(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20250701BHJP
B60K 6/445 20071001ALI20250701BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20250701BHJP
B60W 20/17 20160101ALI20250701BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20250701BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20250701BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20250701BHJP
F02P 5/145 20060101ALI20250701BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20250701BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/445 ZHV
B60K6/36
B60W20/17
B60W10/08 900
F01N3/20 D
F02D45/00 364A
F02P5/145 E
B60L50/16
(21)【出願番号】P 2022115073
(22)【出願日】2022-07-19
【審査請求日】2024-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克也
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119377(JP,A)
【文献】特開2019-131117(JP,A)
【文献】特開2010-241170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
F01N 3/20
F02D 45/00
F02P 5/145
B60L 50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結された電動機と、前記動力伝達経路における前記エンジンと前記電動機との間に設けられたダンパと、を備えたハイブリッド車両の、制御装置であって、
前記エンジンの回転停止状態で前記電動機により前記ダンパにトルクを加えて前記ダンパの捩り角を計測することによって、前記捩り角の増加時と減少時との前記ダンパに入力されるトルクの差であるヒステリシストルクを取得し、
前記ヒステリシストルクが大きい場合には、小さい場合に比べて、前記エンジンの排気管に設けられた触媒の暖機時における前記エンジンの点火時期の遅角量を大きく設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと電動機との間の動力伝達経路に設けられたダンパを備えたハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結された電動機と、前記動力伝達経路における前記エンジンと前記電動機との間に設けられたダンパと、を備えたハイブリッド車両の制御装置が良く知られている。例えば、特許文献1に記載された車両用制御装置がそれである。この特許文献1には、エンジンのクランク軸の回転をロックした状態で、電動機の力行制御によりダンパにトルクを加えてダンパの捩り角を計測することによって、捩り角の増加時と減少時とのダンパに入力されるトルクの差であるヒステリシストルクを取得することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジン制御において、エンジンの排気管に設けられた触媒の暖機時には、触媒の暖機が完了している通常運転時に比べて、エンジンの点火時期を遅角する技術も良く知られている。触媒の暖機時における遅角量が大きい程、触媒の暖機が促進される。しかしながら、遅角量が大きい程、エンジンの燃焼が不安定となり、例えばエンジンによるNVの強制力が大きくされ易い。その為、触媒の暖機時における遅角量は、例えばNVが許容されるエンジンによるNVの強制力を考慮して予め定められる。「NV」は、車両で生じる騒音や振動の総称であり、車両における騒音及び振動のうちの少なくとも一方を表している。ここで、ダンパは、動力伝達系に伝達される強制力を減衰する機能を有している。触媒の暖機促進とNVの抑制とを両立させるという観点では改善の余地がある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、触媒の暖機促進とNVの抑制との両立を図ることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の要旨とするところは、(a)エンジンと、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結された電動機と、前記動力伝達経路における前記エンジンと前記電動機との間に設けられたダンパと、を備えたハイブリッド車両の、制御装置であって、(b)前記エンジンの回転停止状態で前記電動機により前記ダンパにトルクを加えて前記ダンパの捩り角を計測することによって、前記捩り角の増加時と減少時との前記ダンパに入力されるトルクの差であるヒステリシストルクを取得し、(c)前記ヒステリシストルクが大きい場合には、小さい場合に比べて、前記エンジンの排気管に設けられた触媒の暖機時における前記エンジンの点火時期の遅角量を大きく設定することにある。
【発明の効果】
【0007】
前記第1の発明によれば、エンジンの回転停止状態で取得されたヒステリシストルクが大きい場合には、小さい場合に比べて、触媒の暖機時におけるエンジンの点火時期の遅角量が大きく設定されるので、ヒステリシストルクが大きい程、触媒が暖機され易くされる。点火時期の遅角量が大きく設定されてエンジンによるNVの強制力が大きくされる際は、大きなヒステリシストルクによって動力伝達系に伝達される強制力が減衰され易くされているので、NVが抑制され易くされる。よって、触媒の暖機促進とNVの抑制との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明が適用される車両の概略構成を説明する図であると共に、車両における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。
【
図2】(a)は、ヒステリシストルク毎の最大点火遅角量の一例を説明する図であり、(b)は、ヒステリシストルクと遅角量制限値の緩和代との関係の一例を示す図である。
【
図3】電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御機能の要部を説明する図である。車両10は、動力源として機能する、エンジン12、第1電動機MG1、及び第2電動機MG2を備えたハイブリッド車両である。車両10は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路PTにおいて、エンジン12側から順に、ダンパ16、差動機構18、出力歯車20、大径歯車22、噛合式クラッチ24、小径歯車26、ディファレンシャルギヤ28、及び左右一対のドライブシャフト30が連結されている。車両10は、点火装置等を含むエンジン制御装置50、インバータ52、エンジン12の排気管12bに設けられた触媒54、及び電子制御装置70などを備えている。
【0011】
エンジン12は、公知の内燃機関である。エンジン12は、電子制御装置70によってエンジン制御装置50が制御されることによりエンジン12のトルクであるエンジントルクTeが制御される。
【0012】
第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、例えば発動機としての機能及び発電機としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、各々、インバータ52を介して不図示のバッテリと接続されている。第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、電子制御装置70によってインバータ52が制御されることにより、第1電動機MG1のトルク[Nm]であるMG1トルクTmg1及び第2電動機MG2のトルクであるMG2トルクTmg2がそれぞれ制御される。
【0013】
ダンパ16は、エンジン12のトルク変動を吸収する装置である。ダンパ16は、エンジン12のクランク軸12aに連結された第1回転要素16aと、入力軸32を介して差動機構18に連結された第2回転要素16bと、を備えている。つまり、ダンパ16は、動力伝達経路PTにおけるエンジン12と第1電動機MG1との間に設けられている。第1回転要素16aと第2回転要素16bとの間には、例えば複数種類のスプリング16c及び摩擦機構16dが介在させられている。ダンパ16の捩り角φ[rad]の変化に対するダンパ16に入力されるトルクである入力トルクTinの変化に対応する剛性値(ばね定数)が段階的に変化させられると共に、捩り角φの増加時と減少時とで入力トルクTinについて所定のヒステリシス(履歴現象ともいう)が付与されるようになっている。
【0014】
差動機構18は、例えばシングルピニオン型の遊星歯車装置であり、サンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRに、第1電動機MG1、入力軸32、及び出力歯車20がそれぞれ連結されている。第1電動機MG1は、差動機構18に動力伝達可能に接続されており、動力伝達経路PTに動力伝達可能に連結された電動機である。
【0015】
大径歯車22は、差動機構18の出力回転部材である出力歯車20及び第2電動機MG2の出力回転部材である第2出力歯車34とそれぞれ噛み合わされている。大径歯車22と小径歯車26との間には、その間の動力伝達を断接可能な噛合式クラッチ24が設けられている。小径歯車26は、ディファレンシャルギヤ28のデフリングギヤ28aと噛み合わされている。
【0016】
車両10は、パーキングギヤ36を備えている。パーキングギヤ36は、小径歯車26等を介して駆動輪14に連結されており、駆動輪14と伴に回転する。パーキングギヤ36は、不図示の公知のパーキングロック機構により回転不能に固定(ロック)される。
【0017】
車両10は、噛合式ブレーキ38を備えている。クランク軸12aは、噛合式ブレーキ38を介して非回転部材であるハウジング40に連結されている。クランク軸12aは、噛合式ブレーキ38が係合状態とされることにより回転不能にロックされる。
【0018】
車両10は、例えば不図示のシフト操作装置の操作により、「Pレンジ(=駐車レンジ)」、「Rレンジ(=後進走行レンジ)」、「Nレンジ(=ニュートラルレンジ)」、及び「Dレンジ(=前進走行レンジ)」の各シフトレンジが選択的に切り替えられる。
【0019】
電子制御装置70は、車両10内の各部を制御する制御装置を含むコントローラであって、例えばCPUがRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行う所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。
【0020】
電子制御装置70には、車両10に備えられた各種センサ等(例えば車速センサ60、入力軸回転センサ62、エンジン回転速度センサ64、触媒温度センサ66など)による検出値に基づく各種信号等(例えば車速V[km/h]、入力軸32の回転位置を表す捩り角φ、エンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Ne[rpm]、触媒54の温度である触媒温度THcなど)が、それぞれ入力される。電子制御装置70からは、車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置50、インバータ52など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御する為のエンジン制御信号Se、第1電動機MG1及び第2電動機MG2の各々を制御する為の電動機制御信号Smgなど)が、それぞれ出力される。
【0021】
電子制御装置70は、特性計測部72、及び暖機制御部74を機能的に備えている。
【0022】
特性計測部72は、ダンパ16の特性であるダンパ特性を計測できる車両状態であるか否かを判定する。ダンパ特性を計測できる車両状態は、例えば車速Vがゼロ且つシフトレンジがPレンジ且つエンジン12が停止状態であって、エンジン12の運転が必要ではない状態である。計測タイミングは、車両点検時、所定の走行距離或いは走行時間毎など、種々の態様が可能である。
【0023】
特性計測部72は、ダンパ特性を計測できる車両状態であると判定すると、ダンパ特性を計測する。例えば、特性計測部72は、噛合式ブレーキ38を係合させてクランク軸12aを回転不能にロックし、噛合式クラッチ24を係合状態にし、且つ第1電動機MG1を力行制御してダンパ16にトルクを加えてレゾルバ等の入力軸回転センサ62により捩り角φを計測する。捩り角φの計測の際にダンパ16に加えられるMG1トルクTmg1は、入力トルクTinに相当する。第1電動機MG1とダンパ16との間には差動機構18が設けられている為、MG1トルクTmg1と入力軸32上におけるトルクである入力トルクTinとは差動機構18の変速比分だけ大きさが異なるが、便宜上、同一として取り扱う。
【0024】
特性計測部72は、ダンパ特性として、捩り角φと入力トルクTinとの関係を取得し、その関係に基づいてヒステリシストルクThys[Nm]を取得する。ヒステリシストルクThysは、捩り角φの増加時と減少時との入力トルクTinの差である(後述する
図3中の「計測結果」参照)。このように、特性計測部72は、エンジン12の回転停止状態で、第1電動機MG1によりダンパ16にトルクを加えてダンパ16の捩り角φを計測することによって、ヒステリシストルクThysを取得する。
【0025】
暖機制御部74は、触媒54を暖機するようにエンジン12を制御する。例えば、暖機制御部74は、触媒温度THcが所定温度THcf未満である場合には、点火時期を所定遅角量θf分だけ遅角するようにエンジン12を制御する。所定温度THcfは、触媒54の暖機が必要となる予め定められた閾値である。
【0026】
触媒54の暖機時における点火時期の遅角量である点火遅角量θは、触媒54の暖機を行っていない通常運転時、つまり触媒54の暖機が完了している通常運転時における点火時期に対して遅角した量[deg]である。点火遅角量θが大きい程、触媒54の暖機が促進されるが、エンジン12の燃焼が不安定となり、エンジン12によるNVの強制力が大きくされ易い。
【0027】
エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路PTや第2電動機MG2と駆動輪14との間の動力伝達経路では、相互に噛み合う歯車間の噛み合わせ部分にガタつまりバックラッシュがある。上記NVは、例えばMG2トルクTmg2がゼロ又はゼロ近傍付近とされているときに、歯面同士が相互に押し付け合う力が弱くされる噛み合わせ部分にエンジントルクTeの爆発変動が伝達されることによって、歯面同士が相互に衝突と離間を繰り返して互いに打ち合うことで発生する、所謂ガラ音と称される歯打ち音(=ガタ打ち音)である。又は、上記NVは、例えば動力伝達経路PTにおける歯車間の噛み合わせ部分において、歯面同士が相互に押し付け合う力よりも強い力のエンジン12の爆発変動が伝達されるときに、その爆発変動を強制力とする駆動捩り系共振による変動増幅によって発生する歯打ち音である。又は、上記NVは、例えばエンジン12の爆発変動が強制力となり、特定のエンジン回転速度Neで発生する動力伝達経路PTの共振により振動が増幅される場合に、増幅された爆発変動がドライブシャフト30等を介してサスペンションへ伝達され、これにより車体が振動して車内に発生するこもり音である。
【0028】
触媒54の暖機時における所定遅角量θfは、例えばNVが許容されるエンジン12によるNVの強制力を考慮して予め定められる。つまり、所定遅角量θfは、NVが許容される程度となるように大きさが制限される。一方で、ダンパ16は、動力伝達経路PTに伝達されるエンジン12の強制力を減衰する機能を有している。その為、エンジン12によるNVの強制力のみを考慮して点火遅角量θが制限された遅角量制限値θlimにて一律に設定された所定遅角量θfは、必ずしも好適な値となっているとは限らない。
【0029】
エンジン12によるNVの強制力(トルクも同意)の絶対値は、摩擦力で発生させられているヒステリシストルクThysよりも遙かに大きい。ヒステリシストルクThysが大きい程、NVの強制力は減衰され易くされるので、動力伝達経路PTに伝達されるNVの強制力は小さくされ、NVが抑制され易くされる。
【0030】
例えば、
図2の(a)に示すように、点火遅角量θが大きい程、動力伝達経路PTに伝達される歯打ち音の強制力は大きくされる一方で、ヒステリシストルクThysが大きい程、動力伝達経路PTに伝達される歯打ち音の強制力は小さくされ、歯打ち音が小さくされる。よって、歯打ち音が許容される強制力以下となる点火遅角量θは、ヒステリシストルクThysが大きい程、大きくされる。つまり、各ヒステリシストルクThys毎の設定できる最大点火遅角量θmaxは、ヒステリシストルクThysが大きい程、大きくされる(図中のθ1、θ2、θ3参照)。最大点火遅角量θmaxを大きくすることは、遅角量制限値θlimの緩和代を大きくすることに相当する。従って、
図2の(b)に示すように、ヒステリシストルクThysと遅角量制限値θlimの緩和代との関係が予め定められる。
図2の(b)において、遅角量制限値θlimの緩和代は、ヒステリシストルクThysが大きい程、大きな値に設定される。遅角量制限値θlimの緩和代は、例えば遅角量制限の緩さに相当し、又、点火遅角量θの大きさに相当する。又、遅角量制限値θlimの緩和代は、所定遅角量θfを遅角量制限値θlimに対して大きくするように補正する為のエンジン制御補正量Δθに相当する。つまり、エンジン制御補正量Δθは、ヒステリシストルクThysが大きい程、大きな値に設定される(後述する
図3中の「制御補正量マップ」参照)。
【0031】
これにより、ヒステリシストルクThysが大きければ、遅角量制限値θlimが緩和されるので、NV対策の緩和を行うことができ、触媒54の暖機を促進することができる。このように、暖機制御部74は、ヒステリシストルクThysが大きい場合には、小さい場合に比べて、触媒54の暖機時におけるエンジン12の点火遅角量θを大きく設定する。
【0032】
図3は、電子制御装置70の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、触媒54の暖機促進とNVの抑制との両立を図る為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。
【0033】
図3において、先ず、特性計測部72の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、車速Vがゼロであるか否かが判定される。このS10の判断が肯定される場合は特性計測部72の機能に対応するS20において、シフトレンジがPレンジであるか否かが判定される。Pレンジは、不図示のパーキングロック機構によりパーキングギヤ36がロックされたシフトレンジである。このS20の判断が肯定される場合は特性計測部72の機能に対応するS30において、エンジン12が停止状態であるか否か、つまりエンジン回転速度Neがゼロであるか否かが判定される。このS30の判断が肯定される場合は特性計測部72の機能に対応するS40において、エンジン12の運転が必要な状態であるか否かが判定される。エンジン12の運転が必要な状態は、例えば触媒54の暖機が必要な状態、不図示のバッテリへの充電が必要な状態などである。このS40の判断が否定される場合は特性計測部72の機能に対応するS50において、ダンパ特性の計測が実施(開始)される。一方で、上記S10、上記S20、及び上記S30のうちの何れかの判断が否定される場合は、又は、上記S40の判断が肯定される場合は、上記S10に戻される。上記S50に次いで、特性計測部72の機能に対応するS60において、シフトレンジがPレンジ以外であるか、又は、車速Vがゼロ以外であるか、又は、エンジン12の運転が必要な状態であるか、否かが判定される。このS60の判断が肯定される場合は特性計測部72の機能に対応するS70において、ダンパ特性の計測が中断させられる。上記S60の判断が否定される場合は特性計測部72の機能に対応するS80において、ダンパ特性の計測が終了したか否かが判定される。上記S70に次いで、又は、上記S80の判断が否定される場合は、上記S10に戻される。上記S80の判断が肯定される場合は特性計測部72及び暖機制御部74の機能に対応するS90において、ダンパ特性の計測結果(図中の「計測結果」参照)に基づいてヒステリシストルクThysが取得される。又、予め定められたヒステリシストルクThysとエンジン制御補正量Δθとの関係(図中の「制御補正量マップ」参照)を用いて、ヒステリシストルクThysに応じたエンジン制御補正量Δθが算出(選定)され、触媒54の暖機に関するエンジン12の制御におけるプログラムが書き替えられる。例えば所定遅角量θfが書き替えられる。
【0034】
上述のように、本実施例によれば、ヒステリシストルクThysが大きい場合には、小さい場合に比べて、触媒54の暖機時における点火遅角量θが大きく設定されるので、ヒステリシストルクThysが大きい程、触媒54が暖機され易くされる。点火遅角量θが大きく設定されてエンジン12によるNVの強制力が大きくされる際は、大きなヒステリシストルクThysによって動力伝達経路PTに伝達される強制力が減衰され易くされているので、NVが抑制され易くされる。よって、触媒54の暖機促進とNVの抑制との両立を図ることができる。又、ダンパ16の個体差や経年変化にも対応可能である。
【0035】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。例えば、エンジンと電動機との間に設けられたダンパを備えたハイブリッド車両であれば、本発明を適用することができる。尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
10:車両(ハイブリッド車両) 12:エンジン 12b:排気管 14:駆動輪 16:ダンパ 54:触媒 70:電子制御装置(制御装置) MG1:第1電動機(電動機) PT:動力伝達経路