(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】車両用通知装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20250701BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20250701BHJP
B60W 50/08 20200101ALI20250701BHJP
【FI】
G08G1/16 F
G08G1/00 D
B60W50/08
(21)【出願番号】P 2022191177
(22)【出願日】2022-11-30
【審査請求日】2024-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃弘
【審査官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-012356(JP,A)
【文献】特開2018-203006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B62D 6/00-6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転車両に適用される車両用通知装置であって、
1又は複数のプロセッサを備え、
前記1又は複数のプロセッサは、
通知間隔が経過する度にハンズオン要求及びアイズオン要求のうちの少なくとも前記アイズオン要求をドライバに対して通知する通知処理を実行し、
前記通知間隔を前記ドライバの運転特性情報に基づいて算出
し、
前記運転特性情報が前記ドライバの危険運転に関する情報を含み、
前記危険運転の履歴がある場合には、前記1又は複数のプロセッサは、前記履歴がない場合と比べて前記通知間隔を短縮し、
前記危険運転に関する前記情報は、前記自動運転車両の制動装置によって自動的に行われる緊急ブレーキの作動回数、急加速の回数、急減速の回数、急操舵の回数、蛇行走行の回数、又は路肩走行の回数を含む
車両用通知装置。
【請求項2】
前記通知処理において、前記1又は複数のプロセッサは、
前記アイズオン要求を通知した後に前記ドライバのアイズオンが検知された場合には、前記ハンズオン要求を通知せず、
前記アイズオン要求を通知した後に前記ドライバのアイズオンが検知されない場合には、前記ハンズオン要求を通知する
請求項
1に記載の車両用通知装置。
【請求項3】
前記1又は複数のプロセッサは、
前記ハンズオン要求及び前記アイズオン要求のうちの少なくとも前記アイズオン要求の通知から当該通知に対応する前記ドライバのハンズオン及びアイズオンのうちの少なくとも前記アイズオンの応答までの時間が判定閾値より長い場合には、前記通知間隔を短縮する
請求項
1に記載の車両用通知装置。
【請求項4】
前記1又は複数のプロセッサは、
前記ハンズオン要求及び前記アイズオン要求のうちの少なくとも前記アイズオン要求の通知から当該通知に対応する前記ドライバのハンズオン及びアイズオンのうちの少なくとも前記アイズオンの応答までの時間が判定閾値より短い場合には、前記通知間隔を延長する
請求項
1に記載の車両用通知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動運転車両に適用される車両用通知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ドライバ監視システムを開示している。このドライバ監視システムでは、ハンズオン要求又は周辺確認要求を通知してからの経過時間が判断基準時間を超えた場合、ハンズオン要求又は周辺確認要求が再び通知される。また、ドライバの注意力の低下に関連する兆候が検知された場合、ドライバに対して警告が行われるとともに、当該警告が行われる前と比べて短くなるように判断基準時間が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-012356号公報
【文献】特許第6831190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハンズオフとともにアイズオフを可能とする自動運転によれば、運転操作から解放されたドライバは、運転操作以外の行為であるセカンダリアクティビティを車両走行中に行うことが許容される。その一方で、当該自動運転中には、車両のシステムは、運転交代要求が出されてから規定時間が経過するまでにドライバが運転操作に戻れることを常に把握し、かつ、ドライバがそのように運転操作に戻るための準備ができている状態(運転準備状態)を維持することが求められる。
【0005】
自動運転中にドライバを常に監視することによって上記の運転準備状態を維持しようとすると、セカンダリアクティビティを制限する必要が生じたり、モニタリングに要するコストが増大したりする。このため、ドライバモニタ等の監視装置を用いて自動運転中にドライバを常に監視する必要なしに、運転準備状態を適切に維持できることが望まれる。また、ドライバに運転準備状態を維持させることを通じて、ドライバに運転特性の改善を促せると望ましい。
【0006】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、自動運転中にドライバを常に監視する必要なしに、当該自動運転中にドライバが規定時間内に運転操作に戻るための準備ができている状態を適切に継続でき、かつ、運転特性の改善をドライバに促すことを可能とする車両用通知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る車両用通知装置は、自動運転車両に適用される。車両用通知装置は、1又は複数のプロセッサを備える。1又は複数のプロセッサは、通知間隔が経過する度にハンズオン要求及びアイズオン要求のうちの少なくともアイズオン要求をドライバに対して通知する通知処理を実行する。そして、1又は複数のプロセッサは、通知間隔をドライバの運転特性情報に基づいて算出する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、自動運転中にドライバを常に監視する必要なしに、当該自動運転中にドライバが規定時間内に運転操作に戻るための準備ができている状態を適切に継続でき、かつ、運転特性の改善をドライバに促すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る車両用通知装置が適用される自動運転車両の構成の一例を概略的に示す図である。
【
図2】実施の形態に係る通知処理に関連する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態に係る通知処理に関連する処理の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.自動運転車両の構成例
図1は、実施の形態に係る車両用通知装置が適用される自動運転車両1の構成の一例を概略的に示す図である。自動運転車両1は、米国の自動車技術会(SAE)の定義におけるレベル3の自動運転を実行可能に構成されている。すなわち、車両1は、ハンズオフ機能及びアイズオフ機能を備えている。なお、以下の説明では、レベル3の自動運転は、単に自動運転とも呼ばれる。
【0011】
例えば、車両1は、HMI(Human Machine Interface)装置10と、ドライバモニタ20と、センサ群30と、走行装置40と、電子制御ユニット(ECU)50と、を備えている。
【0012】
HMI装置10は、車両1のドライバ2に情報を提供し、また、ドライバ2から情報を受け付ける。例えば、HMI装置10は、入力装置12、スピーカ14、及び表示装置16を備えている。入力装置12は、例えば、タッチパネル又はスイッチである。ドライバ2は、入力装置12を用いて、目的地等の情報の入力、及び、レベル3の自動運転による車両走行のオン/オフの切り替えを行うことができる。入力装置12を介したドライバ2からの各情報は、ECU50に送信される。スピーカ14は、ドライバ2に音声情報を提供する。表示装置16は、ドライバ2に視覚情報を提供する。例えば、表示装置16は、HUD(Head Up Display)、MID(Multi Information Display)、又はメータパネルである。また、HMI装置10の少なくとも一部は、必ずしも車両1に搭載されていなくてもよく、例えば、ドライバ2によって操作される携帯端末(例えば、スマートフォン又はタブレット端末)を含んでいてもよい。
【0013】
ドライバモニタ20は、例えば、ドライバ2を撮像するように車両1の室内に設置されたカメラを含む。このカメラによって得られる画像を解析することによって、ドライバ2(個人)を特定したり、顔の向き、視線、及び開眼度等のドライバ2の状態及び動作を検出したりすることができる。このため、ドライバモニタ20は、ドライバ2のアイズオン/アイズオフの検知に用いることができる。また、ドライバモニタ20は、例えば、ドライバ2によって操作されるステアリングホイール3に設置されたステアリングタッチセンサを含む。これにより、ドライバ2のハンズオン/ハンズオフを検知できる。ドライバモニタ20によって取得された情報は、ECU50に送信される。
【0014】
センサ群30は、認識センサ、車両状態センサ、位置センサ、等を含んでいる。認識センサは、車両1の周辺の状況を認識(検出)する。認識センサとしては、カメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、等が例示される。車両状態センサは、車両1の状態を検出する。車両状態センサは、速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、舵角センサ、アクセルペダルセンサ、ブレーキペダルセンサ等を含んでいる。位置センサは、車両1の位置及び方位を検出する。例えば、位置センサは、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を含んでいる。また、センサ群30は、例えば、ドライバ2のシートベルトの着用を検出するセンサと、ドライバ2の着座位置及び着座姿勢を検出するセンサを含む。
【0015】
走行装置40は、操舵装置、駆動装置、及び制動装置を含んでいる。操舵装置は、車輪を転舵する。例えば、操舵装置は、パワーステアリング(EPS: Electric Power Steering)装置を含んでいる。駆動装置は、駆動力を発生させる動力源である。例えば、駆動装置は、内燃機関及び電動機の少なくとも一方を含んでいる。制動装置は、制動力を発生させる。
【0016】
ECU50は、車両1を制御するコンピュータである。ECU50は、1又は複数のプロセッサ52(以下、単にプロセッサ52と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置54(以下、単に記憶装置54と呼ぶ)とを含んでいる。プロセッサ52は、各種処理を実行する。各種処理は、自動運転制御に関する処理と、後述の「通知処理」と、を含む。例えば、プロセッサ52は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。記憶装置54は、各種情報を格納する。記憶装置54としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等が例示される。なお、ECU50は、複数のECUを組み合わせて構成されていてもよい。
【0017】
プロセッサ52がコンピュータプログラムを実行することにより、ECU50による各種処理が実現される。コンピュータプログラムは、記憶装置54に格納されている。あるいは、コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0018】
ECU50は、センサ群30を用いて、車両1の運転環境を示す運転環境情報を取得する。運転環境情報は、記憶装置54に格納される。具体的には、運転環境情報は、認識センサによる認識結果を示す周辺状況情報を含む。例えば、周辺状況情報は、カメラによって撮像される画像と、車両1の周辺の物体に関する物体情報と、を含む。また、運転環境情報は、車両状態センサによって検出される車両状態を示す車両状態情報を含む。さらに、運転環境情報は、車両1の位置及び方位を示す車両位置情報を含む。車両位置情報は、例えば位置センサにより得られる。また、運転環境情報は、ドライバモニタ20により得られる情報を含む。
【0019】
ECU50は、車両1の走行を制御する車両走行制御を実行する。車両走行制御は、操舵制御、駆動制御、及び制動制御を含む。ECU50は、走行装置40(操舵装置、駆動装置、及び制動装置)を制御することによって車両走行制御を実行する。また、ECU50は、運転環境情報に基づいて、自動運転制御を行う。例えば、ECU50は、運転環境情報に基づいて、車両1の走行プランを生成する。さらに、ECU50は、運転環境情報に基づいて、車両1が走行プランに従って走行するために必要な目標トラジェクトリを生成する。目標トラジェクトリは、目標位置及び目標速度を含んでいる。そして、ECU50は、車両1が目標トラジェクトリに追従するように車両走行制御を行う。
【0020】
2.通知処理
レベル3の自動運転によれば、ステアリングホイール3から手を離すハンズオフとともに、車両前方から視線をそらすアイズオフが可能となる。アイズオフが可能となることで運転操作から解放されたドライバ2は、車両1の走行中に、運転操作以外の行為であるセカンダリアクティビティ(例えば、携帯端末の操作、又は動画の視聴)を行うことが許容される。ただし、このことは、ドライバ2が運転交代要求(TD:Transition Demand)を満たすことを条件とする。より詳細には、運転交代要求は、自動運転中に車両1のシステムが対応できない状況(例えば、運転設計領域(ODD:Operational Design Domain)の範囲外、悪天候、又はシステム故障)に陥った時に出される。
【0021】
車両1のシステムは、運転交代要求が出されてから規定時間(例えば、後述の規定時間T4)が経過するまでにドライバ2が運転操作に戻れることを常に把握し、かつ、ドライバ2がそのように運転操作に戻るための準備ができている状態(運転準備状態)を維持することが求められる。
【0022】
上記の運転準備状態(Readiness)を維持するために自動運転中にドライバモニタ20を用いてドライバ2の状態及び動作を常に監視できるようにするためには、モニタリングが困難なセカンダリアクティビティ(例えば、読書、スマートフォンの操作、食事、又はパーソナルコンピュータ(PC)の使用)を制限する必要が生じ得る。逆に、セカンダリアクティビティの拡大のために死角をなくそうとすると、ドライバモニタリングのために様々な角度からカメラ画像を取得する必要が生じ得る。このことは、車両コストの増加につながる。
【0023】
また、ドライバ2に運転準備状態を維持させることを通じて、ドライバ2に運転特性の改善を促せると望ましい。
【0024】
上述の課題に鑑み、本実施形態では、ECU50(プロセッサ52)は、次のような「通知処理」を実行する。すなわち、通知処理において、ECU50は、通知間隔(より詳細には、通知時間間隔)T1が経過する度にハンズオン要求及びアイズオン要求をドライバ2に対して通知する。より具体的には、この通知は、ハンズオン及びアイズオンが規定時間(例えば、規定時間T4)内に行われることをドライバ2に対して要求するものである。そして、この通知間隔T1は、ドライバ2の運転特性情報に基づいて算出される。より詳細には、通知間隔T1は、運転特性情報に応じて変更される。
【0025】
図2は、実施の形態に係る通知処理に関連する処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、例えば、レベル3の自動運転制御の実行条件が成立した時に開始される。
【0026】
ステップS100において、ECU50(プロセッサ52)は、ドライバ2を特定するために、ドライバモニタ20を用いた個人認証処理を実行する。また、ECU50は、上記の通知間隔T1を設定(算出)する。通知間隔T1は、自動運転中にドライバ2の運転準備状態が維持されていることを繰り返し確認するための時間間隔に相当する。より詳細には、通知間隔T1は、ハンズオフ及びアイズオフの開始から運転準備状態の低下が生じ始めるまでの時間の予想値(推定値)に相当する。
【0027】
ステップS100における通知間隔T1の算出は、例えば次のように実行される。すなわち、通知間隔T1は、式(1)のように基本値T1bに補正係数Kを乗じることによって算出される。基本値T1bとしては、例えば、事前に決定された値(例えば、3分)が用いられる。補正係数Kは、ドライバ2の応答時間T2とドライバ2のドライバ情報DIとに基づいて決定される。より詳細には、補正係数Kは、例えば、式(2)のように応答時間T2に基づく補正係数K1とドライバ情報DIに基づく補正係数K2との積である。
T1=T1b×K ・・・(1)
K=K1×K2 ・・・(2)
【0028】
応答時間T2は、ハンズオン及びアイズオンの要求開始からハンズオン及びアイズオンの双方の検知までの時間に相当する。補正係数K1の算出のために、例えば、平均応答時間T2mが用いられる。平均応答時間T2mは、ドライバ2を対象として過去に所定回数計測された応答時間T2の平均値である。より詳細には、平均応答時間T2mは、例えば、直近で所定回数計測された応答時間T2の移動平均値であってもよい。
【0029】
そして、補正係数K1は、例えば、平均応答時間T2mの逆数に応じた値として算出される。より詳細には、平均応答時間T2mが後述の規定時間T4と等しい場合には、補正係数K1は1として設定される。そして、平均応答時間T2mが規定時間T4より短い場合には、補正係数K1は、1より大きい範囲内で、平均応答時間T2mが短いほど大きくなるように算出される。一方、平均応答時間T2mが規定時間T4より長い場合には、補正係数K1は、0以上かつ1より小さい範囲内で、平均応答時間T2mが長いほど小さくなるように算出される。なお、補正係数K1の算出のために、平均応答時間T2mに代え、例えば、直近で計測された応答時間T2の値が用いられてもよい。
【0030】
補正係数K2の算出に関する上記のドライバ情報DIは、ドライバ2の運転特性情報を含む。運転特性情報は、例えば、ドライバ2の危険運転に関する情報を含む。この情報は、例えば、車両1の制動装置によって自動的に行われる緊急ブレーキの作動回数を含む。また、当該情報は、例えば、ドライバ2による急加速、急減速、急操舵、蛇行走行、及び路肩走行のそれぞれの回数を含む。さらに、当該情報は、レベル3の自動運転機能を使用していない車両走行時における運転支援機能に関する違反行為の回数を含む。この違反行為は、例えば、アダプティブクルーズコントロール(ACC)等の運転支援機能の使用中にドライバ2がステアリングホイール3から手を放すことである。このような各種の運転特性情報は、レベル3の自動運転機能を使用していない車両走行時に、例えばセンサ群30及びドライバモニタ20を用いて取得され、記憶装置54に格納されている。
【0031】
例えば、補正係数K2は、上述の危険運転の履歴がない時に、1又は1より大きな所定値として設定される。そして、上述の危険運転行為のそれぞれの回数が多いほど、補正係数K2は0に向けてより小さくなるように算出される。なお、個々の危険運転行為の内容に応じて、1回の危険運転に対する補正係数K2の減少量が変更されてもよい。
【0032】
また、ドライバ情報DIは、上述の車両特性情報とともに、ドライバ2の脇見の回数及び閉眼の回数等の運転関連情報を含んでもよい。そして、例えば、脇見及び閉眼のそれぞれの回数が多いほど、補正係数K2は0に向けてより小さくなるように算出されてもよい。また、ドライバ情報DIは、ドライバ2の個人情報(例えば、年齢)を含んでもよい。そして、例えば、年齢が若いほど、補正係数K2が大きくなるように算出されてもよい。さらに、ドライバ情報DIは、応答時間T2の履歴として、応答時間T2が規定時間T4内に収まっている確率を含んでもよい。そして、当該確率が閾値より高い場合には、補正係数K2が1より大きい範囲内で大きくなるように修正されてもよい。
【0033】
本ステップS100において上述のように算出された通知間隔T1は、記憶装置54に格納される。なお、応答時間T2及びドライバ情報DIに関するデータが記憶装置54に格納されていない場合には、通知間隔T1として、事前に決定された初期値が用いられてもよい。
【0034】
ステップS100に続くステップS102において、ECU50は、自動運転(自動運転制御)の実行中であるか否かを判定する。その結果、自動運転の実行中であれば(ステップS102;Yes)、処理はステップS104に進む。一方、自動運転の実行中でない場合(ステップS102;No)、本フローチャートの処理が終了する。
【0035】
ステップS104において、ECU50は、自動運転の開始時点又は前回の通知間隔T1の経過時点から始まる通知間隔T1が経過したか否かを判定する。その結果、通知間隔T1が経過した場合(ステップS104;Yes)、処理はステップS106に進む。一方、通知間隔T1が経過していない場合(ステップS104;No)、処理はステップS102に戻る。
【0036】
ステップS106において、ECU50は、HMI装置10を用いて、ハンズオン要求及びアイズオン要求をドライバ2に対して通知する。すなわち、ECU50は、上述の通知処理を実行する。ハンズオン及びアイズオンの要求方法としては、例えば、スピーカ14を用いた音声による要求、表示装置16の画面への要求の表示、シートベルトの振動による要求、又は、ドライバ2の携帯端末を用いた音及びメッセージによる要求が相当する。
【0037】
ステップS106に続くステップS108において、ECU50は、ハンズオン要求及びアイズオン要求に応じたドライバ2のハンズオン及びアイズオンの双方が検知されたか否かを判定する。その結果、ハンズオン及びアイズオンの双方が検知されると(ステップS108;Yes)、処理はステップS110に進む。なお、ハンズオン及びアイズオンの要求開始から後述の上限時間T3より長い所定時間が経過するまでの間に、ハンズオン及びアイズオンの一方又は双方が検知されない場合には、処理はステップS114に進んでもよい。
【0038】
ステップS110において、ECU50は、ステップS106の処理によるハンズオン及びアイズオンの要求に対する応答時間T2を算出する。応答時間T2は、例えば、上述の平均応答時間T2mとして算出される。算出された応答時間T2は、記憶装置54に格納される。
【0039】
ステップS110に続くステップS112において、ECU50は、算出された応答時間T2が上限時間T3(例えば、10秒)より長いか否かを判定する。その結果、応答時間T2が上限時間T3を超過している場合(ステップS112;Yes)、処理はステップS114に進む。
【0040】
ステップS114において、ECU50は、自動運転制御を中止する。すなわち、ドライバ2が上限時間T3内でハンズオン及びアイズオンを行わなかったことに対するペナルティとして、レベル3の自動運転機能の利用が制限される。より詳細には、例えば、自動運転制御を中止することがHMI装置10を用いてドライバ2に事前に通知される。そのうえで、自動運転制御が中止される。あるいは、まず、ハンズオン及びアイズオンが行われないと自動運転制御が中止されることになることを知らせる通知(注意喚起)が上限時間T3の経過後に行われてもよい。そして、そのような注意喚起にもかかわらず、ハンズオン及びアイズオンが行われない場合に、自動運転制御が中止されてもよい。自動運転制御の中止の解除は、例えば、車両1のシステムがOFFとされた時(すなわち、イグニッションOFF時)に行われる。
【0041】
一方、応答時間T2が上限時間T3以内である場合(ステップS112;No)、処理はステップS116に進む。ステップS116では、ECU50は、ステップS110において算出された応答時間T2が規定時間T4(判定閾値)より長いか否かを判定する。ドライバ2は、応答時間T2が規定時間T4(例えば、4秒)以下となるようにハンズオン及びアイズオンを行うことを車両1のシステムによって求められている。
【0042】
応答時間T2が規定時間T4を超過した場合(ステップS116;Yes)、処理はステップS118に進む。ステップS118において、ECU50は、通知間隔T1を短縮して更新する。より詳細には、通知間隔T1は、例えば、現在の値から所定の補正時間ΔT1を減じることによって短縮される。ステップS118によって更新された通知間隔T1は、記憶装置54に格納される。
【0043】
一方、応答時間T2が規定時間T4より短い場合(ステップS116;No)、処理はステップS120に進む。ステップS120において、ECU50は、通知間隔T1を延長して更新する。より詳細には、通知間隔T1は、例えば、現在の値に所定の補正時間ΔT2を加えることによって延長される。ステップS120によって更新された通知間隔T1は、記憶装置54に格納される。補正時間ΔT1と補正時間ΔT2は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。付け加えると、応答時間T2が規定時間T4と等しい場合、通知間隔T1は現在の値で維持される。また、応答時間T2が規定時間T4と実質的に等しい場合についても、通知間隔T1は現在の値で維持されてもよい。
【0044】
ステップS118及びS120の処理についてさらに補足される。
図2に示すフローチャートの処理の開始後に処理が初めてステップS118又はS120に進む場合には、ここでいう通知間隔T1の「現在の値」として、ステップS100において設定された通知間隔T1が該当する。一方、本フローチャートの処理の開始後に処理が2回目以降でステップS118又はS120に進む場合には、直近のステップS118又はS120の処理によって更新された通知間隔T1の値(すなわち、前回値)が「現在の値」に該当する。
【0045】
3.効果
以上説明したように、本実施形態によれば、通知間隔T1が経過する度にハンズオン要求及びアイズオン要求がドライバ2に対して通知される。そして、通知間隔T1は、ドライバ2の運転特性情報に基づいて算出される。これにより、例えばドライバモニタ20等の監視装置を用いて自動運転中にドライバ2を常に監視する必要なしに、運転特性情報に基づく通知間隔T1を用いて運転準備状態を適切に継続できるようになる。
【0046】
また、ドライバ2は、通知間隔T1が自身の運転特性情報に基づいて算出されることを事前に把握している。このため、ドライバ2は、安全運転の実行等の運転特性の改善が通知間隔T1の延長、すなわち、自動運転の利便性の向上(例えば、セカンダリアクティビティの自由度拡大及びアイズオフ時間の拡大)につながることを理解できている。したがって、運転特性情報に応じて通知間隔T1を変更することにより、通知間隔T1の延長のために運転特性を改善することをドライバ2に促すことが可能となる。
【0047】
そして、本実施形態の手法によって運転準備状態を適切に維持できていると、突発的な運転交代要求が発生した場合であっても、ドライバ2が速やかに運転操作に戻れるようになる。このことは、レベル3の自動運転による安全な車両走行に寄与する。また、様々なセカンダリアクティビティ(例えば、読書、スマートフォンの操作、食事、又はPCの使用)をドライバ2に提供できることにつながる。さらに、自動運転中に常にドライバ2をモニタリングする必要がないので、モニタリングに要する車両コストを低減できる。
【0048】
また、本実施形態では、運転特性情報は、ドライバ2の危険運転に関する情報を含んでいる。そして、危険運転の履歴がある場合には、ECU50は、当該履歴がない場合と比べて通知間隔T1を短縮する(ステップS100参照)。これにより、ドライバ2がより安全な運転を心がけるように運転特性の改善を当該ドライバ2に促しつつ、運転準備状態を適切に維持できるようになる。
【0049】
さらに、本実施形態では、応答時間T2(例えば、平均応答時間T2m)が規定時間T4(判定閾値)より長い場合には通知間隔T1が短縮され、応答時間T2が規定時間T4より短い場合には通知間隔T1が延長される(ステップS100及びS116-S120参照)。ドライバ2は、通知間隔T1がこのように規定時間T4に応じて変更されることを事前に把握している。このため、ドライバ2は、応答時間T2の短縮が通知間隔T1の延長、すなわち、自動運転の利便性の向上につながることを理解できている。したがって、本実施形態によれば、このようにドライバ2の応答時間T2に応じて通知間隔T1を増減することにより、常に規定時間T4内に運転操作に戻ることをドライバ2に意識付けることができる。このため、自動運転中にドライバ2を常に監視しなくても、運転準備状態を良好に維持できるようになる。付け加えると、応答時間T2が上限時間T3を超過した場合に自動運転の利用を制限すること(ステップS112及びS114参照)も、ハンズオン及びアイズオンの要求に応じて速やかに運転操作に戻ることをドライバ2に意識付けることにつながる。
【0050】
4.通知処理の他の例
上述した実施の形態に係る通知処理においては、ドライバ2の運転準備状態の維持のために、ハンズオン要求及びアイズオン要求の双方がドライバ2に対して通知される。このような例に代え、通知処理は、次のように実行されてもよい。
【0051】
図3は、実施の形態に係る通知処理に関連する処理の他の例を示すフローチャートである。以下、
図2に示すフローチャートの処理に対する本フローチャートの処理の相違点が説明される。
【0052】
図3では、処理はステップS104の後にステップS200に進む。ステップS200では、ECU50は、HMI装置10を用いて、アイズオン要求のみをドライバ2に対して通知する。
【0053】
ステップS200に続くステップS202において、ECU50は、アイズオン要求に応じたドライバ2のアイズオンが検知されたか否かを判定する。その結果、アイズオンが検知されると(ステップS202;Yes)、ECU50は、ステップS204において、当該アイズオン要求に対する応答時間T2eを算出する。算出された応答時間T2eは、記憶装置54に格納される。その後、処理はステップS112に進む。この場合、ステップS112及びS116の判定において、応答時間T2eが用いられる。
【0054】
一方、アイズオン要求が検知されない場合(ステップS202;No)、ECU50は、ステップS206において、アイズオン要求からの所定時間T5が経過したか否かを判定する。この所定時間T5は、例えば、規定時間T4より長く、かつ上限時間T3より短くなるように設定されている。この所定時間T5が経過していない場合(ステップS206;No)、処理はステップS202に戻る。
【0055】
一方、アイズオンが検知されないまま所定時間T5が経過すると(ステップS206;Yes)、処理はステップS208に進む。ステップS208では、ECU50は、HMI装置10を用いて、ハンズオン要求をドライバ2に対して通知する。その後、処理はステップS108に進む。
【0056】
上述した
図3に示す処理によれば、アイズオン要求の通知に応じたアイズオンが行われたことによってドライバ2に意識があることを確認できた場合には、ハンズオン要求は行われない。これにより、ドライバ2の利便性をより向上させつつ、運転準備状態を適切に維持できるようになる。
【符号の説明】
【0057】
1 自動運転車両、 2 ドライバ、 3 ステアリングホイール、 10 HMI装置、 20 ドライバモニタ、 30 センサ群、 40 走行装置、 電子制御ユニット(ECU)、 52 プロセッサ、 54 記憶装置