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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/14 20190101AFI20250701BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20250701BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20250701BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20250701BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20250701BHJP
   G08G 1/14 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
B60L58/14
B60L1/00 L
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/10
G08G1/14 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023034945
(22)【出願日】2023-03-07
(65)【公開番号】P2024126535
(43)【公開日】2024-09-20
【審査請求日】2024-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 寛也
(72)【発明者】
【氏名】菅野 達也
(72)【発明者】
【氏名】丸岩 修嗣
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】角間 大輔
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-142661(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/124990(JP,A1)
【文献】特開2021-072682(JP,A)
【文献】特表2016-514443(JP,A)
【文献】特開2021-048687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
G08G 1/14
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔起動機能を備える車両を管理する管理システムであって、
1又は複数のプロセッサを備え、
前記1又は複数のプロセッサは、前記車両の駐車中のチェックタイミングに前記車両を起動して前記車両のバッテリ残量を取得し、
前記バッテリ残量が閾値以下の場合、前記1又は複数のプロセッサは、前記バッテリ残量を回復させるための回復促進処理を行い、
前記閾値は、前記車両の遠隔起動に必要な前記バッテリ残量の下限値である遠隔起動下限値よりも大きい値に設定され
前記1又は複数のプロセッサは、前記車両が出庫する予定である出庫予定タイミングの情報を取得し、
前記1又は複数のプロセッサは、前記車両の入庫時の前記バッテリ残量に基づいて、前記バッテリ残量が前記遠隔起動下限値まで減少する第1タイミングを推定し、
前記1又は複数のプロセッサは、前記第1タイミングから所定時間が経過した後の第2タイミングを設定し、
前記1又は複数のプロセッサは、前記出庫予定タイミングが前記第1タイミングよりも後であり、かつ前記第2タイミングよりも前であることを含む所定の条件が成立する場合、前記チェックタイミングを設定し、
前記1又は複数のプロセッサは、前記所定の条件が成立しない場合、前記チェックタイミングを設定しない
管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の管理システムであって、
前記チェックタイミングは、前記車両が入庫してから、又は前記車両が前回起動されてから第1期間が経過したタイミングである
管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の管理システムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記車両の駐車場所の環境に応じて前記第1期間を変更する
管理システム。
【請求項4】
請求項2に記載の管理システムであって、
前記チェックタイミングは、前記車両が入庫してから前記第1期間が経過したタイミングであり、
前記1又は複数のプロセッサは、前記車両の入庫時の前記バッテリ残量に基づいて前記第1期間を設定する
管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両を管理する管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、乗車前の車両の車室内を空調するプレ空調運転を実施可能な車両用空調装置を開示している。車両用空調装置は、空調ECUを備える。空調ECUは、バッテリの蓄電量を取得し、次回予定されている車両走行に関する情報を取得する。空調ECUは、次回の走行開始時の予測蓄電量が、走行用モータ及び補機類が消費する予測電力量と、プレ空調運転によって消費される予測電力量とを合わせた合計電力量を上回る場合にプレ空調運転を実施する。
【0003】
特許文献2は、太陽電池を使用した車両に適用する車両用システムを開示している。特許文献2に開示の車両用システムによれば、太陽電池の発電電力で車載機を動作させることができる場合には、太陽電池の発電電力を用いて車載機が動作させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-159691号公報
【文献】特許第6197383号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遠隔起動機能を備える車両について考える。車両が駐車されている間は、待機電力などによって車両のバッテリ残量が減少していく。そして、バッテリ残量が少なくなると、通信装置が休止状態となり、車両を遠隔起動させることができなくなるおそれがある。
【0006】
本開示の目的は、車両の駐車期間に関わらず、車両が遠隔起動可能な状態を保つことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、遠隔起動機能を備える車両を管理する管理システムに関連する。
管理システムは、1又は複数のプロセッサを備える。
1又は複数のプロセッサは、
車両の駐車中のチェックタイミングに車両を起動して車両のバッテリ残量を取得し、
バッテリ残量が閾値以下の場合、バッテリ残量を回復させるための回復促進処理を行う。
上記閾値は、車両の遠隔起動に必要なバッテリ残量の下限値である遠隔起動下限値よりも大きい値に設定される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車両の駐車中にバッテリ残量のチェックが行われ、バッテリ残量が閾値以下まで減少している場合には、回復促進処理が行われる。回復促進処理によって、バッテリ残量が、車両の遠隔起動に必要な量よりも少なくなる前に回復させられる。これにより、車両の駐車期間に関わらず、車両が遠隔起動可能な状態を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る管理システムの概要を説明するための概念図である。
図2】本実施の形態に係る管理装置によるバッテリ残量のチェックについて説明するための図である。
図3】本実施の形態に係る管理システムの構成例を示すブロック図である。
図4】本実施の形態に係る管理装置による処理の例を示すフローチャートである。
図5】1つ目の変形例を説明するためのグラフ図である。
図6】2つ目の変形例を説明するためのグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0011】
1.管理システムの概要
本実施の形態に係る管理システムは、遠隔起動機能を備える車両と、当該車両を管理する管理装置とを含むシステムである。管理システムによって管理される車両は、内燃機関を動力源とする自動車であっても、動力源として内燃機関及びモータの両方を備えるハイブリッド自動車であっても、モータを動力源とする電気自動車であってもよい。また、遠隔起動機能を備える車両の例としては、自動運転車両や、所定エリア内での自動運転が可能なAVP(Automated Valet Parking:自動バレー駐車)車両が挙げられる。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る管理システム1による車両20の管理を説明するための概略図である。図1の例では、車両20はAVP車両であり、少なくとも駐車場100内における自動運転が可能である。管理システム1は、管理装置10及び車両20を含む。管理装置10は、典型的には、車両20と通信するサーバである。車両20は、管理装置10と通信を行うための通信装置30を備えている。
【0013】
また、車両20は、バッテリ50を搭載している。バッテリ50に蓄えられた電力は、通信装置30を含む各種の車載装置を稼働させる際に使用される。また、車両20がモータを備える場合は、モータの駆動にもバッテリの電力が使用される。また、車両20が内燃機関を備える場合は、内燃機関の点火の際にもバッテリの電力が使用される。駐車場100には充電装置101が備えられていてもよく、この場合、車両20は充電装置101まで自動走行してバッテリ50の充電を行うことができる。
【0014】
管理装置10は、車両20の通信装置30と無線ネットワークを介して通信を行うことができる。通信装置30は、管理装置10と通信を行うことで、管理装置10からの指示を受け付け、あるいは管理装置10に情報を送信することができる。
【0015】
管理装置10は、更に、車両20のユーザ200が所有するユーザ端末201と通信可能であってもよい。管理装置10は、ユーザ端末201と通信を行うことで、ユーザ200からの車両20の出庫要求を受け付けたり、車両20の出庫予定時刻を取得したりすることができる。
【0016】
車両20が駐車場100に駐車されている間、車両20の電源はOFFの状態にされている。また、通信装置30は待機状態に保たれている。待機状態は、管理装置10からの通信を受け取ることができるように少なくとも一部の機能が稼働した状態である。待機状態においては、管理装置10からの通信を受け取るための機能以外は稼働を停止していてもよい。この場合、通信装置30は管理装置10からの通信を受け付けると起動状態となり、停止していた機能が再び稼働させられる。
【0017】
管理装置10は、必要に応じて、車両20を遠隔で起動することができる。より詳細には、管理装置10は、車両20に起動指示を送信する。車両20の通信装置30は、管理装置10から送信された起動指示を受信する。その起動指示の受信に応答して、車両20は起動する、すなわち、車両20の電源がONする。このようにして、車両20の遠隔起動機能が実現される。車両20が起動されると、車両20に搭載された各種の装置から取得される情報を、通信装置30から管理装置10に送信することができるようになる。
【0018】
例えば、管理装置10は、ユーザ200から車両20の出庫要求を受け付けると、あるいは車両20の出庫予定時刻が近づくと、車両20を遠隔で起動する。管理装置10からの起動指示に応答して、車両20は起動する。その後、車両20をAVPによって出庫させるために、更に車両20の走行に必要な機能が始動される。例えば、車両20がモータを動力源として使用する場合は、モータが始動される。あるいは、車両20が内燃機関を動力源として使用する場合は、内燃機関が始動させられる。こうして、車両20は、管理装置10の管理のもと駐車場100内を自動走行し、ユーザ200が車両20に乗車するためのエリアに移動することができる。
【0019】
車両20を走行可能な状態まで始動させるには、バッテリ50から供給される電力が必要である。ここで、車両20が駐車されている間、バッテリ50のバッテリ残量(SOC:State of Charge)は、各種の車載装置の待機電力や自然放電などによって次第に減少していく。また、通信装置30を待機状態に保つためにも、電力は消費される。そのため、バッテリ残量には、通信装置30を待機状態又は起動状態としておくための下限値が設けられている。以下、この下限値を「遠隔起動下限値」と呼ぶ。バッテリ残量が遠隔起動下限値以下となると、車両20の始動に最低限必要なバッテリ残量を温存するために、通信装置30は休止状態に移行する。休止状態は通信装置30の全ての機能が停止した状態であり、休止状態においては、通信装置30は管理装置10からの通信を受け付けることはできない。つまり、遠隔起動下限値は、車両20を遠隔起動させるために必要なバッテリ残量の下限値と言い換えることもできる。バッテリ残量が遠隔起動下限値以下まで減少すると、管理装置10が車両20を遠隔起動することはできなくなる。
【0020】
仮に何の対策もされないまま車両20が駐車され続けるとすると、バッテリ残量は次第に減少していき、やがて遠隔起動下限値以下となる。そのため、特に車両20の駐車期間が長期にわたる場合などには、ユーザ200が車両20の出庫を希望するときには遠隔起動ができなくなっており、AVPを利用できないという事態も起こり得る。このことは、車両20を利用しようとするユーザ200にとって不便である。
【0021】
本実施の形態に係る管理システム1は、このような課題に鑑みてなされたものである。バッテリ残量の減少によって車両20の出庫時に遠隔起動ができなくなることのないように、管理装置10は、事前にバッテリ残量をチェックし、必要な場合にはバッテリ残量を回復させておく。以下、管理装置10が行う処理についてより詳細に説明する。
【0022】
2.バッテリ残量の取得と回復促進処理
図2は、管理装置10によるバッテリ残量のチェックについて説明するための図である。管理装置10は、車両20の駐車中の「チェックタイミング」に車両20を遠隔起動して、車両20のバッテリ残量を取得する。
【0023】
チェックタイミングは、車両20が駐車場100に入庫してから、又は車両20が前回起動されてから「第1期間」が経過したタイミングである。図2の例では、タイミングT1、T2、及びT3がチェックタイミングとなっている。
【0024】
第1期間は予め設定される任意の期間である。第1期間は固定された期間であっても、変動可能な期間であってもよい。ただし、いずれの場合でも、第1期間は、バッテリ残量が遠隔起動下限値を下回る前にチェックタイミングが訪れるように、余裕を持った期間に設定されることが望ましい。例えば、車両20が入庫してからバッテリ残量が遠隔起動下限値以下となるまでの期間が平均4日であるとすれば、第1期間をそれよりも短い期間(例えば、2日間)に設定することが想定される。
【0025】
また、変動可能な期間の例として、第1期間は、駐車場所の環境に応じて変動する期間であってもよい。バッテリ残量の減少速度は、駐車場所の環境によって異なることがある。例えば、駐車されている車両20が直射日光や低温環境に晒されていれば、バッテリ残量の減少速度が速くなることが予想される。そこで、駐車場所の環境がこのような環境となっているときは第1期間が短くなるように設定されてもよい。あるいは、車両20が入庫してから最初の第1期間(図2の例では、入庫からタイミングT1までの期間)については、車両20の入庫時のバッテリ残量に応じて変動させられてもよい。入庫時のバッテリ残量が少ないほど、車両20が入庫してからバッテリ残量が遠隔起動下限値以下となるまでの期間が短くなることが予想される。そこで、入庫時のバッテリ残量が少ないほど短くなるように、最初の第1期間が設定されてもよい。
【0026】
管理装置10は、チェックタイミングが訪れる毎に、通信装置30と通信を行って車両20を遠隔で起動し、バッテリ残量を取得する。取得されたバッテリ残量を表したものが図2の下のグラフである。管理装置10は、取得したバッテリ残量が閾値TH以下となっていないかチェックする。そして、チェックの結果、バッテリ残量が閾値TH以下となっている場合、管理装置10は、バッテリ残量を回復させるための「回復促進処理」を行う。
【0027】
閾値THは、少なくとも遠隔起動下限値よりも大きい値となるように予め設定される。閾値THと遠隔起動下限値との差を、以下、オフセットと呼ぶ。オフセットは、固定値であってもよい。あるいは、オフセットは、車両20の種類や駐車の状況に応じて変動可能な値として設定されてもよい。例えば、車両20が内燃機関を搭載している場合には、内燃機関を始動させて動力を発生させることでバッテリ残量を回復させることが可能なため、車両20が内燃機関を搭載しない場合と比較して小さくなるようにオフセットが設定されてもよい。ただし、いずれの場合であっても、バッテリ残量が遠隔起動下限値を下回る前に回復促進処理が行われるように、閾値THは遠隔起動下限値に対して余裕を持った値となるように設定されることが望ましい。
【0028】
バッテリ残量は通信装置30の待機電力などによって消費されるため、図2の下のグラフに示されるように、タイミングT1、T2、T3と次第に減少していく。そして、タイミングT3においてバッテリ残量が閾値THを下回っている。そこで、管理装置10は、タイミングT3において回復促進処理を行う。
【0029】
回復促進処理は、バッテリ残量を回復させるための処理である。回復促進処理の例としては、次のようなものが挙げられる。1つ目の例は、車両20を充電装置101まで自動走行させ、充電を行わせることである。これは、車両20が動力源としてモータを備える場合の例である。充電装置101までの車両20の走行は、管理装置10によって制御されてもよいし、車両20に搭載された制御装置によって制御されてもよい。充電が完了すると、車両20は元の位置又は空いている駐車枠に戻る。そして、車両20は再び電源OFFの状態となり、通信装置30は再び待機状態となる。
【0030】
なお、この場合、オフセットは、車両20の駐車位置から充電装置101までの距離が長くなるほど大きくなるように設定されてもよい。車両20が充電装置101まで走行する間も、モータを駆動するために電力が使用される。そのため、オフセットがこのように設定されることは、車両20が充電装置101にたどり着くまでの間にバッテリ残量が走行に必要なバッテリ残量を下回ることがないようにするために有効である。
【0031】
2つ目の例は、ユーザ200に車両20の使用を促すことである。ユーザ200に使用を促す方法として、例えば、車両20がユーザ200によって個人的に所有される車両である場合には、車両20の利用を薦める通知をユーザ端末201に送信することが想定される。あるいは、例えば、車両20がレンタカーなど複数のユーザ200によって共有される車両20である場合には、車両20に関する利用料金の割引などのインセンティブをユーザ200に付与することで、車両20がユーザ200によって優先的に使用されるように促すことが想定される。車両20がユーザ200によって使用されれば、ユーザ200によって車両20の充電が行われ、バッテリ残量が回復させられることが期待される。
【0032】
3つ目の例は、車両20の管理者にバッテリ残量を通知することである。バッテリ残量の通知によって、管理者に車両20の充電を促すことができる。なお、車両20の管理者は、ユーザ200と同一の人物であってもよいし、異なる人物であってもよい。例えば、車両20がレンタカーの場合などには、車両20の管理者はレンタカーの管理者であり、ユーザ200とは異なる人物であることが想定される。
【0033】
4つ目の例は、車両20が内燃機関を搭載する車両の場合の例である。この場合、回復促進処理は、内燃機関を作動させることであってもよい。作動した内燃機関が発生させる動力によってバッテリの充電を行うことで、バッテリ残量を回復させることができる。
【0034】
このように、本実施の形態に係る管理システム1によれば、バッテリ残量の不足によって車両20が遠隔起動できなくなる前に、回復促進処理によってバッテリ残量を回復させておくことができる。こうして、車両20が駐車場100に保管される期間に関わらず、管理装置10によって車両20を遠隔起動できる状態が保たれる。そのため、ユーザ200の利便性を向上させることができる。
【0035】
3.管理システムの構成
図3は、管理システム1の構成例を示すブロック図である。
【0036】
管理装置10は、1又は複数のプロセッサ11(以下、単にプロセッサ11と呼ぶ)、及び1又は複数のメモリ12(以下、単にメモリ12と呼ぶ)を備える。プロセッサ11は、各種処理を実行する。メモリ12は、プロセッサ11による処理に必要な各種プログラム及び各種情報を格納する。プロセッサ11がメモリ12に格納されたプログラムを実行することにより、管理装置10の機能が実現される。
【0037】
車両20は、通信装置30、制御装置40、バッテリ50、及びアクチュエータ60を備える。車両20は、自動運転車両であってもよいし、AVP車両であってもよい。
【0038】
通信装置30は、車両20の外部と通信を行う。例えば、通信装置30は、管理装置10と通信を行う。
【0039】
アクチュエータ60は、駆動アクチュエータ、制動アクチュエータ、及び操舵アクチュエータを含む。駆動アクチュエータは、内燃機関及びモータの少なくともいずれかを含む。
【0040】
制御装置40は、車両20を制御するコンピュータである。例えば、制御装置40は、アクチュエータ60を制御することによって車両20の走行を制御する。車両20が自動運転車両の場合は、制御装置40は車両20の自動運転を制御する。また、制御装置40は、バッテリ50のバッテリ残量(SOC)の情報を取得することができる。典型的には、制御装置40は、複数のECU(Electronic Control Unit)の集合体である。制御装置40は、1又は複数のプロセッサ41(以下、単にプロセッサ41と呼ぶ)、及び1又は複数のメモリ42(以下、単にメモリ42と呼ぶ)を備える。プロセッサ41は、各種処理を実行する。メモリ42は、プロセッサ41による処理に必要な各種プログラム及び各種情報を格納する。プロセッサ41がメモリ42に格納されたプログラムを実行することにより、制御装置40による車両20の制御が実現される。
【0041】
4.管理装置が行う処理
図4は、管理装置10が実行する処理、より具体的にはプロセッサ11が実行する処理を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートは、所定の制御周期ごとに繰り返し実行される。
【0042】
ステップS110において、プロセッサ11は、チェックタイミングが到来したか否かを判定する。チェックタイミングが到来している場合(ステップS110;Yes)、処理は、ステップS120に進む。一方、チェックタイミングがまだ到来していない場合、又はチェックタイミングが設定されていない場合(ステップS110;No)、今回処理は終了する。
【0043】
ステップS120において、プロセッサ11は、車両20を遠隔起動させる。つまり、管理装置10から通信装置30に起動指示が送られ、起動指示の受信に応答して車両20が起動する。車両20が起動させられると、処理はステップS130に進む。
【0044】
ステップS130において、プロセッサ11は、バッテリ50のバッテリ残量を取得する。バッテリ残量は、まず、制御装置40によって取得される。そして、制御装置40によって取得されたバッテリ残量が、通信装置30から管理装置10に送信される。管理装置10によってバッテリ残量が取得されると、処理はステップS140に進む。
【0045】
ステップS140において、プロセッサ11は、バッテリ残量が閾値TH以下であるか否かを判定する。バッテリ残量が閾値TH以下の場合(ステップS140;Yes)、処理は、ステップS150に進む。一方、バッテリ残量が閾値THよりも大きい場合(ステップS140;Yes)、今回処理は終了する。
【0046】
ステップS150において、プロセッサ11は、回復促進処理を行う。回復促進処理の具体例は既に述べたとおりである。ステップS150では、回復促進処理が行われることで、閾値TH以下となっていたバッテリ残量が回復させられる。回復促進処理が行われると、一連の処理は終了する。
【0047】
なお、図4には示されていないが、ステップS120において起動指示を受け付けることで待機状態から起動状態に移行した通信装置30は、管理装置10からの入力が一定時間なくなれば、再び待機状態に移行する。また、このとき車両20も再び電源OFFの状態になり、次に管理装置10からの起動指示があるまでの間、電力の消費を抑えながら待機することになる。
【0048】
また、図4のステップS140においては、バッテリ残量の代わりに、車両20が入庫してから現在までの消費電力量に関する判定が行われてもよい。この場合、プロセッサ11は、車両20の入庫時にバッテリ残量を取得する。そして、入庫時のバッテリ残量から今回のバッテリ残量への減少量、つまり入庫時からの消費電力量を算出する。消費電力量には閾値が予め設定され、プロセッサ11は、ステップS140において、消費電力量が閾値以上であるか否かについての判定を行う。消費電力量が閾値以上である場合には、処理はステップS150に進み、バッテリ残量が閾値TH以下となった場合と同様の回復促進処理が行われる。
【0049】
5.変形例
5-1.1つ目の変形例
変形例として、プロセッサ11は、所定の条件が成立する場合にチェックタイミングを設定してもよい。図5には、1つ目の変形例において、所定の条件が成立する場面の例が示されている。
【0050】
所定の条件が成立するか否かを判断するために、プロセッサ11は、「第1タイミング」を推定する。第1タイミングは、バッテリ残量が遠隔起動下限値まで減少すると推定されるタイミングである。プロセッサ11は、第1タイミングを推定するために、車両20の入庫時に、車両20のバッテリ残量を取得しておく。そして、プロセッサ11は、車両20の入庫時のバッテリ残量に基づいて、第1タイミングを推定する。入庫時のバッテリ残量から第1タイミングを推定するための情報は、メモリ12に予め記憶されている。例えば、車両20が駐車されている間のバッテリ残量の減少速度についてのデータが、車両20の管理者等によって予め収集される。そして、収集されたデータから算出されたバッテリ残量の減少速度の平均値が、予測されるバッテリ残量の減少速度としてメモリ12に記憶されていてもよい。そして、プロセッサ11は、入庫時のバッテリ残量とメモリ12に記憶されているバッテリ残量の減少速度から、バッテリ残量が遠隔起動下限値となるまでの時間を算出してもよい。
【0051】
なお、図5の例ではバッテリ残量が線形に減少していくという予測に基づいて第1タイミングが算出されているが、車両20の駐車場所の環境などに応じてバッテリ残量の減少速度は変化し得る。例えば、車両20の駐車場所が直射日光に晒される環境や低温環境にある場合、バッテリ残量の減少速度が速くなることが予想される。そのため、第1タイミングは、これらの条件に応じて可変な期間となるように算出されてもよい。この場合、メモリ12には、車両20の駐車場所の環境に応じたバッテリ残量の減少速度を算出するための情報が予め記憶される。
【0052】
こうして算出された第1タイミングに基づいて、プロセッサ11は所定の条件が成立するか否かを判断する。1つ目の変形例における所定の条件は、車両20の出庫予定タイミングが、第1タイミングよりも後であることである。出庫予定タイミングは、車両20が出庫する予定のタイミングである。
【0053】
1つ目の変形例において、所定の条件が成立することは、仮に何の対策も行われなかったとすると、車両20の出庫予定タイミングまでの間にバッテリ残量が遠隔起動下限値まで減少することが予想されることを意味する。つまり、もし何も対策が行われなかったとすれば、車両20は出庫予定タイミングまでの間に遠隔起動できない状態となってしまう。このような事態を防ぐために、プロセッサ11は、所定の条件が成立する場合にはチェックタイミングを設定して、車両20の駐車中にバッテリ残量が閾値TH以下となっていないかをチェックしておく。そして、バッテリ残量が閾値TH以下となっていた場合には回復促進処理が行われることで、車両20が遠隔起動できなくなることを防ぐことができる。
【0054】
なお、プロセッサ11は、車両20の出庫予定タイミングについての情報をユーザ端末201から取得することができる。例えば、車両20がAVP車両の場合、ユーザ200は、車両20に乗車する予定の時刻をユーザ端末201を通じて管理装置10に登録しておくことが想定される。この登録された時刻が出庫予定タイミングとされてもよい。あるいは、車両20がレンタカーの場合には、ユーザ200がユーザ端末201を通じて車両20に乗車する時刻を予約しておくことが想定される。この予約された時刻が出庫予定タイミングとされてもよい。
【0055】
5-2.2つ目の変形例
2つ目の変形例においても、所定の条件が成立する場合にチェックタイミングが設定される点については同様である。また、プロセッサ11によって出庫予定タイミングが取得される点、及び第1タイミングが推定される点についても同様である。
【0056】
更に、2つ目の変形例においては、第1タイミングよりも後の第2タイミングが設定される。第2タイミングは、任意のタイミングに設定可能である。例えば、第1タイミングから所定期間が経過した後のタイミングが第2タイミングとされてもよい。そして、プロセッサ11は、出庫予定タイミングが第2タイミングよりも前である場合に、所定の条件が成立したと判断する。つまり、図6のように、出庫予定タイミングが第2タイミングよりも後となる場合には、チェックタイミングは設定されない。
【0057】
車両20が駐車される期間が非常に長い期間となる場合、もしバッテリ残量が閾値TH以下となる度に回復促進処理が行われるとすると、出庫予定タイミングまでの間に回復促進処理が行われる回数が過度に多くなることもあり得る。過度に多い回数の回復促進処理を行ってまで車両20が遠隔起動できる状態を保つことは、コスト面から好ましくない。そこで、2つ目の変形例においては、上述のような所定の条件が成立する場合にのみチェックタイミングが設定される。これにより、車両20の駐車期間がある程度以上長期間となる場合には、チェックタイミングを設定しないこととし、回復促進処理が過剰な回数行われることを防ぐことができる。
【0058】
なお、車両20の出庫予定タイミングが第2タイミングよりも後である場合、出庫予定タイミングにはバッテリ残量が遠隔起動下限値を下回っていることが予測される。そのため、出庫予定タイミングが訪れたときには、車両20は手動で起動される。例えば、管理装置10がユーザ端末201を通じて、ユーザ200に手動で車両20を起動させるように通知することが想定される。
【0059】
6.処理主体
以上の説明では、管理装置10のプロセッサ11がバッテリ残量を回復させるために必要な一連の処理を行うものとして説明した。ただし、一連の処理の少なくとも一部は、車両20側の制御装置40のプロセッサ41によって行われてもよい。例えば、制御装置40に含まれる複数のECUの一部が、車両20の駐車中も稼働した状態とされる。そして、当該ECUが、チェックタイミングが訪れたら、バッテリ残量を取得するために必要なECUを起動させてバッテリ残量を取得してもよい。また、制御装置40のプロセッサ41がバッテリ残量についての判定を行ってもよく、バッテリ残量が閾値TH以下の場合、制御装置40が充電装置101まで車両20を走行させて充電を行わせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…管理システム 10…管理装置 11…プロセッサ 12…メモリ 20…車両 30…通信装置 40…制御装置 41…プロセッサ 42…メモリ 50…バッテリ 60…アクチュエータ 100…駐車場 101…充電装置 200…ユーザ 201…ユーザ端末 TH…閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6