(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20250701BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20250701BHJP
E01C 23/01 20060101ALI20250701BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20250701BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
E01D22/00 A
G08G1/00 K
E01C23/01
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
(21)【出願番号】P 2022080278
(22)【出願日】2022-05-16
【審査請求日】2024-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 豊和
(72)【発明者】
【氏名】竹本 毅
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-013537(JP,A)
【文献】特開2004-108988(JP,A)
【文献】特開2018-004469(JP,A)
【文献】特開2018-120409(JP,A)
【文献】特開2021-036455(JP,A)
【文献】特開2010-236875(JP,A)
【文献】特開2021-152255(JP,A)
【文献】特開2019-019561(JP,A)
【文献】特開2021-025242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0160675(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 22/00
G08G 1/00
E01C 23/01
G01M 99/00
G01H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が有するセンサによって取得された第1値であって、橋梁におけるジョイント部分の段差に関する第1値を複数の橋梁それぞれについて取得することと、
前記複数の橋梁それぞれの前記第1値
及び前記複数の橋梁それぞれの交通量に関する第2値に基づいて、前記複数の橋梁の保守の優先順位を決定することと、
を実行する制御部を備
え、
前記第2値は、前記複数の橋梁それぞれに許容されている交通量と前記複数の橋梁それぞれに想定されている交通量との割合である、
情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は
、前記複数の橋梁それぞれの前記第1値に基づいて、前記複数の橋梁のうち、前記ジョイント部分における段差が大きい橋梁の前記優先順位を、前記ジョイント部分における段差が小さい橋梁の前記優先順位よりも高くなるように決定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1値は、前記車両の車輪速の変化に関する値である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第1値は、前記車両にかかる加速度に関する値である、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
コンピュータが実行する情報処理方法であって、
車両が有するセンサによって取得された第1値であって、橋梁におけるジョイント部分の段差に関する第1値を複数の橋梁それぞれについて取得することと、
前記複数の橋梁それぞれの前記第1値
及び前記複数の橋梁それぞれの交通量に関する第2値に基づいて、前記複数の橋梁の保守の優先順位を決定することと、
を含み、
前記第2値は、前記複数の橋梁それぞれに許容されている交通量と前記複数の橋梁それぞれに想定されている交通量との割合である、
情報処理方法。
【請求項6】
コンピュータが情報処理方法を実行するためのプログラムであって、
前記情報処理方法は、
車両が有するセンサによって取得された第1値であって、橋梁におけるジョイント部分の段差に関する第1値を複数の橋梁それぞれについて取得することと、
前記複数の橋梁それぞれの前記第1値
及び前記複数の橋梁それぞれの交通量に関する第2値に基づいて、前記複数の橋梁の保守の優先順位を決定することと、
を含み、
前記第2値は、前記複数の橋梁それぞれに許容されている交通量と前記複数の橋梁それぞれに想定されている交通量との割合である、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、構造体変状検知システムが開示されている。特許文献1に開示されている構造体変状検知システムは、車両と、車両の車軸の振動を検知する車軸振動センサと、検査対象となる構造体を車両が通過する際に車軸振動センサにより検知した振動データを記憶する記憶手段と、振動データを解析することにより構造体の損傷状態を判定する損傷判定装置と、を備えている。損傷判定装置は、記憶手段に記憶された振動データと構造体が正常であるときの正常振動データとを比較するデータ比較手段と、データ比較手段により比較されたデータに基づいて構造体に損傷が発生したか否かを判定する損傷判定手段と、を備えている。そして、損傷判定手段は、データ比較手段により比較されたデータの差異が所定値以上の場合に、構造体に損傷が発生したと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、複数の橋梁の効率的な保守を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様に係る情報処理装置は、
車両が有するセンサによって取得された第1値であって、橋梁におけるジョイント部分の段差に関する第1値を複数の橋梁それぞれについて取得することと、
前記複数の橋梁それぞれの前記第1値に基づいて、前記複数の橋梁の保守の優先順位を決定することと、
を実行する制御部を備える。
【0006】
本開示の第2の態様に係る情報処理方法は、
コンピュータが実行する情報処理方法であって、
車両が有するセンサによって取得された第1値であって、橋梁におけるジョイント部分の段差に関する第1値を複数の橋梁それぞれについて取得することと、
前記複数の橋梁それぞれの前記第1値に基づいて、前記複数の橋梁の保守の優先順位を決定することと、
を含む。
【0007】
本開示の第3の態様に係るプログラムは、
コンピュータが情報処理方法を実行するためのプログラムであって、
前記情報処理方法は、
車両が有するセンサによって取得された第1値であって、橋梁におけるジョイント部分の段差に関する第1値を複数の橋梁それぞれについて取得することと、
前記複数の橋梁それぞれの前記第1値に基づいて、前記複数の橋梁の保守の優先順位を決定することと、
を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、複数の橋梁の効率的な保守が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る保守システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、保守サーバが管理する橋梁の構造の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、保守サーバの機能構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図4】
図4は、車両情報データベースに保持されている車両情報のテーブル構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、橋梁情報データベースに保持されている橋梁情報のテーブル構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、平均変動率の時間推移の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の第1の態様に係る情報処理装置は、複数の橋梁の管理を行う情報処理装置である。ここで、複数の橋梁のうち、他の橋梁と比べて劣化している橋梁は、該他の橋梁よりも早期に保守する必要がある。そのため、複数の橋梁に対して、保守の優先順位を定める必要がある。
【0011】
そこで、本開示の第1の態様に係る情報処理装置における制御部は、車両が有するセンサによって取得された第1値であって、橋梁におけるジョイント部分の段差に関する第1値を複数の橋梁それぞれについて取得する。ここで、橋梁が劣化している場合、橋梁におけるジョイント部分の段差が大きくなっている場合が想定される。そのため、橋梁におけるジョイント部分の段差に関する第1値を取得することによって、情報処理装置は、橋梁の劣化の状態を把握することができる。そこで、情報処理装置における制御部は、複数の橋梁それぞれの第1値に基づいて、複数の橋梁の保守の優先順位を決定する。
【0012】
本開示の第1の態様に係る情報処理装置によって、複数の橋梁の保守の優先順位が決定される。これにより、複数の橋梁のうち、他の橋梁と比べて劣化している橋梁を優先的に保守することが可能となる。このようにして、複数の橋梁の効率的な保守が可能になる。
【0013】
以下、本開示の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、および、その相対配置等は、特に記載がない限りは本開示の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0014】
<実施形態>
(システムの概要)
本実施形態における保守システム1について、
図1および
図2に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る保守システム1の概略構成を示す図である。保守システム1は、複数の車両10と保守サーバ200とを含んで構成される。保守システム1においては、複数の車両10と保守サーバ200とがネットワークN1によって相互に接続される。ネットワークN1には、例えば、インターネット等の世界規模の公衆通信網であるWAN(Wide Area Network)または、携帯電話等の電話通信網が採用されてもよい。
【0015】
(車両)
車両10は、車輪速センサ100を有する車両である。ここで、車輪速センサ100は、車両10の車輪速を測定するセンサである。車両10は、ネットワークN1を介して、車輪速センサ100が取得した車両10の車輪速と、車両10が有するGPSセンサが取
得した車両10の位置と、を含むセンサ情報を保守サーバ200に送信する。このとき、車両10は、所定の周期で繰り返し、センサ情報を保守サーバ200に送信する。
【0016】
(保守サーバ)
保守サーバ200は、複数の橋梁の管理を行うサーバである。
図2は、保守サーバ200が管理する橋梁の構造の一例を示す図である。
図2に示す橋梁は、2つの躯体と、1つの橋脚によって支えられている橋梁である。また、橋梁において、各躯体と橋脚との間は、橋桁によって接続されている。また、橋梁において、躯体と橋桁との間と、2つの橋桁の間とには、ジョイント部分が形成されている。車両10は、道路から橋梁の躯体の上面に進入し、躯体と橋桁の間のジョイント部分を通過して橋桁に進入する。次に、車両10は、橋桁と橋桁との間のジョイント部分を通過し、橋桁と躯体との間のジョイント部分を通過する。そして、車両10は橋梁の躯体から道路に進入する。このように、車両10は、橋梁における3つのジョイント部分を走行する。なお、保守サーバ200が管理する複数の橋梁は、ジョイント部分を有する橋梁であれば、必ずしも
図2に示す構造となっていなくてもよい。
【0017】
ここで、
図2に示す橋脚が劣化している場合を想定する。この場合において、橋桁が劣化して歪むことによって、ジョイント部分の段差が大きくなることが想定される。また、躯体または橋脚が土台部分に沈み込むことによって、ジョイント部分の段差が大きくなることが想定される。このように、橋梁が劣化することによって、橋梁におけるジョイント部分の段差が大きくなることが想定される。
【0018】
そこで、保守サーバ200は、橋梁を走行した車両10から受信したセンサ情報に基づいて橋梁におけるジョイント部分の段差の状態を把握する。これにより、保守サーバ200は、橋梁の劣化の状態を把握することができる。なお、保守サーバ200がセンサ情報に基づいて橋梁の劣化の状態を把握する方法の詳細については後述する。
【0019】
保守サーバ200は、プロセッサ210、主記憶部220、補助記憶部230、および通信インタフェース(通信I/F)240を有するコンピュータを含んで構成される。プロセッサ210は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはDSP(Digital Signal Processor)である。主記憶部220は、例えば、RAM(Random Access Memory)である。補助記憶部230は、例えば、ROM(Read Only Memory)である。また、補助記憶部230は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、またはCD-ROM、DVDディスク、もしくはブルーレイディスクのようなディスク記録媒体である。また、補助記憶部230は、リムーバブルメディア(可搬記憶媒体)であってもよい。ここで、リムーバブルメディアとして、例えば、USBメモリまたはSDカードが例示される。通信I/F240は、例えば、LAN(Local Area Network)インターフェースボード、または無線通信のための無線通信回路である。
【0020】
保守サーバ200において、補助記憶部230には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、および各種情報テーブル等が格納されている。また、保守サーバ200において、プロセッサ210が、補助記憶部230に記憶されたプログラムを主記憶部220にロードして実行することによって、後述するような各種の機能を実現することができる。ただし、保守サーバ200における一部または全部の機能はASICまたはFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。なお、保守サーバ200は、必ずしも単一の物理的構成によって実現される必要はなく、互いに連携する複数台のコンピュータによって構成されてもよい。
【0021】
(機能構成)
次に、本実施形態に係る保守システム1を構成する保守サーバ200の機能構成について、
図3から
図6に基づいて説明する。
図3は、保守サーバ200の機能構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【0022】
保守サーバ200は、制御部201、通信部202、車両情報DB203、および橋梁情報DB204を含んで構成される。制御部201は、保守サーバ200の制御をするための演算処理を行う機能を有する。制御部201は、保守サーバ200におけるプロセッサ210によって実現できる。通信部202は、保守サーバ200をネットワークN1に接続する機能を有する。通信部202は、保守サーバ200における通信I/F240によって実現できる。
【0023】
制御部201は、通信部202によって、センサ情報を車両10から所定の周期で繰り返し受信する。制御部201は、車両10から受信したセンサ情報を車両情報DB203に格納する。車両情報DB203は、車両情報を保持する機能を有する。車両情報DB203は、保守サーバ200における補助記憶部230によって実現できる。
図4は、車両情報DB203に保持されている車両情報のテーブル構成の一例を示す図である。
図4に示すように、車両情報は、車両IDフィールド、日時フィールド、車両位置フィールド、および車輪速フィールドを有する。
【0024】
車両IDフィールドには、車両を特定するための識別子(車両ID)が入力される。日時フィールドには、センサ情報に基づいて、車両10における車輪速センサ100によって車両10の車輪速が取得された日時が入力される。車両位置フィールドには、センサ情報に基づいて、車両10の位置が入力される。車両位置フィールドには、例えば、車両10の位置が緯度および経度によって入力される。車輪速フィールドには、車両位置フィールドに入力される車両10の位置における車両10の車輪速に関する情報が入力される。ここで、車輪速フィールドには、車両10の車輪の回転速度等が入力される。制御部201は、車両情報DB203に格納されている車両情報を取得することによって、車両10が過去に存在した位置と、該位置における車輪速とを把握することができる。
【0025】
橋梁情報DB204は、橋梁情報を保持する機能を有する。橋梁情報DB204は、保守サーバ200における補助記憶部230によって実現できる。
図5は、橋梁情報DB204に保持されている橋梁情報のテーブル構成の一例を示す図である。
図5に示すように、橋梁情報は、橋梁IDフィールド、想定交通量フィールド、許容交通量フィールド、ジョイント部分IDフィールド、およびジョイント部分位置フィールドを有する。
【0026】
橋梁IDフィールドには、橋梁を特定するための識別子(橋梁ID)が入力される。想定交通量フィールドには、橋梁IDフィールドに入力されている橋梁IDに対応する橋梁の想定交通量が入力される。また、許容交通量フィールドには、橋梁IDフィールドに入力されている橋梁IDに対応する橋梁の許容交通量が入力される。ここで、想定交通量は、車両が橋梁を走行すると想定される単位時間当たりの交通量が入力される。想定交通量フィールドには、橋梁を走行すると想定される単位時間当たりの車両の、台数または重量等が入力される。また、許容交通量フィールドには、橋梁を走行することが許容されている単位時間当たりの交通量が入力される。許容交通量は、例えば、橋梁の設計時に定められる値である。
【0027】
ジョイント部分IDフィールドには、橋梁IDに入力されている橋梁IDに対応する橋梁におけるジョイント部分を特定するための識別子(ジョイント部分ID)が入力される。ジョイント部分位置フィールドには、ジョイント部分IDフィールドに入力されているジョイント部分IDに対応するジョイント部分の位置が入力される。ジョイント部分位置フィールドには、例えば、ジョイント部分の位置が緯度および経度を用いて入力される。
制御部201は、橋梁情報を橋梁情報DB204から取得することによって、各橋梁の、想定交通量と許容交通量と各ジョイント部分の位置とを把握することができる。
【0028】
制御部201は、車両情報および橋梁情報をそれぞれ車両情報DB203および橋梁情報DB204から取得することによって、車両10がジョイント部分を走行した際の車輪速の変動率を把握することができる。具体的には、制御部201は、橋梁情報DB204に保持されている橋梁情報におけるジョイント部分位置フィールドに入力されているジョイント部分の位置を取得する。また、制御部201は、車両情報DB203に保持されている車両情報における車両位置フィールドに入力されている車両10が存在した位置を取得する。そして、制御部201は、車両10が存在した位置とジョイント部分の位置とを参照し、ジョイント部分を含む所定の範囲内における車両10の車輪速を取得する。ここで、所定の範囲は、進行方向におけるジョイント部分の前後の地点を含むように設定される。
【0029】
このとき、所定の範囲は、ジョイント部分を含みつつ進行方向におけるジョイント部分の前後の地点を含むように設定されるため、制御部201は、車両10がジョイント部分を走行する前後の車輪速の状況を把握することができる。そのため、制御部201は、車両10がジョイント部分を走行した際の車両10の車輪速の変動率を算出することができる。
【0030】
ここで、橋梁が劣化することによって橋梁におけるジョイント部分に段差が生じることにより、車両10の車輪速が変動しやすくなる。さらに、橋梁が劣化すればするほど、橋梁におけるジョイント部分の段差が大きくなることが想定される。橋梁におけるジョイント部分の段差が大きくなると、車両10の車輪速がさらに変動しやすくなり、車輪速の変動率がより大きくなることが想定される。そこで、制御部201は、複数の車両10が各ジョイント部分を走行した際の、複数の車両10の車輪速の変動率の平均値(以下、「平均変動率」と称する場合がある。)を算出する。制御部201は、単位期間中にジョイント部分を走行した複数の車両10の車輪速の変動率に基づいて、各ジョイント部分における平均変動率を単位期間ごとに算出する。これにより、制御部201は、平均変動率の時間推移を算出する。ここで、単位期間は、例えば、一か月等の予め定められた期間である。
【0031】
なお、本実施形態においては、各橋梁は、複数のジョイント部分を有していることが想定されている。そこで、本実施形態においては、制御部201は、各橋梁における複数のジョイント部分の平均変動率の最大値を、各橋梁の平均変動率として算出している。つまり、制御部201は、各橋梁において最も大きいジョイント部分の平均変動率を、各橋梁の平均変動率として算出している。これにより、制御部201は、各橋梁の最も劣化が進行しているジョイント部分の変動率平均を把握することができる。
【0032】
図6は、平均変動率の時間推移の一例を示す図である。
図6おいては、橋梁Aおよび橋梁Bの2つの橋の平均変動率が示されている。
図6においては、橋梁Aの平均変動率が白丸印によって示されている。また、
図6においては、橋梁Bの平均変動率が黒丸印によって示されている。
図6に示すように、橋梁Aと橋梁Bとは、時点A以降、平均変動率が上昇している。つまり、橋梁Aと橋梁Bとは、時点A以降劣化が進行していることが想定される。
【0033】
ここで、
図6に示すように、時点A以降、橋梁Aの平均変動率の傾きは、橋梁Bの平均変動率の傾きよりも大きくなっている。つまり、時点A以降、平均変動率の変化率(以下、「特定変化率」と称する場合がある。)は橋梁Bよりも橋梁Aのほうが大きくなっている。つまり、橋梁Aのほうが橋梁Bよりも早く劣化が進行していることが想定される。そ
のため、橋梁Aのほうが橋梁Bよりも早期に保守を行う必要があると想定される。そこで、制御部201は、特定変化率に基づいて、橋梁Aと橋梁Bとの保守を行う順位に関する優先順位(以下、単に「優先順位」と称する場合がある。)を、橋梁Bよりも橋梁Aのほうが高くなるように決定する。これにより、劣化が橋梁Bよりも早く進行している橋梁Aのほうが、橋梁Bよりも早期に保守が行われることになる。このように、制御部201は、特定変化率に基づいて、特定変化率が大きい橋梁の優先順位を特定変化率が小さい橋梁の優先順位よりも高くなるように決定する。
【0034】
ここで、複数の橋梁のうち、特定変化率の差が所定の値以下である少なくとも2つの橋梁(以下、「特定橋梁」と称する場合がある。)が存在する場合がある。所定の値は、2つの特定橋梁の特定変化率が異なっていたとしても、特定変化率の差が所定の値以下であれば、2つの特定橋梁の劣化の進行が微差であると考えられる値として定められている。この場合において、制御部201は、各特定橋梁の、想定交通量と許容交通量との割合(以下、「特定割合」と称する場合がある。)に基づいて、該少なくとも2つの橋梁の優先順位を決定する。具体的には、制御部201は、橋梁情報DB204に保持されている橋梁情報から、各特定橋梁の、想定交通量と許容交通量とを取得する。そして、制御部201は、想定交通量を許容交通量で除すことによって、各特定橋梁の特定割合を算出する。
【0035】
想定交通量が許容交通量に近くなればなるほど、橋梁に係る負荷が大きいことが想定される。つまり、特定割合が大きい橋梁は、特定割合の小さい橋梁に比べて、相対的に橋梁にかかる負荷が大きくなることが想定される。そこで、制御部201は、少なくとも2つの特定橋梁のうち、特定割合が大きい橋梁の優先順位を特定割合が小さい橋梁の優先順位よりも高く決定する。これにより、同等の早さで劣化が進行している少なくとも2つの特定橋梁のうち、相対的に大きい負荷がかかっている特定橋梁の保守を、相対的に小さい負荷がかかっている特定橋梁の保守よりも早期に行うことができる。
【0036】
(決定処理)
次に、保守システム1において、保守サーバ200における制御部201によって実行される決定処理について、
図7に基づいて説明する。
図7は、決定処理のフローチャートである。決定処理は、複数の橋梁の優先順位を決定するための処理である。決定処理は、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0037】
決定処理においては、まずS101において、橋梁情報が橋梁情報DB204から取得される。次に、S102において、取得された橋梁情報に基づいて、複数の橋梁それぞれのジョイント部分の位置が特定される。次に、S103において、車両情報が車両情報DB203から取得される。次に、S104において、S103において取得された車両情報における車両10の位置と、S102において特定された複数の橋梁のジョイント部分の位置に基づいて、複数の橋梁のジョイント部分を含む所定の範囲内における複数の車両10の車輪速を取得する。次に、S105において、ジョイント部分を含む所定の範囲内における複数の車両10の車輪速に基づいて、各橋梁の平均変動率の時間推移が算出される。次に、S106において、各橋梁の平均変動率の時間推移に基づいて、各橋梁の特定変化率が算出される。
【0038】
次に、S107において、算出された特定変化率に基づいて、特定橋梁が少なくとも2つ存在するか否かが判別される。S107において否定判定がされた場合、各橋梁の特定変化率の差は所定の値よりも大きくなっているため、各橋梁の劣化の進行の違いは微差ではないことが想定される。そのため、S108において、複数の橋梁の特定変化率に基づいて、複数の橋梁の優先順位が決定される。そして、決定処理は一旦終了される。
【0039】
また、S107において肯定判定がされた場合、S109において、各特定橋梁の、想
定交通量と許容交通量とが橋梁情報DB204から取得される。次に、S110において、取得された想定交通量と許容交通量とから、各特定橋梁の特定割合が算出される。そして、S111において、各橋梁の特定変化率と、各特定橋梁の特定割合とに基づいて、複数の橋梁の優先順位が決定される。具体的には、少なくとも2つの特定橋梁を含む複数の橋梁の優先順位は、橋梁の特定変化率が大きければ大きいほど高く決定される。また、少なくとも2つの特定橋梁の優先順位は、特定橋梁の特定割合が大きければ大きいほど高く決定される。このようにして、特定橋梁と、特定橋梁以外の橋梁とを含む複数の橋梁に、優先順位が決定される。
【0040】
以上説明した通り、保守システム1によって、複数の橋梁の保守の優先順位が決定される。これにより、複数の橋梁のうち、他の橋梁と比べて劣化が進行している橋梁を優先的に保守することが可能となる。このようにして、複数の橋梁の効率的な保守が可能になる。
【0041】
(変形例1)
本実施形態においては、保守サーバ200は、車両10から受信した車両10の車輪速と車両10の位置とを含むセンサ情報に基づいて優先順位を決定する。一方、車両10がジョイント部分を走行している際に、ジョイント部分における段差によって車両10に衝撃が生じること想定ができる。そのため、車両10がジョイント部分を走行している際に、ジョイント部分における段差によって車両10に加速度がかかることが想定できる。そこで、車両10は、車輪速センサ100に代わって加速度センサによって車両10にかかる加速度を取得してもよい。具体的には、車両10における加速度センサは、車両10にかかる上下方向の加速度を取得する。車両10は、ネットワークN1を介して、加速度センサが取得した車両10にかかった加速度と、車両10の位置を含む情報をセンサ情報として保守サーバ200に送信する。
【0042】
ここで、橋梁が劣化することによって、橋梁におけるジョイント部分の段差が大きくなることが想定される。そうすると、橋梁が劣化すればするほど、車両10が該橋梁のジョイント部分を通過する際に車両10に生じる衝撃が大きくなることが想定される。そうすると、橋梁が劣化すればするほど、車両10にかかる上下方向の加速度は大きくなることが想定される。そのため、保守サーバ200は、車両10が橋梁のジョイント部分を通過する際に取得する車両10の加速度に基づいて、橋梁の劣化の状況を把握することができる。そこで、保守サーバ200は、車両10から受信した車両10の加速度に基づいて、複数の橋梁の優先順位を決定してもよい。
【0043】
この場合において、保守サーバ200における車両情報DB203に保持されている車両情報は、車輪速フィールドに代わって、加速度フィールドを有している。そして、保守サーバ200は、車両情報と橋梁情報とに基づいて、各橋梁のジョイント部分を車両10が走行した際の車両10の加速度を特定する。そして、保守サーバ200は、複数の車両10がジョイント部分を走行した際の、複数の車両10の加速度の平均値(以下、「平均加速度」と称する場合がある。)を単位期間ごとに算出する。このようにして、保守サーバ200は、平均加速度の時間推移を算出する。そして、保守サーバ200は、平均加速度の変化率に基づいて、優先順位を決定する。
【0044】
(変形例2)
本実施形態においては、保守サーバ200は、平均変動率の時間推移に基づいて算出した特定変化率に基づいて優先順位を決定する。しかしながら、保守サーバ200は、必ずしも、特定変化率に基づいて優先順位を決定しなくてもよい。例えば、各橋梁の平均変動率が高ければ高いほど、劣化によってジョイント部分における段差が大きくなっていることが想定される。そこで、保守サーバ200は、例えば、各橋梁の平均変動率が高い順に
優先順位を決定してもよい。
【0045】
(変形例3)
本実施形態においては、特定橋梁が少なくとも2つ存在する場合には、保守サーバ200は、特定割合に基づいて少なくとも特定橋梁の優先順位を決定する。一方、想定交通量が大きい橋梁は、想定交通量の小さい橋梁に比べて、絶対的に橋にかかる負荷が大きくなることが想定される。そこで、本変形例における保守サーバ200は、少なくとも2つの特定橋梁のうち、想定交通量が大きい橋梁の優先順位を想定交通量が小さい橋梁の優先順位よりも高く決定する。これにより、同等の早さで劣化が進行している少なくとも2つの特定橋梁のうち、絶対的に大きい負荷がかかると想定されている特定橋梁の保守を、絶対的に小さい負荷がかかると想定されている特定橋梁の保守よりも早期に行うことができる。
【0046】
(変形例4)
本実施形態においては、保守サーバ200は、特定変動率を算出することによって、複数の橋脚の優先順位を決定する。また、変形例1においては、保守サーバ200は、平均加速度の変化率に基づいて、優先順位を決定する。しかしながら、保守サーバ200は、必ずしも、特定変動率または平均加速度の変化率に基づいて、複数の橋梁の優先順位を決定しなくてもよい。保守サーバ200は、平均変動率の時間推移または平均加速度の時間推移に基づいて、橋梁の劣化の進行の状況を把握することができる。そこで、保守サーバ200は、公知の方法によって、複数の橋梁の劣化の進行の状況に基づいて、複数の橋梁の優先順位を決定してもよい。
【0047】
(変形例5)
本実施形態においては、保守サーバ200は、単位期間ごとの複数の車両10の車輪速に基づいて、平均変動率を単位期間ごとに算出することで、平均変動率の時間推移を算出する。一方、気温等の影響によって、橋桁、躯体、または橋脚が伸縮または伸長することによって、ジョイント部分の段差の大きさが異なることが想定される。そこで、本変形例においては、保守サーバ200は、所定の時期における複数の車両10の車輪速に基づいて、所定の時期における平均変動率を算出する。ここで、所定の時期は、例えば、季節によって定められた時期である。そして、保守サーバ200は、所定の時期における平均変動率の時間推移に基づいて、複数の橋梁の優先順位を決定する。つまり、保守サーバ200は、特定の季節の平均変動率の一年ごとの時間推移に基づいて、複数の橋梁の優先順位を決定する。これにより、季節等の時期によって変化する車輪速の平均変動率を考慮して、複数の橋梁の効率的な保守が可能となる。なお、所定の時期は、例えば、平均気温等によって定められた時期でもよい。
【0048】
<その他の実施形態>
上述の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。また、本開示において説明した処理および手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0049】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0050】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コ
ンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、またはハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、またはブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、または光学式カードのような、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0051】
1・・保守システム
10・・車両
100・・車輪速センサ
200・・保守サーバ
201・・制御部
202・・通信部
203・・車両情報DB
204・・橋梁情報DB