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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】ハーネスクランプ
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/32 20060101AFI20250701BHJP
   F16B 2/22 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
H02G3/32
F16B2/22 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022012390
(22)【出願日】2022-01-28
(65)【公開番号】P2023110763
(43)【公開日】2023-08-09
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】秋山 弘毅
【審査官】町田 舞
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-278682(JP,A)
【文献】特開2003-246245(JP,A)
【文献】実開昭58-037605(JP,U)
【文献】米国特許第07997773(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0038200(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/32
F16B 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーネスクランプ本体を備え、
前記ハーネスクランプ本体は、
ベース部と、
前記ベース部の一端部から第1折り曲げ部を介して前記ベース部から離れる方向に延びる起立部と、
前記起立部の先端部から第2折り曲げ部を介して前記ベース部と反対側に延び、固定相手に固定される固定部と、
前記ベース部の他端部から折り返された折り返し部と、
前記折り返し部の先端部から前記起立部に向かって前記ベース部に対して概ね平行に延びさらに第3折り曲げ部を介して前記ベース部に近づく方向に延び、前記ベース部と前記折り返し部との間に第1クランプ空間を形成する第1延長部と、
前記第1延長部の先端部から第4折り曲げ部を介して前記ベース部から離れる方向に延び、前記ベース部と前記起立部との間に第2クランプ空間を形成する第2延長部と、を含み、
前記第2延長部の先端部は、自由端部とされ、
前記第2延長部の先端部と前記起立部との間には、第1間隔が形成され、
前記第4折り曲げ部と前記ベース部との間には、第2間隔が形成され、
前記第1クランプ空間は、ハーネスをクランプする空間であり、
前記第2クランプ空間は、前記第1クランプ空間から前記第2間隔を通過することにより変形した前記ハーネスをクランプする空間であり、
前記第1間隔の長さをA、前記第2間隔の長さをB、前記ハーネスの直径をφ、前記変形した前記ハーネスの最大直径をaとした場合、B<φ、及び、A<aの関係を満たすハーネスクランプ。
【請求項2】
前記折り返し部は円弧状に延び、
前記折り返し部の直径は、前記ハーネスの直径と概ね等しい請求項1に記載のハーネスクランプ。
【請求項3】
前記ハーネスクランプ本体は、金属プレートを曲げ加工することにより製造される請求項1に記載のハーネスクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーネスクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
ハーネス取付面に一体的に設けられた基端部と、当該基端部からハーネスの外周面に沿って湾曲しハーネスの外周面を覆った状態で保持する保持部と、を備えるハーネスクランプが提案されている(例えば、特許文献1参照)。保持部の先端部とハーネス取付面との間には、ハーネスの直径より小さい隙間が形成されており、ハーネスは、この隙間を介して挿入されることにより、ハーネスクランプの保持部により当該ハーネスの外周面を覆った状態でクランプされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-095437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のハーネスクランプにおいては、ハーネスクランプの使用環境によっては(例えば、ハーネスクランプに振動が加わる環境)、ハーネスクランプが上記隙間を通過して抜け落ちてしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、ハーネスが抜け落ちるのを抑制することができるハーネスクランプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるハーネスクランプは、
ハーネスクランプ本体を備え、
前記ハーネスクランプ本体は、
ベース部と、
前記ベース部の一端部から第1折り曲げ部を介して前記ベース部から離れる方向に延びる起立部と、
前記起立部の先端部から第2折り曲げ部を介して前記ベース部と反対側に延び、固定相手に固定される固定部と、
前記ベース部の他端部から折り返された折り返し部と、
前記折り返し部の先端部から前記起立部に向かって前記ベース部に対して概ね平行に延びさらに第3折り曲げ部を介して前記ベース部に近づく方向に延び、前記ベース部と前記折り返し部との間に第1クランプ空間を形成する第1延長部と、
前記第1延長部の先端部から第4折り曲げ部を介して前記ベース部から離れる方向に延び、前記ベース部と前記起立部との間に第2クランプ空間を形成する第2延長部と、を含み、
前記第2延長部の先端部は、自由端部とされ、
前記第2延長部の先端部と前記起立部との間には、第1間隔が形成され、
前記第4折り曲げ部と前記ベース部との間には、第2間隔が形成され、
前記第1クランプ空間は、ハーネスをクランプする空間であり、
前記第2クランプ空間は、前記第1クランプ空間から前記第2空間を通過することにより変形した前記ハーネスをクランプする空間であり、
前記第1間隔の長さをA、前記第2間隔の長さをB、前記ハーネスの直径をφ、前記変形した前記ハーネスの最大直径をaとした場合、B<φ、及び、A<aの関係を満たす。
【0007】
このような構成により、ハーネスが抜け落ちるのを抑制することができる。
【0008】
これは、ハーネスクランプに、複数のクランプ機能、すなわち、第1クランプとして機能する第1クランプ空間及び第2クランプとして機能する第2クランプ空間を設けたことによるものである。
【0009】
上記ハーネスクランプにおいては、
前記折り返し部は円弧状に延び、
前記折り返し部の直径は、前記ハーネスの直径と概ね等しくてもよい。
【0010】
また、上記ハーネスクランプにおいては、
前記ハーネスクランプ本体は、金属プレートを曲げ加工することにより製造されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ハーネスが抜け落ちるのを抑制することができるハーネスクランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)ハーネスクランプ10及び第1クランプ空間S1内のハーネス30の断面図、(b)ハーネスクランプ10及び第2間隔G2を通過するハーネス30の断面図、(c)ハーネスクランプ10及び第2クランプ空間S2内のハーネス30の断面図である。
図2】(a)ハーネスクランプ10及び第1クランプ空間S1内のハーネス30の断面図、(b)ハーネスクランプ10及び第2間隔G2を通過するハーネス30の断面図、(c)ハーネスクランプ10及び第2クランプ空間S2内のハーネス30の断面図である。
図3】ハーネスクランプ10を固定相手40に固定した例である。
図4】各パラ-メータの関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態であるハーネスクランプ10について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0014】
図1(a)はハーネスクランプ10及び第1クランプ空間S1内のハーネス30の断面図、図1(b)ハーネスクランプ10及び第2間隔G2を通過するハーネス30の断面図、図1(c)ハーネスクランプ10及び第2クランプ空間S2内のハーネス30の断面図である。図1(a)~図1(c)には、ハーネス及びハーネスクランプを備える駆動ユニットが示されている。より詳細に述べると、駆動ユニットは、モータ、回転角度センサ、ハーネス、ハーネスクランプ、ケース(固定相手40)を有する(不図示)。ハーネス30は回転角度センサにつながる。ハーネスクランプ10は、モータを収容するケース(固定相手40)に取り付けられる。
【0015】
ハーネスクランプ10は、ハーネス30をクランプする機能を有するブラケットである。図1に示すように、ハーネス30は、複数の芯線31と、当該複数の芯線31を被覆する可撓性を有する円筒状の被覆部32と、を備える。芯線31は例えばリード線である。被覆部32は、例えば、アクリルゴムチューブである。ハーネスクランプ10は、後述のようにハーネス30が当該ハーネスクランプ10から抜け落ちるのを抑制する形状とされている。
【0016】
図1に示すように、ハーネスクランプ10は、ハーネスクランプ本体20を備えている。ハーネスクランプ本体20は、ベース部21と、ベース部21の一端部から第1折り曲げ部C1を介してベース部21から離れる方向に延びる起立部22と、起立部22の先端部から第2折り曲げ部C2を介してベース部21と反対側に延び、固定相手に固定(例えば、ねじ固定)される固定部23と、ベース部21の他端部から円弧状に延びて折り返された折り返し部24と、折り返し部24の先端部から起立部22に向かってベース部21に対して概ね平行に延びさらに第3折り曲げ部C3を介してベース部21に近づく斜め方向に延び、ベース部21と折り返し部24との間に第1クランプ空間S1を形成する第1延長部25と、第1延長部25の先端部から第4折り曲げ部C4を介してベース部21から離れる斜め方向に延び、ベース部21と起立部22との間に第2クランプ空間S2を形成する第2延長部26と、を含む。第2延長部26の先端部は、自由端部とされている。
【0017】
第1クランプ空間S1は、ハーネス30をクランプする空間である。第1クランプ空間S1は、ベース部21、折り返し部24、第1延長部25により形成される。第4折り曲げ部C4とベース部21との間には、第2間隔G2が形成されている。第2間隔G2の長さをB、ハーネス30の直径をφとした場合、両者の関係は、B<φである。また、折り返し部24の直径をC、ハーネス30の直径をφとした場合、両者の関係は、C≒φである。これらの関係により、第1クランプ空間S1は、当該第1クランプ空間S1に挿入されたハーネス30をクランプする第1クランプとして機能する。
【0018】
なお、ハーネス30は、第1間隔G1、第2間隔G2を介して第1クランプ空間S1に挿入される。
【0019】
振動する固定相手にハーネスクランプ10を固定した場合、その振動により、ハーネス30が第2間隔G2を通過することがある(ハーネス抜け)。特に、図2(a)~図2(c)に示すように、折り返し部24を上側にし、固定部23を下側にした状態でハーネスクランプ10を固定した場合、その振動に加え、自重の影響も受けるため、ハーネス30が第2間隔G2を通過しやすくなる。
【0020】
そこで、第2クランプ空間S2を設けている。
【0021】
第2クランプ空間S2は、第2間隔G2を通過して楕円形状に変形したハーネス30(図1(c)、図2(c)参照)をクランプする空間である。第2クランプ空間S2は、ベース部21、起立部22、第2延長部26により形成される。第2延長部26の先端部と起立部22との間には、第1間隔G1が形成されている。第2間隔G2を通過して楕円形状に変形したハーネス30の最大直径をa(図1(b)参照)とし、第1間隔G1の長さをAとした場合、両者の関係は、A<aである。この関係により、第1クランプ空間S1は、第2間隔G2を通過し第2クランプ空間S2に移動した楕円形状に変形したハーネス30(図1(c)、図2(c)参照)をクランプする第2クランプとして機能する。
【0022】
ハーネスクランプ10の固定例について説明する。
【0023】
図3は、ハーネスクランプ10を固定相手40に固定した例である。図3に示すように、固定部23を固定相手40の壁面41から突出した突出部42(先端部)に固定(例えば、ねじ固定)することにより、ハーネスクランプ10を固定相手40の壁面41に非接触の状態で(すなわち、ベース部21と壁面41との間に隙間G3が形成された状態で)固定することができる。このようにハーネスクランプ10を固定相手40の壁面41に非接触の状態で固定するのは、固定相手40の壁面41からのバリ対策のためである。
【0024】
上記2つの式(第2間隔G2<ハーネス30の直径φ、第1間隔G1の長さA<第2間隔G2を通過して楕円形状に変形したハーネス30の最大直径a)に代えて、次の式1~式4を用いてもよい。但し、図4に示すように、Aは第1間隔G1の長さ、Bは第2間隔G2の長さ、aは第2間隔G2を通過する際のハーネス30の短径(半径)、bは第2間隔G2を通過する際のハーネス30の長径(半径)、φはハーネス30の直径である。図4は、各パラ-メータの関係を表す図である。
【0025】
A<2a ・・・(式1)
2b=B ・・・(式2)
b<φ/2<a ・・・(式3)
a*b=(φ/2)^2 ・・・(式4)
【0026】
式1は、変形時のハーネス30の抜け止めを表す旨の関係式である。式1は、上記式(第1間隔G1の長さA<第2間隔G2を通過して楕円形状に変形したハーネス30の最大直径a)に対応する。式2は、第2間隔G2の幅で当接しながら変形する旨の関係式である。式3は、変形時のハーネス30の状態を表す関係式である。式3に式2を代入することにより、上記式(第2間隔G2<ハーネス30の直径φ)が導出される。式4は、変形前のハーネス30の断面積と変形後のハーネス30の断面積が一定となる変形である旨の関係式である。
【0027】
式4は、楕円の面積(短辺a×長辺b×円周率π)=円の面積(半径Φ/2×半径Φ/2×円周率π)として、両辺の円周率πを省略したものである。
【0028】
ここで、式2、式4を用いることで、短辺b、長辺aは、次の式5、式6のように、実測値A、B、φから変形状態を一義的に求めることができる。
a=2*(φ/2)^2÷B ・・・(式5)
b=B/2 ・・・(式6)
【0029】
次に、式5を式1に代入すると、実測値A、B、φのみの次の式7が導出できる。
AB<φ^2 ・・・(式7)
また、式6を式3に代入すると、実測値A、B、φのみの次の式8が導出できる。
B<φ ・・・(式8)
以上のように、式4を用いることで「第2間隔G2を通過して楕円形状に変形したハーネス30の最大直径a」というパラメータを用いることなく、実測値A、B、φのみで上記2つの式7、式8を導出することできる。この2つの式は、変形時の形状によらない関係式となる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、ハーネス30が抜け落ちるのを抑制することができる。
【0031】
これは、ハーネスクランプ10に、複数のクランプ機能、すなわち、第1クランプとして機能する第1クランプ空間S1及び第2クランプとして機能する第2クランプ空間S2を設けたことによるものである。
【0032】
また、本実施形態によれば、ブラケット搭載状態の自由度を増やすことができる。すなわち、図1の姿勢だけでなく、図2の姿勢でもハーネスクランプ10を搭載(例えば、取付相手に固定)することがきる。
【0033】
上記実施形態で示した数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0034】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記実施形態の記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0035】
10…ハーネスクランプ
20…ハーネスクランプ本体
21…ベース部
22…起立部
23…固定部
24…折り返し部
25…第1延長部
26…第2延長部
30…ハーネス
31…芯線
32…被覆部
40…固定相手
41…壁面
42…突出部
C1…第1折り曲げ部
C2…第2折り曲げ部
C3…第3折り曲げ部
C4…第4折り曲げ部
G1…第1間隔
G2…第2間隔
S1…第1クランプ空間
S2…第2クランプ空間
図1
図2
図3
図4