点まで移動する経路(
図4参照)である。ATC原点とは、ATC領域に設けられる工具交換時の基準点であり、マガジン45が回転可能な位置である。指令点とは、工具交換後に主軸20を移動させる目標位置であり、後述のG100で設定できる。
【0028】
往路について説明する。
図3に示すように、工作機械1は、主軸20を現在位置からZ軸+方向に移動し、後述のR点を経由して、後述の第1経路又は第2経路に沿ってATC準備位置まで移動する。ATC準備位置とは、後述のATC位置とZ軸方向において同一座標の位置である。なお、往路における第1経路、第2経路の決定方法は後述する。次いで、工作機械1は、主軸20をATC準備位置からY軸ATC原点まで上昇する。Y軸ATC原点とは、Y軸方向においてATC原点と同一座標の位置であり、ATC位置(本発明の「工具交換位置」)に相当する。このとき、マガジン45直下にある把持部50の空のポットに対して、主軸20に装着した工具23が下方から係合する。これで往路が完了する。
【0029】
この状態で、工作機械1は、主軸20をY軸ATC原点からZ軸+方向に後進し、ATC原点まで移動する。このとき、把持部50のポットに係合した工具23の位置は固定されているので、主軸20から工具23が引き抜かれる。工作機械1はマガジン45を回転し、次に装着する次工具を保持する把持部50をマガジン45直下に位置決めする。このとき、次工具が主軸20の前方に対向する。この状態で、
図4に示すように、工作機械1は、ATC原点にある主軸20をZ軸―方向に前進し、Y軸ATC原点まで移動する。これにより、主軸20に次工具が装着される。これで工具交換が完了する。
【0030】
復路について説明する。
図4に示すように、主軸20に次工具が装着されると、工作機械1は、主軸20をY軸ATC原点からATC準備位置まで下降する。次いで、工作機械1は、主軸20をATC準備位置から後述の第3経路又は第4経路に沿って後述のR点まで移動した後、G100で設定された指令点まで移動する。なお、復路における第3経路、第4経路の決定方法は後述する。これで復路が完了し、一連の工具交換動作が完了する。
【0031】
図5を参照し、工作機械1の電気的構成について説明する。工作機械1は、数値制御装置30、主軸モータ21、X軸モータ6、Y軸モータ13、Z軸モータ19、マガジンモータ47、駆動回路61~65、エンコーダ21A,6A,13A,19A,47A,操作パネル25等を備える。
【0032】
数値制御装置30はCPU31、ROM32、RAM33、記憶装置34、通信I/F35、入出力インターフェイス36等を備える。CPU31は数値制御装置30を統括制御する。ROM32は、NC制御プログラム等の各種プログラム等を記憶する。NC制御プログラムは、後述のNC制御処理(
図6参照)を実行するものである。RAM33は各種処理実行中の各種データを記憶する。記憶装置34は不揮発性メモリであり、例えば加工する為のNCプログラムの他、各種データを記憶する。通信I/F35は、有線又は無線で端末(図示略)と接続可能である。入出力インターフェイス36は操作パネル25と駆動回路61~65と接続する。
【0033】
主軸モータ21は工具を装着した主軸20を回転する。X軸モータ6、Y軸モータ13、Z軸モータ19は、ワークと主軸20をX軸、Y軸、Z軸方向に相対的に移動する。主軸モータ21、X軸モータ6、Y軸モータ13、Z軸モータ19、マガジンモータ47はサーボモータである。駆動回路61はCPU31からの制御信号に基づき主軸モータ21を制御する。駆動回路62はCPU31からの制御信号に基づきX軸モータ6を制御する。駆動回路63はCPU31からの制御信号に基づきY軸モータ13を制御する。駆動回路64はCPU31からの制御信号に基づきZ軸モータ19を制御する。駆動回路65はCPU31からの制御信号に基づきマガジンモータ47を制御する。
【0034】
エンコーダ21Aは主軸モータ21の回転位置を検出し、該検出信号を駆動回路61に送信する。駆動回路61は検出信号に基づき主軸モータ21のフィードバック制御を行う。エンコーダ6AはX軸モータ6の回転位置を検出し、該検出信号を駆動回路62に送信する。駆動回路62は検出信号に基づきX軸モータ6のフィードバック制御を行う。エンコーダ13AはY軸モータ13の回転位置を検出し、該検出信号を駆動回路63に送信する。駆動回路63は検出信号に基づきY軸モータ13のフィードバック制御を行う。エンコーダ19AはZ軸モータ19の回転位置を検出し、該検出信号を駆動回路64に送信する。駆動回路64は検出信号に基づきZ軸モータ19のフィードバック制御を行う。エンコーダ47Aはマガジンモータ47の回転位置を検出し、該検出信号を駆動回路65に送信する。駆動回路65は検出信号に基づきマガジンモータ47のフィードバック制御を行う。操作パネル25は各種情報の表示と入力が可能である。
【0035】
工具交換動作の指令形式について説明する。工具交換動作は、NCプログラムの制御指令で設定できる。指令形式は、例えば、G100やM06等のコマンドを使用できる。G100とM06の具体例は以下の通りである。
・G100T_L_X_Y_Z_R_
・M06T_L_X_Y_Z_R_
T、L、X、Y、Z、Rはアドレスである。Tは工具番号、ポット番号、又はグループ番号である。LはG100後のTモーダル値を指定する。X、Y、Zは指令点のX、Y、Zの座標値である。RはZ軸の復帰位置(R点)の座標値であって、工具がテーブル上のワーク及び治具に接触しない位置の座標値である。なお、R点への主軸20の位置決めについて、CPU31は工具長オフセットをかけて動作する。工具長オフセットとは、工具の先端が基準点になるように、Z軸の座標値を補正することである。
【0036】
図6~
図14を参照し、NC制御処理について説明する。ユーザは操作パネル25でNCプログラムを選択する。CPU31は、操作パネル25で選択されたNCプログラムの実行の操作を受け付けると、ROM32からNC制御プログラムを読み出し、本処理を実行する。
【0037】
図6に示すように、CPU31は選択されたNCプログラムを記憶装置34から読み込む(S11)。CPU31は読み込んだNCプログラムの先頭行から1ブロック解釈する(S12)。CPU31は解釈したブロックの制御指令がM30(終了コマンド)か否か判断する(S13)。解釈した制御指令がM30でなかった場合(S13:NO)、CPU31は解釈した制御指令がG100若しくはM06であるか否か判断する(S14)。G100及びM06の何れでもない場合(S14:NO)、CPU31は解釈した制御指令を実行する(S15)。CPU31は次ブロックに移動し(S21)、S12に戻って上記処理を繰り返す。解釈したブロックの制御指令がG100若しくはM06であった場合(S14:YES)、CPU31は往路決定処理を実行する。
【0038】
図7を参照し、往路決定処理について説明する。解釈した制御指令がG100であった場合、CPU31はG100のRアドレスからR点の座標値を取得する(S31)。CPU31は現在位置からATC原点までの往路を決定する為、Z軸方向において、R点はATC準備位置よりも機械原点側か否か判断する(S32)。ATC準備位置は記憶装置34に予め記憶する。R点がATC準備位置よりも機械原点側とは反対側(Z軸―方向側)に位置する場合(S32:NO)、CPU31は第1経路に決定する(S33)。R点がATC準備位置よりも機械原点側(Z軸+方向側)に位置する場合(S32:YES)、CPU31は第2経路に決定する(S34)。第1経路と第2経路の具体例については後述する。CPU31は、決定した経路をRAM33に記憶する(S35)。CPU31は往路決定処理を終了し、
図6のフローに戻り、復路決定処理を実行する(S17)。
【0039】
図8を参照し、復路決定処理について説明する。CPU31はG100のRアドレスからR点の座標値を再取得する(S41)。R点を再取得する理由について、復路では、往路のときに主軸20に装着されていた工具23とは別の次工具が主軸20に装着される可能性が高いので、往路と復路で工具長が異なる場合がある。上記の通り、R点には工具長オフセットがかけられるので、工具長が異なると主軸20の位置も変わる。それ故、CPU31は、工具交換で新たに主軸20に装着された次工具の工具長を踏まえて、R点の座標値を再取得するのがよい。
【0040】
ここで、往路における工具長は、今回のG100以前に工具長補正指令(G43H)がある場合、そのHアドレスで指定した工具番号の工具長を取得してもよい。なお、単に前回のG100のTアドレスで指定した工具番号の工具長を取得してもよい。一方、復路における工具長は、今回のG100指令と同時に工具長補正指令(G43 H)がある場合(即ち、「G100T_X_Y_Z_R_G43H」のように1ブロックに記載した場合)、そのHアドレスで指定した工具番号の工具長を取得してもよい。これについても、単に今回のG100のTアドレスで指定した工具番号の工具長を取得してもよい。
【0041】
CPU31はATC原点から指令点までの復路を決定する為、Z軸方向において、S41で再取得したR点はATC準備位置よりも機械原点側か否か判断する(S42)。R点がATC準備位置よりも機械原点側とは反対側に位置する場合(S42:NO)、CPU31は第3経路に決定する(S43)。R点がATC準備位置よりも機械原点側に位置する場合(S42:YES)、CPU31は第4経路に決定する(S44)。第3経路と第4経路の具体例については後述する。CPU31は決定した経路をRAM33に記憶する(S45)。CPU31は復路決定処理を終了し、
図6のフローに戻る。続いて、CPU31は、往路実行処理を実行する(S18)。
【0042】
図9を参照し、往路実行処理について説明する。CPU31はRAM53に記憶した経路を参照し、往路が第1経路か否か判断する(S51)。
【0043】
第1経路の場合(S51:YES)について説明する。
図3,
図11に示すように、CPU31は主軸20を現在位置からZ軸+方向に移動し、R点まで後進する(S52)。R点は復帰点であり、主軸20に装着した工具23がテーブル27上に固定したワーク及び治具に接触しない位置に設定される。上記の通り、Z軸方向において、R点は、ATC準備位置よりも機械原点側とは反対側に位置する(
図11参照)。この場合、R点からZ軸+方向側において主軸20をどこに動かしても工具23がワーク及び治具とは接触しない。よって、CPU31は主軸20をR点からATC準備位置に向けて、X軸、Y軸、Z軸の全ての方向において移動する(S53)。CPU31は、R点からATC準備位置までの間において、主軸20をどこにも経由せずにATC準備位置まで直接的に移動するので、機械原点側を経由する場合に比べて移動時間を短縮できる。なお、「直接的に移動する」とは、Z軸方向への移動を伴い、その経路に頂点(角)を有さない経路を意味し、例えば、移動経路を少し曲線にしたものも含まれる。
【0044】
主軸20をATC準備位置に移動後、CPU31は主軸20をY軸+方向に移動し、Y軸ATC原点まで上昇する(S54)。Y軸ATC原点は、Y軸方向においてATC原点と同一座標値である。Y軸ATC原点は、マガジン45直下の把持部50のポット位置に対応する。よって、主軸20がY軸ATC原点まで上昇することで、空のポットに対して主軸20に装着した工具23が下から装着する。これで第1経路の移動が完了する。
【0045】
第2経路の場合(S51:NO)について説明する。
図3,
図12に示すように、CPU31は主軸20を現在位置からZ軸+方向に移動し、R点まで後進する(S55)。上記の通り、Z軸方向において、R点は、ATC準備位置よりも機械原点側に位置する(
図12参照)。この場合、R点とATC準備位置との間にワーク及び治具が位置する可能性がある。それ故、仮に第1経路のように、主軸20をR点からATC準備位置に向けて直接的に移動した場合、ワーク及び治具に接触する可能性がある。そこで、CPU31は、主軸20をR点からX軸方向(+方向又は―方向)と共にY軸+方向に移動し、Y軸原点まで上昇する(S56)。主軸20がY軸原点で且つX軸がATC準備位置まで移動後、CPU31はY軸原点からZ軸―方向に移動し、ATC準備位置まで前進する(S57)。このように、主軸20をR点からY軸原点を経由してATC準備位置まで移動することで、主軸20に装着した工具23がワーク及び治具に接触するのを防止できる。主軸20をATC準備位置に移動後、CPU31は主軸20をY軸+方向に移動し、Y軸ATC原点まで上昇する(S58)。空のポットに対して主軸20に装着した工具23が下から装着する。これで第2経路の移動が完了する。
【0046】
図6のフローに戻り、CPU31は、主軸20をY軸ATC原点まで上昇した後、ATC(工具交換)を実行する(S19)。CPU31は、主軸20をY軸ATC原点からATC原点まで移動する。これにより、主軸20から工具23が引き抜かれる。工作機械1はマガジン45を回転し、次に装着する次工具を保持する把持部50をマガジン45直下に位置決めする。CPU31はATC原点にある主軸20をY軸ATC原点まで移動する。これにより、主軸20に次工具が装着され、S19のATCが完了する。次いで、CPU31は、復路実行処理を実行する(S20)。
【0047】
図10を参照し、復路実行処理について説明する。CPU31はRAM53に記憶した経路を参照し、復路が第3経路か否か判断する(S61)。
【0048】
第3経路の場合(S61:YES)について説明する。
図4,
図13に示すように、CPU31は主軸20をY軸ATC原点からY軸―方向に移動し、ATC準備位置まで下降する(S62)。Z軸方向において、R点はATC準備位置よりも機械原点側とは反対側に位置する(
図13参照)。この場合、ATC準備位置とR点の間にはワーク及び治具が位置しない。そこで、CPU31は主軸20をATC準備位置からR点まで、X軸、Y軸、Z軸の全ての方向において移動する(S63)。CPU31は、ATC準備位置からR点までの間において、主軸20をどこにも経由せずにR点まで直接的に移動するので、機械原点側を経由する場合に比べて移動時間を短縮できる。なお、「直接的に移動する」とは、Z軸方向への移動を伴い、その経路に頂点(角)を有さない経路を意味し、例えば、移動経路を少し曲線にしたものも含まれる。CPU31は主軸20をR点に移動後、G100で設定された指令点に移動する(S64)。これで第3経路の移動が完了する。
【0049】
第4経路の場合(S61:NO)について説明する。
図4,
図14に示すように、CPU31は主軸20をY軸ATC原点からY軸―方向に移動し、ATC準備位置まで下降する(S65)。Z軸方向において、R点はATC準備位置よりも機械原点側に位置する(
図14参照)。この場合、ATC準備位置とR点の間にワーク及び治具が位置する可能性がある。そこで、CPU31は主軸20をZ軸+方向に移動し、Z軸R点まで後進する(S66)。Z軸R点とは、Z軸方向においてR点と同一座標の位置である。
【0050】
そして、CPU31はZ軸をそのままで、主軸20をZ軸R点からY軸方向及びX軸方向に移動することで、R点まで移動する(S67)。つまり、ATC準備位置からZ軸R点を経由してR点に移動することで、主軸20に装着した工具23がワーク及び治具に接触するのを防止できる。CPU31は主軸20をR点に移動後、G100で設定された指令点に移動する(S68)。これで第4経路の移動が完了する。
【0051】
図6のフローに戻り、CPU31はG100の一連の工具交換動作が終了したので、次ブロックに移動し(S21)、その次ブロックについて解釈する(S12)。解釈した次ブロックがM30であった場合(S13:YES)、CPU31は本処理を終了する。
【0052】
上記説明において、R点は本発明の「復帰位置」の一例である。ATC領域は本発明の「加工領域と重なる領域」の一例である。ATC位置(Y軸ATC原点)は本発明の「工具交換位置」の一例である。ATC準備位置は本発明の「工具交換準備位置」の一例である。
図6のS16の処理を実行するCPU31は本発明の「往路切替え部」の一例である。S17の処理を実行するCPU31は本発明の「復路切替え部」の一例である。S18の処理を実行するCPU31は本発明の「往路制御部」の一例である。S19の処理を実行するCPU31は本発明の「工具交換部」の一例である。S20の処理を実行するCPU31は本発明の「復路制御部」の一例である。NC制御プログラムは本発明の「プログラム」の一例である。
図7のS31の処理を実行するCPU31は本発明の「第1復帰位置算出部」の一例である。
図8のS41の処理を実行するCPU31は本発明の「第2復帰位置算出部」の一例である。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の数値制御装置30は、主軸20とマガジン45を備える。主軸20は工具を装着する。マガジン45は工具を収納し、主軸20の軸方向であるZ軸方向において加工領域と重なるATC領域に設けられる。数値制御装置30のCPU31は、テーブル27上に治具で固定したワークの加工後、主軸20をR点に移動してからATC準備位置を経由して、Y軸ATC原点に移動する。主軸20をY軸ATC原点に移動した状態で、主軸20のZ軸方向の往復移動に基づき、主軸20に装着した工具とマガジン45が収納する工具とを入れ替え交換する。上記構成を備える数値制御装置30において、CPU31はR点に基づき、主軸20をR点からATC準備位置に移動する往路の経路について、第1経路と第2経路の何れかに切り替える。第1経路は、主軸20を、R点からATC準備位置に移動する経路である。第2経路は、主軸20をR点からY軸原点に移動後、当該Y軸原点からATC準備位置に移動する経路である。これにより、数値制御装置30は、主軸20をR点からATC準備位置に移動する往路において、R点に応じて工具交換時間を短縮しつつ、主軸20に装着した工具がワーク及び治具に衝突するのを回避できる。
【0054】
本発明は上記実施形態に限らず各種変形が可能である。工作機械1は横形の工作機械であるが、主軸の軸方向が上下方向である縦形の工作機械であってもよい。
【0055】
工作機械1は、コラム5をX軸方向、主軸20をZ軸方向、サドル本体10とサドルベース11をY軸方向に移動することで、ワークと工具を相対的にX軸、Y軸、Z軸に移動するが、これ以外の構造であってもよく、例えば、コラム5をX軸方向とZ軸方向の2軸方向に移動し、主軸20をY軸方向に移動するようにしてもよい。
【0056】
図6のNC制御処理では、S16とS17で往路決定処理と復路決定処理を実行し、往路と復路の両方を先に決定してから、その決定した往路と復路に沿って主軸20を移動するが、例えば、往路に沿って移動する前に往路決定処理を実行し、復路に沿って移動する前に復路決定処理を実行してもよい。
【符号の説明】
【0057】
20 主軸
27 テーブル
30 数値制御装置
31 CPU
45 マガジン