(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】過渡電圧吸収素子
(51)【国際特許分類】
H10D 89/60 20250101AFI20250701BHJP
H10D 84/80 20250101ALI20250701BHJP
H02H 9/04 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
H10D89/60
H10D84/80 102B
H02H9/04 A
(21)【出願番号】P 2023552840
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2022036484
(87)【国際公開番号】W WO2023058555
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2024-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2021163296
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 達也
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/023394(WO,A1)
【文献】特開2008-244406(JP,A)
【文献】特開2012-9481(JP,A)
【文献】国際公開第2014/132938(WO,A1)
【文献】特開2005-217043(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159282(WO,A1)
【文献】特開2009-33462(JP,A)
【文献】特開2020-205342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 84/80
H10D 89/60
H02H 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号ラインにシリーズに接続され且つ基準電位との間にシャントに接続される過渡電圧吸収素子であり、
基材と、
前記基材に形成されて前記信号ラインに接続される第1入出力端子と、
前記基材に形成されて前記信号ラインに接続される第2入出力端子と、
前記基材に形成されて前記基準電位に接続される基準電位接続端子と、
前記基材の内部に形成されて前記第1入出力端子と前記第2入出力端子との間に電気的に接続された内部信号ラインと、
前記内部信号ラインと前記基準電位接続端子との間に接続されたサージ吸収素子と、
を備え、
前記第1入出力端子と前記第2入出力端子との間に生じる寄生容量成分の前記内部信号ラインを伝搬する信号の周波数帯におけるインピーダンスの大きさは、前記内部信号ラインの抵抗成分より小さい、
ことを特徴とする過渡電圧吸収素子。
【請求項2】
前記内部信号ラインは、前記基材に形成された所定の抵抗成分を有する導電体の配線パターンであり、
前記第1入出力端子および前記第2入出力端子と直接接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の過渡電圧吸収素子。
【請求項3】
前記内部信号ラインは1層で形成されており、前記寄生容量成分は前記配線パターンにより平面上に生じる、
ことを特徴とする請求項2に記載の過渡電圧吸収素子。
【請求項4】
前記内部信号ラインはミアンダ形状を含む、
請求項3に記載の過渡電圧吸収素子。
【請求項5】
前記寄生容量成分は、前記内部信号ラインと、少なくとも前記第1入出力端子および前記第2入出力端子の1つとの間で生じる、
ことを特徴とする請求項2に記載の過渡電圧吸収素子。
【請求項6】
前記基材は誘電体層を、さらに備え、
前記内部信号ラインは、少なくとも前記第1入出力端子および前記第2入出力端子の1つと、前記誘電体層を挟んで対向位置に配置される、
ことを特徴とする請求項5に記載の過渡電圧吸収素子。
【請求項7】
前記基材は誘電体層を、さらに備え、
前記内部信号ラインは誘電体膜を挟んだ位置に2層以上形成されており、誘電体を挟んだ領域で前記寄生容量成分を形成する、
ことを特徴とする請求項2に記載の過渡電圧吸収素子。
【請求項8】
前記抵抗成分および前記寄生容量成分は、
前記第1入出力端子と前記基準電位接続端子の間と、
前記第2入出力端子と前記基準電位接続端子の間と、でそれぞれ生じる、
ことを特徴とする請求項2に記載の過渡電圧吸収素子。
【請求項9】
前記内部信号ラインの前記配線パターンは、サージ吸収素子を基準にて対称形状である、
ことを特徴とする請求項8に記載の過渡電圧吸収素子。
【請求項10】
前記第1入出力端子と前記第2入出力端子は、前記基準電位接続端子を基準にて対称位置に配置される、
ことを特徴とする請求項8に記載の過渡電圧吸収素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ESD(静電気放電)等による過渡的な異常電圧や、雷サージ、開閉サージ等のサージを吸収する過渡電圧吸収素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ケーブル障害等により発生する高電圧サージまたは高電流サージから中継器の増幅部の破壊を防御するとともに、群遅延歪の発生を軽減させる中継器サージ防御回路が示されている。
【0003】
図12は特許文献1に示されている中継器サージ防御回路の回路図である。この中継器サージ防御回路は、入出力端子(9,10),(11,12)、サージ吸収素子17,18、直流遮断用コンデンサ19、T型4端子回路20,21を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12に示す中継器サージ防御回路では、T型4端子回路20,21内の抵抗素子はDCを含む低周波数帯で作用させるために設けられているので、全周波数帯で伝送線路の挿入損失が大きくなってしまう。また、T型4端子回路20,21内のコンデンサは回路基板への実装によって組み込まれるので、このコンデンサが接続される配線やコンデンサに抵抗成分Rが生じる。この抵抗成分Rは伝送線路に対して直列に接続されるため、使用周波数帯でも挿入損失が大きい。また、全体の部品点数が多いことにより、実装面積が大きくならざるを得ない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、伝送線路に対して直列に抵抗成分を備えながらも、使用周波数帯である高周波数帯での挿入損失を低減した過渡電圧吸収素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一例としての過渡電圧吸収素子は、
信号ラインにシリーズに接続され且つ基準電位との間にシャントに接続される過渡電圧吸収素子であり、
基材と、
前記基材に形成されて前記信号ラインに接続される第1入出力端子と、
前記基材に形成されて前記信号ラインに接続される第2入出力端子と、
前記基材に形成されて前記基準電位に接続される基準電位接続端子と、
前記基材の内部に形成されて前記第1入出力端子と前記第2入出力端子との間に電気的に接続された内部信号ラインと、
前記内部信号ラインと前記基準電位接続端子との間に接続されたサージ吸収素子と、
を備え、
前記第1入出力端子と前記第2入出力端子との間に生じる寄生容量成分の前記内部信号ラインを伝搬する信号の周波数帯におけるインピーダンスの大きさは、前記内部信号ラインの抵抗成分より小さい、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、伝送線路に対して直列に抵抗成分を備えながらも、使用周波数帯である高周波数帯での挿入損失が低い過渡電圧吸収素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は第1の実施形態に係る過渡電圧吸収素子101Aの回路図である。
【
図2】
図2は過渡電圧吸収素子101Aの主要部の平面図である。
【
図4】
図4は第1の実施形態に係る過渡電圧吸収素子101Bの回路図である。
【
図5】
図5(A)は第1の実施形態に係る過渡電圧吸収素子の第1抵抗成分R1と第1寄生容量成分Cp1とにより構成される回路を示す図であり、
図5(B)はその等価回路図である。
【
図8】
図8は第2の実施形態に係る過渡電圧吸収素子102の主要部の平面図である。
【
図9】
図9(A)は第2の実施形態に係る過渡電圧吸収素子の第1抵抗成分R1と第1寄生容量成分Cp1とにより構成される回路を示す図であり、
図9(B)はその等価回路図である。
【
図10】
図10は第3の実施形態に係る過渡電圧吸収素子103の主要部の平面図である。
【
図11】
図11(A)は第3の実施形態に係る過渡電圧吸収素子103の第1抵抗成分R1と第1寄生容量成分Cp1とにより構成される回路を示す図であり、
図11(B)はその等価回路図である。
【
図12】
図12は特許文献1に示されている中継器サージ防御回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、実施形態を説明の便宜上、複数の実施形態に分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0011】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係る過渡電圧吸収素子101Aの回路図である。この過渡電圧吸収素子101Aは、信号ラインSLにシリーズに接続され且つ基準電位との間にシャントに接続される過渡電圧吸収素子である。
【0012】
また、過渡電圧吸収素子101Aは、信号ラインSLに接続される第1入出力端子T1と、信号ラインSLに接続される第2入出力端子T2と、基準電位に接続される基準電位接続端子T3と、を備える。
【0013】
第1入出力端子T1と第2入出力端子T2との間には内部信号ラインSL0が設けられている。この内部信号ラインSL0は第1抵抗成分R1及び第2抵抗成分R2を含む。内部信号ラインSL0と基準電位接続端子T3との間にはダイオードBDが接続されている。
【0014】
第1入出力端子T1と第2入出力端子T2との間には、第1寄生容量成分Cp1及び第2寄生容量成分Cp2が存在する。
【0015】
第1抵抗成分R1及び第2抵抗成分R2は低周波数(主に直流)電流を制限する電流制限抵抗として作用する。または、インピーダンス整合用の終端抵抗として作用する。
【0016】
内部信号ラインSL0を伝搬する信号の周波数帯において、第1寄生容量成分Cp1は第1抵抗成分R1に比較して低インピーダンスであり、第2寄生容量成分Cp2は第2抵抗成分R2に比較して低インピーダンスである。すなわち、第1寄生容量成分をCp1とするインピーダンスABS(1/jωCp1)は、第1抵抗成分R1に比べて小さく、第2寄生容量成分をCp2とするインピーダンスABS(1/jωCp2)は、第2抵抗成分R2に比べて小さい。なお、ABS()は絶対値を表す。
【0017】
そのため、過渡電圧吸収素子101Aは、使用周波数帯である高周波数帯(例えば10GHz帯)では、第1抵抗成分R1及び第2抵抗成分R2の存在が無視でき、低挿入損失が実現できる。
【0018】
次に、上記過渡電圧吸収素子101Aの構造の一例を示す。
図2は過渡電圧吸収素子101Aの平面図であり、
図3は
図2におけるX-X部分の断面図である。
【0019】
図3に示すように、過渡電圧吸収素子101Aは、半導体基板部と再配線部とで構成されている。半導体基板部及び再配線部は本発明に係る「基材」に相当する。
【0020】
半導体基板部は、半導体基板Sub、エピタキシャル層Epi、絶縁体Ins1及び導電体Cond11,Cond12,Cond13を備える。半導体基板Subは、例えばSi基板、GaAs基板等である。絶縁体Ins1の材質には、SiO2膜が用いられてもよい。導電体Cond11,Cond12,Cond13の材質には、例えばAl又はCuが用いられてもよい。
【0021】
再配線部は、絶縁体Ins2,Ins3,Ins4,Ins5、導電体Cond2、パッドPadを備える。
【0022】
絶縁体Ins2は例えばSiN、絶縁体Ins3,Ins4,Ins5は例えばエポキシ等の有機樹脂である。導電体Cond2の材質には、例えばCuが用いられてもよい。パッドPadは例えば複数層の電極形成用導電体で構成されている。例えば、パッドPadは、下地層および表面層を含むようにしてもよい。また、下地層と表面層との間に密着層をさらに含むようにしてもよい。下地層の材質にはNiが、密着層の材質にはTiが、表面層の材質にはAuが用いられてもよい。
【0023】
図2に示す第1端子電極E1、第2端子電極E2及び第3端子電極E3は、
図3に示すパッドPadにより構成されている。また、再配線部の下層の導電体Cond2により第1抵抗成分R1及び第2抵抗成分R2が構成されている。すなわち、再配線部の下層の導電体Cond2は、所定の抵抗率を有する導体の配線パターンである。上層の導電体Cond2と下層の導電体Cond2とはビア導体V11,V12で接続されている。下層の導電体Cond2と半導体基板部の導電体Cond11とはビア導体V21で接続されている。
【0024】
このような構造において、
図1に示した第1抵抗成分R1及び第2抵抗成分R2の抵抗値を高めるには、導電体Cond2による配線パターンの膜厚を薄くしたり、配線パターンの線幅を細くしたりすることが有効である。また、ビア導体V11,V12の長さを長くしたり、ビア導体V11,V12の径を細くしたりすることも有効である。
【0025】
図2に示すように、導電体Cond11と導電体Cond13との間にダイオードBDが構成されている。導電体Cond3と第3端子電極E3とはビア導体V22及び導電体を通して接続されている。
【0026】
内部信号ラインSLOを構成する導電体Cond2の上層パターンと下層パターンとは絶縁体Ins4を介して対向する。第1寄生容量成分Cp1は、第1抵抗成分R1を構成する場所での上層パターンと下層パターンが対向する領域で生じる。第2寄生容量成分Cp2は、第2抵抗成分R2を構成する場所での上層パターンと下層パターンが対向する領域で生じる。
【0027】
図2に示す第1端子電極E1は
図1に示した第1入出力端子T1に相当し、第2端子電極E2は第2入出力端子T2に相当し、第3端子電極E3は基準電位接続端子T3に相当する。
【0028】
図4は第1の実施形態に係る別の過渡電圧吸収素子101Bの回路図である。
図1に示した過渡電圧吸収素子101Aでは、内部信号ラインSL0に対するダイオードBDの接続点の前段に抵抗成分R1が存在し、後段に抵抗成分R2が存在する例を示したが、過渡電圧吸収素子101Bでは、内部信号ラインSL0に対するダイオードBDの接続点の後段にのみ抵抗成分R2が存在している。この抵抗成分R2は例えば終端抵抗として用いる。
【0029】
このように、内部信号ラインに挿入される抵抗成分がダイオードBDの後段のみに設けた過渡電圧吸収素子についても本発明は同様に適用できる。同様に、内部信号ラインに挿入される抵抗成分がダイオードBDの前段のみに設けた過渡電圧吸収素子についても本発明は同様に適用できる。
【0030】
図5(A)は過渡電圧吸収素子101Aの第1抵抗成分R1と第1寄生容量成分Cp1とにより構成される回路を示す図であり、
図5(B)はその等価回路図である。
【0031】
絶縁体Ins4は誘電体層であるので、
図5(A)に示すように、第1抵抗成分R1を構成する導電体Cond2と第1端子電極E1との間に寄生容量が形成される。この寄生容量を等価的に単一のキャパシタで表すと、
図5(B)に示すように、第1抵抗成分R1に第1寄生容量成分Cp1が並列接続された回路となる。第2抵抗成分R2と第2寄生容量成分Cp2との関係についても同様である。
【0032】
図6はダイオードBD形成領域の断面図である。但し、
図6では半導体基板部について表している。ダイオードBD形成領域の半導体基板部は、半導体基板Sub、エピタキシャル層Epi、トレンチTR、絶縁体Ins1を備える。
【0033】
エピタキシャル層Epiは例えばn型エピタキシャル層であり、半導体基板Subの表面に形成されている。エピタキシャル層Epiの表層にはp+領域及びn+領域が形成されている。エピタキシャル層Epiの表面には絶縁体Ins1が形成されている。エピタキシャル層Epiの表面からp+領域及びn+領域にかけて導電体Cond11,Cond12,Cond13が形成されている。また、絶縁体Ins1から半導体基板SubにかけてトレンチTRが形成されている。
【0034】
エピタキシャル層Epi、p+領域及びn+領域によってダイオードを構成している。エピタキシャル層Epiがn型エピタキシャル層である場合、エピタキシャル層Epiとp+領域との界面に空乏層が形成される。トレンチTRはダイオード間を分離する。
【0035】
なお、サージ吸収用のダイオードは、順方向降下電圧を超えるときに導通するダイオード以外に、ツェナー電圧を超えるときに導通するツェナーダイオードであってもよい。
【0036】
図7はダイオードBDの回路図である。
図7中の破線の矢印はダイオードBDに流れる電流の経路及び方向を示している。つまり、
図7中の導電体Cond11に正電位が印加され、且つ各ダイオードに対してその順方向電圧を超える電圧が印加されたとき、導電体Cond11→ダイオードD11→導電体Cond12→ダイオードD12→導電体Cond13の経路で電流が流れる。また、
図7中の導電体Cond13に正電位が印加され、且つ各ダイオードに対してその順方向電圧を超える電圧が印加されたとき、導電体Cond13→ダイオードD21→導電体Cond12→ダイオードD22→導電体Cond11の経路で電流が流れる。
【0037】
なお、以上に示した例では、抵抗成分を導電体で構成したが、抵抗成分はその他の抵抗体又は導電体のパターンで構成してもよい。
【0038】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、第1の実施形態で示した例とは異なる構造で寄生容量を形成する例について示す。
【0039】
図8は第2の実施形態に係る過渡電圧吸収素子102の主要部の平面図である。過渡電圧吸収素子102の表面は、第1の実施形態において
図3に示した例と同様に絶縁体Ins5が被覆されていて、絶縁体Ins5の開口部が第1端子電極E1、第2端子電極E2及び第3端子電極E3である。これら第1端子電極E1、第2端子電極E2及び第3端子電極E3は、第1の実施形態において
図3に示した例と同様に、導電体の一部、及びパッドPadで構成されている。
【0040】
上記導電体Cond2によって第1抵抗成分R1及び第2抵抗成分R2が構成されている。第1抵抗成分R1を構成する導電体Cond2は、そのパターン間に第1寄生容量成分Cp1を形成している。同様に、第2抵抗成分R2を構成する導電体Cond2は、そのパターン間に第2寄生容量成分Cp2を形成している。
【0041】
第1抵抗成分R1の一端と第2抵抗成分R2との接続部と、第3端子電極E3と、の間にはダイオードBDが設けられている。但し、
図8においてはこのダイオードBDを回路記号で表している。このダイオードBDの基本的な構造は
図2に示したダイオードBDと同様である。
【0042】
図9(A)は第2の実施形態に係る過渡電圧吸収素子の第1抵抗成分R1と第1寄生容量成分Cp1とにより構成される回路を示す図であり、
図9(B)はその等価回路図である。
【0043】
第1抵抗成分R1を構成する導電体Cond2は、ミアンダライン状のような屈曲したパターンであるので、平面内での導電体Cond2間に第1寄生容量成分Cp1が形成される。これらの第1寄生容量成分Cp1を等価的に単一のキャパシタで表すと、
図9(B)に示すように、第1抵抗成分R1に第1寄生容量成分Cp1が並列接続された回路となる。第2抵抗成分R2と第2寄生容量成分Cp2との関係についても同様である。
【0044】
本実施形態に示したように、寄生容量は抵抗成分を構成する抵抗体又は導電体によるパターンの部分同士の間に生じる寄生容量であってもよい。
【0045】
この第2の実施形態で示す構造の過渡電圧吸収素子102では、第1抵抗成分R1及び第2抵抗成分R2の抵抗値を高めるには、導電体のパターンの引き回しを長くしたり、導電体の膜厚を薄くしたりすることが有効である。
【0046】
このように、単層の導電体Cond2で抵抗成分を構成する場合には、その配線パターン間に生じる寄生容量を利用してもよい。
【0047】
なお、以上に示した例では、抵抗成分を導電体で構成したが、抵抗成分はその他の抵抗体又は導電体のパターンで構成してもよい。
【0048】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、第1、第2の実施形態で示した例とは異なる構造で寄生容量を形成する例について示す。
【0049】
図10は第3の実施形態に係る過渡電圧吸収素子103の主要部の平面図である。過渡電圧吸収素子103は、第1の実施形態で示した例と同様に、半導体基板部と再配線部とで構成されている。
図10に示す第1端子電極E1は
図1に示した第1入出力端子T1に相当し、第2端子電極E2は第2入出力端子T2に相当し、第3端子電極E3は基準電位接続端子T3に相当する。
【0050】
再配線部には導電体Cond11,Cond13に導通する導電体Cond12が形成されている。
図10に示す第1端子電極E1、第2端子電極E2及び第3端子電極E3は、再配線部の上層の導電体Cond2及びパッドPadにより構成されている。また、再配線部の下層の導電体Cond2により第1抵抗成分R1及び第2抵抗成分R2が形成されている。上層の導電体Cond2と下層の導電体Cond2とはビア導体V11,V12で接続されている。下層の導電体Cond2と半導体基板部の導電体Cond11とはビア導体V21で接続されている。
【0051】
図10に示すように、導電体Cond11と導電体Cond13との間にダイオードBDが構成されている。導電体Cond13と第3端子電極E3とはビア導体V22及び導電体を通して接続されている。ダイオードBDの構成は第1の実施形態で示したとおりである。
【0052】
図11(A)は過渡電圧吸収素子103の第1抵抗成分R1と第1寄生容量成分Cp1とにより構成される回路を示す図であり、
図11(B)はその等価回路図である。
【0053】
図11(A)に示すように、第1抵抗成分R1を構成する導電体Cond2間に第1寄生容量成分Cp1が形成される。また、第1抵抗成分R1を構成する導電体Cond2と第1端子電極E1との間にも第1寄生容量成分Cp1が形成される。この寄生容量を等価的に単一のキャパシタで表すと、
図11(B)に示すように、第1抵抗成分R1に第1寄生容量成分Cp1が並列接続された回路となる。第2抵抗成分R2と第2寄生容量成分Cp2との関係についても同様である。
【0054】
この第3の実施形態で示す構造の過渡電圧吸収素子103において、第1抵抗成分R1及び第2抵抗成分R2の抵抗値を高めるには、導電体Cond2のパターンの引き回しを長くすることが有効である。また、導電体Cond2による配線パターンの膜厚を薄くしたり、この配線パターンの線幅を細くしたりすることも有効であり、さらにはビア導体V11,V12の長さを長くしたり、ビア導体V11,V12の径を細くしたりすることも有効である。
【0055】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【0056】
例えば、以上に示した各実施形態では単一の信号ラインに接続される過渡電圧吸収素子について示したが、この過渡電圧吸収素子を単一の基材に一対設けることによって差動信号ライン用の過渡電圧吸収素子を構成してもよい。
【0057】
また、以上に示した各実施形態では、サージ吸収素子を複数のダイオードで構成した例を示したが、ツェナーダイオードやサイリスタでサージ吸収素子を構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
BD…ダイオード
Cond11,Cond12,Cond13,Cond2,Cond3…導電体
Cp1…第1寄生容量成分
Cp2…第2寄生容量成分
D11,D12,D21,D22…ダイオード
E1…第1端子電極
E2…第2端子電極
E3…第3端子電極
Epi…エピタキシャル層
Ins1,Ins2,Ins3,Ins4,Ins5…絶縁体
Pad…パッド
R1…第1抵抗成分
R2…第2抵抗成分
Sub…半導体基板
SL…信号ライン
SL0…内部信号ライン
T1…第1入出力端子
T2…第2入出力端子
T3…基準電位接続端子
TR…トレンチ
V11,V12,V21,V22…ビア導体
17,18…サージ吸収素子
19…直流遮断用コンデンサ
20,21…T型4端子回路
101A,101B,102,103…過渡電圧吸収素子