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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20250701BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20250701BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023055098
(22)【出願日】2023-03-30
(65)【公開番号】P2024142780
(43)【公開日】2024-10-11
【審査請求日】2024-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕哉
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-031019(JP,A)
【文献】特開2019-021513(JP,A)
【文献】特開2022-077153(JP,A)
【文献】国際公開第2012/014730(WO,A1)
【文献】特開2020-004556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルと、厚さ方向における前記電池セルの両面上にそれぞれ配置された中間部材と、を有する積層体を備える電池であって、
前記電池セルは、前記厚さ方向において複数の電極が積層された電極積層部と、前記電極積層部の外縁を覆うように配置されたシール部と、を有し、
前記中間部材は、集電板部および弾性体部を有し、
前記電池を前記厚さ方向から平面視した場合、
前記集電板部の面積は、前記電池セルの面積よりも小さく、
前記集電板部は、切り欠き部を有し、
前記弾性体部は、前記切り欠き部に配置され、かつ、
前記弾性体部は前記シール部と重複する、電池。
【請求項2】
電池セルと、厚さ方向における前記電池セルの両面上にそれぞれ配置された中間部材と、を有する積層体を備える電池であって、
前記電池セルは、前記厚さ方向において複数の電極が積層された電極積層部と、前記電極積層部の外縁を覆うように配置されたシール部と、を有し、
前記中間部材は、集電板部および弾性体部を有し、
前記電池を前記厚さ方向から平面視した場合、
前記集電板部の面積は、前記電池セルの面積よりも小さく、
前記弾性体部は、前記集電板部の外縁の外側に配置されており、かつ、
前記弾性体部は前記シール部と重複する、電池。
【請求項3】
前記弾性体部は、前記集電板部の前記外縁の全周の外側に配置されている、請求項2に記載の電池。
【請求項4】
重力方向下側である前記電池の第1端部に位置する前記中間部材を第1中間部材とし、重力方向上側である前記電池の第2端部に位置する前記中間部材を第2中間部材とした場合、
前記第1中間部材における弾性体部の剛性は、前記第2中間部材における弾性体部の剛性よりも大きい、請求項1または請求項2に記載の電池。
【請求項5】
前記電池は、前記厚さ方向に積層された複数の前記積層体を備える、請求項1または請求項2に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、通常、負極集電体、負極活物質層、セパレータ層、正極活物質層および正極集電体を有する積層体を備える。
【0003】
例えば、特許文献1には、正極集電体層と、正極層(正極活物質層)と、セパレータと、負極層(負極活物質層)と、負極集電体層とが順に積層されて構成された単セルと、単セルの外周部分をシールするシール部と、を有する電池パックが開示されている。また、特許文献2には、集電体、電池セル及びセパレータの少なくともいずれかの電池構成部材の一部又は全部が、圧力を吸収する特性を持たせた圧力吸収部材であることを特徴とする圧力吸収構造を備えた電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6826916号公報
【文献】特開2003-317795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池においては、厚さ方向において複数の電極が積層された電極積層部と、電極積層部の外縁に配置されたシール部とを有する電池セルを用いることが想定される。また、電池セルの電気を集電するため、厚さ方向において電池セルの両面上に集電板を配置することが想定される。ここで、電池の充放電の状態および経時変化により電極積層部が膨張し、電極積層部の厚さとシール部との厚さに差が生じる恐れがある。詳しくは後述するが、電極積層部の厚さとシール部との厚さに差が生じると、集電板が破損したり、シール部でシールされた電極積層部の外縁が破損したりする恐れがある。そのため、電池の構造信頼性を向上できる余地がある。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、構造信頼性が良好な電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]
電池セルと、厚さ方向における上記電池セルの両面上にそれぞれ配置された中間部材と、を有する積層体を備える電池であって、上記電池セルは、上記厚さ方向において複数の電極が積層された電極積層部と、上記電極積層部の外縁を覆うように配置されたシール部と、を有し、上記中間部材は、集電板部および弾性体部を有し、上記電池を上記厚さ方向から平面視した場合、上記集電板部の面積は、上記電池セルの面積よりも小さく、上記集電板部は、切り欠き部を有し、上記弾性体部は、上記切り欠き部に配置され、かつ、上記弾性体部は上記シール部と重複する、電池。
【0008】
[2]
電池セルと、厚さ方向における上記電池セルの両面上にそれぞれ配置された中間部材と、を有する積層体を備える電池であって、上記電池セルは、上記厚さ方向において複数の電極が積層された電極積層部と、上記電極積層部の外縁を覆うように配置されたシール部と、を有し、上記中間部材は、集電板部および弾性体部を有し、上記電池を上記厚さ方向から平面視した場合、上記集電板部の面積は、上記電池セルの面積よりも小さく、上記弾性体部は、上記集電板部の外縁の外側に配置されており、かつ、上記弾性体部は上記シール部と重複する、電池。
【0009】
[3]
上記弾性体部は、上記集電板部の上記外縁の全周の外側に配置されている、[2]に記載の電池。
【0010】
[4]
重力方向下側である上記電池の第1端部に位置する上記中間部材を第1中間部材とし、重力方向上側である上記電池の第2端部に位置する上記中間部材を第2中間部材とした場合、上記第1中間部材における弾性体部の剛性は、上記第2中間部材における弾性体部の剛性よりも大きい、[1]から[3]までのいずれかに記載の電池。
【0011】
[5]
上記電池は、上記厚さ方向に積層された複数の上記積層体を備える、[1]から[4]までのいずれかに記載の電池。
【発明の効果】
【0012】
本開示においては、構造信頼性が良好な電池を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示における電池を例示する概略断面図である。
図2】本開示において課題が生じる理由および課題が解決できるメカニズムを説明する概略断面図である。
図3】本開示における電池セルを例示する概略平面図および概略断面図である。
図4】本開示における中間部材を例示する概略平面図である。
図5】本開示における中間部材を例示する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示における実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0015】
図1は、本開示における電池を例示する概略断面図である。図1に示す電池100は、電池セル10と、厚さ方向zにおける電池セル10の両面上にそれぞれ配置された中間部材20とを有する積層体L(L1~L4)を備える。詳しくは後述するが、電池セル10は、厚さ方向zにおいて複数の電極が積層された電極積層部5と、電極積層部5の外縁に配置されたシール部6と、を有している。また、中間部材20は、集電板部21および弾性体部22と、を有している。さらに、電池100を厚さ方向zから平面視した場合、集電板部21の面積は、電池セル10の面積よりも小さい。また、弾性体部22はシール部6と重複する。詳しくは後述するが、上記中間部材において、上記集電板部は、切り欠き部を有し、上記弾性体部は、上記切り欠き部に配置されてもよい。また、上記中間部材において、上記弾性体部は、上記集電板部の外縁の外側に配置されていてもよい。
【0016】
本開示によれば、厚さ方向において、電池セルの両面上にそれぞれ所定の中間部材が配置され、かつ、中間部材における弾性体部が電池セルにおけるシール部と重複するため、構造信頼性が良好な電池となる。
【0017】
図2を用いて、本開示において課題が生じる理由および課題が解決できるメカニズムを説明する。図2(a)、(b)は本開示において課題が生じる理由を説明する図であり、図2(c)、(d)は本開示において課題が解決できるメカニズムを説明する図である。
【0018】
図2(a)に示す電池200は、電極積層部105およびシール部106を有する電池セル110と、厚さ方向zにおいて電池セル110の両面上にそれぞれ配置された中間部材(集電板)120と、を備えている。また、電池200においては、厚さ方向zにおける一端部に電池セルの膨張を吸収する緩衝部材130が配置されている。また、これらの部材は、外装体140に収容されている。このような電池は、図2(b)に示すように、充放電の状態および経時変化により電極積層部中の正極活物質層および負極活物質層が膨張し、電極積層部も膨張する恐れがある。基本的に電極積層部の端部をシールするシール部は膨張しない、または膨張量が極めて小さいため、電極積層部とシール部とで厚さに差が生じる恐れがある。その場合、集電板とシール部との間に隙間が生じる恐れがある。このような隙間が生じた状態で電池に厚さ方向の振動が加わった場合、シール部が独自に振動する恐れがある。シール部が独自に振動すると、シール部と集電板とが接触して、集電板が破損したり、シール部でシールされた電極積層部の外縁が破損したりする恐れがある。また、特に図示しないが、電極積層部において、活物質層(正極活物質層および負極活物質層)の膨張により、活物質層の厚さと、活物質層の端部をシールするシール部の厚さとに差が生じた場合にも、同様に、シール部が独自に振動する恐れがあり、電極積層部の集電体が破損する恐れがある。
【0019】
これに対して、図2(c)に示すように、本開示においては、電池セル10の両面上にそれぞれ配置された中間部材20が、電池セル10の面積よりも小さい集電板部21と、集電板部21の所定の位置に配置された弾性体部22とを有する。さらに、厚さ方向zにおいて、弾性体部22がシール部6と重複する。このような電池であれば、電極積層部5が膨張して、シール部6と厚さに差が生じた場合、弾性体部22に加わる圧縮力(荷重)が減少し、弾性体部22が無荷重における長さ(自由長)に戻るように変形することで、図2(d)に示すように、弾性体部22がシール部6を支持でき隙間が生じることを抑制できる。その結果、シール部が独自に振動することを抑制でき、電池の構造信頼性が良好となる。なお、図2(a)、(b)に示す電池200において中間部材(集電板120)の厚さを大きくすることで、集電板の耐久性を向上でき、集電板の破損を抑制することも可能と考えられるが、シール部でシールされた電極積層部の外縁の破損を抑制することは困難である。また、集電板を厚くすると、電気抵抗が増加してしまう。電極積層部内部の集電体についても同様である。一方、本開示によれば、集電板の厚さを厚くせずとも集電板の破損を抑制できるため、電気抵抗の増加を避けつつ、電池の構造信頼性を向上できるという利点もある。
【0020】
1.積層体
本開示における積層体は、電池セルおよび中間部材を有する。
(1)電池セル
図3は、本開示における電池セルを例示する概略平面図および概略断面図である。図3(a)は電池セルを厚さ方向から見た概略平面図であり、図3(b)は、図3(a)のA-A断面図である。
【0021】
図3(a)、(b)に示すように、電池セル10は、厚さ方向zにおいて複数の電極Eが積層された電極積層部5と、電極積層部5の外縁を覆うように配置されたシール部と、を有している。図3(a)に示すように、「電極積層部の外縁」とは、電極積層部を構成する集電体の外縁をいう。図3(a)では、電極積層部5の外縁E1を覆うように、シール部6が配置されている。シール部6は、外縁E2および内縁E2′を有し、シール部6の外縁E2は、電極積層部5の外縁E1の外側に位置し、シール部6の内縁E2′は、電極積層部5の外縁E1の内側に位置している。また、図3(a)に示すように、シール部6は、電極積層部5の外縁E1の全周に沿って配置されていることが好ましい。
【0022】
電極積層部における電極は、通常、集電体と、上記集電体の少なくとも一方の面上に配置された電極層とを有する。図3(b)に示すように、電極積層部5は、電極Eとして、集電体1と、集電体1の一方の面上に配置された正極活物質層2と、集電体1の他方の面上に配置された負極活物質層3と、を有するバイポーラ電極(BP)を有していてもよい。なお、本開示における電極積層部は、バイポーラ電極を有しなくてもよい。図3(b)に示す電極積層部5は、電極Eとして、バイポーラ電極BP1、バイポーラ電極BP2、正極側端部電極CA、および、負極側端部電極ANを有する。正極側端部電極CAは、集電体1と、集電体1の一方の面上に配置された正極活物質層2と、を有する。負極側端部電極ANは、集電体1と、集電体1の一方の面上に配置された負極活物質層3と、を有する。電極の数は特に限定されず、例えば、10以上、50以下である。
【0023】
また、図3(b)に示すように、電極積層部5は、発電単位U(U1~U3)を備える。発電単位Uは、正極活物質層2と、負極活物質層3と、正極活物質層2および負極活物質層3の間に配置されたセパレータ4と、を有する。また、本開示における電極積層部は、発電単位を1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。
【0024】
1つの発電単位は、2つのバイポーラ電極を用いて構成されていてもよい。図3(b)において、電極積層部5は、厚さ方向zにおいて、バイポーラ電極BP1およびバイポーラ電極BP2を有する。隣り合うバイポーラ電極BP1およびバイポーラ電極BP2の間に、セパレータ4が配置されている。発電単位U2は、バイポーラ電極BP2における正極活物質層2bと、バイポーラ電極BP1における負極活物質層3aと、それらの間に配置されたセパレータ4と、から構成されている。一方、発電単位U1は、バイポーラ電極BP1における正極活物質層2aと、負極側端部電極ANにおける負極活物質層3と、それらの間に配置されたセパレータ4と、から構成されている。また、発電単位U3は、バイポーラ電極BP2における負極活物質層3bと、正極側端部電極CAにおける正極活物質層2と、それらの間に配置されたセパレータ4と、から構成されている。
【0025】
電極積層部における、集電体、正極活物質層、負極活物質層、セパレータ、および集電体の材料については、従来公知の材料とすることができる。なお、正極活物質層、負極活物質層、セパレータは電解質を含有していてもよい。電解質は液系電解質(電解液)であってもよく、固体電解質であってもよい。ここで、セパレータが固体電解質を含有する場合、セパレータは固体電解質層と捉えることができる。電解質についても従来公知の材料とすることができる。
【0026】
シール部の材料は特に限定されないが、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が挙げられる。
【0027】
(2)中間部材
本開示における中間部材は、厚さ方向における上記電池セルの両面上にそれぞれ配置される部材であり、所定の集電板部および弾性体部を有する。
【0028】
図4および図5は本開示における中間部材を例示する概略平面図である。具体的には、図4は、集電板部の切り欠き部に弾性体部が配置された中間部材を例示し、図5は、集電板部の外縁の外側に弾性体部が配置された中間部材を例示する。なお、図4(b)は図4(a)から弾性体部を省略した図である。また、図4(c)および(d)において弾性体部は省略している。また、図4および図5において、O1は電池セルの外縁(シール部の外縁)を示し、O2は集電板部の外縁を示している。
【0029】
ここで、集電板部の外縁とは、図4(b)および図5(a)に示すように、集電板部21が辺L1~L4を有する場合、辺L1~L4および辺L1~L4の交点P1~P4から構成される外縁(図5(a))、または、辺L1~L4および辺L1~L4の延長線の交点P1~P4から構成される外縁(図4(b))をいう。
【0030】
図4(a)~(d)に示すように、本開示における中間部材20においては、集電板部21は、切り欠き部Nを有し、弾性体部22は、切り欠き部Nに配置されていてもよい。切り欠き部は、通常、厚さ方向において集電板部を貫通する。
【0031】
切り欠き部の形状は特に限定されない。図4(a)~(d)に示すように、切り欠き部の形状は、正方形、長方形および台形などの矩形であってもよく、楕円などの円形であってもよく、三角形であってもよい。また、集電板部が複数の切り欠き部を有する場合、切り欠き部の形状は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
切り欠き部の数および大きさは特に限定されず、適宜調整することができる。なお、切り欠き部の数は2か所以上であることが好ましい。切り欠き部に配置される弾性体部に加わる荷重を分散さセルことができるからである。また、切り欠き部が形成される位置は特に限定されないが、図4(d)に示すように、少なくとも集電板部の対向する2辺に形成されていることが好ましい。特に、図4(a)~(c)に示すように、集電板部の全ての辺に形成されていることが好ましい。また、後述するように、切り欠き部に配置される弾性体部は、厚さ方向においてシール部と重複する。そのため、図4(a)~(d)に示すように、通常、切り欠き部の少なくとも一部の領域は、電池セルの外縁O1の内側に存在する。
【0033】
また、図4(a)に示すように、切り欠き部Nに配置された弾性体部22は、集電板部21と接していなくてもよい。一方、特に図示しないが、弾性体部は、集電板部と接していてもよい。弾性体部と集電板部との間に隙間があることで、中間部材に荷重が加わり弾性体部が圧縮された場合、弾性体部が押し広げられる空間を確保でき、集電板部が破損することを抑制できる。
【0034】
また、図5に示すように、本開示における中間部材20において、弾性体部22は集電板部21の外縁O2の外側に配置されていてもよい。この場合、図5(a)に示すように、弾性体部22は、集電板部21の外縁O2の全周の外側に配置されていてもよく、図5(b)に示すように、集電板部21の外縁O2の一部の外側に配置されていてもよい。
【0035】
弾性体部22が集電板部21の外縁O2の外側に配置される場合、図5に示すように、集電板部は上述した切り欠き部を有していなくてもよい。一方、図示しないが、この場合、集電板部は、切り欠き部を有していてもよい。
【0036】
また、集電板部の外縁の外側に配置された弾性体部は、上述のように集電板部と接していてもよく、接していなくてもよい。
【0037】
また、電池を厚さ方向から平面視した場合、中間部材における集電板部の面積は発電セルの面積よりも小さい。なお、集電板部の面積とは、集電板部が切り欠き部を有する場合、切り欠き部を除く集電板部の面積をいう。
【0038】
また、電池を厚さ方向から平面視した場合、上記弾性体部は上記シール部と重複する。弾性体部の一部の領域がシール部と重複していてもよく、弾性体部の全ての領域がシール部と重複していてもよい。
【0039】
中間部材における弾性体部の厚さは、隣接する電池セルのシール部と接することができれば特に限定されない。
【0040】
集電板部の材料は特に限定されず、例えば、Al、Cu、SUS、Ni等の金属材料が挙げられる。
【0041】
また、弾性体部の材料は特に限定されず、例えば、例えば、ゴム、ウレタン、樹脂製スポンジなどの樹脂材料が挙げられる。また、弾性体部のヤング率はシール部のヤング率よりも小さいことが好ましい。弾性体部のヤング率がシール部のヤング率よりも大きすぎると、例えば電池セルに中間部材を配置して厚さ方向に圧縮力を付与する場合、つまり、電池セルのシール部で弾性体部を押さえつける場合、弾性体部よりもシール部の方が圧縮されシール部が破損する恐れがある。
【0042】
ここで、重力方向下側である電池の第1端部に位置する中間部材を第1中間部材とし、重力方向上側である電池の第2端部に位置する中間部材を第2中間部材とした場合、第1中間部材における弾性体部の剛性は、第2中間部材における弾性体部の剛性よりも大きいことが好ましい。なお、第1中間部材の弾性体部を第1弾性体部と称し、第2中間部材の弾性体部を第2弾性体部と称する。例えば、図1において、中間部材20aが第1中間部材であり、中間部材20eが第2中間部材である。つまり、図1において、弾性体部22aの剛性は弾性体部22eの剛性よりも大きいことが好ましい。たわみを抑制することができるからである。例えば、第1弾性体部には、少なくとも電池セルのシール部の重さおよび第2弾性体部の重さが加わるため、第1弾性体部の剛性が、第2弾性体部の剛性よりも小さすぎると、たわみが生じる恐れがある。特に、図1に示すように、電池が複数の積層体を備える場合、たわみがより大きくなる恐れがある。
【0043】
弾性体部の剛性は、下記式から算出することができる。式中、Kは弾性体部の剛性を意味し、Eは弾性体部のヤング率を意味し、Aは弾性体部の断面積を意味し、Lは弾性体部の自由長を意味する。
K=EA/L
【0044】
また、図1に示すように、電池が複数の積層体(L1~L4)を備える場合、つまり、第1弾性体部(22a)および第2弾性体部(22e)の間に、1つ以上の弾性体部(22b~22d)が配置されている場合、全ての弾性体部において、第1弾性体部22aの剛性が最も大きく、第2弾性体部22eの剛性が最も小さければ、その他の弾性体部(22b~22d)の剛性は特に限定されない。例えば、弾性体部22b~22dの剛性は、第1弾性体部22aの剛性と同じであってもよく、第2弾性体部22eの剛性と同じであってもよい。また、第1弾性体部22a、弾性体部22b、22c、22eおよび第2弾性体部22eの順に剛性が小さくなっていってもよい。
【0045】
ここで、図1における弾性体部22a~22eの剛性をそれぞれ、K1~K5とする。また、1つ積層体におけるシール部の重量をMとし、弾性体部22a~22eの重量を、それぞれ、m1~m5とする。この場合において、弾性体部22b~22dの剛性K2~K4は、K1に対してそれぞれ下記の関係を有していてもよい。上述のようにK5はK4と同じであってもよく、K4より小さくてもよい。
K4=[(M+m5)/(4M+m1+m2+m3+m4+m5)]K1
K3=[(2M+m5+m4)/(4M+m1+m2+m3+m4+m5)]K1
K2=[(3M+m5+m4+m3)/(4M+m1+m2+m3+m4+m5)]K1
【0046】
(3)積層体
本開示における積層体においては、上述した電池セルおよび中間部材との間に、接着剤層が配置されていてもよい。接着剤層は導電性を有することが好ましい。接着剤層の厚さは適宜調整することができるが、抵抗抑制の点から薄いことが好ましい。
【0047】
電池は積層体を1つ備えていてもよい。一方、電池は、厚さ方向に積層された複数の積層体を備えていてもよい。後者の場合、積層体の数は、3以上であってもよく、4以上であってもよい。また、積層体の数が複数である場合、図1に示すように、通常、隣り合う積層体は中間部材を共有する。
【0048】
2.その他の部材
本開示における電池は、図1に示すように、厚さ方向における少なくとも1端部に、厚さ方向に加わる衝撃および電極積層部の膨張を吸収するための緩衝部材30を備えていてもよい。また、本開示における電池は、図1に示すように、上述した部材を収容する外装体40を備えていてもよい。
【0049】
3.電池および電池の製造方法
本開示における電池は、例えば、リチウムイオン二次電池が挙げられる。また、電池は、電解質として固体電解質を含有する全固体電池であってもよく、電解質として液系電解質(電解液)を含有する液系電池であってもよい。また、電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0050】
また、本開示においては、上述した電池の製造方法を提供することもできる。具体的には、電池セルと、厚さ方向における上記電池セルの両面上にそれぞれ配置された中間部材と、を有する積層体を備える電池を製造する方法であって、上記電池セルを準備する、準備工程と、上記厚さ方向において上記電池セルの両面上にそれぞれ上記中間部材を配置して上記積層体を得る配置工程と、を有し、上記電池セルは、上記厚さ方向において複数の電極が積層された電極積層部と、上記電極積層部の外縁部に配置されたシール部と、を有し、上記中間部材は、上記中間部材は、集電板部および弾性体部を有し、上記積層体を上記厚さ方向から平面視した場合、上記集電板部の面積は、上記電池セルの面積よりも小さく、上記集電板部は、切り欠き部を有し、上記弾性体部は、上記切り欠き部に配置され、かつ、上記弾性体部は上記シール部と重複する、電池の製造方法、を提供できる。
【0051】
また、電池セルと、厚さ方向における上記電池セルの両面上にそれぞれ配置された中間部材と、を有する積層体を備える電池を製造する方法であって、上記電池セルを準備する、準備工程と、上記厚さ方向において上記電池セルの両面上にそれぞれ上記中間部材を配置して上記積層体を得る配置工程と、を有し、上記電池セルは、上記厚さ方向において複数の電極が積層された電極積層部と、上記電極積層部の外縁部に配置されたシール部と、を有し、上記中間部材は、上記中間部材は、集電板部および弾性体部を有し、上記積層体を上記厚さ方向から平面視した場合、上記集電板部の面積は、上記電池セルの面積よりも小さく、上記弾性体部は、上記集電板部の外縁の外側に配置されており、かつ、上記弾性体部は上記シール部と重複する、電池の製造方法を提供できる。
【0052】
ここで、上記配置工程において配置される中間部材では、弾性体部の厚さは、通常、集電板部の厚さよりも大きい。言い換えると、中間部材(集電板部および弾性体部)に荷重が加わっていない状態において、弾性体部の厚さ(自由長さ)は、通常、集電板部の厚さよりも大きい。弾性体部の厚さ(自由長さ)が集電板部の厚さよりも大きいことで、電極積層部とシール部とで厚さに差が生じた場合(電極積層部の厚さがシール部よりも厚くなった場合)でも、弾性体部がシール部と接することができ、上記隙間が生じることを抑制できる。
【0053】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0054】
1 …集電体
2 …正極活物質層
3 …負極活物質層
4 …セパレータ
5 …電極積層部
6 …シール部
10 …電池セル
20 …中間部材
21 …集電板部
22 …弾性体部
L …積層体
100 …電池
図1
図2
図3
図4
図5