(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】電子部品の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20250701BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20250701BHJP
【FI】
H01G4/30 517
H01G4/30 311A
H01G4/30 311F
H01G4/30 311Z
H01G13/00 341
H01G13/00 351
(21)【出願番号】P 2022111178
(22)【出願日】2022-07-11
【審査請求日】2024-02-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】藤本 哲生
【審査官】小南 奈都子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-241387(JP,A)
【文献】特開2005-159101(JP,A)
【文献】特開2005-053690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミックグリーンシートを積層したセラミック積層体を有する電子部品の製造装置であって、
前記複数のセラミックグリーンシートが積層される載置面を有する金属製のステージを予熱する予熱手段と、
前記予熱手段によって予熱された前記ステージの前記載置面に、加熱により粘着力が発現する長尺の保持シートを加熱しつつ貼り付ける貼り付け手段と、
長尺の前記保持シートから前記載置面に貼り付けられた部分を切断する切断手段と、
吸引保持した前記セラミックグリーンシートを前記ステージの前記載置面に貼り付けられた部分の前記保持シート上に積層できるヘッドと、を備え
、
前記予熱手段は、前記ステージを挟み込み可能な一対の金属製の加熱板と、前記一対の加熱板を加熱する加熱板用ヒーターと、を有し、
前記貼り付け手段は、前記ステージと前記保持シートとを挟み込んで前記載置面に前記保持シートを接触させる一対の加熱ローラーと、前記一対の加熱ローラーを加熱するローラー用ヒーターと、を有し、
前記一対の加熱ローラーはそれぞれ、ローラー本体と、前記ローラー本体の外周面を覆う筒状の弾性材と、を有する、電子部品の製造装置。
【請求項2】
前記一対の加熱板の厚みはそれぞれ、10mm以上である、請求項
1に記載の電子部品の製造装置。
【請求項3】
複数のセラミックグリーンシートを積層したセラミック積層体を有する電子部品の製造方法であって、
前記複数のセラミックグリーンシートが積層される載置面を有する金属製のステージを予熱手段によって予熱する予熱工程と、
前記予熱工程において予熱された前記ステージの前記載置面に、加熱により粘着力が発現する長尺の保持シートを貼り付け手段によって加熱しつつ貼り付ける貼り付け工程と、
長尺の前記保持シートから前記載置面に貼り付けられた部分を切断手段によって切断する切断工程と、を含み、
前記切断工程後、ヘッドによって、前記ヘッドに吸引保持した前記セラミックグリーンシートを前記ステージの前記載置面に貼り付けられた部分の前記保持シート上に積層でき
、
前記予熱手段は、前記ステージを挟み込み可能な一対の金属製の加熱板と、前記一対の加熱板を加熱する加熱板用ヒーターと、を有し、
前記貼り付け手段は、前記ステージと前記保持シートとを挟み込んで前記載置面に前記保持シートを接触させる一対の加熱ローラーと、前記一対の加熱ローラーを加熱するローラー用ヒーターと、を有し、
前記一対の加熱ローラーはそれぞれ、ローラー本体と、前記ローラー本体の外周面を覆う筒状の弾性材と、を有する、電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記予熱手段の温度及び前記貼り付け手段の温度は、50℃以上70℃以下である、請求項
3に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造装置及び製造方法に関し、特に、複数のセラミックグリーンシートを積層したセラミック積層体を有する電子部品の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層セラミックコンデンサなどの電子部品を製造する際には、ステージ上に、内部電極が印刷されたセラミックグリーンシートを複数枚積層する工程がある。この工程では、内部電極の積層方向の位置を合わせることが必要であるので、セラミックグリーンシートが積層されるステージには高い平坦性が求められている。また、セラミックグリーンシートの積層時において、ステージ上をセラミックグリーンシートがずれ動かないように、ステージ上にセラミックグリーンシートを着脱可能に保持することが求められている。
【0003】
下記特許文献1には、グリーンシートが積層される第1金型の上面に真空吸着機構板を設けることが開示されている。従って、下記特許文献1に記載の発明では、真空吸着機構板上にグリーンシートが吸着可能となっているので、第1金型上にグリーンシートを着脱可能に保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明の場合、第1金型に真空吸着機構板が設けられる構成であるので、積層セラミックコンデンサの製造装置の構成が複雑となる上、製造装置の第1金型が設けられる箇所の周囲の機器の配置に影響を与えるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、ステージ上にセラミックグリーンシートを着脱可能に保持することができる電子部品の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子部品の製造装置は、複数のセラミックグリーンシートを積層したセラミック積層体を有する電子部品の製造装置であって、前記複数のセラミックグリーンシートが積層される載置面を有するステージを予熱する予熱手段と、前記予熱手段によって予熱された前記ステージの前記載置面に、加熱により粘着力が発現する長尺の保持シートを加熱しつつ貼り付ける貼り付け手段と、長尺の前記保持シートから前記載置面に貼り付けられた部分を切断する切断手段と、を備える。
【0008】
本発明の電子部品の製造方法は、複数のセラミックグリーンシートを積層したセラミック積層体を有する電子部品の製造方法であって、前記複数のセラミックグリーンシートが積層される載置面を有するステージを予熱手段によって予熱する予熱工程と、前記予熱工程において予熱された前記ステージの前記載置面に、加熱により粘着力が発現する長尺の保持シートを貼り付け手段によって加熱しつつ貼り付ける貼り付け工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成で、ステージ上にセラミックグリーンシートを着脱可能に保持することができる電子部品の製造装置及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の概略構成を示す右側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の概略構成を示す平面図であり、一部を省略して示している。
【
図3】セラミックグリーンシートをキャリアフィルムから剥離する剥離装置の概略構成を示す右側面図である。
【
図4】キャリアフィルムから剥離したセラミックグリーンシートをステージに積層する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1及び
図2は、本発明の一実施形態に係る電子部品の製造装置の概略構成を示す図であり、
図1は右側面図、
図2は一部を省略して示す平面図である。本実施形態の電子部品の製造装置1は、複数のセラミックグリーンシートを積層したセラミック積層体を有する電子部品の製造装置であって、予熱手段2、貼り付け手段3及び切断手段4を備える。以下、これら各手段について、順に説明する。
【0013】
予熱手段2は、複数のセラミックグリーンシートが積層されるステージ5を予熱する手段である。ステージ5は、金属製の板状である。本実施形態では、ステージ5は、SUS製で、平面視略四角形の板状である。板状のステージ5の厚みは、約0.5mmである。ステージ5の厚みは、約0.5mmに限定されるものではなく、例えば、約0.5mm以上約2.0mm以下であればよい。ステージ5の厚みが約0.5mmより小さい場合、ハンドリング装置によるハンドリングが難しいので、ステージ5を移動させ難い。ステージ5の厚みが約2.0mmより大きい場合、面圧のばらつきが生じる。ステージ5は、複数のセラミックグリーンシートが積層される載置面6を有する。この載置面6は、板状のステージ5の一方の板面である。本実施形態では、予熱手段2は、ステージ5を挟み込み可能な一対の加熱板7,7と、一対の加熱板7,7を加熱する図示しない加熱板用ヒーターとを有する。
【0014】
一対の加熱板7,7はそれぞれ、金属製で、平面視略四角形の板状である。一対の加熱板7,7の厚みはそれぞれ、熱容量を確保するために、10mm以上であるのが好ましい。一対の加熱板7,7は、板面が上下に向いた状態で、上下に配置される。一対の加熱板7,7は、図示しない駆動手段によって上下方向に移動可能とされている。従って、一対の加熱板7,7は、ステージ5を挟み込むことができる。一対の加熱板7,7にはそれぞれ、加熱板用ヒーターが内蔵されている。なお、加熱板用ヒーターは、加熱板7に外付けしてもよい。
【0015】
上下一対の加熱板7,7のうち、下側に位置する加熱板7は、ステージ5を搬送するベルトコンベア8内に上下動可能に配置される。ベルトコンベア8は、従来公知の構成である。具体的には、ベルトコンベア8は、左側に位置する左コンベア部9と、右側に位置する右コンベア部10とを有する。左コンベア部9は、軸心を左右方向に配置した2本の受動軸11,11と、軸心を左右方向に配置した図示しない駆動軸とを有する。2本の受動軸11,11は、前後方向に離隔して配置される。駆動軸は、2本の受動軸11,11の間の下方に配置される。このように配置された2本の受動軸11,11及び駆動軸には、ベルト12が掛け回されている。ベルト12は、図示しないテンションローラーによって引っ張り具合が調整されている。右コンベア部10は、軸心を左右方向に配置した2本の受動軸13,13と、軸心を左右方向に配置した図示しない駆動軸とを有する。2本の受動軸13,13は、前後方向に離隔して配置される。駆動軸は、2本の受動軸13,13の間の下方に配置される。このように配置された2本の受動軸13,13及び駆動軸には、ベルト14が掛け回されている。ベルト14は、図示しないテンションローラーによって引っ張り具合が調整されている。左コンベア部9の駆動軸及び右コンベア部10の駆動軸は、図示しないモーターに接続されている。従って、モーターを駆動させることで、ベルト12,14上のステージ5を搬送することができる。
【0016】
左コンベア部9と右コンベア部10との間の空間には、下側に位置する加熱板7が上下動可能に配置される。一方、上側に位置する加熱板7は、下側に位置する加熱板7と対面するようにして、ベルトコンベア8の上方に上下動可能に配置される。このような構成であるので、上下一対の加熱板7,7は、停止したベルトコンベア8に載置されたステージ5を挟み込むことができる。前述したように、一対の加熱板7,7は、加熱板用ヒーターによって加熱可能である。従って、加熱された一対の加熱板7,7でステージ5を挟み込むことで、ステージ5を予熱することができる。
【0017】
本実施形態では、ステージ5は、ベルトコンベア15によって予熱手段2に取り入れられる。ベルトコンベア15は、予熱手段2の前側に位置している。ベルトコンベア15は、従来公知の構成である。具体的には、ベルトコンベア15は、軸心を左右方向に配置した2本の受動軸16,16と、軸心を左右方向に配置した図示しない駆動軸とを有する。2本の受動軸16,16は、前後方向に離隔して配置される。駆動軸は、2本の受動軸16,16の間の下方に配置される。このように配置された2本の受動軸16,16及び駆動軸には、ベルト17が掛け回されている。ベルト17は、図示しないテンションローラーによって引っ張り具合が調整されている。ベルトコンベア15の駆動軸は、図示しないモーターに接続されている。従って、モーターを駆動させることで、ベルト17上のステージ5を搬送することができる。
【0018】
ベルトコンベア15と予熱手段2との間には、一対のローラー18,18及び一対のローラー19,19が配置されている。一対のローラー18,18は、上下に配置される。この際、上側に位置するローラー18と下側に位置するローラー18との間には、隙間が形成される。一対のローラー18,18はそれぞれ、軸方向が左右方向に沿うようにして配置される。一対のローラー18,18はそれぞれ、その軸まわりに回転可能である。一対のローラー19,19は、上下に配置される。この際、上側に位置するローラー19と下側に位置するローラー19との間には、隙間が形成される。一対のローラー19,19はそれぞれ、軸方向が左右方向に沿うようにして配置される。一対のローラー19,19はそれぞれ、その軸まわりに回転可能である。
【0019】
一対のローラー18,18は、一対のローラー19,19の前側に配置されている。このような構成であるので、ステージ5は、ベルトコンベア15によって、ベルトコンベア15から一対のローラー18,18の間及び一対のローラー19,19の間を通って、ベルトコンベア8に搬送される。ベルトコンベア8に搬送されたステージ5は、ベルトコンベア8によって、一対の加熱板7,7の間に搬送される。ステージ5が一対の加熱板7,7の間に配置されると、ベルトコンベア8が停止される。そして、ステージ5は、予熱手段2によって加熱される。予熱されたステージ5は、ベルトコンベア8によって、貼り付け手段3に供給される。
【0020】
予熱手段2が設けられたベルトコンベア8のステージ搬送方向先端側である後側には、貼り付け手段3が設けられる。貼り付け手段3は、予熱手段2によって予熱されたステージ5の載置面6に長尺の保持シート20を貼り付ける手段である。保持シート20は、加熱により粘着力が発現する。例えば、保持シート20は、40℃以上に加熱することで、粘着力が発現する。なお、保持シート20の粘着力が発現する温度は、40℃以上に限定されない。保持シート20の厚みは、約0.1mmであるが、これに限定されない。
【0021】
保持シート20は、保持シート20が有する粘着力によって、ステージ5の載置面6に貼り付けられる。従って、貼り付け手段3は、ステージ5の載置面6に、保持シート20を加熱しつつ貼り付ける。そのため、本実施形態では、貼り付け手段3は、一対の加熱ローラー21,21と、一対の加熱ローラー21,21を加熱する図示しないローラー用ヒーターとを有する。一対の加熱ローラー21,21は、上下に配置される。この際、上側に位置する加熱ローラー21と下側に位置する加熱ローラー21との間には、隙間が形成される。一対の加熱ローラー21,21はそれぞれ、金属製のローラー本体22と、ローラー本体22に設けられる筒状の弾性材23とを有する。ローラー本体22は、軸方向が左右方向に沿うようにして配置される。ローラー本体22は、その軸まわりに回転可能である。ローラー本体22には、モーターが接続されている。従って、モーターを駆動することで、ローラー本体22をその軸まわりに回転させることができる。ローラー本体22には、ローラー用ヒーターが内蔵されている。弾性材23は、円筒状で、ローラー本体22の外周面を覆うようにして、ローラー本体22に回転不能に設けられる。弾性材23は、例えばゴム製である。
【0022】
上下一対の加熱ローラー21,21の間の隙間には、ベルトコンベア8によって搬送されたステージ5が供給される。ステージ5の載置面6には、一対の加熱ローラー21,21が回転することで、一対の加熱ローラー21,21間の隙間にロール24を介して供給された長尺の保持シート20が接触される。このように一対の加熱ローラー21,21は、ステージ5と保持シート20とを挟み込んで載置面6に保持シート20を接触させることができる。前述したように、一対の加熱ローラー21,21は、ローラー用ヒーターによって加熱可能である。従って、ローラー用ヒーターによって加熱された一対の加熱ローラー21,21でステージ5と保持シート20とを挟み込むことで、保持シート20に粘着力を発現させて、ステージ5の載置面6に保持シート20を貼り付けることができる。保持シート20が貼り付けられたステージ5は、一対の加熱ローラー21,21の回転によって、一対の加熱ローラー21,21の間の隙間から取り出される。
【0023】
本実施形態では、保持シート20が貼り付けられたステージ5は、ベルトコンベア25に取り出される。ベルトコンベア25は、貼り付け手段3の後側に位置している。ベルトコンベア25は、従来公知の構成である。具体的には、ベルトコンベア25は、軸心を左右方向に配置した2本の受動軸26,26と、軸心を左右方向に配置した図示しない駆動軸とを有する。2本の受動軸26,26は、前後方向に離隔して配置される。駆動軸は、2本の受動軸26,26の間の下方に配置される。このように配置された2本の受動軸26,26及び駆動軸には、ベルト27が掛け回されている。ベルト27は、図示しないテンションローラーによって引っ張り具合が調整されている。ベルトコンベア25の駆動軸は、図示しないモーターに接続されている。従って、モーターを駆動させることで、ベルト27上のステージ5を搬送することができる。
【0024】
ベルトコンベア25と貼り付け手段3との間には、一対のローラー28,28が配置されている。一対のローラー28,28は、上下に配置される。この際、上側に位置するローラー28と下側に位置するローラー28との間には、隙間が形成される。一対のローラー28,28はそれぞれ、軸方向が左右方向に沿うようにして配置される。一対のローラー28,28はそれぞれ、その軸まわりに回転可能である。このような構成であるので、保持シート20が貼り付けられたステージ5は、貼り付け手段3から一対のローラー28,28の間を通って、ベルトコンベア25に搬送される。
【0025】
ステージ5がベルトコンベア25に搬送された後、長尺の保持シート20からステージ5の載置面6に貼り付けられた部分が切断手段4によって切断される。切断手段4は、貼り付け手段3の後側に配置される。具体的には、切断手段4は、貼り付け手段3と一対のローラー28,28との間に配置される。切断手段4は、保持シート20を切断するカット刃29を有している。カット刃29は、上下動可能である。カット刃29は、モーターに接続されている。従って、モーターを駆動させることで、カット刃29を上下動させることができる。このような構成であるので、ステージ5が貼り付け手段3を通過した後、カット刃29を下方に移動させて保持シート20に押し付けることで、保持シート20を切断することができる。なお、本実施形態では、カット刃29の押切によって保持シート20が切断されたが、これに限定されない。例えば、カット刃の回転によって保持シート20を切断してもよいし、カット刃の引き切りによって保持シート20を切断してもよい。
【0026】
保持シート20の切断後、保持シート20が貼り付けられたステージ5は、ベルトコンベア25によって、ベルトコンベア25の前側からベルトコンベア25の後側に搬送される。ベルトコンベア25の後側に搬送されたステージ5は、後述する剥離装置に設置される。
【0027】
図3は、剥離装置の概略構成を示す右側面図である。
図4は、キャリアフィルムから剥離したセラミックグリーンシートをステージに積層する状態を示す説明図である。剥離装置30は、セラミックグリーンシート31をキャリアフィルム32から剥離する装置である。剥離装置30は、カットステージ33、カット刃34及び剥離ヘッド35を備える。
【0028】
カットステージ33には、複合シート36が保持される。複合シート36は、キャリアフィルム32と、キャリアフィルム32上に形成されたセラミックグリーンシート31とを有する。複合シート36は、カットステージ33上にキャリアフィルム32が接触した状態で、カットステージ33に保持される。
【0029】
カット刃34は、カットステージ33の上方に配置される。カット刃34は、カットステージ33上に保持された複合シート36に向かって移動することによって、キャリアフィルム32上のセラミックグリーンシート31をカットすることができる。
【0030】
剥離ヘッド35は、複合シート36の上方に配置される。剥離ヘッド35は、カット刃34によりカットされたセラミックグリーンシート31を吸引保持することができる。剥離ヘッド35の下方には、保持シート20が貼り付けられたステージ5が設置される。
【0031】
また、剥離装置30は、搬送ロール37及び剥離ロール38を備える。搬送ロール37は、複合シート36を搬送することができる。本実施形態では、搬送ロール37は、間欠的に複合シート36を搬送することができるように構成されている。剥離ロール38は、剥離ヘッド35に保持されたセラミックグリーンシート31からキャリアフィルム32を剥離させることができる。そのため、剥離ロール38は、複合シート36の搬送方向とは逆の方向に移動させることができるように構成されている。
【0032】
次に、剥離装置30を用いて電子部品を製造する方法について説明する。ここでは、電子部品の一例である積層セラミックコンデンサを製造する場合について説明する。なお、電子部品は、積層セラミックコンデンサに限定されない。
【0033】
積層セラミックコンデンサを製造する際には、まず、キャリアフィルム32上に、誘電体セラミック粉末、バインダ及び溶剤を含むスラリーをシート状に成形する。これにより、キャリアフィルム32上にセラミックグリーンシート31が保持された複合シート36を作製することができる。複合シート36の作製後、セラミックグリーンシート31上に、スクリーン印刷などにより、所定のパターンで内部電極形成用種導電性ペーストを印刷し、内部電極のパターンを形成する。そして、剥離装置30を用いて、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシート31や内部電極パターンが形成されていないセラミックグリーンシート31を積層する。
【0034】
具体的には、まず、搬送ロール37によって、セラミックグリーンシート31の所定領域がカットステージ33上に配置されるように、複合シート36を搬送する。セラミックグリーンシート31の所定領域がカットステージ33上に配置されると、搬送ロール37を一時的に停止して、複合シート36の搬送を停止する。搬送ロール37の停止後、カット刃34を下方に移動させて、キャリアフィルム32上のセラミックグリーンシート31をカットする。そして、搬送ロール37によって、切断されたセラミックグリーンシート31が剥離ヘッド35の下方に配置されるように、複合シート36を搬送する。切断されたセラミックグリーンシート31が剥離ヘッド35の下方に配置されると、剥離ヘッド35を下方に移動させて、切断されたセラミックグリーンシート31を剥離ヘッド35で吸引する。切断されたセラミックグリーンシート31を剥離ヘッド35で吸引した状態で、剥離ロール38を複合シート36の搬送方向とは逆方向に移動させる。これにより、切断されたセラミックグリーンシート31からキャリアフィルム32を剥離することができる。その後、剥離ヘッド35を下方に移動させて、ステージ5の保持シート20上にセラミックグリーンシート31を積層する。この作業を複数回繰り返して、ステージ5の保持シート20上に複数のセラミックグリーンシート31を積層する。これにより、複数のセラミックグリーンシート31が積層された積層ブロックを形成することができる。このようにして、剥離装置30は、積層ブロックを作製する。
【0035】
積層ブロックの形成後、積層ブロックから複数の積層チップを切り出す。そして、積層チップを焼成してセラミック積層体を形成する。セラミック積層体の形成後、セラミック積層体の外表面に導電性ペーストを塗布して、セラミック積層体に導電性ペースト層を形成する。導電性ペーストの形成後、導電性ペースト層を焼成して、セラミック積層体に外部電極を形成する。これにより、以下のような構成の積層セラミックコンデンサを得ることができる。なお、積層ブロックから積層チップを切り出した後、積層チップに導電性ペースト層を形成し、積層チップ及び導電性ペースト層を焼成して、セラミック積層体を有する積層セラミックコンデンサを製造してもよい。
【0036】
図5及び
図6は、電子部品である積層セラミックコンデンサを示す図であり、
図5は概略斜視図、
図6は
図5のA-A断面図である。積層セラミックコンデンサ39のセラミック積層体40の内部には、隣接する内部電極41及び内部電極42の一部同士がセラミック層を介して対向するように、内部電極41及び内部電極42が配置される。セラミック積層体40の一方の端面には、内部電極41に接続される外部電極43が形成される。セラミック積層体40の他方の端面には、内部電極42に接続される外部電極44が形成される。
【0037】
このような構成の積層セラミックコンデンサ39は、上述した製造方法により作製される。この際、セラミックグリーンシート31が積層されるステージ5には、保持シート20が貼り付けられる。以下では、電子部品の製造方法において、ステージ5に保持シート20を貼り付ける手順について説明する。なお、本実施形態の電子部品の製造方法では、上述した製造装置1が用いられる。
【0038】
本実施形態の電子部品の製造方法は、複数のセラミックグリーンシート31を積層したセラミック積層体40を有する電子部品の製造方法である。本実施形態では、予熱工程、貼り付け工程及び切断工程が順次に実行される。なお、予熱工程の前には、ステージ5及び保持シート20が準備される。具体的には、ステージ5は、ベルトコンベア15に載せられる。保持シート20は、貼り付け手段3によってステージ5に貼り付けられるように、製造装置1にセットされる。このようにしてステージ5及び保持シート20を準備する工程後、ステージ5は、ベルトコンベア15により隣接するベルトコンベア8に搬送される。そして、ステージ5は、ベルトコンベア8によって、一対の加熱板7,7の間に配置される。
【0039】
予熱工程は、複数のセラミックグリーンシート31が積層される載置面6を有するステージ5を予熱手段2によって予熱する工程である。予熱工程では、加熱板用ヒーターで加熱された一対の加熱板7,7でステージ5を挟み込むことで、ステージ5が加熱される。予熱手段2の一対の加熱板7,7の温度は、50℃以上70℃以下であるのが好ましい。予熱工程後、ステージ5は、ベルトコンベア8によって一対の加熱ローラー21,21の間に搬送される。
【0040】
貼り付け工程は、予熱工程において予熱されたステージ5の載置面6に、加熱により粘着力が発現する長尺の保持シート20を貼り付け手段3によって加熱しつつ貼り付ける工程である。貼り付け工程では、ローラー用ヒーターによって加熱された一対の加熱ローラー21,21でステージ5と保持シート20とを挟み込むことで、保持シート20に粘着力を発現させて、ステージ5の載置面6に保持シート20が貼り付けられる。貼り付け手段3の一対の加熱ローラー21,21の温度は、好ましくは40℃以上90℃以下、より好ましくは50℃以上70℃以下である。貼り付け手段3の温度が40℃より低い場合には、保持シート20の粘着力を発現させることができないおそれがある。貼り付け手段3の温度が90℃より高い場合には、板状のステージ5が反ってしまうおそれがある。
【0041】
貼り付け工程後、ステージ5は、一対の加熱ローラー21,21の回転によって、一対の加熱ローラー21,21の間の隙間からベルトコンベア25に取り出される。ステージ5がベルトコンベア25に取り出された際、後続のステージ5には貼り付け手段3によって保持シート20が貼り付けられる。従って、ベルトコンベア25に取り出されたステージ5に貼り付けられた保持シート20と、後続のステージ5に貼り付けられた保持シート20とは、連続している。
【0042】
切断工程は、長尺の保持シート20からステージ5の載置面6に貼り付けられた部分を切断手段4によって切断する工程である。切断工程では、ステージ5が貼り付け手段3を通過した後、カット刃29を下方に移動させて保持シート20に押し付けることで、保持シート20が切断される。これにより、長尺の保持シート20は、ベルトコンベア25に取り出されたステージ5と後続のステージ5との間で切断される。なお、後続のステージ5がない場合には、ステージ5は、ベルトコンベア25に取り出されない。
【0043】
切断工程後、保持シート20が貼り付けられたステージ5は、ベルトコンベア25によって、ベルトコンベア25の前側からベルトコンベア25の後側に搬送される。本実施形態では、複数の連続するステージ5に保持シート20が貼り付けられる。ベルトコンベア25の後側に搬送されたステージ5は、剥離装置30に設置される。そして、剥離装置30は、ステージ5の保持シート20上に、複数のセラミックグリーンシート31を積層する。
【0044】
本実施形態の場合、加熱により粘着力が発現する保持シート20は、予熱されたステージ5に、加熱しつつ貼り付けられる。従って、保持シート20上にセラミックグリーンシート31が積層される際、セラミックグリーンシート31は、保持シート20の粘着力によって、ステージ5に保持される。そのため、セラミックグリーンシート31の積層時において、セラミックグリーンシート31がステージ5上をずれ動くことが防止される。そして、保持シート20の温度が下がると、保持シート20の粘着力が失われるので、積層された複数のセラミックグリーンシート31をステージ5から容易に外すことができる。このように本実施形態によれば、簡易な構成で、ステージ5上にセラミックグリーンシート31を着脱可能に保持することができる。
【0045】
本実施形態の場合、予熱手段2は、一対の加熱板7,7と、一対の加熱板7,7を加熱する加熱板用ヒーターとを有する。貼り付け手段3は、一対の加熱ローラー21,21と、一対の加熱ローラー21,21を加熱するローラー用ヒーターとを有する。従って、本実施形態の電子部品の製造装置1によれば、より簡易な構成の装置とすることができる。本実施形態の場合、一対の加熱板7,7の厚みはそれぞれ、10mm以上である。従って、本実施形態の電子部品の製造装置1によれば、加熱板7の熱容量が高いため、ステージ5に熱が奪われても、ステージ5を一様に加熱することができる。
【0046】
本実施形態の場合、加熱ローラー21は、ローラー本体22及び弾性材23を備える。従って、一対の加熱ローラー21,21による加熱をムラなく図ることができる。本実施形態の場合、一対の加熱板7,7でステージ5を挟み込むことで、ステージ5を予熱することができる。従って、板状のステージ5の反りを防止することができる。本実施形態の場合、ステージ5が予め予熱されるので、貼り付け手段3によってステージ5に保持シート20を貼り付ける際に、ステージ5に保持シート20を貼り付けムラなく一様に貼り付けることができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【0048】
例えば、予熱手段2、貼り付け手段3及び切断手段4は、前記実施形態の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0049】
1 電子部品の製造装置
2 予熱手段
3 貼り付け手段
4 切断手段
5 ステージ
6 載置面
7 加熱板
20 保持シート
21 加熱ローラー
22 ローラー本体
23 弾性材
31 セラミックグリーンシート
40 セラミック積層体