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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】構造物搭載構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/06 20060101AFI20250701BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20250701BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
B60R7/06 Z
B60R21/205
B60R11/02 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022115728
(22)【出願日】2022-07-20
(65)【公開番号】P2024013559
(43)【公開日】2024-02-01
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根岸 俊充
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-080920(JP,U)
【文献】特開2019-127102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0101554(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/06
11/02
21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の助手席側のインパネ上に構造物を搭載するための構造物搭載構造であって、
前記構造物の後端は助手席用エアバッグ装置のエアバッグの展開領域に重なって位置し、
前記エアバッグの展開を妨げないよう前記構造物を移動させる移動機構であって、膨張展開した前記エアバッグの展開荷重により前記構造物を移動させる移動機構を備え、
前記移動機構は、
前記構造物と接合している上接合部と、
前記インパネと接合している下接合部と、を有し、
前記下接合部は、前記エアバッグの前記展開領域に重ならないように位置していること、
を特徴とする構造物搭載構造。
【請求項2】
請求項に記載の構造物搭載構造であって、
前記移動機構は、
前記構造物を移動させるように構成される可動部と、
前記可動部を固定する固定部と、を有し、
前記固定部は、前記エアバッグの展開荷重により固定が解除されるように構成されていること
を特徴とした構造物搭載構造。
【請求項3】
請求項に記載の構造物搭載構造であって、
前記可動部は、車両幅方向を軸線として回動可能なように構成され、
前記固定部は、前記可動部よりも車両後方側に備えられ、前記可動部が回動しないように固定するよう構成され、
前記可動部は、前記構造物及び前記上接合部の少なくとも一方が前記エアバッグの展開荷重を受けることで、前記構造物を車両上方に回動するよう構成されていること
を特徴とした構造物搭載構造。
【請求項4】
請求項に記載の構造物搭載構造であって、
前記可動部は、車両前後方向にスライド可能となるよう構成され、
前記固定部は、前記可動部がスライドしないように固定するよう構成され、
前記可動部は、前記構造物及び前記上接合部の少なくとも一方が前記エアバッグの展開荷重を受けることで、前記構造物を車両前方に移動するよう構成されていること
を特徴とした構造物搭載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の助手席側のインストルメントパネル上に搭載される構造物の下部に備えられた構造物搭載構造に関し、特にエアバッグ展開時に好適に移動することで、エアバッグが展開するスペースを確保することで乗員への入力を低減することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に搭載されるエアバッグ装置として、エアバッグ及びインフレータからなるエアバッグモジュールが助手席前方のインストルメントパネル(以下、「インパネ」と称する。)の内側に配設されて構成され、エアバッグが後ろ斜め上方に乗員に向かって膨張するミッドマウント方式の助手席エアバッグ装置において、エアバッグの展開時にエアバッグの下半部の展開を規制する展開規制体を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この構成によって、エアバッグの下半部の展開を規制する展開規制体をミッドマウント方式のエアバッグモジュールに設けたため、エアバッグが車両上方に向かって膨張しウインドシールドに沿って展開されるハイマウント方式に比べてエアバッグの容量が小さくて済むのは勿論のこと、展開規制体の規制によってアウトオブポジションの乗員に向かってまともにエアバッグが膨張することはなく、従来のようなアウトオブポジションの乗員への衝撃が防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-127325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今の自動車において、インパネ上に棚やモニターなどの構造物を搭載している自動車が増えている。特許文献1の構成において、インパネ上に構造物が存在する場合を想定すると、リッド17aが十分に開かないままエアバッグが展開することとなる。その場合、エアバッグは乗員に向かって展開することになり、エアバッグから乗員への入力が増加する恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の構造物搭載構造は、車両の助手席側のインパネ上に構造物を搭載するためのものであって、前記構造物の後端は助手席用エアバッグ装置のエアバッグの展開領域に重なって位置し、前記エアバッグの展開を妨げないよう前記構造物を移動させる移動機構であって、膨張展開した前記エアバッグの展開荷重により前記構造物を移動させる移動機構を備え、前記移動機構は、前記構造物と接合している上接合部と、前記インパネと接合している下接合部と、を有し、前記下接合部は、前記エアバッグの前記展開領域に重ならないように位置していること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明におけるインパネ上に構造物を搭載するための構造物搭載構造によれば、エアバッグ展開時に構造物を好適に移動させることで、エアバッグが展開するスペースを確保することで乗員への入力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る構造物搭載構造を備えた構造物を有する車両の車室内を示す概略構成である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る構造物搭載構造を示す概略構成である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る構造物搭載構造を示す概略構成である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る構造物搭載構造を示す概略構成である。
図5】本発明の構造物搭載構造を有さない構造物がインパネ上に設置されている車両のエアバッグ装置の展開時の概略図を示す。
図6】本発明の第1の実施形態に係る構造物搭載構造を備えた構造物を有する車両のエアバッグ装置の展開時の概略図を示す。
図7】本発明の第2の実施形態に係る構造物搭載構造を備えた構造物を有する車両の車室内を示す概略構成である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る構造物搭載構造を示す概略構成である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る構造物搭載構造を示す概略構成である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る構造物搭載構造を備えた構造物を有する車両のエアバッグ装置の展開時の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の構造物搭載構造の各実施形態について、図1図10を参照して説明する。なお、各図において示される矢印Rrは車両前後方向後側、矢印UPは車両上下方向上側、矢印OUT(RH)は車両幅方向右側をそれぞれ示す。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について、図1図4を参照して説明する。
【0011】
図1において、エアバッグモジュール1は、内部に格納されたエアバッグ2と、所定以上の加速度が作用したときにエアバッグ2内にガスを噴出してエアバッグ2を膨張展開させるインフレータ3とを備えており、車両のインパネ5の助手席の前の部分の内側に装着されている。また、構造物4が回転機構部7を介してインパネ5に搭載されている。ここで、本実施形態における回転機構部7が本発明の移動機構に相当する。構造物4は、例えば物を収納できる棚や助手席用ディスプレイなどが挙げられ、ユーザの利便性を高めるため取り付けられる。なお、エアバッグ2は、平常時は折り畳まれた状態でインパネ5の内側に収容配置されている。また、6はフロントウィンドウである。
【0012】
インパネ5におけるエアバッグモジュール1に対応した部位には、図示しないエアバッグドアが形成されており、このエアバッグドアは、エアバッグ2が膨張展開時に開裂するティア部(図示しない)によって開放される。したがって、車両衝突を検知すると、インフレータ3が作動して折り畳まれたエアバッグ2をエアバッグドアへ向けて膨張展開させる。エアバッグ2は、エアバッグドアを押圧して開裂させ、後ろ斜め上方に乗員に向かって膨張する。
【0013】
図2図4において、回転機構7について説明する。図2に示されるように、回転機構部7は、ヒンジ部71と、ピン部72と、上板部73と、下板部74とで構成され、図のように上板部73が、構造物4の下面に接合されている。ここで、本実施形態における上板部73と下板部74が本発明の上接合部と下接合部にそれぞれ相当する。なお、下板部24はインパネ5に接合されている。本実施形態では、両面テープで接着しているが、それに限らず、ボルト・ナット等による締結等、種々の公知の接合構造を採用することができる。
【0014】
図3に示されるように、ピン部72は、上嵌合部72Aと、下嵌合部72Bとで構成される。ここで、本実施形態におけるピン部72が本発明の固定部に相当する。なお、本実施形態では嵌合することによって固定されているが、それに限らず、固着による固定等、種々の公知の固定方法を採用することができる。上嵌合部72Aは上板部73に接合されており、下嵌合部72Bは下板部74に接合されている。通常時、上嵌合部72Aと下嵌合部72Bは図のように係合している。車両上方側へ所定値以上の荷重が入力されると、上嵌合部72Aと下嵌合部72Bとの係合が解除されるように設定されている。なお、本実施形態では、この所定値は膨張展開するエアバッグ2が構造物4または上板部73の少なくとも一方の車両後方側の端部に当接して略車両上方側へと押圧する荷重値に設定されている。また、その他の固定方法においても、車両上方側へ所定値以上の荷重が入力されると、固定が解除されるように設定される。なお、エアバッグ2が構造物4の端部に直接当接する場合に限らず、エアバッグ2の展開により開裂したエアバッグドアの一部が構造物4または上板部73の少なくとも一方の車両後方側の端部に当接することで荷重が入力されてもよい。
【0015】
図4に示されるように、ヒンジ部71は車両幅方向を軸線として回動可能となるよう構成されている。ここで、本実施形態におけるヒンジ部71と上板部73が本発明の可動部に相当する。車両上方側へ所定値以上の荷重が入力されると、ピン部72の係合が解除され上板部73がヒンジ部71を中心として車両上方側へ回転する。
【0016】
次に、図5において、構造物4を搭載する構造物搭載構造が回転機構7を有さない場合のエアバッグ2の展開の概略図を示す。なお、図5は本発明の実施例ではない。図5に示すように、インパネ5に設置された構造物4が固定されていると、エアバッグ2の車両前方方向への展開が抑制される。結果、乗員Pの首への入力が増加する恐れがある。
【0017】
次に、図6において、構造物4を搭載する構造物搭載構造が回転機構7を有する場合のエアバッグ2の展開の概略図を示す。構造物4が回転機構7を介してインパネ5に搭載されており、下板部74の車両前後方向後端はエアバッグ2の展開領域より前方に位置し、上板部73または構造物4の車両前後方向後端がエアバッグ2の展開領域内に位置する。
【0018】
この時、下板部74がエアバッグの展開領域に重ならないように位置しているため、エアバッグ2の展開により、エアバッグ2の展開領域内に位置する上板部73または構造物4の少なくとも一方にエアバッグ2の展開荷重が入力され、ピン部72の係合が解除され上板部73がヒンジ部71を中心として車両上方側へ回転し、それに伴い上板部73に接合された構造物4が車両上方側へ移動する。それによりエアバッグ2の展開するスペースが確保され、エアバッグ2は車両上方側へ展開可能となる。よって、乗員Pへの入力が低減される。
【0019】
また、本実施形態では、回転機構7が上板部73と下板部74とを有する構成とされているが、これに限らない。ヒンジ部71とピン部72がそれぞれ直接構造物4とインパネ5に接合されていてもよい。また、構造物4がエアバッグの展開荷重で押し上げられるのではなく、ヒンジ部71に設けられた電動モータ等(図示しない)によって電気的に上板部73が車両上方側に回転されてもよい。
【0020】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について、図7図10を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明では、先行する実施形態と共通の構成要素については同一の参照符号を付して説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0021】
本実施形態では、図7に示すように構造物4は車両前方方向へ移動可能となるようスライド機構8を介してインパネ5に搭載されている。ここで、本実施形態におけるスライド機構8が本発明の移動機構に相当する。
【0022】
図8図9において、スライド機構8について説明する。図8に示されるようにスライド機構8は、上スライド部81R、81Lと、下スライド部82R、82Lと、上板部83と、下板部84とで構成され、図のように上板部83が、構造物4の下面に接合されている。なお、下板部84はインパネ5に接合されている。ここで、本実施形態における上板部83と下板部84が本発明の上接合部と下接合部にそれぞれ相当する。
【0023】
次に、図9において、上スライド部81R、81Lと、下スライド部82R、82Lについて説明する。なお、符号Rと符合Lは、符号の数字が同じであれば、鏡映対象である構成に付与されている符号であるので、本実施形態においては符号Rが付与されているものについて説明する。
【0024】
図9(a)は上スライド部81Rの概略構成図である。上スライド部81Rは、上板部83の下面に接合され、ローラー部85Rと嵌合孔87Rとを有する。ローラー部85Rは下スライド部82Rと対向する面に設けられ、車両幅方向を軸線としてそれぞれ回転可能に構成されている。嵌合孔87Rは下スライド部82Rと対向する面に設けられ、後述する嵌合突起88Rと係合するように構成されている。ここで、本実施形態における嵌合孔87Rと嵌合突起88Rが本発明の固定部に相当する。なお、本実施形態では嵌合することによって固定されているが、それに限らず、固着による固定等、種々の公知の固定方法を採用することができる。
【0025】
図9(b)は下スライド部82Rの概略構成図である。下スライド部82Rは、下板部84の上面に接合され、ガイド部86Rと嵌合突起88Rとを有する。ガイド部86Rは上スライド部81Rと対向する面に設けられ、ローラー部85Rが車両前後方向に移動可能となるよう構成されている。ここで、本実施形態における上スライド部81R、上板部83、ローラー部85R、ガイド部86Rが本発明の可動部に相当する。嵌合突起88Rは、嵌合部87Rと係合するように構成されており、車両上方側へ所定値以上の荷重が入力されると、嵌合部87Rと嵌合突起88Rとの係合が解除されるように設定されている。なお、本実施形態では、この所定値は膨張展開するエアバッグ2が構造物4または上板部83の少なくとも一方の車両後方側の端部に当接して略車両前後方向前側へと押圧する荷重値に設定されている。また、その他の固定方法においても、車両上方側へ所定値以上の荷重が入力されると、固定が解除されるように設定される。なお、エアバッグ2が構造物4の端部に直接当接する場合に限らず、エアバッグ2の展開により開裂したエアバッグドアの一部が構造物4または上板部83の少なくとも一方の車両後方側の端部に当接することで荷重が入力されてもよい。
【0026】
次に、図10において、構造物4を搭載する構造物搭載構造がスライド機構8を有する場合のエアバッグ2の展開の概略図を示す。図10に示すように、構造物4がスライド機構8を介してインパネ5に設置されており、下板部84の車両前後方向後端はエアバッグ2の展開領域より前方に位置し、上板部83または構造物4の車両前後方向後端がエアバッグ2の展開領域内に位置する。
【0027】
この時、下板部84がエアバッグの展開領域に重ならないように位置しているため、エアバッグ2の展開領域内に位置する上板部83または構造物4の少なくとも一方にエアバッグ2の展開荷重が入力され、嵌合孔87Rと嵌合突起88Rとの係合が解除され上板部83が車両前後方向前側に移動する。それに伴い、構造物4も車両前後方向前側に移動する。よってエアバッグ2の展開するスペースが確保され、エアバッグ2は車両上方側へ展開可能となり、乗員Pへの入力が低減される。
【0028】
また、本実施形態では、スライド機構8が上板部83と下板部84とを有する構成とされているが、これに限らない。上スライド部81R、81Lと、下スライド部82R、82Lがそれぞれ直接構造物4とインパネ5に接合されていてもよい。また、構造物4がエアバッグの展開荷重で車両前後方向前側に押されるのではなく、ローラー部85Rに設けられた電動モータ等(図示しない)によって電気的に上板部83が車両前後方向前側に移動してもよい。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 エアバッグモジュール
2 エアバッグ
3 インフレ―タ
4 構造物
5 インパネ
6 フロントウィンドウ
7 回転機構
8 スライド機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10