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特許7704111表面検査装置、表面検査方法、及び表面検査プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】表面検査装置、表面検査方法、及び表面検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20250701BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022142438
(22)【出願日】2022-09-07
(65)【公開番号】P2024037525
(43)【公開日】2024-03-19
【審査請求日】2024-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 泰成
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-163771(JP,A)
【文献】特開2014-145599(JP,A)
【文献】特開2014-145600(JP,A)
【文献】特開2011-208941(JP,A)
【文献】特開2010-112941(JP,A)
【文献】特開2016-125859(JP,A)
【文献】特開2007-192623(JP,A)
【文献】特開2009-156872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の表面の状態を検査する表面検査装置であって、
前記表面に対して、波長域が互いに異なる照明光を照射するとともに、白色光と前記照明光とを交互に照射する照射部と、
前記表面で反射した反射光を検出して、前記表面を撮像する撮像部と、
撮像した画像に基づいて合成画像を生成し、前記表面の状態を検査する処理部と、を備え、
前記照射部を用いて、前記照明光と白色光とを交互に照射しながら、前記撮像部を用いて、前記照明光による2つ以上のライン画像と、前記白色光によるライン画像と、を撮像し、
前記処理部によって、前記照明光による2つ以上のライン画像の各対応ピクセルについて、それぞれの隣接ピクセル間の明るさの差異を判定し、明るさ差異が大きい方の前記ライン画像におけるピクセルを選択して合成した合成画像を生成し、
前記合成画像に基づいて凹凸欠陥部を特定し、前記白色光によるライン画像に基づいて色欠陥を特定する
表面検査装置。
【請求項2】
前記照明光は、赤色の波長域、青色の波長域、及び緑色の波長域を有する光を含む、
請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記撮像部は、前記照明光を検出する第一の検出部と、前記白色光を検出する第二の検出部を備える、
請求項1又は2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
検査対象の表面の状態を検査する表面検査方法であって、
波長域が互いに異なる照明光を照射するとともに、白色光と前記照明光とを交互に照射しながら、前記照明光による2つ以上のライン画像と、前記白色光によるライン画像と、を撮像し、
前記照明光による2つ以上のライン画像の各対応ピクセルについて、それぞれの隣接ピクセル間の明るさの差異を判定し、明るさ差異が大きい方の前記ライン画像におけるピクセルを選択して合成した合成画像を生成し、
前記合成画像に基づいて凹凸欠陥部を特定し、前記白色光によるライン画像に基づいて色欠陥を特定する
表面検査方法。
【請求項5】
検査対象の表面の状態を検査する表面検査プログラムであって、
波長域が互いに異なる照明光を照射するとともに、白色光と前記照明光とを交互に照射しながら、前記照明光による2つ以上のライン画像と、前記白色光によるライン画像と、を撮像する処理と、
前記照明光による2つ以上のライン画像の各対応ピクセルについて、それぞれの隣接ピクセル間の明るさの差異を判定し、明るさ差異が大きい方の前記ライン画像におけるピクセルを選択して合成した合成画像を生成する処理と、
前記合成画像に基づいて凹凸欠陥部を特定し、前記白色光によるライン画像に基づいて色欠陥を特定する処理と、をコンピュータに実行させる、
表面検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面検査装置、表面検査方法、及び表面検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車工場の生産ラインでは、自動車ボディの塗膜表面における微細な凹凸からなる欠陥部の検査と塗装色欠陥の検査とをする。
例えば、特許文献1には、微細な凹凸からなる欠陥部を検査する表面検査装置が開示されている。波長域が互いに異なる複数の照明光を検査面に照射し、検査面で反射した反射光を撮像して、各波長域別の画像データを取得する。取得した各波長域別の画像データから検査対象を抽出する画像処理を行い、反射光の各波長別の正反射量と拡散反射量のライン解析により凹凸欠陥を検査する。
【0003】
特許文献2には、塗装色欠陥を検査する表面検査装置が開示されている。LEDからなる照明手段を用いて塗装面の焼き付きを防ぐとともに、車輌の塗装面の色の違いによる検
査ムラをなくして検査率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-112941号公報
【文献】特開2012-078197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示された表面検査装置では、微細な凹凸からなる欠陥部を検査するが、塗装色欠陥を検査することができない。一方で、上述した特許文献2に開示された表面検査装置では、塗装色欠陥を検査するが、微細な凹凸からなる欠陥部を検査することができない。すなわち、自動車ボディの塗膜表面における微細な凹凸からなる欠陥部の検査と塗装色欠陥の検査とを同時にできず、生産性に欠けるといった問題があった。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みなされたものであって、生産性を向上させる表面検査装置、表面検査方法、及び表面検査プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る表面検査装置は、検査対象の表面の状態を検査する表面検査装置であって、前記表面に対して、波長域が互いに異なる照明光を照射するとともに、白色光と前記照明光とを交互に照射する照射部と、前記表面で反射した反射光を検出して、前記表面を撮像する撮像部と、撮像した画像に基づいて合成画像を生成し、前記表面の状態を検査する処理部と、を備え、前記照射部を用いて、前記照明光と白色光とを交互に照射しながら、前記撮像部を用いて、前記照明光による2つ以上のライン画像と、前記白色光によるライン画像と、を撮像し、前記処理部によって、前記照明光による2つ以上のライン画像から合成画像を生成し、前記合成画像と前記白色光によるライン画像とに基づいて、前記表面の状態を検査する。
【0008】
本開示に係る表面検査装置は、塗装表面における微細な凹凸からなる欠陥部の検査と塗装色欠陥の検査とを同時におこなうことができるため、生産性を向上させることができる。
【0009】
前記照明光は、赤色の波長域、青色の波長域、及び緑色の波長域を有する光であってもよい。このような構成により、微細な凹凸からなる欠陥の検出精度を高めることができる。
【0010】
前記撮像部は、前記照明光を検出する第一の検出部と、前記白色光を検出する第二の検出部を備える。このような構成により、照明光と白色光とを別々に検出して、微細な凹凸からなる欠陥部の検査と塗装色欠陥の検査とを同時におこなうことができる。
【0011】
本開示に係る表面検査方法は、検査対象の表面の状態を検査する表面検査方法であって、波長域が互いに異なる照明光を照射するとともに、白色光と前記照明光とを交互に照射しながら、前記照明光による2つ以上のライン画像と、前記白色光によるライン画像と、を撮像し、前記照明光による2つ以上のライン画像から合成画像を生成し、前記合成画像と前記白色光によるライン画像とに基づいて、前記表面の状態を検査する。
【0012】
本開示に係る表面検査方法は、塗装表面における微細な凹凸からなる欠陥部の検査と塗装色欠陥の検査とを同時におこなうことができるため、生産性を向上させることができる。
【0013】
本開示に係る表面検査プログラムは、検査対象の表面の状態を検査する表面検査プログラムであって、波長域が互いに異なる照明光を照射するとともに、白色光と前記照明光とを交互に照射しながら、前記照明光による2つ以上のライン画像と、前記白色光によるライン画像と、を撮像する処理と、前記照明光による2つ以上のライン画像から合成画像を生成する処理と、前記合成画像と前記白色光によるライン画像とに基づいて、前記表面の状態を検査する処理と、をコンピュータに実行させる。
【0014】
本開示に係る表面検査プログラムは、塗装表面における微細な凹凸からなる欠陥部の検査と塗装色欠陥の検査とを同時におこなうことができるため、生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示により、生産性を向上できる表面検査装置、表面検査方法、及び表面検査プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1に係る表面検査装置を例示したブロック図である。
図2】実施形態1に係る表面検査装置によって自動車の車体表面を検査する方法の概略図である。
図3】実施形態1に係る表面検査装置における照射部と撮像部とを模式的に示す図である。
図4】実施形態1に係る表面検査装置10における処理部13による画像合成方法を示した模式図である。
図5】実施形態1に係る処理部13により複数の白色光によるライン画像を合わせて得られた1枚の合成画像M1を示す図である。
図6】実施形態1に係る表面検査方法を例示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
なお、当然のことながら、図面に示した右手系xyz直交座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、z軸正向きが鉛直上向き、xy平面が水平面である。
【0018】
(実施形態1)
<表面欠陥>
自動車の表面(ボディ)に塗装をした後に、塗装による表面欠陥を検査する。表面欠陥は、凹凸欠陥と、色欠陥とがある。
凹凸欠陥とは、塗装表面と自動車の表面との間にほこり、ピンホールが存在している欠陥のことである。また、凹凸欠陥は、塗装表面の端部にダレが生じている欠陥も含む。
色欠陥とは、塗装表面に塗装色以外の色が混ざっている欠陥のことである。
【0019】
<表面検査装置>
まず、図1図2、及び図3を参照して、実施形態1に係る表面検査装置の構成を説明する。図1は、実施形態1に係る表面検査装置を例示したブロック図である。図2は、実施形態1に係る表面検査装置によって自動車の車体表面を検査する方法の概略図である。図2は、x軸正方向を移動方向Fとして撮像している。図3は、実施形態1に係る表面検査装置における照射部と撮像部とを模式的に示す図である。図3は、x軸正方向を移動方向Fとして撮像している。図1に示すように、表面検査装置10は、照射部11と、撮像部12と、処理部13と、を備える。
【0020】
図2を参照しながら、実施形態1に係る表面検査装置10における照射部11について説明する。照射部11は、自動車の車体表面S1に対して、波長域が互いに異なる照明光を照射するとともに、白色光と照明光とを交互に照射する。ここで、自動車の車体表面S1は自動車の表面に塗装をした表面を示す。照射部11における照明光と白色光との点灯の切替は、70マイクロ秒でおこなわれる。しかし、これに限定されることなく、照射部11における波長域が互いに異なる3つの照明光と白色光との点灯の切替は、70マイクロ秒前後でおこなわれてもよい。以下では、照射部11により照射される照明光と白色光とを区別する必要がない場合、照射光と称する。
【0021】
複数の波長域の光を含む照射光を照射する第1期間と、白色光を照射する第2期間が交互に繰り返される。第1期間は70マイクロ秒、第2期間は70マイクロ秒となる。図2に示した例では、まず、照射部11が波長域が互いに異なる3つの照明光を照射して、ライン画像Aが生ずる。次に、ライン画像Aを撮像後に、照射部11が波長域が互いに異なる3つの照明光を照射して、ライン画像Bが生ずる。続いて、ライン画像Bを撮像後に、照射部11が白色光を照射してライン画像Cが生じる。ライン画像A、Bは第1期間である70マイクロ秒の間に撮像される。ライン画像Cは第2期間である70マイクロ秒の間に撮像される。なお、第1期間と第2期間は同じ時間としているが、異なる時間で合ってもよい。
【0022】
照明光と白色光とを交互に照射するために、照明光と白色光との点灯の切替を行う制御部(図示していない)は照射部11内に備えてもよい。また、照明光と白色光との点灯の切替をおこなう制御部は、照射部11内に備えられることに限定されず、有線又は無線接続して外部に設けられてもよい。
【0023】
図2に示すように、照射部11により照射された照射光は、自動車の車体表面S1で反射されて、光学系レンズユニット12Lを通じて、撮像部12に受光される。
【0024】
図3を参照しながら、実施形態1に係る表面検査装置10における照射部11をより詳細に説明する。
照射部11は、光源11a、光源11b、光源11c、及び光源11dを有する。光源11aと光源11bと光源11cとは、波長域が互いに異なる複数の照射光を出力する。照射部11は、光源11aが赤色、光源11bが青色、光源11cが緑色とされ、光の3原色であるRGB(R:赤、G:緑、B:青)の照明光を出力する。光源11dは白色光を出力する。光源11dからの白色光はRGBの波長の光と、RGB以外の波長の光とを含んでいる。赤色光Rは約640nm、青色光Bは約470nm、緑色光Gは約530nmの波長を有している。照射部11は、表面に対して、RGBの照明光を同時に照射する。つまり、RGBの光を含む照明光を自動車の車体表面S1に照射する。
【0025】
図3に示すように、光源11a、光源11b、及び光源11cは、互いに隣り合う照明光の波長域が大きく異なる順番となるように配置されている。互いに隣り合う光源の波長域が近い配置にした場合(移動方向F前方から後方に向かって光源11a(赤色)、光源11c(緑色)、光源11b(青色)の順番にした場合)、光を分光する際に隣の照射光の影響を受けて検出力が低下することが懸念される。
【0026】
また、図3には特に図示していないが、光源11a、光源11b、光源11c、及び光源11dは、移動方向Fに直交するy軸方向に沿って所定長さに亘って一直線状に延在するように構成され、各色のLEDを用いたライン照明が用いられてもよい。照射部11がy軸方向に延びるライン照射を行うとともに、撮像部12がライン照射された領域からの反射光を検出する。撮像部12はy方向に並んで配置された複数の画素を備えている。照射部11と撮像部12をx軸方向に移動させながら、撮像部12が車体の表面S1を撮像する。このようにすることで、車体全体を検査することができる。
【0027】
次に、図2を参照しながら、実施形態1に係る表面検査装置10における撮像部12について説明する。図2に示すように、撮像部12は、自動車の車体表面S1のデジタル像(画像)を撮像する。撮像部12は、照射部11により照射され自動車の車体表面S1で反射された照射光を、光学系レンズユニット12Lを通じて受光する。
【0028】
図3を参照しながら、実施形態1に係る表面検査装置10における撮像部12についてより具体的に説明する。撮像部12は、図2に示すように、CCD12a、CCD12b、CCD12c、及びCCD12dを有する。CCD12aは、照射部11により照射される波長域が互いに異なる3つの照明光のうち、赤色光を受光する。CCD12bは、照射部11により照射される波長域が互いに異なる3つの照明光のうち、青色光を受光する。CCD12cは、照射部11により照射される波長域が互いに異なる3つの照明光のうち、緑色光を受光する。CCD12dは、照射部11により照射される白色光を受光する。
【0029】
換言すると、撮像部12におけるCCD12aは、照射部11における光源11aに対応し、赤色光を受光する。撮像部12におけるCCD12bは、照射部11における光源11bに対応し、青色光を受光する。撮像部12におけるCCD12cは、照射部11における光源11cに対応し、緑色光を受光する。撮像部12におけるCCD12dは、照射部11における光源11dに対応し、白色光を受光する。
【0030】
さらに、CCD12a、CCD12b、CCD12c、及びCCD12dは、照射部11により照射され自動車の車体表面S1で反射された照射光をそれぞれ受光するようにその角度位置が設定されている。
【0031】
ここで、図3に示した例では、撮像部12がCCD12a、CCD12b、CCD12c、CCD12dを備える。しかし、これに限定されることはなく、撮像部12がRGBの照明光に対応した第一の検出部と、白色光に対応した第二の検出部とを備えてもよい。第一の検出部と第二の検出部とは隣接して配置する必要はなく、例えば、自動車の表面S1の1点を中心に90度離れた位置でもよい。この場合、自動車の表面S1で反射された反射光をフィルタリングして、RGBの照明光が第一の検出部に、白色光が第二の検出部入射される構成にする。
【0032】
図2に示すように、撮像部12は、光学系レンズユニット12Lを有する。光学系レンズユニット12Lは、自動車の車体表面S1の像を拡大又は縮小すると共に、照射部11により照射され自動車の車体表面S1で反射された照射光を分光する。
【0033】
図3を参照しながら、実施形態1に係る表面検査装置10における光学系レンズユニット12Lについてより具体的に説明する。光学系レンズユニット12Lは、図3に示すように、レンズ24と分光手段25とを有する。
【0034】
レンズ24は、自動車の車体表面S1に対する撮像部12の焦点調整を行う。これにより、自動車の車体表面S1の像を拡大又は縮小ができる。
分光手段25は、プリズム、グレーティング、波長フィルタなどの光学素子を備えている。分光手段25は、自動車の車体表面S1で反射した照射光を異なる方向に分光する。分光手段25は、赤色光をCCD12aに受光させ、青色光をCCD12bに受光させ、緑色光を緑色用のCCD12cに受光させ、白色光をCCD12dに受光させる。自動車の車体表面S1で反射した照射光を反射光と称する。
【0035】
図2を参照して、撮像部12が取得する画像について説明する。図2に示すように、照射部11は、70マイクロ秒ごとに、白色光と照明光とを交互に照射する。照射部11の照明光と白色光との点灯の切替に合わせて、撮像部12は自動車の車体表面S1の画像を撮影する。また、照射部11と撮像部12とは、時間の経過とともに、図2に示す移動方向Fに移動する。
【0036】
図2に示した例では、まず、撮像部12は、照射部11が照射する波長域が互いに異なる3つの照明光により生じるライン画像Aを撮像する。次に、撮像部12はライン画像Aを撮像した後に、照射部11が照射する波長域が互いに異なる3つの照明光により生じるライン画像Bを撮像する。続いて、撮像部12はライン画像Bを撮像した後に、照射部11が照射する白色光により生じるライン画像Cを撮像する。
このように、撮像部12は、ライン画像A、ライン画像B、ライン画像Cの順に撮像し続けて、自動車の表面S1全体を連続的にスキャンする。これにより、車体全体を検査することができる。
【0037】
続いて、実施形態1に係る表面検査装置10における処理部13について説明する。処理部13は、撮像部12により撮像した画像に基づいて合成画像を生成し、自動車の車体表面S1を検査する。より具体的には、処理部13は、照明光による少なくとも2つ以上のライン画像から合成画像を生成する。処理部13は、生成した合成画像と、白色光によるライン画像と、に基づいて自動車の車体表面S1を検査する。
処理部13による画像合成方法と合成した画像に基づいて凹凸欠陥及び色欠検出する方法とは、後述する。
【0038】
図2に示すように、処理部13と撮像部12とは、有線または無線接続されている。処理部13と撮像部12との送受信方法は、有線でも無線ネットワークでも構わない。無線ネットワークは、例えば、LTEなどの通信回線規格を用いた無線通信網を含む。無線ネットワークは、無線LAN(Local Area Network)又は第5世代移動通信装置などの無線通信網を含んでいてもよい。
【0039】
ここで、図1に示した照射部11と、撮像部12と、処理部13は、物理的に単一な装置に限られるものではない。つまり、照射部11と、撮像部12と、処理部13は、複数の装置に分散して配置されていてもよい。例えば、照射部11と撮像部12とが物理的に単一の装置で構成され、処理部13がタブレット端末で構成されていてもよい。
【0040】
<画像合成方法>
続いて、図4を参照しながら、実施形態1に係る表面検査装置10における処理部13による画像合成方法について説明する。図4は、実施形態1に係る表面検査装置10における処理部13による画像合成方法を示した模式図である。図4は、照明光によるライン画像と、白色光によるライン画像を示した例である。
【0041】
まず、図4に示すように、撮像部12を用いて撮像したライン画像Aとライン画像Bとライン画像Cとを基に、処理部13が画像を合成する。照明光による画像の一方をライン画像A、他方をライン画像Bとする。ライン画像A、Bは、図3に示したCCD12a、CCD12b、CCD12cにより撮像された画像である。白色光による画像をライン画像Cとする。ライン画像Aとライン画像Bとを合成して得られた画像を、合成画像ABとする。ライン画像Cは、図3に示したCCD12dにより撮像された画像である。ライン画像A、ライン画像B、及びライン画像Cのピクセル数は、撮像部12により決定するが、図4では2048ピクセルの画像とする。図4に示した例では、ライン画像A、ライン画像B、及びライン画像Cにおける1ピクセルは明るさを示している。
【0042】
図4に示した例では、ライン画像Aにおける1~m-1(1≦m≦2048)ピクセルは隣接するピクセル間の少なくとも一方と明るさの差異がある画像であり、ライン画像Aにおけるm~2048ピクセルは隣接するピクセル間で明るさの差異がない画像である。
一方で、図4に示した例では、ライン画像Bにおける1~m-1ピクセルは隣接するピクセル間で明るさの差異がない画像であり、ライン画像Bにおけるm~2048ピクセルは隣接するピクセル間の少なくとも一方と明るさの差異がある画像である。
【0043】
合成ライン画像ABは、ライン画像A及びライン画像Bのうち、隣接するピクセル間の少なくとも一方と明るさの差異があるライン画像を選択した画像である。
図4に示した例では、ライン画像Aにおける1~nピクセル(1≦n≦m≦2048)は隣接するピクセル間の少なくとも一方と明るさの差異がある画像であり、ライン画像Bにおける1~nピクセル(1≦n≦m≦2048)は隣接するピクセル間で明るさの差異がない画像である。そのため、合成画像ABにおける1~nピクセルは、ライン画像Aを選択した画像となる。
また、図4に示した例では、ライン画像Aにおけるm~2048ピクセルは隣接するピクセル間で明るさの差異がない画像であり、ライン画像Bにおけるm~2048ピクセルは隣接するピクセル間の少なくとも一方と明るさの差異がある画像である。そのため、m~2048ピクセルにおける合成ライン画像ABはライン画像Bを選択した画像となる。
【0044】
同様の手順で、n+1~m-1ピクセルにおける合成ライン画像ABをライン画像A又はライン画像Bに基づいて決定する。ここでは、n+1~m-1ピクセルにおける合成ライン画像ABは、ライン画像Aとする。
【0045】
換言すると、図4に示した例では、合成ライン画像ABは、1~m-1ピクセルではライン画像Aであり、m~2048ピクセルではライン画像Bを選択した画像となる。
【0046】
一方で、処理部13は、撮像部12により撮像したライン画像Cをそのまま取得して、活用する。
【0047】
このように、処理部13は、撮像部12が撮像したライン画像A及びライン画像Bから合成画像を生成する。また、処理部13はライン画像Cをそのまま活用する。処理部13は、撮像部12が連続的にスキャンしたことにより取得した複数のライン画像A、ライン画像B、ライン画像Cに対して同様の処理をおこなう。例えば、撮像部12が連続的にスキャンしたことにより取得したライン画像A、ライン画像B、及びライン画像Cのそれぞれの画像数が100枚とすると、処理部13は合成画像ライン画像を100枚生成し、100枚のライン画像Cをそのまま活用する。このとき、処理部13は、100枚の合成画像ライン画像と100枚のライン画像Cとに基づいて、自動車の車体表面S1を検査する。
【0048】
<凹凸欠陥及び色欠陥の検出方法>
続いて、処理部13が、生成した合成画像と白色光によるライン画像とに基づいて自動車の車体表面S1を検査する方法について説明する。
【0049】
まず、処理部13が生成した合成画像に基づいて、自動車の車体表面S1における凹凸欠陥を検査する方法について説明する。処理部13は、複数の生成した合成画像に基づいて、自動車の車体表面S1を検査する。より具体的には、処理部13は、複数の生成した合成画像を合わせて1枚の合成画像とする。1枚の合成画像から凹凸欠陥部を特定する。
【0050】
次に、処理部13が白色光によるライン画像に基づいて、自動車の車体表面S1における色欠陥を検査する方法について説明する。処理部13は、複数の白色光によるライン画像に基づいて、自動車の車体表面S1を検査する。より具体的には、処理部13は、白色光による複数のライン画像を合わせて1枚の合成画像とする。図5は、実施形態1に係る処理部13により複数のライン画像を合わせて得られた1枚の合成画像M1を示す図である。図5に示した例では、合成画像M1は12枚のライン画像Cを合成した2次元画像である。また、図5に示した例では、合成画像M1を構成しているピクセルが白色とする。
【0051】
図5に示すように、合成画像M1は、色欠陥部d1の黒色を除いて白色である。すなわち、合成画像M1を構成しているピクセルの色と異なる色が存在している場合、色欠陥と特定することができる。図5に示した例では、色欠陥部d1が1箇所だけであるが、複数個所存在している場合もある。また、図5に示した例では、合成画像M1を構成しているピクセルを白色として説明したが、これに限定されることなく、合成画像M1を構成しているピクセルの色は、検査対象である自動車の表面の色である。
【0052】
<表面検査方法>
続いて、実施形態1に係る表面検査方法を説明する。図6は、実施形態1に係る表面検査方法を例示したフローチャートである。
【0053】
まず、波長域が互いに異なる照明光を照射するとともに、白色光と照明光とを交互に照射しながら、前記照明光による2つ以上のライン画像と、前記白色光によるライン画像と、を撮像する。(ステップST1)。次に、照明光による2つ以上のライン画像から合成画像を生成する(ステップST2)。次に、合成画像と、白色光によるライン画像と、に基づいて自動車の表面S1の状態を検査する(ステップST3)。
【0054】
上述した処理部13における処理の一部又は全部は、コンピュータプログラムとして実現可能である。このようなプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(ReadOnly Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(ErasablePROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0055】
このように、実施形態1に係る表面検査装置10は、照明光と白色光とを所定の間隔で交互に照射しながら、自動車の表面S1で反射した照明光による2つ以上のライン画像と、自動車の表面S1で反射した白色光によるライン画像と、を撮像する。実施形態1に係る表面検査装置10は、照明光による2つ以上のライン画像から合成画像を生成する。そして、実施形態1に係る表面検査装置10は、合成画像と白色光によるライン画像とに基づいて、自動車ボディの塗膜表面における微細な凹凸からなる欠陥部の検査と塗装色欠陥の検査とを同時にできる。このようにして、実施形態1に係る表面検査装置10は生産性を向上させることができる。
【0056】
上記の実施形態では、表面検査装置10の検査対象として自動車の表面を例にして説明した。しかし、これに限定されることはなく、表面検査装置10の検査対象は、塗装された物体の表面に対して適用できる。例えば、建屋の外壁、内壁、床に対して表面検査装置10を適用できる。
【0057】
なお、本開示は、上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 表面検査装置
11 照射部
11a、11b、11c、11d 光源
12 撮像部
12a、12b、12c、12d CCD
12L 光学系レンズユニット
13 処理部
F 移動方向
24 レンズ
25 分光手段
d1 色欠陥
M1 合成画像
S1 自動車の表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6