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7704219含水率測定方法及び含水率測定装置並びにコークスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】含水率測定方法及び含水率測定装置並びにコークスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 22/04 20060101AFI20250701BHJP
   G01N 22/00 20060101ALI20250701BHJP
   G01N 5/00 20060101ALI20250701BHJP
   C10B 57/10 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
G01N22/04 C
G01N22/00 W
G01N22/00 U
G01N5/00 B
C10B57/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023568214
(86)(22)【出願日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2023034047
(87)【国際公開番号】W WO2024063081
(87)【国際公開日】2024-03-28
【審査請求日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2022150010
(32)【優先日】2022-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 愛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友彦
(72)【発明者】
【氏名】梅垣 嘉之
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-055726(JP,A)
【文献】特開2001-288737(JP,A)
【文献】特開2007-046832(JP,A)
【文献】特開2014-118465(JP,A)
【文献】特開平09-328689(JP,A)
【文献】特開昭54-108664(JP,A)
【文献】特開平07-043319(JP,A)
【文献】特開平06-129980(JP,A)
【文献】特開平02-067395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 22/00-22/04
G01N 5/00
C10B 57/10
G01N 9/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切出装置からベルトコンベア上に切り出される被測定物の含水率を測定する含水率測定方法であって、
前記被測定物に対して移動するマイクロ波送信部によって前記被測定物に送信マイクロ波を送信したときに、前記被測定物を透過した送信マイクロ波をマイクロ波受信部によって受信マイクロ波として受信し、前記送信マイクロ波と前記受信マイクロ波との位相差及び減衰率を求めるマイクロ波測定工程と、
前記被測定物の量と、前記マイクロ波送信部に対する前記被測定物の移動速度と、前記被測定物の層厚と、前記ベルトコンベアの幅とに基づいて前記被測定物の嵩密度を算出する嵩密度算出工程と、
前記送信マイクロ波と前記受信マイクロ波との位相差及び減衰率と、嵩密度とに基づいて、前記被測定物の含水率を算出する含水率算出工程と、を有し、
前記嵩密度算出工程では、前記切出装置から前記ベルトコンベア上に切り出される単位時間当たりの前記被測定物の切出量を前記切出装置から取得して前記被測定物の量とする含水率測定方法。
【請求項2】
嵩密度をQ(kg/m)、前記送信マイクロ波と前記受信マイクロ波との位相差をφ(deg)、減衰率をA(dB)、前記被測定物の層厚をD(m)、係数をKφ、KA、KCとしたとき、前記被測定物Sの含水率W(質量%)は、下記式(2)により算出される請求項1に記載の含水率測定方法。
W=(Kφ×φ+KA×A)/(Q×D)+KC ・・・(2)
【請求項3】
前記被測定物は、石炭である請求項1又は2に記載の含水率測定方法。
【請求項4】
請求項1に記載された含水率測定方法によって石炭の含水率を測定し、
測定した含水率に基づいて、含水率が設定範囲内に収まるように石炭を乾燥させ、
乾燥させた石炭をコークス炉へ運搬し、
乾燥させた石炭をコークス炉に投入して乾留することによってコークスを製造するコークスの製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載された含水率測定方法によって石炭の含水率を測定し、
測定した含水率に基づいて、含水率が設定範囲内に収まるように石炭を乾燥させ、
乾燥させた石炭をコークス炉へ運搬し、
乾燥させた石炭をコークス炉に投入して乾留することによってコークスを製造するコークスの製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載された含水率測定方法によって石炭の含水率を測定し、
測定した含水率に基づいて、含水率が設定範囲内に収まるように石炭を乾燥させ、
乾燥させた石炭をコークス炉へ運搬し、
乾燥させた石炭をコークス炉に投入して乾留することによってコークスを製造するコークスの製造方法。
【請求項7】
切出装置からベルトコンベア上に切り出される被測定物の含水率を測定する含水率測定装置であって、
前記被測定物に対して移動するように構成されており、前記被測定物に送信マイクロ波を送信するマイクロ波送信部と、前記被測定物を透過した送信マイクロ波を受信マイクロ波として受信するマイクロ波受信部と、前記送信マイクロ波と前記受信マイクロ波との位相差及び減衰率を求めるマイクロ波評価部と、を有するマイクロ波評価ユニットと、
前記被測定物の量と、前記マイクロ波送信部に対する前記被測定物の移動速度と、前記被測定物の層厚と、前記ベルトコンベアの幅とに基づいて前記被測定物の嵩密度を算出する嵩密度算出部と、
前記マイクロ波評価部により測定された位相差及び減衰率と、前記嵩密度算出部により算出された前記嵩密度とに基づいて、前記被測定物の含水率を算出する含水率算出部と、を有し、
前記嵩密度算出部では、前記切出装置から前記ベルトコンベア上に切り出される単位時間当たりの前記被測定物の切出量を前記切出装置から取得して前記被測定物の量とする含水率測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,マイクロ波を用いて被測定物の含水率を測定する含水率測定方法及び含水率測定装置並びにコークスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄工場において、コークスの原料となる石炭は、ベルトコンベヤによって運搬され、調湿機によって乾燥された後にコークス炉に投入される。一般的には、石炭の含水率が低いほど、コークスの品質は向上する。しかしながら、石炭の含水率が低すぎる場合には、運搬中の石炭の粉塵発生量の増加、発火の危険性、及び、コークス炉の押し詰まりといった問題が発生する可能性がある。このため、石炭の含水率を所定範囲に制御することが必要である。
【0003】
石炭の含水率を測定する技術として、マイクロ波を利用する技術が知られている。この技術では、ベルトコンベヤ上の石炭にマイクロ波が照射され、石炭におけるマイクロ波の伝播特性の変化に基づいて石炭の含水率が測定される。また、このマイクロ波を利用した石炭の含水率の測定技術では、石炭の嵩密度の情報が必要になる。通常、嵩密度は、放射線の一種であるガンマ線が物質中を通過する際に弱められるという性質を利用して測定される。しかしながら、ガンマ線は取扱いが厳しく規制されており、ガンマ線を用いて嵩密度を測定する方法は管理コストがかかる。
【0004】
そこで、石炭の嵩密度を物理的に一定にした状態でマイクロ波による含水率の測定を行う方法が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。特許文献1には、スクレーパーを使ってベルトコンベヤ上の石炭の表面を物理的に均し、嵩密度を均一にすることが開示されている。特許文献2には、石炭層内に埋め込んだ水分計によって、嵩密度の変動の影響を受けることなく石炭の含水量を測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-55726号公報
【文献】特許第6075044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2のいずれの場合も、被測定物の層厚が一定以上の層厚を有することを前提としている。すなわち、被測定物の層厚が薄過ぎる場合、スクレーパーが石炭に当たらずに嵩密度を一定にできない、もしくは、水分計が被測定物に接触しない、という事態が生じる可能性がある。一方、被測定物の層厚が厚過ぎる場合、スクレーパー、もしくは、測定装置が被測定物に衝突し、衝突した被測定物がベルトコンベヤから落下してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべく、被測定物の層厚が変動しても、確実に被測定物の含水率を測定することができる含水率測定方法及び含水率測定装置並びにコークスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]被測定物の含水率を測定する含水率測定方法であって、前記被測定物に対して移動するマイクロ波送信部によって前記被測定物に送信マイクロ波を送信したときに、前記被測定物を透過した送信マイクロ波をマイクロ波受信部によって受信マイクロ波として受信し、前記送信マイクロ波と前記受信マイクロ波との位相差及び減衰率を求めるマイクロ波測定工程と、前記被測定物の量と、前記マイクロ波送信部に対する前記被測定物の移動速度と、前記被測定物の層厚とに基づいて前記被測定物の嵩密度を算出する嵩密度算出工程と、前記送信マイクロ波と前記受信マイクロ波との位相差及び減衰率と、嵩密度とに基づいて、前記被測定物の含水率を算出する含水率算出工程と、を有する含水率測定方法。
[2]嵩密度をQ(kg/m)、前記送信マイクロ波と前記受信マイクロ波との位相差をφ(deg)、減衰率をA(dB)、前記被測定物の層厚をD(m)、係数をKφ、K、Kとしたとき、前記被測定物Sの含水率W(質量%)は、下記式(2)により算出される[1]に記載の含水率測定方法。
W=(Kφ×φ+K×A)/(Q×D)+K ・・・(2)
[3]前記被測定物は、石炭である[1]又は[2]に記載の含水率測定方法。
[4][1]ないし[3]のいずれかに記載された含水率測定方法によって石炭の含水率を測定し、測定した含水率に基づいて、含水率が設定範囲内に収まるように石炭を乾燥させ、乾燥させた石炭をコークス炉へ運搬し、乾燥させた石炭をコークス炉に投入して乾留することによってコークスを製造するコークスの製造方法。
[5]被測定物の含水率を測定する含水率測定装置であって、前記被測定物に対して移動するように構成されており、前記被測定物に送信マイクロ波を送信するマイクロ波送信部と、前記被測定物を透過した送信マイクロ波を受信マイクロ波として受信するマイクロ波受信部と、前記送信マイクロ波と前記受信マイクロ波との位相差及び減衰率を求めるマイクロ波評価部と、を有するマイクロ波評価ユニットと、前記被測定物の量と、前記マイクロ波送信部に対する前記被測定物の移動速度と、前記被測定物の層厚とに基づいて前記被測定物の嵩密度を算出する嵩密度算出部と、前記マイクロ波評価部により測定された位相差及び減衰率と、前記嵩密度算出部により算出された前記嵩密度とに基づいて、前記被測定物の含水率を算出する含水率算出部と、を有する含水率測定装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被測定物の層厚が変動する場合であっても含水率を確実に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の含水率測定装置の好ましい実施形態を示す模式図である。
図2】3ロール式の湾曲したベルトコンベヤの一例を示す図である。
図3図1の含水率測定装置の模擬装置を用いて測定した含水率と、JIS分析法によって測定した含水率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の含水率測定装置の好ましい実施形態を示す模式図である。図1の含水率測定装置1は、例えば切出装置2からベルトコンベヤ3上に供給された被測定物Sである石炭の含水率を測定するものである。含水率を測定された石炭はベルトコンベヤ3によって搬送方向で含水率測定装置1の下流側に位置する図示しない調湿機に運搬される。調湿機において、図1に示す含水率測定装置1によって測定された含水率に基づいて、石炭の含水率が設定範囲内に収まるように石炭を乾燥する。その後、乾燥された石炭が図示しないコークス炉に投入されて、乾留されることによってコークスが製造される。なお、本発明の実施形態では、搬送装置の一例としてベルトコンベヤ3を例示しているが、これに限定されず、ローラーコンベヤであってもよい。
【0012】
含水率測定装置1は、マイクロ波評価ユニット10と、嵩密度算出部20と、含水率算出部30とを有する。マイクロ波評価ユニット10は、被測定物Sにマイクロ波を送信し、その送信したマイクロ波と被測定物Sを透過したマイクロ波との位相差及び減衰率を求める。嵩密度算出部20は、被測定物Sの嵩密度を算出する。含水率算出部30は、被測定物Sの含水率を算出する。マイクロ波評価ユニット10は、具体的には、マイクロ波送信部11とマイクロ波受信部12とマイクロ波評価部13とを有する。マイクロ波送信部11は、ベルトコンベヤ3上の被測定物Sに送信マイクロ波を照射する。マイクロ波受信部12は、被測定物Sを透過した送信マイクロ波を受信マイクロ波として受信する。マイクロ波評価部13は、送信マイクロ波と受信マイクロ波との位相差、及び、減衰率を求める。
【0013】
マイクロ波送信部11とマイクロ波受信部12とは、それぞれ例えばアンテナからなっており、被測定物Sを挟んで互いに対向する位置に位置決めされている。マイクロ波の波長、及び、マイクロ波送信部11とマイクロ波受信部12との間の距離等は、被測定物Sの種類(石炭の銘柄)に応じて適宜設定することができる。マイクロ波評価部13は、例えばコンピュータ等のハードウェア資源からなる。マイクロ波評価部13は、ケーブルを介してマイクロ波送信部11、及び、マイクロ波受信部12にそれぞれ接続され、マイクロ波送信部11、及び、マイクロ波受信部12の動作を制御する。具体的には、マイクロ波評価部13は、マイクロ波送信部11から所定のエネルギー、及び、所定の位相の送信マイクロ波を送信させる。またそのときに、マイクロ波受信部12によって受信された受信マイクロ波の位相、及び、エネルギーを取得する。そして、マイクロ波評価部13は、送信マイクロ波と受信マイクロ波との位相差、及び、減衰率を算出する。
【0014】
嵩密度算出部20は、例えばコンピュータ等のハードウェア資源からなる。嵩密度算出部20は、ベルトコンベヤ3への被測定物Sの供給量と、ベルトコンベヤ3による被測定物Sの運搬速度と、ベルトコンベヤ3上の被測定物Sの層厚とを取得し、それらに基づいて被測定物Sの嵩密度を算出する。嵩密度算出部20は、例えば、ベルトコンベヤ3上に被測定物Sを供給する切出装置2から被測定物Sの供給量を取得する。また、嵩密度算出部20は、例えば、ベルトコンベヤ3を制御する運搬制御装置から被測定物Sの運搬速度を取得する。上述したベルトコンベヤ3による被測定物Sの運搬速度が、本実施形態における被測定物の移動速度に相当する。
【0015】
ベルトコンベヤ3上の被測定物Sの層厚は、層厚測定器21によって測定される。層厚測定器21は、被測定物Sの上部であって例えばベルトコンベヤ3におけるマイクロ波送信部11、及び、マイクロ波受信部12よりも上流側に設置されている。つまり、ベルトコンベヤ3による被測定物Sの運搬方向で上流側から切出装置2、層厚測定器21、マイクロ波送信部11の順に設置されている。層厚測定器21は、ベルトコンベヤ3上の被測定物Sに対してその上方から超音波又はレーザー等を照射することで、層厚測定器21から被測定物Sまでの距離を非接触で測定する。具体的には、層厚測定器21には、ベルトコンベヤ3までの距離が記憶されている。そして、層厚測定器21は、層厚測定器21からベルトコンベヤ3までの距離と層厚測定器21から被測定物Sまでの距離とを用いて、ベルトコンベヤ3上の被測定物Sの層厚を算出する。
【0016】
嵩密度算出部20は、被測定物Sの単位時間当たりの切出量M(kg/s)と、ベルトコンベヤ3による被測定物Sの運搬速度V(m/s)と、被測定物Sの層厚D(m)と、ベルトコンベヤ3の幅Wcb(m)とを用いて、下記式(1)に基づきベルトコンベヤ3の被測定物Sの嵩密度Q(kg/m)を求める。なお、詳細は図示しないが、下記式(1)は、平坦なベルトコンベヤ3上の被測定物Sの嵩密度Q(kg/m)を算出するものである。つまり、ベルトコンベヤ3上の被測定物Sの幅は、ベルトコンベヤ3の幅Wcbとほぼ同程度になっている。
【0017】
Q=M/(V×D×Wcb) ・・・(1)
【0018】
ベルトコンベヤ3が図2に示すような3ロール式の湾曲したベルトコンベヤ3’の場合、被測定物Sの幅は概略層厚D’に比例すると考えられる。概略層厚D’は、ベルトコンベヤ3’の幅方向において被測定物Sの中央部の層厚を意味している。そのため、(1)式の代わりに下記の(1’)式を採用する。
【0019】
Q=M/{V×D’×(α×D’)} ・・・(1’)
【0020】
ただし、αは湾曲したベルトコンベヤ3’の断面形状によって決まる比例係数であり、(α×D’)は湾曲したベルトコンベヤ3’上の被測定物Sの断面を、断面積が等しく高さがD’である長方形に置き換えた場合の等価幅である。以降、被測定物の層厚Dと概略層厚D’を区別せず層厚Dとして用いる。
【0021】
含水率算出部30は、例えばコンピュータ等のハードウェア資源からなっており、マイクロ波評価部13により測定された位相差、及び、減衰率と、嵩密度算出部20により算出された嵩密度Qとを用いて、被測定物Sの含水率を算出する。ここで、含水率算出部30は、被測定物Sの層厚をD(m)、位相差をφ(deg)、減衰率をA(dB)、嵩密度をQ(kg/m)としたとき、下記式(2)により被測定物Sの含水率W(質量%)を算出する。
【0022】
W=(Kφ×φ+K×A)/(Q×D)+K ・・・(2)
【0023】
式(2)のKφ、K、及び、Kは係数であって、被測定物Sの種類(石炭の銘柄)、マイクロ波送信部11、及び、マイクロ波受信部12の距離、ベルトコンベヤ3の材質及びベルトコンベヤ3の厚さ等に応じて予め設定される。これにより、被測定物Sの層厚Dが大きく変動する場合であっても、ベルトコンベヤ3から被測定物Sを落下させることなく確実に被測定物Sの含水率Wを測定することができる。なお、上記のKφ、K、及び、Kは、予め含水率を測定してある石炭のサンプルに対して、JIS分析水分と位相差φ、減衰率A(dB)、嵩密度Qなどを複数回(変数と同じ数の3点以上)、測定しておくことによって、予め決定される。
【0024】
図1を参照して本発明の含水率測定方法の好ましい実施形態の作用について説明する。まず、被測定物Sが切出装置2からベルトコンベヤ3上に切り出され、例えば調湿機へ向かって運搬される。このとき、嵩密度算出部20において、ベルトコンベヤ3への被測定物Sの供給量Mと、ベルトコンベヤ3による被測定物S運搬速度Vとが随時取得される。さらに、被測定物Sが層厚測定器21の位置まで運搬されたとき、層厚測定器21によってベルトコンベヤ3上の被測定物Sの層厚Dが測定される。そして、被測定物Sの供給量(切出量)Mとベルトコンベヤ3による被測定物Sの運搬速度Vと層厚Dとベルトコンベヤ3の幅Wcbとに基づいて、ベルトコンベヤ3での被測定物Sの嵩密度Qが算出される(嵩密度算出工程)。
【0025】
本実施形態では、ベルトコンベヤ3による被測定物Sの運搬方向で切出装置2の下流側に層厚測定器21が位置している。そのため、ベルトコンベヤ3上に、切出装置2によって被測定物Sが供給された時点と、層厚測定器21によってベルトコンベヤ3上の被測定物Sの層厚Dを測定した時点との間には、タイムラグがある。したがって、上述した各時点、タイムラグ、および、ベルトコンベヤ3による被測定物Sの運搬速度Vなどがトラッキング情報として嵩密度算出部20に入力される。そして、トラッキング情報に基づいて、嵩密度算出部20で算出される被測定物Sの嵩密度Qが補正される。あるいは、上述したタイムラグを考慮して層厚測定器21によってベルトコンベヤ3上の被測定物Sの層厚Dが測定され、その測定値が嵩密度算出部20に入力される。
【0026】
次に、嵩密度Qが測定されたベルトコンベヤ3上の被測定物Sに、マイクロ波送信部11によって送信マイクロ波を照射し、被測定物Sを透過した送信マイクロ波をマイクロ波受信部12によって受信マイクロ波として受信する。そして、送信マイクロ波と前記受信マイクロ波との位相差φ、及び、減衰率Aを求める(マイクロ波測定工程)。その後、含水率算出部30において、マイクロ波評価部13により測定された位相差φ、及び、減衰率Aと、嵩密度算出部20により算出された嵩密度Qとを用いて、上記式(2)により被測定物Sの含水率Wが算出される(含水率算出工程)。
【0027】
ベルトコンベヤ3による被測定物Sの運搬方向で切出装置2や層厚測定器21の下流側にマイクロ波送信部11、及び、マイクロ波受信部12が位置している。そのため、層厚測定器21によってベルトコンベヤ3上の被測定物Sの層厚Dを測定した時点と、マイクロ波送信部11、及び、マイクロ波受信部12によって送信マイクロ波を送受信した時点との間には、タイムラグがある。したがって、上述した各時点、タイムラグ、および、ベルトコンベヤ3による被測定物Sの運搬速度Vなどがトラッキング情報として含水率算出部30に入力される。そして、トラッキング情報に基づいて、含水率算出部30で算出される被測定物Sの含水率Wが補正される。あるいは、含水率算出部30では、上述したタイムラグを考慮して被測定物Sにマイクロ波送信部11から送信マイクロ波を送信して含水率Wを算出する。
【0028】
上記本実施形態によれば、各トラッキング情報、及び、非接触で測定したベルトコンベヤ3上の被測定物Sの層厚Dなどに基づいて、リアルタイムで被測定物Sの嵩密度Qを算出することができる。そして、測定した嵩密度Qに基づいて含水率Wを算出あるいは測定することができる。そのため、物理的に被測定物Sの嵩密度Qを一定にする処理を行う必要がない。つまり、本実施形態に係る含水率測定方法及び含水率測定装置1によれば、ベルトコンベヤ3上の被測定物Sの層厚Dが薄い場合であっても、確実にかつ精度よく含水率Wを測定することができる。具体的には、上述した特許文献1に記載の方法では、ベルトコンベヤ上に載置された石炭の層厚が薄いことによって、当該石炭の上端部がスクレーパーに接触しない場合には、嵩密度を均一にできない。そのため、精度よく、石炭の含水率の測定を行うことができない可能性がある。しかしながら、本実施形態に係る含水率測定方法及び含水率測定装置1では、被測定物Sの層厚Dによらずに、含水率Wの測定を精度よく行うことができる。また、本実施形態に係る含水率測定方法及び含水率測定装置1では、スクレーパーを設ける必要がないため、スクレーパーに石炭が衝突することがない。そのため、被測定物Sがベルトコンベヤ3上から落下することなく、あるいは、被測定物Sの落下を抑制することができ、その状態で連続的に高精度な含水率測定結果を得ることができる。その後、ベルトコンベヤ3によって図示しない調湿機に石炭が運搬される。そして、調湿機において、図1に示す含水率測定装置1によって測定された含水率に基づいて、石炭の含水率が設定範囲内に収まるように乾燥される。こうして乾燥された石炭が図示しないコークス炉に投入されて、乾留されることによってコークスが製造される。なお、上述したコークスの製造方法が本実施形態におけるコークスの製造方法に相当する。
【実施例
【0029】
図1の含水率測定装置1によって測定された含水率の精度を確認するために行った実施例について説明する。実施例では、運搬速度3m/sのベルトコンベヤ3上に約6kgの石炭を切出した状態を模擬した測定装置を使用して石炭の含水率の測定を行った。具体的には、30cm幅の容器を用意し、容器をベルトコンベヤ3の代わりとなる廃材上に設置した。その後、切出装置2を模擬した装置を用いて容器内に6kgの石炭を装入し、層厚測定器21によって容器の底面までの距離と容器4隅の石炭の表面までの距離とを測定した。容器4隅の石炭の層厚を算出し、4隅の層厚の平均値を全体の層厚とした。そして、運搬速度と層厚と重量とを用いて嵩密度算出部20により嵩密度を算出した。
【0030】
一方、石炭が入った容器と廃材とを挟むようにマイクロ波送信部11、及び、マイクロ波受信部12を配置しマイクロ波の送受信を行った。そして、マイクロ波評価部13によって、位相差と減衰率とを算出した。そして、含水率算出部30において、上記式(2)に基づき含水率Wを算出した。
【0031】
図3は、図1の含水率測定装置の模擬装置を用いて測定した含水率と、JIS分析法によって測定した含水率との関係を示すグラフである。なお、図3においては、被測定物Sとしてコークス製造に用いられる石炭銘柄6種について上記方法により含水率を求めている。図3に示すように、図1の含水率測定装置1で測定された含水率は、JIS分析法で求めた含水率とほぼ一致しており、高精度な含水率測定が可能であることを確認できた。
【0032】
本発明の実施形態は、上記実施形態に限定されず種々の変更を加えることができる。上記実施形態では、ベルトコンベヤ3によって運搬されている被測定物Sに送信マイクロ波を送信して被測定物Sの含水率Wを測定している。しかしながら、これに代えて、所定の載置部の上に被測定物Sをほぼ線状に載置し、当該ほぼ線状に載置された被測定物Sの長さ方向に沿ってマイクロ波送信部11、及び、マイクロ波受信部12を移動させて被測定物Sの含水率を測定するように構成してもよい。つまり、被測定物Sと、マイクロ波送信部11、及び、マイクロ波受信部12とは、相対移動可能に構成されていればよい。このような構成であっても、上述した実施形態とほぼ同様の作用・効果を得ることができる。また、例えば、上記実施形態において、被測定物Sは石炭であって、コークスの製造過程において含水率を測定する場合について例示しているが、これに限定されない。被測定物Sは、例えば、鉄鉱石や焼結鉱の他、水を含むものであればいずれであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 含水率測定装置
2 切出装置
3、3’ ベルトコンベヤ
10 マイクロ波評価ユニット
11 マイクロ波送信部
12 マイクロ波受信部
13 マイクロ波評価部
20 嵩密度算出部
21 層厚測定器
30 含水率算出部
S 被測定物

図1
図2
図3