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特許7704410情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、および、コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/05 20060101AFI20250701BHJP
   G09B 5/02 20060101ALI20250701BHJP
   G09B 19/16 20060101ALI20250701BHJP
   G09B 19/14 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
G09B9/05 F
G09B5/02
G09B19/16
G09B19/14
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021160624
(22)【出願日】2021-09-30
(65)【公開番号】P2023050501
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2024-09-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度 国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム「人がつながる”移動”イノベーション拠点」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島崎 敢
(72)【発明者】
【氏名】青木 宏文
(72)【発明者】
【氏名】新海 裕子
(72)【発明者】
【氏名】稲上 誠
【審査官】石原 豊
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-009717(JP,A)
【文献】特開2011-059269(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030993(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0286268(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0220513(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109215435(CN,A)
【文献】須藤 匠ほか,タブレットPCを用いた運転者教育システムの開発と評価,FIT2014(第13回情報科学技術フォーラム) 講演論文集 第3分冊,2014年,第49-54ページ,特に本文、図を参照。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/05
G09B 5/02
G09B 19/16
G09B 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者が移動する際の前記被験者の特性を測定する情報処理装置であって、
前記被験者による前記移動の速度を選択する速度選択指示を取得する速度選択指示取得部と、
予め設定されたコースを移動する人間の視界を模擬的に表し、かつ、少なくとも1つの目標物を含むシーンを含む動画像である模擬移動画像を、前記速度選択指示に従って前記移動の速度が設定されるような態様で、画像表示部に表示させる速度可変表示処理を実行する表示制御部と、
前記被験者による前記模擬移動画像中の特定の位置を指定する位置指定を受け付ける位置指定取得部と、
前記速度可変表示処理における、前記模擬移動画像の各前記目標物を含むシーンが表示された特定タイミングにおいて前記目標物の位置を正しく指定する前記位置指定があったか否かに相関する指摘結果と、前記速度選択指示の内容と、に基づき、前記特性を測定し、前記特性の測定結果を示す特性情報を出力する特性測定部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記表示制御部は、さらに、前記模擬移動画像を、前記移動の速度が予め設定された基準速度に固定された態様で、前記画像表示部に表示させる速度固定表示処理を実行し、
前記特性測定部は、前記速度固定表示処理における前記指摘結果に基づき、前記特性を測定する、情報処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記表示制御部は、前記速度固定表示処理の実行後に、前記速度可変表示処理を実行し、
前記速度選択指示取得部は、前記速度固定表示処理の実行後、前記速度可変表示処理の実行前に、前記速度選択指示を取得する、情報処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の情報処理装置であって、
前記特性は、前記被験者の目標物知覚能力と、前記被験者の自己制御能力と、を含む、情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の情報処理装置であって、
前記特性は、前記被験者の自己評価能力を含み、
前記情報処理装置は、さらに、前記被験者による前記指摘結果の自己評価を取得する自己評価取得部を備え、
前記特性測定部は、前記自己評価に基づき、前記特性を測定する、情報処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理装置であって、
前記特性測定部は、前記自己評価と実際の前記指摘結果との差分に基づき、前記被験者の前記自己評価能力を判定する、情報処理装置。
【請求項7】
請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記速度選択指示取得部は、前記速度可変表示処理中に、前記速度選択指示を取得し、
前記表示制御部は、前記速度可変表示処理中に、前記速度選択指示に従って前記移動の速度を変更する、情報処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の情報処理装置であって、
前記特性は、前記被験者の移動時のリスクを含み、
前記特性測定部は、前記速度可変表示処理中における前記特定タイミングにおいて、前記目標物の位置を正しく指定する前記位置指定が無かったとき、前記移動の速度を低下させる前記速度選択指示があった場合の方が、前記移動の速度を低下させる前記速度選択指示が無かった場合より、前記リスクが低いと判定する、情報処理装置。
【請求項9】
請求項7に記載の情報処理装置であって、
前記特性は、前記被験者の移動時のリスクを含み、
前記特性測定部は、前記速度固定表示処理中における前記特定タイミングにおいて、前記目標物の位置を正しく指定する前記位置指定が無く、かつ、前記速度可変表示処理中における前記特定タイミングにおいて、前記目標物の位置を正しく指定する前記位置指定が無かったとき、前記移動の速度を低下させる前記速度選択指示があった場合の方が、前記移動の速度を低下させる前記速度選択指示が無かった場合より、前記リスクが低いと判定する、情報処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の情報処理装置であって、
前記特性測定部は、前記速度固定表示処理中における前記特定タイミングにおいて、前記目標物の位置を正しく指定する前記位置指定が無く、かつ、前記速度可変表示処理中における前記特定タイミングにおいて、前記目標物の位置を正しく指定する前記位置指定があったとき、前記移動の速度を低下させる前記速度選択指示があった場合の方が、前記移動の速度を低下させる前記速度選択指示が無かった場合より、前記リスクが低いと判定する、情報処理装置。
【請求項11】
請求項7から請求項10までのいずれか一項に記載の情報処理装置であって、
前記表示制御部は、前記速度固定表示処理の実行後に、前記速度可変表示処理を実行する、情報処理装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の情報処理装置であって、
前記模擬移動画像は、顕在リスクを表す前記目標物と、潜在リスクを表す前記目標物と、を含み、
前記特性は、前記被験者の移動時のリスクを含み、
前記特性測定部は、前記顕在リスクを表す前記目標物を含むシーンが表示された前記特定タイミングにおける前記指摘結果に基づき、視野欠損を原因とする前記リスクを測定し、前記潜在リスクを表す前記目標物を含むシーンが表示された前記特定タイミングにおける前記指摘結果に基づき、認知機能低下を原因とする前記リスクを測定する、情報処理装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の情報処理装置であって、
前記模擬移動画像は、車両を運転して前記コース上を移動する人間の視界を模擬的に表す動画像である、情報処理装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載の情報処理装置であって、さらに、
前記画像表示部を備える、情報処理装置。
【請求項15】
請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載の情報処理装置と、
前記画像表示部としての画像表示装置と、
を備える、情報処理システム。
【請求項16】
被験者が移動する際の前記被験者の特性を測定する情報処理方法であって、
前記被験者による前記移動の速度を選択する速度選択指示を取得する工程と、
予め設定されたコースを移動する人間の視界を模擬的に表し、かつ、少なくとも1つの目標物を含むシーンを含む動画像である模擬移動画像を、前記速度選択指示に従って前記移動の速度が設定されるような態様で、画像表示部に表示させる速度可変表示処理を実行する工程と、
前記被験者による前記模擬移動画像中の特定の位置を指定する位置指定を受け付ける工程と、
前記速度可変表示処理における、前記模擬移動画像の各前記目標物を含むシーンが表示された特定タイミングにおいて前記目標物の位置を正しく指定する前記位置指定があったか否かに相関する指摘結果と、前記速度選択指示の内容と、に基づき、前記特性を測定し、前記特性の測定結果を示す特性情報を出力する工程と、
を備える、情報処理方法。
【請求項17】
被験者が移動する際の前記被験者の特性を測定するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
前記被験者による前記移動の速度を選択する速度選択指示を取得する処理と、
予め設定されたコースを移動する人間の視界を模擬的に表し、かつ、少なくとも1つの目標物を含むシーンを含む動画像である模擬移動画像を、前記速度選択指示に従って前記移動の速度が設定されるような態様で、画像表示部に表示させる速度可変表示処理と、
前記被験者による前記模擬移動画像中の特定の位置を指定する位置指定を受け付ける処理と、
前記速度可変表示処理における、前記模擬移動画像の各前記目標物を含むシーンが表示された特定タイミングにおいて前記目標物の位置を正しく指定する前記位置指定があったか否かに相関する指摘結果と、前記速度選択指示の内容と、に基づき、前記特性を測定し、前記特性の測定結果を示す特性情報を出力する処理と、
を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、被験者が移動する際の被験者の特性を測定する情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者が自動車を運転して道路を移動する際の該運転者の特性(例えば、ハザード等の目標物知覚能力、自己評価能力、自己制御能力、リスクテイキング傾向、リスクの高低等)を適切に測定・評価することは有用である。例えば、運転免許証の発行時や更新時に、そのような運転時の特性測定が行われ、該特性測定の結果に基づき運転免許証の発行や更新の可否が判断されたり、該特性測定の結果に基づき適切な研修や訓練が行われたりすれば、運転者の平均的なリスクを低減することができ、ひいては交通事故の予防につながる。特に、高齢者は、認知機能が低下していることがあり、また、高齢者や緑内障等の眼病を発症した者は、視野が狭くなったり欠損したりすることがあるため、運転時のリスクが高くなる傾向にあり、そのような者を対象として運転時の特性を測定することは極めて有用である。
【0003】
従来、運転時の運転者の特性の1つであるリスクを評価する方法として、画像表示装置(液晶モニタやプロジェクタ)を用いて、運転者の視界を模擬的に表す動画像を被験者の正面に表示し、該動画像に含まれるハザード(自動車、自転車、歩行者等)を認識した場合に口頭やボタン操作等により被験者に回答させるテストを行い、該テストの結果に基づき被験者の運転時のリスクを評価する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】多田 昌裕、外5名、「高速道路における高齢運転者のハザード知覚特性分析」、交通工学論文集、平成28年2月、第2巻、第2号、p.A_75-A_84
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実際の自動車の運転時には、認知機能の低下や視野狭窄・欠損等を原因とするリスクの増大を、自動車の走行速度を落とすという行動により補償することも可能である。上記従来の技術では、テスト中に被験者が自動車の走行速度を低下させる操作(指示)を行うことができないため、そのような補償行動を踏まえたリスク評価を行うことができず、運転者の特性測定の適切性の点で向上の余地がある。
【0006】
なお、このような課題は、自動車を運転する際の運転者の特性を測定する場合に限られず、他の種類の車両(自転車等)を運転する際の運転者の特性を測定する場合や、徒歩で移動する際の歩行者の特性を測定する場合にも共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される情報処理装置は、被験者が移動する際の前記被験者の特性を測定する情報処理装置であって、速度選択指示取得部と、表示制御部と、位置指定取得部と、特性測定部とを備える。速度選択指示取得部は、前記被験者による前記移動の速度を選択する速度選択指示を取得する。表示制御部は、予め設定されたコースを移動する人間の視界を模擬的に表し、かつ、少なくとも1つの目標物を含むシーンを含む動画像である模擬移動画像を、前記速度選択指示に従って前記移動の速度が設定されるような態様で、画像表示部に表示させる速度可変表示処理を実行する。位置指定取得部は、前記被験者による前記模擬移動画像中の特定の位置を指定する位置指定を受け付ける。特性測定部は、前記速度可変表示処理における、前記模擬移動画像の各前記目標物を含むシーンが表示された特定タイミングにおいて前記目標物の位置を正しく指定する前記位置指定があったか否かに相関する指摘結果と、前記速度選択指示の内容と、に基づき、前記特性を測定し、前記特性の測定結果を示す特性情報を出力する。
【0010】
このように本情報処理装置では、表示制御部が、模擬移動画像を、速度選択指示取得部によって取得された速度選択指示に従って移動速度が設定されるような態様で表示させる速度可変表示処理を実行し、特性測定部が、速度可変表示処理中における模擬移動画像の各目標物を含むシーンが表示された特定タイミングにおける目標物の位置を正しく指定する位置指定があったか否かに相関する指摘結果に加えて、速度選択指示の内容に基づき被験者の特性を測定する。そのため、本情報処理装置によれば、移動速度を自ら選択するという行動を踏まえた被験者の特性測定を行うことができ、被験者の特性測定の適切性を向上させることができる。
【0011】
(2)上記情報処理装置において、前記表示制御部は、さらに、前記模擬移動画像を、前記移動の速度が予め設定された基準速度に固定された態様で、前記画像表示部に表示させる速度固定表示処理を実行し、前記特性測定部は、前記速度固定表示処理における前記指摘結果に基づき、前記特性を測定する構成としてもよい。本情報処理装置によれば、移動速度が基準速度に固定された速度固定表示処理と、被験者が移動速度を選択することが可能な速度可変表示処理とのそれぞれにおける指摘結果を比較して被験者の特性を測定することができ、被験者の特性測定の適切性を効果的に向上させることができる。
【0012】
(3)上記情報処理装置において、前記表示制御部は、前記速度固定表示処理の実行後に、前記速度可変表示処理を実行し、前記速度選択指示取得部は、前記速度固定表示処理の実行後、前記速度可変表示処理の実行前に、前記速度選択指示を取得する構成としてもよい。本情報処理装置によれば、被験者は、速度固定表示処理における自らの指摘結果の感触に基づき速度可変表示処理における移動速度を選択することとなり、被験者の自己評価能力や自己制御能力を精度良く把握することができ、被験者の特性測定の適切性を効果的に向上させることができる。
【0013】
(4)上記情報処理装置において、前記特性は、前記被験者の目標物知覚能力と、前記被験者の自己制御能力と、を含む構成としてもよい。本情報処理装置によれば、被験者の目標物知覚能力と、被験者の自己制御能力と、を含む被験者の特性測定の適切性を効果的に向上させることができる。
【0014】
(5)上記情報処理装置において、前記特性は、前記被験者の自己評価能力を含み、前記情報処理装置は、さらに、前記被験者による前記指摘結果の自己評価を取得する自己評価取得部を備え、前記特性測定部は、前記自己評価に基づき、前記特性を測定する構成としてもよい。本情報処理装置によれば、被験者による指摘結果の自己評価に基づき被験者の特性を測定することができ、被験者の自己評価能力を含む被験者の特性測定の適切性を効果的に向上させることができる。
【0015】
(6)上記情報処理装置において、前記特性測定部は、前記自己評価と実際の前記指摘結果との差分に基づき、前記被験者の前記自己評価能力を判定する構成としてもよい。本情報処理装置によれば、被験者の自己評価能力を含む被験者の特性測定の適切性をさらに効果的に向上させることができる。
【0016】
(7)上記情報処理装置において、前記速度選択指示取得部は、前記速度可変表示処理中に、前記速度選択指示を取得し、前記表示制御部は、前記速度可変表示処理中に、前記速度選択指示に従って前記移動の速度を変更する構成としてもよい。本情報処理装置によれば、移動中に移動速度を変更する(加速または減速する)という、より実際の移動環境に近い行動を踏まえた被験者の特性測定を行うことができ、被験者の特性測定の適切性を効果的に向上させることができる。
【0017】
(8)上記情報処理装置において、 前記特性は、前記被験者の移動時のリスクを含み、前記特性測定部は、前記速度可変表示処理中における前記特定タイミングにおいて、前記目標物の位置を正しく指定する前記位置指定が無かったとき、前記移動の速度を低下させる前記速度選択指示があった場合の方が、前記移動の速度を低下させる前記速度選択指示が無かった場合より、前記リスクが低いと判定する構成としてもよい。速度可変表示処理中における上記特定タイミングにおいて目標物を認識できなかったときにおいて、移動の速度を低下させる速度選択指示(以下、「減速指示」ともいう。)があった場合には、自らの認識能力の不足をメタ認知しているために補償行動を取ったものと考えられる一方、減速指示が無かった場合には、自らの認識能力の不足をメタ認知していないために補償行動を取らなかったものと考えられる。本情報処理装置によれば、そのような補償行動を取った場合には、補償行動を取らなかった場合と比較して、リスクがより低いと判定されるため、被験者の特性としてのリスク測定の適切性を向上させることができる。
【0018】
(9)上記情報処理装置において、前記特性は、前記被験者の移動時のリスクを含み、前記特性測定部は、前記速度固定表示処理中における前記特定タイミングにおいて、前記目標物の位置を正しく指定する前記位置指定が無く、かつ、前記速度可変表示処理中における前記特定タイミングにおいて、前記目標物の位置を正しく指定する前記位置指定が無かったとき、前記移動の速度を低下させる前記速度選択指示があった場合の方が、前記移動の速度を低下させる前記速度選択指示が無かった場合より、前記リスクが低いと判定する構成としてもよい。速度固定表示処理中にも速度可変表示処理中にも目標物を認識できなかったときにおいて、減速指示があった場合には、自らの認識能力の不足をメタ認知しているために補償行動を取ったものと考えられる一方、減速指示が無かった場合には、自らの認識能力の不足をメタ認知していないために補償行動を取らなかったものと考えられる。本情報処理装置によれば、そのような補償行動を取った場合には、補償行動を取らなかった場合と比較して、リスクがより低いと判定されるため、被験者の特性としてのリスク測定の適切性を向上させることができる。
【0019】
(10)上記情報処理装置において、前記特性測定部は、前記速度固定表示処理中における前記特定タイミングにおいて、前記目標物の位置を正しく指定する前記位置指定が無く、かつ、前記速度可変表示処理中における前記特定タイミングにおいて、前記目標物の位置を正しく指定する前記位置指定があったとき、前記移動の速度を低下させる前記速度選択指示があった場合の方が、前記移動の速度を低下させる前記速度選択指示が無かった場合より、前記リスクが低いと判定する構成としてもよい。本情報処理装置によれば、速度可変表示処理中には目標物を認識できたとしても、速度固定表示処理中には目標物を認識できなかったときにおいて、減速指示があった場合には、自らの認識能力の不足をメタ認知しているために補償行動を取ったものと考えられる一方、減速指示が無かった場合には、自らの認識能力の不足をメタ認知していないために補償行動を取らなかったものと考えられる。本情報処理装置によれば、そのような補償行動を取った場合には、補償行動を取らなかった場合と比較して、リスクがより低いと判定されるため、被験者の特性としてのリスク測定の適切性を向上させることができる。
【0020】
(11)上記情報処理装置において、前記表示制御部は、前記速度固定表示処理の実行後に、前記速度可変表示処理を実行する構成としてもよい。本情報処理装置によれば、速度固定表示処理において認識できなかった目標物が含まれるシーンについて、その後の速度可変表示処理における前記移動の速度を低下させる速度選択指示の有無により、メタ認知能力の高低を精度良く把握することができ、被験者の特性測定の適切性を効果的に向上させることができる。
【0021】
(12)上記情報処理装置において、前記模擬移動画像は、顕在リスクを表す前記目標物(見えている自動車,自転車,歩行者等)と、潜在リスクを表す前記目標物(死角等)と、を含み、前記特性は、前記被験者の移動時のリスクを含み、前記特性測定部は、前記顕在リスクを表す前記目標物を含むシーンが表示された前記特定タイミングにおける前記指摘結果に基づき、視野欠損を原因とする前記リスクを測定し、前記潜在リスクを表す前記目標物を含むシーンが表示された前記特定タイミングにおける前記指摘結果に基づき、認知機能低下を原因とする前記リスクを測定する構成としてもよい。本情報処理装置によれば、視野欠損を原因とするリスク測定の適切性、および、認知機能低下を原因とするリスク測定の適切性を向上させることができる。
【0022】
(13)上記情報処理装置において、前記模擬移動画像は、車両を運転して前記コース上を移動する人間の視界を模擬的に表す動画像である構成としてもよい。本情報処理装置によれば、被験者が車両を運転して移動する際の被験者の特性測定の適切性を向上させることができる。
【0023】
(14)上記情報処理装置において、さらに、前記画像表示部を備える構成としてもよい。本情報処理装置によれば、特性測定を行うための装置構成をシンプルにすることができる。
【0024】
(15)上記情報処理システムにおいて、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の情報処理装置と、前記画像表示部としての画像表示装置と、を備える構成としてもよい。本情報処理システムによれば、被験者に模擬移動画像を視認させつつ被験者が移動する際の被験者の特性を適切に測定することができるシステムを提供することができる。
【0025】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、それらの方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態における情報処理装置300の概略構成を示す説明図
図2】第1実施形態における情報処理装置300の概略構成を示すブロック図
図3】第1実施形態における被験者特性測定処理の内容を示すフローチャート
図4】第1実施形態における被験者特性測定処理中に表示部352にユーザインタフェースが表示された状態の一例を示す説明図
図5】第1実施形態における被験者特性測定処理中に表示部352にユーザインタフェースが表示された状態の一例を示す説明図
図6】第1実施形態における被験者特性測定処理における特性の測定方法の一例を示す説明図
図7】第1実施形態における被験者特性測定処理における特性の測定方法の一例を示す説明図
図8】第2実施形態における情報処理装置300の概略構成を示す説明図
図9】第2実施形態における被験者特性測定処理の内容を示すフローチャート
図10】第2実施形態における被験者特性測定処理の結果を示す特性情報CHIが表示部352に表示された状態の一例を示す説明図
図11】第3実施形態における被験者特性測定処理の内容を示すフローチャート
図12】第3実施形態における被験者特性測定処理の結果を示す特性情報CHIが表示部352に表示された状態の一例を示す説明図
図13】第4実施形態における情報処理システム10の概略構成を示す説明図
図14】第4実施形態における情報処理システム10の概略構成を示すブロック図
図15】第4実施形態における被験者特性測定処理の内容を示すフローチャート
図16】第4実施形態における被験者特性測定処理の際の被験者EXの状態、および、被験者EXに視認される模擬運転画像SIを模式的に示す説明図
図17】第4実施形態における被験者特性測定処理の際の被験者EXの状態、および、被験者EXに視認される模擬運転画像SIを模式的に示す説明図
図18】第4実施形態における被験者特性測定処理の結果を示す特性情報CHIが表示部152に表示された状態の一例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
A.第1実施形態:
運転者が自動車を運転して道路を移動する際の該運転者の特性を適切に測定することは有用である。例えば、運転免許証の発行時や更新時に、そのような運転時の特性測定が行われ、該特性測定の結果に基づき運転免許証の発行や更新の可否が判断されたり、該特性測定の結果に基づき適切な研修や訓練が行われたりすれば、運転者の平均的なリスクを低減することができ、ひいては交通事故の予防につながる。特に、高齢者は、認知機能が低下していることがあり、また、高齢者や緑内障等の眼病を発症した者は、視野が狭くなったり欠損したりすることがあるため、運転時のリスクが高くなる傾向にある。一方で、実際の自動車の運転時には、認知機能の低下や視野狭窄・欠損等を原因とするリスクの増大を、自動車の走行速度を低下させるという行動により補償することも可能である。そのため、そのような補償行動も踏まえて運転時の特性を測定することは極めて有用である。運転者の運転時の特性の測定を適切に行うために本明細書に開示される技術を用いた例(情報処理装置300に適用した例)を、以下に説明する。
【0028】
A-1.情報処理装置300の構成:
図1は、第1実施形態における情報処理装置300の概略構成を示す説明図であり、図2は、第1実施形態における情報処理装置300の概略構成を示すブロック図である。本実施形態の情報処理装置300は、被験者EXが自動車を運転して道路を移動する際の被験者EXの特性を測定するための装置である。より詳細には、情報処理装置300は、自動車を運転して予め設定されたコースを移動する人間の視界を模擬的に表す模擬運転画像SIを被験者EXに視認させ、被験者EXが模擬運転画像SIに含まれる各ハザード(移動環境中の危険箇所)を認識したか否かを判定するハザード認識テストを行い、該ハザード認識テストの結果に基づき、被験者EXが自動車を運転して道路を移動する際の被験者EXの特性を測定する装置である。
【0029】
図1および図2に示すように、本実施形態では、情報処理装置300としてタブレット型端末が用いられる。情報処理装置300は、制御部310と、記憶部330と、表示部352と、操作入力部358と、インターフェース部359とを備える。これらの各部は、バス390を介して互いに通信可能に接続されている。
【0030】
情報処理装置300の表示部352は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等により構成され、各種の画像や情報を表示する。表示部352は、特許請求の範囲における画像表示部の一例である。操作入力部358は、例えばボタンやマイク等により構成され、管理者や被験者EXの操作や指示を受け付ける。なお、本実施形態では、表示部352が、タッチパネルを有しており、操作入力部358としても機能する。また、インターフェース部359は、例えばLANインターフェースやUSBインターフェース等により構成され、有線または無線により他の装置との通信を行う。
【0031】
情報処理装置300の記憶部330は、例えばROMやRAM、ハードディスクドライブ(HDD)等により構成され、各種のプログラムやデータを記憶したり、各種のプログラムを実行する際の作業領域やデータの一時的な記憶領域として利用されたりする。例えば、記憶部330には、後述する被験者特性測定処理を実行するためのコンピュータプログラムである特性測定プログラムCPが格納されている。特性測定プログラムCPは、例えば、CD-ROMやDVD-ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(図示しない)に格納された状態で提供され、情報処理装置300にインストールすることにより記憶部330に格納される。なお、必ずしも特性測定プログラムCPが情報処理装置300の記憶部330に格納されている必要はなく、特性測定プログラムCPが外部サーバ上に格納され、情報処理装置300がネットワークを介して該特性測定プログラムCPにアクセスすることにより特性測定プログラムCPの機能が情報処理装置300上で実現されてもよい。
【0032】
また、情報処理装置300の記憶部330には、動画像データMIDが格納されている。動画像データMIDは、上述した模擬運転画像SIを表すデータである。模擬運転画像SIは、所定のフレームレート(例えば、70fps)で構成された動画像である。模擬運転画像SIは、自動車を運転して予め設定されたコースを移動する人間の視界を模擬的に表す動画像であり、ハザードHn(n=1,2,・・・)を含むシーンを複数含んでいる。なお、ハザードHnは、例えば、自動車、自転車、歩行者等の顕在ハザードと、見通しの悪い交差点、建物や駐車車両の死角等の潜在ハザードとの少なくとも一方を含む。例えば、模擬運転画像SI中のあるシーンでは、図1に示すように、ハザードH1としての歩行者が、道路の脇から飛び出してくる。なお、本明細書において、模擬運転画像SI中のシーンとは、模擬運転画像SIを構成する1つのフレームにより表される画像であってもよいし、複数の連続したフレームにより表される所定の時間的長さを持った画像であってもよい。また、1つのシーンに含まれるハザードHnの数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。模擬運転画像SIは、特許請求の範囲における模擬移動画像に相当する。
【0033】
また、本実施形態では、動画像データMIDは、後述する被験者EXによる速度選択指示に従って自動車の走行速度が設定されるように、表示される模擬運転画像SIを変化させることが可能なデータである。速度選択指示は、速度を低下させる減速指示と、速度を増加させる加速指示と、現状の速度を維持させる速度維持指示との少なくとも1つである。また、模擬運転画像SIを表す動画像データMIDは、例えば、CGソフトウェアにより作成されるとしてもよいし、現実の道路を自動車で走行中にカメラにより撮像した画像を用いて作成されるとしてもよい。また、動画像データMIDに、自動車の走行音等を模した音声を表す音声データが含まれていてもよい。
【0034】
また、情報処理装置300の記憶部330には、正答情報RAIが格納されている。正答情報RAIは、模擬運転画像SIにおいて、各ハザードHnが含まれるシーンが表示されるタイミング(各ハザードHnが含まれるフレームの表示時刻)と、各ハザードHnの位置(フレーム上のハザードHnを表す画像領域の座標)とを特定する情報である。また、情報処理装置300の記憶部330には、後述する被験者特性測定処理の際に、位置指定情報LDIと、速度選択指示情報VIIと、特性情報CHIと、自己評価情報SEIとが格納される。これらの情報の内容については、後述の被験者特性測定処理の説明に合わせて説明する。
【0035】
情報処理装置300の制御部310は、例えばCPU等により構成され、記憶部330から読み出したコンピュータプログラムを実行することにより、情報処理装置300の動作を制御する。例えば、制御部310は、記憶部330から特性測定プログラムCPを読み出して実行することにより、後述の被験者特性測定処理を実行する。より詳細には、制御部310は、後述の被験者特性測定処理を実行するための、表示制御部312と、自己評価取得部315と、位置指定取得部316と、速度選択指示取得部317と、特性測定部318として機能する。これら各部の機能については、後述の被験者特性測定処理の説明に合わせて説明する。
【0036】
A-2.被験者特性測定処理:
次に、本実施形態の情報処理装置300により実行される被験者特性測定処理について説明する。図3は、第1実施形態における被験者特性測定処理の内容を示すフローチャートである。また、図4および図5は、第1実施形態における被験者特性測定処理中に表示部352にユーザインタフェース(UI)が表示された状態の一例を示す説明図であり、図6および図7は、第1実施形態における被験者特性測定処理における特性の測定方法の一例を示す説明図である。
【0037】
被験者特性測定処理は、被験者EXに模擬運転画像SIを視認させ、被験者EXが模擬運転画像SIに含まれる各ハザードHnを正しく認識したか否かを判定するハザード認識テストを行い、該ハザード認識テストの結果に基づき、被験者EXが自動車を運転して道路を移動する際の被験者EXの特性を測定する処理である。ハザード認識テストの際には、被験者EXは、表示部352に模擬運転画像SIが表示されているときに、自らがハザードHnと考えるものを認識した場合に、表示部352上の該ハザードHnが映っている位置へのタッチ操作を行うように指示される。被験者特性測定処理は、例えば、被験者EXがまたは管理者が情報処理装置300の操作入力部358を介して処理開始の指示を入力したことに応じて開始される。
【0038】
被験者特性測定処理が開始されると、情報処理装置300の表示制御部312は、記憶部330に格納された動画像データMIDに基づき、表示部352に模擬運転画像SIの表示(再生)を開始させる(S110)。この模擬運転画像SIの表示処理を、以下、「速度固定表示処理P1」という。速度固定表示処理P1では、表示制御部312は、模擬運転画像SIを、走行速度Vが予め設定された基準速度V1(例えば、40km/h)に固定された態様で表示させる。すなわち、速度固定表示処理P1では、被験者EXは、速度選択指示による走行速度の変更を行うことができない。
【0039】
速度固定表示処理P1が開始されると同時に、情報処理装置300の位置指定取得部316は、被験者EXによる模擬運転画像SI中の特定の位置を指定する位置指定の受け付けを開始し、該位置指定の履歴を示す位置指定情報LDIの記録を開始する(S120)。位置指定情報LDIは、被験者EXが表示部352へのタッチ操作により指定した模擬運転画像SI上の位置(座標)と、該タッチ操作が行われた時刻(模擬運転画像SI上の時刻)と、を示す情報である。位置指定情報LDIを参照することにより、被験者EXが、模擬運転画像SI中のどのシーンで、どの位置のものをハザードHnであると認識したかを把握することができる。取得・更新された位置指定情報LDIは、記憶部330に格納される。なお、被験者EXによる位置指定(表示部352へのタッチ操作)がなされた際には、制御部310により、該位置指定が受け付けられたことを示す反応処理(例えば、音声の出力、表示部352における何らかの表示等)が実行されてもよい。
【0040】
情報処理装置300の表示制御部312は、速度固定表示処理P1が完了したか否かを監視し(S130)、速度固定表示処理P1が完了したと判定された場合には(S130:YES)、処理はS132に進められる。
【0041】
次に、情報処理装置300の自己評価取得部315は、被験者EXによる指摘率の自己評価SEを取得する(S132)。ここで、指摘率とは、ハザード認識テストにおいて、模擬運転画像SIに含まれるハザードHnの個数に対する、被験者EXが正しく認識したハザードHnの個数の割合を意味する。指摘率は、模擬運転画像SIの各ハザードHnを含むシーンが表示された特定タイミングにおいてハザードHnの位置を正しく指定する位置指定の有無があったか否かに相関する指標値であり、特許請求の範囲における指摘結果の一例である。
【0042】
自己評価取得部315は、例えば図4に示すように、被験者EXによる指摘率の自己評価SEを取得するためのユーザインタフェースUI1を表示部352に表示させる。このユーザインタフェースUI1には、指摘率の自己評価SEを促すメッセージ(例えば、「今の場面では安全運転のために確認すべきポイントをどの程度タッチできましたか?」というメッセージ)に加えて、指摘率の自己評価SEを入力するためのユーザインタフェース(例えば、指摘率0%(左端)から指摘率100%(右端)までの各段階を示す直線と、該直線上をスライド移動し該直線上の1点を指定するためのポインタ)が含まれている。被験者EXは、表示部352へのタッチ操作により、ポインタを指摘率の自己評価SEに対応する位置に移動させる。自己評価取得部315は、該ポインタの位置に基づき、被験者EXによる指摘率の自己評価SEを取得する。取得された自己評価SEは、自己評価SEを示す自己評価情報SEIとして、記憶部330に格納される。
【0043】
次に、情報処理装置300の速度選択指示取得部317は、被験者EXによる走行速度を選択する速度選択指示VIを取得する(S134)。速度選択指示取得部317は、例えば図5に示すように、被験者EXによる走行速度を選択する速度選択指示VIを取得するためのユーザインタフェースUI2を表示部352に表示させる。このユーザインタフェースUI2には、速度選択指示を促すメッセージ(例えば、「今の場面の速度は時速40キロでした。もう一度同じ道を走ります。何キロで走りますか?確認ポイントの指摘率が高く、速度が速いほど高得点となります。できるだけ高得点を狙ってください。」というメッセージ)に加えて、走行速度を選択するためのユーザインタフェース(例えば、時速20キロから60キロまで5キロ間隔で刻まれた9個の速度の選択肢を示すアイコン)が含まれている。被験者EXは、表示部352へのタッチ操作により、所望の走行速度に対応するアイコンを選択することにより、速度選択指示VIを入力する。速度選択指示取得部317は、選択されたアイコンに基づき、被験者EXによる速度選択指示VIを取得する。取得された速度選択指示VIは、速度選択指示VIを示す速度選択指示情報VIIとして、記憶部330に格納される。以下では、速度選択指示VIにより選択された走行速度を、選択速度V2という。なお、上記の速度選択指示を促すメッセージの例は、被験者EXが自己の能力や特性に基づかない過度に低い走行速度を選択して指摘率を高めようとする行動を回避させるためのものであり、被験者EXの真の特性を把握するために有用である。
【0044】
次に、情報処理装置300の表示制御部312は、再度、動画像データMIDに基づき、表示部352に模擬運転画像SIの表示を開始させる(S140)。この模擬運転画像SIの表示処理を、以下、「速度可変表示処理P2」という。速度可変表示処理P2では、表示制御部312は、模擬運転画像SIを、被験者EXによる速度選択指示VIに従って走行速度Vが設定されるような態様で表示させる。すなわち、表示制御部312は、走行速度Vが速度選択指示VIにより選択された選択速度V2となるように、表示部352に模擬運転画像SIを表示させる。なお、一旦、速度可変表示処理P2における模擬運転画像SIの表示が開始された後は、走行速度Vが選択速度V2に固定される。このように、本実施形態では、被験者EXが模擬運転画像SIを視認中に速度選択指示VIのための操作を実行する必要がないため、被験者EXの負荷が軽減され、被験者EXのハザード知覚能力をより正確に測定することができる。
【0045】
速度可変表示処理P2が開始されると、上述した速度固定表示処理P1中と同様に、情報処理装置300の位置指定取得部316が、被験者EXによる模擬運転画像SI中の特定の位置を指定する位置指定の受け付けを開始し、該位置指定の履歴を示す位置指定情報LDIの記録を開始する(S150)。取得・更新された位置指定情報LDIは、記憶部330に格納される。
【0046】
情報処理装置300の表示制御部312は、速度可変表示処理P2が完了したか否かを監視し(S160)、速度可変表示処理P2が完了したと判定された場合には(S160:YES)、処理はS170に進められる。
【0047】
速度固定表示処理P1および速度可変表示処理P2が完了すると、情報処理装置300の特性測定部318は、記憶部330に予め格納された正答情報RAIと、速度固定表示処理P1および速度可変表示処理P2の実行中に作成・更新された位置指定情報LDIと、速度固定表示処理P1と速度可変表示処理P2との間に取得されて記憶部330に格納された自己評価情報SEIおよび速度選択指示情報VIIとを参照して、以下に詳述するように、被験者EXについての運転時の特性測定を開始する。
【0048】
情報処理装置300の特性測定部318は、速度固定表示処理P1における指摘率R1についての判定を行う(S170)。具体的には、特性測定部318は、速度固定表示処理P1における指摘率R1を算出し、該指摘率R1を基準指摘率Rsと比較する。基準指摘率Rsは、安全運転のために必要な指摘率の値として予め設定され、記憶部330に記憶されている。特性測定部318は、速度固定表示処理P1における指摘率R1が基準指摘率Rsを下回る場合(すなわち、指摘率R1が比較的低い場合)には、第1係数iの値を「-1」に設定し、該指摘率R1が基準指摘率Rs以上である場合(すなわち、指摘率R1が比較的高い場合)には、第1係数iの値を「0」に設定する。
【0049】
また、情報処理装置300の特性測定部318は、速度固定表示処理P1における指摘率の自己評価SEについての判定を行う(S180)。具体的には、特性測定部318は、速度固定表示処理P1における実際の指摘率R1と、記憶部330に格納された自己評価情報SEIにより特定される被験者EXによる指摘率の自己評価SEと、の差分(R1-SE)を算出し、該差分(R1-SE)を第1の閾値Th1および第2の閾値Th2(ただし、Th1<Th2)と比較する。特性測定部318は、差分(R1-SE)が第1の閾値Th1を下回る場合(すなわち、指摘率の自己評価SEが実際の指摘率R1に対して過大である場合)には、第2係数jの値を「-1」に設定し、差分(R1-SE)が第1の閾値Th1以上、第2の閾値Th2以下である場合(すなわち、指摘率の自己評価SEが実際の指摘率R1と近い場合)には、第2係数jの値を「0」に設定し、差分(R1-SE)が第2の閾値Th2を上回る場合(すなわち、指摘率の自己評価SEが実際の指摘率R1に対して過小である場合)には、第2係数jの値を「1」に設定する。
【0050】
また、情報処理装置300の特性測定部318は、速度選択についての判定を行う(S190)。具体的には、特性測定部318は、速度選択指示VIにより選択された速度可変表示処理P2における走行速度である選択速度V2を、速度固定表示処理P1における予め設定された走行速度である基準速度V1と比較する。特性測定部318は、選択速度V2が基準速度V1より速い場合(すなわち、被験者EXが速度固定表示処理P1の後の速度選択の場面で、速度固定表示処理P1における走行速度から速度を上げるような選択をした場合)には、第3係数kの値を「1」に設定し、選択速度V2が基準速度V1以下である場合(すなわち、被験者EXが速度固定表示処理P1の後の速度選択の場面で、速度固定表示処理P1における走行速度を維持する、あるいは、該走行速度から速度を下げるような選択をした場合)には、第3係数kの値を「-1」に設定する。
【0051】
また、情報処理装置300の特性測定部318は、速度可変表示処理P2における指摘率R2についての判定を行う(S200)。具体的には、特性測定部318は、速度可変表示処理P2における指摘率R2を算出し、該指摘率R2を上述した基準指摘率Rsと比較する。特性測定部318は、速度可変表示処理P2における指摘率R2が基準指摘率Rsを下回る場合(すなわち、指摘率R2が比較的低い場合)には、第4係数lの値を「-1」に設定し、該指摘率R2が基準指摘率Rs以上である場合(すなわち、指摘率R2が比較的高い場合)には、第4係数lの値を「0」に設定する。なお、本実施形態では、速度可変表示処理P2における指摘率R2についての判定に用いられる基準指摘率Rsの値は、速度固定表示処理P1における指摘率R1についての判定に用いられる基準指摘率Rsの値と同一である。ただし、速度可変表示処理P2における指摘率R2についての判定に用いられる基準指摘率Rsの値を、速度固定表示処理P1における指摘率R1についての判定に用いられる基準指摘率Rsの値と異ならせてもよい。例えば、速度可変表示処理P2では模擬運転画像SIの表示が2回目であることを考慮して、速度可変表示処理P2における指摘率R2についての判定に用いられる基準指摘率Rsの値を、速度固定表示処理P1における指摘率R1についての判定に用いられる基準指摘率Rsの値より高い値に設定してもよい。
【0052】
S170~S200の判定処理は、必ずしも上記の順番で実行される必要はなく、これらの判定処理の実行順序は任意に設定可能である。また、複数の判定処理が並列的に実行されてもよい。
【0053】
次に、情報処理装置300の特性測定部318は、S170~S200の判定処理において設定された第1から第4の係数の組合せ(i,j,k,l)に基づき被験者EXの特性を測定し、被験者EXの特性を示す特性情報CHIを作成し、該特性情報CHIを出力する(S210)。図6および図7に示すように、本実施形態では、第1から第4の係数の値の組合せ(i,j,k,l)のそれぞれについて、互いに異なる特性(24種類の特性)が対応付けられている。特性測定部318は、S170~S200の判定処理において設定された第1から第4の係数の値の組合せ(i,j,k,l)に基づき被験者EXの特性を特定し、特定された特性を示す特性情報CHIの内容を表示部352に表示する。
【0054】
本実施形態において、被験者特性測定処理によって測定される被験者EXの特性は、ハザード知覚能力と、自己評価能力と、自己制御能力と、リスクテイキング傾向とを含んでいる。ハザード知覚能力は、ハザードを発見する能力であり、主として、速度固定表示処理P1および/または速度可変表示処理P2における指摘率R1,R2についての判定(S170,S200)の結果(すなわち、第1の係数iおよび/または第4の係数l)に基づき、例えば6段階(「非常に高い」、「高い」、「やや高い」、「やや低い」、「低い」、「非常に低い」)で判定される。例えば、図6に示す特性種別「1」では、第1の係数iの値が「0」であることから、速度固定表示処理P1における指摘率R1が比較的高く、また、第3係数kの値が「1」であることから、被験者EXが速度可変表示処理P2のための速度(選択速度V2)の選択の場面で速度固定表示処理P1における速度(基準速度V1)から速度を上げるような選択をしており、さらに、第4の係数lの値が「0」であることから、速度を上げた速度可変表示処理P2における指摘率R2も比較的高い。そのため、図6に示す特性種別「1」では、ハザード知覚能力が「非常に高い」と判定される。また、図7に示す特性種別「13」では、第1の係数iの値が「0」であることから、速度固定表示処理P1における指摘率R1が比較的高く、また、第3係数kの値が「1」であることから、被験者EXが速度可変表示処理P2のための速度(選択速度V2)の選択の場面で速度固定表示処理P1における速度(基準速度V1)から速度を上げるような選択をしており、さらに、第4の係数lの値が「-1」であることから、速度を上げた速度可変表示処理P2における指摘率R2は比較的低い。そのため、図7に示す特性種別「13」では、ハザード知覚能力が「やや高い」と判定される。また、図7に示す特性種別「20」では、第1の係数iの値が「-1」であることから、速度固定表示処理P1における指摘率R1が比較的低く、また、第3係数kの値が「-1」であることから、被験者EXが速度可変表示処理P2のための速度(選択速度V2)の選択の場面で速度固定表示処理P1における速度(基準速度V1)から速度を下げる(または速度を維持する)ような選択をしており、さらに、第4の係数lの値が「-1」であることから、速度を下げた速度可変表示処理P2においても指摘率R2は比較的低い。そのため、図7に示す特性種別「20」では、ハザード知覚能力が「かなり低い」と判定される。
【0055】
また、自己評価能力は、自身のハザード知覚能力を客観的にモニタリングする能力(すなわち、メタ認知能力)であり、主として、指摘率の自己評価SEについての判定(S180)の結果(すなわち、第2の係数j)に基づき、例えば3段階(「正確」、「過大評価(自信過剰)」、「過小評価(自信過小)」)で判定される。例えば、図6に示す特性種別「1」では、第2の係数jの値が「0」であることから、指摘率の自己評価SEが実際の指摘率R1と近い。そのため、図6に示す特性種別「1」では、自己評価能力が「正確」と判定される。また、図6に示す特性種別「3」では、第2の係数jの値が「-1」であることから、指摘率の自己評価SEが実際の指摘率R1に対して過大である。そのため、図6に示す特性種別「3」では、自己評価能力が「過大評価(自信過剰)」と判定される。また、図6に示す特性種別「5」では、第2の係数jの値が「1」であることから、指摘率の自己評価SEが実際の指摘率R1に対して過小である。そのため、図6に示す特性種別「5」では、自己評価能力が「過小評価(自信過小)」と判定される。
【0056】
また、自己制御能力は、能力の自己評価を踏まえて移動環境に応じた適切な行動を選択する能力であり、主として、速度固定表示処理P1における指摘率R1についての判定(S170)の結果(すなわち、第1の係数i)と、指摘率の自己評価SEについての判定(S180)の結果(すなわち、第2の係数j)と、速度選択についての判定(S190)の結果(すなわち、第3の係数k)と、に基づき、例えば3段階(「高い」、「標準的」、「低い」)で判定される。例えば、図6に示す特性種別「1」では、第1の係数iの値が「0」であることから、速度固定表示処理P1における指摘率R1が比較的高く、また、第2の係数jの値が「0」であることから、指摘率の自己評価SEが実際の指摘率R1と近く、さらに、第3の係数kの値が「1」であることから、被験者EXが速度可変表示処理P2のための速度(選択速度V2)の選択の場面で速度固定表示処理P1における速度(基準速度V1)から速度を上げるような選択をしている。すなわち、高い指摘率R1と正確な自己評価とに基づき、速度を上げるという行動を選択している。そのため、図6に示す特性種別「1」では、自己制御能力が「標準的」と判定される。また、図6に示す特性種別「5」では、第1の係数iの値が「0」であることから、速度固定表示処理P1における指摘率R1が比較的高く、また、第2の係数jの値が「1」であることから、指摘率の自己評価SEが実際の指摘率R1に対して過小であり、さらに、第3の係数kの値が「1」であることから、被験者EXが速度可変表示処理P2のための速度(選択速度V2)の選択の場面で速度固定表示処理P1における速度(基準速度V1)から速度を上げるような選択をしている。すなわち、実際の指摘率R1に対して自己評価SEが過小であるにもかかわらず、速度を上げるという行動を選択している。そのため、図6に示す特性種別「5」では、自己制御能力が「低い」と判定される。
【0057】
また、リスクテイキング傾向は、リスクを取ることを好む傾向であり、主として、速度選択についての判定(S190)の結果(すなわち、第3の係数k)に基づき、例えば2段階(「高い」、「低い」)で判定される。例えば、図6に示す特性種別「1」では、第3の係数kの値が「1」であることから、被験者EXが速度可変表示処理P2のための速度(選択速度V2)の選択の場面で速度固定表示処理P1における速度(基準速度V1)から速度を上げるような選択をしている。そのため、図6に示す特性種別「1」では、リスクテイキング傾向が「高い」と判定される。また、図6に示す特性種別「2」では、第3の係数kの値が「1」であることから、被験者EXが速度可変表示処理P2のための速度(選択速度V2)の選択の場面で速度固定表示処理P1における速度(基準速度V1)から速度を下げる(または速度を維持する)ような選択をしている。そのため、図6に示す特性種別「2」では、リスクテイキング傾向が「低い」と判定される。
【0058】
情報処理装置300の特性測定部318による特性を示す特性情報CHIの出力態様としては、種々の態様を採用することができる。例えば、被験者EXに割り当てられた特性種別について、図6および図7に例示する特性の各項目の判定結果が表示部352に表示されてもよい。あるいは、特性の各項目の判定結果に基づき設定された特性の説明文(例えば、特性種別「1」について、「あなたは、ハザード認知能力が非常に高く自己評価能力も正確です。リスクテイキング傾向は高いですが標準的な自己制御能力を有しています。」という説明文)が表示部352に表示されてもよい。あるいは、被験者EXに割り当てられた特性種別を示す符号(例えば、特性種別「1」)が表示部352に表示され、該特性種別の内容が別の手段(例えば、別途配布される印刷物)により被験者EXに示されてもよい。また、ハザードの種類(歩行者、自転車、他の車両等)別に指摘率を算出し、指摘率が低いハザードが特定の種類に偏っている場合には、該種類のハザードについての認知能力が低い旨の説明文を表示部352に表示するようにしてもよい。
【0059】
以上により、被験者EXが自動車を運転して道路を移動する際の被験者EXの特性を測定する被験者特性測定処理が完了する。
【0060】
A-3.第1実施形態の効果:
以上説明したように、第1実施形態の情報処理装置300は、被験者EXが自動車を運転して移動する際の被験者EXの特性を測定する装置であり、速度選択指示取得部317と、表示制御部312と、位置指定取得部316と、特性測定部318とを備える。速度選択指示取得部317は、被験者EXによる走行速度を選択する速度選択指示VIを取得する。表示制御部312は、自動車を運転して予め設定されたコースを移動する人間の視界を模擬的に表し、かつ、少なくとも1つのハザードHnを含むシーンを含む動画像である模擬運転画像SIを、速度選択指示VIに従って走行速度が設定されるような態様で、表示部352に表示させる速度可変表示処理P2を実行する。位置指定取得部316は、被験者EXによる模擬運転画像SI中の特定の位置を指定する位置指定を受け付ける。特性測定部318は、速度可変表示処理P2中における、模擬運転画像SIの各ハザードHnを含むシーンが表示された特定タイミングにおいてハザードHnの位置を正しく指定する位置指定があったか否かに相関する指摘率R2と、速度選択指示VIの内容(どのような走行速度が選択されたか)と、に基づき、被験者EXの特性を測定し、特性の測定結果を示す特性情報CHIを出力する。
【0061】
このように、本実施形態の情報処理装置300では、表示制御部312が、模擬運転画像SIを、速度選択指示取得部317によって取得された速度選択指示VIに従って走行速度が設定されるような態様で表示させる速度可変表示処理P2を実行し、特性測定部318が、速度可変表示処理P2中における模擬運転画像SIの各ハザードHnを含むシーンが表示された特定タイミングにおけるハザードHnの位置を正しく指定する位置指定があったか否かに相関する指摘率R2に加えて、速度選択指示VIの内容に基づき被験者EXの特性を測定する。そのため、本実施形態の情報処理装置300によれば、自動車の走行速度を自ら選択するという行動を踏まえた被験者EXの特性測定を行うことができ、被験者EXの特性測定の適切性を向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態の情報処理装置300では、表示制御部312は、さらに、模擬運転画像SIを、走行速度が予め設定された基準速度V1に固定された態様で、表示部352に表示させる速度固定表示処理P1を実行する。また、特性測定部318は、速度可変表示処理P2中における指摘率R2と、速度選択指示VIの内容とに加えて、速度固定表示処理P1における指摘率R1に基づき、被験者EXの特性を測定する。そのため、本実施形態の情報処理装置300によれば、走行速度が基準速度V1に固定された速度固定表示処理P1と、被験者EXが走行速度を選択することが可能な速度可変表示処理P2とのそれぞれにおける指摘率R1,R2を比較して被験者EXの特性を測定することができ、被験者EXの特性測定の適切性を効果的に向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態の情報処理装置300では、表示制御部312は、速度固定表示処理P1の実行後に、速度可変表示処理P2を実行する。また、速度選択指示取得部317は、速度固定表示処理P1の実行後、速度可変表示処理P2の実行前に、速度選択指示VIを取得する。そのため、本実施形態の情報処理装置300によれば、被験者EXは、速度固定表示処理P1における自らのハザード認識の程度の感触(自己評価)に基づき速度可変表示処理P2における走行速度(選択速度V2)を選択することとなり、被験者EXの自己評価能力や自己制御能力を精度良く把握することができ、被験者EXの特性測定の適切性を効果的に向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態の情報処理装置300では、被験者EXの特性は、被験者EXのハザード知覚能力と、被験者EXの自己制御能力と、を含む。上述したように、本実施形態の情報処理装置300では、特性測定部318が、速度可変表示処理P2中における指摘率R2と、速度選択指示VIの内容と、に基づき被験者EXの特性を測定する。そのため、本実施形態の情報処理装置300によれば、被験者EXのハザード知覚能力と、被験者EXの自己制御能力と、を含む被験者EXの特性測定の適切性を効果的に向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態の情報処理装置300では、被験者EXの特性は、被験者EXの自己評価能力を含む。また、情報処理装置300は、さらに、被験者EXによる指摘率の自己評価SEを取得する自己評価取得部315を備える。特性測定部318は、速度可変表示処理P2中における指摘率R2と、速度選択指示VIの内容とに加えて、自己評価SEに基づき、被験者EXの特性を測定する。そのため、本実施形態の情報処理装置300によれば、被験者EXによる指摘率の自己評価SEに基づき被験者EXの特性を測定することができ、被験者EXの自己評価能力を含む被験者EXの特性測定の適切性を効果的に向上させることができる。なお、本実施形態の情報処理装置300では、特性測定部318は、自己評価SEと実際の指摘率との差分に基づき、被験者EXの自己評価能力を判定する。そのため、本実施形態の情報処理装置300によれば、被験者EXの自己評価能力を含む被験者EXの特性測定の適切性をさらに効果的に向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態の情報処理装置300は、模擬運転画像SIを表示する表示部352を備える。そのため、本実施形態の情報処理装置300によれば、被験者EXの特性測定を行うための装置構成をシンプルにすることができる。
【0067】
B.第2実施形態:
B-1.情報処理装置300の構成および被験者特性測定処理:
図8は、第2実施形態における情報処理装置300の概略構成を示す説明図であり、図9は、第2実施形態の情報処理装置300により実行される被験者特性測定処理の内容を示すフローチャートであり、図10は、第2実施形態における被験者特性測定処理の結果を示す特性情報CHIが表示部352に表示された状態の一例を示す説明図である。以下では、第2実施形態における情報処理装置300の構成、および、被験者特性測定処理の内容のうち、上述した第1実施形態と同一のものについては、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0068】
上述した第1実施形態における被験者特性測定処理では、情報処理装置300の速度選択指示取得部317は、速度固定表示処理P1の実行後、速度可変表示処理P2の実行前に、速度選択指示VIを取得する。一方、第2実施形態における被験者特性測定処理では、速度選択指示取得部317は、速度可変表示処理P2中に、速度選択指示VIを取得する。すなわち、被験者EXは、速度可変表示処理P2中に自動車の走行速度を低下させたい場合に、走行速度を低下させる速度選択指示VI(以下、「減速指示」ともいう。)として、表示部352に表示された減速ボタンBB(図8)へのタッチ操作を行うように指示される。
【0069】
また、第2実施形態における被験者特性測定処理では、被験者EXの特性のうち、被験者EXが自動車を運転して道路を移動する際のリスクが測定される。
【0070】
図9に示す第2実施形態における被験者特性測定処理では、図3に示す第1実施形態における被験者特性測定処理のS110からS130までの処理(速度固定表示処理P1に関連する処理)が同様に実行される。
【0071】
速度固定表示処理P1の完了後、情報処理装置300の表示制御部312は、速度可変表示処理P2を開始する(S142)。速度可変表示処理P2では、表示制御部312は、模擬運転画像SIを、被験者EXによる速度選択指示VIに従って走行速度Vが設定されるような態様で表示させる。すなわち、速度選択指示取得部317は、速度可変表示処理P2中に、被験者EXによる減速指示(表示部352に表示された減速ボタンBBへのタッチ操作)が受け付けられたか否かを監視し、そのような減速指示が受け付けられた場合には、表示制御部312は、表示部352に表示される模擬運転画像SIを、走行速度が基準速度V1から低下した自動車の運転席からの視界を模擬的に表す模擬運転画像SIに切り替える。なお、模擬運転画像SIにおける自動車の走行速度は、2段階(基準速度V1および低速度(V1-ΔV))で変更可能としてもよいし、3段階以上あるいは無段階で(連続的に)変更可能としてもよい。
【0072】
速度可変表示処理P2が開始されると、上述した速度固定表示処理P1中と同様に、情報処理装置300の位置指定取得部316が、被験者EXによる模擬運転画像SI中の特定の位置を指定する位置指定の受け付けを開始し、該位置指定の履歴を示す位置指定情報LDIの記録を開始する(S152)。また、このときあわせて、情報処理装置300の速度選択指示取得部317が、被験者EXによる減速指示の受け付けを開始し、該減速指示の履歴を示す速度選択指示情報VIIの記録を開始する。速度選択指示情報VIIは、被験者EXが減速指示を行った時刻(模擬運転画像SI上の時刻)を示す情報である。速度選択指示情報VIIを参照することにより、被験者EXが、模擬運転画像SI中のどのシーンで、減速が必要なほどのリスクを感じたかを把握することができる。取得・更新された位置指定情報LDIおよび速度選択指示情報VIIは、記憶部330に格納される。
【0073】
情報処理装置300の表示制御部312は、速度可変表示処理P2が完了したか否かを監視し(S160)、速度可変表示処理P2が完了したと判定された場合には(S160:YES)、処理はS172に進められる。
【0074】
速度固定表示処理P1および速度可変表示処理P2が完了すると、情報処理装置300の特性測定部318は、記憶部330に予め格納された正答情報RAIと、速度固定表示処理P1および速度可変表示処理P2の実行中に作成・更新された位置指定情報LDIおよび速度選択指示情報VIIとを参照して、以下に詳述するように、被験者EXについての運転時の特性の1つとしてのリスク測定を開始する。
【0075】
まず、情報処理装置300の特性測定部318は、模擬運転画像SI中の1つのハザードHnを選択し(S172)、正答情報RAIおよび位置指定情報LDIを参照して、速度固定表示処理P1中に、選択されたハザードHnを含むシーンが表示された特定のタイミングにおいて、被験者EXによるハザードHnの位置を正しく指定する位置指定(表示部352におけるハザードHnが表示された位置へのタッチ操作)があったか否かを判定する(S174)。この判定は、正答情報RAIを参照して、選択されたハザードHnが含まれるシーンの表示タイミング(該ハザードHnが含まれるフレームの表示時刻)と、該ハザードHnの位置(フレーム上のハザードHnを表す画像領域の座標)とを特定すると共に、位置指定情報LDIを参照して、該表示タイミングにおいて該ハザードHnの位置を指定する位置指定がなされたか否かを判定することにより行われる。S174において、速度固定表示処理P1中にハザードHnの位置を正しく指定する位置指定があったと判定された場合には(S174:YES)、特性測定部318は、被験者EXが該ハザードHnを正しく認識することができた(以下、このケースを「ハザード認識ケースC0」という。)と判定して、後述するリスク値の加算処理を実行せず、処理をS194に進める。図10に示す特性測定結果の例では、ハザードH1,H3,H6,H8のそれぞれについて、被験者EXが速度固定表示処理P1中に該ハザードを正しく認識できたため(正しい位置指定:〇)、リスク値が加算されていない(図10では、リスク値の欄に記号「-」が示されている)。
【0076】
一方、S174において、速度固定表示処理P1中にハザードHnの位置を正しく指定する位置指定が無かったと判定された場合には(S174:NO)、情報処理装置300の特性測定部318は、正答情報RAIおよび位置指定情報LDIを参照して、速度可変表示処理P2中に、選択されたハザードHnを含むシーンが表示された特定のタイミングにおいて、被験者EXによるハザードHnの位置を正しく指定する位置指定があったか否かを判定する(S176)。S176において、速度可変表示処理P2中にハザードHnの位置を正しく指定する位置指定が無かったと判定された場合(S176:NO)、すなわち、被験者EXが速度固定表示処理P1中にも速度可変表示処理P2中にも該ハザードHnを正しく認識できなかった場合には、特性測定部318は、速度選択指示情報VIIを参照して、速度可変表示処理P2中に、該ハザードHnを含むシーンが表示されたタイミングにおいて、被験者EXによる減速指示(表示部352に表示された減速ボタンBBへのタッチ操作)があったか否かを判定する(S182)。
【0077】
S182において、速度可変表示処理P2中にハザードHnを含むシーンが表示された特定のタイミングにおいて、被験者EXによる減速指示があったと判定された場合には(S182:YES)、情報処理装置300の特性測定部318は、被験者EXが速度固定表示処理P1中にも速度可変表示処理P2中にも該ハザードHnを正しく認識できなかったものの、自らの認識能力の不足を認知(メタ認知)して減速指示を行った(以下、このケースを「ハザード不認識-減速ありケースC3」という。)と判定して、第3リスク値Rv3(例えば、Rv3=0.7)を加算する(S188)。図10に示す特性測定結果の例では、ハザードH7,H10のそれぞれについて、被験者EXが速度固定表示処理P1中にも速度可変表示処理P2中にも該ハザードを正しく認識できなかったものの(正しい位置指定:×)、速度可変表示処理P2中の該ハザードを含むシーンにおいて減速指示を行ったため(減速指示:〇)、ハザード不認識-減速ありケースC3に対応付けられた第3リスク値Rv3(例えば、Rv3=0.7)が加算されている。
【0078】
一方、S182において、速度可変表示処理P2中にハザードHnを含むシーンが表示された特定のタイミングにおいて、被験者EXによる減速指示が無かったと判定された場合には(S182:NO)、情報処理装置300の特性測定部318は、被験者EXが速度固定表示処理P1中にも速度可変表示処理P2中にも該ハザードHnを正しく認識できず、かつ、自らの認識能力の不足を認知(メタ認知)しないために減速指示も行わなかった(以下、このケースを「ハザード不認識-減速なしケースC4」という。)と判定して、第4リスク値Rv4(例えば、Rv4=1.0)を加算する(S192)。このハザード不認識-減速なしケースC4に対応付けられた第4リスク値Rv4は、上述したハザード不認識-減速ありケースC3に対応付けられた第3リスク値Rv3より大きい値に設定されている。図10に示す特性測定結果の例では、ハザードH9について、被験者EXが速度固定表示処理P1中にも速度可変表示処理P2中にも該ハザードを正しく認識できず(正しい位置指定:×)、かつ、速度可変表示処理P2中の該ハザードを含むシーンにおいて減速指示も行わなかったため(減速指示:×)、ハザード不認識-減速なしケースC4に対応付けられた第4リスク値Rv4(例えば、Rv4=1.0)が加算されている。
【0079】
また、S176において、速度可変表示処理P2中に被験者EXによるハザードHnの位置を正しく指定する位置指定があったと判定された場合(S176:YES)、すなわち、被験者EXが速度固定表示処理P1中には該ハザードHnを正しく認識できなかったものの、速度可変表示処理P2中には該ハザードHnを正しく認識できた場合には、特性測定部318は、速度選択指示情報VIIを参照して、速度可変表示処理P2中に、該ハザードHnを含むシーンが表示された特定のタイミングにおいて、被験者EXによる減速指示があったか否かを判定する(S178)。
【0080】
S178において、速度可変表示処理P2中にハザードHnを含むシーンが表示された特定のタイミングにおいて、被験者EXによる減速指示があったと判定された場合には(S178:YES)、情報処理装置300の特性測定部318は、被験者EXが速度固定表示処理P1中に正しく認識できなかったハザードHnを速度可変表示処理P2中には正しく認識でき、かつ、自らの認識能力の不足を認知(メタ認知)して減速指示を行った(以下、このケースを「ハザード準認識-減速ありケースC1」という。)と判定して、第1リスク値Rv1(例えば、Rv1=0.3)を加算する(S184)。図10に示す特性測定結果の例では、ハザードH2,H4のそれぞれについて、被験者EXが速度固定表示処理P1中に該ハザードを正しく認識できなかったものの(正しい位置指定:×)、速度可変表示処理P2中には該ハザードを正しく認識でき(正しい位置指定:〇)、かつ、速度可変表示処理P2中の該ハザードを含むシーンにおいて減速指示を行ったため(減速指示:〇)、ハザード準認識-減速ありケースC1に対応付けられた第1リスク値Rv1(例えば、Rv1=0.3)が加算されている。
【0081】
一方、S178において、速度可変表示処理P2中にハザードHnを含むシーンが表示された特定のタイミングにおいて、被験者EXによる減速指示が無かったと判定された場合には(S178:NO)、情報処理装置300の特性測定部318は、被験者EXが速度固定表示処理P1中に正しく認識できなかったハザードHnを速度可変表示処理P2中には正しく認識できたものの、自らの認識能力の不足を認知(メタ認知)しないために減速指示を行わなかった(以下、このケースを「ハザード準認識-減速なしケースC2」という。)と判定して、第2リスク値Rv2(例えば、Rv2=0.5)を加算する(S186)。このハザード準認識-減速なしケースC2に対応付けられた第2リスク値Rv2は、上述したハザード不認識-減速ありケースC3に対応付けられた第3リスク値Rv3よりは小さいものの、ハザード準認識-減速ありケースC1に対応付けられた第1リスク値Rv1より大きい値に設定されている。図10に示す特性測定結果の例では、ハザードH5について、被験者EXが速度固定表示処理P1中に該ハザードを正しく認識できなかったものの(正しい位置指定:×)、速度可変表示処理P2中には該ハザードを正しく認識できたが(正しい位置指定:〇)、速度可変表示処理P2中の該ハザードを含むシーンにおいて減速指示を行わなかったため(減速指示:×)、ハザード準認識-減速なしケースC2に対応付けられた第2リスク値Rv2(例えば、Rv2=0.5)が加算されている。
【0082】
選択された1つのハザードHnについて、上述したS174~S192の処理が完了すると、特性測定部318は、模擬運転画像SIに含まれるすべてのハザードHnが選択されたか否かを判定し(S194)、未選択のハザードHnがあると判定された場合には(S194:NO)、ハザードHnの選択処理(S172)に戻って、それ以降の処理を同様に行う。図10に示す評価結果の例では、ハザードHnが10個あるため、10個のハザードHnの選択が完了したと判定されるまで、各ハザードHnについて、上述したS174~S192の処理が繰り返し実行される。
【0083】
このような処理が繰り返され、S194においてすべてのハザードHnの選択が完了したと判定された場合には(S194:YES)、特性測定部318は、特性測定の結果(例えば、リスク値の合計点)を表す特性情報CHIを作成し、該特性情報CHIを出力する(S212)。例えば、特性測定部318は、図10に示すように、特性情報CHIの内容を表示部352に表示する。以上により、被験者EXが自動車を運転して道路を移動する際のリスクを評価する被験者特性測定処理が完了する。
【0084】
図10に示す特性測定結果の例では、4つのハザード(ハザードH1,H3,H6,H8)について、ハザード認識ケースC0であるとしてリスク値が加算されず、2つのハザード(ハザードH2,H4)について、ハザード準認識-減速ありケースC1であるとして第1リスク値Rv1(例えば、Rv1=0.3)が加算され、1つのハザード(ハザードH5)について、ハザード準認識-減速なしケースC2であるとして第2リスク値Rv2(例えば、Rv2=0.5)が加算され、2つのハザード(ハザードH7,H10)について、ハザード不認識-減速ありケースC3であるとして第3リスク値Rv3(例えば、Rv3=0.7)が加算され、1つのハザード(ハザードH9)について、ハザード不認識-減速なしケースC4であるとして第4リスク値Rv4(例えば、Rv4=1.0)が加算され、リスク値の合計は例えば3.5点(リスク値の最大値は例えば10点)とされている。リスク値が高いほど、被験者EXが自動車を運転して道路を移動する際のリスクが高いと言える。
【0085】
B-2.第2実施形態の効果:
以上説明したように、第2実施形態の情報処理装置300では、第1実施形態の情報処理装置300と同様に、表示制御部312が、模擬運転画像SIを、速度選択指示取得部317によって取得された速度選択指示VIに従って走行速度が設定されるような態様で表示させる速度可変表示処理P2を実行し、特性測定部318が、速度可変表示処理P2中における模擬運転画像SIの各ハザードHnを含むシーンが表示された特定タイミングにおけるハザードHnの位置を正しく指定する位置指定があったか否かに相関する指摘結果に加えて、速度選択指示VIの内容(走行速度を低下させる速度選択指示VIの有無)に基づき被験者EXの特性を測定する。そのため、第2実施形態の情報処理装置300によれば、自動車の走行速度を自ら選択するという行動を踏まえた被験者EXの特性測定を行うことができ、被験者EXの特性測定の適切性を向上させることができる。
【0086】
また、第2実施形態の情報処理装置300では、第1実施形態の情報処理装置300と同様に、表示制御部312は、さらに、模擬運転画像SIを、走行速度が予め設定された基準速度V1に固定された態様で、表示部352に表示させる速度固定表示処理P1を実行し、特性測定部318は、速度可変表示処理P2中における指摘結果と、速度選択指示VIの内容とに加えて、速度固定表示処理P1における指摘結果に基づき、被験者EXの特性を測定する。そのため、第2実施形態の情報処理装置300によれば、走行速度が基準速度V1に固定された速度固定表示処理P1と、被験者EXが走行速度を選択することが可能な速度可変表示処理P2とのそれぞれにおける指摘結果を比較して被験者EXの特性を測定することができ、被験者EXの特性測定の適切性を効果的に向上させることができる。
【0087】
また、第2実施形態の情報処理装置300では、速度選択指示取得部317は、速度可変表示処理P2中に、速度選択指示VIを取得し、表示制御部312は、速度可変表示処理P2中に、速度選択指示VIに従って走行速度を変更する。そのため、第2実施形態の情報処理装置300によれば、自動車の運転中に走行速度を変更する(減速する)という、より実際の運転環境に近い行動を踏まえた被験者EXの特性測定を行うことができ、被験者EXの特性測定の適切性を効果的に向上させることができる。
【0088】
また、第2実施形態の情報処理装置300では、被験者EXの特性は、被験者EXの移動時のリスクを含み、特性測定部318は、速度可変表示処理P2中における上記特定タイミングにおいて、ハザードHnの位置を正しく指定する位置指定が無かったとき、減速指示があった場合の方が、減速指示が無かった場合より、リスクが低いと判定する。速度可変表示処理P2中における上記特定タイミングにおいてハザードHnを認識できなかったときにおいて、減速指示があった場合には、自らの認識能力の不足をメタ認知しているために補償行動を取ったものと考えられる一方、減速指示が無かった場合には、自らの認識能力の不足をメタ認知していないために補償行動を取らなかったものと考えられる。第2実施形態の情報処理装置300によれば、そのような補償行動を取った場合には、補償行動を取らなかった場合と比較して、リスクがより低いと判定されるため、被験者EXの特性としてのリスク測定の適切性を向上させることができる。
【0089】
また、第2実施形態の情報処理装置300では、特性測定部318は、速度固定表示処理P1中における上記特定タイミングにおいて、ハザードHnの位置を正しく指定する位置指定が無く、かつ、速度可変表示処理P2中における上記特定タイミングにおいて、ハザードHnの位置を正しく指定する位置指定が無かったとき、速度可変表示処理P2中に減速指示があった場合の方が、減速指示が無かった場合より、リスクが低いと判定する。速度固定表示処理P1中にも速度可変表示処理P2中にもハザードHnを認識できなかったときにおいて、減速指示があった場合には、自らの認識能力の不足をメタ認知しているために補償行動を取ったものと考えられる一方、減速指示が無かった場合には、自らの認識能力の不足をメタ認知していないために補償行動を取らなかったものと考えられる。第2実施形態の情報処理装置300によれば、そのような補償行動を取った場合には、補償行動を取らなかった場合と比較して、リスクがより低いと判定されるため、被験者EXの特性としてのリスク測定の適切性を向上させることができる。
【0090】
また、第2実施形態の情報処理装置300では、特性測定部318は、速度固定表示処理P1中における上記特定タイミングにおいて、ハザードHnの位置を正しく指定する位置指定が無く、かつ、速度可変表示処理P2中における上記特定タイミングにおいて、ハザードHnの位置を正しく指定する位置指定があったとき、速度可変表示処理P2中に減速指示があった場合の方が、減速指示が無かった場合より、リスクが低いと判定する。速度可変表示処理P2中にはハザードHnを認識できたとしても、速度固定表示処理P1中にはハザードHnを認識できなかったときにおいて、減速指示があった場合には、自らの認識能力の不足をメタ認知しているために補償行動を取ったものと考えられる一方、減速指示が無かった場合には、自らの認識能力の不足をメタ認知していないために補償行動を取らなかったものと考えられる。第2実施形態の情報処理装置300によれば、そのような補償行動を取った場合には、補償行動を取らなかった場合と比較して、リスクがより低いと判定されるため、被験者EXの特性としてのリスク測定の適切性を向上させることができる。
【0091】
また、本実施形態の情報処理装置300では、表示制御部312は、速度固定表示処理P1の実行後に、速度可変表示処理P2を実行する。そのため、本実施形態の情報処理装置300によれば、速度固定表示処理P1において認識できなかったハザードHnが含まれるシーンについて、その後の速度可変表示処理P2における減速指示の有無により、メタ認知能力の高低を精度良く把握することができ、被験者EXの特性としての測定の適切性を効果的に向上させることができる。
【0092】
C.第3実施形態:
図11は、第3実施形態における被験者特性測定処理の内容を示すフローチャートである。また、図12は、第3実施形態における被験者特性測定処理の結果を示す特性情報CHIが表示部352に表示された状態の一例を示す説明図である。第3実施形態の情報処理装置300の構成は、上述した第2実施形態の情報処理装置300の構成と同一である。以下では、第3実施形態における被験者特性測定処理の処理内容のうち、上述した第2実施形態と同一の処理内容については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0093】
上述した第2実施形態における被験者特性測定処理では、模擬運転画像SIの表示(再生)処理として、速度固定表示処理P1および速度可変表示処理P2の2回の処理が実行されるが、第3実施形態における被験者特性測定処理では、速度可変表示処理P2のみが実行され、速度固定表示処理P1は実行されない。すなわち、図11に示す第3実施形態における被験者特性測定処理では、図9に示す第2実施形態における被験者特性測定処理のS110からS130までの処理(速度固定表示処理P1に関連する処理)が実行されず、S142の処理から開始される。また、第3実施形態における被験者特性測定処理では、S172以降の特性(リスク)測定処理において、図9に示すS174の処理(速度固定表示処理P1中のハザード認識有無の判定処理)が実行されず、いきなりS176の処理が実行される。
【0094】
また、第3実施形態における被験者特性測定処理において、速度可変表示処理P2中にハザードHnの位置を正しく指定する位置指定が無かったと判定された場合(S176:NO)の処理は、第2実施形態における被験者特性測定処理と同様である。すなわち、S176において速度可変表示処理P2中にハザードHnの位置を正しく指定する位置指定が無かったと判定された場合には(S176:NO)、特性測定部318は、該ハザードHnを含むシーンが表示されたタイミングにおいて被験者EXによる減速指示があったか否かを判定し(S182)、減速指示があったと判定された場合には(S182:YES)、第3リスク値Rv3(例えば、Rv3=0.7)を加算し(S188)、減速指示が無かったと判定された場合には(S182:NO)、第4リスク値Rv4(例えば、Rv4=1.0)を加算する(S192)。図12に示す特性測定結果の例では、ハザードH7,H10のそれぞれについて、被験者EXが速度可変表示処理P2中に該ハザードを正しく認識できなかったものの(正しい位置指定:×)、該ハザードを含むシーンにおいて減速指示を行ったため(減速指示:〇)、第3リスク値Rv3(例えば、Rv3=0.7)が加算されており、ハザードH9について、被験者EXが速度可変表示処理P2中に該ハザードを正しく認識できず(正しい位置指定:×)、かつ、該ハザードを含むシーンにおいて減速指示も行わなかったため(減速指示:×)、第4リスク値Rv4(例えば、Rv4=1.0)が加算されている。
【0095】
一方、第3実施形態における被験者特性測定処理において、速度可変表示処理P2中にハザードHnの位置を正しく指定する位置指定があったと判定された場合(S176:YES)の処理は、第2実施形態における被験者特性測定処理と異なる。すなわち、この場合には、特性測定部318は、該ハザードHnを含むシーンが表示されたタイミングにおいて被験者EXによる減速指示があったか否かを判定する(S178)。そして、特性測定部318は、減速指示があったと判定された場合には(S178:YES)、被験者EXが自動車の減速を行ったと判定して、リスク値の加算処理を実行せず、処理をS194に進める。図12に示す特性測定結果の例では、ハザードH1,H3,H5,H6,H8のそれぞれについて、被験者EXが速度可変表示処理P2中に、減速指示を行い(減速指示:〇)、該ハザードを正しく認識できたため(正しい位置指定:〇)、リスク値が加算されていない。
【0096】
一方、特性測定部318は、減速指示が無かったと判定された場合には(S178:NO)、該ハザードを正しく認識できたが被験者EXが減速指示を行わなかったと判定して、上述した第3リスク値Rv3や第4リスク値Rv4より小さい第1リスク値Rv1(例えば、Rv1=0.3)を加算する(S184)。図12に示す特性測定結果の例では、ハザードH2,H4のそれぞれについて、被験者EXが速度可変表示処理P2中に、該ハザードを正しく認識できたが(正しい位置指定:〇)、減速指示を行わなかったため(減速指示:×)、第1リスク値Rv1(例えば、Rv1=0.3)が加算されている。以降の処理は、第2実施形態と同様である。
【0097】
以上説明したように、第3実施形態の情報処理装置300においても、表示制御部312が、模擬運転画像SIを、速度選択指示取得部317によって取得された速度選択指示VIに従って走行速度が設定されるような態様で表示させる速度可変表示処理P2を実行し、特性測定部318が、速度可変表示処理P2中における模擬運転画像SIのハザードHnを含むシーンが表示された特定タイミングにおけるハザードHnの位置を正しく指定する位置指定があったか否かに相関する指摘結果に加えて、速度選択指示VIの内容に基づき被験者EXの特性を測定する。そのため、第3実施形態の情報処理装置300によれば、第2実施形態の情報処理装置300と同様に、自動車の走行速度を自ら選択するという行動を踏まえた被験者EXの特性測定を行うことができ、被験者EXの特性測定の適切性を向上させることができる。
【0098】
D.第4実施形態:
D-1.情報処理システム10の構成:
図13は、第4実施形態における情報処理システム10の概略構成を示す説明図であり、図14は、第4実施形態における情報処理システム10の概略構成を示すブロック図である。以下では、第4実施形態の構成のうち、上述した第2実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0099】
第4実施形態の情報処理システム10は、被験者EXが自動車を運転して道路を移動する際の被験者EXの特性を測定するシステムである。より詳細には、情報処理システム10は、自動車を運転して予め設定されたコースを移動する人間の視界を模擬的に表す模擬運転画像SI(右眼用画像SIrおよび左眼用画像SIl)を被験者EXに視認させ、被験者EXが模擬運転画像SIに含まれる各ハザードを認識したか否かを判定するハザード認識テストを行い、該ハザード認識テストの結果に基づき、被験者EXが自動車を運転して道路を移動する際の被験者EXの特性を測定するシステムである。図13および図14に示すように、情報処理システム10は、情報処理装置100と、画像表示装置としての頭部装着型画像表示装置(Head Mounted Display)(以下、「HMD」という。)200とを備える。
【0100】
(情報処理装置100の構成)
図13および図14に示すように、本実施形態では、情報処理装置100としてパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)が用いられる。情報処理装置100は、制御部110と、記憶部130と、表示部152と、操作入力部158と、インターフェース部159とを備える。これらの各部は、バス190を介して互いに通信可能に接続されている。
【0101】
情報処理装置100の表示部152は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等により構成され、各種の画像や情報を表示する。また、情報処理装置100の操作入力部158は、例えばキーボードやマウス、マイク等により構成され、管理者や被験者EXの操作や指示を受け付ける。また、情報処理装置100のインターフェース部159は、例えばLANインターフェースやUSBインターフェース等により構成され、有線または無線により他の装置との通信を行う。本実施形態では、情報処理装置100のインターフェース部159は、ケーブル12を介してHMD200のインターフェース部259(後述)と接続されており、HMD200のインターフェース部259との間で通信を行う。
【0102】
情報処理装置100の記憶部130は、例えばROMやRAM、ハードディスクドライブ(HDD)等により構成され、各種のプログラムやデータを記憶したり、各種のプログラムを実行する際の作業領域やデータの一時的な記憶領域として利用されたりする。例えば、記憶部130には、後述する運転時リスク評価処理を実行するためのコンピュータプログラムである特性測定プログラムCPが格納されている。
【0103】
また、情報処理装置100の記憶部130には、動画像データMIDが格納されている。本実施形態では、後述するように、被験者EXの頭部の動きに応じて被験者EXに視認させる模擬運転画像SIを変化させるため、動画像データMIDは、被験者EXの頭部の各向きに応じた複数の模擬運転画像SIのデータを含んでいる。また、本実施形態では、被験者EXに視認させる模擬運転画像SIを3D画像とするため、模擬運転画像SIは、視差を考慮して作成された右眼用画像SIrと左眼用画像SIlとから構成されている。模擬運転画像SIを表す動画像データMIDは、例えば、3D-CGソフトウェアにより作成されるとしてもよいし、現実の道路を自動車で走行中に全方位カメラにより撮像した画像を用いて作成されるとしてもよい。
【0104】
また、情報処理装置100の記憶部130には、後述する被験者特性測定処理の際に、視点情報VPIと、回答操作情報ANIと、速度選択指示情報VIIと、特性情報CHIとが格納される。これらの情報の内容については、後述の被験者特性測定処理の説明に合わせて説明する。
【0105】
情報処理装置100の制御部110は、例えばCPU等により構成され、記憶部130から読み出したコンピュータプログラムを実行することにより、情報処理装置100の動作を制御する。例えば、制御部110は、記憶部130から特性測定プログラムCPを読み出して実行することにより、後述の被験者特性測定処理を実行する。より詳細には、制御部110は、後述の被験者特性測定処理を実行するための、頭部情報取得部111と、表示制御部112と、視点情報取得部113と、回答操作取得部116と、速度選択指示取得部117と、特性測定部118として機能する。これら各部の機能については、後述の被験者特性測定処理の説明に合わせて説明する。
【0106】
(HMD200の構成)
画像表示装置としてのHMD200は、被験者EXの頭部に装着された状態で、被験者EXに画像を視認させる装置である。本実施形態のHMD200は、被験者EXの両眼を完全に覆う非透過型のヘッドマウントディスプレイであり、バーチャルリアリティ(VR)機能を提供することができる。なお、本明細書において、HMD200が被験者EXに画像を視認させることを、HMD200が(被験者EXに対して)画像を表示するとも表現する。HMD200は、特許請求の範囲における画像表示部の一例である。
【0107】
HMD200は、制御部210と、記憶部230と、右眼用表示実行部251と、左眼用表示実行部252と、視線検出部253と、ヘッドホン254と、頭部動き検出部255と、操作入力部258と、インターフェース部259とを備える。これらの各部は、バス290を介して互いに通信可能に接続されている。
【0108】
HMD200の右眼用表示実行部251は、例えば、光源と、表示素子(デジタルミラーデバイス(DMD)や液晶パネル等)と、光学系とを備えており、模擬運転画像SIを構成する右眼用画像SIrを表す画像光を生成して被験者EXの右眼に導くことにより、被験者EXの右眼に右眼用画像SIrを視認させる。左眼用表示実行部252は、右眼用表示実行部251とは独立して設けられており、右眼用表示実行部251と同様に、例えば、光源と、表示素子と、光学系とを備え、模擬運転画像SIを構成する左眼用画像SIlを表す画像光を生成して被験者EXの左眼に導くことにより、被験者EXの左眼に左眼用画像SIlを視認させる。被験者EXの右眼が右眼用画像SIrを視認し、被験者EXの左眼が左眼用画像SIlを視認した状態では、被験者EXは3D画像である模擬運転画像SIを視認する。
【0109】
HMD200の視線検出部253は、いわゆるアイトラッキング機能を実現するために、被験者EXの視線方向を検出する。例えば、視線検出部253は、非可視光を発する光源と、カメラとを備えており、光源から非可視光を発し、被験者EXの眼により反射された非可視光をカメラにより撮像して画像を生成し、生成された画像を解析することにより、被験者EXの視線方向を検出する。視線検出部253は、所定の頻度(例えば、右眼用表示実行部251および左眼用表示実行部252により表示される動画像のフレームレートと同一の頻度)で、視線方向の検出を繰り返し実行する。なお、視線検出部253は、被験者EXの視線方向を検出することにより、被験者EXが視認している画像上における被験者EXの視点VP(図13参照)の位置を特定することができる。
【0110】
HMD200のヘッドホン254は、被験者EXの耳に装着され、音声を出力するデバイスである。また、HMD200の頭部動き検出部255は、いわゆるヘッドトラッキング機能を実現するために、HMD200の動き(すなわち、被験者EXの頭部の動き)を検出するセンサである。なお、被験者EXの頭部の動きとは、被験者EXの頭部の位置の変化と向きの変化とを含む概念である。また、HMD200の操作入力部258は、例えばボタン等を含み、被験者EXの指示を受け付ける。なお、操作入力部258は、HMD200の筐体(被験者EXの頭部に装着される部分)の内部に配置されてもよいし、筐体に対して信号線を介して接続された別体として構成されてもよい。また、HMD200のインターフェース部259は、例えば、LANインターフェースやUSBインターフェース等により構成され、有線または無線により他の装置との通信を行う。
【0111】
HMD200の記憶部230は、例えばROMやRAM等により構成されており、各種のプログラムやデータを記憶したり、各種のプログラムを実行する際の作業領域やデータの一時的な記憶領域として利用されたりする。また、HMD200の制御部210は、例えばCPU等により構成され、記憶部230から読み出したコンピュータプログラムを実行することにより、HMD200の各部の動作を制御する。
【0112】
D-2.被験者特性測定処理:
次に、第4実施形態の情報処理システム10により実行される被験者特性測定処理について説明する。図15は、第4実施形態における被験者特性測定処理の内容を示すフローチャートである。また、図16および図17は、第4実施形態における被験者特性測定処理の際の被験者EXの状態、および、被験者EXに視認される模擬運転画像SIを模式的に示す説明図である。また、図18は、第4実施形態における被験者特性測定処理の結果を示す特性情報CHIが表示部152に表示された状態の一例を示す説明図である。
【0113】
第4実施形態の被験者特性測定処理では、第2実施形態の被験者特性測定処理と同様に、ハザード認識テストが行われる。ただし、本実施形態では、ハザード認識テストの際に、被験者EXは、自らがハザードHnと考えるものを認識した場合に、操作入力部158の操作(例えば、マウスの左クリック操作)による回答を行うように指示される。また、第2実施形態と同様に、速度可変表示処理P2の際には、被験者EXは、自動車の走行速度を低下させたい場合に、走行速度を低下させる速度選択指示VI(減速指示)として、操作入力部158の操作(例えば、マウスの右クリック操作)を行うように指示される。
【0114】
被験者特性測定処理は、例えば、被験者EXがHMD200を装着した状態において、管理者が情報処理装置100の操作入力部158を介して処理開始の指示を入力したことに応じて開始される。被験者特性測定処理が開始されると、第2実施形態の被験者特性測定処理と同様に、速度固定表示処理P1が開始される(S110)。ただし、第4実施形態では、HMD200が用いられるため、情報処理装置100の表示制御部112は、HMD200に模擬運転画像SIの表示を開始させる。具体的には、表示制御部112は、記憶部130に格納された動画像データMIDをHMD200に供給して、HMD200の右眼用表示実行部251および左眼用表示実行部252に、それぞれ、模擬運転画像SIを構成する右眼用画像SIrおよび左眼用画像SIlを表示させる。
【0115】
なお、本実施形態の情報処理システム10は、いわゆるヘッドトラッキング機能を備えており、被験者EXに視認させる模擬運転画像SIを、被験者EXの頭部の動きに応じて変化させる。すなわち、情報処理装置100の頭部情報取得部111が、HMD200の頭部動き検出部255により検出された被験者EXの頭部の動きを特定する頭部情報をHMD200から取得し、情報処理装置100の表示制御部112が、取得された頭部情報により特定される被験者EXの頭部の動きに応じて、HMD200の右眼用表示実行部251および左眼用表示実行部252に供給される動画像データMIDを選択する。これにより、被験者EXは、自らの頭部の動きに応じて自然に変化する模擬運転画像SIを視認する。例えば、図16のA欄に示すように、被験者EXが正面を向いて、あるシーンの画像を視認している状態から、図16のB欄に示すように、被験者EXが頭部の向きを左側に変えると、被験者EXに視認される画像が、上記シーンから左側にずれたシーンの画像に自然に変化する。これにより、被験者EXは、視覚に関して、実際の運転環境に極めて近い環境に置かれる。なお、右眼用表示実行部251および左眼用表示実行部252に供給される動画像データMIDの選択は、HMD200の制御部210により実行されるとしてもよい。
【0116】
速度固定表示処理P1が開始されると同時に、情報処理装置100の視点情報取得部113は、HMD200の視線検出部253により特定された模擬運転画像SI上における被験者EXの視点VPの位置を特定する視点情報VPIをHMD200から取得する処理を開始する(S122)。また、このときあわせて、情報処理装置100の回答操作取得部116は、被験者EXによる回答操作(操作入力部158の操作)の受け付けを開始し、該操作の履歴を示す回答操作情報ANIの記録を開始する。取得・更新された視点情報VPIおよび回答操作情報ANIは、記憶部130に格納される。
【0117】
視点情報VPIは、模擬運転画像SIの各時刻における被験者EXの視点VPの位置(座標)を特定する情報である。視点情報VPIを参照することにより、模擬運転画像SIの各シーンにおいて、被験者EXがどこを注視しているかを把握することができる。また、回答操作情報ANIは、被験者EXによる回答があった時刻(模擬運転画像SIにおける時刻)を特定する情報である。回答操作情報ANIを参照することにより、被験者EXが模擬運転画像SIにおけるどの時刻において(すなわち、どのシーンにおいて)、自らがハザードHnと考えるものを認識したかを把握することができる。そのため、視点情報VPIおよび回答操作情報ANIを参照することにより、被験者EXが、模擬運転画像SI中のどのシーンで、どの位置のものをハザードHnであると認識したかを把握することができる。このように、視点情報取得部113および回答操作取得部116は、被験者EXによる模擬運転画像SI中の特定の位置を指定する位置指定を受け付ける位置指定取得部として機能する。
【0118】
なお、図13,16,17等には、説明の便宜上、模擬運転画像SIに重ねて視点VPを示すマークが描かれているが、本実施形態では、実際には視点VPを示すマークは画像として表示されることはなく、テスト中の被験者EXが自らの視点VPの位置を意識することがないようにしている。ただし、視点VPを示すマークが表示される(被験者EXに視認される)ようにしてもよい。
【0119】
情報処理装置100の表示制御部112は、速度固定表示処理P1が完了したか否かを監視し(S130)、速度固定表示処理P1が完了したと判定された場合には(S130:YES)、処理はS142に進められる。S142では、第2実施形態の被験者特性測定処理と同様に、速度可変表示処理P2が開始される。速度可変表示処理P2では、第2実施形態の被験者特性測定処理と同様に、表示制御部112は、模擬運転画像SIを、速度選択指示取得部117により被験者EXからの減速指示が受け付けられたことに応じて走行速度が基準速度V1から低速度(V1-ΔV)に低下するような態様で表示させる。ただし、第4実施形態では、速度固定表示処理P1と同様に、表示制御部112が動画像データMIDをHMD200に供給して、HMD200の右眼用表示実行部251および左眼用表示実行部252に、それぞれ、模擬運転画像SIを構成する右眼用画像SIrおよび左眼用画像SIlを表示させる。
【0120】
速度可変表示処理P2が開始されると、上述した速度固定表示処理P1中と同様に、視点情報VPIおよび回答操作情報ANIの記録が開始されるが(S154)、このときあわせて、速度選択指示取得部117が、被験者EXによる減速指示の受け付けを開始し、該減速指示の履歴を示す速度選択指示情報VIIの記録を開始する。取得・更新された視点情報VPI、回答操作情報ANIおよび速度選択指示情報VIIは、記憶部130に格納される。
【0121】
情報処理装置100の表示制御部112は、速度可変表示処理P2が完了したか否かを監視し(S160)、速度可変表示処理P2が完了したと判定された場合には(S160:YES)、処理はS172に進められる。
【0122】
速度固定表示処理P1および速度可変表示処理P2が完了すると、第2実施形態の被験者特性測定処理と同様に、情報処理装置100の特性測定部118が、被験者EXについての運転時の特性測定を開始する(S172~S194)。ただし、第4実施形態では、速度固定表示処理P1および速度可変表示処理P2中に被験者EXが各ハザードHnを正しく認識したか否かの判定(第2実施形態における図9のS174およびS176の処理に相当する処理)が、視点情報VPIおよび回答操作情報ANIを用いて行われる。
【0123】
すなわち、特性測定部118は、正答情報RAIおよび回答操作情報ANIを参照して、ハザードHnを含むシーンが表示された特定のタイミングにおいて被験者EXによる回答操作があったか否かを判定すると共に(S175,S177)、正答情報RAIおよび視点情報VPIを参照して、ハザードHnの位置と、該ハザードHnを含むシーンが表示されたタイミングにおける被験者EXの視点VPの位置とが一致するか否かを判定し(S181,S179)、被験者EXによる回答操作があり(S175,S177:YES)、かつ、被験者EXの視点VPの位置がハザードHnの位置に一致する(S181,S179:YES)と判定された場合に、被験者EXが該ハザードHnを正しく認識したと判定し、それ以外の場合には、被験者EXが該ハザードHnを正しく認識しなかったと判定する。
【0124】
例えば、図18に示す特性測定結果の例では、速度固定表示処理P1中のハザードH1,H3,H6,H8のそれぞれを含むシーンについては、被験者EXによる回答があり(回答操作:〇)かつ、該ハザードHnの位置と被験者EXの視点VPの位置とが一致したため(位置一致:〇)、被験者EXが該ハザードを正しく認識できた(正しい位置指定:〇)と判定されている。一方、速度固定表示処理P1中のハザードH2,H5,H7,H9,H10のそれぞれを含むシーンについては、被験者EXによる回答がなかったため(回答操作:×)、被験者EXが該ハザードを正しく認識できなかった(正しい位置指定:×)と判定されている。また、速度固定表示処理P1中のハザードH4を含むシーンについては、被験者EXによる回答があったものの(回答操作:〇)、該ハザードHnの位置と被験者EXの視点VPの位置とが一致しなかったため(位置一致:×)、被験者EXが該ハザードを正しく認識できなかった(正しい位置指定:×)と判定されている。
【0125】
なお、本明細書において、ハザードHnの位置と被験者EXの視点VPの位置とが一致するとは、両者の位置の一致度合いが所定の閾値以上であることを意味する。すなわち、特性測定部118は、ハザードHnを含むシーンが表示されている時間の長さに対する、被験者EXの視点VPの位置がハザードHnの位置(領域)と一致している時間の長さの割合(すなわち、ハザードHnの位置と被験者EXの視点VPの位置との一致度合い)が、所定の閾値以上である場合に、ハザードHnの位置と被験者EXの視点VPの位置とが一致すると判定する。図17のA欄には、ハザードHnの位置と被験者EXの視点VPの位置とが一致している例が示されており、図17のB欄には、ハザードHnの位置と被験者EXの視点VPの位置とが一致していない例が示されている。
【0126】
すべてのハザードHnについての処理(S172~S194)が完了したら(S194:YES)、特性測定部118は、特性測定の結果を表す特性情報CHIを作成し、該特性情報CHIを出力する(S212)。例えば、特性測定部118は、図18に示すように、特性情報CHIの内容を表示部152に表示する。以上により、被験者EXが自動車を運転して道路を移動する際の被験者EXの特性を測定する被験者特性測定処理が完了する。
【0127】
以上説明したように、第4実施形態の情報処理システム10においても、表示制御部112が、模擬運転画像SIを、速度選択指示取得部117によって速度選択指示VI(減速指示)に従って走行速度が設定されるような態様で表示させる速度可変表示処理P2を実行し、特性測定部118が、速度可変表示処理P2中における模擬運転画像SIのハザードHnを含むシーンが表示された特定タイミングにおけるハザードHnの位置を正しく指定する位置指定があったか否かに相関する指摘結果加えて、速度選択指示VIの内容に基づき被験者EXの特性を測定する。そのため、第4実施形態の情報処理システム10によれば、第2実施形態の情報処理装置300と同様に、自動車の走行速度を自ら選択するという行動を踏まえた被験者EXの特性測定を行うことができ、被験者EXの特性測定の適切性を向上させることができる。
【0128】
E.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0129】
上記各実施形態における情報処理装置300または情報処理システム10の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記第1~第3実施形態では、情報処理装置300としてタブレット型端末が用いられているが、情報処理装置300として他の種類のコンピュータ(例えば、スマートフォンやPC等)が用いられてもよい。また、上記第4実施形態では、情報処理システム10を構成する情報処理装置100としてPCが用いられているが、情報処理装置100として他の種類のコンピュータ(例えば、スマートフォンやタブレット端末等)が用いられてもよい。また、上記第4実施形態では、情報処理システム10を構成する画像表示装置としてHMD200が用いられているが、画像表示装置として他の種類の画像表示装置(例えば、液晶ディスプレイやプロジェクタ等)が用いられてもよい。なお、画像表示装置としてHMD200以外の装置(頭部に装着されない画像表示装置)が用いられる場合には、画像表示装置とは別に、被験者EXの視線方向を検出するセンサ、および、被験者EXの頭部の動きを検出するセンサを用いて、被験者EXの視線方向および被験者EXの頭部の動きを検出すればよい。また、上記第4実施形態において、情報処理システム10を構成する情報処理装置100と画像処理装置とが、一体の装置であるとしてもよい。例えば、情報処理システム10が、上記実施形態の情報処理装置100の有する機能を備えるHMD200から構成されてもよい。
【0130】
また、上記各実施形態における被験者特性測定処理の内容は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記第2実施形態では、被験者EXによる走行速度を低下させる速度選択指示VI(減速指示)が、操作入力部158による所定の操作や表示部352に表示された減速ボタンBBへのタッチ操作により実現されているが、該減速指示が他の手段(例えば、ペダル等のデバイスの操作、音声による操作、ジェスチャーによる操作等)により実現されてもよい。
【0131】
また、上記第1実施形態では、速度可変表示処理P2における走行速度の選択肢が、速度固定表示処理P1における走行速度である基準速度V1より高い速度と、基準速度V1と同じ速度と、基準速度V1より低い速度とを含んでいるが、該選択肢がこれらの内の少なくとも1つを含まないとしてもよい。また、上記第2実施形態では、速度可変表示処理P2において、走行速度を基準速度V1から低下させる速度選択指示VI(減速指示)のみが可能であるが、走行速度を基準速度V1から増加させる速度選択指示VI(加速指示)を実行可能としてもよい。また、上記実施形態において、模擬運転画像SI中に制限速度標識を含むシーンを設け、被験者EXが制限速度標識を認識した(画面上で該標識にタッチした)にもかかわらず、該標識に示された制限速度を超過する速度を選択する速度選択指示VIを実行した場合には、リスクテイキング傾向が高いことに加え、法令遵守態度が低いと判定するようにしてもよい。また、上記実施形態において、被験者EXの特性を示す特性情報CHIを出力する際に、状況に応じた速度を選択することの重要性の説明や、加齢変化に応じた今後のアドバイス等を行ってもよい。また、上記実施形態において、当該被験者の特性測定結果を蓄積しておき、過去の結果との比較についての判定やフィードバック(例えば、「昨年は速度を落とさなくても指摘率が高かったが、今回は昨年より指摘率が下がったため、速度を落とすことを推奨します。」といったメッセージの表示)を実行してもよい。また、上記実施形態において、多数の被験者についての過去の特性測定結果を蓄積しておき、今回の被験者の特性測定結果の相対的な評価(例えば、被験者全体の平均に対する今回の被験者の位置付け)を出力してもよい。
【0132】
また、上記第1実施形態における被験者EXの各特性(ハザード知覚能力と、自己評価能力と、自己制御能力と、リスクテイキング傾向)について設定されている段階や判定基準は、あくまで一例であり、種々変更可能である。また、上記第1実施形態では、被験者EXの特性として、ハザード知覚能力と、自己評価能力と、自己制御能力と、リスクテイキング傾向を用いているが、被験者EXの特性として、これらの内の少なくとも1つが用いられなくてもよいし、これらの特性の他に他の特性が用いられてもよい。
【0133】
また、上記第1実施形態では、速度固定表示処理P1を対象として被験者EXによる指摘率の自己評価SEが取得され、該自己評価SEが被験者EXの特性の測定に用いられているが、速度固定表示処理P1に代えて、あるいは、速度固定表示処理P1と共に、速度可変表示処理P2を対象として被験者EXによる指摘率の自己評価SEが取得され、該自己評価SEが被験者EXの特性の測定に用いられてもよい。
【0134】
また、上記第4実施形態における被験者特性測定処理では、ハザード認識テストの際に、被験者EXが、模擬運転画像SIに含まれる各ハザードHnを認識した場合に、操作入力部158の操作による回答を行うようにしているが、回答の方法は、操作入力部158の操作に限られず、他の方法であってもよい。例えば、ハザードHnを含むシーンが表示されている時間の長さに対する、被験者EXの視点VPの位置がハザードHnの位置(領域)と一致している時間の長さの割合(すなわち、ハザードHnの位置と被験者EXの視点VPの位置との一致度合い)が、所定の閾値以上である場合に、操作入力部158の操作が無くとも、被験者EXがハザードHnを認識したと判定するものとしてもよい。
【0135】
また、上記第1実施形態、第2実施形態および第4実施形態では、速度固定表示処理P1の後に速度可変表示処理P2が行われているが、反対に、速度可変表示処理P2の後に速度固定表示処理P1が行われてもよい。また、上記第4実施形態では、速度固定表示処理P1および速度可変表示処理P2が実行されているが、上記第3実施形態と同様に、速度可変表示処理P2のみが実行されてもよい。また、上記各実施形態において、被験者EXが所定の基準を満たすまで(例えば、指摘率が所定の閾値以上になるまで)、ハザード認識テストが繰り返し実行されるとしてもよい。また、上記各実施形態において、指摘率等に代えて、ハザード認識テストの得点を用いてもよい。なお、ハザード認識テストの得点は、例えば、指摘率に加えて速度選択指示VIにより選択した速度を用い、それらの関数(例えば、指摘率と速度の加算または乗算)により算出される。
【0136】
また、上記各実施形態における被験者特性測定処理では、模擬運転画像SIにハザードHnを含むシーンが含まれており、被験者EXが各ハザードHnを正しく認識したか否かを判定することにより運転時の被験者EXの特性を測定しているが、被験者EXの認識対象である目標物は、ハザードHnに限られず、信号や道路標識等のように、ハザードではないが運転時の被験者EXの特性に影響を与えるものであってもよい。また、該目標物は、歩行者用信号の青点滅のように今後の変化を予測するものであってもよい。すなわち、上記各実施形態における被験者特性測定処理において、そのような目標物を認識できるか否かを判定する目標物認識テストが実行され、該テストの結果に基づき被験者EXの特性としての目標物知覚能力が測定されてもよい。
【0137】
また、上記各実施形態において、模擬運転画像SIに、顕在リスクを表す目標物と、潜在リスクを表す目標物とが含まれており、特性測定部が、顕在リスクを表す目標物を含むシーンが表示された特定のタイミングにおける指摘結果に基づき、視野欠損を原因とするリスクを評価し、潜在リスクを表す目標物を含むシーンが表示された特定のタイミングにおける指摘結果に基づき、認知機能低下を原因とするリスクを評価するものとしてもよい。このようにすれば、視野欠損を原因とするリスクの評価の適切性、および、認知機能低下を原因とするリスクの評価の適切性を向上させることができる。
【0138】
また、上記各実施形態では、特性情報CHIが表示部152,352に表示されることにより出力されるが、特性情報CHIの出力形態は、例えば、音声による出力や印刷装置を用いた印刷による出力のような、他の形態であってもよい。また、上記実施形態において、出力される特性情報CHIの内容は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、特性情報CHIに、指摘率の結果が含まれてもよいし、各ハザードHnについての認識の適否を示す内容は含まれず、最終的なリスク値の合計値(例えば、3.5/10点)のみが含まれるとしてもよい。
【0139】
また、上記各実施形態では、被験者EXが自動車を運転して道路を移動する際の被験者EXの特性の測定が行われるが、本明細書に開示される技術は、被験者EXが他の手段で(例えば、他の種類の車両(自転車等)を運転して、あるいは、徒歩で)移動する際の被験者EXの特性の測定にも同様に適用可能である。
【0140】
また、上記各実施形態において、ハードウェアによって実現されている構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、反対に、ソフトウェアによって実現されている構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0141】
10:情報処理システム 12:ケーブル 100:情報処理装置 110:制御部 111:頭部情報取得部 112:表示制御部 113:視点情報取得部 116:回答操作取得部 117:速度選択指示取得部 118:特性測定部 130:記憶部 152:表示部 158:操作入力部 159:インターフェース部 190:バス 200:HMD 210:制御部 230:記憶部 251:右眼用表示実行部 252:左眼用表示実行部 253:視線検出部 254:ヘッドホン 255:頭部動き検出部 258:操作入力部 259:インターフェース部 290:バス 300:情報処理装置 310:制御部 312:表示制御部 315:自己評価取得部 316:位置指定取得部 317:速度選択指示取得部 318:特性測定部 330:記憶部 352:表示部 358:操作入力部 359:インターフェース部 390:バス
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