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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】ソーラー充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20250701BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250701BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20250701BHJP
【FI】
H02J7/35 B
H02J7/35 J
H02J7/00 P
H02J7/02 F
H02J7/00 303C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022160521
(22)【出願日】2022-10-04
(65)【公開番号】P2024053971
(43)【公開日】2024-04-16
【審査請求日】2024-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 幸範
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0338990(US,A1)
【文献】特開2019-92314(JP,A)
【文献】特開2017-205009(JP,A)
【文献】特表2012-515526(JP,A)
【文献】特開2015-154526(JP,A)
【文献】特開2020-68639(JP,A)
【文献】国際公開第2014/076884(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/35
H02J 7/00
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたソーラー充電システムであって、
ソーラーパネルを用いた発電モジュールと、
前記発電モジュールの発電電力を蓄積する補機バッテリと、
前記補機バッテリから電力が供給される補機負荷と、
前記車両の駆動に用いられる駆動用バッテリと、
前記駆動用バッテリと前記補機バッテリとの間に設けられ、双方のバッテリ間の電力移送を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記補機バッテリへ流入する電流がなく、かつ、前記補機バッテリから流出する電流がない場合、前記発電モジュールの発電電力を前記補機負荷へ供給し、前記発電モジュールの発電電力のうち前記補機負荷によって消費される電力以外の電力を前記駆動用バッテリへ供給する、ソーラー充電システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記補機バッテリへ流入する電流がある場合、又は、前記補機バッテリへ流入する電流がなく、かつ、前記補機バッテリから流出する電流がある場合、前記発電モジュールの発電電力を前記補機バッテリ及び前記補機負荷へ供給し、前記駆動用バッテリへ供給しない、請求項1に記載のソーラー充電システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記発電モジュールから入力する電力を昇圧して前記駆動用バッテリへ出力するDCDCコンバータを含む、請求項1又は2に記載のソーラー充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されたソーラーパネルが発電する電力の供給を制御するソーラー充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ソーラーパネルが発電可能な状態である場合に、ソーラーパネルから補機系統に給電を行ってソーラーパネルが実際に発電する電力を導出し、この導出した実際の発電電力が規定値以上であれば、ソーラーパネルの発電電力でさらに駆動用バッテリを充電する、ソーラー充電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-083248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ソーラーパネルが発電した電力を専用の蓄電素子に蓄えることなく補機バッテリに直接充電するシステムである場合、ソーラーパネルによって規定値以上の電力が発電されていても充電先の補機バッテリの状態によってはソーラー発電電力の充電効率が低下してしまうことがある。よって、ソーラー充電システムにおいて実施するソーラー発電電力の充電手法については、さらなる検討の余地がある。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、ソーラーパネルによって発電された電力の充電効率を向上させることができる、ソーラー充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、車両に搭載されたソーラー充電システムであって、ソーラーパネルを用いた発電モジュールと、発電モジュールの発電電力を蓄積する補機バッテリと、補機バッテリから電力が供給される補機負荷と、車両の駆動に用いられる駆動用バッテリと、駆動用バッテリと補機バッテリとの間に設けられ、双方のバッテリ間の電力移送を制御する制御部と、を備え、制御部は、補機バッテリへ流入する電流がない場合、発電モジュールの発電電力のうち補機負荷によって消費される電力以外の電力を駆動用バッテリへ供給する、ソーラー充電システムである。
【発明の効果】
【0007】
本開示のソーラー充電システムによれば、ソーラーパネルによって発電された電力の充電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係るソーラー充電システムとその周辺部のブロック図
図2】ソーラー充電システムが実行する充電制御の処理フローチャート
図3】電力経路(ソーラー発電モジュール→補機負荷+駆動用バッテリ)の図
図4】電力経路(ソーラー発電モジュール→補機バッテリ+補機負荷)の図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示によるソーラー充電システムは、補機バッテリに流入出する電流に基づいて、ソーラー発電モジュールで発電された電力の供給先(充電先)を決定する。これにより、ソーラー発電電力の大きさにかかわらず補機バッテリの状態に応じて充電効率を向上させることができる。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係るソーラー充電システム1とその周辺部の概略構成を示すブロック図である。図1に例示したソーラー充電システム1は、ソーラー発電モジュール10と、駆動用バッテリ20と、補機バッテリ30と、双方向DCDCコンバータ40と、を備える。また、ソーラー充電システム1は、電力供給可能に補機負荷100に接続されている。
【0011】
このソーラー充電システム1は、一例として、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、および電気自動車(BEV)などの車両に搭載され得る。
【0012】
ソーラー発電モジュール10は、太陽光の照射を受けて発電する発電装置であり、発電した電力を、ソーラー発電モジュール10に接続される補機バッテリ30や補機負荷100などに出力する。このソーラー発電モジュール10は、太陽電池セルの集合体であるソーラーパネルや、ソーラーパネルで発電された電力を所定の電圧で出力するソーラーDCDCコンバータや、最大電力点追従(MPPT)制御を実行するソーラー制御部などを含んで構成される(図示せず)。ソーラーパネルの発電電力は、図示しないセンサーや計測器の測定値などから算出される。
【0013】
駆動用バッテリ20は、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池などの、充放電可能に構成された二次電池である。この駆動用バッテリ20は、車両を駆動させるための主機的な機器(図示せず)と接続されており、この主機的な機器の動作に必要な電力を供給することができる。主機的な機器としては、スタータモーターや走行用電動モーターなどを例示することができる。駆動用バッテリ20は、ソーラー発電モジュール10のソーラーパネルで発生した電力によって充電が可能に、双方向DCDCコンバータ40を介してソーラー発電モジュール10と接続されている。また、駆動用バッテリ20は、補機バッテリ30に蓄えられた電力によって充電が可能に、双方向DCDCコンバータ40を介して補機バッテリ30と接続されている。この駆動用バッテリ20は、補機バッテリ30よりも定格電圧が高い高圧バッテリである。
【0014】
補機バッテリ30は、例えばリチウムイオン電池や鉛蓄電池などの、充放電可能に構成された二次電池である。この補機バッテリ30は、補機負荷100に対して、補機負荷100の動作に必要な電力を供給することができる。補機バッテリ30は、ソーラー発電モジュール10のソーラーパネルで発生した電力によって充電が可能に、ソーラー発電モジュール10と接続されている。また、補機バッテリ30は、駆動用バッテリ20に蓄えられた電力によって充電が可能に、双方向DCDCコンバータ40を介して駆動用バッテリ20と接続されている。この補機バッテリ30の充電量(蓄電量)や補機バッテリ30に流入出する電流などは、図示しないセンサーや計測器などによって監視されている。
【0015】
双方向DCDCコンバータ40は、入力された電力を所定の電圧の電力に変換して出力することができる双方向型の電力変換器である。この双方向DCDCコンバータ40は、一方端(1次側という)がソーラー発電モジュール10、補機バッテリ30、および補機負荷100に接続されており、他方端(2次側という)が駆動用バッテリ20に接続されている。双方向DCDCコンバータ40は、1次側に接続されたソーラー発電モジュール10および補機バッテリ30が出力する電力を、2次側に接続された駆動用バッテリ20に供給(ポンピング充電)することができる。また、双方向DCDCコンバータ40は、2次側に接続された駆動用バッテリ20の電力を、1次側に接続された補機バッテリ30および補機負荷100に供給(汲み出し充電)することができる。この電力供給の際、双方向DCDCコンバータ40は、1次側に入力される補機バッテリ30の電圧を昇圧して2次側の出力電圧とし(昇圧動作時)、また2次側に入力される駆動用バッテリ20の電圧を降圧して1次側の出力電圧とする(降圧動作時)。なお、双方向DCDCコンバータ40に代えて、単方向DCDCコンバータを、電力移送の方向を互いに逆にして2つ設けてもよい。
【0016】
上述した双方向DCDCコンバータ40は、変換動作を制御する電子制御ユニット(図示せず)などと共に、駆動用バッテリ20と補機バッテリ30との間の電力移送を制御する制御部を構成する。この制御部は、ソーラー発電モジュール10のソーラーパネルが発電する電力(ソーラー発電電力)や、補機バッテリ30の蓄電量および補機バッテリ30に流入出する電流などを、取得することができる。制御部が実行する制御については、後述する。なお、この制御部は、双方向DCDCコンバータ40と独立した構成として設けられてもよい。
【0017】
補機負荷100は、車両に搭載された様々な補機的な機器である。補機負荷100は、ソーラー発電モジュール10が出力する発電電力や補機バッテリ30に蓄えられた電力の供給を受けて動作する。この補機的な機器としては、ヘッドランプや室内灯などの灯火機器、ヒーターやエアコンなどの空調機器、および自動運転や先進運転支援のシステムなどを例示することができる。
【0018】
[制御]
次に、図2図3、および図4をさらに参照して、本実施形態に係るソーラー充電システム1で行われる制御を説明する。図2は、ソーラー充電システム1が実行する充電制御の処理手順を説明するフローチャートである。図3は、ソーラー発電モジュール10から補機負荷100および駆動用バッテリ20への電力供給(充電)状態を説明する図である。図4は、ソーラー発電モジュール10から補機バッテリ30および補機負荷100への電力供給(充電)状態を説明する図である。
【0019】
図2に例示した充電制御は、例えば、ソーラー発電モジュール10のソーラーパネルが発電を行うと開始され、ソーラーパネルが発電しなくなるまで繰り返し実行される。
【0020】
(ステップS201)
ソーラー充電システム1は、補機バッテリ30に流入する電流がないか否か(ゼロか否か)を判断する。この判断は、補機バッテリ30が充電可能である状態であるか否かを把握するために行われる。補機バッテリ30へ流入する電流の発生源(供給源)は、典型的にはソーラー発電モジュール10である。電流の発生源がソーラー発電モジュール10である場合に補機バッテリ30に流入する電流がなければ、ソーラーパネルが発電する電力に余裕があると判断することができる。なお、電流の発生源としては、補機バッテリ30に接続される駆動用バッテリ20以外の他の電源系統(例えば、バックアップ電源系統)も含まれる。
【0021】
ソーラー充電システム1が、補機バッテリ30に流入する電流がない(ゼロ)と判断した場合は(ステップS201、はい)、ステップS202に処理が進む。一方、ソーラー充電システム1が、補機バッテリ30に流入する電流があると判断した場合は(ステップS201、いいえ)、ステップS204に処理が進む。
【0022】
(ステップS202)
ソーラー充電システム1は、補機バッテリ30から流出する電流がないか否か(ゼロか否か)を判断する。この判断は、補機バッテリ30から駆動用バッテリ20への電力移送(ポンピング充電)が実施されているかを把握するために行われる。ポンピング充電が実施されていれば、すでに双方向DCDCコンバータ40が高効率で昇圧動作を行っているものと判断することができる。このような場合、ソーラーパネルが発電する電力を昇圧して駆動用バッテリ20へ追加供給してしまうと、双方向DCDCコンバータ40の昇圧効率が返って低下するおそれがある。
【0023】
ソーラー充電システム1が、補機バッテリ30から流出する電流がない(ゼロ)と判断した場合は(ステップS202、はい)、ステップS203に処理が進む。一方、ソーラー充電システム1が、補機バッテリ30から流出する電流があると判断した場合は(ステップS202、いいえ)、ステップS204に処理が進む。
【0024】
(ステップS203)
ソーラー充電システム1は、ソーラー発電モジュール10のソーラーパネルによって発電される電力を、補機負荷100に供給する。さらに、ソーラー充電システム1は、このソーラーパネルの発電電力のうち補機負荷100で消費されずに余った電力(余剰電力)を、双方向DCDCコンバータ40を介して駆動用バッテリ20に出力(充電)する。ソーラー発電モジュール10から補機負荷100および駆動用バッテリ20への電力供給状態は、図3に示すとおりである。
【0025】
ソーラー充電システム1によって、補機バッテリ30の状態に基づいて、ソーラーパネルの発電電力が補機負荷100に供給され、かつ、その余剰電力が駆動用バッテリ20へ充電されると、本充電制御が終了する。
【0026】
(ステップS204)
ソーラー充電システム1は、ソーラー発電モジュール10のソーラーパネルによって発電される電力を、補機バッテリ30に供給(充電)すると共に、補機負荷100に供給する。ソーラー発電モジュール10から補機バッテリ30および補機負荷100への電力供給状態は、図4に示すとおりである。
【0027】
ソーラー充電システム1によって、補機バッテリ30の状態に基づいて、ソーラーパネルの発電電力が補機バッテリ30に供給され、かつ、補機負荷100に供給されると、本充電制御が終了する。
【0028】
<作用・効果>
以上のように、本開示の一実施形態に係るソーラー充電システム1によれば、補機バッテリ30に流入する電流がある間は、ソーラー発電モジュール10の発電電力で補機バッテリ30を充電し、またソーラー発電モジュール10の発電電力を補機負荷100に供給する。そして、本実施形態に係るソーラー充電システム1によれば、補機バッテリ30に流入する電流がなくなると、ソーラー発電モジュール10の発電電力を補機負荷100に継続して供給しつつ、補機負荷100で消費されない余剰電力によって駆動用バッテリ20を充電する。
【0029】
この制御によって、制御閾値などを用いることなくソーラーパネルの発電量に余裕があることを判断できるので、ソーラーパネルによって発電された電力の充電効率を向上させることができる。また、この制御によって、双方向DCDCコンバータ40における電圧変換の実施回数を最小限に抑えることができるので、電圧変換に伴う電力の損失を低減することができる。
【0030】
なお、上記実施形態では、ソーラー充電システム1が補機バッテリ30に流入する電流がないか否かを判断する例を説明したが、補機バッテリ30の充電量(満充電状態)を判断しても同様の制御が可能である。
【0031】
以上、本開示技術の一実施形態を説明したが、本開示は、ソーラー充電システムだけでなく、充電制御方法、その方法のプログラム、そのプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な非一時的記憶媒体、ソーラー充電システムを備えた車両などとして捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本開示のソーラー充電システムは、ソーラーパネルが搭載された車両などに利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 ソーラー充電システム
10 ソーラー発電モジュール
20 駆動用バッテリ
30 補機バッテリ
40 双方向DCDCコンバータ
100 補機負荷
図1
図2
図3
図4