(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】電力変換器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20250701BHJP
【FI】
H02M3/155 H
(21)【出願番号】P 2023222229
(22)【出願日】2023-12-28
【審査請求日】2024-12-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勇
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-502365(JP,A)
【文献】特開2021-013265(JP,A)
【文献】特開2002-171759(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113809915(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109698612(CN,A)
【文献】特開2002-199737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から負荷に対して電力を供給し、前記負荷の電力を前記直流電源に戻すことが可能な電力変換器であって、
前記直流電源と前記負荷との間に接続された第1スイッチング素子と、
前記負荷に対して並列接続された第2スイッチング素子と、
前記第1、第2スイッチング素子の接続点に一端が接続されたインダクタと、
前記インダクタの他端側の電圧が前記直流電源の電圧の中間となるように接続されたコンデンサおよび第3、第4スイッチング素子と、
を備え、
前記第1、第2スイッチング素子の導通前から前記インダクタに予備的に電流を通流させ、
前記インダクタは、インダクタンスが以下の(9)式の条件を満たすことを特徴とする電力変換器。
【数9】
L:インダクタのインダクタンス値
t
c+
:負荷電圧の立上時間、立下時間として設定する時間の目標最大値
C
min
:負荷の静電容量の最小値
【請求項2】
直流電源から負荷に対して電力を供給し、前記負荷の電力を前記直流電源に戻すことが可能な電力変換器であって、
前記直流電源と前記負荷との間に接続された第1スイッチング素子と、
前記負荷に対して並列接続された第2スイッチング素子と、
前記第1、第2スイッチング素子の接続点に一端が接続されたインダクタと、
前記インダクタの他端側の電圧が前記直流電源の電圧の中間となるように接続されたコンデンサおよび第3、第4スイッチング素子と、
を備え、
前記第1、第2スイッチング素子の導通前から前記インダクタに予備的に電流を通流させ、
前記第1、第2スイッチング素子の導通前から前記インダクタに予備的に電流を通流させる予備通流期間は、以下の(5)式の条件を満たすことを特徴とする電力変換器。
【数5】
T
SU
:第1、第2スイッチング素子の導通前からインダクタに予備的に電流を通流させる予備通流期間
L:インダクタのインダクタンス値
C:負荷の静電容量
R
L
:インダクタの等価的な直列抵抗成分
【請求項3】
直流電源から負荷に対して電力を供給し、前記負荷の電力を前記直流電源に戻すことが可能な電力変換器であって、
前記直流電源と前記負荷との間に接続された第1スイッチング素子と、
前記負荷に対して並列接続された第2スイッチング素子と、
前記第1、第2スイッチング素子の接続点に一端が接続されたインダクタと、
前記インダクタの他端側の電圧が前記直流電源の電圧の中間となるように接続されたコンデンサおよび第3、第4スイッチング素子と、
を備え、
前記第1、第2スイッチング素子の導通前から前記インダクタに予備的に電流を通流させ、
前記第1、第2スイッチング素子の導通前から前記インダクタに予備的に電流を通流させる予備通流期間、および、負荷電圧の立上時間、立下時間として設定する時間は、以下の(7)式の条件を満たすことを特徴とする電力変換器。
【数7】
T
SU
:第1、第2スイッチング素子の導通前からインダクタに予備的に電流を通流させる予備通流期間
t
c
:負荷電圧の立上時間、立下時間として設定する時間
【請求項4】
前記コンデンサは、前記直流電源の正極と負極との間に直列接続された第1、第2コンデンサであり、
前記第1、第2コンデンサの接続点にアノードが接続された第2ダイオードと、
前記第2ダイオードのカソードと前記インダクタの他端との間に接続された前記第3スイッチング素子と、
前記第1、第2コンデンサの接続点にカソードが接続された第3ダイオードと、
前記第3ダイオードのアノードと前記インダクタの他端との間に接続された前記第4スイッチング素子と、
前記第2ダイオードと前記第3スイッチング素子の接続点にアノードが接続され、カソードが前記直流電源の正極に接続された第1ダイオードと、
前記第3ダイオードと前記第4スイッチング素子の接続点にカソードが接続され、アノードが前記直流電源の負極に接続された第4ダイオードと、
を備えたことを特徴とする
請求項1~3のうち何れかに記載の電力変換器。
【請求項5】
前記コンデンサは、前記直流電源の正極と負極との間に直列接続された第1、第2コンデンサであり、
前記第1、第2コンデンサの接続点に一端が接続された前記第3スイッチング素子と、
前記第3スイッチング素子の他端にアノードが接続され、カソードが前記インダクタの他端に接続された第2ダイオードと、
前記第1、第2コンデンサの接続点に一端が接続された前記第4スイッチング素子と、
前記第4スイッチング素子の他端にカソードが接続され、アノードが前記インダクタの他端に接続された第3ダイオードと、
前記第2ダイオードと前記第3スイッチング素子の接続点にアノードが接続され、カソードが前記直流電源の正極に接続された第1ダイオードと、
前記第3ダイオードと前記第4スイッチング素子の接続点にカソードが接続され、アノードが前記直流電源の負極に接続された第4ダイオードと、
を備えたことを特徴とする
請求項1~3のうち何れかに記載の電力変換器。
【請求項6】
前記コンデンサは、前記直流電源の正極と負極との間に直列接続された第1、第2コンデンサであり、
前記第1、第2コンデンサの接続点と前記インダクタの他端との間に接続された第6スイッチング素子および前記第3スイッチング素子と、
前記第1、第2コンデンサの接続点と前記インダクタの他端との間に接続された第7スイッチング素子および前記第4スイッチング素子と、
前記第6スイッチング素子と前記第3スイッチング素子の接続点と前記直流電源の正極との間に接続された第5スイッチング素子と、
前記第7スイッチング素子と前記第4スイッチング素子の接続点と前記直流電源の負極との間に接続された第8スイッチング素子と、
を備えたことを特徴とする
請求項1~3のうち何れかに記載の電力変換器。
【請求項7】
前記コンデンサは、前記直流電源の正極と負極との間に直列接続された第1、第2コンデンサであり、
前記第1、第2コンデンサの接続点と前記インダクタの他端との間に逆直列接続された前記第3、第4スイッチング素子と、
前記インダクタの他端にアノードが接続され、カソードが前記直流電源の正極に接続された第1ダイオードと、
前記インダクタの他端にカソードが接続され、アノードが前記直流電源の負極に接続された第2ダイオードと、
を備えたことを特徴とする
請求項1~3のうち何れかに記載の電力変換器。
【請求項8】
前記コンデンサは、前記直流電源の正極と負極との間に直列接続された第1、第2コンデンサであり、
前記第1、第2コンデンサの接続点と前記インダクタの他端との間に逆直列接続された前記第3、第4スイッチング素子と、
前記インダクタの他端と前記直流電源の正極との間に接続された第5スイッチング素子と、
前記インダクタの他端と前記直流電源の負極との間に接続された第6スイッチング素子と、
を備えたことを特徴とする
請求項1~3のうち何れかに記載の電力変換器。
【請求項9】
負荷電圧の立上時間、立下時間として設定する時間は、以下の(6)式を満たすことを特徴とする
請求項1~3のうち何れかに記載の電力変換器。
【数6】
t
c:負荷電圧の立上時間、立下時間として設定する時間
L:インダクタのインダクタンス値
C:負荷の静電容量
T
SU:第1、第2スイッチング素子の導通前からインダクタに予備的に電流を通流させる予備通流期間
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧かつ高周波数でパルス電圧を供給できる低損失かつ低ノイズの電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
図1及び
図2に特許文献1における回路構成と動作例を示す。特許文献1ではインダクタ1を介して負荷2にエネルギーを供給することで、矩形波状のパルス電圧を負荷2に供給することができる。この時、スイッチング素子のターンオン時にソフトスイッチング動作をすることでスイッチング損失を低減し、スイッチング素子のストレスを緩和している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1及び
図2の回路は、スイッチング素子3、4のターンオフ時にハードスイッチングとなるためサージ電圧などによるノイズが増加してしまう。さらに、高周波数で負荷2にパルス電圧を供給する場合にはスイッチング損失が増大してしまうという問題が生じる。
【0005】
また、負荷2の電圧の立ち上がり速度、立ち下がり速度が負荷定数やインダクタ1のインダクタ定数に依存して決定されるため、定数のばらつきにより立ち上がり速度、立ち下がり速度が変化してしまうという問題が生じる。
【0006】
以上示したようなことから、ソフトスイッチングを行うことにより高効率かつ低ノイズ化が容易な電力変換器を提供し、かつ、負荷や部品のばらつきの影響を受けずに一定の立ち上がり速度、立ち下がり速度で出力パルス電圧の生成を実現することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、直流電源から負荷に対して電力を供給し、前記負荷の電力を前記直流電源に戻すことが可能な電力変換器であって、前記直流電源と前記負荷との間に接続された第1スイッチング素子と、前記負荷に対して並列接続された第2スイッチング素子と、前記第1、第2スイッチング素子の接続点に一端が接続されたインダクタと、前記インダクタの他端側の電圧が前記直流電源の電圧の中間となるように接続されたコンデンサおよび第3、第4スイッチング素子と、を備え、前記第1、第2スイッチング素子の導通前から前記インダクタに予備的に電流を通流させることを特徴とする。
【0008】
また、その一態様として、前記コンデンサは、前記直流電源の正極と負極との間に直列接続された第1、第2コンデンサであり、前記第1、第2コンデンサの接続点にアノードが接続された第2ダイオードと、前記第2ダイオードのカソードと前記インダクタの他端との間に接続された前記第3スイッチング素子と、前記第1、第2コンデンサの接続点にカソードが接続された第3ダイオードと、前記第3ダイオードのアノードと前記インダクタの他端との間に接続された前記第4スイッチング素子と、前記第2ダイオードと前記第3スイッチング素子の接続点にアノードが接続され、カソードが前記直流電源の正極に接続された第1ダイオードと、前記第3ダイオードと前記第4スイッチング素子の接続点にカソードが接続され、アノードが前記直流電源の負極に接続された第4ダイオードと、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、一態様として、前記コンデンサは、前記直流電源の正極と負極との間に直列接続された第1、第2コンデンサであり、前記第1、第2コンデンサの接続点に一端が接続された前記第3スイッチング素子と、前記第3スイッチング素子の他端にアノードが接続され、カソードが前記インダクタの他端に接続された第2ダイオードと、前記第1、第2コンデンサの接続点に一端が接続された前記第4スイッチング素子と、前記第4スイッチング素子の他端にカソードが接続され、アノードが前記インダクタの他端に接続された第3ダイオードと、前記第2ダイオードと前記第3スイッチング素子の接続点にアノードが接続され、カソードが前記直流電源の正極に接続された第1ダイオードと、前記第3ダイオードと前記第4スイッチング素子の接続点にカソードが接続され、アノードが前記直流電源の負極に接続された第4ダイオードと、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、一態様として、前記コンデンサは、前記直流電源の正極と負極との間に直列接続された第1、第2コンデンサであり、前記第1、第2コンデンサの接続点と前記インダクタの他端との間に接続された第6スイッチング素子および前記第3スイッチング素子と、前記第1、第2コンデンサの接続点と前記インダクタの他端との間に接続された第7スイッチング素子および前記第4スイッチング素子と、前記第6スイッチング素子と前記第3スイッチング素子の接続点と前記直流電源の正極との間に接続された第5スイッチング素子と、前記第7スイッチング素子と前記第4スイッチング素子の接続点と前記直流電源の負極との間に接続された第8スイッチング素子と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、一態様として、前記コンデンサは、前記直流電源の正極と負極との間に直列接続された第1、第2コンデンサであり、前記第1、第2コンデンサの接続点と前記インダクタの他端との間に逆直列接続された前記第3、第4スイッチング素子と、前記インダクタの他端にアノードが接続され、カソードが前記直流電源の正極に接続された第1ダイオードと、前記インダクタの他端にカソードが接続され、アノードが前記直流電源の負極に接続された第2ダイオードと、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、一態様として、前記コンデンサは、前記直流電源の正極と負極との間に直列接続された第1、第2コンデンサであり、前記第1、第2コンデンサの接続点と前記インダクタの他端との間に逆直列接続された前記第3、第4スイッチング素子と、前記インダクタの他端と前記直流電源の正極との間に接続された第5スイッチング素子と、前記インダクタの他端と前記直流電源の負極との間に接続された第6スイッチング素子と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、一態様として、前記インダクタの他端に一端が接続された前記第3スイッチング素子と、前記第3スイッチング素子の他端にアノードが接続され、カソードが前記直流電源の正極に接続された第1ダイオードと、前記インダクタの他端にカソードが接続された第2ダイオードと、前記第2ダイオードのアノードに一端が接続され、他端が前記直流電源の負極に接続された前記第4スイッチング素子と、前記第1ダイオードと前記第3スイッチング素子の接続点と前記第2ダイオードと前記第4スイッチング素子の接続点との間に接続された第2コンデンサと、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、一態様として、前記インダクタの他端にアノードが接続された第1ダイオードと、前記第1ダイオードのカソードに一端が接続され、他端が前記直流電源の正極に接続された前記第3スイッチング素子と、前記インダクタの他端に一端が接続された前記第4スイッチング素子と、前記第4スイッチング素子の他端にカソードが接続され、アノードが前記直流電源の負極に接続された第2ダイオードと、前記第1ダイオードと前記第3スイッチング素子の接続点と前記第2ダイオードと前記第4スイッチング素子の接続点との間に接続された第2コンデンサと、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、一態様として、前記インダクタの他端に一端が接続された前記第3スイッチング素子と、前記第3スイッチング素子の他端に一端が接続され、他端が前記直流電源の正極に接続された第5スイッチング素子と、前記インダクタの他端に一端が接続された第6スイッチング素子と、前記第6スイッチング素子の他端に一端が接続され、他端が前記直流電源の負極に接続された前記第4スイッチング素子と、前記第5スイッチング素子と前記第3スイッチング素子の接続点と前記第6スイッチング素子と前記第4スイッチング素子の接続点との間に接続された第2コンデンサと、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、一態様として、前記インダクタは、インダクタンスが以下の(9)式の条件を満たすことを特徴とする。
【0017】
【0018】
L:インダクタのインダクタンス値
tc+:負荷電圧の立上時間、立下時間として設定する時間の目標最大値
Cmin:負荷の静電容量の最小値。
【0019】
また、一態様として、前記第1、第2スイッチング素子の導通前から前記インダクタに予備的に電流を通流させる予備通流期間は、以下の(5)式の条件を満たすことを特徴とする。
【0020】
【0021】
TSU:第1、第2スイッチング素子の導通前からインダクタに予備的に電流を通流させる予備通流期間
L:インダクタのインダクタンス値
C:負荷の静電容量
RL:インダクタの等価的な直列抵抗成分。
【0022】
また、一態様として、負荷電圧の立上時間、立下時間として設定する時間は、以下の(6)式を満たすことを特徴とする。
【0023】
【0024】
tc:負荷電圧の立上時間、立下時間として設定する時間
L:インダクタのインダクタンス値
C:負荷の静電容量
TSU:第1、第2スイッチング素子の導通前からインダクタに予備的に電流を通流させる予備通流期間。
【0025】
また、一態様として、前記第1、第2スイッチング素子の導通前から前記インダクタに予備的に電流を通流させる予備通流期間、および、負荷電圧の立上時間、立下時間として設定する時間は、以下の(7)式の条件を満たすことを特徴とする。
【0026】
【0027】
TSU:第1、第2スイッチング素子の導通前からインダクタに予備的に電流を通流させる予備通流期間
tc:負荷電圧の立上時間、立下時間として設定する時間。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ソフトスイッチングを行うことにより高効率かつ低ノイズ化が容易な電力変換器を提供し、かつ、負荷や部品のばらつきの影響を受けずに一定の立ち上がり速度、立ち下がり速度で出力パルス電圧の生成を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】特許文献1(実施例2)の回路構成および動作例を示す図。
【
図2】特許文献1(実施例1)の回路構成および動作例を示す図。
【
図3】実施形態1の出力パルス生成回路(電力変換器)の基本構成図。
【
図4】実施形態1の出力パルス生成回路(電力変換器)の基本動作図。
【
図6】実施形態2の出力パルス生成回路(電力変換器)の基本構成図。
【
図7】実施形態2の出力パルス生成回路(電力変換器)の基本動作図。
【
図8】実施形態3の出力パルス生成回路(電力変換器)の基本構成図。
【
図9】実施形態3の出力パルス生成回路(電力変換器)の基本動作図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本願発明における電力変換器の実施形態1~3を
図3~
図9に基づいて詳述する。
【0031】
[実施形態1]
図3に本実施形態1における電力変換器(出力パルス生成回路)の基本回路を示し、
図4に電力変換器(出力パルス生成回路)の基本動作波形を示す。ここで負荷2は容量性であるものとする。
図3では負荷2を模式的に示しているが、例えば抵抗性成分、容量性成分を含むCR直列回路、CR並列回路である。
図3の回路は直流電源DCから負荷2に電力を供給し、負荷2の電力を直流電源DCに戻す。
【0032】
図3に示すように、直流電源DCの正極と負極との間には第1コンデンサC1と第2コンデンサC2が直列接続される。また、直流電源DCの正極と負極との間には第1スイッチング素子S1と第2スイッチング素子S2が直列接続される。第1、第2スイッチング素子S1、S2の接続点と直流電源DCの負極との間には負荷2が接続される。すなわち、第1スイッチング素子S1は直流電源DCと負荷2との間に接続され、第2スイッチング素子S2は負荷2に対して並列に接続される。
【0033】
第1、第2スイッチング素子S1、S2の接続点にはインダクタL1の一端が接続される。第1、第2コンデンサC1、C2の接続点には第2ダイオードD2のアノードが接続される。第2ダイオードD2のカソードとインダクタL1の他端との間には第3スイッチング素子が接続される。
【0034】
また、第1、第2コンデンサC1、C2の接続点には第3ダイオードD3のカソードが接続される。第3ダイオードD3のアノードとインダクタL1の他端との間には第4スイッチング素子S4が接続される。
【0035】
第2ダイオードD2と第3スイッチング素子S3の接続点には第1ダイオードD1のアノードが接続される。第1ダイオードD1のカソードは直流電源DCの正極に接続される。第3ダイオードD3と第4スイッチング素子S4の接続点には第4ダイオードD4のカソードが接続される。第4ダイオードD4のアノードは直流電源DCの負極に接続される。このように、インダクタL1の他端側の電圧が直流電源DCの電圧Vinの中間Vin/2となるように第1、第2コンデンサC1、C2および第3、第4スイッチング素子S3、S4が接続される。
【0036】
直流電源DCの電圧はVin、第1、第2コンデンサC1、C2の電圧はVin/2、インダクタL1に流れる電流をIL1とする。
【0037】
図3の回路はインダクタL1に蓄えたエネルギーにより負荷2の電圧を充放電させ、第1、第2スイッチング素子S1、S2により電圧を保持することで矩形波状の出力電圧を実現する。
【0038】
インダクタL1に蓄えるエネルギーの大きさ(電流ピーク値)は第3、第4スイッチング素子S3、S4のON時間によりコントロールすることができ、このエネルギーの大きさにより出力パルス電圧のdv/dtを制御する。第3、第4スイッチング素子S3、S4のON時間を負荷2やインダクタンスのばらつきに応じて調整しエネルギーの大きさ(電流ピーク値)に制御することで出力パルス電圧のdv/dtのばらつきをコントロールできる。
【0039】
次に、ソフトスイッチングが成り立つ条件に付いて述べる。
図3の回路は下記条件が成り立つときソフトスイッチングが実現可能である。負荷2を静電容量Cの純粋なキャパシタと仮定すると負荷のエネルギー1/2Cv
o
2とインダクタンス値LのインダクタL1の持つエネルギー1/2Li
pk
2の関係式より導出できる。(1)式よりインダクタL1に流れる電流をi
pk以上とすることでソフトスイッチングを実現することができる。
【0040】
【0041】
なお、回路上のインダクタL1における等価直列抵抗成分、負荷2の抵抗成分におけるエネルギー消費も考慮すれば、(1)式における不等号は、等号の範囲より大きく差異がある方が好適である。
【0042】
ここで、負荷2への充電時間が十分短い場合、負荷電圧立ち上がり時の電流がピーク電流値となり、概ね(2)式、(3)式の関係がある。
【0043】
【0044】
【0045】
tSU:インダクタ予備通流期間として、第3、第4スイッチング素子S3、S4を第1、第2スイッチング素子S1、S2より前に駆動する期間
RL:インダクタL1の等価的な直列抵抗成分。
【0046】
従って、負荷2の電流値を想定しながら、さらに、負荷2の立ち上がり/立ち下がりに求める時間tCとの間で、概ね(4)式の関係もある。なお、(4)式はインダクタンス値Lが十分大きいことを前提とし、定電流源的であると仮定している。
【0047】
【0048】
よって、本実施形態1に記載の発明を、より好適に実施するに際して、求められる関係式は(5)式~(7)式のようになる。すなわち、第1スイッチング素子S1または第2スイッチング素子S2のONの前に、立上時間/立下時間として設定する時間tcの2倍以上の長さにおいて、第3スイッチング素子S3または第4スイッチング素子S4をONにしておく必要がある。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
また、インダクタL1のインダクタンス値Lは、上記関係式より特許文献1の場合、想定される静電容量Cに対して、時間tCの目標値から定める。但し、時間tCを調整することはできず、静電容量Cが想定より増減していた場合、それに引きずられる。
【0053】
他方、本実施形態1に記載の発明は、想定される静電容量Cの最小値Cmin、時間tCの目標最大値tC+からインダクタンス値Lの下限が定まり、設定するインダクタンス予備通流期間tSUの最小値tSU-、静電容量Cの最大値Cmaxからインダクタンス値Lの上限が定まる。すなわち、(8)式のようになる。
【0054】
【0055】
ここで、インダクタンス予備通流期間tSUの最小値tSU-は、2√(Cmax/Cmin)tc+よりも大きいことが必要であり、この場合は√(Cmax/Cmin)>1であるためtSU>2tC+>2tCも成立し、(7)式に沿う。そして、静電容量Cの変動があったとしても、時間tCはインダクタンス予備通流期間tSUによって調整できる。
【0056】
なお、(8)式ではインダクタL1のインダクタンス値Lの上限、下限を示しているが、インダクタンス値Lの下限のみを示した(9)式の条件を満たすインダクタL1を選定してもよい。
【0057】
【0058】
動作シーケンスは
図4に示すように下記の(1)~(8)の8ステップに分けることができる。
【0059】
(1)負荷電圧の立上準備期間:第2スイッチング素子S2をオン状態のまま第3スイッチング素子S3をONさせ、インダクタL1にエネルギーを蓄積する。この時、iL>0である。
【0060】
(2)負荷電圧の立上期間:第3スイッチング素子S3をON状態のまま第2スイッチング素子S2をOFFし、インダクタL1のエネルギーにより第3スイッチング素子S3を通して電流を流し負荷電圧を立ち上げる。第2スイッチング素子S2をOFFにする時、負荷電圧はゼロのため第2スイッチング素子S2はゼロ電圧スイッチングとなる。
【0061】
(3)電圧保持期間:第3スイッチング素子S3をON状態のまま第1スイッチング素子S1をONする。インダクタL1の第1、第2スイッチング素子S1、S2の接続点側は電圧Vinとなり、インダクタL1の第3、第4スイッチング素子S3、S4の接続点側は電圧Vin/2となるため、インダクタL1にはVin/2が印加され電流が低下する。
【0062】
(4)電圧保持期間:第1スイッチング素子S1をON状態のまま第3スイッチング素子S3をOFFする。この時インダクタL1の電流は0であるため第3スイッチング素子S3はゼロ電流スイッチングする。
【0063】
(5)負荷電圧の立下準備期間:第1スイッチング素子S1をON状態のまま第4スイッチング素子S4をONさせ、インダクタL1に逆向きのエネルギーを蓄積する。この時、iL<0である。
【0064】
(6)負荷電圧の立下期間:第4スイッチング素子S4をON状態のまま第1スイッチング素子S1をOFFし、インダクタL1のエネルギーにより第4スイッチング素子S4を通して電流を流し負荷電圧を立ち下げる。
【0065】
(7)電圧保持期間:第4スイッチング素子S4をON状態のまま第2スイッチング素子S2をONする。インダクタL1の第1、第2スイッチング素子S1、S2の接続点側は電圧0となり、インダクタL1の第3、第4スイッチング素子S3、S4の接続点は電圧Vin/2となるため、インダクタL1にはVin/2が印加され電流が低下する。
【0066】
(8)電圧保持期間:第2スイッチング素子S2をON状態のまま第4スイッチング素子S4をOFFする。この時、インダクタL1の電流は0であるため第4スイッチング素子S4はゼロ電流スイッチングする。
【0067】
なお、
図4では、iL1が最大となる点、最小となる点で傾きが不連続に変わっている(最大点、最小点が角になっている)が、負荷2の容量性を考慮した場合は傾きが連続的に変わる(最大点、最小点が丸くなる)。また、第3、第4スイッチング素子S3、S4がONとなっているとき、かつ、第1、第2スイッチング素子S1、S2の電位差が0のときに、第1、第2スイッチング素子S1、S2がスイッチングする。そのため、インダクタL1の電位差は第1、第2コンデンサC1、C2の存在などにより急変しない。従って、IL1の傾きに関しても境界部で不連続とならない。
【0068】
負荷電圧Voutの立ち上がり波形・立ち下がり波形については、
図4のように直線状というよりは、厳密にはS字型の波形になるが、ipkが十分大きくなるよう設定されていれば、ほぼ直線となる。
【0069】
負荷電圧Voutの立ち下がりの(6)の期間は、基本的に負荷2の容量性成分における充電エネルギーを放電する形になるのでロスによってエネルギーが減少する場合は早くなり、ロスがなければそのままとなる。そのため、負荷2の抵抗性成分よらず
図4に示すように負荷電圧Voutの(2)の期間と(6)の期間は概ね等しくなる。
【0070】
次に、ソフトスイッチングの動作例を
図5に示す。
図5では第1~第4スイッチング素子S1~S4の電圧Vds_s1~Vds_s4を実線、電流ids_s1~ids_s4を破線にて示している。Voutは負荷電圧である。
【0071】
第1スイッチング素子S1の動作例を
図5(a)に示す。第1スイッチング素子S1は負荷2と直列に接続されているため印加される電圧は直流電源DCの電圧Vinから負荷電圧Voutを差し引いた電圧が印加される。第1スイッチング素子S1がオンするタイミングは上記ステップの(2)と(3)が入れ替わる瞬間であり、負荷電圧VoutはVinまで上昇している。したがって、第1スイッチング素子S1がオンするタイミングでは第1スイッチング素子S1の印加電圧は0であり、負荷2の電圧変化速度はスイッチング素子の電流遮断速度よりも遅いためゼロ電圧スイッチングとなる。
【0072】
一方で第1スイッチング素子S1がオフするタイミングは上記ステップの(5)と(6)が入れ替わる瞬間であり、負荷電圧VoutはVinである。したがって、第1スイッチング素子S1がオフするタイミングでは第1スイッチング素子S1の印加電圧は0であり、負荷2の電圧変化速度はスイッチング素子の電流遮断速度よりも遅いためゼロ電圧スイッチングとなる。
【0073】
第2スイッチング素子S2の動作例を
図5(b)に示す。第2スイッチング素子S2は負荷2と並列に接続されているため印加される電圧は負荷電圧Voutと同じ値が印加される。第2スイッチング素子S2がオフするタイミングは上記ステップの(1)と(2)が入れ替わる瞬間であり、負荷電圧は0である。したがって、第2スイッチング素子S2がオフするタイミングでは第2スイッチング素子S2の印加電圧は0であり、ゼロ電圧スイッチングとなる。
【0074】
一方で、第2スイッチング素子S2がオンするタイミングは上記ステップの(6)と(7)が入れ替わる瞬間であり負荷電圧Voutは0である。したがって、第2スイッチング素子S2がオンするタイミングでは第2スイッチング素子S2の印加電圧は0であり、ゼロ電圧スイッチングとなる。
【0075】
第3スイッチング素子S3の動作例を
図5(c)に示す。第3スイッチング素子S3は中性点(直流電源DCの中間電位)に接続される素子であるためVin/2が印加され、インダクタL1を通過する電流IL1の一部の電流(IL1>0)が流れる。第3スイッチング素子S3がオンするタイミングは上記ステップの(8)と(1)が入れ替わる瞬間であり、インダクタL1を通過する電流IL1は0である。したがって、第3スイッチング素子S3がオンするタイミングでの電流は0であり、インダクタL1の電圧変化速度はスイッチング素子の電圧変化速度よりも遅いためゼロ電流スイッチングとなる。
【0076】
第3スイッチング素子S3がオフするタイミングは上記ステップの(3)と(4)が入れ替わる瞬間であり、インダクタL1を通過する電流IL1は0である。したがって、第3スイッチング素子S3がオフするタイミングでの電流は0であり、インダクタL1の電圧変化速度はスイッチング素子の電圧変化速度よりも遅いためゼロ電流スイッチングとなる。
【0077】
第4スイッチング素子S4の動作例を
図5(d)に示す。第4スイッチング素子S4は中性点(直流電源DCの中間電位)に接続される素子であるためVin/2が印加され、インダクタL1を通過する電流IL1の一部の電流(IL1<0)が流れる。第4スイッチング素子S4がオンするタイミングは上記ステップの(4)と(5)が入れ替わる瞬間であり、インダクタL1を通過する電流IL1は0である。したがって、第4スイッチング素子S4がオンするタイミングでの電流は0であり、インダクタL1の電圧変化速度はスイッチング素子の電圧変化速度よりも遅いためゼロ電流スイッチングとなる。
【0078】
第4スイッチング素子S4がオフするタイミングは上記ステップの(7)と(8)が入れ替わる瞬間であり、インダクタL1を通過する電流IL1は0である。したがって、第4スイッチング素子S4がオフするタイミングでの電流は0であり、インダクタL1の電圧変化速度はスイッチング素子の電圧変化速度よりも遅いためゼロ電流スイッチングとなる。
【0079】
第1コンデンサC1および第2コンデンサC2の電圧は第1コンデンサC1,第2コンデンサC2の接続点(中性点)に流出入する電流の平均値により制御することができる。ソフトスイッチングが成り立つ条件においては中性点に流れる電流はすべてインダクタL1を流れるためインダクタL1の電流平均値を制御することで中性点電圧も制御可能となる。インダクタL1の電流平均値は(1)の期間と(5)の期間の割合を変更することで制御可能である。理論的には平均値を0に制御することで中性点電位の変動を0にすることができる。
【0080】
iLが正負対称であれば中性点電位は変動しないが、負荷2が抵抗性成分を含む場合、充電する電流と放電する電流が必ずしも正負対称とならない。その場合、IL1を調整しなければならない。IL1が正の場合は中性点電位が下がり、IL1が負の場合は中性点電位が上がる。これにより、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2の電圧、すなわち、中性点電位を調整する。
【0081】
なお、第1スイッチング素子S1がON時の電流平均値は、負荷2へ供給される分、正の値を取る。さらに、中性点電位を上昇させる分、正の方向にシフトする。第2スイッチング素子S2がON時の電流平均値は、負荷2への供給がされないため、中性点電位を減少させる分として正の方向にシフトする分を除き0となる。
【0082】
以上のように動作させることで第1~第4スイッチング素子S1~S4をソフトスイッチング動作しながら部品や負荷のばらつきの影響を受けずに一定のdv/dtで出力パルス電圧を出力することが可能になる。
【0083】
なお、本実施形態1における詳細説明は割愛するが、下記構成でも
図3と同様の動作を実現可能である。なお、スイッチング素子、ダイオードの向きは
図3と同様とする。
・第3、第4スイッチング素子S3、S4を第2、第3ダイオードD2、D3に置き換え、第2、第3ダイオードD2、D3を第3、第4スイッチング素子S3、S4に置き換えた構成。
・第1~第4ダイオードD1~D4を第5~第8スイッチング素子に置き換えた構成。
【0084】
以上示したように、本実施形態1によれば、ハードスイッチングを行わない。さらに各スイッチング素子のオンオフ期間の調整によって、負荷電圧の立ち上がり速度、立ち下がり速度の制御が可能である。よって、高効率かつ低ノイズで、負荷や部品のばらつきの影響を受けずに一定の立ち上がり速度、立ち下がり速度で出力パルスを生成できる。立ち上がり速度、立ち下がり速度を一定にすることは、電力変換器の出力電圧精度の向上につながる。
【0085】
[実施形態2]
図6に本実施形態2における電力変換器(出力パルス生成回路)の基本回路を示し、
図7に電力変換器(出力パルス生成回路)の基本動作波形を示す。ここで負荷2は容量性であるものとする。
図6では負荷2を模式的に示しているが、例えば抵抗性成分、容量性成分を含むCR直列回路、CR並列回路である。
図6の回路は直流電源DCから負荷2に電力を供給し、負荷2の電力を直流電源DCに戻す。
【0086】
図6に示すように、直流電源DCの正極と負極との間には第1コンデンサC1と第2コンデンサC2が直列接続される。また、直流電源DCの正極と負極との間には第1スイッチング素子S1と第2スイッチング素子S2が直列接続される。第1、第2スイッチング素子S1、S2の接続点と直流電源DCの負極との間には負荷2が接続される。すなわち、第1スイッチング素子S1は直流電源DCと負荷2との間に接続され、第2スイッチング素子S2は負荷2に対して並列に接続される。
【0087】
第1、第2スイッチング素子の接続点にはインダクタL1の一端が接続される。第1、第2コンデンサC1、C2の接続点とインダクタL1の他端との間には第3、第4スイッチング素子S3、S4が逆直列接続される。インダクタL1の他端には第1ダイオードD1のアノードが接続される。第1ダイオードD1のカソードは直流電源DCの正極に接続される。インダクタL1の他端には第2ダイオードD2のカソードが接続される。第2ダイオードD2のアノードは直流電源DCの負極に接続される。このように、インダクタL1の他端側の電圧が直流電源DCの電圧Vinの中間Vin/2になるように、第1、第2コンデンサC1、C2および第3、第4スイッチング素子S3、S4が接続される。
【0088】
直流電源DCの電圧はVin、第1、第2コンデンサC1、C2の電圧はVin/2、インダクタL1に流れる電流はIL1とする。
【0089】
図6の回路はインダクタL1に蓄えたエネルギーにより負荷2の電圧を充放電させ、第1、第2スイッチング素子S1、S2により電圧を保持することで矩形波上の出力電圧を実現する。
【0090】
インダクタL1に蓄えるエネルギーの大きさは第3、第4スイッチング素子S3、S4のON時間によりコントロールすることができ、このエネルギーの大きさにより出力パルス電圧のdv/dtを制御する。
【0091】
第3、第4スイッチング素子S3,S4のON時間を負荷やインダクタンスのばらつきに応じて調整することでdv/dtのばらつきをコントロールできる。加えて、ターンオフ時においてもすべてのスイッチング素子がソフトスイッチングするため特許文献1よりも低損失且つ低ノイズ化を実現することができる。
【0092】
動作シーケンスは
図7に示すように下記(1)~(8)の8ステップに分けることができる。
【0093】
(1)負荷電圧の立上準備期間:第2スイッチング素子S2をオン状態のまま、第3スイッチング素子S3をONさせ、インダクタL1にエネルギーを蓄積する。この時、iL>0である。
【0094】
(2)負荷電圧の立上期間:第3スイッチング素子S3はON状態のまま第2スイッチング素子S2をOFFし、インダクタL1のエネルギーにより第3スイッチング素子S3を通して電流を流し負荷電圧Voutを立ち上げる。第2スイッチング素子S2をOFFにするとき、負荷電圧Voutはゼロのためゼロ電圧スイッチングとなる。
【0095】
(3)電圧保持期間:第3スイッチング素子S3をON状態のまま第1スイッチング素子S1をONする。インダクタL1の第1、第2スイッチング素子S1、S2の接続点は電圧Vinとなり、インダクタL1の第4スイッチング素子S4側は電圧Vin/2となるため、インダクタL1にはVin/2が印加され電流が低下する。
【0096】
(4)電圧保持期間:第1スイッチング素子S1をON状態のまま第3スイッチング素子S3をOFFする。インダクタL1の電流は0となるため第3スイッチング素子S3はゼロ電流スイッチングする。
【0097】
(5)負荷電圧の立下準備期間:第1スイッチング素子S1をON状態のまま第4スイッチング素子S4をONし、インダクタL1に逆向きのエネルギーを蓄積する。この時、iL<0である。
【0098】
(6)負荷電圧の立下期間:第4スイッチング素子S4をON状態のまま第1スイッチング素子S1をOFFし、インダクタL1のエネルギーにより負荷電圧Voutを立ち下げる。
【0099】
(7)電圧保持期間:第4スイッチング素子S4をON状態のまま第2スイッチング素子S2をONする。インダクタL1の第1、第2スイッチング素子S1、S2の接続点側は電圧0となり、インダクタL1の第4スイッチング素子S4側は電圧Vin/2となるため、インダクタL1にはVin/2が印加され電流が低下する。
【0100】
(8)電圧保持期間:第2スイッチング素子S2をON状態のまま第4スイッチング素子S4をOFFする。インダクタL1の電流は0となるため第4スイッチング素子S4はゼロ電流スイッチングする。
【0101】
ソフトスイッチング時の動作は
図5と同一であるため説明は割愛する。第1コンデンサC1および第2コンデンサC2の電圧についても実施形態1と同様である。
【0102】
以上のように動作させることで各スイッチング素子をソフトスイッチング動作させながら部品や負荷のばらつきの影響を受けずに一定のdv/dtで出力パルス電圧を出力することが可能になる。すなわち、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0103】
なお、本実施形態2における詳細説明は割愛するが、下記構成でも
図6と同様の動作を実現可能である。スイッチング素子の向きは
図6と同様である。
・第1、第2ダイオードD1、D2を第5、第6スイッチング素子に置き換えた構成。
【0104】
[実施形態3]
図8に本実施形態3における電力変換器(出力パルス生成回路)の基本回路を示し、
図9に電力変換器(出力パルス生成回路)の基本動作波形を示す。ここで負荷2は容量性であるものとする。
図8では負荷2を模式的に示しているが、例えば抵抗性成分、容量性成分を含むCR直列回路、CR並列回路である。
図8の回路は直流電源DCから負荷2に電力を供給し、負荷2の電力を直流電源DCに戻す。
【0105】
図8に示すように、直流電源DCの正極と負極との間には第1コンデンサC1が接続される。また、直流電源DCの正極と負極との間には第1スイッチング素子S1と第2スイッチング素子S2が直列接続される。第1、第2スイッチング素子S1、S2の接続点と直流電源DCの負極との間には負荷2が接続される。すなわち、第1スイッチング素子S1は直流電源DCと負荷2との間に接続され、第2スイッチング素子S2は負荷2に対して並列に接続される。
【0106】
第1、第2スイッチング素子の接続点にはインダクタL1の一端が接続される。インダクタL1の他端には第3スイッチング素子S3の一端が接続される。第3スイッチング素子S3の他端には第1ダイオードD1のアノードが接続される。第1ダイオードD1のカソードは直流電源DCの正極に接続される。
【0107】
インダクタL1の他端には第2ダイオードD2のカソードが接続される。第2ダイオードD2のアノードには第4スイッチング素子S4の一端が接続される。第4スイッチング素子S4の他端は直流電源DCの負極に接続される。
【0108】
第1ダイオードD1と第3スイッチング素子S3の接続点と第2ダイオードD2と第4スイッチング素子S4の接続点との間には第2コンデンサ(フライングキャパシタ)C2が接続される。このように、インダクタL1の他端側の電圧が直流電源DCの電圧Vinの中間Vin/2となるように第1、第2コンデンサC1、C2および第3、第4スイッチング素子S3、S4が接続される。
【0109】
直流電源DCの電圧はVin、第1コンデンサC1の電圧はVin、第2コンデンサ(フライングキャパシタ)C2の電圧はVin/2、インダクタL1に流れる電流はIL1とする。
【0110】
図8の回路はインダクタL1に蓄えたエネルギーにより負荷2の電圧を充放電させ、第1、第2スイッチング素子S1、S2により電圧を保持することで矩形波上の出力電圧を実現する。
【0111】
インダクタL1に蓄えるエネルギーの大きさは第3、第4スイッチング素子S3、S4のON時間によりコントロールすることができ、このエネルギーの大きさにより出力パルス電圧のdv/dtを制御する。第3、第4スイッチング素子S3,S4のON時間を負荷2やインダクタンスのばらつきに応じて調整することでdv/dtのばらつきをコントロールできる。
【0112】
加えて、ターンオフ時においてもすべてのスイッチング素子がソフトスイッチングするため特許文献1よりも低損失且つ低ノイズ化を実現することができる。
【0113】
動作シーケンスは
図9に示すように下記(1)~(8)の8ステップに分けることができる。
【0114】
(1)負荷電圧の立上準備期間:第2スイッチング素子S2をオン状態のまま第3スイッチング素子S3をONさせ、インダクタL1にエネルギーを蓄積する。この時、iL>0である。
【0115】
(2)負荷電圧の立上期間:第3スイッチング素子S3をON状態のまま第2スイッチング素子S2をOFFし、インダクタL1のエネルギーにより第3スイッチング素子S3を通して電流を流し負荷電圧Voutを立ち上げる。第2スイッチング素子S2をOFFにするとき、負荷電圧Voutはゼロのためゼロ電圧スイッチングとなる。
【0116】
(3)電圧保持期間:第3スイッチング素子S3はON状態のまま第1スイッチング素子S1をONする。インダクタL1の第1、第2スイッチング素子S1、S2の接続点側は電圧Vinとなり、インダクタL1の第3スイッチング素子S3側はVin/2となるため、インダクタL1にはVin/2が印加され電流が低下する。
【0117】
(4)電圧保持期間:第1スイッチング素子S1をON状態のまま第3スイッチング素子S3をOFFする。インダクタL1の電流は0となるため第3スイッチング素子S3はゼロ電流スイッチングする。
【0118】
(5)負荷電圧の立下準備期間:第1スイッチング素子S1をON状態のまま第4スイッチング素子S4をONし、インダクタL1に逆向きのエネルギーを蓄積する。この時、iL<0である。
【0119】
(6)負荷電圧の立下期間:第4スイッチング素子S4はON状態のまま第1スイッチング素子S1をOFFし、インダクタL1のエネルギーにより負荷電圧Voutを立ち下げる。
【0120】
(7)電圧保持期間:第4スイッチング素子S4をON状態のまま第2スイッチング素子S2をONする。インダクタL1の第1、第2スイッチング素子S1、S2の接続点側は電圧0となり、インダクタL1の第3スイッチング素子S3側は電圧Vin/2となるため、インダクタL1にはVin/2が印加され電流が低下する。
【0121】
(8)電圧保持期間:第2スイッチング素子S2はON状態のまま第4スイッチング素子S4をOFFする。第4スイッチング素子S4をOFFにするとき、インダクタL1の電流は0となるため第4スイッチング素子S4はゼロ電流スイッチングする。
【0122】
ソフトスイッチング時の動作は
図5と同一であるため割愛する。
【0123】
第2コンデンサ(フライングキャパシタ)C2の電圧はインダクタL1の電流平均値により制御することができる。インダクタL1の電流平均値については実施形態1、2と同様である。
【0124】
以上のように動作させることで各スイッチング素子をソフトスイッチング動作させながら部品や負荷のばらつきの影響を受けずに一定のdv/dtで出力パルス電圧を出力することが可能になる。すなわち、実施形態1、2と同様の作用効果を奏する。
【0125】
なお、本実施形態3における詳細説明は割愛するが、下記構成でも
図8と同様の動作を実現可能である。ダイオード、スイッチング素子の向きは
図8と同様とする。
・第3、第4スイッチング素子S3、S4を第1、第2ダイオードD1、D2に置き換え、第1、第2ダイオードD1、D2を第3、第4スイッチング素子S3、S4に置き換えた構成。
・第1、第2ダイオードD1、D2を第5、第6スイッチング素子に置き換えた構成。
【0126】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0127】
DC…直流電源
C1、C2…第1、第2コンデンサ
S1~S4…第1~第4スイッチング素子
D1~D4…第1~第4ダイオード
L1…インダクタ
2…負荷
【要約】
【課題】ソフトスイッチングを行うことにより高効率かつ低ノイズ化が容易な電力変換器を提供し、かつ、負荷や部品のばらつきの影響を受けずに一定の立ち上がり速度、立ち下がり速度で出力パルス電圧の生成を実現する
【解決手段】直流電源DCと負荷2との間に第1スイッチング素子S1が接続される。第2スイッチング素子S2は負荷2に対して並列接続される。第1、第2スイッチング素子S1、S2の接続点にインダクタL1の一端が接続される。コンデンサおよび第3、第4スイッチング素子S3、S4は、インダクタL1の他端側の電圧が直流電源DCの電圧Vinの中間Vin/2となるように接続される。そして、第1、第2スイッチング素子S1、S2の導通前からインダクタL1に予備的に電流を通流させる。
【選択図】
図3