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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】溺水検知システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/08 20060101AFI20250701BHJP
【FI】
G08B21/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024189369
(22)【出願日】2024-10-28
【審査請求日】2025-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517080290
【氏名又は名称】株式会社ビーコンテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】林 昌二郎
(72)【発明者】
【氏名】市川 裕一
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-025502(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107672766(CN,A)
【文献】中国実用新案第209729001(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107633658(CN,A)
【文献】中国実用新案第204129915(CN,U)
【文献】中国実用新案第210155808(CN,U)
【文献】中国実用新案第209879700(CN,U)
【文献】特表2005-535041(JP,A)
【文献】米国特許第6127930(US,A)
【文献】特開2016-126735(JP,A)
【文献】特開2023-019323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プールの底に複数敷き詰められる、ワイヤレス給電の送電部を備える送電モジュールと、
前記送電部に接近することで受電するワイヤレス給電の受電部を備え、前記プールの泳者が装着するウエアラブルデバイスと、
前記受電部が受電したことをもって溺水が発生したとして、溺水救助に関する所定の処理を実行する処理実行部と、
を備える溺水検知システム。
【請求項2】
前記処理実行部は、
前記ウエアラブルデバイスに設けられ、前記受電部が受電した電力により発光する第1発光部と、
前記第1発光部の発光状態を連続的に又は周期的に撮像する撮像部と、
前記撮像部による撮像画像の解析により発光の有無を判定する判定部と、
前記判定部において発光有りと判定された場合、溺水救助に関する所定の動作を実行する動作実行部と、
を備える請求項1に記載の溺水検知システム。
【請求項3】
前記処理実行部は、
前記送電モジュールに設けられ、前記受電部が受電したことを検知する受電検知部と、
前記送電モジュールに設けられ、前記受電検知部による受電の検知により発光する第2発光部と、
前記第2発光部の発光状態を連続的に又は周期的に撮像する撮像部と、
前記撮像部による撮像画像の解析により発光の有無を判定する判定部と、
前記判定部において発光有りと判定された場合、溺水救助に関する所定の動作を実行する動作実行部と、
を備える請求項1に記載の溺水検知システム。
【請求項4】
或る前記送電モジュールの前記受電検知部が受電を検知した際、所定の周囲の他の前記送電モジュールの前記第2発光部も発光することを特徴とする請求項3に記載の溺水検知システム。
【請求項5】
前記ウエアラブルデバイスに設けられ、前記受電部が受電した電力により発光する第1発光部を更に備え、
前記撮像部は、前記第1発光部及び前記第2発光部の発光状態を撮像する
ことを特徴とする請求項3に記載の溺水検知システム。
【請求項6】
前記所定の動作は、前記泳者以外の他者に、溺水の発生を五感の少なくともいずれかで感得させる動作であることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の溺水検知システム。
【請求項7】
前記所定の動作は、前記プールから排水させる動作であることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の溺水検知システム。
【請求項8】
前記所定の動作は、前記受電部が受電した際、前記泳者が水面に向けて持ち上げられるように前記プールの底を上昇させる動作であることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の溺水検知システム。
【請求項9】
前記処理実行部は、前記受電部が受電したことで膨らむ浮袋を前記ウエアラブルデバイスに備えることを特徴とする請求項1に記載の溺水検知システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プールにおける溺水事故の速やかな検知を実現する溺水検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水泳中の溺水による死亡のニュースが例年後を絶たない。WHOの報告では、世界の溺水による年間死亡者数は37万人以上に及ぶ。その主な原因としては、監視不足、適切な安全対策の欠如、適切な水泳教育の不足、溺水に対する知識不足や意識の欠如、緊急対応に関する知識や訓練の不足などが挙げられる。
【0003】
最近起きた具体的な事故として、2023年4月22日に、スイミングスクールに参加していた5歳の男の子がプールの底に沈んでいる状態で見つかり、病院に運ばれたものの死亡した例が挙げられる。施設側は監視態勢が不十分だったことを明らかにした。この日は当該男児のほかに18人の小中学生が参加していたが、監視態勢について施設側は、19人の生徒に対し3人の大人のコーチをあてて、プール内やプールサイドから監視していたが、当該男児が沈んだことには誰も気づかなかった。特に子供は、ノーパニック症候群を発症し暴れることなく静かに水中に沈んでいくことが多く、その場合、周囲から気づかれにくい。
【0004】
このような溺水事故を減らすためには、十分な監視や安全対策の導入、並びに緊急時の対応能力の向上などが不可欠である。しかし、人手不足という社会課題が続く現代では、緊急時の対応能力を持った監視者を増やすにも限界があり、また、仮に監視員の増員を行っても、上記のケースのように溺水者を見逃す可能性は否めない。
【0005】
溺水者の見逃しを防ぐ科学的方策として、代表的にはカメラの設置が挙げられる。例えば、非特許文献1に記載のMGインターナショナル・ポセイドン社の自動監視システム「ポセイドン」は、複数の監視カメラをプール上方の天井に配置して、溺れた可能性がある遊泳者を検知し報知するシステムである。
【0006】
また、カメラではなくセンサーを使うしくみもある。非特許文献1に記載のオーウエル社の位置把握システム「nagi」は、電波を発するタグを遊泳者の水泳帽やゴーグルに装着し、タグが水中に沈んで信号が30秒以上途絶えると、溺れた可能性があるとして監視者に報知するシステムである。
【0007】
また、非特許文献2に記載の浅水科技社の「浅水小白」は、子ども用ウェアラブルスマート端末(水泳用ゴーグルや水泳帽に装着可)で、さまざまな溺水のシーンを識別することができ、圧力値や信号によって状況を伝送して、装着者が規則的に水面から顔を出して息継ぎをしているかを推測し、危険な場合はライフセーバーや監視員に光とアラームで報知するシステムである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】朝日新聞デジタル、”水泳帽にセンサー、AIで映像解析・・・プール事故防止に「機械の目」”、[online]、2023年6月17日、[2024年9月24日検索]、インターネット<URL: https://www.asahi.com/articles/ASR6J4SDRR6DOXIE02D.html>
【0009】
【文献】36Kr Japan、”溺水のリスクを事前に警告、ウェアラブル端末で子供の溺水防止”、[online]、2019年7月29日、[2024年9月24日検索]、インターネット<URL: https://36kr.jp/22943/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
「ポセイドン」は日本では20年前に11カ所のプールで導入されたが、検出精度が十分でないにもかかわらず、導入費用が2600万円と高価で、かつ維持費に年間200万円かかることから、現在では導入施設が5カ所に減ったという実態がある。
【0011】
また、「nagi」についても高価で大がかりなため、スイミングスクールや公共・民間のプールが手軽に導入できるものではなく、「浅水小白」は無線伝送技術を使用するため、電波の混線や遮断などのエラーが生じやすく、かつシステムが複雑になりがちである。
【0012】
本発明の目的は、シンプルな構成で低価格かつ導入が容易な溺水検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の溺水検知システムは、プールの底に複数敷き詰められる、ワイヤレス給電の送電部を備える送電モジュールと、送電部に接近することで受電するワイヤレス給電の受電部を備え、プールの泳者が装着するウエアラブルデバイスと、受電部が受電したことをもって溺水が発生したとして、溺水救助に関する所定の処理を実行する処理実行部と、を備える。
【0014】
処理実行部は、ウエアラブルデバイスに設けられ、受電部が受電した電力により発光する第1発光部と、第1発光部の発光状態を連続的に又は周期的に撮像する撮像部と、撮像部による撮像画像の解析により発光の有無を判定する判定部と、判定部において発光有りと判定された場合、溺水救助に関する所定の動作を実行する動作実行部と、を備えてもよい。
【0015】
処理実行部は、送電モジュールに設けられ、受電部が受電したことを検知する受電検知部と、送電モジュールに設けられ、受電検知部による受電の検知により発光する第2発光部と、第2発光部の発光状態を連続的に又は周期的に撮像する撮像部と、撮像部による撮像画像の解析により発光の有無を判定する判定部と、判定部において発光有りと判定された場合、溺水救助に関する所定の動作を実行する動作実行部と、を備えてもよい。
【0016】
或る送電モジュールの受電検知部が受電を検知した際、所定の周囲の他の送電モジュールの第2発光部を更に発光させてもよい。
【0017】
ウエアラブルデバイスに、受電部が受電した電力により発光する第1発光部を更に備え、撮像部が、第1発光部及び第2発光部の発光状態を撮像するようにしてもよい。
【0018】
所定の動作は、泳者以外の他者に、溺水の発生を五感の少なくともいずれかで感得させる動作であってもよい。
【0019】
所定の動作は、プールから排水させる動作であってもよい。
【0020】
所定の動作は、受電部が受電した際、泳者が水面に向けて持ち上げられるようにプールの底を上昇させる動作であってもよい。
【0021】
処理実行部は、受電部が受電したことで膨らむ浮袋をウエアラブルデバイスに備えてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、シンプルな構成で低価格かつ導入が容易な溺水検知システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】溺水検知システム100(処理実行部の第1実施形態)の機能ブロック図である。
図2】プール10の底11への複数の送電モジュール110の配置例を示す図である。
図3】泳者20の溺水によりウエアラブルデバイス120が送電モジュール110に近づくことを説明する図である。
図4】溺水検知システム100(処理実行部の第2実施形態)の機能ブロック図である。
図5】溺水検知システム100(処理実行部の第3実施形態)の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の機能部には同一の符号を付し、一度説明した機能部については適宜その説明を省略する。
【0025】
本発明の溺水検知システム100の機能ブロック図を図1に示す。溺水検知システム100は、送電モジュール110、ウエアラブルデバイス120及び処理実行部130を備える。
【0026】
送電モジュール110は、ワイヤレス給電の送電部111を備え、プール10の底11に複数敷き詰められる。送電モジュール110は、例えば図2に示すようにタイル状に構成してもよい。敷き詰めた送電モジュール110の上にPVCなどのシート12を貼れば、送電モジュール110への浸水を防ぐことができる。
【0027】
送電部111には、図示しない送電用の電源とアンプを接続し送電可能な状態を形成する。アンプの増幅度は、ワイヤレス給電の方式やウエアラブルデバイス120で必要とする電力に応じて設定しておく。
【0028】
ウエアラブルデバイス120は、送電部111に接近することで受電するワイヤレス給電の受電部121を備え、プール10の泳者に装着される。ウエアラブルデバイス120は、例えば、バンド状にして腕に巻けるように構成してもよい。その場合、通常の遊泳中には深い位置に沈まない二の腕などに巻くとよい。また、腕より動きが少ない腰に巻けるように構成したり予め水着に縫い付けたりするなどにより、脱落しにくくしてもよい。
【0029】
ワイヤレス給電の方式は、電磁誘導方式(磁界結合方式、磁界共鳴方式)、電界結合方式など、公知の各種方式を採用することができる。一般に人体の密度は水よりも高いため、溺水者は水底に沈む傾向がある。通常、人間の体重は同体積の水よりも大きいため、溺れてしまうと水の中で体が下に引っ張られ、水底に向かって沈んでいく。図3に示すように、ウエアラブルデバイス120を装着した泳者20が溺れると、送電モジュール110の送電部111とウエアラブルデバイス120の受電部121は、接触又は非常に接近した状態となる。そこで、溺水と判断する所定の距離以下に接近した際に、発光等に必要な電力が送受電されるよう、ワイヤレス給電の方式や送電部111に接続されたアンプの増幅度などを決定するとよい。例えば、電磁誘導方式は給電効率が70~90%と高く、給電距離が数mm~10cm程度、送受電力が数W~数kW程度と本発明に好適である。
【0030】
送電部111及び受電部121は、具体的には採用する方式に応じた構成を採ればよい。例えば、磁界結合方式であれば双方をコイルで構成する。また、泳者20は溺水時に仰向けに沈むことも、うつ伏せに沈むことも有り得るため、受電性を高めるべく、受電部121は、ウエアラブルデバイス120の異なる位置に複数設けるとより望ましい。
【0031】
処理実行部130は、受電部121が受電したことをもって溺水が発生したとして、溺水救助に関する所定の処理を実行する。
【0032】
以下、処理実行部130の実施形態を具体的に説明する。
【0033】
<第1実施形態>
処理実行部130を、第1発光部131、撮像部132、判定部133及び動作実行部134により構成する。図1は機能ブロック図である。
【0034】
第1発光部131は、ウエアラブルデバイス120に設けられる、受電部121が受電した電力により発光する光源である。受電部121の説明で記したように、溺水の体勢はさまざまであるため、視認性を高めるべく、第1発光部131についても、ウエアラブルデバイス120の異なる位置に複数設けるとより望ましい。第1発光部131の発光素子の種類は、受電部121が受電する電力で賄える範囲で任意に決定してよい。例えば、LEDは低電力かつ高輝度であるため、本発明に好適である。
【0035】
第1発光部131のプール10の水中における発光を、外部から肉眼で見逃すことなく監視するのは困難である。そこで、本発明では、第1発光部131の発光状態を撮像して、撮像画像の解析により発光の有無を判定する。
【0036】
撮像部132は、第1発光部131の発光状態を連続的に又は周期的に撮像する。撮像部132は、第1発光部131の発光状態の判定に支障無い程度に撮像できるのであれば、プール10の水中に配置してもよいし外部に配置してもよい。
【0037】
判定部133は、第1発光部131の発光状態の撮像画像を解析して発光の有無を判定する。撮像画像による発光の有無の判定は、画素値の閾値に基づき行ってもよいし、学習用画像を用いて学習された学習済モデルに撮像画像を入力することにより行ってもよい。
【0038】
また、撮像部132及び判定部133としてエッジAI搭載カメラを採用し、第1発光部131からの光と周囲の明光との差異をAIによって画像解析して、光が一定時間(例えば30秒~1分)動かない場合に発光有りと判定してもよい。エッジAI搭載カメラは、クラウドやインターネットを介することなくエッジでAI処理するため、遅延無く即座に判定することができる。
【0039】
動作実行部134は、判定部133において発光有りと判定された場合に、溺水救助に関する所定の動作を実行する。
【0040】
所定の動作は、泳者20以外の他者に、溺水の発生を五感の少なくともいずれかで感得させる動作であってもよい。例えば、溺水が発生した旨を文字などで表示手段に表示する、他者が認識しやすい高強度の照明を点灯や点滅させる、放音手段から音を出す、他者が装着した振動手段を震わせるなどの動作が挙げられる。これにより、他者が溺水発生に気付きやすくすることができる。
【0041】
所定の動作は、プール10から排水させる動作であってもよい。また、受電部121が受電した際に泳者20が水面13に向けて持ち上げられるようにプール10の底11を上昇させる動作であってもよい。これにより、溺水した泳者20を上昇させ、外部に救出することができる。なお、ここでいう底11を上昇させる動作では、底11そのものを上昇させてもよいし、送電モジュール110(シート12)上に網目状の床を更に配置しておき、それを上昇させてもよい。
【0042】
上記それぞれの所定の動作は、複合的に実行させてもよい。
【0043】
なお、泳者20が溺れていないにもかかわらず第1発光部131が発光したときに泳者20自ら発光を停止させるためのボタンやスイッチ等の入力部138を、ウエアラブルデバイス120に設けてもよい。これにより、入力手段に発光停止の指示入力がされることで、発光が停止した状態が撮像部132により撮像され、撮像画像に基づき判定部133により発光無しと判定されることで、動作実行部134の動作が停止される。
【0044】
また、ウエアラブルデバイス120に、振動を検知するピエゾセンサなどのセンサ部139を更に備え、受電部121による受電をトリガに振動の検知を開始し、溺水特有の振動パターンが検知されたことを契機に第1発光部131を発光させるようにしてもよい。例えば、ウエアラブルデバイス120を上腕部に装着することで呼吸による胸部の振動状態を検知し、溺水特有の振動パターンを検知する。これにより、溺水でないケースでの誤検知の発生を低減させることができる。
【0045】
<第2実施形態>
処理実行部130を、受電検知部135、第2発光部136、撮像部132、判定部133及び動作実行部134により構成する。図4に機能ブロック図を示す。
【0046】
受電検知部135は、送電モジュール110に設けられ、受電部121が受電したことを検知する。受電検知部135において受電部121での受電を検知する方法としては、例えば、受電の開始により送電側の負荷が変化することを利用し、送電部111の電流電圧をモニタリングする方法が挙げられる。また、受電部121が受電を契機にフィードバック信号を無線送信し、それを受信する方法が挙げられる。また、送電側のコイルと受電側コイルとが共振している場合、受電により共振周波数が変化することを利用し、共振周波数をモニタリングする方法が挙げられる。
【0047】
第2発光部136は、送電モジュール110に設けられる、受電検知部135による受電の検知により発光する光源である。第2発光部136の発光素子の種類は、送電側で賄える電力の範囲で任意に決定してよい。例えば、LEDは低電力かつ高輝度であるため、本発明に好適である。第2発光部136は、点光源として構成してもよいし、送電モジュール110をタイル状に構成したときは、タイル全体を光らせるように構成してもよい。また、肉眼によっても検知の可能性が高まるように、例えば、HELPなどの文字や位置を示す矢印などで光らせるように構成してもよい。
【0048】
発光時の視認性を高めるため、受電を検知した送電モジュール110の所定の周囲の、他の送電モジュール110の第2発光部136も連動して発光させてもよい。また、ウエアラブルデバイス120に、受電部121が受電した電力により発光する第1発光部131を設け、第2発光部136とともに発光させてもよい。
【0049】
撮像部132は、第2発光部136の発光状態を連続的に又は周期的に撮像する。第1発光部131も発光させる場合には、第1発光部131の発光状態もあわせて撮像する。
【0050】
判定部133及び動作実行部134については、第1実施形態と基本的には同様である。なお、第2実施形態では、どの位置の送電モジュール110の受電検知部135がウエアラブルデバイス120の受電を検知したか、すなわち、どの送電モジュール110の位置に溺水した泳者20が所在するかが特定される。そこで、動作実行部134の所定の動作としてプール10の底11を上昇させる動作をさせる場合、上昇させる底11の範囲を、特定された位置の送電モジュール110を含む所定の範囲に限定してもよい。
【0051】
<第3実施形態>
処理実行部130を、ウエアラブルデバイス120が備える、受電部121が受電したことを契機に浮袋を膨らませる浮袋部137として構成してもよい。図5に機能ブロック図を示す。これにより、溺水した泳者20を浮袋により上昇させることができる。当該構成は、第1実施形態及び第2実施形態の動作実行部134と合わせて実装してもよい。
【0052】
プールにおいて、泳者と溺水者との識別は容易ではなく、溺水を検知しようとするとシステムが大掛かりになりがちであるが、以上説明した本発明の溺水検知システムでは、泳者のプールの底面への水没を契機に光源が発光するというシンプルな構成であるため、低価格にシステムを実現でき、かつ溺水者を光で判別できるため早期発見が可能となる。特に、溺水者等から放たれる光の撮像及び画像解析にエッジAI搭載カメラを適用することで、高精度に溺水の発生を検知することができる。
【0053】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。すなわち、本発明において表現されている技術的思想の範囲内で適宜変更が可能であり、その様な変更や改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含む。
【符号の説明】
【0054】
10 プール
11 底
12 シート
13 水面
20 泳者
100 溺水検知システム
110 送電モジュール
111 送電部
120 ウエアラブルデバイス
121 受電部
130 処理実行部
131 第1発光部
132 撮像部
133 判定部
134 動作実行部
135 受電検知部
136 第2発光部
137 浮袋部
138 入力部
139 センサ部
【要約】
【課題】シンプルな構成で低価格かつ導入が容易な溺水検知システムを提供する。
【解決手段】プールの底に複数敷き詰められる、ワイヤレス給電の送電部を備える送電モジュールと、送電部に接近することで受電するワイヤレス給電の受電部を備え、プールの泳者が装着するウエアラブルデバイスと、受電部が受電したことをもって溺水が発生したとして、溺水救助に関する所定の処理を実行する処理実行部と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5