(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】開閉装置
(51)【国際特許分類】
F16C 11/06 20060101AFI20250701BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
F16C11/06 E
B60J5/10 K
(21)【出願番号】P 2022123984
(22)【出願日】2022-08-03
【審査請求日】2024-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】曽我本 大智
(72)【発明者】
【氏名】加藤 公英
(72)【発明者】
【氏名】仙石 貴之
(72)【発明者】
【氏名】高藤 聡
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-017017(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0062057(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/06
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する車体と前記開口部を開閉する開閉体とを連結し、伸長することにより前記開閉体を開作動させる開閉装置であって、
前記車体及び前記開閉体の少なくとも一方は、ボールを含むボールスタッドを有するものであり、
軸状をなし、軸方向に伸縮可能な軸部材と、
前記軸部材の少なくとも一方の端部に固定され、前記ボールとともにボールジョイントを構成するソケットと、
前記ソケットに支持され、前記ソケットとともに前記ボールを保持する弾性体と、
前記ソケットに対する前記弾性体の変位を許容する許容位置及び前記ソケットに対する前記弾性体の変位を制限する制限位置の一方の位置で前記ソケットに装着されるカバーと、を備え
、
前記ソケットに対して前記ボールが挿入される方向を挿入方向としたとき、
前記ソケットは、前記挿入方向と直交する方向から見て円弧状をなす周壁を含む収容部であって、前記周壁で前記ボールを覆いつつ前記ボールを収容する収容部を有し、
前記弾性体は、前記周壁の外周面に沿って延びる基部と、前記基部の両端からそれぞれ延び、前記収容部に収容される前記ボールを挟む2つの挟持部と、を有する板ばねであって、
前記カバーは、前記制限位置において、前記周壁とともに前記板ばねの前記基部を前記挿入方向に挟むことにより、前記板ばねの変位を制限する押さえ部を有する
開閉装置。
【請求項2】
前記カバーは、前記ソケットの前記収容部を前記軸方向と直交する方向に挟む2つの側壁を有し、
前記収容部及び前記側壁の一方は、凹部を有し、
前記収容部及び前記側壁の他方は、前記カバーが前記許容位置に位置するときに、前記凹部に嵌まる凸部を有する
請求項
1に記載の開閉装置。
【請求項3】
前記カバーは、前記軸方向に延び、前記軸方向における一端を固定端とするとともに前記軸方向における他端を自由端とする規制アームを有し、
前記規制アームの自由端は、前記カバーが前記許容位置に位置する場合、前記周壁とともに前記板ばねの前記基部を挟み、前記カバーが前記制限位置に位置する場合、前記板ばねの前記軸方向の変位を制限する
請求項
1に記載の開閉装置。
【請求項4】
前記ソケットは、マーキングを有し、
前記許容位置及び前記制限位置の一方の位置は、前記カバーが前記マーキングを被覆しない位置であり、
前記許容位置及び前記制限位置の他方の位置は、前記カバーが前記マーキングを被覆する位置である
請求項1~請求項
3の何れか一項に記載の開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドア開口部を有する車体と、ドア開口部を開閉するバックドアと、バックドアを駆動する開閉装置と、を備える車両が開示されている。開閉装置は、軸状をなし、軸方向に伸縮可能に構成されている。開閉装置は、軸方向における第1端に、車体に固定されるボールとともにボールジョイントを構成するソケットを有する。一方、開閉装置は、軸方向における第2端に、ドアに固定されるボールとともにボールジョイントを構成するソケットを有する。こうして、開閉装置の軸方向における両端部は、車体とバックドアとにそれぞれ連結されている。そして、開閉装置は、伸長することにより、バックドアを開作動させる。一方、開閉装置は、収縮することにより、バックドアを閉作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような開閉装置は、車両に対して組み付けしやすく外れにくいことが要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
[態様1]開口部を有する車体と前記開口部を開閉する開閉体とを連結し、伸長することにより前記開閉体を開作動させる開閉装置であって、前記車体及び前記開閉体の少なくとも一方は、ボールを含むボールスタッドを有するものであり、軸状をなし、軸方向に伸縮可能な軸部材と、前記軸部材の少なくとも一方の端部に固定され、前記ボールとともにボールジョイントを構成するソケットと、前記ソケットに支持され、前記ソケットとともに前記ボールを保持する弾性体と、前記ソケットに対する前記弾性体の変位を許容する許容位置及び前記ソケットに対する前記弾性体の変位を制限する制限位置の一方の位置で前記ソケットに装着されるカバーと、を備える。
【0006】
開閉装置を車両に組み付ける場合には、カバーのソケットに対する装着位置が許容位置とされる。この場合、ソケットに対して弾性体が変位しやすいため、弾性体を変形させつつ、ボールをソケットに収容することができる。ソケットにボールが収容されると、カバーの装着位置が許容位置から制限位置に変更される。すると、ソケットに対して弾性体が変形しにくくなるため、ソケットからボールが脱落しにくくなる。こうして、開閉装置は、カバーのソケットに対する装着位置を変更することにより、車両に対して組み付けしやすく、外れにくくできる。
【0007】
[態様2]態様1に記載の開閉装置において、前記ソケットに対して前記ボールが挿入される方向を挿入方向としたとき、前記ソケットは、前記挿入方向と直交する方向から見て円弧状をなす周壁を含む収容部であって、前記周壁で前記ボールを覆いつつ前記ボールを収容する収容部を有し、前記弾性体は、前記周壁の外周面に沿って延びる基部と、前記基部の両端からそれぞれ延び、前記収容部に収容される前記ボールを挟む2つの挟持部と、を有する板ばねであって、前記カバーは、前記制限位置において、前記周壁とともに前記板ばねの前記基部を前記挿入方向に挟むことにより、前記板ばねの変位を制限する押さえ部を有することが好ましい。
【0008】
ボールをソケットに収容したりソケットからボールを取り出したりする場合には、ボールが板ばねの2つの挟持部の間隔を広げつつ、2つの挟持部の間を通過する。このとき、板ばねの基部は、2つの挟持部に作用する荷重により、周壁から浮き上がろうとする。この点、カバーの押さえ部は、制限位置において、ソケットの周壁とともに板ばねの基部を挟むことにより、板ばねの変位を制限する。したがって、開閉装置は、カバーが制限位置に装着された後に、ソケットからボールが脱落することをより抑制できる。
【0009】
[態様3]態様2に記載の開閉装置において、前記カバーは、前記ソケットの前記収容部を前記軸方向と直交する方向に挟む2つの側壁を有し、前記収容部及び前記側壁の一方は、凹部を有し、前記収容部及び前記側壁の他方は、前記カバーが前記許容位置に位置するときに、前記凹部に嵌まる凸部を有することが好ましい。
【0010】
カバーの装着位置が許容位置である場合、カバーの2つの側壁がソケットの収容部を挟み、凸部が凹部に嵌まる。このため、開閉装置は、許容位置に位置するカバーをソケットから脱落しにくくできる。
【0011】
[態様4]態様1~態様3の何れかに記載の開閉装置において、前記カバーは、前記軸方向に延び、前記軸方向における一端を固定端とするとともに前記軸方向における他端を自由端とする規制アームを有し、前記規制アームの自由端は、前記カバーが前記許容位置に位置する場合、前記周壁とともに前記板ばねの前記基部を挟み、前記カバーが前記制限位置に位置する場合、前記板ばねの前記軸方向の変位を制限することが好ましい。
【0012】
開閉装置において、カバーが許容位置に位置する場合、規制アームは、板ばねがソケットに対して動くことを抑制できる。また、カバーが制限位置に位置する場合、規制アームは、板ばねがソケットに対して軸方向に動くことを抑制できる。こうして、開閉装置は、カバーの位置に応じて、規制アームに異なる機能を持たせることができる。
【0013】
[態様5]態様1~態様4の何れかに記載の開閉装置において、前記ソケットは、マーキングを有し、前記許容位置及び前記制限位置の一方の位置は、前記カバーが前記マーキングを被覆しない位置であり、前記許容位置及び前記制限位置の他方の位置は、前記カバーが前記マーキングを被覆する位置であることが好ましい。
【0014】
開閉装置において、マーキングの被覆状況は、カバーの位置に応じて変化する。このため、開閉装置は、マーキングの被覆状況に応じて、カバーの位置が許容位置であるか制限位置であるかを知らせることができる。
【発明の効果】
【0015】
開閉装置は、車両に対して組み付けしやすく外れにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】
図3は、開閉装置の連結部の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、連結部のソケットと板ばねとの断面図である。
【
図7】
図7は、ボールスタッドと連結前の連結部の斜視図である。
【
図8】
図8は、ボールスタッドと連結前の連結部の断面図である。
【
図9】
図9は、ボールスタッドと連結中の連結部の断面図である。
【
図10】
図10は、ボールスタッドと連結後の連結部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、開閉装置を備える車両の一実施形態について説明する。
<本実施形態の構成>
図1に示すように、車両10は、車体20と、バックドア30と、2つの開閉装置50と、を備える。
【0018】
<車体20>
車体20は、後方に開口するドア開口部21と、ドア開口部21の両側に設けられる2つのボールスタッド41(40)と、を有する。ドア開口部21は、例えば、車両10の幅方向を長手方向とし、車両10の上下方向を短手方向とする矩形状をなしている。ドア開口部21は「開口部」に相当する。ボールスタッド41は、ドア開口部21の下端よりも上端の近くに位置している。
【0019】
図2に示すように、ボールスタッド41は、ボール43と、ボール43から延びる軸部44と、軸部44を支持するブラケット45と、を有する。ボール43は、球状をなしている。軸部44は、円柱状をなしている。軸部44のボール43に接続する端部を先端とし、軸部44のブラケット45に接続する端部を基端としたとき、軸部44の直径は、基端から先端に向かうにつれて次第に小さくなっている。ブラケット45は、例えば、ねじなどの締結部材により車体20に固定されている。
【0020】
<バックドア30>
図1に示すように、バックドア30は、ドア開口部21に応じた形状をなしている。バックドア30は、車両10の幅方向に延びる揺動軸線回りに回転できるように、ヒンジなどを介して車体20に支持されている。バックドア30は、揺動軸線回りに回転することにより、ドア開口部21を全開する全開位置及びドア開口部21を全閉する全閉位置の間を変位する。バックドア30の全開位置は
図1に二点鎖線で示す位置であり、バックドア30の全閉位置は
図1に実線で示す位置である。バックドア30は「開閉体」に相当する。
【0021】
以降の説明では、車両10の側面視において、車体20に支持されるバックドア30の端部を「基端部」といい、基端部の反対側の端部を「先端部」という。また、バックドア30が全閉位置から全開位置に向かう方向を「開方向」といい、バックドア30が全開位置から全閉位置に向かう方向を「閉方向」という。
【0022】
バックドア30は、ドア開口部21の両側に設けられる2つのボールスタッド42(40)を有する。ボールスタッド42は、バックドア30の先端よりも基端に近い位置に固定されている。
図2に示すように、ボールスタッド42は、車体20に設けられるボールスタッド41と同様の構成である。
【0023】
<開閉装置50>
図1及び
図2に示すように、開閉装置50は、長尺の軸状部材である。
図1では、車両10の幅方向における片側の開閉装置50のみを図示している。一方の開閉装置50は、車両10の幅方向における右側において、車体20のボールスタッド41及びバックドア30のボールスタッド42を連結している。他方の開閉装置50は、車両10の幅方向における左側において、車体20のボールスタッド41及びバックドア30のボールスタッド42を連結している。以降の説明では、開閉装置50の軸方向を単に「軸方向」という。
図2に示すように、開閉装置50は、直動アクチュエータ60と、2つの連結部70(71,72)と、を備える。
【0024】
<直動アクチュエータ60>
直動アクチュエータ60は、開閉装置50における両端部を除く部分である。直動アクチュエータ60は、軸状をなす伸縮可能な「軸部材」に相当する。直動アクチュエータ60は、インナーチューブ61と、アウターチューブ62と、モータケース63と、電気モータ64と、伝達機構65と、を備える。
【0025】
インナーチューブ61及びアウターチューブ62は、筒状をなしている。インナーチューブ61の外径は、アウターチューブ62の内径よりも小さくなっている。インナーチューブ61の第1端は、アウターチューブ62の第2端に挿入されている。インナーチューブ61は、アウターチューブ62に対して軸方向に移動可能となっている。モータケース63は、アウターチューブ62と同様に筒状をなしている。モータケース63の第2端は、アウターチューブ62の第1端に連結されている。
【0026】
電気モータ64は、不図示の駆動回路とともに、モータケース63に収容されている。電気モータ64は、例えば、車両10のバッテリから供給される電力に基づき駆動する。
図2では、電気モータ64及び駆動回路から延びる給電線及び信号線を省略している。
【0027】
伝達機構65は、インナーチューブ61とアウターチューブ62とモータケース63とにわたって収容されている。伝達機構65は、電気モータ64の出力軸の回転運動をインナーチューブ61の軸方向への直線運動に変換する。例えば、伝達機構65は、減速機と、送りねじ機構と、を含んで構成することができる。
【0028】
直動アクチュエータ60は、電気モータ64の出力軸を第1回転方向に回転させることにより伸長する。このとき、アウターチューブ62に対するインナーチューブ61の突出量は多くなる。こうして、直動アクチュエータ60は、バックドア30に対して開方向の荷重を付与することで、バックドア30を開作動させる。一方、直動アクチュエータ60は、電気モータ64の出力軸を第1回転方向の逆方向である第2回転方向に回転させることにより収縮する。このとき、アウターチューブ62に対するインナーチューブ61の突出量は少なくなる。こうして、直動アクチュエータ60は、バックドア30に対して閉方向の荷重を付与することで、バックドア30を閉作動させる。
【0029】
<連結部70>
図2に示すように、連結部70は、直動アクチュエータ60の軸方向における第1端に固定される連結部71と、直動アクチュエータ60の軸方向における第2端に固定される連結部72と、を有する。
図1に示すように、開閉装置50を車両10に組み付ける場合、連結部71は、車体20のボールスタッド41に連結され、連結部72は、バックドア30のボールスタッド42に連結される。直動アクチュエータ60において、2つの連結部70は同等の構成となっている。
【0030】
図3~
図5に示すように、連結部70は、ソケット100と、板ばね200と、カバー300と、を備える。以降の説明では、軸方向と直交する方向を「幅方向」といい、軸方向及び幅方向の両方向と直交する方向を「上下方向」という。さらに、軸方向において、直動アクチュエータ60に固定される連結部70の端部を基端といい、連結部70の基端とは逆側の端部を先端という。連結部70の幅方向及び上下方向は、車両10の幅方向及び上下方向とは無関係である。
【0031】
<ソケット100>
図3~
図5に示すように、ソケット100は、ボールスタッド40のボール43を収容する収容部110と、直動アクチュエータ60に固定される固定部140と、収容部110と固定部140とを接続する接続部150と、を有する。ソケット100の材質は、強度が高く、射出成形が可能な樹脂材料であることが好ましい。
【0032】
収容部110は、収容部110の下側を構成する第1収容壁120と、収容部110の上側を構成する第2収容壁130と、を有する。また、収容部110は、上方を深さ方向とする収容孔111と、軸方向に延びる2本のガイド溝112と、を有する。
【0033】
第1収容壁120は、上下方向を高さ方向とする円筒状をなしている。第1収容壁120は、幅方向と交差する2つの摺動面121と、上下方向と交差する係止面122と、を有する。2つの摺動面121は、第1収容壁120の幅方向における側面である。2つの摺動面121は平行であるため、2つの摺動面121の間隔は軸方向に対して一定となっている。2つの摺動面121には、軸方向における先端寄りの位置に凹部123が設けられている。凹部123は、上下方向に延びる溝状をなしている。凹部123の上下方向と直交する断面形状は、半円状をなしている。係止面122は、第1収容壁120の底面である。本実施形態において、係止面122及び2つの摺動面121は直交している。
【0034】
第2収容壁130は、第1収容壁120を上方から覆っている。第2収容壁130は、軸方向から見たときに円弧状をなす周壁131と、周壁131と軸方向に隣り合う前壁132及び後壁133と、を有する。周壁131の外径は、前壁132の外径及び後壁133の外径よりも小さくなっている。このため、軸方向において、周壁131と前壁132及び後壁133との間には段差が生じている。また、前壁132及び後壁133の幅方向における中央部は凹んでいる。
【0035】
図4及び
図5に示すように、収容孔111は、第1収容壁120を貫通しているが、第2収容壁130を貫通していない。第1収容壁120において、収容孔111の開口は拡径されている。第1収容壁120において、収容孔111は、開口付近を除き深さ方向に対して内径が略変化していない。一方、第2収容壁130において、収容孔111は、深さ方向に対して内径が次第に小さくなっている。収容孔111は、ボール43を収容するための孔である。このため、収容孔111の内径は、ボール43の外径に応じた内径となっている。
【0036】
図3に示すように、2本のガイド溝112は、軸方向における第1収容壁120の先端から基端に向かって延びている。2本のガイド溝112は、幅方向に間隔をあけて位置している。軸方向における正面視において、ガイド溝112は、幅方向における外方に進むに連れて上方に向かうように傾いている。
図4及び
図5に示すように、2本のガイド溝112は、収容孔111と連通している。ここで、2本のガイド溝112と収容孔111とが連通する孔を連通孔113とする。連通孔113の軸方向における形成位置は、周壁131の軸方向における形成位置と一致している。
【0037】
図3に示すように、固定部140は、軸方向を板厚方向とする円板状をなしている。固定部140は、直動アクチュエータ60の端部に固定されている。接続部150は、軸方向を高さ方向とする円柱状をなしている。接続部150の上面には、円形状をなすマーキング151が設けられている。マーキング151は、作業者が視認しやすい色で着色されていたり、反射率が他の部位と異なっていたりすることが好ましい。なお、マーキング151の形状は、円形状である必要はない。
【0038】
<板ばね200>
図3及び
図4に示すように、板ばね200は、軸方向における正面視において、C字状をなしている。板ばね200は、円弧状をなす基部210と、基部210の長手方向における両端部から直線状にそれぞれ延びる2つの挟持部220と、を有する。挟持部220の先端部は、軸方向における中央部が軸方向における両端部よりも凹んでいる。言い換えれば、挟持部220の先端部は、ボール43に応じた形状をなしている。板ばね200は、「弾性体」に相当している。板ばね200は、例えば、矩形板状をなす金属板を折り曲げることによって成形すればよい。
【0039】
図5及び
図6に示すように、板ばね200は、ソケット100に装着されている。板ばね200は、ソケット100の2本のガイド溝112を介して、ソケット100の軸方向における基端に向かって押し込まれることにより、ソケット100に装着される。このとき、板ばね200の基部210は、ソケット100の周壁131の外周面に沿って延びている。また、板ばね200の2つの挟持部220は、2本のガイド溝112をそれぞれ挿通するとともに、2つの連通孔113をそれぞれ挿通している。その結果、板ばね200の2つの挟持部220の先端は、ソケット100の収容孔111の内部に位置している。さらに、板ばね200の2つの挟持部220は、幅方向に対向している。
【0040】
<カバー300>
図3~
図5に示すように、カバー300は、上壁310と、規制アーム320と、2つの側壁330と、2つの係止部340と、を備える。カバー300の材質は、強度が高く、射出成形が可能な樹脂材料であることが好ましい。
【0041】
上壁310は、ソケット100の収容部110及び接続部150を覆うことのできる大きさとなっている。上壁310は、ソケット100に装着された板ばね200を押さえる押さえ部311を有する。また、上壁310は、上下方向に貫通する貫通孔312を有する。押さえ部311は、上壁310の下方を向く面である。押さえ部311は平面状をなしている。押さえ部311は、軸方向において、貫通孔312と隣り合っているとともに、幅方向における中央部に位置している。貫通孔312は、幅方向を短手方向とし、軸方向を長手方向とする矩形状をなしている。貫通孔312は、幅方向における中央部に位置している。
【0042】
規制アーム320は、貫通孔312の軸方向と交差する2つの面のうち、基端側に位置する面から軸方向に沿って延びている。規制アーム320の基端は固定端であり、規制アーム320の先端は自由端となっている。この点で、規制アーム320の基端は「軸方向における一端」に相当し、規制アーム320の先端は「軸方向における他端」に相当する。規制アーム320の先端部の下面は、軸方向における先端に向かうに連れて下方に進むように傾斜している。規制アーム320の先端面は、軸方向と直交している。
【0043】
2つの側壁330は、上壁310の幅方向における両端部から下方に向かってそれぞれ延びている。
図4に示すように、2つの側壁330は、上下方向にわたって、幅方向における内方に向かって突出する凸部331を有する。この点で、凸部331は、上下方向を長手方向とするリブ状をなしている。凸部331の上下方向と直交する断面形状は、半円状をなしている。つまり、凸部331の上下方向と直交する断面形状は、ソケット100の凹部123の上下方向と直交する断面形状と対応している。
【0044】
2つの係止部340は、2つの側壁330の下端部から幅方向における内方に向かってそれぞれ延びている。係止部340は、先端に向かうに連れて先細りする爪状をなしている。係止部340の上面は、側壁330と直交している。
【0045】
<本実施形態の作用>
図7~
図10を参照して、車両10に開閉装置50を組み付ける場合の作用について説明する。
【0046】
図7及び
図8に示すように、車両10に組み付けられる前の開閉装置50において、カバー300は、ソケット100に装着されている。このときのカバー300のソケット100に対する装着位置を「許容位置」という。
【0047】
カバー300の装着位置が許容位置である場合、連結部70の幅方向における両側において、カバー300の側壁330は、ソケット100の摺動面121に接している。言い換えれば、カバー300の2つの側壁330は、幅方向において、ソケット100の第1収容壁120を挟んでいる。こうして、カバー300は、幅方向において、ソケット100に対して位置決めされている。さらに、カバー300の側壁330の凸部331は、ソケット100の摺動面121の凹部123に嵌っている。こうして、カバー300は、軸方向において、ソケット100に対して位置決めされている。
【0048】
図8に示すように、カバー300の規制アーム320の先端部は、ソケット100に装着される板ばね200の基部210を下方に押している。その一方で、
図7に示すように、カバー300の係止部340は、ソケット100の係止面122に係止している。言い換えれば、カバー300の係止部340は、ソケット100の係止面122に下方から接している。つまり、カバー300の規制アーム320と係止部340は、上下方向において、ソケット100の収容部110と板ばね200とを挟んでいる。こうして、カバー300は、上下方向において、ソケット100に対して位置決めされている。このとき、
図8に示すように、板ばね200は、上下方向において、ソケット100の周壁131とカバー300の規制アーム320とに挟まれている。
【0049】
以上説明したように、カバー300は、許容位置において、ソケット100と分離しないようになっている。許容位置は、カバー300のソケット100に対する本来の装着位置ではなく、カバー300をソケット100と一体に扱うための一時的な装着位置である。また、カバー300が許容位置に位置する場合、カバー300がソケット100のマーキング151を被覆していない。このため、上方からソケット100を見ると、マーキング151が目視可能な状態となっている。
【0050】
開閉装置50を車両10に組み付ける場合には、開閉装置50の連結部71と車体20のボールスタッド41とが連結される。また、開閉装置50の連結部72とバックドア30のボールスタッド42とが連結される。詳しくは、
図9に示すように、開閉装置50の連結部70がボールスタッド40にそれぞれ押し付けられることにより、ソケット100の収容孔111にボール43が挿入される。
【0051】
図9に実線で示すように、ボール43は、板ばね200の2つの挟持部220を押し広げながら、収容孔111に進入する。このとき、ボール43から受ける反力により、板ばね200はボール43の挿入方向である上方に変位する。板ばね200には、規制アーム320の先端が接しているため、ボール43から受ける反力により、板ばね200は規制アーム320とともに上方に変位する。このように、カバー300が許容位置に位置する場合には、板ばね200のソケット100に対する変位が許容される。このため、板ばね200を弾性変形させつつ、ソケット100にボール43を挿入することが可能となる。上下方向において、ボール43の直径が最も大きい部分が板ばね200の2つの挟持部220の間を通過すると、板ばね200が復元し始める。つまり、板ばね200の基部210は規制アーム320とともに下方に変位する。
【0052】
図9に二点鎖線で示すように、ボール43が収容孔111の奥に達すると、ボール43が板ばね200の2つの挟持部220によって幅方向に挟まれる。こうして、ボール43は、ソケット100と板ばね200とに保持され、ボール43とソケット100とによって、ボールジョイントが構成される。
【0053】
その後、カバー300は、ソケット100に対して軸方向に移動される。このとき、カバー300の側壁330の凸部331は、ソケット100の摺動面121と摺動し、カバー300の係止部340は、ソケット100の係止面122と摺動する。また、カバー300の規制アーム320は、板ばね200の基部210と摺動する。
【0054】
図10に示す制限位置までカバー300が移動すると、軸方向において、カバー300の規制アーム320の先端と板ばね200とが対向する。さらに、上下方向において、板ばね200は、カバー300の押さえ部311とソケット100の周壁131との間に配置される。このとき、規制アーム320と板ばね200とは接触していてもよいし、規制アーム320と板ばね200との間に僅かな隙間が生じていてもよい。同様に、押さえ部311と板ばね200とは接触していてもよいし、押さえ部311と板ばね200との間にわずかな隙間が生じていてもよい。このように、カバー300が制限位置に位置する場合には、板ばね200のソケット100に対する変位が制限される。このため、ボール43をソケット100から引き抜く方向に荷重が作用しても、板ばね200の2つの挟持部220の間隔が広がりにくく、板ばね200の基部210が上方に変位しにくくなる。その結果、ボール43がソケット100から抜けにくくなる。なお、ソケット100とカバー300とは、カバー300が制限位置から軸方向に動かないようにするための構成を有することが好ましい。
【0055】
カバー300は、ソケット100にボール43が挿入された後に、制限位置に移動される。この点で、制限位置は、板ばね200のソケット100に対する変位が制限される位置であり、ソケット100からボール43が不用意に抜けることを抑制するための位置である。また、カバー300が制限位置に位置する場合、カバー300がソケット100のマーキング151を被覆している。このため、上方からソケット100を見ると、マーキング151が目視不能な状態となっている。
【0056】
<本実施形態の効果>
(1)開閉装置50を車両10に組み付ける場合には、カバー300のソケット100に対する装着位置が許容位置とされる。この場合、ソケット100に対して板ばね200が変位しやすいため、板ばね200を弾性変形させつつ、ボール43をソケット100に収容することができる。ソケット100にボール43が収容されると、カバー300の装着位置が許容位置から制限位置に変更される。すると、ソケット100に対して板ばね200が弾性変形しにくくなるため、ソケット100からボール43が脱落しにくくなる。こうして、開閉装置50は、車両10に対して組み付けしやすく、外れにくくできる。
【0057】
(2)ボール43をソケット100に収容したりソケット100からボール43を取り出したりする場合には、ボール43が板ばね200の2つの挟持部220の間隔を広げつつ、2つの挟持部220の間を通過する。このとき、板ばね200の基部210は、2つの挟持部220に作用する荷重により、周壁131から浮き上がろうとする。この点、カバー300の押さえ部311は、制限位置において、周壁131とともに板ばね200の基部210を挟むことにより、板ばね200の変位を制限する。したがって、開閉装置50は、カバー300が制限位置に装着された後に、ソケット100からボール43が脱落することをより抑制できる。
【0058】
(3)開閉装置50は、カバー300の装着位置が許容位置である場合において、カバー300の2つの側壁330がソケット100の収容部110を挟んでいる。さらに、カバー300の2つの凸部331がソケット100の2つの凹部123にそれぞれ嵌まる。このため、開閉装置50は、許容位置に位置するカバー300をソケット100から脱落しにくくできる。
【0059】
(4)開閉装置50において、マーキング151の被覆状況は、カバー300の位置に応じて変化する。詳しくは、カバー300が許容位置に位置する場合には、マーキング151が被覆されていない。その一方で、カバー300が制限位置に位置する場合には、マーキング151が被覆されている。このため、開閉装置50は、マーキング151の被覆状況に応じて、カバー300の位置が許容位置であるか制限位置であるかを知らせることができる。その結果、開閉装置50は、車両10に開閉装置50を組み付ける作業者がカバー300を許容位置から制限位置に変更し忘れることを抑制できる。
【0060】
(5)
図8に示すように、カバー300が許容位置に位置する場合、規制アーム320の先端は板ばね200の基部210に上方から接している。このため、開閉装置50の運搬時に、板ばね200がソケット100に対して不意に動くことが抑制される。また、
図9に実線で示すように、ソケット100にカバー300が挿入される場合において、規制アーム320の先端は板ばね200の基部210に押されることにより、上方に変位する。ここで、規制アーム320は、片持梁状をなしているとともに、規制アーム320における板ばね200の基部210に押される部位が先端部となっている。その結果、規制アーム320は、変位しやすくなっているといえる。したがって、規制アーム320が板ばね200の基部210の変位を過度に拘束する結果、ボール43にソケット100を挿入する際の荷重が高くなることが抑制される。
【0061】
(6)
図10に示すように、カバー300が制限位置に位置する場合、軸方向において、規制アーム320の先端は板ばね200の基部210と向かい合っている。このため、バックドア30の開閉作動時、詳しくは、ソケット100に対してボール43が動いたときに、板ばね200が軸方向における基端に向かって動こうとしても、規制アーム320によって板ばね200の当該動きが規制される。
【0062】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0063】
・ソケット100とカバー300とにおいて、凹部123及び凸部331の形状は適宜に変更可能である。例えば、凹部123及び凸部331は、いわゆるスナップフィットを構成するオス形状及びメス形状であってもよい。また、上記実施形態は、ソケット100が凸部331を有するとともにカバー300が凹部123を有する構成に置き換えることもできる。
【0064】
・マーキング151は、カバー300に設けてもよい。この場合、カバー300が許容位置に位置する場合には、マーキング151が露出することが好ましく、カバー300が制限位置に位置する場合には、マーキング151がソケット100に隠れることが好ましい。
【0065】
・マーキング151は、カバー300が許容位置に位置する場合にカバー300に覆われ、カバー300が制限位置に位置する場合に露出するものであってもよい。
・板ばね200は、ゴム及び樹脂などのエラストマーからなる弾性体であってもよい。この場合、弾性体は、少なくとも一部がソケット100の周壁131の上部に位置し、少なくとも一部がソケット100の収容孔111の内部に位置していることが好ましい。
【0066】
・カバー300は、ソケット100との間の摩擦力により、許容位置又は制限位置に位置決めされていてもよい。つまり、カバー300は、凸部331が凹部123に嵌まることにより、ソケット100に位置決めされるものに限らない。
【0067】
・カバー300は、規制アーム320を有しなくてもよい。
・上記実施形態では、直動アクチュエータ60の第1端に固定されるソケット100の収容孔111の深さ方向及び直動アクチュエータ60の第2端に固定されるソケット100の収容孔111の深さ方向が同じ方向を向いている。車体20及びバックドア30に対するボールスタッド40の固定態様によっては、上記2つのソケット100の収容孔111の深さ方向が異なる方向を向く場合もある。
【0068】
・開閉装置50の一方の連結部70は、車体20又はバックドア30とともにボールジョイントを構成しなくてもよい。開閉装置50の一方の連結部70は、車体20又はバックドア30とともにフックジョイントなどのユニバーサルジョイントを構成してもよい。
【0069】
・開閉装置50は、いわゆるガススプリング又はガスダンパであってもよい。この場合、ガスの反力によって伸長する部位が「軸部材」に相当する。この変更例に係る開閉装置は、バックドア30に対して開方向の荷重を付与できるが、バックドア30に対して閉方向の荷重を付与できなくなる。つまり、開閉装置は、バックドア30を開作動させることはできるが、バックドア30を閉作動させることができなくなる。
【0070】
・開閉装置50が設けられる開閉体は、バックドア30を除くドアであってもよい。例えば、開閉体は、スイングドアとしてのフロントドア及びリアドアであってもよい。
・開閉装置50の開閉対象としての開閉体は、ドアでなくてもよい。例えば、開閉体は、ボンネットパネルであってもよいし、フュエルリッドであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…車両
20…車体
21…ドア開口部(開口部)
30…バックドア(開閉体)
40(41,42)…ボールスタッド
43…ボール
50…開閉装置
60…直動アクチュエータ(軸部材)
65…伝達機構
70(71,72)…連結部
100…ソケット
110…収容部
111…収容孔
112…ガイド溝
113…連通孔
120…第1収容壁
121…摺動面
122…係止面
123…凹部
130…第2収容壁
131…周壁
151…マーキング
200…板ばね(弾性体)
210…基部
220…挟持部
300…カバー
310…上壁
311…押さえ部
312…貫通孔
320…規制アーム
330…側壁
331…凸部
340…係止部