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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】ノイズ除去フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20250701BHJP
   H03H 7/075 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H03H7/075 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023063062
(22)【出願日】2023-04-07
(65)【公開番号】P2024149281
(43)【公開日】2024-10-18
【審査請求日】2024-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】古川 達也
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-039050(JP,A)
【文献】特表2016-514387(JP,A)
【文献】特開2016-067126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42- 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力制御装置の出力が供給される複数のバスバーを伝播するノイズを除去するノイズ除去フィルタであって、
前記複数のバスバーを挿通させて取り付けられる環状のインダクタンスと、
一方の端子が前記複数のバスバーの表面にそれぞれ導通するとともに他方の端子が基準電位に導通するコンデンサを有する、コンデンサユニットと、を備え、
前記インダクタンスと前記コンデンサユニットとは、前記複数のバスバーに対する取付位置がそれぞれ可変である
ことを特徴とするノイズ除去フィルタ。
【請求項2】
前記複数のバスバーは、線状に延伸する延伸部を含む主部材と、前記延伸部の長手方向における一端部に連結される連結部材と、をそれぞれ有する
ことを特徴とする請求項1に記載のノイズ除去フィルタ。
【請求項3】
前記延伸部は、直線状に延伸している
ことを特徴とする請求項2に記載のノイズ除去フィルタ。
【請求項4】
前記複数のバスバーは、曲がり部をそれぞれ有し、
前記曲がり部は、前記延伸部の長手方向における前記一端部とは反対側の他端部から更に外方に延伸するとともに、前記延伸部の長手方向とは異なる方向に延びる部分を含む
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のノイズ除去フィルタ。
【請求項5】
前記複数のバスバーは、前記コンデンサユニットに設けられた導電性の板ばねにそれぞれ保持され、且つ、前記複数のバスバーの表面は、前記板ばねを介して前記コンデンサの前記一方の端子にそれぞれ導通している
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のノイズ除去フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電力制御装置から伝播するノイズを除去するノイズ除去フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
電力制御装置から伝播するノイズを除去するノイズ除去フィルタが知られている。例えば、特許文献1に記載のものがそれである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-126250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のノイズ除去フィルタでは、インダクタンス及びコンデンサの接続関係が予め定められたフィルタ構成となっている。すなわち、電力制御装置が発生するノイズ、所謂EMC(electromagnetic compatibility)ノイズに応じて異なるフィルタ構成に変更することが困難である。そのため、フィルタ構成が異なる毎に別々の構成部材を準備する必要がある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、異なるフィルタ構成であっても構成部材を共通化できるノイズ除去フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨とするところは、電力制御装置の出力が供給される複数のバスバーを伝播するノイズを除去するノイズ除去フィルタであって、前記複数のバスバーを挿通させて取り付けられる環状のインダクタンスと、一方の端子が前記複数のバスバーの表面にそれぞれ導通するとともに他方の端子が基準電位に導通するコンデンサを有する、コンデンサユニットと、を備え、前記インダクタンスと前記コンデンサユニットとは、前記複数のバスバーに対する取付位置がそれぞれ可変であることにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明のノイズ除去フィルタによれば、前記複数のバスバーを挿通させて取り付けられる環状のインダクタンスと、一方の端子が前記複数のバスバーの表面にそれぞれ導通するとともに他方の端子が基準電位に導通するコンデンサを有する、コンデンサユニットと、が備えられ、前記インダクタンスと前記コンデンサユニットとは、前記複数のバスバーに対する取付位置がそれぞれ可変である。このような構成では、環状のインダクタンスとコンデンサユニットとが複数のバスバーに対して取り付けられる取付位置を容易に変更することが可能である。環状のインダクタンス及びコンデンサユニットの取付位置の変更は、フィルタ構成の変更となる。このように、異なるフィルタ構成であっても構成部材を共通化できるノイズ除去フィルタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例に係るノイズ除去フィルタが搭載される車両における電力制御装置等の電気的構成の一例を説明する図である。
図2】バスバーの説明図であって、(a)は、バスバーの製造方法についての説明図であり、(b)は、車両への搭載状態における2本のバスバーの斜視図である。
図3】コンデンサユニットの構成を説明する斜視図である。
図4】2本のバスバーに取り付けられたノイズ除去フィルタの斜視図である。
図5図4に示すノイズ除去フィルタのフィルタ構成を説明する図である。
図6図4に示すノイズ除去フィルタのフィルタ構成の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例
【0010】
図1は、実施例に係るノイズ除去フィルタ30(以下、単に「フィルタ30」と記す。)が搭載される車両10における電力制御装置54等の電気的構成の一例を説明する図である。
【0011】
車両10は、動力源として機能する電動機MGを備える電気自動車である。電動機MGは、例えば電動機機能及び発電機機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。電動機MGは、例えば三相同期電動機である。電動機MGは、不図示の一対の駆動輪に動力伝達可能に連結されている。
【0012】
車両10は、高圧バッテリ46、補機バッテリ48、及び電力制御装置54を備える。
【0013】
高圧バッテリ46は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン電池などの充放電可能な二次電池である。高圧バッテリ46は、第1動力線PL1を介して電力制御装置54に接続されている。第1動力線PL1は、直流電流が流される動力線であるため2本である。高圧バッテリ46は、電動機MGの駆動用のバッテリである。高圧バッテリ46からは、例えば蓄電された電力が電力制御装置54を介して電動機MGへ供給される。電動機MGは、一対の駆動輪から入力される被駆動力により発電を行い、その発電電力が電力制御装置54を介して高圧バッテリ46に充電される。
【0014】
補機バッテリ48は、例えば鉛蓄電池などの充放電可能な二次電池である。補機バッテリ48は、高圧バッテリ46よりも低い充電電圧である。補機バッテリ48は、第2動力線PL2、後述のDCDCコンバータ56、及び第1動力線PL1を介して電力制御装置54に接続されている。第2動力線PL2は、直流電流が流される動力線であるため2本である。補機バッテリ48は、不図示のオルタネータでの発電電力により充電されたり、高圧バッテリ46から第1動力線PL1、DCDCコンバータ56、及び第2動力線PL2を経由して供給される電力により充電されたりする。
【0015】
電力制御装置54は、電動機MGを駆動制御する。電力制御装置54は、DCDCコンバータ56、昇圧コンバータ60、インバータ62、及び電動機制御装置58を備える。電力制御装置54は、高圧バッテリ46と電動機MGとの間で各々授受される電力、すなわち電動機MGが授受する電力を制御する電力制御装置である。
【0016】
DCDCコンバータ56は、第1動力線PL1と第2動力線PL2との間に設けられている。DCDCコンバータ56は、高圧バッテリ46の電圧を補機バッテリ48と同等の電圧に降圧して補機バッテリ48を充電する充電装置として機能する。補機バッテリ48は、車両10に備えられた補機を作動させるための電力を供給する。補機バッテリ48は、例えば補機や電動機制御装置58などを作動させるための電力を供給する。
【0017】
昇圧コンバータ60は、不図示のリアクトルやスイッチング素子などを備える。昇圧コンバータ60は、高圧バッテリ46の電圧を昇圧してインバータ62に供給する機能と、インバータ62により直流に変換された電圧を降圧して高圧バッテリ46に供給する機能と、を有する昇降圧回路である。
【0018】
インバータ62は、MGパワーモジュール64などを備える。MGパワーモジュール64は、不図示のスイッチング素子などを備える。MGパワーモジュール64は、第3動力線PL3を介して電動機MGに接続されている。第3動力線PL3は、例えばU相、V相、W相の三相交流電流が流される動力線であるため3本である。インバータ62は、昇圧コンバータ60から出力された直流電流を、電動機MGを駆動するための交流電流に変換する。インバータ62は、電動機MGで発電された交流電流を直流電流に変換する。
【0019】
電子制御装置50は、DCDCコンバータ56、及び電動機制御装置58との間で、例えば公知のCAN(Controller Area Network)通信線を介して互いに信号を送受信する。電子制御装置50は、例えば不図示のセンサなどからの信号に基づいて電動機MGを駆動制御することで車両10の走行状態を制御する。電子制御装置50は、例えばDCDCコンバータ56を制御することにより、高圧バッテリ46の電圧を補機バッテリ48と同等の電圧まで降圧させる。本実施例においては、電子制御装置50は、電力制御装置54特には電動機制御装置58とは別の制御装置である。
【0020】
電動機制御装置58は、電子制御装置50からの出力要求値に基づいて、電動機MGを制御する。例えば、電動機制御装置58は、昇圧コンバータ60及びインバータ62を制御し、電動機MGの出力を制御する。
【0021】
車体に取り付けられる非回転部材である回転不能のケース18は、例えばアルミ合金の鋳物製である。ケース18は、車両10における電力制御装置54等の電気的構成の基準電位とされる。「基準電位」とは、電子回路を含む回路の基準となる電位である。具体的には、電力制御装置54、高圧バッテリ46、補機バッテリ48、電動機MG、及び電子制御装置50等の電位の基準(0[V])である。ケース18は、例えば複数の部材がそれぞれボルト74,76,78等の締め具によって一体的に連結されたものである。ケース18は、その内部が隔壁18cにより上下方向の上下に分離されている。ケース18は、隔壁18cにより上下方向の上下に分離された上部空間U及び下部空間Lを有する。上部空間Uを区画するケース18の側壁が側壁18aであり、下部空間Lを区画するケース18の側壁が側壁18bである。隔壁18cは、上部空間Uを区画する下側及び下部空間Lを区画する上側に共通して設けられた隔壁である。このため、ケース18において上部空間Uと下部空間Lとが分離された場合、上部空間U及び下部空間Lの少なくとも一方は、必ず外部に露出した状態となる。「同一のケース」とは、このように上部空間Uと下部空間Lとが分離された場合、少なくとも一方が外部に露出してしまうケースを意味する。
【0022】
車両10における搭載状態において、電力制御装置54は上部空間Uに収容され、電動機MGを含むトランスアクスル72は下部空間Lに収容されている。このように、トランスアクスル72及び電力制御装置54は、同一のケース18内に収容されている。
【0023】
フィルタ30は、例えば第1動力線PL1の一部であるバスバー80に取り付けられている。バスバー80は、例えば第1動力線PL1においてケース18の内外(具体的には、上部空間Uの内外)を接続するための端子台に設けられている接続線である。
【0024】
電力制御装置54では、例えば昇圧コンバータ60やインバータ62が備えるスイッチング素子が高速にスイッチング制御された場合、高周波成分のノイズが発生する。このノイズは、コモンモードノイズとして例えば第1動力線PL1のバスバー80を介して高圧バッテリ46に伝播しようとする。
【0025】
図2は、バスバー80の説明図であって、(a)は、バスバー80の製造方法についての説明図であり、(b)は、車両10への搭載状態における2本のバスバー80の斜視図である。それぞれのバスバー80は、導電性を有し、例えば金属製である。なお、2本のバスバー80は、本発明における「複数のバスバー」に相当する。
【0026】
図2(a)を用いて、バスバー80の製造方法を説明する。まず、例えばプレス加工における打ち抜き加工や切削加工で形成された、図2(a)に示す板状体82x,88xをそれぞれ準備する。図2(a)は、板状体82x,88xのそれぞれを板厚方向に見た図である。次に、板状体82xを破線DL1が内側になるように90°の折り曲げ加工を行う。破線DL1は、後述の直線部84の長手方向と同じである。破線DL1に垂直な断面視において、板状体82xが折り曲げ加工された部分はL字型となっている。また、板状体88xを破線DL2が外側になるように90°の折り曲げ加工を行う。破線DL2は、後述の直線部84の長手方向と同じである。破線DL2に垂直な断面視において、板状体88xが折り曲げ加工された部分はL字型となっている。バスバー80は、このように折り曲げ加工された板状体82x,88xが組み合わされて構成されている。
【0027】
図2(b)に示すように、2本のバスバー80は、車両10への搭載状態において、例えば直線Cを中心にして互いに線対称な形状である。2本のバスバー80の間には空隙があり、2本のバスバー80は互いに絶縁されている。2本のバスバー80は、直線状に延伸する直線部84を含む主部材82と、直線部84の長手方向における一端部84t1に連結され且つ直線部84の長手方向とは異なる方向に延びる連結部材88と、をそれぞれ別部材として有する。
【0028】
直線部84の一端部84t1は、主部材82の長手方向における一端部82t1でもある。主部材82の長手方向における一端部82t1とは反対側の他端部82t2は、曲がり部86となっている。曲がり部86は、直線部84の長手方向における一端部84t1とは反対側の他端部84t2から更に外方に延伸した部分である。「外方」とは、直線部84の長手方向において、直線部84から離れる方向である。曲がり部86は、直線部84の長手方向とは異なる方向に延びる部分を含む。具体的には、曲がり部86は、直線部84の他端部84t2から外方に延伸し、板厚方向を変えずに直線部84の長手方向に対し90°曲がった後、板厚方向が90°変わって他方のバスバー80から離間するように曲がり、更にその先端部が板厚方向を変えずに直線部84の長手方向と同じ方向で外方に曲がっている。なお、直線部84は、本発明における「延伸部」に相当する。一端部84t1は、本発明における「一端部」に相当し、他端部84t2は、本発明における「他端部」に相当する。
【0029】
直線部84は、直線状に延伸する板状である。直線部84の一端部84t1には、孔82h1が設けられている。孔82h1は、不図示のボルトにより連結部材88と連結するための孔である。主部材82の他端部82t2には、孔82h2が設けられている。
【0030】
連結部材88は、板状体がその長手方向に対し90°曲げられた形状をしている。連結部材88の一端部88t1には孔88h1が設けられ、連結部材88の他端部88t2には孔88h2が設けられている。連結部材88の孔88h1は、不図示のボルトにより主部材82と連結するための孔である。主部材82の一端部82t1に設けられた孔82h1と、連結部材88の一端部88t1に設けられた孔88h1と、を挿通する不図示のボルトにより、主部材82と連結部材88とは連結される。主部材82の他端部82t2に設けられた孔82h2及び連結部材88の他端部88t2に設けられた孔88h2は、例えば端子台におけるケース18内の第1動力線PL1及びケース18外の第1動力線PL1のいずれか一方にバスバー80を不図示のボルトにより連結するための孔である。
【0031】
図3は、コンデンサユニット34の構成を説明する斜視図である。図3では、後述の第1コンデンサ90及び第2コンデンサ92は不図示とされている。
【0032】
コンデンサユニット34は、基板部36及び板ばね38を備える。
【0033】
基板部36の表面には、組となる第1導通部36aと第2導通部36bとが、2組設けられている。第1導通部36aには、スルーホール36h1がそれぞれ設けられ、第2導通部36bには、スルーホール36h2がそれぞれ設けられている。第1コンデンサ90(図4参照)は、2組の第1導通部36aと第2導通部36bとの間に、例えば半田付けでそれぞれ実装されている。第2コンデンサ92(図4参照)は、スルーホール36h1及びスルーホール36h2を介して、2組の第1導通部36aと第2導通部36bとの間に、例えば半田付けでそれぞれ実装されている。好適には、第1コンデンサ90及び第2コンデンサ92は、その電気的特性が異なるコンデンサである。例えば、第1コンデンサ90が第2コンデンサ92に比較して高周波ノイズを伝播しにくい周波数特性を有し、第2コンデンサ92が第1コンデンサ90に比較して静電容量が大きい。なお、第1コンデンサ90及び第2コンデンサ92は、本発明における「コンデンサ」にそれぞれ相当する。
【0034】
基板部36は、それぞれの第2導通部36bに導通する取付部36fを2個有する。それぞれの取付部36fには、締結孔が設けられている。基板部36は、取付部36fがボルト40(図4参照)によりケース18に締結されている。具体的には、コンデンサユニット34は、取付部36fに設けられた締結孔を挿通したボルト40によりケース18に締結されている。締結されたボルト40の一部は、第2導通部36bに電気的に接触している。すなわち、第2導通部36bは、ボルト40を介してケース18に電気的に接続されている。
【0035】
コンデンサユニット34は、板ばね38を2枚備える。板ばね38は、その一端部38t1が基板部36に取り付けられて第1導通部36aに導通しているとともに、その他端部38t2がバスバー80の直線部84の表面にそれぞれ接触可能な構造になっている。板ばね38は、それぞれ導電性を有し、例えば金属製である。板ばね38の他端部38t2は、付勢力によりバスバー80の直線部84の表面を押圧するばね構造となっている。フィルタ30が2本のバスバー80に取り付けられた場合、2枚の板ばね38は表面に導通するバスバー80をそれぞれ保持可能な構造となっている。
【0036】
図4は、2本のバスバー80に取り付けられたフィルタ30の斜視図である。フィルタ30は、バスバー80を伝播するノイズを除去するノイズ除去フィルタである。フィルタ30は、フェライトコア32a、フェライトコア32b、及びコンデンサユニット34を備える。
【0037】
フェライトコア32a,32bは、いずれも2本のバスバー80を挿通させて取り付けられる非分割型の環状のフェライトコアである。フェライトコア32a,32bは、いずれもその表面が絶縁材料で覆われている。フェライトコアにおいて、「分割型」とは、環状のフェライトコアをバスバーに着脱可能に分割したり合体させたりすることが可能な構造であることを意味し、「非分割型」とは、環状のフェライトコアが分割不能な一体的な構造であることを意味する。なお、フェライトコア32a,32bは、本発明における「インダクタンス」にそれぞれ相当する。
【0038】
2本のバスバー80へのフィルタ30の取り付けは、例えば以下の手順で行われる。まず、2本のバスバー80のうち一方は、その主部材82の一端部82t1がフェライトコア32a、フェライトコア32bの順に挿通された後に、主部材82の一端部82t1に連結部材88が連結される。2本のバスバー80のうち他方は、その主部材82の一端部82t1がフェライトコア32b、フェライトコア32aの順に挿通された後に、主部材82の一端部82t1に連結部材88が連結される。次に、2本のバスバー80における直線部84の長手方向において、フェライトコア32aとフェライトコア32bとの間のバスバー80にコンデンサユニット34が取り付けられる。コンデンサユニット34は、その2枚の板ばね38の他端部38t2が2本のバスバー80の表面にそれぞれ導通するように取り付けられる。次に、コンデンサユニット34の基板部36が、ボルト40によりケース18に締結される。
【0039】
好適には、直線部84の長手方向に垂直な断面において、2本のバスバー80全体の外縁部が形成する多角形は、フェライトコア32a,32bの内周に内接している。これにより、フェライトコア32a,32bと、2本のバスバー80と、の隙間量が抑制される。
【0040】
フェライトコア32a,32bとコンデンサユニット34とは、2本のバスバー80に対する取付位置がそれぞれ可変である。「取付位置が可変である」とは、フェライトコア32a、フェライトコア32b、及びコンデンサユニット34の接続関係を変更して2本のバスバー80に取り付けることが可能であるとの意味である。
【0041】
図5は、図4に示すフィルタ30のフィルタ構成を説明する図である。
【0042】
フェライトコア32a及びフェライトコア32bは、2本のバスバー80のそれぞれにコイルが挿入されたのと同様の働きすなわちインダクタンスとして機能する。2本のバスバー80と基準電位であるケース18との間には、コンデンサユニット34に実装された第1コンデンサ90及び第2コンデンサ92が並列に接続されている。第1コンデンサ90の静電容量C1[μF]と第2コンデンサ92の静電容量C2[μF]との合計を静電容量Ctotal[μF]とすると、フィルタ30は、図5に示すフィルタ構成となる。
【0043】
図6は、図4に示すフィルタ30のフィルタ構成の変形例である。
【0044】
(変形例1)フィルタ30のうち、フェライトコア32b以外をバスバー80に取り付けた場合には、図6(a)に示すフィルタ構成となる。
【0045】
(変形例2)フィルタ30のうち、フェライトコア32a以外をバスバー80に取り付けた場合には、図6(b)に示すフィルタ構成となる。
【0046】
(変形例3)バスバー80に2個のコンデンサユニット34が取り付けられ、2個のコンデンサユニット34の間における2本のバスバー80の直線部84を挿通させて1個のフェライトコア32aが取り付けられた場合には、図6(c)に示すフィルタ構成となる。
【0047】
本実施例によれば、2本のバスバー80を挿通させて取り付けられる環状のフェライトコア32a,32bと、一方の端子が2本のバスバー80の表面にそれぞれ導通するとともに他方の端子がケース18に導通する2個の第1コンデンサ90及び第2コンデンサ92を有する、コンデンサユニット34と、が備えられ、フェライトコア32a,32bとコンデンサユニット34とは、バスバー80に対する取付位置がそれぞれ可変である。このようなに、環状のフェライトコア32a,32bとコンデンサユニット34とが2本のバスバー80に対して取り付けられる取付位置を容易に変更することが可能である。環状のフェライトコア32a,32b及びコンデンサユニット34の取付位置の変更は、フィルタ構成の変更となる。このように、異なるフィルタ構成であっても構成部材(具体的には、環状のフェライトコア32a,32b及びコンデンサユニット34)を共通化できるフィルタ30を提供できる。
【0048】
本実施例によれば、2本のバスバー80は、直線状に延伸する直線部84を含む主部材82と、直線部84の一端部84t1に連結される連結部材88と、をそれぞれ有する。このような構造により、2本のバスバー80をその直線部84の一端部84t1側から非分割型の環状のフェライトコア32a,32bに挿通させることが可能となる。フェライトコア32a,32bが非分割型である場合には、分割型の場合に比較して、構造が簡単でコストが安くインピーダンス特性が安定したフィルタ構成とすることができる。
【0049】
本実施例によれば、(a)2本のバスバー80は、曲がり部86をそれぞれ有し、(b)曲がり部86は、直線部84の他端部84t2から更に外方に延伸するとともに、直線部84の長手方向とは異なる方向に延びる部分を含む。曲がり部86を有することで、曲がり部86を有さない場合に比較して、バスバー80における主部材82の他端部82t2における形状の設計自由度が向上させられる。これにより、2本のバスバー80をフェライトコア32a,32bに挿通可能としつつ、2本のバスバー80同士の絶縁距離を確保することが可能となる。
【0050】
本実施例によれば、2本のバスバー80は、コンデンサユニット34に設けられた導電性の2枚の板ばね38にそれぞれ保持され、且つ、2本のバスバー80の表面は、板ばね38を介して第1コンデンサ90及び第2コンデンサ92の両方の一方の端子にそれぞれ導通している。板ばね38がバスバー80を保持するため、板ばね38とバスバー80との相対移動が抑制される。これにより、板ばね38とバスバー80との間の導電性が安定させられて、フィルタ30のノイズ除去特性が安定する。
【0051】
本実施例によれば、(a)コンデンサユニット34は、2本のバスバー80にそれぞれ導通する第1導通部36a及びケース18に導通する第2導通部36bを有し、(b)第1コンデンサ90及び第2コンデンサ92は、いずれも第1導通部36aと第2導通部36bとの間にそれぞれ実装されている。コンデンサユニット34に実装するコンデンサの電気的特性(具体的には、静電容量や周波数特性)を変更することで、フィルタ30の特性を種々変更することが可能となる。
【0052】
本実施例によれば、(a)コンデンサユニット34は、第2導通部36bに導通する取付部36fを有し、(b)取付部36fは、基準電位であるとともに電力制御装置54を収容するケース18に、ボルト40により取り付けられている。このように、ボルト40は、コンデンサユニット34をケース18に物理的に固定する機能と、第2導通部36bをケース18に電気的に導通させる機能と、の両方の機能を有する。これにより、コンデンサユニット34の体格が大きくなることが抑制される。
【0053】
なお、上述したのは本発明の実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【0054】
前述の実施例では、環状のフェライトコア32a,32bは非分割型であったが、これに限らず分割型であっても良い。環状のフェライトコア32a,32bが分割型である場合には、2本のバスバー80がそれぞれ直線状を含む線状でなくとも2本のバスバー80を容易に挿通させることができる。
【0055】
前述の実施例では、環状のフェライトコア32a,32bが本発明における「インダクタンス」に相当したが、例えば「インダクタンス」はフェライトコアに限らず例えば空心コイルのようなコイルであっても良い。
【0056】
前述の実施例では、フィルタ30は、2個の環状のフェライトコア32a,32bと、1個のコンデンサユニット34と、を備える態様であったが、本発明はこれに限らない。例えば、変形例1又は変形例2のように、1個の環状のフェライトコアと、1個のコンデンサユニット34と、を備える態様であっても良い。例えば、変形例3のように、2個のコンデンサユニット34と、1個の環状のフェライトコアと、を備える態様であっても良い。本発明における「ノイズ除去フィルタ」は、個数にかかわらず、環状のフェライトコア32a,32bとコンデンサユニット34とが組み合わされる態様であれば良い。
【0057】
前述の実施例では、2本のバスバー80は、主部材82と主部材82の一端部82t1に連結される連結部材88との二部材でそれぞれ構成されていたが、本発明はこれに限らない。例えば、2本のバスバー80は、直線部84のみを有する主部材と、主部材の長手方向における一端部及び他端部のそれぞれに連結される2個の連結部材と、の三部材でそれぞれ構成される態様でも良い。このような態様の場合、主部材の長手方向における他端部に連結される連結部材は、主部材に連結された場合に例えば前述の実施例における曲がり部86と同様の形状を有する。
【0058】
前述の実施例では、2本のバスバー80はそれぞれ直線状に延伸する直線部84を含む態様であったが、本発明はこれに限らない。例えば、本発明における「延伸部」は直線状に延伸せず、弧状に曲がったり急角度に折れ曲がったりする形状すなわち線状に延伸する形状であっても良い。このような形状であっても、2本のバスバー80をその「延伸部」の長手方向における一端部側から非分割型の環状のフェライトコア32a,32bに挿通させることが可能である。
【0059】
前述の実施例では、2本のバスバー80は、直線Cを中心にして互いに線対称な形状であったが、本発明はこれに限らない。
【0060】
前述の実施例では、板ばね38の他端部38t2は、付勢力によりバスバー80の直線部84の表面を押圧するばね構造となっていたが、本発明はこれに限らない。例えば、コンデンサユニット34には板ばね38の替わりにばね構造を有しない金属製の板状体が設けられ、その板状体がバスバー80の直線部84の表面に溶接される態様であっても良い。
【0061】
前述の実施例では、コンデンサユニット34には、第1コンデンサ90及び第2コンデンサ92の2個が実装されていたが、本発明はこれに限らない。例えば、コンデンサユニット34に実装されるのは、第1コンデンサ90及び第2コンデンサ92のいずれか一方のみであっても良い。例えば、コンデンサユニット34に実装されるのは、3個以上のコンデンサであっても良い。なお、実装されるコンデンサの個数に応じて、コンデンサユニット34の第1導通部36a及び第2導通部36bの形状は適宜変更される。
【0062】
前述の実施例では、フィルタ30は、電力制御装置54と高圧バッテリ46との間の第1動力線PL1に取り付けられる態様であったが、本発明はこれに限らない。例えば、フィルタ30は、電力制御装置54と補機バッテリ48との間の第2動力線PL2に取り付けられる態様であっても良い。例えば、フィルタ30は、電力制御装置54と電動機MGとの間の第3動力線PL3に取り付けられる態様であっても良い。この態様の場合、第3動力線PL3が3本であることに対応して、バスバーは3本となる。
【0063】
前述の実施例では、駆動ユニット70は、トランスアクスル72と電力制御装置54とが同一のケース18内に収容されている態様であったが、本発明はこれに限らない。例えば、トランスアクスル72と電力制御装置54とがそれぞれ別体のケースに収容された態様にも本発明は適用可能である。この態様の場合、電力制御装置54を収容する空間を区画する部材が「ケース」に相当する。
【0064】
前述の実施例では、電動機MGは所謂モータジェネレータであったが、例えば電動機MGは、電動機機能及び発電機機能の一方のみを有する回転電気機械であっても良い。また、電動機MGの相数は三相に限らない。
【0065】
前述の実施例では、トランスアクスル72は、電動機MGを1つの電動機として含む態様であったが、本発明はこれに限らない。トランスアクスル72が含む電動機は2つ以上であっても良い。また、前述の実施例では、車両10は、動力源として電動機MGを備える電気自動車であったが、本発明はこれに限らない。例えば、動力源としてエンジン及び電動機MGを有する車両すなわちハイブリッド車両にも、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
30:ノイズ除去フィルタ、32a,32b:フェライトコア(インダクタンス)、34:コンデンサユニット、38:板ばね、54:電力制御装置、80:バスバー、82:主部材、84:直線部(延伸部)、84t1:一端部(一端部)、84t2:他端部(他端部)、86:曲がり部、88:連結部材、90:第1コンデンサ(コンデンサ)、92:第2コンデンサ(コンデンサ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6