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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】管理装置、管理システムおよび管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/083 20240101AFI20250701BHJP
   B65G 61/00 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
G06Q10/083
B65G61/00 500
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022142300
(22)【出願日】2022-09-07
(65)【公開番号】P2024037432
(43)【公開日】2024-03-19
【審査請求日】2024-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】駒田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 満
(72)【発明者】
【氏名】石井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】浅野 英貴
(72)【発明者】
【氏名】石井 伴和
(72)【発明者】
【氏名】戸次 幸司
(72)【発明者】
【氏名】米川 紘輔
(72)【発明者】
【氏名】竺原 慶和
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-004331(JP,A)
【文献】特開2010-159113(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0344940(US,A1)
【文献】米国特許第08498818(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B65G 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製品が梱包された梱包箱を上流企業から下流企業に輸送する移動体と通信可能に構成された通信装置と、
前記通信装置を介して前記移動体の位置情報を前記移動体から取得し、取得された前記位置情報に基づいて、前記移動体による前記梱包箱の輸送工程の開始時点及び完了時点を決定する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記開始時点から前記完了時点までの間に前記移動体が消費したエネルギ量に基づいて、前記梱包箱の輸送工程において排出されたCO2排出量を示す第1のCO2排出量を算出し、
前記第1のCO2排出量を前記梱包箱内の前記複数の製品の個数で除算することにより、前記複数の製品の単位個数あたりの前記輸送工程におけるCO2排出量を示す第2のCO2排出量を算出する、管理装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記通信装置を介して、前記移動体の状態を前記移動体から取得し、
前記上流企業の敷地内において、前記移動体がスリープ状態から起動状態になった時点を前記開始時点とし、
前記下流企業の敷地内において、前記移動体が起動状態からスリープ状態になった時点を前記完了時点とする、請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記移動体は、内燃機関を含み、
前記制御装置は、前記開始時点から前記完了時点までの間に前記移動体が消費した燃料消費量に基づいて、前記第2のCO2排出量を算出する、請求項1または請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記移動体は、バッテリおよび前記バッテリの電力を用いて駆動する駆動装置とを含み、
前記制御装置は、前記開始時点から前記完了時点までの間に前記移動体が消費した電力消費量に基づいて、前記第2のCO2排出量を算出する、請求項1または請求項2に記載の管理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の管理装置である第1の管理装置と、
前記上流企業に帰属する第2の管理装置と、
前記下流企業に帰属する第3の管理装置とを備え、
前記第3の管理装置は、
前記複数の製品の単位個数あたりの生産工程におけるCO2排出量を示す第3のCO2排出量を前記第2の管理装置から取得し、
前記第2のCO2排出量を前記第1の管理装置から取得し、
前記第2のCO2排出量と前記第3のCO2排出量とを加算して、前記複数の製品の各々のCO2排出量を示す第4のCO2排出量を算出する、管理システム。
【請求項6】
管理装置により実行される管理方法であって、
複数の製品が梱包された梱包箱を上流企業から下流企業に輸送する移動体と通信するステップと、
前記移動体の位置情報を前記移動体から取得するステップと、
取得された前記位置情報に基づいて、前記移動体による前記梱包箱の輸送工程の開始時点及び完了時点を決定するステップと、
前記開始時点から前記完了時点までの間に前記移動体が消費したエネルギ量に基づいて、前記梱包箱の輸送工程において排出されたCO2排出量を示す第1のCO2排出量を算出するステップと
前記第1のCO2排出量を前記梱包箱内の前記複数の製品の個数で除算することにより、前記複数の製品の単位個数あたりの前記輸送工程におけるCO2排出量を示す第2のCO2排出量を算出するステップとを含む、管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管理装置、および、管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題への意識の高まりに伴なって、市場に流通する製品の生産により排出されたCO2排出量への関心が高まってきている。サプライチェーンにおける上流企業(川上企業)は、製品を納入している下流企業(川下企業)から、当該製品を生産するために排出されたCO2排出量の開示を要求される場合がある。川上企業は、製品を生産するために排出されたCO2排出量を算出し、これを川下企業に開示する。
【0003】
たとえば、特開2016-126372号公報(特許文献1)には、製品(材料および部品を含む)の輸送工程におけるCO2排出量を算出する手法が開示されている。特開2016-126372号公報に開示された輸送工程におけるCO2排出量の手法は、予め定められた係数表と、企業の属する業種と、物品の購入額とから、物品の購入額に対応するCO2排出量を算出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-126372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された輸送工程におけるCO2排出量の算出手法は、予め定められた係数表に基づいてCO2排出量を推定するものであり、実際に計測されるものではない。そのため、算出されたCO2排出量と、川上企業から川下企業への輸送に要した実際のCO2排出量との間で乖離が生じる可能性がある。輸送工程におけるCO2排出量を、より精度よく算出する手法が望まれる。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、輸送工程におけるCO2排出量を精度よく算出することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示のある局面に係る管理装置は、上流企業から下流企業に製品を輸送する移動体と通信可能に構成された通信装置と、製品の輸送開始時点から輸送完了時点までの間に移動体が消費したエネルギ量に基づいて、製品の輸送によって排出されたCO2排出量を算出する制御装置とを備える。
【0008】
上記構成によれば、製品の輸送によって排出されたCO2排出量は、製品の輸送開始時点から輸送完了時点までの間に移動体が消費したエネルギ量に基づいて算出される。実際に使用されたエネルギ量に基づいてCO2排出量が算出されるので、輸送工程におけるCO2排出量を精度よく算出することができる。
【0009】
(2)ある実施の形態においては、制御装置は、通信装置を介して、移動体から位置情報および状態を取得し、上流企業の敷地内において、移動体がスリープ状態から起動状態になった時点を輸送開始時点とし、下流企業の敷地内において、移動体が起動状態からスリープ状態になった時点を輸送完了時点とする。
【0010】
上記構成によれば、輸送開始時点および輸送完了時点を適切に決定することができる。したがって、輸送工程におけるCO2排出量を精度よく算出することができる。
【0011】
(3)ある実施の形態においては、移動体は、内燃機関を含む。制御装置は、輸送開始時点から輸送完了時点までの間に移動体が消費した燃料消費量に基づいて、CO2排出量を算出する。
【0012】
上記構成によれば、輸送開始時点から輸送完了時点までの間に移動体が消費した燃料消費量、すなわち実際に消費されたエネルギ量に基づいて、CO2排出量を算出することができる。したがって、輸送工程におけるCO2排出量を精度よく算出することができる。
【0013】
(4)ある実施の形態においては、移動体は、バッテリおよびバッテリの電力を用いて駆動する駆動装置とを含む。制御装置は、輸送開始時点から輸送完了時点までの間に移動体が消費した電力消費量に基づいて、CO2排出量を算出する。
【0014】
上記構成によれば、輸送開始時点から輸送完了時点までの間に移動体が消費した電力消費量すなわち実際に消費されたエネルギ量に基づいて、CO2排出量を算出することができる。したがって、輸送工程におけるCO2排出量を精度よく算出することができる。
【0015】
(5)本開示の他の局面に係る管理方法は、上流企業から下流企業に製品を輸送する移動体と通信するステップと、製品の輸送開始時点から輸送完了時点までの間に移動体が消費したエネルギ量に基づいて、製品の輸送によって排出されたCO2排出量を算出するステップとを含む。
【発明の効果】
【0016】
本開示によると、輸送工程におけるCO2排出量を精度よく算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る管理システム1の全体構成図である。
図2】梱包箱7の一例を示す図である。
図3】管理装置2の制御装置21、管理装置3の制御装置31、および管理装置5の制御装置51の機能ブロック図である。
図4】管理装置5の制御装置51により実行される、輸送工程のCO2排出量Q2totalを報告するための処理の手順を示すフローチャートである。
図5】変形例1に係る梱包箱7Aの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る管理システム1の全体構成図である。管理システム1は、製品の生産により排出されたCO2排出量を管理するためのシステムである。管理システム1は、A企業に帰属する管理装置2と、B企業に帰属する管理装置3と、輸送車6を用いた輸送業を行なうC企業に帰属する管理装置5とを備える。A企業とB企業とはサプライチェーンを形成している。A企業は、サプライチェーンにおける、B企業の上流企業である。A企業は、自社製品である製品71をB企業に納品している。製品71は、梱包箱7に梱包されて、輸送車6によってA企業からB企業に輸送される。本実施の形態では、製品71は、電子部品である。なお、製品71は電子部品であることに限られず、種々の原材料であってよい。また、製品71は、梱包箱7に梱包されて輸送されることに限られるものではなく、製品71が輸送車6に積み込まれ、輸送されてもよい。製品71は、たとえば、自動車のエンジン、ドア等の部品であってもよい。
【0020】
図2は、梱包箱7の一例を示す図である。梱包箱7には、バーコード8が付されている。なお、梱包箱7には、バーコード8に代えて、QRコード(登録商標)が付されていてもよい。なお、製品71が梱包箱7に梱包されない場合には、たとえば、製品71に直接、バーコード8が付されてもよい。
【0021】
再び図1を参照して、A企業の管理装置2は、製品71の生産により排出されたCO2排出量Q1を管理する。製品71の生産により排出されたCO2排出量Q1は、A企業の生産ラインで原材料を使用して製品71を生産するために要したCO2排出量Q1a、および、上記原材料の生産により排出されたCO2排出量Q1bを含む。A企業は、上記原材料を、サプライチェーンにおける上流企業(図示せず)から購入している。管理装置2は、原材料の供給元である上流企業から報告された情報(原材料の単位重量あたりのCO2排出量)に基づいて、CO2排出量Q1bを算出する。管理装置2は、CO2排出量Q1aにCO2排出量Q1bを加算してCO2排出量Q1を算出し、これを管理する。なお、以下では、CO2排出量Q1を「生産工程におけるCO2排出量Q1」とも称する。
【0022】
管理装置2は、制御装置21と、記憶装置22と、通信装置23とを備える。制御装置21、記憶装置22、および通信装置23は、バス(図示せず)に接続されている。
【0023】
制御装置21は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)を含む集積回路によって構成される。制御装置21は、メモリを含み、メモリに格納されている各種プログラムを実行する。各種プログラムには、オペレーティングシステム等が含まれる。メモリは、たとえば、上記各種プログラムを記憶しているROM(Read Only Memory)、および、ワーキングメモリとして機能し、各種プログラムの実行に必要な各種データを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)を含んで構成される。
【0024】
記憶装置22は、消費電力量をCO2排出量に換算するための第1換算式(第1換算情報)を記憶している。第1換算式は、たとえば、消費電力量に第1CO2排出係数を乗算するものであってもよい。第1CO2排出係数は、たとえば、国、政府、事業者等によって公表される値であってもよい。第1CO2排出係数は、電力の種類(再生可能エネルギか否か等)毎に設定されていてもよい。記憶装置22に記憶された第1換算式は、たとえば、公表された第1CO2排出係数の更新に伴って、制御装置21により更新される。
【0025】
通信装置23は、管理装置3と通信可能に構成される。通信装置23と管理装置3との通信は、たとえば、インターネット等を介して行なわれる。また、通信装置23は、サプライチェーンにおける上流企業の管理装置(図示せず)と通信可能に構成される。通信装置23と上流企業の管理装置との通信は、たとえば、インターネット等を介して行なわれる。
【0026】
制御装置21は、たとえば、サプライチェーンにおける上流企業から受けた、原材料の単位重量あたりのCO2排出量を記憶装置22に記憶させる。制御装置21は、たとえば、製品71のロットを生産するのに用いた原材料の重量(原材料が原料であることを想定してる)を、ロットに含まれる製品71の数で除算し、製品71の単位個数あたりに使用された原材料の重量を算出する。制御装置21は、当該重量に原材料の単位重量あたりのCO2排出量を乗算して、原材料の生産により排出されたCO2排出量Q1bを算出し、これを記憶装置22に記憶させる。
【0027】
また、制御装置21は、製品71を生産するための生産ライン(図示せず)で消費された電力量(消費電力量E)を取得する。本実施の形態における消費電力量Eは、1ロットの生産で消費された電力量である。消費電力量Eは、生産ラインに設けられた電力計測器(図示せず)により計測されてもよいし、管理装置2により計測されてもよい。消費電力量Eは、たとえば、生産ラインが敷設された工場建屋で消費される電力であってよい。工場建屋で消費される電力は、たとえば、空調、照明、部品搬送車(フォークリフト等)、生産ラインのコンベア、インパクトレンチ、組み付け装置等の、製品の生産に関わる全ての機器類を動作させるための電力を含み得る。たとえば、工場建屋に複数の生産ラインが敷設されている場合には、生産ラインで消費される電力は、生産ラインで生産される製品の生産に関わる機器類を動作させるための電力を含み、他の生産ラインで生産される製品の生産に関わる機器類を動作させるための電力を含まないようにしてもよい。
【0028】
制御装置21は、記憶装置22から換算式を読み出す。制御装置21は、消費電力量Eを換算式に入力して、1ロットの生産において生産ラインで排出されたCO2排出量Qcalを算出する。制御装置21は、CO2排出量Qcalを、1ロットに含まれる製品71の数で除算して、A企業の生産ラインで原材料を使用して製品71を生産するために要したCO2排出量Q1aを算出する。
【0029】
制御装置21は、CO2排出量Q1aとCO2排出量Q1bとを加算して、生産工程におけるCO2排出量Q1を算出する。具体的には、生産工程におけるCO2排出量Q1は、以下の式(1)で表わされる。
【0030】
Q1=Q1a+Q1b・・・(1)
制御装置21は、生産工程におけるCO2排出量Q1を記憶装置22に記憶させる。制御装置21は、B企業への製品71の納品を契機として、あるいは、B企業からの求めに応じて、通信装置23を介して、生産工程におけるCO2排出量Q1を管理装置3に送信する。
【0031】
管理装置3は、制御装置31と、記憶装置32と、通信装置33と、読み取り装置34とを備える。制御装置31、記憶装置32、通信装置33、および読み取り装置34は、バス(図示せず)に接続されている。
【0032】
制御装置31は、たとえば、CPUを含む集積回路によって構成される。制御装置31は、メモリを含み、メモリに格納されている各種プログラムを実行する。各種プログラムには、オペレーティングシステム等が含まれる。メモリは、たとえば、上記各種プログラムを記憶しているROM、および、ワーキングメモリとして機能し、各種プログラムの実行に必要な各種データを一時的に格納するRAMを含んで構成される。
【0033】
記憶装置32は、A企業(上流企業)から購入した製品71のCO2排出量Qを記憶する。CO2排出量Qは、下記の式(2)で表わされ、生産工程におけるCO2排出量Q1と、輸送工程におけるCO2排出量Q2とを含む。
【0034】
Q=Q1+Q2・・・(2)
輸送工程におけるCO2排出量Q2の詳細は後述するが、輸送工程におけるCO2排出量Q2は、A企業からB企業に製品71を輸送するために排出されたCO2排出量である。制御装置31は、通信装置33を介して、輸送工程におけるCO2排出量Q2を管理装置5から取得する。
【0035】
通信装置33は、管理装置2および管理装置5と通信可能に構成される。通信装置23と、管理装置2および管理装置5との通信は、たとえば、インターネット等を介して行なわれる。
【0036】
読み取り装置34は、バーコード8を読み取ることが可能に構成されている。読み取り装置34は、バーコードリーダを含む。図2に示されるように、梱包箱7には、バーコード8が付されている。読み取り装置34は、バーコード8を読み取ることにより、製品71の製品情報を取得する。
【0037】
製品71の製品情報は、納品番号、識別番号、納品日時、納入元企業(本実施の形態ではA企業)の情報、および、梱包箱7内の製品71の個数の情報等を含む。制御装置31は、読み取り装置34が読み取った製品情報を記憶装置32に記憶させる。
【0038】
制御装置31は、通信装置33を介して、製品情報に含まれる納品番号(あるいは識別番号)をA企業の管理装置2に送信する。本実施の形態において、納品番号(あるいは識別番号)の送信は、生産工程におけるCO2排出量Q1の開示要求を意味する。開示要求に対する応答として、制御装置31は、通信装置33を介して、管理装置2から生産工程におけるCO2排出量Q1を取得する。
【0039】
また、制御装置31は、通信装置33を介して、管理装置5から輸送工程におけるCO2排出量Q2を取得する。詳細には、制御装置31は、梱包箱7の輸送によって排出されたCO2排出量Q2totalを管理装置5から取得し、CO2排出量Q2totalを梱包箱7内の製品71の個数で除算して、輸送工程におけるCO2排出量Q2を算出する。制御装置31は、生産工程におけるCO2排出量Q1と、輸送工程におけるCO2排出量Q2とを、製品71の識別番号(あるいは納品番号)に紐付けて、製品71のCO2排出量Qとして、記憶装置32に記憶させる。
【0040】
管理装置5は、輸送車6を管理する。本実施の形態では、輸送車6は、内燃機関(図示せず)を備えた車両である。また、輸送車6は、いずれも図示しないが、通信装置およびGPS(Global Positioning System)受信機を備える。通信装置は、たとえば、DCM(Data Communication Module)であってよい。輸送車6は、通信装置を介して、管理装置5と通信可能に構成されている。輸送車6は、位置情報、燃料消費量の情報、および、状態情報を所定周期で管理装置5に送信するように構成されている。状態情報は、輸送車6の走行システムが起動状態であるか、スリープ状態であるかを示す情報である。燃料消費量の情報は、所定周期の間に輸送車6で消費された燃料の量を示す。燃料消費量の情報は、燃料の残量の情報であってもよい。輸送車6は、本開示に係る「移動体」の一例に相当する。
【0041】
管理装置5は、制御装置51と、記憶装置52と、通信装置53とを備える。制御装置51、記憶装置52、および通信装置53は、バス(図示せず)に接続されている。
【0042】
制御装置51は、たとえば、CPUを含む集積回路によって構成される。制御装置51は、メモリを含み、メモリに格納されている各種プログラムを実行する。各種プログラムには、オペレーティングシステム等が含まれる。メモリは、たとえば、上記各種プログラムを記憶しているROM、および、ワーキングメモリとして機能し、各種プログラムの実行に必要な各種データを一時的に格納するRAMを含んで構成される。
【0043】
記憶装置52は、輸送車6から受信した各種の情報(位置情報、燃料消費量の情報、および、状態情報)を記憶する。また、記憶装置52は、A企業の位置情報、および、B企業の位置情報を記憶している。すなわち、記憶装置52は、輸送車6による荷物の輸送元(本実施の形態ではA企業)、および、荷物の輸送先(本実施の形態ではB企業)の位置情報を記憶している。
【0044】
また、記憶装置52は、燃料消費量をCO2排出量に換算するための第2換算式(第2換算情報)を記憶している。第2換算式は、たとえば、燃料消費量に第2CO2排出係数を乗算するものであってもよい。第2CO2排出係数は、たとえば、国、政府、事業者等によって公表される値であってもよい。第2CO2排出係数は、たとえば、燃料の種類(ガソリン、軽油、バイオディーゼル等)毎に設定されていてもよい。記憶装置52に記憶された第2換算式は、たとえば、公表された第2CO2排出係数の更新に伴って、制御装置51により更新される。
【0045】
通信装置53は、輸送車6および管理装置3と通信可能に構成される。通信装置53と、輸送車6および管理装置3との通信は、たとえば、インターネット等を介して行なわれる。
【0046】
制御装置51は、輸送車6がA企業からB企業へ製品71(梱包箱7)を輸送するために排出したCO2排出量である、輸送工程におけるCO2排出量Q2totalを算出する。具体的には、制御装置51は、輸送工程の開始時点T1から輸送工程の完了時点T2までの間における輸送車6の燃料消費量を、上記第2換算式を用いてCO2排出量に換算し、換算された値を輸送工程におけるCO2排出量Q2totalとする。制御装置51は、CO2排出量Q2totalを梱包箱7内の製品71の数で除算して、製品71の単位個数あたりの輸送工程におけるCO2排出量Q2を算出する。
【0047】
制御装置51は、開始時点T1および完了時点T2を、輸送車6から受ける位置情報および状態情報に基づいて決定する。制御装置51は、A企業の敷地29内において、輸送車6の状態情報がスリープ状態から起動状態に切り替わった時点を開始時点T1に決定する。制御装置51は、B企業の敷地39内において、輸送車6の状態情報が起動状態からスリープ状態に切り替わった時点を完了時点T2に決定する。
【0048】
制御装置51は、通信装置53を介して、輸送工程におけるCO2排出量Q2をB企業の管理装置3に送信する。
【0049】
図3は、管理装置2の制御装置21、管理装置3の制御装置31、および管理装置5の制御装置51の機能ブロック図である。制御装置21は、受信部211と、読み出し部212と、報告部213とを含む。制御装置31は、受信部311と、格納部312と、要求部313とを含む。制御装置51は、決定部511と、監視部512と、演算部513と、報告部514とを含む。制御装置21,31,51の各々は、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、各部の機能を実現する。なお、上記の各部を、たとえば、専用のハードウェア(電気回路)により実現することも可能である。
【0050】
決定部511は、輸送車6から所定周期で位置情報および状態情報を取得し、これらの情報を用いて、輸送工程の開始時点T1および完了時点T2を決定する。決定部511は、位置情報に基づいて、輸送車6の位置を特定する。決定部511は、A企業の敷地29内において、輸送車6の状態情報がスリープ状態から起動状態に切り替わった時点を開始時点T1に決定する。決定部511は、開始時点T1が決定されたことを監視部512に通知する。決定部511は、B企業の敷地39内において、輸送車6の状態情報が起動状態からスリープ状態に切り替わった時点を完了時点T2に決定する。決定部511は、完了時点T2が決定されたことを監視部512に通知する。
【0051】
監視部512は、輸送車6から所定周期で燃料消費量の情報を取得する。監視部512は、決定部511から開始時点T1が決定されたことの通知を受けてから、完了時点T2が決定されたことの通知を受けるまでの間に積算した燃料消費量の情報を演算部513に出力する。
【0052】
演算部513は、監視部512から受けた燃料消費量の情報と、第2換算式とを用いて、輸送工程におけるCO2排出量Q2totalを算出する。すなわち、演算部513は、開始時点T1から完了時点T2までに蓄積された燃料消費量の合計値を、第2換算式を用いてCO2排出量に換算して、輸送工程におけるCO2排出量Q2totalとする。演算部513は、算出された輸送工程におけるCO2排出量Q2totalを報告部514に出力する。
【0053】
報告部514は、通信装置53を介して、輸送工程におけるCO2排出量Q2totalをB企業の管理装置3に送信する。なお、報告部514は、製品71あるいは梱包箱7を特定するための情報と対応付けて、輸送工程におけるCO2排出量Q2totalをB企業の管理装置3に送信する。上記特定するための情報は、たとえば、納品番号であってもよいし、製品71の各々に付された識別番号であってもよい。識別番号はロット単位に割り当てられていてもよい(すなわち、同じロットの製品71は同じ識別番号を有する)。
【0054】
受信部311は、C企業の管理装置5から送信された、輸送工程におけるCO2排出量Q2totalを受信する。受信部311は、輸送工程におけるCO2排出量Q2totalを格納部312に出力する。
【0055】
格納部312は、輸送工程におけるCO2排出量Q2totalを、梱包箱7に梱包されている製品71の数で除算し、製品71の単位個数あたりの輸送工程におけるCO2排出量Q2を算出する。そして、格納部312は、製品71を特定するための納品番号と紐付けて、輸送工程におけるCO2排出量Q2を記憶装置32に記憶させる。なお、輸送車6に複数の梱包箱が積載されている場合には、たとえば、CO2排出量Q2totalを梱包箱の積載数に基づいて梱包箱毎に按分した後に、単位個数あたりの輸送工程におけるCO2排出量Q2を算出してもよい。さらに、CO2排出量Q2totalは、梱包箱の重量比に基づいて梱包箱毎に按分されてもよい。
【0056】
受信部311は、また、輸送工程におけるCO2排出量Q2を受信したことを要求部313に通知する。
【0057】
要求部313は、通信装置33を介して、識別番号(あるいは納品番号)をA企業の管理装置2に送信する。この応答として、要求部313は、通信装置33を介して、A企業の管理装置2から、製品71の生産工程におけるCO2排出量Q1を取得する。要求部313は、生産工程におけるCO2排出量Q1を格納部312に出力する。なお、要求部313は、梱包箱7内の全ての製品71の識別番号をA企業の管理装置2に送信してもよいし、納品番号をA企業の管理装置2に送信してもよい。
【0058】
格納部312は、生産工程におけるCO2排出量Q1を、輸送工程におけるCO2排出量Q2と紐付けて、記憶装置32に記憶させる。生産工程におけるCO2排出量Q1および輸送工程におけるCO2排出量Q2は、製品71のCO2排出量Qとして記憶装置32に記憶される。生産工程におけるCO2排出量Q1と輸送工程におけるCO2排出量Q2との紐付けは、たとえば、製品71の識別番号を用いて行なうことができる。なお、生産工程におけるCO2排出量Q1と輸送工程におけるCO2排出量Q2とを紐付ける手法は、上記の手法に限られるものではなく、種々の公知の手法を用いることができる。
【0059】
受信部211は、B企業の管理装置3から送信された、識別番号(あるいは納品番号)を受信する。受信部211は、識別番号(あるいは納品番号)を読み出し部212に出力する。
【0060】
読み出し部212は、記憶装置22から、識別番号(あるいは納品番号)により特定される生産工程におけるCO2排出量Q1を読み出す。読み出し部212は、読み出された生産工程におけるCO2排出量Q1を報告部213に出力する。
【0061】
報告部213は、通信装置23を介して、生産工程におけるCO2排出量Q1を管理装置3に送信する。これにより、B企業に対して、納入製品の生産工程におけるCO2排出量Q1が報告される。
【0062】
図4は、管理装置5の制御装置51により実行される、輸送工程のCO2排出量Q2totalを報告するための処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、輸送車6がA企業の敷地29内に到着したことを検知した際に開始される。図4に示すフローチャートの各ステップ(以下ステップを「S」と略す)は、制御装置51によるソフトウェア処理によって実現される場合について説明するが、その一部あるいは全部が制御装置51内に作製されたハードウェア(電気回路)によって実現されてもよい。
【0063】
S1において、制御装置51は、輸送車6から受信した位置情報および状態情報に基づいて、製品71(梱包箱7)の輸送工程が開始されたか否かを判断する。具体的には、制御装置51は、輸送車6がA企業の敷地29内におり、かつ、輸送車6の状態情報がスリープ状態から起動状態に切り替わった場合に、輸送工程が開始されたと判断する。すなわち、制御装置51は、A企業の敷地29内において、輸送車6の状態情報がスリープ状態から起動状態に切り替わった時点を、開始時点T1として決定する。制御装置51は、輸送工程が開始されていない(状態情報がスリープ状態ある)と判断した場合(S1においてNO)、輸送工程が開始されるのを待つ。制御装置51は、輸送工程が開始されたと判断した場合(S1においてYES)、処理をS2に進める。
【0064】
S2において、制御装置51は、燃料消費量の積算を開始する。制御装置51は、開始時点T1から完了時点T2までの燃料消費量を積算する。
【0065】
S3において、制御装置51は、輸送車6から受信した位置情報および状態情報に基づいて、製品71(梱包箱7)の輸送工程が完了されたか否かを判断する。具体的には、制御装置51は、輸送車6がB企業の敷地39内におり、かつ、輸送車6の状態情報が起動状態からスリープ状態に切り替わった場合に、輸送工程が完了されたと判断する。すなわち、制御装置51は、B企業の敷地39内において、輸送車6の状態情報が起動状態からスリープ状態に切り替わった時点を、完了時点T2として決定する。制御装置51は、輸送工程が完了されていない(状態情報が起動状態である)と判断した場合(S3においてNO)、燃料消費量の積算を継続する。制御装置51は、輸送工程が完了されたと判断した場合(S3においてYES)、処理をS4に進める。
【0066】
S4において、制御装置51は、燃料消費量の積算を終了する。これにより、開始時点T1から完了時点T2までの燃料消費量が積算される。
【0067】
S5において、制御装置51は、記憶装置52から第2換算式を読み出し、積算された燃料消費量と、第2換算式とを用いて、輸送工程におけるCO2排出量Q2totalを算出する。
【0068】
S6において、制御装置51は、通信装置53を介して、輸送工程におけるCO2排出量Q2totalをB企業の管理装置3に送信する。これによって、輸送工程におけるCO2排出量Q2totalがB企業に報告される。
【0069】
B企業の管理装置3は、報告されたCO2排出量Q2totalを、梱包箱7に梱包された製品71の数で按分することにより、製品71の単位数あたりの、輸送工程におけるCO2排出量Q2を算出することができる。
【0070】
以上のように、本実施の形態に係る管理システム1では、輸送車6を管理する管理装置5は、A企業からB企業に製品71を輸送するために輸送車6が消費した燃料消費量に基づいて、輸送工程におけるCO2排出量Q2totalを算出する。実際の燃料消費量に基づいて輸送工程におけるCO2排出量Q2totalが算出されるので、正確なCO2排出量を算出することができる。
[変形例1]
実施の形態では、輸送車6から取得した位置情報および状態情報に基づいて、輸送工程の開始時点T1および完了時点T2を決定した。しかしながら、開始時点T1および完了時点T2を決定する手法は、上記に限られるものではない。変形例1では、梱包箱7に付された輸送用のバーコードの読み取りに基づいて、輸送工程の開始時点T1および完了時点T2を決定する。
【0071】
図5は、変形例1に係る梱包箱7Aの一例を示す図である。梱包箱7Aには、バーコード8に加えて、輸送用のバーコード9が付されている。輸送車6には、輸送車6と対応付けられた端末装置(図示せず)が備えられている。輸送車6のドライバは、A企業から梱包箱7Aを受け取った際に、端末装置の受領ボタンを選択して、バーコード9を読み取る。端末装置は、自身の識別番号とともに、受領情報およびバーコードの読み取り情報を管理装置5に送信する。輸送車6のドライバは、B企業に梱包箱7Aを引き渡す際に、端末装置の引き渡しボタンを選択して、バーコード9を読み取る。端末装置は、自身の識別番号とともに、引き渡し情報およびバーコードの読み取り情報を管理装置5に送信する。
【0072】
管理装置5(制御装置51)は、受領情報を受信した時点を、開始時点T1とすることができる。管理装置5(制御装置51)は、引き渡し情報を受信した時点を、完了時点T2とすることができる。受領情報がいずれの配送物のものであるかは、たとえば、バーコードの読み取り情報に基づいて判断することができる。変形例1の構成においても、実施の形態と同様の効果を奏することが可能である。
【0073】
[変形例2]
実施の形態および変形例1では、移動体が内燃機関を備えた車両である例について説明した。しかしながら、移動体は、内燃機関を備えた車両に限られるものではない。たとえば、移動体は、電気自動車であってもよい。この場合、移動体は、バッテリおよびバッテリの電力を用いて駆動する駆動装置とを含む。移動体が電気自動車である場合には、開始時点T1から完了時点T2までの移動体の電力消費量に基づいて、輸送工程のCO2排出量Q2totalを算出すればよい。また、移動体がハイブリッド車である場合には、開始時点T1から完了時点T2までの移動体の電力消費量および燃料消費量に基づいて、輸送工程のCO2排出量Q2totalを算出すればよい。
【0074】
さらに、移動体は、四輪車に限られるものではなく、二輪車であってもよい。また、移動体は、航空機、鉄道、ヘリコプター等であってもよい。
【0075】
[変形例3]
管理システム1に含まれる企業間でコンソーシアムを形成し、分散型台帳技術を用いて企業間で情報を共有することも考えられる。この場合には、管理装置2,3,5をノードとして機能させ、サプライチェーンに含まれる他の企業のノードと分散型台帳ネットワークを形成させてもよい。たとえば、管理装置2(ノード)は、下流企業であるB企業への報告対象である生産工程におけるCO2排出量Q1の情報を含むトランザクションデータを分散型台帳ネットワークに送信する。このトランザクションデータをB企業の管理装置3(ノード)が承認することにより、生産工程におけるCO2排出量Q1が下流企業に報告される。また、管理装置5(ノード)は、製品71の輸送先であるB企業への報告対象である輸送工程におけるCO2排出量Q2totalの情報を含むトランザクションデータを分散型台帳ネットワークに送信する。このトランザクションデータをB企業の管理装置3(ノード)が承認することにより、輸送工程におけるCO2排出量Q2totalが下流企業に報告される。分散型台帳技術を用いてCO2排出量を報告することにより、情報の耐改ざん性を高めることができる。
【0076】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
1 管理システム、2,3,5 管理装置、6 輸送車、7,7A 梱包箱、8,9 バーコード、21,31,51 制御装置、22,32,52 記憶装置、23,33,53 通信装置、34 読み取り装置、71 製品、211 受信部、212 読み出し部、213 報告部、311 受信部、312 格納部、313 要求部、511 決定部、512 監視部、513 演算部、514 報告部。
図1
図2
図3
図4
図5