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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/14 20160101AFI20250701BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20250701BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20250701BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20250701BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20250701BHJP
   F01N 3/033 20060101ALI20250701BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20250701BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20250701BHJP
【FI】
B60W20/14 ZHV
B60W20/00 900
B60K6/445
B60W10/06 900
B60W10/08 900
F01N3/033 Z
F02D41/04
B60L50/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022104752
(22)【出願日】2022-06-29
(65)【公開番号】P2024004877
(43)【公開日】2024-01-17
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】梅村 善尚
(72)【発明者】
【氏名】熊沢 卓
(72)【発明者】
【氏名】土田 康隆
【審査官】大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0223423(US,A1)
【文献】特開2006-074931(JP,A)
【文献】特開2022-165380(JP,A)
【文献】特開2016-150689(JP,A)
【文献】特許第6534864(JP,B2)
【文献】特開2019-105184(JP,A)
【文献】特開2020-012404(JP,A)
【文献】特開2018-065448(JP,A)
【文献】特開2018-122620(JP,A)
【文献】特開2017-128152(JP,A)
【文献】国際公開第2023/037419(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20- 6/547
B60L 1/00- 3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
B60W 10/00-20/50
F01N 3/01
3/02- 3/038
F02D 41/00-41/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車両の制御装置であって、
走行用動力源であるエンジン及びモータを制御して当該ハイブリッド車両の減速度を制御する減速度制御部と、
所定の条件の成立又は不成立に基づいて前記エンジンでの燃料カットを制限又は許可する燃料カット制御部と、
当該ハイブリッド車両の旋回走行時に直進走行時よりも前記減速度を増大する旋回制御を実行する旋回制御部と、
燃料カットが制限されており前記旋回制御の実行中での前記減速度を、燃料カットが許可されており前記旋回制御の実行中での前記減速度よりも低くなるように制限する減速度制限部と、
を備えたハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記減速度制限部は、燃料カットが制限されており前記旋回制御が実行中での前記減速度を、燃料カットが制限されており前記旋回制御が停止中での前記減速度よりも高くなるように制限する、請求項1のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記減速度制限部は、燃料カットが制限されており前記旋回制御が実行中での前記減速度を、燃料カットが許可されており前記旋回制御が停止中での前記減速度よりも低くなるように制限する、請求項2のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記エンジンの排気中の粒子状物質を捕集するフィルタが燃料カットの実行により過昇温するか否かを予測する過昇温予測部を備え、
前記燃料カット制御部は、前記フィルタが過昇温すると予測された場合に前記所定の条件が成立したものとみなして燃料カットを制限し、前記フィルタが過昇温しないと予測された場合に前記所定の条件は不成立であるとして燃料カットを許可する、請求項1乃至3の何れかのハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
燃料カットが制限される場合に、前記減速度が制限される旨を報知部に報知させる報知制御部を備えた、請求項1乃至3の何れかのハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両において、燃料カットを実行することにより車両の減速度を確保することができる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-177823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所定の条件の成立に基づいて、燃料カットが制限される場合がある。燃料カットが制限されると、減速度は低下する。このような場合に、高い減速度が要求される旋回制御が実行される場合がある。燃料カットが制限されており高い減速度が要求される旋回制御の実行中では、モータの回生トルクを増大させることにより高い減速度を確保することが考えられる。しかしながらこの場合、モータの負荷が増大するおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、モータの負荷の増大を抑制したハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、ハイブリッド車両の制御装置であって、走行用動力源であるエンジン及びモータを制御して当該ハイブリッド車両の減速度を制御する減速度制御部と、所定の条件の成立又は不成立に基づいて前記エンジンでの燃料カットを制限又は許可する燃料カット制御部と、当該ハイブリッド車両の旋回走行時に直進走行時よりも前記減速度を増大する旋回制御を実行する旋回制御部と、燃料カットが制限されており前記旋回制御の実行中での前記減速度を、燃料カットが許可されており前記旋回制御の実行中での前記減速度よりも低くなるように制限する減速度制限部と、を備えたハイブリッド車両の制御装置によって達成できる。
【0007】
前記減速度制限部は、燃料カットが制限されており前記旋回制御が実行中での前記減速度を、燃料カットが制限されており前記旋回制御が停止中での前記減速度よりも高くなるように制限してもよい。
【0008】
前記減速度制限部は、燃料カットが制限されており前記旋回制御が実行中での前記減速度を、燃料カットが許可されており前記旋回制御が停止中での前記減速度よりも低くなるように制限してもよい。
【0009】
前記エンジンの排気中の粒子状物質を捕集するフィルタが燃料カットの実行により過昇温するか否かを予測する過昇温予測部を備え、前記燃料カット制御部は、前記フィルタが過昇温すると予測された場合に前記所定の条件が成立したものとみなして燃料カットを制限し、前記フィルタが過昇温しないと予測された場合に前記所定の条件は不成立であるとして燃料カットを許可してもよい。
【0010】
燃料カットが制限される場合に、前記減速度が制限される旨を報知部に報知させる報知制御部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モータの負荷の増大を抑制したハイブリッド車両の制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、ハイブリッド車両の概略構成図である。
図2図2は、エンジンの概略構成図である。
図3図3は、ECUが実行する減速度制限制御の一例を示したフローチャートである。
図4図4は、燃料カット可能時間を規定したマップの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ハイブリッド車両の概略構成]
図1は、本実施例のハイブリッド車両1の概略構成図である。このハイブリッド車両1は、ECU(Electronic Control Unit)100、エンジン10、第1モータジェネレータ(以下「第1MG(Motor Generator)」と称する)14、第2モータジェネレータ(以下「第2MG」と称する)15、PCU(Power Control Unit)17、バッテリ18、動力分割機構50、伝達機構51、減速機構52、及び駆動輪53を含む。エンジン10はガソリンエンジンであるが、これに限定されずディーゼルエンジンであってもよい。エンジン10、第1MG14、及び第2MG15は、ハイブリッド車両1の走行用動力源である。
【0014】
第1MG14及び第2MG15は、どちらも駆動電力が供給されることによりトルクを出力するモータとしての機能と、トルクが与えられることにより回生電力を発生する発電機としての機能とを有する。第1MG14及び第2MG15は、具体的には交流回転電機である。交流回転電機は、例えば永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。
【0015】
第1MG14及び第2MG15は、PCU17を介してバッテリ18に電気的に接続されている。PCU17は、第1MG14と電力を授受する第1インバータ、第2MG15と電力を授受する第2インバータ、及びコンバータを含む。コンバータは、バッテリ18の電力を昇圧して第1及び第2インバータに供給し、第1及び第2インバータから供給される電力を降圧してバッテリ18に供給する。第1インバータは、コンバータからの直流電力を交流電力に変換して第1MG14に供給し、第1MG14からの交流電力を直流電力に変換してコンバータに供給する。第2インバータは、コンバータからの直流電力を交流電力に変換して第2MG15に供給し、第2MG15からの交流電力を直流電力に変換してコンバータに供給する。即ちPCU17は、第1MG14又は第2MG15において発電された回生電力を用いてバッテリ18を充電し、バッテリ18の充電電力を用いて第1MG14又は第2MG15を駆動する。
【0016】
バッテリ18は、積層された複数の電池により構成される。この電池は、例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池である。
【0017】
動力分割機構50は、エンジン10のクランクシャフト、第1MG14の回転軸、及び動力分割機構50の出力軸を機械的に連結する。動力分割機構50は、例えばサンギア、プラネタリキャリア、ピニオンギア、及びリングギアを備えた遊星歯車機構である。動力分割機構50の出力軸は、伝達機構51に連結されている。また、第2MG15の回転軸も伝達機構51に連結されている。伝達機構51は、CVT52に連結されており、この伝達機構51及びCVT52を介して、エンジン10や第1MG14、第2MG15の各駆動力が駆動輪53に伝達される。
【0018】
減速機構52では、ECU100の制御によりギア比を変化させることによって、変速比を変更する多段式の自動変速機である。これにより減速機構52は、複数の動力伝達状態を切り換える。複数の動力伝達状態は、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジ、R(リバース)レンジ、及びP(パーキング)レンジを含む。Nレンジでは、駆動輪53への動力伝達が遮断される。Dレンジでは、前進走行が可能となる。Rレンジでは、後進走行が可能となる。Pレンジでは、駆動輪53への動力伝達が遮断され且つ機械的に減速機構52の出力軸の回転が阻止される。減速機構52のレンジは、ドライバによるシフトレバー90の手動操作により切り替えることができる。尚、減速機構52の代わりに、連続的にギア比を変更する無段変速機(以下、「CVT(Continuously Variable Transmission)」と称する)を採用してもよい。
【0019】
ECU100は、車両の走行制御に係る各種演算処理を行う演算処理回路と、制御用のプログラムやデータが記憶されたメモリと、を備える電子制御ユニットである。ECU100は、ハイブリッド車両1の制御装置の一例であり、詳しくは後述する減速度制御部、燃料カット制御部、旋回制御部、減速度制限部、過昇温予測部、及び報知制御部を機能的に実現する。
【0020】
表示部80は、ハイブリッド車両1のインストルメントパネルに設けられている。表示部80は、詳しくは後述するが、燃料カットの制限にともなってハイブリッド車両1の減速度が抑制される旨を報知する報知部の一例である。尚、表示部80の代わりに、例えばハイブリッド車両1のオーディオシステムやナビゲーションシステム等のスピーカを用いてもよい。
【0021】
ECU100には、イグニッションスイッチ71、水温センサ72、クランク角センサ73、エアフローメータ74、シフトポジションセンサ75、アクセル開度センサ76、及びヨーレートセンサ77からの信号が入力される。水温センサ72は、エンジン10の冷却水の温度を検出する。クランク角センサ73は、エンジン10のクランクシャフトの回転速度であるエンジン回転速度を検出する。エアフローメータ74は、エンジン10に導入される吸入空気量を検出する。シフトポジションセンサ75は、シフトレバー90の操作位置を検出する。アクセル開度センサ76は、アクセルペダル91の操作位置を検出する。ヨーレートセンサ77は、ハイブリッド車両1の鉛直軸まわりの角速度(ヨーレート)を検出する。
【0022】
ECU100は、アクセル操作量に基づいて加速度及び減速度を制御する。具体的には、アクセル操作量に基づいて設定された目標加速度又は目標減速度を実現するように、エンジン10、第1MG14、及び第2MG15の各出力が制御される。エンジン10の出力は、吸入空気量や燃料噴射量により制御される。第1MG14及び第2MG15の各出力は、PCU17により制御される。上記制御は、減速制御部が実行する処理の一例である。
【0023】
ECU100は、ヨーレートセンサ77の検出結果に基づいて旋回制御を実行する。旋回制御は、旋回走行時に直進走行時よりも減速度を増大する制御である。具体的には、ECU100は、旋回走行時での実ヨーレートが目標ヨーレートとなるように減速度を制御する。目標ヨーレートは、ハイブリッド車両1の駆動前後力の2乗と横力の2乗との合計値の平方根が、ハイブリッド車両1の摩擦円の半径以下となるように定められる。尚、ハイブリッド車両1の摩擦円の半径は、路面の摩擦係数とハイブリッド車両1の垂直荷重とを乗算することにより算出される。従って、目標ヨーレートが大きいほど、摩擦円は小さい値として算出され、減速度が大きくなるように制御される。また、直進走行時には、旋回制御は実行されない。旋回制御は、旋回制御部が実行する処理の一例である。尚、旋回制御は、上記に限定されず、例えばハイブリッド車両1の横加速度を検出する横加速度センサの検出結果に基づいて、旋回制御を実行してもよい。この場合は、例えば横加速度センサが検出した横加速度が大きいほど、減速度が大きくなるように制御される。
【0024】
[エンジンの概略構成]
図2は、エンジン10の概略構成図である。エンジン10は、気筒30、ピストン31、コネクティングロッド32、クランクシャフト33、吸気通路35、吸気弁36、排気通路37、排気弁38を有している。図2には、エンジン10が有する複数の気筒30のうちの一つのみが表示されている。気筒30では混合気の燃焼が行われる。ピストン31は、各気筒30に往復動可能に収容され、エンジン10の出力軸であるクランクシャフト33にコネクティングロッド32を介して連結されている。コネクティングロッド32及びクランクシャフト33は、ピストン31の往復運動をクランクシャフト33の回転運動に変換する。
【0025】
気筒30には筒内噴射弁41dが設けられている。筒内噴射弁41dは気筒30内に直接燃料を噴射する。吸気通路35には、吸気ポート35pに向けて燃料を噴射するポート噴射弁41pが設けられている。各気筒30には、吸気通路35を通じて導入された吸気と筒内噴射弁41d及びポート噴射弁41pが噴射した燃料との混合気を火花放電により点火する点火装置42が設けられている。尚、筒内噴射弁41d及びポート噴射弁41pの少なくとも一方が設けられていればよい。
【0026】
吸気通路35は、各気筒30の吸気ポート35pに吸気弁36を介して接続されている。排気通路37は、各気筒30の排気ポート37pに排気弁38を介して接続されている。吸気通路35には、上述したエアフローメータ74、及び吸入空気量を制御するスロットル弁40が設けられている。
【0027】
排気通路37には、上流側から三元触媒43、及びGPF(Gasoline Particulate Filter)44が設けられている。三元触媒43は例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の触媒金属を含み、酸素吸蔵能を有し、NOx、HC及びCOを浄化する。
【0028】
GPF44は、多孔質セラミックス構造体であり、排気ガス中の排気微粒子(以下、PM(Particulate Matter)と称する)を捕集する。また、GPF44には白金等の貴金属が担持されている。再生制御の際には、この貴金属が堆積したPMの酸化反応を促進する。GPF44は、フィルタの一例である。尚、例えばエンジン10がディーゼルエンジンである場合には、GPF44の代わりにDPF(Diesel Particulate Filter)が設けられる。
【0029】
スロットル弁40は、その開度が増減することにより、気筒30内に導入される吸入空気量を増減させることができる。スロットル弁40の開度は、ECU100からの要求開度に従って制御される。
【0030】
ECU100は、エンジン10が駆動中であってハイブリッド車両1の走行中にアクセル開度がオフされた場合、エンジン10の筒内噴射弁41d及びポート噴射弁41pからの燃料噴射を停止する燃料カットを実行する。これにより、エンジン10の出力トルクは負の値となり、ハイブリッド車両1を減速させることができる。また、燃料カットの実行中は、GPF44に空気(酸素)が供給されてGPF44に堆積したPMが燃焼する。
【0031】
また、ECU100は詳しくは後述するが、所定の条件の成立又は不成立に基づいて燃料カットを制限又は許可する。燃料カットが制限されると、エンジン10により減速度を確保することができない。このような場合に旋回制御が実行されると、第1MG14及び第2MG15の回生トルクを増大させる必要があり、第1MG14及び第2MG15の負荷が増大するおそれがある。従って、ECU100は以下の減速度制限制御を実行する。
【0032】
[ECUが実行する減速度制限制御]
図3は、ECU100が実行する減速度制限制御の一例を示したフローチャートである。本制御は、イグニッションがオンの状態で所定の周期ごとに繰り返し実行される。最初にECU100は、エンジン10が駆動した状態で燃料カットの実行によりGPF44が過昇温するか否かを予測する(ステップS1)。具体的には以下のようにしてGPF44が過昇温するか否かを予測する。ECU100は、GPF44が燃料カットを継続可能な時間(以下、燃料カット可能時間と称する)を算出する。ECU100は、燃料カット可能時間が閾値以上の場合には、GPF44は過昇温しないと予測する。ECU100は、燃料カット可能時間が閾値未満の場合には、GPF44は過昇温すると予測する。ステップS1は、過昇温予測部が実行する処理の一例である。
【0033】
ECU100は、GPF44でのPM堆積量とGPF44の温度とに基づいて、図4のマップを参照して燃料カット可能時間を算出する。図4は、燃料カット可能時間を規定したマップの一例である。このマップは、予め実験結果やシミュレーション結果に基づいて算出され、ECU100のROMに予め記憶されている。横軸はPM堆積量を示し、縦軸はGPF44の温度を示す。図4には、燃料カット可能時間T1、T2、及びT3を示している。燃料カット可能時間T1は、燃料カット可能時間T2及びT3のそれぞれよりも短い。燃料カット可能時間T3は、燃料カット可能時間T1及びT2のそれぞれよりも長い。図4に示すように、PM堆積量が多い場合には少ない場合よりも燃料カット可能時間は短い値に算出される。この理由は、PM堆積量が多いほど、GPF44に酸素が流入した際の単位時間当たりのPMの酸化量が多くなり、GPF44の温度が上限値に到達するまでの時間は短くなるからである。また、GPF44の温度が高い場合には低い場合よりも燃料カット可能時間は短い値に算出される。この理由は、GPF44の温度が高いほど、GPF44の温度が上限値に到達するまでの時間は短くなるからである。
【0034】
GPF44のPM堆積量は、例えばエンジン回転速度、充填効率、及び冷却水の温度に基づいて算出される。充填効率は、エンジン回転速度及び吸入空気量に基づいて算出される。エンジン回転速度は、クランク角センサ73の検出値に基づいて算出される。吸入空気量は、エアフローメータ74の検出値に基づいて算出される。冷却水の温度は、水温センサ72の検出値に基づいて算出される。
【0035】
GPF44の温度は、例えばエンジン回転速度及び充填効率に基づいて算出される。但し、GPF44のPM堆積量やGPF44の温度の算出方法はこれに限定されない。例えば、GPF44の前後の圧力差に基づいてPM堆積量を算出してもよい。また、GPF44の温度を温度センサの検出値に基づいて算出してもよい。その他、公知の方法によりこれらを算出してもよい。
【0036】
ステップS1でNoの場合には、ECU100は燃料カットを許可する(ステップS2)。具体的には、ECU100は燃料カット制限フラグをオフにする。本実施例では、燃料カット制限フラグがオフの場合には、燃料カット要求に基づいて全ての気筒30に対して燃料カットが実行される。
【0037】
ステップS1でYesの場合には、ECU100は減速度が抑制される旨を表示部80に表示させてドライバに報知する(ステップS3)。これにより、後述する燃料カットの制限に伴って減速度が抑制されることをドライバに事前に知らせることができ、燃料カットが実行されないことによりドライバに違和感を与えることを回避できる。ステップS3は、報知制御部が実行する処理の一例である。
【0038】
次にECU100は、減速度を抑制する(ステップS4)。減速度の抑制は、例えば減速度の上限値をより小さい値に変更することにより実現してもよいし、減速度に1未満の係数を乗算して減速度をより小さい値に補正することにより実現してもよい。
【0039】
次にECU100は、燃料カットを制限する(ステップS5)。即ち、ECU100は燃料カット制限フラグをオンにする。本実施例では、燃料カット制限フラグがオンの場合には、燃料カット要求があっても全ての気筒30に対して燃料カットは実行されない。即ち、全ての気筒30で燃料噴射が継続される。
【0040】
次にECU100は、旋回制御の実行中か否かを判定する(ステップS6)。ステップS6でNoの場合には本制御を終了する。
【0041】
ステップS6でYesの場合にECU100は、旋回制御の実行により増大するはずの減速度を制限する(ステップS7)。即ち、燃料カットが制限されており旋回制御の実行中での減速度は、燃料カットが許可されており旋回制御の実行中での減速度よりも低くなるように制限される。
【0042】
減速度の制限は、例えば燃料カットが許可されており旋回制御が実行中での減速度の上限値をより小さい値に変更することにより実現してもよい。また、減速度の制限は、燃料カットが許可されており旋回制御が実行中での減速度に1未満の係数を乗算して減速度をより小さい値に補正することにより実現してもよい。ステップS7は、減速度制限部が実行する処理の一例である。
【0043】
このように減速度が制限されることにより、燃料カットが制限された状態で高い減速度を確保するために、第1MG14及び第2MG15での回生トルクが増大してこれらの負荷が増大することを抑制できる。また、第1MG14及び第2MG15の回生電力によりバッテリ18が過充電されることも回避できる。更に、CVT52の機構上、高い減速度を確保するためには第1MG14を高回転で回転させる必要があるが、このような第1MG14の過回転も回避できる。
【0044】
尚、燃料カットが制限されており旋回制御が実行中での減速度は、燃料カットが制限されており旋回制御が停止中での減速度よりも高くなるように設定される。燃料カットが制限されており旋回制御が実行中での減速度の制限は、燃料カットが制限されており旋回制御が停止中の場合よりも、充填効率を低下させてエンジン回転速度を増大させることにより、実現できる。燃料カットが制限されている場合であっても少なくとも旋回制御が実行中である。このため、旋回制御が停止中の場合よりも旋回制御が実行中の方が減速度が高いことにより、ドライバに違和感を与えることを回避できる。
【0045】
また、燃料カットが制限されており旋回制御が実行中での減速度は、燃料カットが許可されており旋回制御が停止中での減速度よりも低くなるように制限される。燃料カットが制限されており旋回制御が実行中での減速度を、燃料カットが許可されており旋回制御が停止中での減速度と同等とすると、上述したように第1MG14及び第2MG15の負荷が増大するおそれがあるからである。尚、上記の減速制御の実行中及び停止中でのそれぞれの減速度は、シフトレンジがDレンジの場合での減速度を示している。
【0046】
燃料カットが制限されており旋回制御が実行中での減速度は、燃料カットが許可されており旋回制御が停止中での減速度よりも低くなるように制限されるが、これに限定されない。燃料カットが制限されており旋回制御が実行中での減速度は、燃料カットが許可されており旋回制御が停止中での減速度以上であってもよい。第1MG14及び第2MG15の負荷の耐性やバッテリ18の充電容量等を考慮して、燃料カットが制限されており旋回制御が実行中での減速度を適宜設定してもよい。
【0047】
上記実施例では、燃料カットの制限の一例として、エンジン10の全ての気筒30に対して燃料カットが制限される場合、即ち全ての気筒30で燃料噴射が継続される場合を説明したが、これに限定されない。例えば、一部の気筒30に対してのみ燃料カットを制限してもよい。この場合、一部の気筒30では燃料噴射が継続され残りの気筒30では燃料カットが実行される。この場合においても、全ての気筒30に対して燃料カットを実行した場合と比較して、減速度が抑制され、GPF44に供給される酸素量も抑制されてGPF44の過昇温を抑制できるからである。
【0048】
上記実施例では、走行動力源であるエンジン10、第1MG14、及び第2MG15を備えるハイブリッド車両1を例に説明したが、ハイブリッド車両はこれに限定されない。例えば、走行動力源であるエンジンとエンジンから車輪までの動力伝達経路上に配置された一つのモータを備えたハイブリッド車両であってもよい。
【0049】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 エンジン
14 第1モータジェネレータ
15 第2モータジェネレータ
44 GPF(フィルタ)
100 ECU(ハイブリッド車両の制御装置、減速度制御部、燃料カット制御部、旋回制御部、減速度制限部、過昇温予測部、報知制御部)
図1
図2
図3
図4