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特許7704549増幅装置、伝送モジュール、及び、伝送システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】増幅装置、伝送モジュール、及び、伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/564 20130101AFI20250701BHJP
   H03F 1/32 20060101ALI20250701BHJP
   H04B 10/2575 20130101ALI20250701BHJP
【FI】
H04B10/564
H03F1/32
H04B10/2575
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021043655
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143235
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】相葉 孝充
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏訓
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/070835(WO,A1)
【文献】特開2002-122831(JP,A)
【文献】特開2000-354017(JP,A)
【文献】特開2006-217396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
H03F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数が増加すると利得が減衰していく周波数領域を有する伝送経路の前段に配置される増幅装置であって、
前記増幅装置は、前記周波数領域の周波数成分を含む信号を入力し、前記周波数成分の前記伝送経路における減衰量を低減する増幅度で前記信号を増幅し、増幅された前記信号を前記伝送経路に出力し、前記伝送経路における前記信号のSNRの劣化を低減し、
前記増幅度は、前記伝送経路において前記増幅された信号が歪みを発生させない範囲で、前記増幅された信号のノイズ成分の電力が、前記伝送経路におけるノイズの電力よりも大きくなる増幅度である増幅装置。
【請求項2】
前記歪みは、前記伝送経路に使用されるデバイスの非線形特性によって発生する歪みであり、前記信号はミリ波帯以上の周波数を有する搬送波を含む無線信号である請求項1に記載の増幅装置。
【請求項3】
前記歪みは、前記伝送経路に使用されるデバイスのクリッピングによって発生する歪みである請求項1または2に記載の増幅装置。
【請求項4】
前記信号はOFDMによって生成されたOFDM信号であり、前記OFDM信号の少なくも一部のサブキャリア信号が前記周波数領域に含まれる請求項1から3のいずれか一項に記載の増幅装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の増幅装置と、
前記伝送経路における前記周波数領域における歪みが発生する前に減衰指示情報を出力するフィードバック部と、
前記減衰指示情報に対応して、前記増幅装置に入力される前記信号を減衰させる減衰部と、を備える伝送モジュール。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の増幅装置と、
前記増幅装置の後段に配置される送信装置と、
前記送信装置の出力信号を入力する伝送媒体と、
前記伝送媒体の出力信号を入力する受信装置と、を備える伝送システム。
【請求項7】
請求項5に記載の伝送モジュールと、
前記伝送モジュールの後段に配置される送信装置と、
前記送信装置の出力信号を入力する伝送媒体と、
前記伝送媒体の出力信号を入力する受信装置と、を備える伝送システム。
【請求項8】
前記伝送媒体は光ファイバであり、前記送信装置は電気/光変換部を含み、前記受信装置は光/電気変換部を含む請求項6または7に記載の伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅装置、伝送モジュール、及び、伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、低雑音、高出力、及び、高線形性のデバイスを用いて、雑音の増加と3次相互変調歪み等の歪みを抑制したRF伝送技術の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1のTV光伝送システム構成では、TV-RF信号を光ファイバ伝送するためのTV光伝送システムにおける電気光変換装置において、半導体レーザダイオード光源の電流を変更する電流調整器を備える。また、TV-RF信号を光ファイバ伝送するためのTV光伝送システムにおける電気光変換装置において、TV-RF信号振幅を調整するRF振幅調整器を備える。
【0004】
具体的には、特許文献1は、線形性の良いポイントを調整するための電流調整器により電気光変換装置に対して線形性の良い電流値を設定し、受信状態を最良に調整できる特徴を有する。また、変調振幅もRF信号振幅調整量を1デシベル単位で調整できるRF振幅可変ステップスイッチにより最適に範囲設定することにより、受信状態を最良に調整できる特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-053879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、デバイスの高周波帯域の少なくとも一部における線形性が高い部分を利用して低雑音化し、また、振幅を最適なエラーレートが得られる当該線形性が高い領域に合わせて調整し、高出力の信号にも対応できるようにしている。しかし、上記構成を用いない場合には、高周波数帯域において周波数応答特性が不足する市販のデバイスを用いて、高周波数信号を劣化させずに伝送することが困難であった。また、雑音が比較的大きい光ファイバ等の伝送システムでは、雑音を抑制することが困難であり、SNRが低い信号を伝送することが困難になる場合があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、高周波数帯域において周波数応答特性が不足するデバイスを含む伝送経路に対して、高周波数帯域の信号の品質を劣化させずに伝送させ、信号のSNRが低い場合には伝送経路の雑音を抑制可能な増幅装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に係わる、周波数が増加すると利得が減衰していく周波数領域を有する伝送経路の前段に配置される増幅装置は、前記周波数領域の周波数成分を含む信号を入力し、前記周波数成分の前記伝送経路における減衰量を低減する増幅度で前記信号を増幅し、増幅された前記信号を前記伝送経路に出力し、前記伝送経路における前記信号のSNRの劣化を低減することが好ましい。
【0009】
本発明の他の態様に係わる伝送モジュールは、上記態様の増幅装置と、前記伝送経路における前記周波数領域における歪みが発生する前に減衰指示情報を出力するフィードバック部と、前記減衰指示情報に対応して、前記増幅装置に入力される前記信号を減衰させる減衰部と、を備えることが好ましい。
【0010】
本発明のその他の態様に係わる伝送システムは、上記態様の伝送モジュールと、前記伝送モジュールの後段に配置される送信装置と、前記送信装置の出力信号を入力する伝送媒体と、前記伝送媒体の出力信号を入力する受信装置と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高周波数帯域において周波数応答特性が不足するデバイスを含む伝送経路に対して、当該高周波数帯域の信号の品質を劣化させずに伝送させ、当該信号のSNRが低い場合には伝送経路の雑音を抑制可能な増幅装置等を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係わる伝送システムの一例を示す模式図である。
図2】本実施形態に係わる伝送経路に含まれるデバイスの周波数応答特性の一例を示した模式図である。
図3】(a)本実施形態に係わる発光素子の適正な動作の一例を示す模式図である。(b)本実施形態に係わる発光素子においてクリッピングが発生する動作の一例を示す模式図である。
図4】本実施形態に係わる発光素子における3次相互変調歪みの周波数依存特性の一例を示す模式図である。
図5】本実施形態に係わる伝送システムの周波数応答特性の一例を示す模式図である。
図6】本実施形態に係わるOFDM信号の3次相互変調歪みの影響によるスペクトルの変化の一例を示す模式図である。
図7】本実施形態に係わる伝送システムの周波数応答特性の一例の特徴を説明するための模式図である。
図8】(a)本実施形態に係わるOFDM信号を増幅する前のスペクトル分布の一例を示す模式図である。(b)本実施形態に係わるOFDM信号を増幅した後のスペクトル分布、及び、増幅されたOFDM信号のノイズレベルと伝送経路のノイズレベルとの比較例を示す模式図である。
図9】本実施形態に係わる、増幅されたOFDM信号のノイズレベルと伝送経路のノイズレベルとの差と、伝送経路の雑音指数との関係例を示すグラフである。
図10】本実施形態に係わる伝送システムのその他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態に係わる増幅器、伝送モジュール、及び、伝送システムの一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の設置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示に限定する主旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。さらに、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0014】
また、以下の実施形態及びその変形例には、同様の構成要素が含まれている場合があり、同様の構成要素には共通の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0015】
(増幅装置、伝送モジュール、及び、当該伝送モジュールを含む伝送システムの構成及び動作原理の説明)
図1は、本実施形態に係わる伝送システム1000aのイメージを示す模式図である。伝送システム1000aは、SNRが抑制されているRF信号SIaが入力される増幅装置120a、送信装置200、伝送媒体300a、及び、受信装置400を備える。RF信号SIaはミリ波帯等の高周波数領域に搬送波を含む無線信号であることが好ましいが、当該無線信号に限定されるわけではない。本実施形態に係わる増幅装置120aを配置しない送信装置200、伝送媒体300a、及び、受信装置400を含む伝送経路において、RF信号SIaが入力されると、RF信号SIaの当該高周波数領域において利得が減衰するものとする。当該形態の周波数応答特性を示す測定結果を図2に示す。
【0016】
図2の横軸はRF信号SIaの入力電力(dBm)であり、縦軸は受信装置400の出力信号SOaにおけるEVM(Error Vector Magnitude)を示す。RF信号SIaに周波数6GHz成分を含む場合の6GHz成分は、約-12dBmから約-32dBmまでの約20dBmのダイナミックレンジにおいてEVMは約3%未満の良好な周波数応答特性を有する。周波数6GHz成分は、当該ダイナミックレンジにおいて、良好な周波数応答特性を有するので、利得損失がほとんどないものと想定される。しかし、約-12dBm以上の入力電力を伝送経路に入力として入れると、EVMは急速に悪化することから、約-12dBm以上の入力電力の6GHz成分に対しては伝送経路において歪みが影響していることが想定される。
【0017】
一方、RF信号SIaの周波数28GHz成分に対しては、入力電力が約-32dBmから約-20dBmまでの範囲において、EVMが約8%以上に劣化した周波数応答特性を伝送経路は有する。すなわち、周波数28GHz成分に対しては、入力電力が-32dBmから約-20dBmまでの範囲においても、利得損失が発生し、十分な振幅の入力信号が得られないために、EVMが劣化していることが想定される。また、十分な振幅の入力信号が得られないために、伝送経路の雑音電力によってEVMが劣化していることが想定される。特に光ファイバ無線では雑音電力が大きいために周波数応答特性不足によってSNRが大きく劣化するので、従来は、周波数応答特性が良好な周波数領域、例えば、図1では6GHz程度までの周波数領域を含む信号で、伝送経路が使用されていた。また、28GHz成分を含む信号を伝送するためには、周波数応答特性が28GHzにおいても不足しない高価な線形性の高いデバイスを含むことによって伝送経路を構成していた。
【0018】
しかし、図1のRF信号SIaの周波数応答特性において、28GHzのリンク利得が減衰し、EVMが劣化している領域においても、リンク利得の減衰量の少なくとも一部を補うように28GHz成分を増幅することで、EVMの向上が期待される。
【0019】
図5は、図1の伝送システム1000aにおいて、増幅装置120aに入力する28GHz信号成分の電力を増幅した結果を示す。28GHz信号成分の電力を増幅しない場合には、図2からは伝送経路に入力する28GHz信号成分は、6GHz成分と同様に0dBmからEVMの悪化が予想される。しかし、図5からは28GHz信号成分を増幅するとEVMの良好な状態を維持できる範囲が広がることが理解される。
【0020】
上記のように、28GHz信号成分の入力電力を増加しても28GHz信号成分のダイナミックレンジが下がらないことが想定される具体例について発光素子を用いて図6において説明する。図6における黒丸記号は6GHz成分の3次相互変調歪み信号であり、黒四角記号は28GHz成分の3次相互変調歪み信号である。28GHz成分は5dBm前後の大きい電力を入力しても、-40dBm程度の出力電力しか出力できないが、6GHz成分は-15dBm前後の小さい電力を入力しても、-45dBm程度の出力電力を出力できる。また、同じレベル前後の出力電力を得られる6GHz成分の信号と28GHz成分の信号とは約17dBの差がある。この結果を、図5に当てはめれば、図5における28GHz成分のダイナミックレンジは、6GHz成分のダイナミックレンジを約17dBだけ低電力側にシフトしたレンジとなることが妥当な推定であることが理解される。実際、図5における入力電力が小さい側のEVM劣化領域の6GHz成分と28GHz成分との差は、約18dBあるので、図6の結果と論理的な整合性を取ることが可能な範囲であると考えられる。
【0021】
すなわち、ミリ波等の高周波数の搬送波を用いたRF信号を伝送する場合には、伝送経路の周波数応答特性が不足すると、リンク利得が減衰し、SNRが劣化し、EVMが上昇する。従来の伝送経路だけでは、6GHzの入力信号に対して、8%以下のEVMにおいて、約30dBm以上の範囲のダイナミックレンジを有する。しかし、28GHzの入力信号に対しては、8%以下のEVMにおいて、半分ほどのダイナミックレンジしか取ることができなくなっている。しかし、図1のように従来の伝送経路の前段に増幅装置120aを配置し、28GHzの入力信号を増幅すると、図5のように、8%以下のEVMにおいて、約30dBm以上のダイナミックレンジを取ることが可能になる場合がある。また、図6から推察されるように、28GHzの入力信号においても、6GHzの入力信号のEVMが良好な領域と同程度のダイナミックレンジを有することが想定される。
【0022】
次に、入力信号が増幅され過ぎる場合の伝送経路によって生じる歪みの一例について説明する。伝送経路によって生じる歪みは変調器、復調器、検波器等の非線形特性によって生じることが多いが、伝送媒体に光ファイバを使用した場合の発光素子(電気/光変換部)によって発生する歪みについて、図3を用いて説明する。
【0023】
図3(a)の横軸は発光素子に入力する入力信号の電流値(mA)を示し、縦軸は発光素子から出力される出力光の強度を電力(mW)で示している。入力信号SIcの電流値が小さい場合には、I-L特性が線形になっているので、入力信号SIcに歪みが生じずに出力光SOcは歪まずに線形に増幅されて光ファイバに入力される。しかし、図3(b)に示すように、増幅度が大きい入力信号SIdを入力すると、クリッピングが発生し、出力信号SOdの振幅は入力信号SIdと同様の正弦波ではなくなる。すなわち、出力信号SOdの振幅の下限方向が飽和した状態、すなわちクリッピングされ、出力信号SOdに大きな歪みが発生する。クリッピングされた出力信号SOdは、3次相互変調歪みを急激に増加させ、EVMを急激に悪化させる。したがって、従来技術によれば、RF信号SIaの増幅度はクリッピング等の歪みが発生しない領域に出力信号が収まるように設定する必要があるために、送信可能な信号電力領域が限定されていた。しかし、本実施形態に係わる増幅装置120aは、例えば、発光素子の周波数応答特性が不足する領域に対して、リンク不足を補うように増幅するので、信号電力領域を広げることが可能になる。すなわち、拡大された信号電力領域において、SNRの劣化を抑制し、良好なEVMを維持することが可能になる。具体的には、上述したように、図4に示すように、28GHz信号の大電力入力に対しても、3次相互変調歪みは抑制され、EVMの良好な領域を拡大することが可能になる。
【0024】
すなわち。伝送経路に光ファイバを用いた場合に、電気信号を光信号に変換する発光素子において、3次相互変調歪みが増加する場合がある。図3(b)は、過大に増幅された電気入力信号が、発光素子のI-P特性の下限値を超えるために、出力された光信号の下部がクリッピングされ、大きな歪みが発生している様子を示している。クリッピングが発生すると3次相互変調歪みが急激に増加し、EVMが劣化してしまう。図3における高入力電力の6GHzのEVMの悪化は、このような3次相互変調歪み等による歪みに起因して発生することが想定される。しかし、図4において説明したように、28GHz等の高周波数の入力信号に対しては、リンク利得が下がっている。したがって、28GHz等の高周波数の入力信号を増幅して、リンク利得による不足分を十分満たすまでは、EVMの劣化を引き起こさずに増幅度を増加することが可能になる。
【0025】
図4は、増幅器や発光素子においてOFDM信号に3次相互変調歪みが発生する前後の周波数特性を示すグラフである。図4のグラフの横軸は周波数を示し、図4のグラフの縦軸は出力電力の絶対的な値をdBm単位で示している。図4の左側のグラフは、28GHz周辺の2つのサブキャリア信号f1及びf2によるOFDM信号の周波数スペクトルを示し、暗雑音とOFDM信号の周波数成分が明確に区分されている状態が確認できる。図4の右側のグラフは、28GHz周辺の2つのサブキャリア信号f1及びf2によるOFDM信号に3次相互変調歪みを発生させた場合のグラフである。周波数が(2f1―f2)及び(2f2―f1)である3次相互変調歪み信号によって発生する雑音帯域及び雑音レベルを示している。サブキャリア信号f1及びf2のOFDM信号に対して、(2f1―f2)及び(2f2―f1)の3次相互変調歪み信号がノイズとなって重畳されるために、SNRが低下し、EVMの値が大きくなることが理解される。また、3次相互変調歪み信号のノイズにおける、隣接チャネルへ漏洩する電力も大きくなるために隣接するサブキャリア信号も大きく影響を受けることが理解できる。
【0026】
次に、周波数応答特性の応答が不足する不足領域の増幅度を増幅装置120aで歪み発生限界まで増幅することによって、入力信号のSNRの劣化を抑制する構成について図7から図9を参照して説明する。
【0027】
図7は、入力信号の電力を下げていくと伝送経路において発生している雑音等によってEVMが悪化する状況と、入力信号の電力を上げていくと伝送経路において発生する歪み等によってEVMが悪化する状況を示したグラフの一例である。図7の横軸は入力電力(dBm)であり、測定系によって示される相対的な値である。また、図7の縦軸はEVMであり、EVMが9%を超える領域は省略している。上述したように、入力信号の電力を約-8dBmよりも下げると、伝送経路において発生している雑音の影響が現れてきて、EVMの悪化傾向が顕著になる。入力信号の電力を-20dBmよりも下げると、EVMが8%を超える状況に達してしまう。また、入力信号の電力を6dBmよりも上げると、伝送経路において発生している歪みの影響が現れてきて、EVMが悪化傾向になり、入力信号の電力を14dBmよりも上げると、EVMが8%を超える状況に達してしまう。
【0028】
すなわち、図7において、入力信号の電力が低下すると、伝送経路が有する雑音指数によってEVMが急速に劣化する領域が発生する。この領域を伝送経路の雑音指数によるペナルティ領域とも称する。また、入力信号の電力が増加すると、上述したような歪みが発生し、EVMが急速に劣化する。したがって、入力信号は、雑音指数によるペナルティ領域と、歪みによるEVM劣化領域の間で増幅させることが好ましい。このような入力電力に範囲において、本実施形態の増幅装置は、伝送経路において発生している雑音の影響を低減することが可能になる場合がある。次に、そのような場合について説明する。
【0029】
入力信号のノイズ成分レベルが伝送経路において発生している雑音レベルよりも小さく、当該ノイズ成分の増幅によっても信号成分に歪みが発生せずに、増幅されたノイズ成分レベルが雑音レベルよりも大きくなる場合に本実施形態の増幅装置は有効である。上記のような入力信号のSNRは相対的に小さいことが多い。例えば、第4世代移動通信システムに用いられているOFDM信号では、OFDM信号のSNRが約40dB前後に限られているために、本実施形態に係わる増幅装置120aによって、上記効果を発揮しやすい。図8(a)は、増幅装置120aに入力される前のOFDM入力信号のパワースペクトルを示した模式図である。OFDMでは複数のサブキャリアのそれぞれにおいて情報を伝送するので、図8(a)の凸状部分が信号成分のパワーを示している。また、凸状部分の両側の周波数帯域部分がノイズ成分のパワーを示している。図8(b)は、増幅装置120aから出力された増幅後のOFDM出力信号のパワースペクトルを示した模式図である。増幅後のOFDM出力信号のノイズレベルと伝送経路において発生している雑音レベルとの差をΔPで示す。OFDM出力信号の信号成分が歪まない範囲でΔPが大きくなるように増幅すると、伝送経路において発生している雑音レベルの影響が抑制されることが理解される。
【0030】
図9は、伝送経路における雑音レベルと入力信号の増幅後の雑音レベルとの差であるΔPと伝送経路における雑音レベルの変化の様子をプロットしたものである。伝送経路の雑音指数(NF)は下の式(2)によってdb単位で示される。
NF=10log((S_in/N_in)/(S_out/N_out))-----(2)
(S_inは伝送システム1000aへの入力信号、N_inは伝送システム1000aへの入力雑音である。S_outは伝送システム1000aからの出力信号、N_outは伝送システム1000aからの出力雑音である。)
またF=(S_in/N_in)/(S_out/N_out)とすると、
F=(S_in/N_in)/(G×S_in/(N_add+G×N_in))(N_addは伝送経路の雑音量、Gは増幅装置120aの増幅度)であるので、
F=(N_add+G×N_in)/G×N_in
F=((N_add/G)+N_in)/N_in
F=(N_add/(G×N_in)+1
【0031】
したがって、(G×N_in)が(N_add)よりも大きくなると、伝送経路の雑音指数が低減されることが理解される。すなわち、OFDM信号のようにSNRが制限されている場合に、伝送経路に入力する入力信号を伝送経路の前段に配置された増幅装置で増幅し、増幅された入力雑音電力が、伝送経路の雑音電力以上になると、伝送経路の雑音指数を抑制することが可能になる。
【0032】
ただし、前述したように、増幅装置の増幅度を上げすぎると、増幅された信号は伝送経路の歪み特性によって、EVMが急激に悪化することがあるので、伝送経路の歪み特性による影響を受けない程度の増幅度で増幅装置120aを動作させる必要がある。
【0033】
上述の知見に基づいて、本実施形態に係わる増幅装置の増幅度にフィードバックをかける構成を有する本実施形態に係わる伝送モジュール100および当該伝送モジュールを含む本実施形態に係わる伝送システム1000bについて図10を参照して説明する。
【0034】
図10は、本実施形態に係わる伝送システム1000bのイメージを示す模式図である。伝送システム1000bは、SNRが抑制されているRF信号SIbが入力される伝送モジュール100、発光素子等の電気/光変換部600を駆動するための駆動部500、電気/光変換部600、伝送媒体300b、及び、光/電気変換部700を備える。なお、伝送媒体300bは光ファイバである。光ファイバ無線における雑音は-150dBm/Hzから-140dBm/Hzと非常に大きな値を有するが、本実施形態における伝送システム1000bにおいては、SNRを効果的に抑制することが可能になる。なお、伝送媒体300a及び伝送媒体300bを総称して伝送媒体300と称する場合がある。また、伝送システム1000a及び伝送システム1000bを総称して伝送システム1000と称する場合がある。
【0035】
伝送モジュール100は、可変減衰部110、可変減衰部110によって減衰された、または、減衰されていない信号を増幅する増幅部121b、増幅部121bの出力信号の伝送経路における歪みの発生を事前に報知するフィードバック部130を備える。なお、増幅部121bを備える増幅装置120b及び増幅装置120aを総称して増幅装置120と称する場合がある。
【0036】
従来技術においては、駆動部500、電気/光変換部600、伝送媒体300bとしての光ファイバ及び光/電気変換部700を含む伝送系において、伝送系の応答限界である遮断周波数以下の周波数を有する信号を伝送していた。何故なら、遮断周波数以上の周波数成分は伝送系の周波数応答特性が不足するために、リンク利得が低下し、SNRの劣化が大きくなるためである。特に、光ファイバ無線では、伝送系の雑音が相対的に大きいために、周波数応答特性が不足すると、SNRが大きく劣化する場合がある。したがって、伝送系の周波数応答特性を充分に享受可能な領域の周波数において、当該伝送系が使用されてきた。または、遮断周波数を広域に遷移させた高価なデバイスを使用した伝送系を構築していた。
【0037】
しかし、周波数応答特性が不足する領域における不足利得を補う増幅度を有する増幅装置120bを、伝送系の前段に設けることによって、伝送系のリンク利得の低下を補うことが可能になる。特に、光ファイバ無線においては、電気/光変換部600の周波数応答特性の不足に相当する増幅度を有する増幅装置120bを伝送系の前段に配置することによって、リンク利得の低下を補うことが可能になる。すなわち、従来は、電気/光変換部600の遮断周波数に適合する周波数成分を有する信号、または、遮断周波数を広域に遷移させた高価な発光部を使用していた。しかし、本実施形態では、電気/光変換部600の遮断周波数以上の周波数において増幅度を有する増幅装置120bを使用する。したがって、遮断周波数以上の周波数成分を有する信号のSNRを適切に制御して伝送可能な伝送システム1000bを構築することが可能になる場合がある。
【0038】
すなわち、増幅装置120bは、駆動部500、電気/光変換部600、伝送媒体300b及び光/電気変換部700を含む伝送経路における周波数に対する利得が減衰する領域におけるRF信号SIbの信号成分を増幅する機能を有する。したがって、従来技術では、平坦な高周波数特性が要求される当該伝送経路、特に、電気/光変換部600における信号の不足利得を補うように増幅装置120bは機能する。
【0039】
また、従来技術では、SNRが小さい信号を入力信号として使用する場合には、伝送系が有するノイズによって、出力信号のSNRが劣化して、正確な情報が一度では転送できない場合が発生する可能性があった。しかし、SNRが小さい入力信号を増幅し、伝送系が有するノイズよりも増幅された信号のノイズ成分が大きくなるように増幅することによって、出力信号のSNRの劣化を抑制し、入力信号に対してSNRが適切に制御された出力信号を伝送することも可能になる。
【0040】
増幅装置120bの設置によって、上述したような効果を本開示によって奏することが可能になるが、増幅された後に信号が伝送系で歪んでは適切な出力信号を得ることが困難になる。そこで、伝送システム1000bでは、増幅信号が伝送系において歪む直前まで入力信号を増幅し、上記効果を最大限発揮できる構成とした。すなわち、フィードバック部130は増幅信号が伝送経路の歪みの影響を受けるレベルを検知するようにし、増幅信号に歪みが発生する可能性を検知または推定した場合に、増幅装置120bに入力される入力信号を減衰させるようにした。このような構成によれば、本実施形態による伝送モジュール100を伝送信号に歪みが発生しないように抑制可能な最大の入力電力によってフィードバックさせるように構成することで、SNRが適切に制御された信号を伝送することが可能になる。
【0041】
フィードバック部130は、増幅装置120bによって増幅された増幅信号が、増幅されすぎて電気/光変換部600においてクリッピング等の歪みが発生するレベルに達したか否かを検出する。例えば、フィードバック部130は、出力信号が当該レベルに達していない場合には、可変減衰部110に減衰度を下げる指示情報を出力し、出力信号が当該レベルに達する可能性がある場合には、可変減衰部110に減衰度を上げる指示情報を出力する。このように、フィードバック部130が、可変減衰部110を制御することによって、増幅部121bが一定の増幅度で、伝送経路の不足利得を補うように動作することが可能になる。
【0042】
また、SNRが低いRF信号SIbの場合には、駆動部500、電気/光変換部600、伝送媒体300bとしての光ファイバ及び光/電気変換部700を含む伝送経路に存在する雑音によって、SNRの劣化が懸念される。しかし、本実施形態では、増幅装置120bの増幅度を伝送経路の雑音電力以上に設定することによって、RF信号SIbのSNRの低下を抑制することが可能になる。
【0043】
上記構成によれば、高周波数帯域の周波数応答特性が不足するデバイスを含んでいても、当該高周波数帯域の信号の品質を劣化させずに伝送させ、当該信号のSNRが低い場合には雑音を抑制可能な伝送モジュール及び伝送システムを提供することが可能となる。
【0044】
(補足説明)
上述してきたように、RF信号を伝送する伝送経路の周波数応答特性が不足する場合、図1及び図10に示すように、不足利得分を補う増幅装置120を伝送経路の前段に配置すると、伝送システムのリンク利得を補うことが可能となる。入力信号をSi(t)とし、伝送経路の伝達係数をH(n)と置くと、出力信号So(t)は式(1)であらわされる。
So(t)=H(n)*Si(t)----------------(1)
したがって、H(n)の周波数応答特性が不足するだけのSi(t)を入力すれば、So(t)を得ることが可能である。従来は、高価なデバイスを使用することでH(n)の周波数応答特性を改善してきた。しかし、伝送経路に変復調回路を加えたシステムで考えると、H(n)の周波数応答特性が不足するだけのSi(t)を入力すればよいことが理解される。
【0045】
また、例えば、RF信号を地上デジタルテレビ放送や無線LAN等で広く採用されているOFDMで検討する。OFDMにおいては、送信シンボルの一部にあらかじめ値が決められたパイロットシンボルが配置されている。QAMシンボルA0,nが伝送経路を伝搬すると受信シンボルはrn=Hn*A0,nとなり、振幅変動及び位相回転が生じる場合がある。パイロットシンボル部では入力のQAMシンボルA0,nが既知であるので、復調シンボルからHnを推定することでデータ部分の伝送経路周波数応答H’nを推定する。次に、A’0,n=rn/H’nでデータ部の受信シンボルを等価する。得られた等価後のQAMシンボルA’0,nによりQAMの復調を実行できる。しかし、従来は、伝送経路のデバイスの高周波数側のレベルが減衰し、EVMが悪化するために、デバイスの高周波数応答特性を改良していた。しかし、伝送経路の前段で高周波数側のレベルを増幅することによって、データ部分の伝送経路周波数応答H’nを推定可能とし、結果的により伝送経路の周波数応答特性の遮断周波数よりも高周波の信号のEVMを悪化させずに伝送することが可能になる。
【0046】
なお、SNRが抑えられている信号、例えばOFDM信号、に対しては伝送経路によるSNRの劣化である雑音指数を、増幅器によって抑制可能である。図8は約40dBにSNRが抑制されたOFDM信号において、伝送経路における雑音指数が低減される様子を示した模式図である。図8は、入力信号としてのOFDM信号のノイズレベルを、伝送経路における雑音レベルよりも大きなレベルになるように増幅することで、伝送経路における雑音の影響が低減されることが理解される。ここで、伝送経路における雑音レベルと入力信号の増幅後の雑音レベルとの差をΔPとしている。
【0047】
(変形例1)
上記実施形態における説明では、信号の伝送媒体として、光ケーブル、同軸ケーブル等のケーブルの固体による伝送媒体について中心に説明した。しかし、本実施形態に係わる伝送媒体は固体に限定されるわけではない。すなわち、送信局から有線で接続された伝送媒体だけではなく、無線信号として空中に放射される信号を中継伝送する場合にも適用可能である。具体的には、中継装置に本実施形態に係わる機能を発揮可能な増幅装置または伝送モジュールを使用することも可能である。
【0048】
(変形例2)
また、本実施形態に係わる伝送システム1000に入力される入力信号は、OFDM信号を例に説明してきたが、入力信号はOFDM信号に限定されるわけではない。特に、SNRの劣化を抑制することに高い効果を発揮することが予想されるSNRが限定された無線信号を入力信号とすることも可能である。すなわち、本実施形態による増幅装置によって増幅したノイズ成分が伝送系のノイズ成分よりも大きくなり、その場合の増幅度によって信号成分が歪まない程度のSNRを有する無線信号を含む信号に本実施形態を適用することが効果的である。また、周波数応答特性を平坦にすると高価になってしまうデバイスを有する伝送経路において、周波数応答特性が平坦ではない周波数領域を周波数成分に有する信号に、本実施形態を適用することが可能である。なお、無線信号の搬送波の周波数はマイクロ波帯、ミリ波帯以上の周波数帯域であってもよい。
【0049】
以下に、本実施形態に係わる増幅装置、伝送モジュールおよび伝送システム1000の特徴について記載する。
【0050】
本開示の第1の態様に係わる、周波数が増加すると利得が減衰していく周波数領域を有する伝送経路の前段に配置される増幅装置120は、当該周波数領域の周波数成分を含む信号を入力することが好ましい。増幅装置120は、当該周波数成分の伝送経路における減衰量を低減する増幅度で当該信号を増幅し、増幅された当該信号を当該伝送経路に出力し、当該伝送経路における信号のSNRの劣化を低減することが好ましい。
【0051】
本開示によれば、高周波数帯域において周波数応答特性が不足するデバイスを含む伝送経路に対して、当該高周波数帯域の信号の品質を劣化させずに伝送させ、当該信号のSNRが低い場合には伝送経路の雑音を抑制可能となる。
【0052】
本開示の第2の態様に係わる増幅装置120の増幅度は、伝送経路において増幅された信号が歪みを発生させない増幅度であることが好ましい。
【0053】
本開示によれば、高周波数帯域において周波数応答特性が不足するデバイスを含む伝送経路に対して、当該高周波数帯域の信号の品質を劣化させずに伝送させることが可能になる。例えば非線形特性による歪みが伝送経路において発生していると3次相互変調歪みなどによって、当該信号のSNRが著しく劣化する。しかし、当該歪みが発生しない最大限のレベルまで、増幅装置120の増幅度を高めることによって、利得不足の信号のEVMを向上させることも可能となる。
【0054】
本開示の第3の態様に係わる増幅装置120の増幅度は、信号のノイズ成分の電力が、伝送経路におけるノイズの電力よりも大きくなる増幅度であることが好ましい。
【0055】
本開示によれば、高周波数帯域において周波数応答特性が不足するデバイスを含む伝送経路に対して、当該信号のSNRが低い場合には伝送経路の雑音を抑制可能となる場合がある。例えば、増幅装置120の増幅度に反比例して、伝送経路の雑音を抑制可能となる場合がある。
【0056】
本開示の第4の態様に係わる増幅装置120の歪みは、伝送経路に使用されるデバイスの非線形特性によって発生する歪みであり、信号はミリ波帯以上の周波数を有する搬送波を含む無線信号であることが好ましい。
【0057】
本開示によれば、高周波数帯域において周波数応答特性が不足するデバイスを含む伝送経路に対して、当該高周波数帯域の信号が歪まない程度まで増幅することによって、EVMを改善することが可能になる。特に当該高周波数帯域がミリ波帯以上であれば、ミリ波帯において十分な周波数応答特性を有しない廉価なデバイスを有効活用することが可能になる。
【0058】
本開示の第5の態様に係わる増幅装置120の歪みは、伝送経路に使用されるデバイスのクリッピングによって発生する歪みである場合がある。
【0059】
本開示によれば、高周波数帯域において周波数応答特性が不足するデバイスを含む伝送経路に対して、当該高周波数帯域の信号の品質を劣化させずに伝送させ、当該信号のSNRが低い場合には伝送経路の雑音を抑制可能となる。
【0060】
本開示の第6の態様に係わる増幅装置120に入力される信号はOFDMによって生成されたOFDM信号であり、OFDM信号の少なくも一部のサブキャリア信号が当該周波数領域に含まれることが好ましい。
【0061】
本開示によれば、高周波数帯域において周波数応答特性が不足するデバイスを含む伝送経路に対して、OFDM信号の一部のサブキャリアの周波数領域が、当該周波数応答特性が不足する領域であっても、少なくとも一部を補償することが可能になる場合がある。当該補償によって、これまでは使用できなかったOFDM信号もEVMを改善して伝送することが可能になる場合がある。また、当該OFDM信号のSNRが低い場合には、伝送経路の雑音を抑制することが可能となる場合がある。
【0062】
本開示の第7の態様に係わる伝送モジュール100は、第1の態様から第6の態様のいずれかの増幅装置120と、伝送経路における当該周波数領域における歪みが発生する前に減衰指示情報を出力するフィードバック部130と、を備えることが好ましい。また、伝送モジュール100は、減衰指示情報に対応して、増幅装置に入力される信号を減衰させる可変減衰部110をさらに備えることが好ましい。
【0063】
本開示によれば、高周波数帯域において周波数応答特性が不足するデバイスを含む伝送経路に対して、当該高周波数帯域の信号に歪みが発生しない程度まで増幅度を上げることで、EVM等の値を改善することが可能になる場合がある。また当該信号のSNRが低い場合には、当該増幅度によって伝送経路の雑音を抑制することも可能になる場合がある。
【0064】
本開示の第8の態様に係わる伝送システム1000は、第1の態様から第6の態様のいずれかの増幅装置120と、増幅装置の後段に配置される送信装置200と、送信装置200の出力信号を入力する伝送媒体300と、を備えることが好ましい。さらに、伝送システム1000は、伝送媒体300の出力信号を入力する受信装置400を備えることが好ましい。
【0065】
本開示によれば、高周波数帯域において周波数応答特性が不足するデバイスを含む伝送経路に対して、当該高周波数帯域の信号の品質を劣化させずに伝送させることが可能になる場合がある。また、信号のSNRが低い場合には伝送経路の雑音を抑制可能となる場合もある。
【0066】
本開示の第9の態様に係わる伝送システム1000は、第7の態様に係わる伝送モジュール100と、伝送モジュール100の後段に配置される送信装置200と、送信装置200の出力信号を入力する伝送媒体300と、を備えることが好ましい。さらに、伝送システム1000は、伝送媒体300の出力信号を入力する受信装置400を備えることが好ましい。
【0067】
本開示によれば、高周波数帯域において周波数応答特性が不足するデバイスを含む伝送経路に対して、当該高周波数帯域の信号の品質を劣化させずに伝送させ、当該信号のSNRが低い場合には伝送経路の雑音を抑制可能となる。
【0068】
本開示の第10の態様に係わる伝送システム1000の伝送媒体300は光ファイバであり、送信装置は電気/光変換部600を含み、受信装置は光/電気変換部700を含むことが好ましい。
【0069】
本開示によれば、高周波数帯域において周波数応答特性が不足するデバイスを含む伝送経路に対して、当該高周波数帯域の信号の品質を劣化させずに伝送させ、当該信号のSNRが低い場合には伝送経路の雑音を抑制可能となる。特に、伝送媒体300が光ファイバである場合には、電線ケーブルに比較して光ファイバ無線の雑音指数が著しく大きいという課題があるが、本開示によれば、光ファイバ無線の雑音指数を効果的に抑制可能となる場合がある。
【0070】
(実施形態の補足)
上述した実施形態の説明に用いたブロック構成図は、機能単位のブロックを示している。各機能ブロックを実現する方法は、特に限定されない。例えば、各機能ブロックは、物理的または論理的に結合した1つのデバイスを用いて実現されてもよいし、物理的または論理的に分離した2つ以上のデバイスを直接的または間接的に接続し、これら複数のデバイスを用いて実現されてもよい。
【0071】
また、本開示において説明した情報、パラメータなどは、絶対値を用いて表されてもよいし、所定の値からの相対値を用いて表されてもよいし、対応する別の情報を用いて表されてもよい。
【0072】
上述したパラメータに使用する名称はいかなる点においても限定的な名称ではない。さらに、これらのパラメータを使用する数式等は、本開示で明示的に開示したものと異なる場合もある。様々な名称は、いかなる点においても限定的な名称ではない。
【0073】
本開示において説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。
【0074】
実施形態につき、図面を参照して詳細に説明したが、以上の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、上記に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0075】
100 伝送モジュール
110 可変減衰部
120、120a、120b 増幅装置
130 フィードバック部
200 送信装置
300、300a、300b 伝送媒体
400 受信装置
600 電気/光変換部
700 光/電気変換部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10