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特許7704095走行制御装置、走行制御方法、および走行制御用コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】走行制御装置、走行制御方法、および走行制御用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/12 20200101AFI20250701BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20250701BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20250701BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20250701BHJP
【FI】
B60W30/12
G08G1/16 D
B60W30/09
B60W40/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022119819
(22)【出願日】2022-07-27
(65)【公開番号】P2024017282
(43)【公開日】2024-02-08
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100122116
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】北川 栄来
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 慧
(72)【発明者】
【氏名】青谷 芳宏
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-095474(JP,A)
【文献】国際公開第2018/158875(WO,A1)
【文献】特開2017-087923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/12
G08G 1/16
B60W 30/09
B60W 40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行している走行車線が合流車線に合流される被合流車線であるか否かを判定する地形判定部と、
前記走行車線が前記被合流車線であると判定されている間、周辺データから前記合流車線を走行する合流車両を検出し、前記合流車両が前記被合流車線に車線変更するためのスペースを広くするための譲り制御の要否を判定する譲り判定を当該合流車両について繰り返し行い、1回目の前記譲り判定では前記合流車両と前記車両との相対位置関係を用い、2回目以降の前記譲り判定では以前の前記譲り判定において判定された前記譲り制御の要否を少なくとも用いる譲り判定部と、
前記譲り判定の結果に従って前記車両の走行を制御する走行制御部と、
を備える走行制御装置。
【請求項2】
前記譲り判定部は、前記譲り判定において前記譲り制御が必要と判定された場合、メモリに当該譲り判定の結果を表す値として第1の値を保存し、前記譲り判定において前記譲り制御が不要と判定された場合、前記メモリに当該譲り判定の結果を表す値として前記第1の値と異なる第2の値を保存し、2回目以降の前記譲り判定において、前記合流車両と前記車両との相対位置関係を用いた譲り判定の結果を示す値および以前の前記譲り判定の結果を示す値のそれぞれを所定の比率で合算した合計値を用いて譲り判定を行う、請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記第1の値は前記第2の値よりも大きい値であり、
前記譲り判定部は、2回目以降の前記譲り判定において、前記合計値が所定の譲り要否閾値を上回る場合、前記譲り制御が必要と判定し、前記合計値が前記譲り要否閾値を下回る場合、前記譲り制御が不要と判定する、請求項2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記合流車両が車両を先行させようとしているか否かを判定する合流車両判定部をさらに備え、
前記譲り判定部は、前記合流車両が前記車両を先行させようとしていると判定された場合、当該判定以降、前記合流車両と前記車両との相対位置関係および以前の前記譲り判定の結果にかかわらず前記譲り制御を不要と判定し、前記合流車両が前記車両を先行させようとしていないと判定された場合における2回目以降の前記譲り判定で以前の前記譲り判定の結果をそのまま用いる、請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項5】
前記譲り判定部は、1回目の前記譲り判定において、前記合流車両の前記被合流車線への車線変更が開始可能となる合流始点に前記合流車両が到達するときに、前記合流車両よりも前記車両の方が速く、かつ、前記車両の位置が前記合流車両の前方となることが予測される場合、譲り制御を不要と判定し、前記合流車両の前記被合流車線への車線変更が開始不能となる合流終点に前記合流車両が到達するときに、前記合流車両よりも前記車両の方が遅く、かつ、前記車両の位置が前記合流車両の後方となることが予測される場合、譲り制御を必要と判定する、請求項1-4のいずれか一項に記載の走行制御装置。
【請求項6】
車両に搭載された走行制御装置が、
前記車両が走行している走行車線が合流車線に合流される被合流車線であるか否かを判定し、
前記走行車線が前記被合流車線であると判定されている間、周辺データから前記合流車線を走行する合流車両を検出し、前記合流車両が前記被合流車線に車線変更するためのスペースを広くするための譲り制御の要否を判定する譲り判定を当該合流車両について繰り返し行い、1回目の前記譲り判定では前記合流車両と前記車両との相対位置関係を用い、2回目以降の前記譲り判定では以前の前記譲り判定において判定された前記譲り制御の要否を少なくとも用い、
前記譲り判定の結果に従って前記車両の走行を制御する、
ことを含む走行制御方法。
【請求項7】
車両が走行している走行車線が合流車線に合流される被合流車線であるか否かを判定することと、
前記走行車線が前記被合流車線であると判定されている間、周辺データから前記合流車線を走行する合流車両を検出し、前記合流車両が前記被合流車線に車線変更するためのスペースを広くするための譲り制御の要否を判定する譲り判定を当該合流車両について繰り返し行い、1回目の前記譲り判定では前記合流車両と前記車両との相対位置関係を用い、2回目以降の前記譲り判定では以前の前記譲り判定において判定された前記譲り制御の要否を少なくとも用いることと、
前記譲り判定の結果に従って前記車両の走行を制御することと、
を前記車両に搭載されたコンピュータに実行させる走行制御用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の走行を制御する走行制御装置、走行制御方法、および走行制御用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
走行制御装置により走行が制御される車両では、周辺を走行する他車両の挙動に応じた走行を行うことが求められる。特許文献1に記載の走行制御装置は、自車線への進入が予測される対象車両を検出し、自車両の状態、および自車両と前方車両と対象車両との位置関係が、対象車両に道を譲ることを許容するための許容条件を満す場合に、対象車両による自車線への進入を可能とする譲り位置に自車両を停止させる譲り制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-006818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
合流車線を走行する合流車両に対し譲り制御を行うか否かの判定を複数回行い、その判定結果が頻繁に変更された場合、車両の挙動が頻繁に変更され、運転者や周辺の交通参加者に違和感を与えることがある。
【0005】
本開示は、運転者や周辺の交通参加者に違和感を与えないように譲り制御を実行することができる走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(1)前記車両が走行している走行車線が合流車線に合流される被合流車線であるか否かを判定する地形判定部と、
前記走行車線が前記被合流車線であると判定されている間、前記周辺データから前記合流車線を走行する合流車両を検出し、前記合流車両が前記被合流車線に車線変更するためのスペースを広くするための譲り制御の要否を判定する譲り判定を繰り返し行い、1回目の前記譲り判定では前記合流車両と前記車両との相対位置関係を用い、2回目以降の前記譲り判定では以前の前記譲り判定の結果を少なくとも用いる譲り判定部と、
前記譲り判定の結果に従って前記車両の走行を制御する走行制御部と、
を備える走行制御装置。
【0008】
(2)前記譲り判定部は、前記譲り判定において前記譲り制御が必要と判定された場合、メモリに当該譲り判定の結果を表す値として第1の値を保存し、前記譲り判定において前記譲り制御が不要と判定された場合、前記メモリに当該譲り判定の結果を表す値として前記第1の値と異なる第2の値を保存し、2回目以降の前記譲り判定において、前記合流車両と前記車両との相対位置関係を用いた譲り判定の結果を示す値および以前の前記譲り判定の結果を示す値のそれぞれを所定の比率で合算した合計値を用いて譲り判定を行う、上記(1)に記載の走行制御装置。
【0009】
(3)前記第1の値は前記第2の値よりも大きい値であり、
前記譲り判定部は、2回目以降の前記譲り判定において、前記合計値が所定の譲り要否閾値を上回る場合、前記譲り制御が必要と判定し、前記合計値が前記譲り要否閾値を下回る場合、前記譲り制御が不要と判定する、上記(2)に記載の走行制御装置。
【0010】
(4)前記合流車両が車両を先行させようとしているか否かを判定する合流車両判定部をさらに備え、
前記譲り判定部は、前記合流車両が前記車両を先行させようとしていると判定された場合、当該判定以降、前記合流車両と前記車両との相対位置関係および以前の前記譲り判定の結果にかかわらず前記譲り制御を不要と判定し、前記合流車両が前記車両を先行させようとしていないと判定された場合における2回目以降の前記譲り判定で以前の前記譲り判定の結果をそのまま用いる、上記(1)-(3)のいずれか一つに記載の走行制御装置。
【0011】
(5)前記譲り判定部は、前記合流車両の前記被合流車線への車線変更が開始可能となる合流始点に前記合流車両が到達するときに、前記合流車両よりも前記車両の方が速く、かつ、前記車両の位置が前記合流車両の前方となることが予測される場合、譲り制御を不要と判定し、前記合流車両の前記被合流車線への車線変更が開始不能となる合流終点に前記合流車両が到達するときに、前記合流車両よりも前記車両の方が遅く、かつ、前記車両の位置が前記合流車両の後方となることが予測される場合、譲り制御を必要と判定する、上記(1)-(4)のいずれか一つに記載の走行制御装置。
【0012】
(6) 車両に搭載された走行制御装置が、
前記車両が走行している走行車線が合流車線に合流される被合流車線であるか否かを判定し、
前記走行車線が前記被合流車線であると判定されている間、前記周辺データから前記合流車線を走行する合流車両を検出し、前記合流車両が前記被合流車線に車線変更するためのスペースを広くするための譲り制御の要否を判定する譲り判定を繰り返し行い、1回目の前記譲り判定では前記合流車両と前記車両との相対位置関係を用い、2回目以降の前記譲り判定では以前の前記譲り判定の結果を少なくとも用い、
前記譲り判定の結果に従って前記車両の走行を制御する、
ことを含む走行制御方法。
【0013】
(7)前記車両が走行している走行車線が合流車線に合流される被合流車線であるか否かを判定することと、
前記走行車線が前記被合流車線であると判定されている間、前記周辺データから前記合流車線を走行する合流車両を検出し、前記合流車両が前記被合流車線に車線変更するためのスペースを広くするための譲り制御の要否を判定する譲り判定を繰り返し行い、1回目の前記譲り判定では前記合流車両と前記車両との相対位置関係を用い、2回目以降の前記譲り判定では以前の前記譲り判定の結果を少なくとも用いることと、
前記譲り判定の結果に従って前記車両の走行を制御することと、
を前記車両に搭載されたコンピュータに実行させる走行制御用コンピュータプログラム。
【0014】
本開示によれば、運転者や周辺の交通参加者に違和感を与えないように譲り制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】被合流車線における車両の走行状況を説明する図である。
図2】走行制御装置が実装される車両の概略構成図である。
図3】ECUのハードウェア模式図である。
図4】ECUが有するプロセッサの機能ブロック図である。
図5】走行制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、運転者や周辺の交通参加者に違和感を与えないように譲り制御を実行することができる走行制御装置について詳細に説明する。走行制御装置は、車両が走行している走行車線が合流車線に合流される被合流車線であるか否かを判定する。合流車線は、走行車線が含まれる道路とは異なる道路に含まれる車線であって、走行車線への車線変更(合流)が可能となる区間を有する車線である。走行制御装置は、走行車線が被合流車線であると判定されている間、周辺データから合流車線を走行する合流車両を検出し、合流車両が被合流車線に車線変更するためのスペースを広くするための譲り制御の要否を判定する譲り判定を繰り返し行う。走行制御装置は、1回目の譲り判定では合流車両と車両との相対位置関係を用い、2回目以降の譲り判定では以前の譲り判定の結果を少なくとも用いる。そして、走行制御装置は、譲り判定の結果に従って車両の走行を制御する。
【0017】
図1は、被合流車線における車両の走行状況を説明する図である。
【0018】
車両1は、車線L11およびL12を含む道路R1において、車線L11を走行している。合流車両10は、車線L2を含む道路R2において、車線L2を走行している。車線L2は車線L11に合流する。車線L2は合流車線に該当し、車線L11は被合流車線に該当する。車線L2を走行する合流車両10は、合流始点MSPと合流終点MEPとの間において、車線L11への車線変更を開始することができる。合流始点MSPは、合流車両10の車線L11への車線変更が開始可能となる地点であり、図1の例では車線L2の車線L11側の車線区画線と車線L11の車線L2側の車線区画線とが接する地点である。合流終点MEPは、合流車両10の車線L11への車線変更が開始不能となる地点であり、図1の例では、合流始点MSPよりも前方において、車線L2の車線L11と反対側の車線区画線と車線L11の車線L2側の車線区画線との間隔が、合流始点MSPにおける当該間隔よりも狭くなりはじめる地点である。図1では、合流始点MSPおよび合流終点MEPのそれぞれを通るとともに道路R1を横切る線を、合流始点MSPおよび合流終点MEPのそれぞれを表す仮想線として示している。
【0019】
図2は、走行制御装置が実装される車両の概略構成図である。
【0020】
車両1は、周辺カメラ2と、GNSS受信機3と、ストレージ装置4と、ECU5(Electronic Control Unit)とを有する。ECU5は、走行制御装置の一例である。周辺カメラ2、GNSS受信機3、およびストレージ装置4とECU5とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。
【0021】
周辺カメラ2は、車両1の周辺の状況を表す周辺データを生成するための周辺センサの一例である。周辺カメラ2は、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上の撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系とを有する。周辺カメラ2は、例えば車室内の前方上部に、前方を向けて配置される。周辺カメラ2は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとにフロントガラスを介して車両1の周辺の状況を撮影し、周辺の状況が表された周辺画像を周辺データとして出力する。
【0022】
GNSS受信機3は、所定の周期ごとにGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号を受信し、受信したGNSS信号に基づいて車両1の自己位置を測位する。GNSS受信機3は、所定の周期ごとに、GNSS信号に基づく車両1の自己位置の測位結果を表す測位信号を、車内ネットワークを介してECU5へ出力する。
【0023】
ストレージ装置4は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置、または不揮発性の半導体メモリを有する。ストレージ装置4は、位置に対応づけて車線区画線などの地物に関する情報を含む地図データを記憶する。
【0024】
ECU5は、車両1の周辺の状況を表す周辺データを用いて、車両1が走行している走行車線が合流車線に合流される被合流車線であるか否かを判定する。ECU5は、走行車線が被合流車線であると判定されている間、周辺データから合流車線を走行する合流車両を検出し、合流車両が被合流車線に車線変更するためのスペースを広くするための譲り制御の要否を判定する譲り判定を繰り返し行う。そして、ECU5は、譲り判定の結果に従って車両1の走行を制御する。
【0025】
図3は、ECU5のハードウェア模式図である。ECU5は、通信インタフェース51と、メモリ52と、プロセッサ53とを備える。
【0026】
通信インタフェース51は、通信部の一例であり、ECU5を車内ネットワークへ接続するための通信インタフェース回路を有する。通信インタフェース51は、受信したデータをプロセッサ53に供給する。また、通信インタフェース51は、プロセッサ53から供給されたデータを外部に出力する。
【0027】
メモリ52は、揮発性の半導体メモリおよび不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ52は、プロセッサ53による処理に用いられる各種データ、例えば譲り制御が必要と判定された場合および不要と判定された場合のそれぞれにおける譲り判定の結果を示す値、2回目以降の譲り判定において譲り判定の結果を示す値と以前の譲り判定の結果を示す値とを合算して合計値を求めるための所定の比率、2回目以降の譲り判定において求めた合計値に基づいて譲り制御の要否を判定するための譲り要否閾値等を保存する。また、メモリ52は、各種アプリケーションプログラム、例えば走行制御処理を実行する走行制御プログラム等を保存する。
【0028】
プロセッサ53は、制御部の一例であり、1以上のプロセッサおよびその周辺回路を有する。プロセッサ53は、論理演算ユニット、数値演算ユニット、またはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。
【0029】
図4は、ECU5が有するプロセッサ53の機能ブロック図である。
【0030】
ECU5のプロセッサ53は、機能ブロックとして、地形判定部531と、合流車両判定部532と、譲り判定部533と、走行制御部534とを有する。プロセッサ53が有するこれらの各部は、メモリ52に記憶されプロセッサ53上で実行されるプコンピュータログラムによって実装される機能モジュールである。プロセッサ53の各部の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。あるいは、プロセッサ53が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、またはファームウェアとしてECU5に実装されてもよい。
【0031】
地形判定部531は、車両1の周辺の状況を表す周辺データを用いて、車両1が走行している走行車線が合流車線に合流される被合流車線であるか否かを判定する。
【0032】
地形判定部531は、GNSS受信機3から受信した測位信号に表される自己位置の周辺の道路の車線情報を、通信インタフェース51を介してストレージ装置4から取得する。地形判定部531は、通信インタフェース51を介して周辺カメラ2から取得する周辺画像を、画像から車線区画線などの検出対象物を検出するよう予め学習された識別器に入力することにより、周辺画像から車線区画線を検出する。地形判定部531は、周辺画像から検出された車線区画線を用いて、車両1が走行している走行車線が道路に含まれる1以上の車線のうちどの車線に該当するかを特定する。例えば、ストレージ装置4から取得した車線情報に2つの車線が含まれ、周辺画像から、車両1の左側に1本の車線区画線が検出され、右側に2本の車線区画線が検出された場合、地形判定部531は、2つの車線のうち左側の車線を、走行車線として特定することができる。そして、地形判定部531は、ストレージ装置4から取得した車線情報における走行車線の位置を特定し、走行車線が被合流車線であるか否かを判定する。
【0033】
識別器は、例えば、Single Shot MultiBox Detector、Faster R-CNNといった入力側から出力側に向けて直列に接続された複数の畳み込み層を有する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とすることができる。車線区画線などの検出対象物を含む画像を教師データとして用いて、誤差逆伝播法といった所定の学習手法に従って予めCNNを学習することにより、CNNは周辺画像から車線区画線を検出する識別器として動作する。
【0034】
地形判定部531は、GNSS受信機から受信した測位信号に表される自己位置に対応する車線情報をストレージ装置4から取得することにより、走行車線が被合流車線であるか否かを判定してもよい。
【0035】
合流車両判定部532は、合流車両10が車両1を先行させようとしているか否かを判定する。例えば、合流車両判定部532は、合流車両10が減速している(加速度が負である)場合、合流車両10が車両1を先行させようとしていると判定することができる。
【0036】
合流車両判定部532は、周辺カメラ2により直近の所定期間内に得られた一連の周辺画像を、画像から車両などの検出対象物を検出するよう予め学習された識別器に入力することにより、一連の周辺画像のそれぞれから合流車両10を検出する。合流車両判定部532は、周辺画像において合流車両10が検出された位置に基づき、車両1から見た合流車両10の方位を特定する。合流車両判定部532は、GNSS受信機3から受信した測位信号に表される自己位置に応じてストレージ装置4から取得した車線情報において、自己位置から、特定された合流車両10の方位に位置する合流車線における走行方向を特定し、車両1を基準とした合流車両10の向きを推定する。合流車両判定部532は、周辺画像上で合流車両10が表された領域のサイズと、合流車両10までの距離が基準距離である場合における、推定された向きでの合流車両10の画像上での基準サイズとの比、および、合流車両10の実空間のサイズに基づいて合流車両10までの距離を推定する。合流車両判定部532は、直近の一定期間内に周辺カメラ2により得られた一連の周辺画像のそれぞれから検出される合流車両10の車両1から見た方位および合流車両までの距離と、一連の周辺画像のそれぞれが生成されたときの車両1の位置とに基づいて、車両1を基準とする合流車両10の相対位置を推定する。合流車両判定部532は、一連の周辺画像のうち一対の周辺画像のそれぞれにおける合流車両10の相対位置の間隔を、当該一対の周辺画像が得られた時刻の間隔で除することにより、当該一対の周辺画像が得られた時刻の間隔に対応する合流車両10の速度を推定する。基準距離、検出された合流車両10の画像上での基準サイズ及び実空間のサイズは、例えば、メモリ52に予め記憶されていればよい。合流車両判定部532は、一定期間に含まれる第1の時刻および第1の時刻よりも後の第2の時刻のそれぞれにおける合流車両10の速度を推定し、第1の時刻における速度よりも第2の時刻における速度が遅い場合、合流車両10が車両1を先行させようとしていると判定する。
【0037】
車両1は、各画素が当該画素に表わされた物体までの距離に応じた値を持つ距離画像を生成するLiDAR(Light Detection And Ranging)センサを有していてもよい。この場合、合流車両判定部532は、距離画像において、周辺画像に表される合流車両10への方位に存在する物体までの距離を、合流車両までの距離とすることができる。
【0038】
譲り判定部533は、走行車線が被合流車線であると判定されている間、周辺画像から合流車線を走行する合流車両10を検出し、合流車両10が被合流車線に車線変更するためのスペースを広くするための譲り制御の要否を判定する譲り判定を繰り返し行う。
【0039】
譲り判定部533は、1回目の譲り判定において、周辺画像から検出された合流車両10の車両1に対する相対位置および相対速度を含む相対位置関係を用いて譲り判定を行う。
【0040】
例えば、車両1は、合流始点MSPの40m手前を時速90km(等速)で走行しているとする。また、合流車両10は、合流始点MSPの40m手前を時速72km(等速)で走行しているとする。すなわち、合流車両10は、車両1の5m前を相対時速-18kmで走行している。
【0041】
この場合、譲り判定部533は、相対位置関係から、合流車両10は2秒後に合流始点MSPに到達し、合流車両10が合流始点MSPに到達する時点で車両1は合流始点MSPの10m先に到達すると予測する。すなわち、譲り判定部533は、合流始点MSPに合流車両10が到達するときに、車両1の位置が合流車両10の前方となると予測する。また、譲り判定部533は、合流始点MSPに合流車両10が到達するときに、合流車両10よりも車両1の方が速い(車両1を基準とした合流車両10の相対速度が負)と予測する。この場合、譲り判定部533は、譲り制御を不要と判定する。
【0042】
また、例えば、車両1は、合流終点MEPの55m手前を時速90km(等速)で走行しているとする。また、合流車両10は、合流終点MEPの48m手前を時速80kmで走行し、合流車両10の加速度は2m/s2であるとする。すなわち、合流車両10は、車両1の7m前を相対時速+10kmで走行している。
【0043】
この場合、譲り判定部533は、相対位置関係から、合流車両10は2秒後に合流終点MEPに到達し、合流車両10が合流終点MEPに到達する時点で車両1は合流終点MEPの5m手前に到達すると予測する。すなわち、譲り判定部533は、合流終点MEPに合流車両10が到達するときに、車両1の位置が合流車両10の後方となると予測する。また、譲り判定部533は、合流終点MEPに合流車両10が到達するときに、合流車両10の速度は時速94kmとなり、車両1よりも速い(車両1を基準とした合流車両10の相対速度が正)と予測する。この場合、譲り判定部533は、譲り制御を必要と判定する。
【0044】
譲り判定部533は、相対位置関係から、合流始点MSPに合流車両10が到達するときに、合流車両10よりも車両1の方が遅く、かつ、車両1の位置が合流車両10の後方となることが予測される場合、譲り制御を不要と判定してもよい。また、譲り判定部533は、相対位置関係から、合流終点MEPに合流車両10が到達するときに、合流車両10よりも車両1の方が速く、かつ、車両1の位置が合流車両10の前方となることが予測される場合、譲り制御を不要と判定してもよい。
【0045】
譲り判定部533は、2回目以降の譲り判定において、以前の譲り判定の結果を少なくとも用いる。例えば、譲り判定部533は、合流車両10と車両1との相対位置関係を用いた直近の一定期間内における譲り判定の結果を示す値(例えば「譲り制御必要」:1、「譲り制御不要」:-1、「どちらでもない」:0)を、メモリ52に一時保存する。譲り判定部533は、2回目以降の譲り判定において、合流車両10と車両1との相対位置関係を用いた譲り判定の結果を示す値および以前(例えば前回)の譲り判定の結果を示す値のそれぞれを所定の比率(例えば順に0.3、0.7)で合算した合計値を用いて譲り判定を行う。譲り判定部533は、合計値が譲り必要閾値(例えば0.5)を上回る場合、譲り制御が必要と判定し、合計値が譲り不要閾値(例えば-0.5)を下回る場合、譲り制御が不要と判定する。
【0046】
例えば、合流車両10と車両1との相対位置関係を用いた譲り判定の結果が「譲り制御必要」(値は1)、前回の譲り判定の結果が「どちらでもない」(値は0)であったとする。このとき、上述の比率を用いた合計値は0.3となる。この場合、合計値が譲り必要閾値を上回らず、かつ、譲り不要閾値を下回らないため、譲り判定部533は、「どちらでもない」と判定し、前回の譲り判定の結果を維持する。「どちらでもない」と判定された場合の走行制御については後述するが、少なくとも譲り制御以外の走行制御が実行される。
【0047】
ECU5は、このように譲り判定を行うことにより、結果が頻繁に変更されないように譲り判定を繰り返し行うことができ、運転者や他の交通参加者に与える違和感を抑制することができる。
【0048】
譲り判定部533は、2回目以降の譲り制御において、合流車両10と車両1との相対位置関係を用いた譲り判定の結果を示す値についての所定の比率を0としてもよい。譲り判定部533は、合流車両判定部532により合流車両10が車両1を先行させようとしていると判定された場合、合流車両10と車両1との相対位置関係および以前の譲り判定の結果にかかわらず、当該判定以降の譲り制御を不要と判定してよい。そして、譲り判定部533は、合流車両10が車両1を先行させようとしていないと判定された場合における2回目以降の譲り判定で、以前の譲り判定の結果をそのまま用いてよい。
【0049】
ECU5は、このように譲り判定を行うことにより、最初の譲り判定で譲り制御が必要とされた後に合流車両10が譲ろうとした場合であっても、車両1および合流車両10の双方が譲り合いとなる状況を回避することができる。
【0050】
譲り判定部533は、2回目以降の譲り判定における、合流車両10と車両1との相対位置関係を用いた譲り判定の結果を示す値および以前の譲り判定の結果を示す値を合算するときに用いる比率を、車両1から合流終点MEPまでの距離に応じて異ならせてもよい。例えば、譲り判定部533は、車両1から合流終点MEPまでの距離が短いほど、合流車両10と車両1との相対位置関係を用いた譲り判定の結果を示す値の割合が小さく、かつ、以前の譲り判定の結果を示す値の割合が大きくなるように、比率を設定してよい。このように比率を設定することにより、ECU5は、合流終点MEPまでの距離が短いときに譲り判定の結果を頻繁に変更されにくくすることができる。
【0051】
また、譲り判定部533は、2回目以降の譲り判定における、合流車両10と車両1との相対位置関係を用いた譲り判定の結果を示す値および以前の譲り判定の結果を示す値を合算するときに用いる比率を、走行車線が被合流車線であると判定されている間の譲り判定の回数に応じて異ならせてもよい。例えば、譲り判定部533は、譲り判定の回数が多いほど(例えば3回目の譲り判定において2回目の譲り判定よりも)、合流車両10と車両1との相対位置関係を用いた譲り判定の結果を示す値の割合が小さく、かつ、以前の譲り判定の結果を示す値の割合が大きくなるように、比率を設定してよい。このように比率を設定することにより、ECU5は、走行車線が被合流車線であると判定されている間に譲り判定が繰り返されるたびに、合流終点MEPまでの距離が短いときに譲り判定の結果を頻繁に変更されにくくすることができる。
【0052】
走行制御部534は、譲り判定の結果に従って車両1の走行を制御する。
【0053】
走行制御部534は、譲り判定が必要と判定された場合、合流車両10が被合流車線(車線L11)に合流するためのスペースを広くするための譲り制御を実行する。例えば、走行制御部534は、車両1を基準とした合流車両10の相対速度が負である場合、車両1の速度を大きくし、車両1の後側において、合流車両10が合流するためのスペースを広くする。また、走行制御部534は、車両1を基準とした合流車両10の相対速度が正である場合、車両1の速度を小さくし、車両1の前側において、合流車両10が合流するためのスペースを広くする。
【0054】
走行制御部534は、通信インタフェース51を介して車両1の走行機構(不図示)に所定の制御信号を出力することにより、車両1の走行を制御する。走行機構には、例えば車両1を加速させるエンジンまたはモータおよび車両1を減速させるブレーキが含まれる。
【0055】
走行制御部534は、譲り判定が必要とも不要とも判定されなかった場合、譲り制御以外の走行制御を実行する。譲り制御以外の走行制御は、例えば、走行車線において車両1の前方を走行する先行車両までの距離を一定に保つように走行制御する先行車追随制御であってもよい。また、走行制御部534は、譲り制御以外の走行制御として、設定された車速を維持する車速維持制御を実行してもよい。
【0056】
図5は、走行制御処理のフローチャートである。ECU5は、車両1が自動運転制御により走行する間、所定の時間間隔(例えば1/10秒間隔)で繰り返し実行する。
【0057】
まず、ECU5のプロセッサ53の地形判定部531は、車両1の周辺の状況を表す周辺データを用いて、車両1が走行している走行車線が合流車線に合流される被合流車線であるか否かを判定する(ステップS1)。
【0058】
走行車線が被合流車線でないと判定された場合(ステップS1:N)、地形判定部531は、走行制御処理を終了する。なお、この場合、車両1の自動運転制御は引き続き行われる。
【0059】
走行車線が被合流車線であると判定された場合(ステップS1:Y)、プロセッサ53の譲り判定部533は、被合流車線であると判定された後における譲り判定の結果を示す値がメモリ52に一時保存されているか否か(1回目の譲り判定か否か)を判定する(ステップS2)。
【0060】
1回目の譲り判定であると判定された場合(ステップS2:Y)、譲り判定部533は、合流車両10と車両1との相対位置関係を用いて譲り判定を行い、譲り判定の結果を示す値をメモリ52に一時保存する(ステップS3)。
【0061】
1回目の譲り判定でないと判定された場合(ステップS2:N)、譲り判定部533は、以前の譲り判定の結果を少なくとも用いて譲り判定を行い、譲り判定の結果を示す値をメモリ52に一時保存する(ステップS4)。
【0062】
ECU5の走行制御部534は、譲り判定の結果に従って、車両1の走行を制御し、EECU5の処理をステップS1に戻す。
【0063】
このように走行制御処理を実行することにより、ECU5は、運転者や周辺の交通参加者に違和感を与えないように譲り制御を実行することができる。
【0064】
当業者は、本開示の精神および範囲から外れることなく、種々の変更、置換および修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0065】
1 車両
10 合流車両
5 ECU
531 地形判定部
532 合流車両判定部
533 譲り判定部
534 走行制御部
図1
図2
図3
図4
図5