(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】ソーラー充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/35 20060101AFI20250701BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250701BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20250701BHJP
【FI】
H02J7/35 B
H02J7/00 P
H02J7/35 J
H02J7/02 J
(21)【出願番号】P 2022163528
(22)【出願日】2022-10-11
【審査請求日】2024-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 雄真
(72)【発明者】
【氏名】村上 幸範
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-076790(JP,A)
【文献】特開2021-083248(JP,A)
【文献】特開2013-074733(JP,A)
【文献】特開2017-114157(JP,A)
【文献】特開2015-104195(JP,A)
【文献】特開2020-089100(JP,A)
【文献】特開2019-170096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/35
H02J 7/00
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたソーラー充電システムであって、
ソーラーパネルと、
前記車両の駆動に用いられる駆動用バッテリと、
駐車中に稼働する車載機器に電力を供給する補機バッテリと、
前記ソーラーパネル、前記駆動用バッテリ、および前記補機バッテリの電力を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は
、
駐車中において、前記ソーラーパネルの発電電力を前記駆動用バッテリに供給する充電処理と、前記駆動用バッテリの電力を前記補機バッテリおよび前記車載機器を含む補機系統に供給する放電処理とを、同時に実行しないように制御
し、
前記ソーラーパネルの発電電力が前記補機系統の消費電力以上である場合、前記ソーラーパネルの発電電力を前記補機バッテリ、前記補機系統、および前記駆動用バッテリに供給可能に制御し、
前記ソーラーパネルの発電電力が前記補機系統の消費電力未満である場合、前記ソーラーパネルの発電電力を前記補機系統に供給可能に制御する、
ソーラー充電システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記ソーラーパネルの発電電力が前記補機系統の消費電力以上である場合、前記ソーラーパネルの発電電力のうち前記補機系統で消費されなかった電力を前記駆動用バッテリに供給する、
請求項
1に記載のソーラー充電システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記ソーラーパネルの発電電力が前記補機系統の消費電力未満である場合、前記補機系統の消費電力のうち、前記ソーラーパネルの発電電力で不足する電力を前記駆動用バッテリから供給する、
請求項
1に記載のソーラー充電システム。
【請求項4】
前記制御部は、所定の目標出力電圧に基づいて前記ソーラーパネルの発電電力を前記補機系統に供給した際、
前記補機バッテリの出力電圧が所定の電圧未満である場合、前記ソーラーパネルの発電電力に加えて前記駆動用バッテリの電力を前記補機系統に供給し、
前記補機バッテリの出力電圧が所定の電圧
以上である場合、前記ソーラーパネルの発電電力のうち前記補機系統で消費されなかった電力を前記駆動用バッテリに供給する、
請求項1に記載のソーラー充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されたソーラーパネルが発電する電力の供給を制御するソーラー充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ソーラーパネルが発電可能な状態である場合に、ソーラーパネルから補機系統に給電を行ってソーラーパネルが実際に発電する電力を導出し、この導出した実際の発電電力が規定値以上であれば、ソーラーパネルの発電電力でさらに駆動用バッテリを充電する、ソーラー充電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、車両が駐車している状態にある場合、駐車中に提供されるサービスを作動させる機器への電力供給は、補機バッテリから行われる。また、この補機バッテリの上がりを防止するために、駐車中に提供されるサービスを作動させる機器に駆動用バッテリの電力を供給する制御も必要に応じて行われている。
【0005】
ここで、ソーラーパネルの発電電力を駆動用バッテリに充電する処理と、駆動用バッテリの電力を駐車中に提供されるサービスを作動させる機器に供給する処理とを、独立して制御してしまうと、昇圧/降圧するDCDCコンバータなどで電力が損失する機会が増加して、充電効率が低下するといった課題が生じる。このため、駐車中のソーラー充電システムにおいて実施するソーラー発電電力の充電手法については、さらなる検討の余地がある。
【0006】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、駐車中におけるソーラーパネルによって発電された電力の充電効率を向上させることができる、ソーラー充電システムなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、車両に搭載されたソーラー充電システムであって、ソーラーパネルと、車両の駆動に用いられる駆動用バッテリと、駐車中に稼働する車載機器に電力を供給する補機バッテリと、ソーラーパネル、駆動用バッテリ、および補機バッテリの電力を制御する制御部と、を備え、制御部は、駐車中において、ソーラーパネルの発電電力を駆動用バッテリに供給する充電処理と、駆動用バッテリの電力を補機バッテリおよび車載機器を含む補機系統に供給する放電処理とを、同時に実行しないように制御する、ソーラー充電システムである。
【発明の効果】
【0008】
上記本開示のソーラー充電システムによれば、ソーラーパネルの発電電力を昇圧して駆動用バッテリに充電した電力を、そのまま降圧して車載機器に供給することがなくなる。よって、駐車中におけるソーラーパネルによって発電された電力の充電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るソーラー充電システムの概略構成を示すブロック図
【
図2A】ソーラー充電システムが実行する充電制御の処理フローチャート
【
図2B】ソーラー充電システムが実行する充電制御の処理フローチャート
【
図3】ソーラー充電システムが実行する応用例の充電制御の処理フローチャート
【
図4】本実施形態に係るソーラー充電システムの他の概略構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示によるソーラー充電システムは、駐車中におけるソーラーパネルの発電電力を用いた駆動用バッテリの充電と、補機バッテリの電力低下による駆動用バッテリから補機系統への電力持ち出しとが、並行して実行されないように制御する。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係るソーラー充電システム1の概略構成を示すブロック図である。
図1に例示したソーラー充電システム1は、ソーラーパネル10と、ソーラーDDC20と、高圧DDC30と、補機DDC40と、駆動用バッテリ50と、補機バッテリ60と、駐車中サービスDDC70と、制御部80と、を備える。補機DDC40、補機バッテリ60、および駐車中サービスDDC70は、駐車中稼働機器100に接続されている。このソーラー充電システム1は、車両などに搭載することができる。
【0012】
ソーラーパネル10は、太陽光の照射を受けて発電する発電装置であり、典型的には太陽電池セルの集合体である太陽電池モジュールである。このソーラーパネル10は、例えば車両のルーフなどに設置することができる(ソーラールーフ)。ソーラーパネル10は、ソーラーDDC20に接続されており、ソーラーパネル10で発電された電力がソーラーDDC20に出力される。なお、車両に設置されるソーラーパネル10の数は、1つに限られるものではなく複数であってもよい。
【0013】
ソーラーDDC20は、ソーラーパネル10で発電された電力を、高圧DDC30および補機DDC40に供給するためのDCDCコンバータである。このソーラーDDC20は、電力供給の際、入力電圧であるソーラーパネル10の出力電圧を所定の電圧に変換(昇圧または降圧)して、高圧DDC30および補機DDC40に出力することができる。
【0014】
高圧DDC30は、ソーラーDDC20が出力する電力を、駆動用バッテリ50に供給するためのDCDCコンバータである。この高圧DDC30は、電力供給の際、入力電圧であるソーラーDDC20の出力電圧を、所定の電圧に昇圧して、駆動用バッテリ50に出力することができる。
【0015】
補機DDC40は、ソーラーDDC20が出力する電力を、補機バッテリ60および駐車中稼働機器100に供給するためのDCDCコンバータである。この補機DDC40は、電力供給の際、入力電圧であるソーラーDDC20の出力電圧を、所定の電圧に降圧して、補機バッテリ60および駐車中稼働機器100に出力することができる。
【0016】
上述したソーラーDDC20、高圧DDC30、および補機DDC40は、典型的にはソーラーECU(Electronic Control Unit)90を構成する。なお、複数のソーラーパネル10が車両に設置される場合には、
図4に例示するソーラー充電システム2のように、各ソーラーパネル10を個別に制御するために複数のソーラーDDC20が並列に設けられてもよい。また、ソーラーECU90は、ソーラーパネル10と一体で構成されたり、他のパワートレイン部品と統合的に構成されたりしてもよい。
【0017】
駆動用バッテリ50は、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池などの、充放電可能に構成された二次電池である。この駆動用バッテリ50は、高圧DDC30が出力する電力によって充電可能に高圧DDC30と接続されている。車両に搭載される駆動用バッテリ50は、スタータモーターや電動モーターなどの、車両を駆動させるための主機的な機器(図示せず)の動作に必要な電力を供給することができるバッテリである。駆動用バッテリ50は、補機バッテリ60よりも高い定格電圧が設定されている。
【0018】
補機バッテリ60は、例えばリチウムイオン電池や鉛蓄電池などの、充放電可能に構成された二次電池である。この補機バッテリ60は、補機DDC40が出力する電力によって充電可能に補機DDC40と接続されている。車両に搭載される補機バッテリ60は、ヘッドランプや室内灯などの灯火類、ヒーターやクーラーなどの空調類、および自動運転や先進運転支援の装置などの、車両を駆動させるため以外の補機的な機器(図示せず)の動作に必要な電力や、後述する駐車中稼働機器100の動作に必要な電力を、供給することができるバッテリである。補機バッテリ60は、駆動用バッテリ50よりも低い定格電圧(例えば12V)が設定されている。なお、補機バッテリ60や補機的な機器(図示せず)および駐車中稼働機器100などが接続される補機DDC40の出力側の系統を、以下「補機系統」と称する。
【0019】
駐車中サービスDDC70は、駆動用バッテリ50に蓄えられた電力を、少なくとも駐車中稼働機器100に供給するためのDCDCコンバータである。駐車中サービスDDC70は、補機バッテリ60の充電が必要なときには、駆動用バッテリ50の電力によって補機バッテリ60を充電することも可能である。この駐車中サービスDDC70は、電力供給の際、入力電圧である駆動用バッテリ50の出力電圧を、所定の電圧に降圧して、駐車中稼働機器100(および補機バッテリ60など)に出力することができる。
【0020】
なお、本実施形態では、駐車中サービスDDC70を駐車時専用の独立した装備として設ける構成を説明した。しかし、既存の他のDCDCコンバータに駐車中サービスDDC70が実行する機能を付与することによって、駐車中サービスDDC70の構成を省くことも可能である。
【0021】
制御部80は、少なくとも高圧DDC30、補機DDC40、および駐車中サービスDDC70を制御することによって、ソーラーパネル10、駆動用バッテリ50、および補機バッテリ60の電力を制御する。具体的には、制御部80は、高圧DDC30の動作状態を制御することによって、ソーラーパネル10から駆動用バッテリ50への電力供給を制御する。また、制御部80は、補機DDC40の動作状態を制御することによって、ソーラーパネル10から補機バッテリ60および駐車中稼働機器100への電力供給を制御する。また、制御部80は、駐車中サービスDDC70の動作状態を制御することによって、駆動用バッテリ50から駐車中稼働機器100(および補機バッテリ60など)への電力供給を制御する。
【0022】
なお、この制御部80は、車両のハイブリッド制御を行うHV-ECU(図示せず)の機能として実現されてもよいし、ソーラーECU90の機能として実現されてもよいし、これらのECU以外のECUによって実現されてもよい。制御部80を実現するECUは、典型的にはプロセッサ、メモリ、および入出力インタフェースなどを含んで構成され、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが読み出して実行することによって、上述した様々な制御を実施することができる。
【0023】
駐車中稼働機器100は、車両が駐車状態にあるときに、ユーザーなどに提供する所定の駐車中サービスを実行するための車載機器である。この駐車中稼働機器100は、ソーラーパネル10や補機バッテリ60から供給される電力によって動作することができる。駐車中稼働機器100としては、ドライブレコーダー(ドラレコ)などを例示することができる。
【0024】
[制御]
次に、
図2Aおよび
図2Bをさらに参照して、ソーラー充電システム1によって実行される制御を説明する。
図2Aおよび
図2Bは、ソーラー充電システム1の制御部80およびソーラーECU90が実行する充電制御の処理を説明するフローチャートである。
図2Aの処理と
図2Bの処理とは、結合子XおよびYで結ばれる。
【0025】
図2Aおよび
図2Bに例示した充電制御は、例えば、車両が駐車している状態などにおいて、一部又は全部の機能を停止(スリープ)していたソーラーECU90が、太陽光の照射によってソーラーパネル10が発電できる状態になることで、停止していた機能を起動(ウェイクアップ)させると、開始される。
【0026】
(ステップS201)
ソーラーECU90は、ソーラーパネル10で発電された電力である発電電力Wgenを取得する。この発電電力Wgenは、ソーラーパネル10が出力する電圧および電流などから導出することができる。なお、発電電力Wgenは、制御部80に通知されてもよい。ソーラーECU90によってソーラーパネル10の発電電力Wgenが取得されると、ステップS202に処理が進む。
【0027】
(ステップS202)
ソーラーECU90は、ソーラーパネル10の発電電力Wgenが、予め定めた閾値Wsolを超えるか否かを判断する。この判断は、効率的な充電制御を実施できるほど十分な電力をソーラーパネル10が発生させているか否かを判断するために行われる。例えば、ソーラーパネル10の発電電力Wgenがソーラー充電システム1の充電動作に必要な電力よりも少なければ、補機バッテリ60からの放電が生じ、ソーラー発電で獲得できる電力よりも消費するバッテリ電力の方が多くなって充電制御の意味がない。よって、閾値Wsolは、補機バッテリ60からの放電が生じることなく充電制御が可能な電力以上の値に設定することができる。
【0028】
ソーラーECU90が、発電電力Wgenが閾値Wsolを超える(Wgen>Wsol)と判断した場合は(ステップS202、はい)、ステップS204に処理が進む。一方、ソーラーECU90が、発電電力Wgenが閾値Wsolを超えない(Wgen≦Wsol)と判断した場合は(ステップS202、いいえ)、ステップS203に処理が進む。
【0029】
(ステップS203)
ソーラーECU90は、ソーラーパネル10の発電電力Wgenを用いた効率的な充電制御を実施できないため、所定の一部又は全部の機能の動作を停止してスリープさせる。これにより、本充電制御が終了する。
【0030】
(ステップS204)
ソーラーECU90は、ソーラーパネル10による発電を開始する。すなわち、ソーラーECU90は、ソーラーパネル10の発電電力Wgenの補機バッテリ60などへの出力を開始する。この発電には、周知の最大電力点追従(MPPT)制御などが用いられる。ソーラーECU90によってソーラーパネル10による発電が開始されると、ステップS205に処理が進む。
【0031】
(ステップS205)
制御部80は、補機バッテリ60を充電する処理(以下「ソーラー充電処理」という)において消費される処理電力Wauxを取得する。より具体的には、処理電力Wauxは、ソーラー充電処理の実行に関与するECUなどの制御動作に必要な電力と、補機バッテリ60に充電される電力とを、合算した電力である。この処理電力Wauxは、制御部80などが検出する補機バッテリ60の流出電流および出力電圧などから導出することができる。また、処理電力Wauxは、ソーラーECU90に通知される。制御部80によって処理電力Wauxが取得されると、ステップS206に処理が進む。
【0032】
(ステップS206)
制御部80は、車両において駐車中サービスが起動しているか否かを判断する。この駐車中サービスが起動しているとは、少なくとも駐車中稼働機器100が動作していることを意味する。
【0033】
制御部80が、駐車中サービスが起動していると判断した場合は(ステップS206、はい)、ステップS209に処理が進む。一方、制御部80が、駐車中サービスが起動していないと判断した場合は(ステップS206、いいえ)、ステップS207に処理が進む。
【0034】
(ステップS207)
制御部80およびソーラーECU90は、ソーラーパネル10の発電電力Wgenのうち、処理電力Wauxを補機系統に供給する。制御部80およびソーラーECU90によって処理電力Wauxが補機系統に供給されると、ステップS208に処理が進む。
【0035】
(ステップS208)
制御部80およびソーラーECU90は、ソーラーパネル10の発電電力Wgenのうち、補機系統に供給されない余剰電力Wrem1を駆動用バッテリ50に供給する。この余剰電力Wrem1は、発電電力Wgenから処理電力Wauxを減じた電力である(Wrem1=Wgen-Waux)。制御部80およびソーラーECU90によって余剰電力Wrem1が駆動用バッテリ50に供給されると、ステップS209に処理が進む。
【0036】
(ステップS209)
制御部80は、駐車中サービスにおいて消費される消費電力Wparkを取得する。具体的には、消費電力Wparkは、駐車中稼働機器100によって消費される電力である。この消費電力Wparkは、固定値として予め付与されてもよいし、制御部80などが検出する補機バッテリ60の流出電流および出力電圧などから導出されてもよい。また、消費電力Wparkは、ソーラーECU90に通知される。制御部80によって消費電力Wparkが取得されると、ステップS210に処理が進む。
【0037】
(ステップS210)
ソーラーECU90は、ソーラーパネル10の発電電力Wgenが、駐車中サービスにおいて消費される消費電力Wpark以上であるか否かを判断する。この判断は、発電電力Wgenの供給だけで駐車中サービスを作動させることができるか否かを判断するために行われる。
【0038】
ソーラーECU90が、発電電力Wgenが消費電力Wpark以上である(Wgen≧Wpark)と判断した場合は(ステップS210、はい)、ステップS211に処理が進む。一方、ソーラーECU90が、発電電力Wgenが消費電力Wpark未満である(Wgen<Wpark)と判断した場合は(ステップS210、いいえ)、ステップS213に処理が進む。
【0039】
(ステップS211)
制御部80およびソーラーECU90は、ソーラーパネル10の発電電力Wgenのうち、処理電力Wauxと消費電力Wparkとを加えた電力(=Waux+Wpark)を補機系統に供給する。制御部80およびソーラーECU90によって処理電力Wauxに消費電力Wparkを加えた電力が補機系統に供給されると、ステップS212に処理が進む。
【0040】
(ステップS212)
制御部80およびソーラーECU90は、ソーラーパネル10の発電電力Wgenのうち、補機系統に供給されない余剰電力Wrem2を駆動用バッテリ50に供給する。この余剰電力Wrem2は、発電電力Wgenから処理電力Wauxおよび消費電力Wparkを減じた電力である(Wrem2=Wgen-(Waux+Wpark))。制御部80およびソーラーECU90によって余剰電力Wrem2が駆動用バッテリ50に供給されると、ステップS201に処理が進む。
【0041】
(ステップS213)
制御部80およびソーラーECU90は、ソーラーパネル10の発電電力Wgenを補機系統に供給する。制御部80およびソーラーECU90によって発電電力Wgenが補機系統に供給されると、ステップS214に処理が進む。
【0042】
(ステップS214)
制御部80は、補機系統に必要な電力のうちソーラーパネル10の発電電力Wgenだけでは不足する不足電力Wlackを、駐車中サービスDDC70を介して駆動用バッテリ50から補機系統に供給する。この不足電力Wlackは、ソーラー充電処理に必要な処理電力Wauxに駐車中サービスで消費される消費電力Wparkを加えた電力から、ソーラーパネル10の発電電力Wgenを減じた電力である(Wlack=(Waux+Wpark)-Wgen)。制御部80によって不足電力Wlackが駆動用バッテリ50から補機系統に供給されると、ステップS201に処理が進む。
【0043】
このように、各所における必要な電力を判断して適切に制御することによって、駐車中においてソーラーパネル10の発電電力を駆動用バッテリ50に供給する充電処理と、駆動用バッテリ50の電力を駐車中稼働機器100に供給する放電処理とが、同時に実行されてしまうことを防ぐことができる。これにより、駐車中におけるソーラーパネル10によって発電された電力の充電効率を向上させることができる。
【0044】
[応用例]
上記
図2Aおよび
図2Bでは、電力制御(電流指示)に基づく充電制御を説明した。この応用例では、
図3を参照して電圧制御(電圧指示)に基づく充電制御を説明する。
図3は、ソーラー充電システム1の制御部80およびソーラーECU90が実行する応用例の充電制御の処理を説明するフローチャートである。
【0045】
図3に例示した応用例の充電制御は、例えば、車両が駐車している状態などにおいて、一部又は全部の機能を停止(スリープ)していたソーラーECU90が、太陽光の照射によってソーラーパネル10が発電できる状態になることで、停止していた機能を起動(ウェイクアップ)させると、開始される。
【0046】
(ステップS301)
ソーラーECU90は、ソーラーパネル10の発電電力Wgenを取得する。ソーラーECU90によって発電電力Wgenが取得されると、ステップS302に処理が進む。
【0047】
(ステップS302)
ソーラーECU90は、ソーラーパネル10の発電電力Wgenが、予め定めた閾値Wsolを超えるか否かを判断する。この判断は、効率的な充電制御を実施できるほど十分な電力をソーラーパネル10が発生させているか否かを判断するために行われる。閾値Wsolについては、上述したとおりである。
【0048】
ソーラーECU90が、発電電力Wgenが閾値Wsolを超える(Wgen>Wsol)と判断した場合は(ステップS302、はい)、ステップS304に処理が進む。一方、ソーラーECU90が、発電電力Wgenが閾値Wsolを超えない(Wgen≦Wsol)と判断した場合は(ステップS302、いいえ)、ステップS303に処理が進む。
【0049】
(ステップS303)
ソーラーECU90は、ソーラーパネル10の発電電力Wgenを用いた効率的な充電制御を実施できないため、所定の一部又は全部の機能の動作を停止してスリープさせる。これにより、本充電制御が終了する。
【0050】
(ステップS304)
ソーラーECU90は、ソーラーパネル10による発電を開始する。すなわち、ソーラーECU90は、発電電力Wgenの補機バッテリ60などへの出力開始を開始する。この発電には、周知の最大電力点追従(MPPT)制御などが用いられる。ソーラーECU90によってソーラーパネル10による発電が開始されると、ステップS305に処理が進む。
【0051】
(ステップS305)
制御部80およびソーラーECU90は、補機DDC40の出力電圧が目標出力電圧Vtgt1となるように制御して、ソーラーパネル10の発電電力Wgenを補機系統に供給する。目標出力電圧Vtgt1は、補機バッテリ60の定格電圧などに基づいて適切に設定される。制御部80およびソーラーECU90によって補機DDC40が目標出力電圧Vtgt1で制御されて発電電力Wgenが補機系統に供給されると、ステップS306に処理が進む。
【0052】
(ステップS306)
制御部80は、目標出力電圧Vtgt1による制御に基づいて補機バッテリ60が実際に出力している電圧が、所定の電圧Vを超えているか否かを判断する。この判断は、補機バッテリ60が充電を必要としている蓄電量であるか否かを判断するために行われる。よって、電圧Vは、補機バッテリ60の定格電圧などに基づいて適切に設定される。
【0053】
制御部80が、補機バッテリ60の出力電圧が所定の電圧Vを超えていると判断した場合は(ステップS306、はい)、ステップS307に処理が進む。一方、制御部80が、補機バッテリ60の出力電圧が所定の電圧Vを超えていないと判断した場合は(ステップS306、いいえ)、ステップS308に処理が進む。
【0054】
(ステップS307)
制御部80およびソーラーECU90は、駐車中サービスDDC70の出力電圧が目標出力電圧Vtgt2となるように制御して、駆動用バッテリ50の電力を補機系統に供給する。目標出力電圧Vtgt2は、補機バッテリ60の定格電圧や目標出力電圧Vtgt1などに基づいて適切に設定される。制御部80によって駐車中サービスDDC70が目標出力電圧Vtgt2で制御されて駆動用バッテリ50から補機系統に電力が供給されると、ステップS301に処理が進む。
【0055】
(ステップS307)
制御部80およびソーラーECU90は、ソーラーパネル10の発電電力Wgenのうち、補機系統に供給されない余剰電力Wremを駆動用バッテリ50に供給する。この余剰電力Wremは、発電電力Wgenから目標出力電圧Vtgt1による制御に基づいて補機系統に出力されている電力Wを減じた電力である(Wrem=Wgen-W)。制御部80およびソーラーECU90によって余剰電力Wremが駆動用バッテリ50に供給されると、ステップS301に処理が進む。
【0056】
この応用例のように、電圧による制御によっても、駐車中におけるソーラーパネル10によって発電された電力の充電効率を向上させることができる。
【0057】
<作用・効果>
以上のように、本開示の一実施形態に係るソーラー充電システム1によれば、駐車中において、ソーラーパネル10の発電電力Wgenを駆動用バッテリ50に供給する充電処理と、駆動用バッテリ50の電力を駐車中稼働機器100を含む補機系統に供給する放電処理とを、同時に実行しないように制御する。
【0058】
この制御によって、ソーラーパネル10の発電電力Wgenを昇圧して駆動用バッテリ50に充電した電力をそのまま降圧して補機系統に供給する、といった損失が多い電力移送が行われることがなくなる。よって、駐車中におけるソーラーパネル10によって発電された電力の充電効率を向上させることができる。
【0059】
以上、本開示技術の一実施形態を説明したが、本開示は、ソーラー充電システムだけでなく、ソーラー充電システムが行う方法、その方法のプログラム、そのプログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的記憶媒体、ソーラー充電システムを備えた車両などとして捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示のソーラー充電システムは、ソーラーパネルで発電された電力を利用してバッテリを充電する車両などに利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1、2 ソーラー充電システム
10 ソーラーパネル
20 ソーラーDDC
30 高圧DDC
40 補機DDC
50 駆動用バッテリ
60 補機バッテリ
70 駐車中サービスDDC
80 制御部
90 ソーラーECU
100 駐車中稼働機器