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  • 特許-ドライブレコーダシステム 図1
  • 特許-ドライブレコーダシステム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】ドライブレコーダシステム
(51)【国際特許分類】
   G07C 5/00 20060101AFI20250701BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022133455
(22)【出願日】2022-08-24
(65)【公開番号】P2024030516
(43)【公開日】2024-03-07
【審査請求日】2024-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 昭太
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-095596(JP,A)
【文献】特開2016-149009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲を撮像する撮像装置と、前記撮像装置により撮像された画像を記録する記録装置と、前記撮像装置及び前記記録装置の動作設定情報を記憶する記憶装置と、前記記憶装置に記憶された動作設定情報に基づいて前記撮像装置及び前記記録装置の動作を制御する制御装置と、管理センタと無線通信により情報の授受を行う通信モジュールと、を含むドライブレコーダシステムにおいて、
前記制御装置は、ユーザによる変更が不可能であるよう動作設定情報を前記記憶装置に記憶し、前記通信モジュールを経て前記管理センタと通信できると判定したときには、前記管理センタから前記通信モジュールを経て提供される情報のみにより前記記憶装置に記憶されている動作設定情報を更新し、前記通信モジュールを経て前記管理センタと通信できないと判定したときには、前記記憶装置に予め記憶されているデフォルトの動作設定情報に基づいて前記撮像装置及び前記記録装置の動作を制御するよう構成された、ドライブレコーダシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両のためのドライブレコーダシステムに係る。
【背景技術】
【0002】
車両の周囲を撮像する撮像装置と、撮像装置により撮像された画像を記録する記録装置と、撮像装置及び記録装置を制御する制御装置と、を含むドライブレコーダはよく知られている。例えば下記の特許文献1には、SDカードから読み出された設定情報に基づいて動作するよう構成されたドライブレコーダが記載されている。
【0003】
運送業、配送業などの事業体においては、使用される商用車両や社用車両の管理者が従業員による車両の運航状況、運転状況などを把握し確認するために、ドライブレコーダが使用されることがある。ドライブレコーダによれば、必要な日時の録画情報を再生することにより、車両の運航状況などを確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-173838号公報
【発明の概要】
【0005】
〔発明が解決しようとする課題〕
従来のドライブレコーダにおいては、録画、録音のオン・オフなどドライブレコーダの動作をユーザにより設定し変更することができる。そのため、ユーザの誤操作や悪意のある操作により録画、録音が行われなかったり、録画情報、録音情報が削除されたりし、車両の運航状況、運転状況などを把握し確認することができない場合がある。
【0006】
本発明は、ドライブレコーダのユーザはその動作を設定したり変更したりすることができず、管理センタの管理者のみによりドライブレコーダの動作設定情報を変更することができるよう改良されたドライブレコーダシステムを提供する。
【0007】
本発明によれば、車両(12)の周囲を撮像する撮像装置(カメラ14)と、撮像装置により撮像された画像を記録する記録装置(16)と、撮像装置及び記録装置の動作設定情報を記憶する記憶装置(22)と、記憶装置に記憶された動作設定情報に基づいて撮像装置及び前記記録装置の動作を制御する制御装置(DR・ECU18)と、管理センタ(32)と無線通信により情報の授受を行う通信モジュール(28)と、を含むドライブレコーダシステム(10)が提供される。
【0008】
制御装置(DR・ECU18)は、ユーザによる変更が不可能であるよう動作設定情報を記憶装置(22)に記憶し、通信モジュール(28)を経て管理センタ(32)と通信できると判定したときには、管理センタから通信モジュールを経て提供される情報のみにより記憶装置に記憶されている動作設定情報を更新(S60)、通信モジュールを経て管理センタと通信できないと判定したときには、記憶装置に予め記憶されているデフォルトの動作設定情報に基づいて撮像装置及び記録装置の動作を制御するよう構成される。
【0009】
上記の構成によれば、撮像装置及び記録装置の動作は、ユーザによる変更が不可能であるよう記憶装置に記憶されている動作設定情報に基づいて制御される。通信モジュールを経て管理センタと通信できると判定されたときには、記憶装置に記憶されている動作設定情報は、管理センタから通信モジュールを経て提供される情報のみにより更新される。よって、ユーザにより動作設定情報が変更されることはないので、ユーザの誤操作や悪意のある操作により録画が行われなかったり、録画情報が削除されたりすることはなく、録画情報に基づいて車両の運航状況、運転状況などを確実に把握し確認することができる。
更に、上記の構成によれば、通信モジュールを経て管理センタと通信できないと判定されたときには、記憶装置に予め記憶されているデフォルトの動作設定情報に基づいて撮像装置及び記録装置の動作が制御される。従って、管理センタと通信できないことに起因して撮像装置及び記録装置が動作しなくなることはない。
【0010】
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いられる名称及び/又は符号が括弧書きで添えられている。しかし、本発明の各構成要素は、括弧書きで添えられた名称及び/又は符号に対応する実施形態の構成要素に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明によるドライブレコーダシステムの実施形態を示す概略構成図である。
図2】実施形態の動作設定情報制御ルーチンを示すフローチャートである。
図3】実施形態において管理センタの記憶装置に保存される動作設定情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付の図を参照して、本発明の実施形態にかかるドライブレコーダシステムについて詳細に説明する。
【0013】
図1に示されているように、実施形態にかかるドライブレコーダシステム10は、車両12に適用され、車両12は自動運転可能な商用車両、例えば運送業、配送業などの事業に使用される車両であってよい。ドライブレコーダシステム10は、カメラ14、記録装置16及びドライブレコーダECU18を含んでいる。カメラ14は、車両12の周囲を撮像する撮像装置として機能し、記録装置16は、カメラ14により撮像された画像(動画)を記録する。ドライブレコーダECU18は、少なくともカメラ14及び記録装置16の動作を制御する制御装置として機能する。ドライブレコーダECUは、必要に応じてDR・ECUと指称される。
【0014】
DR・ECU18は、マイクロコンピュータを主要部として備える電子制御装置(Electronic Control Unit)である。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェースなどを含んでいる。CPUは、ROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより所定の機能を実現するようになっている。
【0015】
図1に示されているように、記録装置16及びDR・ECU18は、ドライブレコーダ本体20に内蔵されている。ドライブレコーダ本体20は、少なくともカメラ14及び記録装置16の動作設定情報を記憶する記憶装置22を含んでいる。DR・ECU18は、記憶装置22に記憶された動作設定情報に基づいて少なくともカメラ14及び記録装置16の動作を制御する。なお、記憶装置22に記憶された動作設定情報は、ユーザがドライブレコーダ本体20を操作することによって変更したり削除したりすることができない。
【0016】
図1においては、カメラ14は一つしか図示されていないが、車両12の前方を撮像するフロントカメラ、車両12の後方を撮像するリアカメラのように複数のカメラを含んでいてよい。また、カメラ14は360°に亘り車両12の周囲を撮像し得るようになっていてよい。
【0017】
記録装置16は、実施形態においては、ドライブレコーダ本体20に内蔵された記録装置、例えばマイクロコンピュータの不揮発性メモリであるが、SD(商標)カードのような外部記録装置であってもよく、内蔵記録装置及び外部記録装置の両方を含んでいてもよい。なお、ドライブレコーダ本体20に内蔵された記録装置は、ユーザによるドライブレコーダ本体20の操作などによっても、記録されている画像の書き換えや消去をすることができないようになっている。
【0018】
ドライブレコーダ本体20は、マルチメディア装置24に接続されている。マルチメディア装置24は、GPS(Global Positioning System)装置を内蔵するナビゲーション装置26、ディスプレイ、スピーカ、マイク(図示せず)などを含んでいる。カメラ14により撮像され記録装置16に記録される画像がディスプレイに表示されるようになっていてよく、記録装置16に記録された画像及び音声を必要に応じてディスプレイ及びスピーカにより再生し得るようになっていてよい。
【0019】
マルチメディア装置24には通信モジュール28が接続されており、通信モジュール28は、ネットワーク30を介して管理センタ32と無線通信により情報の授受を行うようになっている。通信モジュール28は、マルチメディア装置24を介してドライブレコーダ本体20と接続されており、カメラ14、記録装置16及びドライブレコーダECU18と共にドライブレコーダシステム10の一部を構成している。
【0020】
管理センタ32は、制御装置34及び記憶装置36を含んでいる。制御装置34は、その管轄下にある車両12を含む複数の車両のカメラ14、マイク及び記録装置16の動作設定情報を管理する。記憶装置36は、図3に示されているように、各車両についてID番号、運転者のコード番号、フラグFb、動作設定情報などの管理情報及び各車両のドライブレコーダ本体の記録装置に記録されアップロードされる画像及び音声情報を記憶している。なお、フラグFbは、記憶装置36に記憶されている動作設定情報の更新の有無を示すフラグであり、後に詳細に説明する。
【0021】
管理センタ32には、管理者により操作される端末装置38が接続されている。管理者は、端末装置38を操作することにより、追加、削除、修正などによって更新することにより、車両毎に又は全ての車両について一括して、管理情報を保守することができる。なお、画像及び音声情報は、予め設定された保存期間を過ぎると、自動的に削除されるようになっていてよい。
【0022】
DR・ECU18は、図2に示されたフローチャートに対応する動作設定情報制御プログラムを記憶しており、CPUは、該プログラムに従って動作設定情報制御を実行する。後に詳細に説明するように、CPUは、所定の条件が成立すると、マルチメディア装置24、通信モジュール28及びネットワーク30を介して管理センタ32と無線通信する。CPUは、自車両について動作設定情報が更新されているときには、更新後の動作設定情報をダウンロードして記憶装置22に上書きにより保存する。よって、動作設定情報が更新されたときには、記憶装置22に記憶された更新後の動作設定情報に基づいてカメラ14、マイク及び記録装置16の動作が制御される。
【0023】
<動作設定情報制御ルーチン>
図2に示されたフローチャートによる動作設定情報制御は、図1には示されていないイグニッションスイッチ(IGSW)がオンになると開始され、所定の時間毎に繰返しDR・ECU18のCPUにより実行される。なお、以下の説明においては、動作設定情報制御を本制御と呼称する。また、本制御の開始時には、フラグFaが0に初期化される。更に、IGSWがオフになっても、所定の保持時間に亘りDR・ECU18への電源が保持されることにより本制御が継続される。
【0024】
まず、ステップS10においては、CPUは、無線通信により管理センタ32と情報の授受が可能である否かを判定する。CPUは、肯定判定をしたときには、本制御をステップS40へ進め、否定判定をしたときには、本制御をステップS20へ進める。
【0025】
ステップS20においては、CPUは、フラグFaが1であるか否かの判定、即ち動作設定情報が管理センタ32からダウンロードされ、記憶装置22に保存されているか否かの判定を行う。CPUは、肯定判定をしたときには、本制御をステップS80へ進め、否定判定をしたときには、本制御をステップS30へ進める。
【0026】
ステップS30においては、CPUは、カメラ14及び記録装置16の動作設定情報をデフォルトの情報に設定する。デフォルトの情報は、例えば、以下の設定情報であってよい。
フロントカメラ及びリアカメラにより撮像し録音する
撮像された画像及び録音された音声を内蔵の記録装置16に記録する
IGSWがオフであるときには、撮像及び録音をしない
【0027】
ステップS40においては、CPUは、自車両12のID番号を無線通信により管理センタ32へ送信し、送信したID番号について記憶装置36に記憶されている動作設定情報の更新の有無を示すフラグFbの送信を要求する。フラグFbが0であることは、動作設定情報が更新されていないことを示し、フラグFbが1であることは、動作設定情報が更新されたことを示す。
【0028】
ステップS50においては、CPUは、フラグFbが1であるか否かの判定により、自車両12についての動作設定情報が更新されたか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御をステップS80へ進め、肯定判定をしたときには、本制御をステップS60へ進める。
【0029】
ステップS60においては、CPUは、記憶装置36に記憶されている更新後の動作設定情報を無線通信によりダウンロードし、ドライブレコーダ本体20に内蔵された記憶装置22に保存する。DR・ECU18のCPUは、記憶装置22に保存されている更新後の動作設定情報に基づいてカメラ14、マイク及び記録装置16の動作を制御する。
【0030】
なお、記憶装置36に記憶されている更新後の動作設定情報がダウンロードされると、管理センタ32の制御装置34は、当該車両のフラグFbを0にリセットする。更に、管理センタ32の管理者によって例えば「IGSWがオフでも夜間には撮像する」のように動作設定情報が変更されることにより更新されと、フラグFbは制御装置34により1に設定される。
【0031】
ステップS70においては、CPUは、フラグFaを1に設定する。なお、フラグFaが1であることは、上述のように、動作設定情報がダウンロードされ、記憶装置22に保存されたことを意味する。
【0032】
ステップS80においては、CPUは、本制御が開始された時点又は前回後述のステップS90において画像及び音声がアップロードされてから予め設定された所定の時間(正の定数)が経過したか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御をステップS100へ進め、肯定判定をしたときには、本制御をステップS90へ進める。
【0033】
ステップS90においては、CPUは、記録装置16に記録されておりまだアップロードされていない画像及び音声を無線通信により管理センタ32へアップロードする。アップロードされた画像及び音声は、記憶装置36に保存される。
【0034】
ステップS100においては、CPUは、IGSWがオフになったか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御を一旦終了し、肯定判定をしたときには、本制御をステップS110へ進める。
【0035】
ステップS110においては、CPUは、記録装置16に記録されておりまだアップロードされていない画像及び音声があれば、その画像及び音声を無線通信により管理センタ32へアップロードする。
【0036】
ステップS120においては、CPUは、フラグFaを0にリセットし、その後本制御を終了する。なお、ステップS120は省略されてもよい。
【0037】
以上の説明から解るように、実施形態によれば、カメラ14、マイク及び記録装置16の動作は、ユーザによる変更が不可能であるよう記憶装置22に記憶されている動作設定情報に基づいて制御される。通信モジュール28を経て管理センタ24と通信できると判定されたときには、記憶装置22に記憶されている動作設定情報は、管理センタ24から通信モジュール28を経て提供される情報のみにより更新される。よって、ユーザにより動作設定情報が変更されることはないので、ユーザの誤操作や悪意のある操作により録画、録音が行われなかったり、録画情報、録音情報が削除されたりすることはない。従って、録画情報、録音情報に基づいて車両の運航状況、運転状況などを確実に把握し確認することができる。
【0038】
特に、実施形態によれば、管理センタ32と通信できない場合であって(S10)、動作設定情報がダウンロードされていないときには(S20)、動作設定情報はデフォルトの情報に設定される。従って、管理センタ24と通信できないことに起因してカメラ14、マイク及び記録装置16が動作しなくなることはない。
【0039】
また、実施形態によれば、自車両の動作設定情報が更新されている場合にのみ、動作設定情報がダウンロードされる。よって、例えば動作設定情報が更新されていなくても定期的に動作設定情報がダウンロードされる場合に比して、通信コストを節減することができる。
【0040】
以上においては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0041】
例えば、ステップS80及びS90において、所定の時間が経過する毎にまだアップロードされていない画像及び音声が管理センタ32へアップロードされる。しかし、管理センタ32への画像及び音声のアップロードは、当技術分野において公知の任意の要領にて行われてよく、更には、画像及び音声のアップロードが行われなくてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…ドライブレコーダシステム、12…車両、14…カメラ、16…記録装置、18…ドライブレコーダECU(DR・ECU)、22…記録装置、28…通信モジュール、32…管理センタ、36…記憶装置
図1
図2
図3