(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20250701BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 513
H01G4/30 201C
H01G4/30 201M
(21)【出願番号】P 2023551423
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2022035445
(87)【国際公開番号】W WO2023054186
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2021157773
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】上野 健之
(72)【発明者】
【氏名】磯田 信弥
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 優汰
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-113575(JP,A)
【文献】特開2017-212366(JP,A)
【文献】特開2020-167198(JP,A)
【文献】特開2013-102123(JP,A)
【文献】特開2006-351639(JP,A)
【文献】特開2000-331867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極層及び内部誘電体層が交互に複数層積層された内層部、並びに、前記内層部の積層方向の両側の面にそれぞれ配置された2つの外層部を備える積層体と、
前記積層体における、前記積層方向と交差する長さ方向の両側の面である端面にそれぞれ配置された2つの外部電極と、を備え、
前記内部電極層は、前記外層部のそれぞれに最も近い最外内部電極層と、前記最外内部電極層以外の内側内部電極層を有し、
前記外層部の少なくとも一方は、該外層部に最も近い前記最外内部電極層から0.9μm以内のNi非含有領域と、前記最外内部電極層から0.9μmより離れたNi含有領域とを含み、
前記最外内部電極層の少なくとも一方は、前記内側内部電極層より厚く、且つ、厚さのばらつきが小さい、
積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記外層部はTi及びNiを含み、NiのTiに対するモル比は、0.4mol%以上5.0mol%以下である、
請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記外層部は複数のグレインを含み、それぞれの前記グレインは、
該グレインの外側から10nm以内の外側領域における前記NiのTiに対するモル比に対する、前記グレインにおける前記外側領域以外の中央領域における前記NiのTiに対するモル比の差が±20%以下であ
る
請求項
2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記最外内部電極層の厚さの標準偏差/平均値は0.09以上0.17以下である、
請求項
1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記外層部はTi及びMgを含み、MgのTiに対するモル比は、0.001モル以上0.01モル以下である、
請求項
3に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記外層部はTi及びMnを含み、MnのTiに対するモル比は、0.05mol%以上0.8
0mol%
以下である、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記内部誘電体層
の厚さは、0.4μm以上0.5μm以下である、
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
前記内部誘電体層
の厚さは、0.4μm以上0.45μm以下である、
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項9】
前記内側内部電極層の厚さは、0.3μm以上0.4μm以下である、
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項10】
前記内側内部電極層の厚さは、0.3μm以上0.35μm以下である、
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の誘電体層と複数の内部電極層とを交互に積み重ねた後、積層方向の両側に外層部を配置し、さらに焼成して作製された積層セラミックコンデンサが知られている。このような積層セラミックコンデンサは、近年、小型大容量化が求められている。そして、小型大容量化を達成するために、内部電極層及び内部誘電体層が薄層化され、且つ積層枚数が増加され、さらに内部電極層で挟まれた有効領域以外の外層部等の領域が極小化されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、有効領域以外の領域が極小化されると、積層セラミックコンデンサの耐環境性が低下し、また、焼成の際に最も外側に配置される内部電極が劣化しやすくなる。これにより、積層セラミックコンデンサの平均稼働時間が短くなる。
【0005】
本発明は、平均稼働時間の長さが向上された積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、内部電極層及び内部誘電体層が交互に複数層積層された内層部、並びに、前記内層部の積層方向の両側の面にそれぞれ配置された2つの外層部を備える積層体と、前記積層体における、前記積層方向と交差する長さ方向の両側の面である端面にそれぞれ配置された2つの外部電極と、を備え、前記内部電極層は、前記外層部のそれぞれに最も近い最外内部電極層と、前記最外内部電極層以外の内側内部電極層を有し、前記外層部の少なくとも一方は、該外層部に最も近い前記最外内部電極層から0.9μm以内のNi非含有領域と、前記最外内部電極層から0.9μmより離れたNi含有領域を含み、前記最外内部電極層の少なくとも一方は、前記内側内部電極層より厚く、且つ、厚さのばらつきが小さい、積層セラミックコンデンサを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、平均稼働時間の長さが向上された積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の積層セラミックコンデンサ1の概略斜視図である。
【
図2】
図1の積層セラミックコンデンサ1のII-II線に沿った断面図である。
【
図3】
図1の積層セラミックコンデンサ1のIII-III線に沿った断面図である。
【
図6】外層部22のNi含有領域22Bに含まれる1つのグレイン中におけるNiのばらつき状態を示す図である。
【
図7】積層セラミックコンデンサ1の製造方法を説明するフローチャートである。
【
図8】積層セラミックコンデンサ1の製造方法を説明する図である。
【
図9】実施例と比較形態の積層セラミックコンデンサの平均稼働時間を測定した結果を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(積層セラミックコンデンサ1)
以下、本発明の実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ1について説明する。
図1は、実施形態の積層セラミックコンデンサ1の概略斜視図である。
図2は、
図1の積層セラミックコンデンサ1のII-II線に沿った断面図である。
図3は、
図1の積層セラミックコンデンサ1のIII-III線に沿った断面図である。
【0010】
積層セラミックコンデンサ1は、略直方体形状で、積層体2と、積層体2の両端に設けられた一対の外部電極3とを備える。積層体2は、内部誘電体層14と内部電極層15とが積層された内層部11を含む。
【0011】
(積層セラミックコンデンサ1の寸法)
積層セラミックコンデンサ1の寸法は、例えば、幅方向Wは0.1mm以上0.5mm以下、厚さ方向は0.1mm以上0.5mm以下、長さ方向Lは0.05mm以上1.0mm以下である。
【0012】
以下の説明において、積層セラミックコンデンサ1の向きを表わす用語として、積層セラミックコンデンサ1において、一対の外部電極3が設けられている方向を長さ方向Lとする。内部誘電体層14と内部電極層15とが積層されている方向を積層方向Tとする。長さ方向L及び積層方向Tのいずれにも交差する方向を幅方向Wとする。なお、実施形態においては、幅方向Wは長さ方向L及び積層方向Tのいずれにも直交している。実施形態の積層セラミックコンデンサ1は長さ方向Lが幅方向W及び積層方向Tよりも長いがこれに限定されず、長さ方向L寸法は、幅方向W及び積層方向Tよりも長くなくてもよい。
【0013】
また、以下の説明において、積層体2の6つの外表面のうち、積層方向Tに相対する一対の外表面を第1主面A1と第2主面A2とし、幅方向Wに相対する一対の外表面を第1側面B1と第2側面B2とし、長さ方向Lに相対する一対の外表面を第1端面C1と第2端面C2とする。なお、第1主面A1と第2主面A2とを特に区別して説明する必要のない場合、まとめて主面Aとし、第1側面B1と第2側面B2とを特に区別して説明する必要のない場合、まとめて側面Bとし、第1端面C1と第2端面C2とを特に区別して説明する必要のない場合、まとめて端面Cとして説明する。
【0014】
(積層体2)
積層体2は、積層体チップ10と、積層体チップ10の幅方向Wの両側に配置されたサイドマージン部21とを備える。積層体チップ10は、内部誘電体層14と内部電極層15とが積層された内層部11と、内層部11の積層方向Tの第1主面A1側に配置される第1外層部221と、第2主面A2側に配置される第2外層部222とを備える。第1外層部221と第2外層部222とを区別して説明する必要のない場合、まとめて外層部22として説明する。
【0015】
積層体2は、略直方体形状であるが、角部R1及び稜線部R2に丸みがつけられていることが好ましい。角部R1は、主面Aと、側面Bと、端面Cとが交わる部分である。稜線部R2は、積層体2の2面、すなわち主面Aと側面B、主面Aと端面C、又は、側面Bと端面Cが交わる部分である。
【0016】
(内層部11)
内層部11は、積層方向Tに沿って交互に内部誘電体層14と内部電極層15とが積層された部分で、実施形態において、内層部11の積層方向Tの両端は、内部電極層15である。
【0017】
(内部電極層15)
内部電極層15は、例えば、Niを主成分として含有し、さらに内部誘電体層14に含まれるセラミックスと同一組成系の誘電体粒子を含んでいてもよい。また、内部電極層15と内部誘電体層14の界面にSnが配置されていてもよい。この場合、Snは層状であってもよく、点在していてもよい。また、Snは、内部電極層15側に固溶していてもよいし、誘電体層側の誘電体の粒子に固溶していてもよい。
【0018】
内部電極層15は、複数の第1内部電極層15Aと、複数の第2内部電極層15Bとを備える。第1内部電極層15Aと第2内部電極層15Bとは交互に配置されている。
【0019】
第1内部電極層15Aは、第2内部電極層15Bと対向する第1対向部15Aaと、第1対向部15Aaから第1端面C1側に引き出された第1引出部15Abとを備える。第1引出部15Abの端部は、第1端面C1に露出し、後述の第1外部電極3Aに電気的に接続されている。第2内部電極層15Bは、第1内部電極層15Aと対向する第2対向部15Baと、第2対向部15Baから第2端面C2に引き出された第2引出部15Bbとを備える。第2引出部15Bbの端部は、後述の第2外部電極3Bに電気的に接続されている。内部電極層15は、内部誘電体層14を挟んで、第1内部電極層15Aの第1対向部15Aaと、第2内部電極層15Bの第2対向部15Baとの間に電荷が蓄積され、コンデンサとして機能する。
【0020】
図3に示すように、積層体2の中心を通る幅方向W及び積層方向Tの断面であるWT断面において、積層方向Tの上下に隣り合う2つの第1内部電極層15Aと第2内部電極層15Bとの幅方向Wの端部の積層方向Tにおける位置のずれdは5μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。すなわち、積層方向Tにおいて上下に隣り合う第1内部電極層15Aと第2内部電極層15Bとの幅方向Wの端部は、幅方向W上において略同位置にあり、端部の位置が積層方向Tで揃っている。
【0021】
内部電極層15の枚数は、10枚以上1000枚以下であることが好ましい。
【0022】
また、内部電極層15は、第1外層部221に最も近い第1最外内部電極層151と、第2外層部222に最も近い第2最外内部電極層152と、第1最外内部電極層151及び第2最外内部電極層152以外の内側内部電極層153とを有する。なお、第1最外内部電極層151と第2最外内部電極層152とを特に区別して説明する必要のない場合、まとめて最外内部電極層150として説明する。
【0023】
(内側内部電極層153)
内側内部電極層153の厚さは0.3μm以上0.4μm以下が好ましく、0.3μm以上0.35μm以下がより好ましい。また、内側内部電極層153の厚さのばらつきを示す標準偏差/平均値は、0.22以上0.27以下である。
【0024】
なお、厚さのばらつきを示す標準偏差/平均値は、以下の式で求める。
CV値=σ/Ave
Ave:厚さの平均
σ:厚さの標準偏差
以下、標準偏差/平均値をCV値として示す。
【0025】
(最外内部電極層150)
第1最外内部電極層151及び第2最外内部電極層152の少なくとも一方は、内側内部電極層153より厚い。実施形態においては第1最外内部電極層151及び第2最外内部電極層152の両方が内側内部電極層153より厚い。最外内部電極層150の厚さは0.4μm以上0.5μm以下が好ましく、0.4μm以上0.45μm以下がより好ましい。また、最外内部電極層150の厚さのばらつきを示すCV値は内側内部電極層153より小さい0.09以上0.17以下である。
【0026】
(厚さの測定方法)
内部電極層15、すなわち最外内部電極層150及び内側内部電極層153の厚さの測定方法は、例えば以下のように行う。まず、積層セラミックコンデンサ1の中心を通るLT断面を研磨して内層部11を露出させる。必要に応じて、観察位置は露出させた断面をエッチング処理し、研磨で引き伸ばされた導電体層を除去する。
【0027】
図4は、露出された内層部11の断面の拡大像の例である。図示する拡大像において、例えば、積層方向Tに延びる複数の直線La,Lb,Lc,Ld,LeをピッチSで等間隔に引く。ピッチSは、測定しようとする内部電極層15(最外内部電極層150又は内側内部電極層153)の厚さの5倍以上10倍以下程度が好ましく、例えば、厚さが約1μm程度の内部電極層15を測定する場合には、ピッチSを5μmとする。
【0028】
次に、5本の直線La,Lb,Lc,Ld,Leの各直線上において、それぞれの内部電極層15の厚さda,db,dc,dd,deを測定する。ただし、直線La,Lb,Lc,Ld,Le上において、内部電極層15が欠損して、この内部電極層15を挟む内部誘電体層14同士が繋がっている場合、又は、測定位置の拡大図が不明瞭である場合は、新たな直線を引き、内部電極層15の厚さを測定する。
【0029】
なお、内側内部電極層153の場合、積層数が5層未満である場合には、全ての内側内部電極層153について上記の方法により厚さを測定し、その平均値を複数の内側内部電極層153の平均厚さとする。内部誘電体層14の厚さも、内側内部電極層153と同様に測定可能である。
【0030】
最外内部電極層150の場合、第1最外内部電極層151と第2最外内部電極層152との厚さを別々に測定する。すなわち、第1最外内部電極層151の5本の直線La,Lb,Lc,Ld,Leの各直線上の厚さda,db,dc,dd,deをそれぞれ測定して、この平均を第1最外内部電極層151の厚さとする。第2最外内部電極層152との5本の直線La,Lb,Lc,Ld,Leの各直線上の厚さda,db,dc,dd,deをそれぞれ測定して、この平均を第2最外内部電極層152の厚さとする。
【0031】
(内部誘電体層14)
内部誘電体層14は、例えば、Ba、Ti成分を含む誘電体セラミックであり、Siを含む。また、これらの成分にMn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、Ni化合物等の主成分よりも含有量の少ない成分を添加したものを用いてもよい。
【0032】
内部誘電体層14と、外層部22とを合わせた枚数は、100枚以上2000枚以下であることが好ましい。
【0033】
(内部誘電体層14の厚さ)
内部誘電体層14は、0.4μm以上0.5μm以下が好ましく、0.4μm以上0.45μm以下がより好ましい。なお、上述したように内部誘電体層14の厚さも内部電極層15と同様に5本の直線La,Lb,Lc,Ld,Leの各直線上において、それぞれの内部誘電体層14の厚さDa,Db,Dc,Dd,Deを測定して平均をとることで求めることができる。
【0034】
(外層部22)
外層部22は、積層体2の両主面A側に位置し、主面Aと、最も主面Aに近い内部電極層15との間に位置する誘電体層である。上述のように、外層部22は、内層部11の積層方向Tの第1主面A1側に配置される第1外層部221と、第2主面A2側に配置される第2外層部222とを備える。
【0035】
外層部22は、Ba,Ti,Niを含む。外層部22の、NiのTiに対するmol%は、0.4mol%以上5.0mol%以下が好ましい。ただし、第1外層部221及び第2外層部222の少なくとも一方、実施形態では両方の外層部22は、それぞれが隣接する最外内部電極層150から0.9μm以内にNiをほとんど含まないNi非含有領域22Aを含む。最外内部電極層150から0.9μmより離れた領域はNiを含むNi含有領域22Bである。なお、実施形態においてNi非含有領域22Aは、Niを全く含まなくてもよく、また、Ni含有領域22Bに比べて微量(0.2mol%以下)のNiを含んでいてもよい。
【0036】
さらに、外層部22はMg及びMnを含む。ただしMgの量は微量で、MgのTiに対するmol%は、0.001mol%以上0.01mol%以下が好ましい。また、MnのTiに対するmol%は、0.05mol%以上0.8mol%以下が好ましい。
【0037】
(サイドマージン部21)
サイドマージン部21は、積層体チップ10の両側面B側、すなわち外層部22及び内層部11の両側面B側に配置され、外層部22及び内層部11の側面B側を覆っている。サイドマージン部の誘電体材料は、実施形態では外層部や内層部と同じであるが、異なっていてもよい。
【0038】
(誘電体層20)
本実施形態で内部誘電体層14と外層部22とサイドマージン部21を合わせて誘電体層20という。誘電体層20は、複数のグレインgを含む。
図5は、
図3の丸で囲んだP部の拡大図であり、グレインgを示す。グレインgはBa、Tiを含むペロブスカイト型化合物と他の副成分を含むセラミック層である。副成分は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びYのうち少なくとも1種である。
【0039】
(グレインg中のNi)
少なくとも外層部22のグレインgには、Niがさらに副成分として含まれている。Niはグレインgの成長を妨げる効果があり、外層部22のグレインgがNiを含むことで、後述する焼結の際に、外層部22のグレインgの粒成長が外側になるほど抑制される。
外層部22の外側のグレインgの粒成長が抑制されて粒径が小さくなることにより界面が平滑になり、ゆえに界面が増加しなくなり、素子厚の最薄部分ができないため信頼性を向上させることができる。
【0040】
ただし、実施形態では、Ni含有領域22BのグレインgはNiを含有するが、Ni非含有領域22AのグレインgにはNiは含有されていない。これは、焼結時にNi非含有領域22Aとなる領域に存在していたNiが最外内部電極層150に吸収されるからである。
【0041】
図6は、Ni含有領域22Bに含まれる1つのグレインg中におけるNiのばらつき状態を示す図である。実施形態でNiは、Ni含有領域22Bに含まれる1つのグレインgの内部に略均一に含まれ、Niはグレインgに固溶されている。
なお、本明細書において略均一とは、グレインgの外周から約10nm以内の外側領域g1におけるNiのTiに対するモル比(mol%)と、グレインgにおける外側領域g1以外の中央領域g2のNiのTiに対するモル比(mol%)との差が±20%以下であることをいう。
【0042】
ただし、本発明はこれに限定されず、Niは、グレインgの外周から約10nm以内の外側領域g1におけるNiのTiに対するモル比(mol%)と、グレインgにおける外側領域g1以外の中央領域g2のNiのTiに対するモル比(mol%)との差が±20%より多くてもよく、Ni含有領域22Bに含まれる1つのグレインgの内部において例えば外側領域g1又は中央領域g2の一方に、偏析して存在していてもよい。
【0043】
Niの均一性の測定は、TEM(透過電子顕微鏡)により、1000nm×1000nmの視野で100個以上のグレインgを含むように撮像した画像を用いる。その際、いびつな形状のグレインgでの測定はさけ、外側領域g1と中央領域g2とが明確に区別可能なグレインgを選択する。
選択されたグレインgにおいて、Niを検出し、外側領域g1でのTiに対するNiのmol%と、中央領域g2でのTiに対するNiのmol%とを求める。実施形態においては外側領域g1でのTiに対するNiのmol%と、中央領域g2でのTiに対するNiのmol%と差が±20%以下である。
なお、誘電体層20における外層部22以外の内部誘電体層14及びサイドマージン部21のグレインgにおいて、Niは、外層部22と同様に均一でもよいし、外層部22と異なり、Niは一部に偏析していてもよいし、Niが含まれてなくてもよい。
【0044】
(外部電極3)
外部電極3は、積層体2の第1端面C1に設けられた第1外部電極3Aと、積層体2の第2端面C2に設けられた第2外部電極3Bとを備える。なお、第1外部電極3Aと第2外部電極3Bとを特に区別して説明する必要のない場合、まとめて外部電極3として説明する。外部電極3は、端面Cだけでなく、主面A及び側面Bの端面C側の一部も覆っている。
【0045】
上述のように、第1内部電極層15Aの第1引出部15Abの端部は第1端面C1に露出し、第1外部電極3Aに電気的に接続されている。また、第2内部電極層15Bの第2引出部15Bbの端部は第2端面C2に露出し、第2外部電極3Bに電気的に接続されている。これにより、第1外部電極3Aと第2外部電極3Bとの間は、複数のコンデンサ要素が電気的に並列に接続された構造となっている。
【0046】
外部電極3は、実施形態では、下地電極層30と下地電極層30上に配置されためっき層31とを含む。
【0047】
(下地電極層30)
下地電極層30は、焼付層30a、導電性樹脂層30b、薄膜層30c等から選ばれる少なくとも1つの層を含む。実施形態では、焼付層30aと、導電性樹脂層30bと、薄膜層30cとの3層を含む。
【0048】
(焼付層30a)
焼付層30aの金属としては、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等から選ばれる少なくとも1つを含む。焼付層30aは、1層であっても、複数層であってもよい。焼付層30aは、ガラスと金属とを含む導電性ペーストを積層体2に塗布して焼き付けることにより形成される。焼付層30aは、実施形態では内部電極層15と同時に焼成されるが、これに限らず、内部電極層15を焼成した後に焼成してもよい。
【0049】
(導電性樹脂層30b)
導電性樹脂層30bは、実施形態では導電性粒子と熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の公知の種々の熱硬化性樹脂を使用することができる。金属成分としては、例えばAg、もしくは、卑金属粉の表面にAgコーティングされた金属粉を用いることができる。導電性樹脂層30bを形成する場合は、焼付層30aを形成せずに積層体2上に直接形成してもよい。導電性樹脂層30bは、1層であっても複数層であってもよい。
【0050】
導電性樹脂層30bは、熱硬化性樹脂を含むため、例えば、めっき膜や導電性ペーストの焼成物からなる焼付層30aよりも柔軟性に富んでいる。このため、積層セラミックコンデンサ1に物理的な衝撃や熱サイクルに起因する衝撃が加わった場合であっても、導電性樹脂層30bが緩衝層として機能し、積層セラミックコンデンサ1にクラックが発生することを防止するとともに、圧電振動を吸収しやすく、「鳴き」の抑制効果を有する。
【0051】
(薄膜層30c)
薄膜層30cは、スパッタ法又は蒸着法等の薄膜形成法により形成され、金属粒子が堆積された1μm以下の層である。
【0052】
(めっき層31)
めっき層31は、例えば、Cu、Ni、Sn、Pb、Au、Ag、Pd、Bi、Zn及びAg-Pd合金、からなる群から選ばれる1種の金属又は当金属を含む合金のめっきを含むことが好ましい。めっき層31は複数層により形成されていることが好ましく、実施形態でめっき層31は、第1めっき層31aと、第1めっき層31a上に設けられた第2めっき層31bとを含む。実施形態では、第1めっき層31aはNiめっきで、第2めっき層31bがSnめっきである。Niめっき層31は、下地電極層30がセラミック電子部品を実装する際のはんだによって侵食されることを防止することができる。Snめっき層31は、セラミック電子部品を実装する際のはんだの濡れ性を向上させ、容易に実装することができる。
【0053】
また、外部電極3は、下地電極層30を含まず、めっき層31を積層体2上に直接設けてもよい。この場合、内部電極層15とめっき層31とが直接接続される。また、この場合、前処理として積層体2上に触媒を設けてもよい。
【0054】
この場合、めっき層31は、第1めっき層31aと、第1めっき層31a上に設けられた第2めっき層31bとを含むことが好ましい。第1めっき層31a及び第2めっき層31bは、例えば、Cu、Ni、Sn、Pb、Au、Ag、Pd、Bi及びZnからなる群から選ばれる1種の金属又は当金属を含む合金のめっきを含むことが好ましい。
そして、例えば、内部電極層15としてNiを用いた場合、第1めっき層31aとしては、Niと接合性のよいCuを用いることが好ましい。また、第2めっき層31bとしては、はんだ濡れ性のよいSnやAuを用いることが好ましく、第1めっき層31aとしては、はんだバリア性能を有するNiを用いることが好ましい。第2めっき層31bは必要に応じて形成されるものであり、外部電極3は、第1めっき層31aから構成されたものであってもよい。第2めっき層31bをめっき層31の最外層として設けてもよく、第2めっき層31b上に他のめっき層を設けてもよい。めっき層31はガラスを含まないことが好ましい。めっき層31の単位体積あたりの金属割合は99体積%以上であることが好ましい。
【0055】
(積層セラミックコンデンサ1の製造方法)
図7は、積層セラミックコンデンサ1の製造方法を説明するフローチャートである。
図8は積層セラミックコンデンサ1の製造方法を説明する図である。
【0056】
(素材シート作製工程S1)
まず、Ba、Ti成分を含むセラミックス粉末、バインダ、溶剤、及びSiを含む内部誘電体層用セラミックスラリーが準備される。この内部誘電体層用セラミックスラリーがキャリアフィルム上においてダイコータ、グラビアコータ、マイクログラビアコータ等を用いてシート状に成形されることで内部誘電体層用セラミックグリーンシート101が作製される。
【0057】
続いて、内部誘電体層用セラミックグリーンシート101に、Niを含む導電体ペーストが帯状のパターンを有するようにスクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷等によって印刷されることにより、導電パターン102が形成される。これにより、内部誘電体層14となる内部誘電体層用セラミックグリーンシート101の表面に内部電極層15となる導電パターン102が印刷された素材シート103が作製される。
【0058】
また、内部誘電体層用セラミックスラリーと同様にBa、Ti、及びNiを含むセラミックス粉末、バインダ、溶剤を含む外層部用セラミックスラリーが準備される。この外層部用セラミックスラリーがキャリアフィルム上においてダイコータ、グラビアコータ、マイクログラビアコータ等を用いてシート状に成形されることで外層部用セラミックグリーンシート112が作製される。
【0059】
(積層工程S2)
続いて、素材シート103が複数枚積層される。
図8に示すように、帯状の導電パターン102が同一の方向を向き且つその帯状の導電パターン102が隣り合う素材シート103間において幅方向Wにおいて半ピッチずつずれた状態になるように、複数の素材シート103が積み重ねられる。さらに、複数枚積層された素材シート103の両側にそれぞれ外層部22となる外層部用セラミックグリーンシート112が積み重ねられる。
【0060】
次いで、外層部用セラミックグリーンシート112と、積み重ねられた複数の素材シート103とが熱圧着され、これによりマザーブロック110が作製される。
【0061】
(マザーブロック切断工程S3)
続いて、マザーブロック110を、積層体チップ10の寸法に対応した
図8に示す切断線X及び切断線Xと交差する切断線(図示せず)に沿って切断する。これにより、複数の積層体チップ10が製造される。
【0062】
(サイドマージン部用セラミックグリーンシート貼付工程S4)
Ba、Ti成分を含むセラミックス粉末、バインダ及び溶剤を含むサイドマージン部用セラミックグリーンシートを準備する。キャリアフィルムの表面に、サイドマージン部用セラミックグリーンシートを塗布して乾燥させる。その後、サイドマージン部用セラミックグリーンシートと積層体チップ10の側面とを対向させ、押し付けて打ち抜くことにより、サイドマージン部用セラミックグリーンシートが積層体チップ10の側面に貼付される。
【0063】
(焼付層材料塗布工程S5)
積層体チップ10にサイドマージン部用セラミックグリーンシートが貼付されたものの両端面Cに、下地電極層30のうちの焼付層30aの材料が付着される。
【0064】
(焼成工程S6)
そして、焼付層30aの材料が付着された積層体チップ10が窒素雰囲気中、所定の条件で脱脂処理された後、窒素-水素-水蒸気混合雰囲気中、所定の温度で焼成され、焼結されて焼付層30a及び導電性樹脂層30bが形成された積層体2となる。
【0065】
この焼成工程S6において、それぞれの外層部22における、それぞれが隣接する最外内部電極層150の近傍に存在するNiは、最外内部電極層150に吸収される。これにより、外層部22における、隣接する最外内部電極層150から0.9μm以内にNi非含有領域22Aが形成される。
【0066】
また、外層部22における隣接する最外内部電極層150から0.9μm以内に存在していたNiを吸収した最外内部電極層150は、内側内部電極層153より厚くなるとともに、Niを吸収することにより最外内部電極層150の厚さの均一性が増加し、CV値が低下する。なお、このCV値の値は、外層部22に含まれるNiの量等を調整することで調整可能である。
【0067】
ここで、焼成の際、最外内部電極層150は熱の影響を受けるので内側内部電極層153に比べて劣化しやすい。しかし、実施形態によると、内側内部電極層153は厚さが増加することにより強度が向上し、熱による劣化の影響を受けにくくなる。さらに、最外内部電極層150が厚くなることによりに内側内部電極層153への熱の伝達を抑制することができる。
【0068】
(導電性樹脂層工程S7)
次いで、焼付層30a上に、導電性粒子と熱硬化性樹脂を含む導電性樹脂層30bの材料が付着される。
【0069】
(薄膜層形成工程S8)
さらに、積層体2における、導電性樹脂層30bの材料の上に、スパッタ法又は蒸着法等の薄膜形成法により金属粒子が堆積された1μm以下の層である薄膜層30cが形成される。
【0070】
(めっき層形成工程S9)
実施形態では、めっき層31として、Niめっき層である第1めっき層31aと、第1めっき層31a上にSnめっきである第2めっき層31bとが形成される。以上の工程を経て、積層セラミックコンデンサ1が製造される。
【0071】
(実施例)
図9は、本発明にかかる実施例1から実施例21の積層セラミックコンデンサ1と、本発明とは異なる比較例1から比較例4の積層セラミックコンデンサ1との平均稼働時間(MTTF)を測定した結果を示した表である。なお、以下、比較例の積層セラミックコンデンサも実施形態と同様の符号を用いて説明する。
【0072】
平均稼働時間は、150℃の環境下で積層セラミックコンデンサ1の外部電極間に5.1Vの電圧を加えたときの故障が発生するまでの時間の平均である。平均稼働時間が70時間(hr)以上が合格であり、
図9の表の判定結果に〇又は◎で示す。平均稼働時間が70未満は不合格でXで示す。
【0073】
実施例及び比較例の積層セラミックコンデンサ1は、いずれも、最外内部電極層150の厚さが約0.4μm、内側内部電極層153の厚さが約0.3μmである。そして、外層部22は、隣接する最外内部電極層150から0.9μm以内がNi非含有領域22Aで、最外内部電極層150から0.9μmより離れた領域がNi含有領域22Bである。
【0074】
(CV値の効果)
実施形態に係る実施例1から実施例21において、最外内部電極層150の厚さのCV値は、内側内部電極層153より小さい。すなわち、最外内部電極層150は、内側内部電極層153より厚さのばらつきが小さい。
一方、比較例1から比較例4において、最外内部電極層150の厚さのCV値は、内側内部電極層153より大きい。すなわち、最外内部電極層150は、内側内部電極層153より厚さのばらつきが大きい。
【0075】
表に示すように、実施例1から実施例21においてはいずれも平均稼働時間(平均稼働時間)が70時間(hr)以上である。一方、比較例1-4はいずれも平均稼働時間(平均稼働時間)が70時間より小さい。
【0076】
特に、実施例15と比較例2とを比べた場合、Tiに対するMg含有量はいずれも1.000mol%、Tiに対するMn含有量はいずれも0.6mol%と等しい。
しかし、実施例15は、Tiに対するNi含有量が1.5mol%で、最外内部電極層150のCV値は0.19となり内側内部電極層153の0.24より小さい。この実施例15において、平均稼働時間は73時間である。
一方、比較例2はTiに対するNi含有量が0.2mol%で、最外内部電極層150のCV値は0.28となり内側内部電極層153の0.24より大きい。この比較例2において、平均稼働時間は35時間である。
【0077】
すなわち、実施例15は、比較例2に対して、Tiに対するNi含有量以外の条件は同じであるが、Tiに対するNi含有量を多くして最外内部電極層150のCV値を小さくしたことにより、平均稼働時間が長くなっていることがわかる。
【0078】
以上、実施形態に係る実施例1から実施例21によると、最外内部電極層150が内側内部電極層153よりも厚さのCV値が小さいので、比較例1-4のように最外内部電極層150が内側内部電極層153よりも厚さのCV値が大きい場合と比べて、平均稼働時間を長くすることができ、平均稼働時間を合格ラインである70時間以上とすることができた。
【0079】
(最外内部電極層150の厚さのCV値の好ましい範囲)
また、最外内部電極層150の厚さのCV値が0.09以上0.17以下である実施例2から実施例9、実施例11から実施例14、実施例16から実施例21は平均稼働時間が78時間以上である。
一方、最外内部電極層150の厚さのCV値が0.19以上の実施例1,10,15は、平均稼働時間が75時間以下である。
【0080】
以上より、最外内部電極層150の厚さのCV値は、0.09以上0.17以下がより好ましいことがわかる。
【0081】
(Tiに対するMg含有量の好ましい範囲)
また、実施形態に係る実施例4,10,11,12,13,14,15は、いずれも、Tiに対するNi含有量は1.5mol%であり、Tiに対するMn含有量はいずれも0.6mol%であり等しい。
【0082】
しかし、実施例10は、Tiに対するMg含有量が分析限界以下で、平均稼働時間は74時間である。実施例4は、Tiに対するMg含有量が0.001mol%で、平均稼働時間は105時間である。実施例11は、Tiに対するMg含有量が0.005mol%で、平均稼働時間は100時間である。実施例12は、Tiに対するMg含有量が0.010mol%で、平均稼働時間は101時間である。実施例13は、Tiに対するMg含有量が0.050mol%で、平均稼働時間は81時間である。実施例14は、Tiに対するMg含有量が0.500mol%で、平均稼働時間は78時間である。実施例15は、Tiに対するMg含有量が0.100mol%で、平均稼働時間は72時間である。
【0083】
すなわち、Tiに対するMg含有量が実施例4,11,12の範囲である0.001mol%以上0.01mol%以下において、平均稼働時間は100時間以上である。これに対して、Tiに対するMg含有量が0.001mol%より少ない実施例10、又は0.01mol%より多い実施例13,14,15において、平均稼働時間は、81時間以下である。
【0084】
以上より、Tiに対するMg含有量は、0.001mol%以上0.01mol%以下が好ましいことがわかる。
【0085】
(Tiに対するNi含有量の好ましい範囲)
また、実施形態に係る実施例2,3,4,5,6,7,9は、いずれも、Tiに対するMg含有量は0.001mol%であり、Tiに対するNi含有量は0.60mol%であり等しい。
【0086】
しかし、実施例2は、Tiに対するNi含有量が0.04mol%で、平均稼働時間は95時間である。実施例3は、Tiに対するNi含有量が1.0mol%で、平均稼働時間は99時間である。実施例4は、Tiに対するNi含有量が1.5mol%で、平均稼働時間は105時間である。実施例5は、Tiに対するNi含有量が2.0mol%で、平均稼働時間は102時間である。実施例6は、Tiに対するNi含有量が3.5mol%で、平均稼働時間は99時間である。実施例7は、Tiに対するNi含有量が5.0mol%で、平均稼働時間は98時間である。実施例9は、Tiに対するNi含有量が10.0mol%で、平均稼働時間は78時間である。
【0087】
すなわち、Tiに対するNi含有量が実施例2,3,4,5,6,7の範囲である0.4mol%以上5.0mol%以下において、平均稼働時間は95時間以上である。これに対してTiに対するNi含有量が5.0mol%より多い実施例9において、平均稼働時間は78時間である。
【0088】
以上より、Tiに対するNi含有量は、0.4mol%以上5.0mol%以下が好ましいことがわかる。
【0089】
(Tiに対するMn含有量の好ましい範囲)
また、実施例16,17,18,19,20,21は、いずれも、Tiに対するNi含有量は1.5mol%であり、Tiに対するMg含有量は0.001mol%であり等しい。
【0090】
しかし、実施例21は、Tiに対するMn含有量が0.03mol%で、平均稼働時間は78時間である。実施例20は、Tiに対するMn含有量が0.05mol%で、平均稼働時間は95時間である。実施例19は、Tiに対するMn含有量が0.20mol%で、平均稼働時間は97時間である。実施例18は、Tiに対するMn含有量が0.40mol%で、平均稼働時間は108時間である。実施例17は、Tiに対するMn含有量が0.80mol%で、平均稼働時間は113時間である。実施例16は、Tiに対するMn含有量が1.00mol%で、平均稼働時間は80時間である。
【0091】
すなわち、Tiに対するMn含有量が実施例19,18,17の範囲である0.05mol%以上0.80mol%以下において、平均稼働時間は95時間以上である。これに対して、Tiに対するMn含有量が0.03mol%である実施例21、又は1.00mol%である実施例16において、平均稼働時間は、80時間以下である。
【0092】
以上より、Tiに対するMn含有量は、0.05mol%以上0.80mol%以下が好ましいことがわかる。
【0093】
(効果)
以上、実施形態の積層セラミックコンデンサ1によると、外層部22の少なくとも一方は、外層部22に最も近い最外内部電極層150から0.9μm以内のNi非含有領域22Aと、最外内部電極層150から0.9μmより離れたNi含有領域22Bとを含み、最外内部電極層150の少なくとも一方は、内側内部電極層153より厚く、且つ、厚さのばらつきが小さい。これにより、平均稼働時間を長くすることができる。
【0094】
実施形態の積層セラミックコンデンサ1において、NiのTiに対するmol%を、0.4mol%以上5.0mol%以下にすることにより、平均稼働時間をさらに長くすることができる。
【0095】
さらに、実施形態の積層セラミックコンデンサ1において、MgのTiに対するmol%を、0.001mol%以上0.01mol%以下にすることにより、平均稼働時間をさらに長くすることができる。
【0096】
また、実施形態の積層セラミックコンデンサ1において、MnのTiに対するmol%を、0.05mol%以上0.80mol%以下にすることにより、平均稼働時間をさらに長くすることができる。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、この実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形される。
【符号の説明】
【0098】
g グレイン
g1 外側領域
g2 中央領域
1 積層セラミックコンデンサ
2 積層体
3 外部電極
10 積層体チップ
11 内層部
14 内部誘電体層
15 内部電極層
150 最外内部電極層
151 第1最外内部電極層
152 第2最外内部電極層
153 内側内部電極層
20 誘電体層
21 サイドマージン部
22 外層部
22A Ni非含有領域
22B Ni含有領域
30 下地電極層
31 めっき層