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特許7704751再発性および/または不応性の多発性骨髄腫の処置のためのイサツキシマブの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】再発性および/または不応性の多発性骨髄腫の処置のためのイサツキシマブの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20250701BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20250701BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20250701BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250701BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250701BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20250701BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20250701BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K38/07
A61K31/573
A61P35/00
A61P43/00 121
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022533416
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 US2020063468
(87)【国際公開番号】W WO2021113754
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】62/944,809
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】20315186.5
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】63/023,198
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/037,353
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/094,833
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507363864
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ユー・エス・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マリー・ロール・リッス
(72)【発明者】
【氏名】ギャレル・アッセ
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-536314(JP,A)
【文献】blood,2019年08月01日,Vol.134, No.5, pp.421-431
【文献】Phase III (IKEMA) study design: Isatuximab plus carfilzomib and dexamethasone (Kd) vs Kd in patients with relapsed/refractory multiple myeloma (RRMM).,Journal of Clinical Oncology, 2018 ASCO Annual Meeting I,2018年,Vol.36, No.15, Suppl.TPS8060
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
C07K 16/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD38抗体を含む医薬組成物であって:(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(VH)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、個体において多発性骨髄腫の処置における使用のためのものであり、前記処置は、有効量の抗CD38抗体、有効量のカルフィルゾミブ、および有効量のデキサメタゾンを個体に投与することを含み、
ここで、抗CD38抗体は、10mg/kgの用量で投与され、カルフィルゾミブは20mg/m2または56mg/m2の用量で投与され、デキサメタゾンは20mgの用量で投与され、
ここで、個体は、多発性骨髄腫に対して、少なくとも1回の以前の治療を受け、個体は、前記処置の開始時に腎機能障害を有し、前記処置により、腎機能障害が改善される、医薬組成物。
【請求項2】
個体が多発性骨髄腫に対して1~3回の以前の治療を受け、前記処置が個体の無増悪生存(PFS)および/または全生存(OS)を延長する、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項3】
個体が多発性骨髄腫に対して1~3回の以前の治療を受けた、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
個体が多発性骨髄腫に対して3回を超える以前の治療を受けた、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
個体がプロテアソーム阻害剤による以前の治療を受けた、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
個体が免疫調節剤による以前の治療を受けた、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
個体が、前記処置開始時に改訂された多発性骨髄腫国際病期分類体系(R-ISS)に従って、ステージIまたはステージIIに分類される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
個体が、前記処置開始時にR-ISSに従ってステージIIIとして分類される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
個体が、前記処置開始時にR-ISSに従って分類されない、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
個体が:del(17p)、t(4;14)、t(14;16)およびゲイン(1q21)からなる群より選択される1つまたはそれ以上の細胞遺伝学的異常を有する、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
個体が前記処置開始時に65歳から75歳未満である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
個体が前記処置開始時に75歳以上である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
抗CD38抗体が、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および配列番号8または配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
抗CD38抗体がイサツキシマブである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンが第1の28日周期で投与され、
ここで、抗CD38抗体は第1の28日周期の1、8、15、および22日目に10mg/kgの用量で投与され、カルフィルゾミブは第1の28日周期の1および2日目に20mg/m2の用量で、ならびに8、9、15、および16日目に56mg/m2の用量で投与され、デキサメタゾンは、第1の28日周期の1、2、8、9、15、16、22、および23日目に20mgの用量で投与される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンが、第1の28日周期に続く1つまたはそれ以上の28日周期でさらに投与され、
ここで、抗CD38抗体は、第1の28日周期に続く1つまたはそれ以上の28日周期の1日目および15日目に10mg/kgの用量で投与され、カルフィルゾミブは第1の28日周期に続く1つまたはそれ以上の28日周期の1、2、8、9、15、および16日目のそれぞれに56mg/m2の用量で投与され、デキサメタゾンは、第1の28日周期に続く1つまたはそれ以上の28日周期の1、2、8、9、15、16、22、および23日目に20mgの用量で投与される、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
個体が、前記処置後10-5以下の閾値でMRD陰性である、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2019年12月6日に出願された米国仮出願第62/944,809号;2020年4月17日に出願された欧州特許出願第20315186.5号;2020年5月11日に出願された米国仮出願第63/023,198号;2020年6月10日に出願された米国仮出願第63/037,353号;および2020年10月21日に出願された米国仮出願第63/094,833号(それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の優先権を主張する。
【0002】
ASCIIテキストファイルの配列表の提出
ASCIIテキストファイルに関する以下の提出物の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:配列表(ファイル名:183952033040SEQLIST.txt、記録日:2020年12月4日、サイズ:10kb)のコンピューター可読形式(CRF)。
【0003】
分野
本開示は、カルフィルゾミブおよびデキサメタゾンと組み合わせて抗CD38抗体を投与することによって多発性骨髄腫を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
多発性骨髄腫(MM)は、骨髄(BM)における形質細胞のクローン増殖および過剰量のモノクローナル免疫グロブリン(通常はIgGまたはIgA型または遊離の尿中軽鎖、すなわち、パラプロテイン、Mタンパク質またはM成分)の産生を特徴とする悪性形質細胞疾患である。MMの患者は、骨疼痛、骨折、疲労、貧血、感染症、高カルシウム血症、および腎臓の問題を経験し得る(非特許文献1)。CD38の発現は、患者の98%超がこのタンパク質に陽性であるので、MMで特に顕著である(非特許文献2;非特許文献3)。悪性クローンMM細胞でのCD38の強力かつ均一な発現は、正常細胞での制限された発現パタ-ンとは対照的であり、この抗原が腫瘍細胞の特異的標的化に有用であり得ることを示唆している。
【0005】
MM療法の現在の目的は、疾患を可能な限り効果的に制御し、クオリティーオブライフを最大化し、生存を延長することである。疾患の軌跡は患者ごとに異なるが、再発は避けられず、再発後の各処置に対する応答の強度および持続時間は一般に減少する。一般に、MM患者は、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、イキサゾミブ、およびカルフィルゾミブ)および免疫調節剤または「IMiDs(登録商標)」(例えば、レナリドミド、ポマリドミド、およびサリドマイド)、モノクローナル抗体(例えば、エロツズマブ)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(例えば、パノビノスタット)の単独または組合せなどの薬剤を含む処置レジメンを生涯にわたって受ける。しかし、患者がこれらの薬剤に不応性になると、生存は制限され、幹細胞移植(SCT)、化学療法、プロテアソーム阻害剤、および免疫調節薬(IMiDs(登録商標))に失敗した後の患者を処置するための新しい処置オプションが必要とされている。新しい治療法による患者の転帰の劇的な改善にもかかわらず、MMは依然として不治の病である。したがって、多発性骨髄腫の治療の、以前のラインを1~3回受けた患者の処置は、依然として満たされていない医療ニーズである。
【0006】
特許出願、特許公開、およびUniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号を含む、本明細書で引用される全ての参考文献は、あたかも個々の参考文献が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Rolling等(2015年)Lancet.385巻(9983号):2197-208頁
【文献】Goldmacher等(1994年)Blood.84巻(9号):3017-25頁
【文献】Lin等(2004年)Am J Clin Pathol.121巻(4号):482-8頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
多発性骨髄腫を有するヒト個体を処置する方法が提供され、この方法は、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(V)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含む抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを個体に投与することを含み、ここでこの抗CD38抗体は、10mg/kgの用量で投与され、カルフィルゾミブは20mg/mまたは56mg/mの用量で投与され、およびデキサメタゾンは20mgの用量で投与され、この個体は、多発性骨髄腫に対して、少なくとも1回の以前の治療(例えば、1~3回の以前の治療)を受け、この処置は、この個体の無増悪生存(PFS)を延長する。一部の実施形態では、この処置は、個体の全生存(OS)を延長する。多発性骨髄腫を有するヒト個体を処置する方法が提供され、この方法は、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(V)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含む抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを個体に投与することを含み、ここで、この抗CD38抗体は10mg/kgの用量で投与され、カルフィルゾミブは20mg/mまたは56mg/mの用量で投与され、およびデキサメタゾンは20mgの用量で投与され、この個体は、多発性骨髄腫に対して3回を超える以前の治療を受け、この処置はこの個体の無増悪生存(PFS)を延長する。一部の実施形態では、この処置は、個体の全生存(OS)を延長する。
【0009】
また、多発性骨髄腫を有するヒト個体を処置する方法も提供され、この方法は、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(V)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含む抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを個体に投与することを含み、ここで、この抗CD38抗体は10mg/kgの用量で投与され、このカルフィルゾミブは20mg/mまたは56mg/mの用量で投与され、およびデキサメタゾンは20mgの用量で投与され、ここで、個体は多発性骨髄腫に対して、少なくとも1回の以前の治療(例えば、1~3回の以前の治療)を受け、この処置は個体の全生存(OS)を延長する。
【0010】
また、多発性骨髄腫を有するヒト個体を処置する方法も提供され、この方法は、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(V)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含む抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを個体に投与することを含み、ここで、この抗CD38抗体は10mg/kgの用量で投与され、このカルフィルゾミブは20mg/mまたは56mg/mの用量で投与され、およびデキサメタゾンは20mgの用量で投与され、ここで、個体は多発性骨髄腫に対して、3回を超える以前の治療を受け、この処置は個体の全生存(OS)を延長する。
【0011】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫を有するヒト個体を処置する方法が提供され、この方法は、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(V)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含む抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを個体に投与することを含み、ここで、この抗CD38抗体は10mg/kgの用量で投与され、このカルフィルゾミブは20mg/mまたは56mg/mの用量で投与され、およびデキサメタゾンは20mgの用量で投与され、ここで、個体は多発性骨髄腫に対して、少なくとも1回の以前の治療(例えば、1~3回の以前の治療)を受け、ここで、この個体は、処置後に10-5以下の閾値で微小残存病変陰性である。
【0012】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫を有するヒト個体を処置する方法が提供され、この方法は、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(V)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含む抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを個体に投与することを含み、ここで、この抗CD38抗体は10mg/kgの用量で投与され、このカルフィルゾミブは20mg/mまたは56mg/mの用量で投与され、およびデキサメタゾンは20mgの用量で投与され、ここで、この個体は多発性骨髄腫に対して、少なくとも1回の以前の治療(例えば、1~3回の以前の治療)を受け、ここで、この個体は、処置の開始時に腎機能障害を有する。
【0013】
一部の実施形態では、個体は、多発性骨髄腫に対して1回の以前の治療を受けた。一部の実施形態では、個体は、多発性骨髄腫に対して2回以上の以前の治療を受けた(例えば、2回の以前の治療または3回の以前の治療など)。一部の実施形態では、個体は、多発性骨髄腫に対して3回を超える以前の治療を受けた。一部の実施形態では、個体は、プロテアソーム阻害剤による以前の治療を受けた。一部の実施形態では、個体は、免疫調節薬(例えば、サリドマイド、レナリドミド、および/またはポマリドミド)による以前の治療を受けた。一部の実施形態では、個体は、プロテアソーム阻害剤および免疫調節薬による以前の治療を受けた。一部の実施形態では、個体は、処置の開始時に多発性骨髄腫のための改訂された国際病期分類体系(Revised International Staging System)(R-ISS)に従って、ステージIまたはステージIIとして分類される。一部の実施形態では、個体は、処置の開始時にR-ISSに従ってステージIIIとして分類される。一部の実施形態では、個体は、処置の開始時にR-ISSに従って分類されない。一部の実施形態では、個体は、del(17p)、t(4;14)、およびt(14;16)からなる群より選択される1つまたはそれ以上の細胞遺伝学的異常を有する。一部の実施形態では、個体は、処置の開始時に腎機能障害を有する。一部の実施形態では、個体は、処置の開始時に65歳から75歳未満である。一部の実施形態では、個体は、処置の開始時に75歳以上である。
【0014】
一部の実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(V)および配列番号7または配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(V)を含む。一部の実施形態では、抗CD38抗体はイサツキシマブである。
【0015】
一部の実施形態では、抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンは、第1の28日周期で投与され、抗CD38抗体は、第1の28日周期の1、8、15および22日目に10mg/kgの用量で投与され、カルフィルゾミブは第1の28日周期の1日目と2日目に20mg/mの用量で、8、9、15、および16日目に56mg/mの用量で投与され、ならびにデキサメタゾンは第1の28日周期の1、2、8、9、15、16、22、および23日目に20mgの用量で投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンは、第1の28日周期に続く1つまたはそれ以上の28日周期でさらに投与され、ここで、抗CD38抗体は、第1の28日周期に続く1つまたはそれ以上の28日周期の1日目と15日目に20mg/mの用量で投与され、カルフィルゾミブは、第1の28日周期に続く1つまたはそれ以上の28日周期の1、2、8、9、15、および16日目のそれぞれに56mg/mの用量で投与され、およびデキサメタゾンは、第1の28日周期に続く1つまたはそれ以上の28日周期の1、2、8、9、15、16、22、および23日目に20mgの用量で投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、抗CD38抗体の前に投与され、この抗CD38抗体は、第1の28日周期の1、8、および15日目にカルフィルゾミブの前に投与され;およびここでデキサメタゾンは、第1の28日周期の22日目に抗CD38抗体の前に投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、抗CD38抗体の前に投与され、抗CD38抗体は、第1の28日周期後の28日周期ごとの1日目および15日目に、カルフィルゾミブの前に投与され;およびここでこのデキサメタゾンは、第1の28日周期に続く28日周期ごとの8日目にカルフィルゾミブの前に投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体は、静脈内投与される。一部の実施形態では、カルフィルゾミブは静脈内投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは経口投与される。
【0016】
一部の実施形態では、個体は、処置後、10-4、10-5、10-6、またはそれ未満の閾値でMRD陰性である。
【0017】
本明細書ではまた、本明細書の方法のいずれか1つに従って個々の多発性骨髄腫を処置するために、カルフィルゾミブおよびデキサメタゾンと組み合わせて使用するための抗CD38抗体を含むキットも提供される。
【0018】
また、抗CD38抗体であって、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(V)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含み、個体における多発性骨髄腫を処置する方法における使用のためのものであり、この方法は、この個体に対して、抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを投与することを含み、ここで、この抗CD38抗体は10mg/kgの用量で投与され、このカルフィルゾミブは20mg/mまたは56mg/mの用量で投与され、およびデキサメタゾンは20mgの用量で投与され、ここで、この個体は多発性骨髄腫に対して、少なくとも1回の以前の治療(例えば、1~3回の以前の治療)を受け、ここで、この処置は、個体の無増悪生存(PFS)および/または全生存(OS)を延長する、抗CD38抗体が提供される。
【0019】
また、抗CD38抗体であって、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(V)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含み、個体における多発性骨髄腫を処置する方法における使用のためのものであり、この方法は、この個体に対して、抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを投与することを含み、ここで、この抗CD38抗体は10mg/kgの用量で投与され、このカルフィルゾミブは20mg/mまたは56mg/mの用量で投与され、およびデキサメタゾンは20mgの用量で投与され、ここで、この個体は多発性骨髄腫に対して、3回を超える以前の治療を受け、ここで、この処置は、個体の無増悪生存(PFS)および/または全生存(OS)を延長する、抗CD38抗体が提供される。
【0020】
一部の実施形態では、抗CD38抗体であって、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(V)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含み、個体における多発性骨髄腫を処置する方法における使用のためのものであり、この方法は、この個体に対して、抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを投与することを含み、ここで、この抗CD38抗体は10mg/kgの用量で投与され、このカルフィルゾミブは20mg/mまたは56mg/mの用量で投与され、およびデキサメタゾンは20mgの用量で投与され、ここで、この個体は多発性骨髄腫に対して、少なくとも1回の以前の治療を受け、ここで、この個体は、処置後の閾値が10-5以下で微小残存病変陰性である、抗CD38抗体が提供される。
【0021】
一部の実施形態では、抗CD38抗体であって、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(V)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含み、個体における多発性骨髄腫を処置する方法における使用のためのものであり、この方法は、この個体に対して、抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを投与することを含み、ここで、この抗CD38抗体は、10mg/kgの用量で投与され、このカルフィルゾミブは20mg/mまたは56mg/mの用量で投与され、およびデキサメタゾンは20mgの用量で投与され、ここで、この個体は多発性骨髄腫に対して、少なくとも1回の以前の治療を受け、ここで、この個体は、処置の開始時に腎機能障害を有する、抗CD38抗体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例に記載されている臨床試験の研究デザインの概略図を提供している。
図2】抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンの例示的な投与スケジュールを提供する。
図3】イサツキシマブ+カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(IKd)を投与された患者対、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(Kd)を投与された患者の無増悪生存(PFS)のカプランマイヤー曲線を示している。
図4】無増悪生存のサブグループ分析のフォレストプロットを示している。円はハザード比を表し、横棒はハザード比の推定値の95%信頼区間の下限から上限まで伸びている。
図5】イサツキシマブ+カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(IKd)を投与された患者対、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(Kd)を投与された患者についての次の処置までの時間(TNT)のカプランマイヤー曲線を示している。
図6】イサツキシマブ+カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(IKd)を投与された患者対、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(Kd)を投与された患者についての、微小残存病変(MRD)状態による無増悪生存のカプランマイヤー曲線を示している。
図7】無増悪生存のサブグループ分析の別のフォレストプロットを示している。円はハザード比を表し、横棒はハザード比の推定値の95%信頼区間の下限から上限まで伸びている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
定義
本明細書および添付の請求項で使用されるように、内容が明らかに別途指図しない限り、単数形「a」、「an」および「the」には複数形が含まれる。したがって、例えば、「分子」への言及には、2つ以上のそのような分子の組合せが場合により含まれる、などである。
【0024】
「持続的応答」は、疾患(例えば、多発性骨髄腫)を予防もしくはその進行を遅らせることおよび/または処置の停止の後の1つまたはそれ以上の応答基準を向上させることに及ぼす持続的効果を指す。例えば、多発性骨髄腫のための処置への応答は、Kumar等(2016)「International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma」。Lancet Oncol.17巻(8号):e328~e346頁およびDurie等(2006)「International uniform response criteria for multiple myeloma」。Leukemia.20巻:1467~1473頁の判定基準によって測定することができる。(以下の表Aおよび本明細書の表Bも参照する)。一部の実施形態では、持続的応答は少なくとも処置期間と同じ期間、処置期間の少なくとも1.5×、2.0×、2.5×または3.0×の長さを有する。
【0025】
【表1-1】
【表1-2】
【0026】
用語「医薬製剤」とは、有効成分の生物活性を有効にするような形であり、製剤が投与される対象に許容されないほど毒性である追加の構成成分を含有しない調製物を指す。そのような製剤は無菌である。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加剤)は、用いられる有効成分の有効用量を提供するために対象哺乳動物に合理的に投与することができるものである。
【0027】
本明細書で使用されるように、用語「処置」は、臨床病理の過程で処置される疾患または細胞(例えば、がん細胞)の一般的な経過を変更するように設計された臨床的介入を指す。処置の望ましい効果には、疾患進行の速度を低下させること、疾患状態を改善または緩和すること、および奏効または予後の向上が含まれる。例えば、がん細胞の増殖を低減し(または、破壊し)、疾患に起因する症状を減少させ、疾患を患っている者のクオリティーオブライフを向上させ、疾患を処置するために必要な他の医薬品の用量を減少させ、および/または個体を長生きさせることを含むが、これに限定されず、がんと関連する1つまたはそれ以上の症状が軽減または除去される場合、個体は成功裏に「処置される」。
【0028】
本明細書で使用されるように、「疾患の進行を遅らせる」は、疾患(がんなど)の発生を延ばし、妨げ、遅くさせ、遅らせ、安定させ、および/または延期することを意味する。この遅れは、処置される疾患および/または個体の病歴によって様々な長さの時間であってよい。当業者に明白であるように、十分なまたは有意な遅延は、個体が疾患を起こさないという点で実質的に予防を包含することができる。例えば、転移の発生などの後期のがんを遅らせることができる。
【0029】
「有効量」は、特定の障害の測定可能な向上または予防を成就するために必要とされる少なくとも最小限の量である。本明細書において有効量は、個体/患者の疾患状態、年齢、性別および体重などの因子、ならびに個体で所望の応答を導き出す抗体の能力によって異なってよい。有効量は、処置のいかなる毒性および有害作用よりも、治療的に有益な効果が上回るものでもある。予防的使用に関して、有益であるか所望の結果には、リスクを除去もしくは低減すること、重症度を低くすること、または疾患の生化学的、組織学的および/もしくは挙動の症状、疾患の発達中に現れるその合併症および中間の病理学的表現型を含む疾患の発症を遅らせることなどの結果が含まれる。治療的使用については、有益であるか所望の結果には、疾患に起因する1つまたはそれ以上の症状を減少させ、疾患を患っている者のクオリティーオブライフを向上させ、疾患を処置するために必要な他の医薬品の用量を減少させ、例えば標的化を通して別の医薬品の効果を増強し、疾患の進行を遅らせ、および/または長生きさせることなどの臨床結果が含まれる。がんまたは腫瘍の場合、薬物の有効量は、がん細胞の数を低減すること;腫瘍サイズを低減すること;末梢器官へのがん細胞の浸潤を阻止すること(すなわち、ある程度遅くすること、望ましくは停止すること);腫瘍転移を阻止すること(すなわち、ある程度遅くすること、望ましくは停止すること);腫瘍増殖をある程度阻止すること;および/または障害に関連する症状の1つもしくはそれ以上をある程度軽減することにおいて効果を有することができる。有効量は、1回またはそれ以上の回数で投与することができる。本発明のために、薬物、化合物または医薬組成物の有効量は、予防的または治療的処置を直接的または間接的に達成するのに十分な量である。臨床場面で理解されているように、薬物、化合物または医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物または医薬組成物と併用して達成されても、されなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つまたはそれ以上の治療薬剤を投与する文脈で考慮することができ、1つまたはそれ以上の他の薬剤と一緒に望ましい結果を達成することができるかまたは達成される場合、単一の薬剤を有効量で与えることを考慮することができる。
【0030】
本明細書で使用されるように、「と併用して」は、別の処置モダリティに加えた1つの処置モダリティの投与を指す。このように、「と併用して」は、個体への他の処置モダリティの投与の前、その間またはその後の1つの処置モダリティの投与を指す。
【0031】
処置目的のための「対象」または「個体」は、ヒト、家畜および畜産動物、ならびに動物園、スポーツまたは愛玩動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等を含む哺乳動物に分類される任意の動物を指す。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0032】
本明細書における用語「抗体」は最も広い意味で使用され、具体的にはモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、および、それらが所望の生物活性を示す限り抗体断片を包含する。
【0033】
ヒト軽鎖は通常、カッパ軽鎖およびラムダ軽鎖に分類され、ヒト重鎖は通常、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンに分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして定義する。IgGには、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含むがこれらに限定されないいくつかのサブクラスがある。IgMには、IgM1およびIgM2を含むがこれらに限定されないサブクラスがある。IgAも同様に、IgA1およびIgA2を含むがこれらに限定されないサブクラスに細分される。全長の軽鎖および重鎖内で、可変ドメインおよび定常ドメインは、通常、約12アミノ酸以上の「J」領域によって結合され、重鎖はまた、約10アミノ酸以上の「D」領域を含んでいる。例えば、あらゆる目的のためにその全体が参照により組み込まれている、FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY(Paul、W.編、Raven Press、第2版、1989)を参照のこと。各軽鎖/重鎖の対の可変領域は、通常、抗原結合部位を形成する。抗体の可変ドメインは、通常、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって結合された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)と同じ一般構造を示す。各対の2つの鎖からのCDRは、通常、フレームワーク領域によって整列され、これにより、特定のエピトープへの結合が可能になる場合がある。アミノ末端からカルボキシル末端まで、軽鎖および重鎖の両方の可変ドメインは、通常、順番に、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。
【0034】
「CDRセット」という用語は、抗原に結合し得る単一の可変領域で生じる3つのCDRの群を指す。これらのCDRの正確な境界は、異なるシステムによって定義が異なっている。Kabatによって記述されたシステム(Kabat等,SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987)および(1991))は、抗体の任意の可変領域に適用可能な明白な残基ナンバリングシステムを提供するだけでなく、3つのCDRを定義する正確な残基境界も提供する。これらのCDRは、Kabat CDRと呼ばれる場合もある。
【0035】
本明細書で使用される「Fc」という用語は、単量体もしくは多量体の形態であるか否かにかかわらず抗体の消化から生じるか、または他の手段によって生成され、ヒンジ領域を含み得る非抗原結合断片の配列を指す。天然Fcの元の免疫グロブリン源は、好ましくはヒト起源であり、任意の免疫グロブリンであり得る。Fc分子は、共有結合(すなわち、ジスルフィド結合)および非共有結合によって、二量体または多量体の形態に結合され得る単量体ポリペプチドで構成されている。天然Fc分子の単量体サブユニット間の分子間ジスルフィド結合の数は、クラス(例えば、IgG、IgA、およびIgE)またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgA1、IgGA2、およびIgG4)に応じて1~4の範囲である。Fcの一例は、IgGのパパイン消化から生じるジスルフィド結合二量体である。本明細書で使用される「天然Fc」という用語は、単量体、二量体、および多量体の形態に総称されている。
【0036】
本明細書で使用されるように、用語「全奏効率」または「ORR」は、Kumar等(2016)「International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma」。Lancet Oncol.17巻(8号):e328~e346頁およびDurie等(2006)「International uniform response criteria for multiple myeloma」。Leukemia.20巻:1467~1473頁に記載されるIMWG応答基準を使用してIRCによって調査されるような、厳密完全奏効(sCR)、完全奏効(CR)、最良部分奏効(VGPR)および部分奏効(PR)の患者の割合を指す。本明細書における表Aおよび表Bも参照する。
【0037】
概要
多発性骨髄腫に対して1回、2回、3回、または3回以上の以前の治療を受けた個体の多発性骨髄腫の進行を処置または遅延させるための方法が本明細書において提供される。この方法は、有効量の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを個体に投与することを含む。一部の実施形態では、処置は、個体の無増悪生存(PFS)および/または全生存(OS)を延長する。一部の実施形態では、処置は、処置を受けていない個体と比較して、個体の無増悪生存(PFS)および/または全生存(OS)を延長する。一部の実施形態では、処置は、カルフィルゾミブおよびデキサメタゾンの処置を受けているが抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は受けていない個体と比較して、個体の無増悪生存(PFS)および/または全生存(OS)を延長する。一部の実施形態では、個体は、処置後の微小残存病変(MRD)について陰性である(例えば、10-4以下、10-5以下、または10-6以下の閾値で)。
【0038】
抗CD38抗体
一部の実施形態では、抗CD38抗体はヒトCD38に結合する。一部の実施形態では、抗CD38抗体はヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。一部の実施形態では、抗CD38抗体は(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(V)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含む。一部の実施形態では、抗CD38抗体は配列番号7と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、92%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれか1つ、これらの値の間の任意の範囲を含む)同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(V)を含む。さらに、または代わりに、一部の実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号8または配列番号9と少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、92%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれか1つ、これらの値の間の任意の範囲を含む)同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含む。一部の実施形態では、抗CD38抗体は、配列番号7を含むVおよび配列番号8または配列番号9を含むVを含む。
QVQLVQSGAE VAKPGTSVKL SCKASGYTFT DYWMQWVKQR PGQGLEWIGT IYPGDGDTGY AQKFQGKATL TADKSSKTVY MHLSSLASED SAVYYCARGD YYGSNSLDYW GQGTSVTVSS(配列番号7)
DIVMTQSHLS MSTSLGDPVS ITCKASQDVS TVVAWYQQKP GQSPRRLIYS ASYRYIGVPD RFTGSGAGTD FTFTISSVQA EDLAVYYCQQ HYSPPYTFGG GTKLEIKR(配列番号8)
DIVMAQSHLS MSTSLGDPVS ITCKASQDVS TVVAWYQQKP GQSPRRLIYS ASYRYIGVPD RFTGSGAGTD FTFTISSVQA EDLAVYYCQQ HYSPPYTFGG GTKLEIKR(配列番号9)
【0039】
一部の実施形態では、抗CD38抗体はイサツキシマブ(CAS登録番号:1461640-62-9)である。hu38SB19およびSAR650984としても公知であるイサツキシマブは、その両方の内容が参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、WO2008/047242および米国特許第8,153,765号に記載される抗CD38抗体である。
【0040】
イサツキシマブの重鎖は、以下のアミノ酸配列を含む:
QVQLVQSGAE VAKPGTSVKL SCKASGYTFT DYWMQWVKQR PGQGLEWIGT IYPGDGDTGY
AQKFQGKATL TADKSSKTVY MHLSSLASED SAVYYCARGD YYGSNSLDYW GQGTSVTVSS
ASTKGPSVFP LAPSSKSTSG GTAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV HTFPAVLQSS
GLYSLSSVVT VPSSSLGTQT YICNVNHKPS NTKVDKKVEP KSCDKTHTCP PCPAPELLGG
PSVFLFPPKP KDTLMISRTP EVTCVVVDVS HEDPEVKFNW YVDGVEVHNA KTKPREEQYN
STYRVVSVLT VLHQDWLNGK EYKCKVSNKA LPAPIEKTIS KAKGQPREPQ VYTLPPSRDE
LTKNQVSLTC LVKGFYPSDI AVEWESNGQP ENNYKTTPPV LDSDGSFFLY SKLTVDKSRW
QQGNVFSCSV MHEALHNHYT QKSLSLSPG(配列番号10)
イサツキシマブの軽鎖は、以下のアミノ酸配列を含む:
DIVMTQSHLS MSTSLGDPVS ITCKASQDVS TVVAWYQQKP GQSPRRLIYS ASYRYIGVPD
RFTGSGAGTD FTFTISSVQA EDLAVYYCQQ HYSPPYTFGG GTKLEIKRTV AAPSVFIFPP
SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT
LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC(配列番号11)
【0041】
抗CD38抗体は、組換え方法を使用して生産することができる。抗-抗原抗体の組換え生成のために、抗体をコードする核酸を単離し、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入する。抗体をコードするDNAは、従来の手法を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを使用して)容易に単離し、配列決定をすることができる。多くのベクターが利用可能である。ベクター構成要素には、限定されないが、以下のものの1つまたはそれ以上が一般的に含まれる:シグナル配列、複製起点、1つまたはそれ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーターおよび転写終結配列。ベクターは、核酸の発現のために好適な宿主細胞の中に一般的に形質転換される。一部の実施形態では、宿主細胞は真核細胞または原核細胞である。一部の実施形態では、真核生物の宿主細胞は、哺乳動物細胞である。有益な哺乳動物宿主細胞系の例は、SV40によって形質転換したサル腎臓CV1系(COS-7、ATCC CRL1651);ヒト胚性腎臓系(懸濁培養での増殖のためにサブクローニングした293または293細胞、Graham等、J.Gen Virol.36巻:59頁(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol.Reprod.23巻:243~251頁(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト頸部癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等、Annals N.Y.Acad.Sci.383巻:44~68頁(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒト肝癌系(Hep G2)である。他の有益な哺乳動物宿主細胞系には、DHFR-CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77巻:4216頁(1980));ならびにNS0およびSp2/0などの骨髄腫細胞系が含まれる。抗体産生のために好適なある特定の哺乳動物宿主細胞系のレビューについては、例えば、YazakiおよびWu、Methods in Molecular Biology、第248巻(B.K.C.Lo編、Humana Press、Totowa、N.J.、2003年)、255~268頁を参照する。細胞から調製される抗CD38抗体は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析および親和性クロマトグラフィーを使用して精製することができ、親和性クロマトグラフィーが一般的に好ましい精製工程の1つである。一般に、研究、試験および臨床適用で使用するための抗体を調製するための様々な方法が当技術分野で確立されており、上記の方法と一貫しており、および/または当業者によって適当であると考えられているとおりである。
【0042】
カルフィルゾミブ
カルフィルゾミブは、(2S)-2-アミノ-4-メチル-1-[(2R)-2-メチルオキシラン-2-イル]-1-オキソペンタン-1-オンのアミノ基にアミド結合を介して接続されたC末端と配列して結合されたモルホリン-4-アセチル、L-2-アミノ-4-フェニルブタノイル、L-ロイシルおよびL-フェニルアラニル残基からなる合成テトラペプチドである。カルフィルゾミブの化学構造を以下に示す:
【化1】
【0043】
カルフィルゾミブは、C4057の分子式および719.91g/molの分子量を有する。カルフィルゾミブのCAS登録番号は、868540-17-4である。カルフィルゾミブは、静脈内投与用に処方されたプロテアソーム阻害剤である。カルフィルゾミブは、KYPROLIS(登録商標)の商品名で販売されている。
【0044】
デキサメタゾン
デキサメタゾンの化学名は、1-デヒドロ-16α-メチル-9α-フルオロヒドロコルチゾンであり、デキサメタゾンは、以下の化学構造を有する:
【化2】
【0045】
デキサメタゾンは、C2229FOの分子式および392.461g/molの分子量を有する。デキサメタゾンは、経口および静脈内投与用の製剤として市販されている。デキサメタゾンの例示的な商品名としては、例えば、DECADRON、MAXIDEX、HEXADROL、DEXACORT、DEXASONE、ORADEXON、SUPERPREDNOL、DEXALONAなどが挙げられる。
【0046】
医薬組成物および製剤
抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、カルフィルゾミブ、またはデキサメタゾンを含む多発性骨髄腫(例えば、不応性多発性骨髄腫または再発性かつ不応性の多発性骨髄腫など)の例えば、処置のための医薬組成物および製剤も本明細書で提供される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンのそれぞれは、別個の医薬組成物として提供される。一部の実施形態では、この医薬組成物および製剤は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0047】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、約20mg/mL(500mg/25mL)の抗体、約20mMのヒスチジン、約10%(w/v)スクロース、約0.02%(w/v)ポリソルベート80をpH6.0で含む製剤である。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、約20mg/mLの抗体、約100mg/mLのスクロース、2.22mg/mLの塩酸ヒスチジン一水和物、約1.46mg/mlのヒスチジン、および約0.2mg/mlのポリソルベート80を製剤中に含む。一部の実施形態では、この製剤は、注射用滅菌水(SWFI)などの注射用水(WFI)を含む。一部の実施形態では、この製剤は無菌である。一部の実施形態では、使い捨てのこの製剤は、5mlの製剤(すなわち、100mgの抗CD38抗体)を含む。一部の実施形態では、使い捨ての5mlの製剤は、例えば、エラストマークロージャーが取り付けられた16mLの無色の透明なガラスバイアルのタイプで提供される。一部の実施形態では、バイアルの充填量は、5mLの除去を確実にするために確立されている。一部の実施形態では、充填量は5.4mLである。一部の実施形態では、製剤の使い捨ては、25mlの製剤(すなわち、500mgの抗CD38抗体)を含む。一部の実施形態では、使い捨ての25ml製剤は、例えば、エラストマークロージャーが取り付けられた30mLの無色の透明なガラスバイアルで提供される。一部の実施形態では、バイアルの充填量は、25mLの除去を確実にするために確立されている。一部の実施形態では、この製剤は、約2℃~約8℃の温度で、これらの値の間の任意の範囲を含めて、少なくとも約6、12、18、24、30、または36カ月間安定であり、光から保護される。一部の実施形態では、この製剤は、0.9%塩化ナトリウムまたは5%デキストロースで注入のために希釈される。一部の実施形態では、希釈された注入溶液は、約2℃から約8℃の間のこれらの値の間の任意の範囲を含めて、最大約6、12、18、24、30、36、42、または48時間安定である。一部の実施形態では、注入用の希釈溶液は、約2℃から約8℃の間で保存した後、室温でさらに8時間(注入時間を含む)安定している。一部の実施形態では、注入用の希釈溶液は、光の存在下で安定している。一部の実施形態では、注入用の希釈溶液が保存されるバッグは、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)とフタル酸ジ(エチルヘキシル)(DEHP)または酢酸エチルビニル(EVA)から製造される。一部の実施形態では、注入に使用されるチューブは、PE、PVC(DEHPが有るかもしくは無し)、ポリブチルジエン(PBD)、またはポリウレタン(PU)とインラインフィルター(ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホンまたはナイロン)から製造される。
【0048】
カルフィルゾミブおよびデキサメタゾンの医薬製剤は市販されている。例えば、カルフィルゾミブは、KYPROLIS(登録商標)の商品名で公知である。デキサメタゾンは、DECADRON、MAXIDEX、およびHEXADROLなど、様々な商品名で公知である(本書の他の箇所で説明されている)。一部の実施形態では、カルフィルゾミブおよび/またはデキサメタゾンは、別個の容器で提供される。一部の実施形態では、カルフィルゾミブおよび/またはデキサメタゾンは、市販の製品で入手可能な処方情報に記載されているとおり、それぞれ個体への投与のために使用および/または調製される。
【0049】
処置の方法
個体(例えば、ヒト個体)における多発性骨髄腫(再発性多発性骨髄腫または再発性かつ不応性の多発性骨髄腫など)の進行を処置または遅延させるための方法が本明細書で提供され、有効量の抗CD38抗体(例えば、(a)アミノ酸配列DYWMQ(配列番号1)を含むCDR-H1、アミノ酸配列TIYPGDGDTGYAQKFQG(配列番号2)を含むCDR-H2、およびアミノ酸配列GDYYGSNSLDY(配列番号3)を含むCDR-H3を含む重鎖可変ドメイン(V)、ならびに(b)アミノ酸配列KASQDVSTVVA(配列番号4)を含むCDR-L1、アミノ酸配列SASYRYI(配列番号5)を含むCDR-L2、およびアミノ酸配列QQHYSPPYT(配列番号6)を含むCDR-L3を含む軽鎖可変ドメイン(V)を含む抗CD38抗体)、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを投与することを含み、ここで、個体は、多発性骨髄腫に対して1回、2回、3回、または3回を超える以前の治療(または治療のライン)を受けた。一部の実施形態では、この個体は3回以下の以前の治療(または治療のライン)を受けた。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンによる処置は、個体の無増悪生存(PFS)を延長する。一部の実施形態では、本明細書に記載されるような抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンによる処置は、個体の全生存(OS)を延長する。一部の実施形態では、本明細書に記載の抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンによる処置は、例えば、カルフィルゾミブおよびデキサメタゾンによる処置ならびに抗CD38抗体なしの処置と比較して、微小残存病変(MRD)がより少なくなる。一部の実施形態では、個体は、本明細書に記載されるような抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンによる処置後、MRD陰性である。一部の実施形態では、個体は、処置後10-4以下の閾値(例えば、「10-4」とは、処置開始後に個体から得られた骨髄サンプルにおいて、10個の骨髄細胞あたり1個未満の腫瘍細胞が存在することを意味する)、処置後10-5以下(例えば、「10-5」とは、処置開始後に個体から得られた骨髄サンプルにおいて、10個の骨髄細胞あたり1個未満の腫瘍細胞が存在することを意味する)、または処置後10-6以下(例えば、「10-6」とは、処置開始後に個体から得られた骨髄サンプルにおいて、10個の骨髄細胞あたり1個未満の腫瘍細胞が存在することを意味する)で微小残存病変(MRD)陰性である。一部の実施形態では、MRDは、次世代シーケンシング(NGS)を介して評価される。一部の実施形態では、MRDは、次世代フローサイトメトリー(NGF)を介して評価される。追加的または代替的に、一部の実施形態では、MRDは、陽電子放出断層撮影-コンピューター断層撮影(PET-CT)スキャンを介して評価される。一部の実施形態では、個体は、本明細書に記載されるような抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンによる処置の前に(例えば、処置の開始時に)腎機能障害を示す。一部の実施形態では、個体が60ml/分/1.72m未満のクレアチンクリアランスを有する場合、その個体は腎機能障害を有する(MDRD、すなわち「腎疾患における食事療法の変更(Modification of Diet in Renal Disease)」)。一部の実施形態では、本明細書に記載されるような抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンによる処置は、個体の腎機能を改善する。
【0050】
一部の実施形態では、以下の3つの条件のいずれかが満たされた場合、処置は新しい治療ラインと見なされる。
1.以前のラインの中止後、新しいラインの処置を開始する。何らかの理由で処置レジメンが中止され、異なるレジメンが開始された場合、それは新しい治療ラインと見なすことができる。例えば、レジメンの全ての薬剤が中止された場合、そのレジメンは中止されたと見なされる。例えば、レジメンの全てではないが一部の薬剤が中止された場合、そのレジメンは中止されたとは見なされない。一部の実施形態では、中止、追加、置換、または幹細胞移植(SCT)の理由は、ラインがどのように数えられるかに影響を及ぼさない。変更の理由には、例えば、計画された治療の終了、毒性、進行、応答の欠如、不十分な応答が含まれる場合がある。
2.既存のレジメンにおける1つまたはそれ以上の薬剤の計画外の追加または置換。何らかの理由で計画外に新薬を追加するか、または異なる薬(または薬の組合せ)に切り替えることは、新しい治療ラインと見なすことができる。
3.幹細胞移植(SCT)。事前定義された間隔(3か月など)で計画されたタンデムSCTの場合を除いて、>1 SCTを受けている個体では、使用されるコンディショニングレジメンが同じか異なるかにかかわらず、各SCT(自家または同種異系)は、新しい治療ラインと見なされ得る。一部の実施形態では、計画されたタンデムSCTは1ラインと見なされる。一部の実施形態では、計画された誘導および/または強化、任意のSCT(フロントライン、再発、自家または同種異系)による維持は、一般に1つの治療ラインと見なされる。
【0051】
一部の実施形態では、多発性骨髄腫は治療が困難である。一部の実施形態では、個体の予後は不良である。
【0052】
一部の実施形態では、個体は、多発性骨髄腫、例えば、再発性および/または不応性の多発性骨髄腫を有する。一部の実施形態では、個体は、以下の基準の1つまたはそれ以上に従って測定可能な疾患を有する:血清タンパク質免疫電気泳動を使用して測定された血清Mタンパク質≧0.5g/dLおよび/または尿タンパク質免疫電気泳動を使用して測定された尿Mタンパク質≧200mg/24時間。一部の実施形態では、多発性骨髄腫(例えば、再発性および/または不応性の多発性骨髄腫)を有する個体は、多発性骨髄腫に対して少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、または3回以下の以前の治療(または治療ライン)を受けた。一部の実施形態では、個体は、プロテアソーム阻害剤による以前の治療を受けた。一部の実施形態では、個体は、免疫調節薬(例えば、サリドマイド、レナリドミドおよび/またはポマリドミド)による以前の治療を受けた。一部の実施形態では、個体は、プロテアソーム阻害剤および免疫調節薬による以前の治療を受けた。
【0053】
一部の実施形態では、個体は、原発性不応性多発性骨髄腫を有さない。一部の実施形態では、原発性不応性多発性骨髄腫を有する個体は、疾患経過中に任意の療法(または治療のライン)で少なくとも最小奏効(MR)を達成したことがない個体である。一部の実施形態では、個体は、遊離軽鎖(FLC)測定可能な疾患のみを有さない。一部の実施形態では、個体は、抗CD38抗体による以前の処置を受けていない。一部の実施形態では、個体は、イサツキシマブによる以前の治療(または治療の、以前のライン)を受けていない。一部の実施形態では、個体は、抗CD38抗体による以前の治療(または治療の以前のライン)の間に進行性疾患(PD)を示さなかった。一部の実施形態では、個体は、抗CD38抗体による治療(または治療のライン)の終了後60日以内に進行を示さなかった。一部の実施形態では、個体は、抗CD38抗体を含む治療(または治療のライン)に対して少なくとも最小奏効を達成することに失敗していない。一部の実施形態では、抗CD38抗体を含む以前の治療(またはあるラインの治療)を受けた個体は、抗CD38抗体に対して不応性ではなかった。一部の実施形態では、個体は、カルフィルゾミブによる以前の処置を受けていない。一部の実施形態では、個体は、CAPTISOL(登録商標)(カルフィルゾミブを可溶化するために使用されるシクロデキストリン誘導体)に対してアレルギー性ではない(またはアレルギー性が知られていない)。一部の実施形態では、個体は、スクロース、ヒスチジン(塩基および塩酸塩として)、ポリソルベート80、または抗CD38抗体のいずれかの成分(活性物質または賦形剤)、カルフィルゾミブおよびデキサメタゾン(ステロイドによる前投薬に適さない)、またはH2ブロッカー(これらの薬剤によるさらなる処置を禁止する)に対して過敏性ではないか、または過敏性を示さなかった。一部の実施形態では、個体はデキサメタゾンに対して禁忌ではない。一部の実施形態では、個体は、活性な移植片対宿主病(任意のグレードおよび/または処置開始前2カ月以内に免疫抑制処置を受けている)を伴う以前の同種造血幹細胞移植を受けていない。一部の実施形態では、個体は、アミロイドーシスまたは付随する形質細胞白血病が知られていない。一部の実施形態では、個体は、胸腔穿刺を必要とする胸水もしくは穿刺もしくは任意の主要な手順、例えば、血漿交換、治癒的放射線療法、主要な手術(椎体形成術を含まない)を必要とする腹水を有さない。一部の実施形態では、個体は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)のパフォーマンスステータス(PS)>2を有さない。一部の実施形態では、骨髄(BM)有核細胞の<50%が形質細胞である場合、個体は、血小板<50,000細胞/μLを有さず、BM有核細胞の≧50%が形質細胞である場合、<30,000細胞/μLを有さない。一部の実施形態では、個体は、好中球絶対数(ANC)<1000μ/L(1×109/L)を有さない。一部の実施形態では、個体は、クレアチニンクリアランスが15mL/分/1.73m未満ではない(腎疾患における食事療法の変更[MDRD]式)。一部の実施形態では、個体は、既知のジルベール症候群を除いて、総ビリルビン>1.5×正常上限(ULN)を有さない。一部の実施形態では、個体は、修正された血清カルシウム>14mg/dL(>3.5mmol/L)を有していない。一部の実施形態では、個体は、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)および/またはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)>3×ULNを有さない。一部の実施形態では、個体は、グレード>1(国立癌研究所の有害事象共通毒性基準[NCI-CTCAE]v4.03)の前抗骨髄腫療法からの進行中の毒性(脱毛症および上記の段落に記載されたものを除く)を有さない。一部の実施形態では、個体は、以前の悪性腫瘍を有さない。一部の実施形態では、適切に処置された基底細胞または扁平上皮細胞皮膚または表在性(pTis、pTa、およびpT1)膀胱癌または低リスク前立腺癌または治癒的治療後の任意のインサイチュ悪性腫瘍、ならびに治療が、抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンによる処置開始の5年以上前に完了した他の任意の癌であり、5年以上無病であった患者は、以前の悪性腫瘍とは見なされない。一部の実施形態では、個体は、心筋梗塞、重度/不安定狭心症、冠状動脈/末梢動脈バイパス移植片、ニューヨーク心臓協会クラスIIIまたはIVうっ血性心不全、グレード3以上の不整脈、脳卒中、または一過性脳虚血発作を起こしていない。一部の実施形態では、個体は、心筋梗塞、重度/不安定狭心症、冠状動脈/末梢動脈バイパス移植片、ニューヨーク心臓協会クラスIIIまたはIVうっ血性心不全、グレード3以上の不整脈、脳卒中、または一過性脳虚血発作を、抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンによる処置開始から6か月以内に受けていない。一部の実施形態では、個体は、左心室駆出率(LVEF)が40%未満ではない。一部の実施形態では、個体は、抗レトロウイルス処置を必要とする後天性免疫不全症候群(AIDS)関連の疾患もしくはHIV疾患、または活動性A型肝炎、B型肝炎(既知の陽性B型肝炎表面抗原(HBsAg)結果として定義される)を有するか、またはC型肝炎(アッセイまたは陽性HCV抗原の検出下限よりも大きい、既知の定量的C型肝炎(HCV)リボ核酸(RNA)の結果として定義)の感染を有さないか、もしくは有すると知られていない。一部の実施形態では、個体は、抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンによる処置の開始前の3カ月以内に、以下のいずれも有さない:処置抵抗性の消化性潰瘍疾患、びらん性食道炎または胃炎、感染性または炎症性腸疾患、憩室炎、肺塞栓症、またはその他の制御されていない血栓塞栓症。
【0054】
一部の実施形態では、処置は、28日周期(例えば、1つまたはそれ以上の28日周期)で抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを投与することを含む。
【0055】
一部の実施形態では、処置は、第1の28日周期(すなわち、周期1)において、抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを投与することを含み、ここで抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は1、8、15、および22日目に投与され;カルフィルゾミブは1、2、8、9、15、および16日目に投与され;そして、デキサメタゾンは、1、2、8、9、15、16、22、および23日目に投与される。例えば、図2を参照されたい。一部の実施形態では、処置は、抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを、第1の28日周期(例えば、周期2以降)の後の1つまたはそれ以上の追加の28日周期で投与することを含み、ここでこの抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は1日目と15日目に投与され;カルフィルゾミブは1、2、8、9、15、および16日目に投与され;ならびにデキサメタゾンは、1、2、8、9、15、16、22、および23日目に投与される。例えば、図2を参照されたい。
【0056】
一部の実施形態では、処置は、第1の28日周期(すなわち、周期1)で抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを投与することを含み、ここでこの抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、1、8、15、および22日目に10mg/kgの用量で投与され;カルフィルゾミブは、1日目と2日目に20mg/mの用量で、8、9、15、および16日目に56mg/mの用量で投与され;ならびにデキサメタゾンは、1、2、8、9、15、16、22、および23日目に20mgの用量で投与される。例えば、本明細書の表Dを参照のこと。一部の実施形態では、処置は、抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを、第1の28日周期(例えば、周期2以降)の後の1つまたはそれ以上の追加の28日周期で投与することを含み、ここで、この抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、1日目と15日目に10mg/kgの用量で投与され;カルフィルゾミブは、1、2、8、9、15、および16日目に56mg/mの用量で投与され;ならびにデキサメタゾンは、1、2、8、9、15、16、22、および23日目に20mgの用量で投与される。例えば、本明細書の表Dを参照のこと。
【0057】
一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンは、同時に投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンは、同時に投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンは、連続して投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンが連続して投与され、デキサメタゾンが抗CD38抗体の前に投与され、抗CD38抗体は各28日周期の日にカルフィルゾミブの前に投与され、ここで抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンの3つ全てが投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンが連続して投与され、デキサメタゾンは、抗CD38がない各28日周期の日に、カルフィルゾミブの前に投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、静脈内投与される。一部の実施形態では、カルフィルゾミブは静脈内投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、静脈内または経口的に投与される。一部の実施形態では、デキサメタゾンは、各28日周期の日に静脈内投与される。
【0058】
一部の実施形態では、個体のPFSは、処置の開始から進行性疾患(PD)の最初の発生までの期間として測定される。一部の実施形態では、PDは、Kumar等(2016)“International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma.”Lancet Oncol.17(8):e328-e346)およびDurie等(2006)“International uniform response criteria for multiple myeloma.Leukemia.20:1467-1473の基準に従って評価される。(表Aおよび表Bも参照のこと)。一部の実施形態では、PFSは、治療の開始から死亡の時間までの時間として測定される。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法および使用は、抗CD38抗体を含まないカルフィルゾミブおよびデキサメタゾンを含む処置を受けた多発性骨髄腫(不応性多発性骨髄腫または再発性かつ不応性の多発性骨髄腫など)を有する個体と比較して、個体の無増悪生存(PFS)の改善(例えば、延長)をもたらす。一部の実施形態では、処置は、個体のPFSを増大させる。
【0059】
一部の実施形態では、全生存(OS)は、処置の開始から死に至るまでの期間として測定される。一部の実施形態では、処置は、抗CD38抗体なしでカルフィルゾミブおよびデキサメタゾンを含む処置を受けた多発性骨髄腫(例えば、不応性多発性骨髄腫または再発性かつ不応性の多発性骨髄腫)を有する個体と比較して、個体のOSを増大させる。
【0060】
一部の実施形態では、抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンによる処置を受けている個体における最初の応答までの時間は、カルフィルゾミブおよびデキサメタゾンによる処置を受けている個体における最初の応答までの時間よりも短い。一部の実施形態では、「最初の応答までの時間」とは、最初の投与の日付と応答の最初の兆候の日付との間の期間を指す(例えば、表Aを参照のこと)。一部の実施形態では、抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンによる処置を受けている個体の応答期間(DOR)は、カルフィルゾミブおよびデキサメタゾンによる処置を受けている個体のDORよりも長い。一部の実施形態では、DORは、部分奏効(PR)以上を達成する個体(または複数の個体)の応答の日から、最初に証明された進行性疾患(PD)または死亡のいずれか早い方の日までの時間を指す。
【0061】
一部の実施形態では、個体は、抗CD38抗体、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンによる処置後の微小残存病変(MRD)または「MRD陰性」について陰性である。一部の実施形態では、MRD状態は、次世代フローサイトメトリー(NGF)によって測定される。一部の実施形態では、NGFによって測定されるMRD陰性(または「フローMRD陰性」)とは、骨髄吸引液中に表現型的に異常なクローン血漿細胞(多発性骨髄腫細胞など)が存在せず(例えば、多発性骨髄腫におけるMRD検出のためのEUROFLOW(商標)ハイスループットフローサイトメトリーの標準操作手順(Flores-Montero等(2017)Leukemia.31:2094-2103を参照)または同等の方法を使用)、最小感度が、例えば10個の有核細胞に1個(すなわち「10-4」)、10個の有核細胞に1個(すなわち「10-5」)、10個の有核細胞に1個(すなわち「10-6」)、または10個の有核細胞に1個(すなわち「10-7」)であることを指す。一部の実施形態では、MRD状態は、次世代シーケンシング(NGS)によって測定される。一部の実施形態では、NGSによって測定されるMRD陰性(または「シーケンシングMRD陰性」)とは、骨髄吸引液中にクローン形質細胞(例えば、多発性骨髄腫細胞)が存在しないことを指す;クローンの存在は、骨髄吸引液のDNA配列決定(例えば、LYMPHOSIGHT(登録商標)ハイスループットシーケンシングプラットフォームまたは同等の方法を使用)後に、例えば10個の有核細胞に1(すなわち「10-4」)、10個の有核細胞に1個(すなわち「10-5」)、10個の有核細胞に1個(すなわち「10-6」)、またはそれ以上の最小感度で得られた少なくとも2つの同一のシーケンシングリードとして定義される。一部の実施形態では、最小感度は、10個の有核細胞のうちの1個の細胞(「10-6」)である。一部の実施形態では、個体は、画像化およびMRDの両方によって陰性である(または「画像化+MRD陰性」)。一部の実施形態では、画像化+MRD陰性とは、(a)NGFによって検出されるとおりMRD陰性であるか、またはNGSによって検出されるとおりMRD陰性であり、(b)ベースラインまたは先行する陽電子放出断層撮影(PET)/コンピューター断層撮影(Ct)で見出される増大したトレーサー取り込みのあらゆる領域の消失、または縦隔血液プールの最大標準化取込値未満への減少、もしくは周囲の正常組織のそれよりも少ない減少を指す。一部の実施形態では、個体は「持続的なMRD陰性」である。一部の実施形態では、持続的MRD陰性は、処置開始後の2つの時点で画像化+MRD陰性であることが確認された個体であって、その時点は1年以上離れている個体を指す。一部の実施形態では、微小残存病変(MRD)は、本明細書に記載されるように、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンによる処置を受けた個体から収集された骨髄サンプルを使用して、NGFまたはNGSを介して評価される。一部の実施形態では、MRDについて評価される個体は、本明細書に記載されるように、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンによる処置中または処置後に、完全奏効以上(すなわち、≧CR)を達成したか、または最良部分奏効以上(すなわち、≧VGPR)を達成した。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンで処置された個体であって、MRD陰性状態を達成する個体は、処置の開始時に、処置の間、または処置後に腎機能障害、例えば、eGFR<60mL/分/1.73mを有する。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンで処置された個体であってMRD陰性状態を達成する個体は、診断時にISSステージIIIとして分類される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンで処置された個体であって、MRD陰性状態を達成する個体は、t(4;14)およびゲイン(1q21)から選択される1つまたはそれ以上の細胞遺伝学的異常を有する。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンで処置された個体であって、MRD陰性状態を達成する個体は、多発性骨髄腫に対して3回以上の以前の治療ラインを受けているなど、高度に前処置されている。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンで処置された個体であって、MRD陰性状態を達成する個体は、その最後のレジメン(例えば、多発性骨髄腫の最後の処置レジメン)でレナリドミドに不応性であった。
【0062】
本明細書に記載の使用のための抗CD38抗体の任意の方法の一部の実施形態では、個体は65歳未満である。一部の実施形態では、個体は65歳から75歳未満である。一部の実施形態では、個体は75歳以上である。一部の実施形態では、個体は女性である(例えば、出産可能年齢の出生可能な女性)。個体が女性であり妊娠可能な一部の実施形態では、その個体は、抗CD38抗体による処置中および抗CD38抗体の最後の投与後5カ月間、効果的な避妊方法を使用してもよい。
【0063】
一部の実施形態では、個体は、多発性骨髄腫に対して1回の以前の治療(または以前の治療ライン)を受けている。一部の実施形態では、個体は、多発性骨髄腫に対して2回以上(例えば、2回、3回、または3回以上)の以前の治療(または以前の治療ライン)を受けている。一部の実施形態では、個体は、多発性骨髄腫に対して、1回より多いが3回以下の以前の治療(または以前の治療ライン)を受けている。一部の実施形態では、個体は、多発性骨髄腫に対して3回を超える以前の治療(または以前の治療ライン)を受けている。一部の実施形態では、個体は、多発性骨髄腫改訂国際病期分類体系(R-ISS)によると、ステージIまたはステージIIである。一部の実施形態では、多発性骨髄腫R-ISSによるステージIとは、(a)3.5mg/L未満という血清ベータ-2ミクログロブリンレベル、(b)3.5g/dL以上の血清アルブミン、(c)相間蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(iFISH)によって検出された標準的なリスクの染色体/細胞遺伝学的異常、および(d)正常な血清乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベル、として定義される。一部の実施形態では、多発性骨髄腫R-ISSによるステージIIとは、R-ISSステージIまたはステージIIIではないと定義される。一部の実施形態では、個体は、多発性骨髄腫改訂国際病期分類体系(R-ISS)によるステージIIIである。一部の実施形態では、多発性骨髄腫R-ISSによるステージIIIは、(a)約5.5mg/Lを超える血清ベータ-2ミクログロブリンレベル、および(b)相間蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(iFISH)によって検出された高リスクの細胞遺伝学的異常、または(c)正常の上限を超える血清乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルのいずれかとして定義される。一部の実施形態では、個体は、高リスクの細胞遺伝学的異常(CA)を有する。一部の実施形態では、高リスクの細胞遺伝学的異常は、del(17p)、t(4:14)、および/またはt(14;16)のうちの1つまたはそれ以上である。一部の実施形態では、個体は、R-ISSによって分類されない。一部の実施形態では、決定的でないiFISHに起因して、個体はR-ISSによって分類されない。
【0064】
一部の実施形態では、個体は、del(17p)、t(4:14)、およびt(14:16)から選択される1つまたはそれ以上の高リスクの細胞遺伝学的異常を有する。追加的または代替的に、一部の実施形態では、個体は、del(1p)、gain(1q)、またはdel(1p)およびgain(1q)の両方の細胞遺伝学的異常を有する。
【0065】
抗CD38抗体の静脈内投与
一部の実施形態では、抗CD38抗体は、静脈内注入を介して投与され、ここで、各注入は、250mlの容量(例えば、固定容量)からのものである。一部の実施形態では、個体は、250ml容量からの静脈内注入を介した抗CD38抗体の投与中または投与後に注入反応(IR)を経験しない。一部の実施形態では、個体は、250ml容量からの静脈内注入を介した抗CD38抗体の投与中または投与後に、軽度のIRのみを経験する。
【0066】
一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、第1の28日周期で個体に投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、第1の28日周期の1、8、15、および22日目のそれぞれに250mlの容量から10mg/kgの用量で個体に投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、第1の28日周期の1日目に最初の1時間は25mL/時間の注入速度で静脈内注入を通して個体に投与され、注入速度は抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の250mlが注入されるまで最初の1時間の後に30分おきに25mL/時間ずつ最大注入速度150mL/時間まで増大される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、第1の28日周期の1日目に最初の30分間は12.5mL/時間の注入速度で静脈内注入を通して個体に投与され、注入速度は抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の250mlが注入されるまで最初の30分間の後に30分おきに25mL/時間ずつ増加される。一部の実施形態では、第1の28日周期の1日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は、約2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.2、6.3、6.4または6.5時間のいずれか1つ以下であり、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、第1の28日周期の1日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約3.3から約6.1時間の間であり、この範囲の中の任意の値を含む。一部の実施形態では、第1の28日周期の1日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約3.2から5.5時間の間、例えば約3.36から約5.32時間の間である。一部の実施形態では、第1の28日周期の1日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約3.8から4.2時間の間、例えば約3.94時間である。一部の実施形態では、注入期間は注入の完了の前の一時的な中断を含む。
【0067】
一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、第1の28日周期の8日目に最初の30分間は50mL/時間、第2の30分間は100mL/時間、第3の30分間は200mL、第3の30分間の後は抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の250mlが注入されるまで300mL/時間の注入速度で静脈内注入を通して個体に投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、第1の28日周期の8日目に最初の30分間は25mL/時間の注入速度で静脈内注入を通して個体に投与され、注入速度は抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の250mlが注入されるまで最初の30分間の後に30分おきに50mL/時間ずつ増大される。一部の実施形態では、第1の28日周期の1日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9または4.0時間のいずれか1つ以下であり、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、第1の28日周期の8日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約1.5から約3.5時間の間であり、この範囲の中の任意の値を含む。一部の実施形態では、第1の28日周期の8日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約1.4から約2.7時間の間、例えば約1.52から約2.6時間の間である。一部の実施形態では、第1の28日周期の8日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約1.5から2.0時間の間、例えば約1.88時間である。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は、注入の完了前の一時的な中断を含む。
【0068】
一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、第1の28日周期の15日目に抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の250mlが注入されるまで200ml/時間の注入速度で静脈内注入を通して個体に投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、第1の28日周期の15日目に最初の30分間は100ml/時間の注入速度で静脈内注入を通して個体に投与され、注入速度は抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の250mlが注入されるまで最初の30分間の後に30分おきに50mL/時間ずつ増大される。一部の実施形態では、第1の28日周期の15日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9または4.0時間のいずれか1つ以下であり、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、第1の28日周期の1日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約1.2から約3.4時間の間であり、この範囲の中の任意の値を含む。一部の実施形態では、第1の28日周期の15日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約1から2時間の間、例えば約1.03から約1.87時間の間である。一部の実施形態では、第1の28日周期の15日目の注入期間は約1から1.5時間の間、例えば約1.27時間である。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は、注入の完了前の一時的な中断を含む。
【0069】
一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、第1の28日周期の22日目に抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の250mlが注入されるまで200ml/時間の注入速度で静脈内注入を通して個体に投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、第1の28日周期の22日目に最初の30分間は100ml/時間の注入速度で静脈内注入を通して個体に投与され、注入速度は抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の250mlが注入されるまで最初の30分間の後に30分おきに50mL/時間ずつ増大される。一部の実施形態では、第1の28日周期の22日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9または4.0時間のいずれか1つ以下であり、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、第1の28日周期の22日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約1.1から約2時間の間であり、この範囲の中の任意の値を含む。一部の実施形態では、第1の28日周期の22日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約1から2時間の間、例えば約1.18から約1.52時間の間である。一部の実施形態では、第1の28日周期の22日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約1から1.5時間の間、例えば約1.27時間である。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は、注入の完了前の一時的な中断を含む。
【0070】
一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、1つまたはそれ以上の以後の28日周期(例えば、第1の28日周期に続く)に以後の各28日周期の1および15日目の各々の日に250mlの容量から10mg/kgの用量で静脈内注入を通してさらに投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、以後の各28日周期(例えば、第1の28日周期に続く)の1日目に抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の250mlが注入されるまで200ml/時間の注入速度で静脈内注入を通して個体に投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、以後の各28日周期(例えば、第1の28日周期に続く)の1日目に最初の30分間は100ml/時間の注入速度で静脈内注入を通して個体に投与され、注入速度は抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の250mlが注入されるまで最初の30分間の後に30分おきに50mL/時間ずつ増大される。一部の実施形態では、以後の各28日周期(例えば、第1の28日周期に続く)の1日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9または4.0時間のいずれか1つ以下であり、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、以後の各28日周期(例えば、第1の28日周期に続く)の1日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約1.1から約1.6時間の間であり、この範囲の中の任意の値を含む。一部の実施形態では、以後の各28日周期(例えば、第1の28日周期に続く)の1日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約1から2時間の間、例えば約1.19から約1.41時間の間である。一部の実施形態では、以後の各28日周期(例えば、第1の28日周期に続く)の1日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約1から1.5時間の間、例えば約1.27時間である。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は、注入の完了前の一時的な中断を含む。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、以後の各28日周期(例えば、第1の28日周期に続く)の15日目に抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の250mlが注入されるまで200ml/時間の注入速度で静脈内注入を通して個体に投与される。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)は、以後の各28日周期(例えば、第1の28日周期に続く)の15日目に最初の30分間は100ml/時間の注入速度で静脈内注入を通して個体に投与され、注入速度は抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の250mlが注入されるまで最初の30分間の後に30分おきに50mL/時間ずつ増大される。一部の実施形態では、以後の各28日周期(例えば、第1の28日周期に続く)の15日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9または4.0時間のいずれか1つ以下であり、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、以後の各28日周期(例えば、第1の28日周期に続く)の1日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約1.2から約1.6時間の間であり、この範囲の中の任意の値を含む。一部の実施形態では、以後の各28日周期(例えば、第1の28日周期に続く)の1日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約1から2時間の間、例えば約1.2から約1.46時間の間である。一部の実施形態では、以後の各28日周期(例えば、第1の28日周期に続く)の1日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約1から1.5時間の間、例えば約1.27時間である。一部の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は、注入の完了前の一時的な中断を含む。
【0071】
一部の実施形態では、第1の28日周期の15日目以後(例えば、第1の28日周期の22日目ならびに以後の各28日周期の1および15日目を含む)の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の各注入の期間は、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9または4.0時間のいずれか1つ以下であり、これらの値の間の任意の範囲も含まれる。一部の実施形態では、第1の28日周期の15日目以後(例えば、第1の28日周期の22日目ならびに以後の各28日周期の1および15日目を含む)の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の各注入の期間は約0.7から約3.4時間の間であり、この範囲の中の任意の値を含む。一部の実施形態では、第1の28日周期の15日目以後(例えば、第1の28日周期の22日目ならびに以後の各28日周期の1および15日目を含む)の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の各注入の期間は約1から2時間の間、例えば約1.13から約1.53時間の間である。一部の実施形態では、以後の各28日周期(例えば、第1の28日周期に続く)の1日目の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入期間は約1から1.5時間の間、例えば約1.25時間である。
【0072】
一部の実施形態では、個体は、250mlの容量で10mg/kgの用量の抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の投与(例えば、静脈内注入)の間またはその後に注入反応(IR)を経験しない。一部の実施形態では、250mlの容量で10mg/kgの用量の抗CD38抗体の投与(例えば、静脈内注入による)は、投与の間またはその後に個体にIRを経験させない。IRとは、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の静脈内注入への有害な反応によって特徴付けられる障害を指す。IRは、注入の間または注入から24時間(例えば、注入開始時間から24時間)以内に起こることができる。IRの徴候または症状には、以下の1つまたはそれ以上が含まれる:錯感覚、胸痛、咳、鼻うっ滞、くしゃみ、のど刺激、そう痒、失神、紅潮、悪寒、発熱、蕁麻疹、血管性水腫、発疹、皮膚反応、かゆみ、斑丘疹発疹、心頻拍、血圧低下、呼吸困難、吐き気、嘔吐、頭痛、背部痛、胸部不快または非心臓胸痛、腹部疼痛、腹部痙攣、気管支痙攣、喉頭痙攣、喘鳴、呼吸器官うっ滞、過剰発汗および紅斑。(さらなる詳細については、例えば、Doessegger等(2015)Clin & Trans Immunol.4巻(7号):e39頁を参照。)したがって、一部の実施形態では、個体はこれらの徴候または症状のいずれの1つまたはそれ以上も経験しない。
【0073】
一部の実施形態では、個体は、前投薬、すなわち、IRを予防または最小化する目的で抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入の前に投与される投薬を受ける(例えば、必要とする)ことがない。一部の実施形態では、個体は、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入の完了後のIRを予防または最小化するための投薬(例えば、予防的投薬)を受ける(例えば、必要とする)ことがない。一部の実施形態では、個体は、250mlの容量からの10mg/kgの用量での抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の投与(例えば、静脈内注入)後に遅延注入反応を経験しない。一部の実施形態では、個体は、250mlの容量からの10mg/kgの用量で抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の投与(例えば、静脈内注入)後、約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、または3.0時間のいずれか1つ以内に遅延注入反応を経験しない。一部の実施形態では、個体は、後投薬、すなわちIRを防止または最小化する目的で250ml容量からの10mg/kgの用量での抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入後に投与される投薬を受ける(例えば、必要とする)ことがない。一部の実施形態では、個体は、例えば、IRを予防または最小化する目的で、250mlの容量から10mg/kgの用量で、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入後、約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5または3時間のうちのいずれか少なくとも1つまたはそれ以上の内に後投与を受ける(例えば、必要とする)ことがない。一部の実施形態では、個体は、250mlの容量からの10mg/kgの用量で抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の注入前にIRを予防または最小化する目的で、以下のうちの任意の1つまたはそれ以上を用いた前投薬も後投薬も受けない:鎮痛薬(例えば、アセトアミノフェンまたはパラセタモール)、H2アンタゴニストまたは制酸剤(例えば、ラニチジン、シメチジン、オメプラゾール、またはエソメプラゾール)、抗炎症剤(例えば、コルチコステロイドまたは非ステロイド性抗炎症薬)、および/または抗ヒスタミン(例えば、ジフェンヒドラミン、セチリジン、プロメタジン、デクスクロルフェニラミン)。
【0074】
一部の実施形態では、個体は抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の投与の後に軽度のIRを経験する。一部の実施形態では、軽度のIRは、米国国立がん研究所の有害事象共通用語基準(National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events)、バージョン4.03(NCI-CTCAE v.4.03)で規定されるグレード1またはグレード2以下のIRである。NCI-CTCAEv.4.03は、evs(dot)nci(dot)nih(dot)gov/ftp1/CTCAE/About(dot)html.においてオンラインで公開されている。一部の実施形態では、個体が軽度の一時的反応(例えば、注入開始から例えば24時間以内の本明細書に記載される徴候/症状の1つまたはそれ以上)を経験する場合にはIRはグレード1のIRであり、ここでは注入の中断が指示されず、および/または介入が指示されない。一部の実施形態では、個体が反応(例えば、注入開始から例えば24時間以内の本明細書に記載される徴候/症状の1つまたはそれ以上)を経験する場合にはIRはグレード2のIRであり、ここでは注入が中断され、および/または介入が指示され、個体は処置(すなわち、本明細書に記載されるものなどのIRの1つまたはそれ以上の徴候または症状の処置)に対してすぐに、例えばIRのための処置から約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20または24時間のいずれか1つ以内(これらの値の間の任意の範囲を含む)に応答する。一部の実施形態では、IRのための処置は以下の1つまたはそれ以上を含む:注入の短期中断、酸素の投与、気管支拡張剤の投与、コルチコステロイドの投与、ヒスタミンブロッカーの投与およびより遅い速度で注入を再開すること。
【0075】
一部の実施形態では、個体は、例えば第1の28日周期の1日目の注入の間に、250mlの固定容量での抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の10mg/kgの第1の静脈内注入の間かその後に軽度のIR(例えば、グレード1またはグレード2のIR)を経験する。一部の実施形態では、個体は、250mlの固定容量での抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の第2のまたは以降の注入の間にIR(またはさらなるIR)を経験しない。例えば、一部の実施形態では、個体は、第1の28日周期の8、15および22日目のいずれの日にもならびにいかなる以後の28日周期の1および15日目のいずれの日にも、250mlの固定容量での抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の10mg/kgの注入の間にIR(またはさらなるIR)を経験しない。
【0076】
一部の実施形態では、個体は、例えば本明細書に記載される方法による250mlの容量での抗CD38抗体の注入の後に、中等度または重度のIRを経験しない。一部の実施形態では、個体は、米国国立がん研究所の有害事象共通用語基準(National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events)、バージョン4.03(NCI-CTCAE v.4.03)で規定されるグレード3、4または5のIRを経験しない。一部の実施形態では、個体がIRの長期にわたる徴候/症状(例えば本明細書に記載されるもの)を経験し、IRのための医薬品および/または注入の中断に速やかに応答しない場合、IRはグレード3のIRである。一部の実施形態では、個体が最初の改善の後にIRの徴候/症状(例えば本明細書に記載されるもの)の再発を経験する場合、IRはグレード3のIRである。一部の実施形態では、個体がIRの徴候/症状(例えば本明細書に記載されるもの)のために入院を要する場合、IRはグレード3のIRである。一部の実施形態では、徴候/症状(例えば本明細書に記載されるもの)が生命にかかわる場合、および/または緊急の介入を必要とする場合、IRはグレード4のIRである。一部の実施形態では、IRの徴候/症状が死をもたらす場合、IRはグレード5のIRである。
【0077】
一部の実施形態では、250mlの容量から投与される抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)の用量は、例えば、個体がIRを経験するかどうかにかかわらず、処置中に減少されない。
【0078】
製造品またはキット
本発明の別の実施形態では、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)を含む製造品またはキットが提供される。一部の実施形態では、カルフィルゾミブ、および/またはデキサメタゾンをさらに含む製造品またはキット。一部の実施形態では、製造品またはキットは、多発性骨髄腫に対して1~3回の以前の治療(または以前の治療ライン)を受けた個体において、多発性骨髄腫(例えば、不応性多発性骨髄腫または再発性および不応性の多発性骨髄腫)の進行を処置または遅延させるために、カルフィルゾミブおよびデキサメタゾンと併用して、抗CD38抗体(例えば、イサツキシマブ)を使用するための説明書を含む添付文書をさらに含む。一部の実施形態では、キットは、イサツキシマブ、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンを含む。
【0079】
本明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分であると見なされる。本明細書に示され、説明されたものに加えて、本発明の様々な修正は、前述の説明から当業者に明らかになり、添付の特許請求の範囲に含まれる。本明細書で引用される全ての刊行物、特許、および特許出願は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0080】
本開示は、以下の実施例を参照することにより、より完全に理解されるであろう。しかしながら、それらは、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例および実施形態は、例示のみを目的としていること、それに照らして様々な修正または変更が当業者に提案され、本出願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内におさまるものであることが理解される。
【0081】
実施例1A:不応性または再発性および不応性の多発性骨髄腫の患者において、イサツキシマブ(SAR650984)とカルフィルゾミブおよび低用量デキサメタゾンとの併用に対してカルフィルゾミブおよび低用量デキサメタゾンの併用を比較した第III相無作為化非盲検多施設試験
【0082】
この実施例は、イサツキシマブとカルフィルゾミブおよびデキサメタゾンとの併用(「IKd」群)対カルフィルゾミブおよびデキサメタゾン週2回(「Kd」群)の臨床的利益を、以前に1~3つの以前のラインで処置を受けた再発および/または不応性の多発性骨髄腫の患者において評価する第III相、多施設、多発性、無作為化、非盲検、並行群、2群試験を記載している。
【0083】
I.研究の目的
A.主な目的
この試験の主な目的(すなわち、主要エンドポイント)は、以前に1~3ラインの治療で処置された再発性および/または不応性のMMの患者における、カルフィルゾミブおよびデキサメタゾン(Kd)と比較した、IMWG基準を使用したPFSの延長において、イサツキシマブとカルフィルゾミブおよびデキサメタゾンとの併用(IKd)の利益を実証することである。
【0084】
無増悪生存は、無作為化の日から進行性疾患の最初の記録の日または任意の原因による死亡の日のうち、どちらか早い方までの時間として定義される。応答および進行は、IMWG基準に従って決定される(Kumar等(2016)“International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma.”Lancet Oncol.17巻(8号):e328-e346)およびDurie等(2006)“International uniform response criteria for multiple myeloma.Leukemia.20:1467-1473頁を参照のこと)パラプロテインに基づく進行は、2回の連続した評価に基づいて確認される。
【0085】
以下の疾患評価手順は、スクリーニング(適格性について)を、試験処置投与の前の周期1の1日目(応答評価のベースライン)、処置中の進行までのあらゆる周期の1日目、処置の終了(EOT)で、およびPDなしで試験処置を中止する患者の場合、PDまでのフォローアップ中の毎月(PDなしでさらに抗骨髄腫療法を開始する患者でさえ)行う:
・ Mタンパク質の定量(血清および24時間尿、タンパク質免疫電気泳動、および免疫固定)。周期1の1日目の後、Mタンパク質(血清および尿)が検出されない場合は免疫固定が行われる。
・ 無血清軽鎖定量。
・ 定量的免疫グロブリン。
・ ベースライン(骨髄疾患の関与、FISH、およびMRD)での骨髄穿刺(または臨床的に示される生検)、その後は、VGPR以上の場合。
・ 骨疾患の評価:
-骨格検査または低線量全身コンピューター断層撮影(CT)スキャンは、ベースラインで、その後は年に1回、臨床的に必要な場合は研究中いつでも。
・ 髄外疾患(形質細胞腫)の評価(骨形質細胞腫を含む):
- ベースラインで既知の髄外疾患の場合、CTスキャンまたは磁気共鳴画像法(MRI)をベースラインで行い、PDまで(PDなしでさらに抗骨髄腫治療を開始する患者でも)、および臨床的に適応がある場合、12週間(±1週間)ごとに繰り返す。
- ベースラインで髄外疾患(形質細胞腫)が疑われる場合は、ベースラインでCTスキャンまたはMRIを行い、形質細胞腫が確認された場合は、PDまで(PDなしの抗骨髄腫療法をさらに開始する患者の場合でも)、および臨床的に適応がある場合、12週間(±1週間)ごとにCTスキャンまたはMRIを繰り返す。
- 試験処置中の任意の時点で、既存の形質細胞腫の進行が疑われる場合、または髄外疾患の以前の陽性画像がない患者で臨床的に適応となる場合。
【0086】
骨病変評価および髄外疾患については、同じモダリティ(骨格調査または低線量全身CTスキャン;CTスキャンまたはMRI)が、個々の患者ごとに研究全体にわたって使用される。
【0087】
進行性疾患(IMWG基準)は、測定可能な血清および/または尿Mタンパク質を有する患者について、以下のいずれか1つとして定義される(2つの連続した評価における生物学的基準)。
・ 最下点からの血清M成分の25%以上の増大(絶対的な増大は0.5g/dL以上でなければならない);開始M成分が5g/dL以上の場合、再発を定義するには、2回の連続評価で血清M成分が1g/dL以上増大すれば十分である;および/または
・ 最下点からの尿M成分の25%以上の増大(絶対的な増大は200mg/24時間以上でなければならない);および/または
・ 新しい骨病変もしくは軟組織髄外疾患の明確な発症、または1病変を超える場合、既存の軟組織髄外疾患病変の垂直直径の合計で最下点から50%以上増大、または短軸で1cmを超える以前の軟組織髄外疾患病変の最長直径が50%以上増大。
【0088】
独立審査委員会が、報告された臨床データを、臨床的進行を支持すると見なす場合、臨床的悪化は、PFSの一次分析において進行と見なされる。高カルシウム血症の場合、骨髄腫進行の任意の測定可能なパラメータ(例えば、血清および尿Mタンパク質、溶解性病変の評価、および形質細胞腫の評価)を特定するために完全な疾患評価を行い、高カルシウム血症の潜在的な代替原因を除外する必要がある。進行はFLC進行のみで診断されるのではない。FLC測定可能な疾患のみの患者はプロトコルで許可されていない。血清と尿の両方のMタンパク質が、周期1の1日目に実施された有効性検査室で適格レベルを下回った場合、進行および全奏効は、以下の表AおよびBの基準に従って評価される。
【0089】
【表2-1】
【表2-2】
【0090】
【表3】
【0091】
B.主要な二次有効性エンドポイント
主要な二次有効性エンドポイントは次のとおりである。
・ ORR:ORRを決定するために、患者ごとの最良の全奏効が評価される。これは、IMWG応答基準を使用して評価された、最良全奏効の厳密完全奏効(sCR)、CR、VGPR、およびPRの患者の割合として定義される(表Aを参照)。骨髄生検は、治験責任医師の決定に従ってsCR評価のために行う。
・ VGPR以上の割合:sCR、CR、およびVGPRの患者の割合として定義される。
・ MRD陰性のVGPR以上の割合:試験処置の最初の投与後の任意の時点で、配列決定によって評価されたMRDが陰性である患者の割合として定義される。微小残存病変は、VGPR以上を達成した患者の骨髄(BM)サンプルの次世代シーケンシングによって評価して、分子レベルでの応答の強度を決定する。陰性の閾値は少なくとも10-5である。骨髄吸引液(BMA)は、スクリーニング時およびVGPR以上の確認時に収集される。患者がVGPR以上を呈しているが、MRD陽性であると判断された場合、後期陰性を特定するために、3か月(3周期)後に別のBMサンプルを収集する。患者がMRD陽性のままであり、まだ処置中である場合、3番目のサンプルをさらに3か月後に収集する。VGPR中に行った3回目のBMサンプルMRDが陽性の後、患者がCRを達成しない限り、処置中の骨髄サンプルは3つ以下しか得られない。この場合、3つ以下の追加のBMサンプルを収集する。したがって、最大6つのBMAを患者が実行する(応答のカテゴリーごとに3つ以下)。ただし、BMAは侵襲的な処置であるため、BMAの数を可能な限り制限することを目的として、以下のガイダンスが提供されている。
- VGPRの、以前の記録がないCR患者の場合:MRD評価のための最初の骨髄は、CRの確認時(すなわち、CRを示す2番目の時点)で収集される。患者がMRD陽性であると判断された場合、後期陰性を特定するために、3か月(3周期)後に別のBMサンプルを収集する。患者がMRD陽性のままであり、処置を受けている場合は、さらに3か月後に3番目のサンプルを収集する。
- VGPR患者の場合:最初の骨髄は、Mタンパク質の減少の動態に基づく治験責任医師の判断に従って2番目の時点またはそれ以降の時点でVGPRが確認された場合、および/またはプラトー段階に達した場合に収集される(プラトーとは、12週間にわたって20%未満の変動として定義される)。MRDが最初のBMAで陽性の場合、2番目のBMAを3か月後(3周期)に収集し、後期陰性を識別する。患者がVGPRにある間に行われた2番目のBMAでMRDがまだ陽性の場合、第3のBMAを実行するタイミングはCRが達成されるまで延期されてもよい。患者がCRになり、VGPR中に実行された最後のBMAで患者がMRD陽性であった場合、CRの確認時にMRD評価のためにBMAを実行する。CR中の最初のBMAが行われた後、患者がこのBMAでMRD陽性であった場合、プロトコルによって計画された追加のBMAについて患者と話し合ってもよい。
・ CR率:sCRおよびCRの患者の割合として定義される。イサツキシマブ干渉が実証された患者は、抗体捕捉干渉アッセイが利用可能になる場合、干渉なしで得られたMタンパク質評価に対応するBORカテゴリーで考慮される。
・ OS:無作為化の日付から何らかの原因で死亡するまでの時間として定義される。
【0092】
C.他の二次有効性エンドポイント
その他の二次有効性エンドポイントは次のように評価される。
・ 応答期間(DOR):PR以上を達成した患者の最初のIRC決定奏効日から、最初に記録された進行性疾患(PD)または死亡のいずれか早い方の日までの時間として定義される。
・ 進行までの時間(TTP):無作為化からPDの最初の記録の日付までの時間として定義される。
・ PFS2:無作為化の日から、さらなる抗骨髄腫処置の開始または何らかの原因による死亡のいずれか早い方の後のPDの最初の記録の日までの時間として定義される。
・ 最初の応答までの時間:無作為化から最初の応答(PR以上)の日付までの時間として定義され、その後確認される。
・ 最良応答までの時間:無作為化から、その後に確認される最良の全奏効(PR以上)が最初に発生する日までの時間として定義される。
【0093】
D.安全性エンドポイント
処置に起因する有害事象(TEAE)、有害事象(AE)、重篤な有害事象(SAE)、注入関連反応(IAR)、米国東海岸癌臨床試験グループのパフォーマンスステータス(ECOG PS,Oken等、Toxicity and Response Criteria of the Eastern Cooperative Oncology Group.Am J Clin Oncol.1982;5:649-55を参照のこと)、実験室パラメータ、バイタルサイン、および身体検査からの所見に関して安全性を、研究を通じて評価し、報告する。
【0094】
有害事象データは、研究を通して収集される。処置に起因するAEは、処置期間中に発症、悪化、または重篤になるAEとして定義される。処置期間は、試験処置の最初の投与から試験処置の最後の投与後30日までの時間として定義される。有害事象および実験室パラメータは、NCI-CTCAE v4.03を使用して評価される(例えば、https://www(dot)eortc(dot)be/services/doc/ctc/CTCAE_4.03_2010-06-14_QuickReference_5x7.pdfを参照のこと)。
【0095】
E.患者報告アウトカム
患者報告アウトカムの指標としては、30の質問を伴う欧州癌研究治療機構(European Organisation for Research and Treatment of Cancer)(EORTC)のクオリティーオブライフ質問票(QLQ C30)、20項目を有するEORTC骨髄腫モジュール(QLQ-MY20)、および欧州クオリティーオブライフグループの指標(5つの次元および5つのレベルが1つの次元ごとにある)(EQ-5D-5L)が挙げられる。(例えば、https://qol(dot)eortc(dot)org/questionnaires/およびhttps://euroqol(dot)org/eq-5d-instruments/eq-5d-5l-about/を参照のこと)。
【0096】
3つの質問票は全て、自己記入用に設計されている。全ての患者報告アウトカムは、患者が現場で完了する。偏見を最小限に抑えるために、患者は、ePROに記入した後、その臨床状態、処置計画、AE、ならびに質問に答える前に患者の認識および感情に影響を与え得る任意の他の関連トピックの臨床医による評価および考察をする。
【0097】
F.薬物動態
イサツキシマブの薬物動態(PK)評価は、IKd群の全ての患者で実施する。血液サンプルは、スパースサンプリング戦略を使用して周期10までイサツキシマブで処置された全ての患者から収集して、集団PKアプローチを使用してイサツキシマブのPKプロファイルを評価する。IKd群の約12人の患者のサブセットでは、カルフィルゾミブPK評価のために、周期1の15日目の選択された時点で血液サンプルを収集する。測定されるPKパラメータには、以下の表Cに列挙されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0098】
【表4】
【0099】
F.免疫原性
イサツキシマブに対するヒト抗薬物抗体(ADA)は、周期1から周期10までのイサツキシマブ投与の前の1日目にのみ、IKd患者について評価される。
【0100】
G.探索的エンドポイント
血液サンプルは、周期1の1日目に収集される。白血球DNAを抽出し、免疫遺伝的決定因子(Fcγ受容体多型など)について分析して、臨床応答のパラメータと相関させる。
【0101】
IKd群においてのみ、追加の血液サンプルを、周期30までのMタンパク質評価におけるイサツキシマブの潜在的な干渉を評価するために、全ての時点で収集する。このサンプルは、周期30の後、疾患進行まで、この周期で少なくともVGPRに達する患者についてのみ収集する。進行前にイサツキシマブを中止した場合、サンプル干渉アッセイは3か月またはPDのいずれか早い方まで収集される。周期1の1日目の後、全ての患者でMタンパク質が0g/dLの場合、免疫固定サンプルを分析する。さらに、イサツキシマブ干渉の可能性がある患者を特定するために、血清Mタンパク質が0.2g/dL以下の患者でも免疫固定サンプルを分析する。
【0102】
層別化因子であるR-ISSステージを決定するためのベースラインで蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)によって評価された3つの細胞遺伝学的異常(del(17p)、t(4:14)およびt(14:16))に加えて、限定するものではないが、del(1p)およびgain(1q)欠失などの他の細胞遺伝学的異常を評価して、臨床応答のパラメータと相関する。
【0103】
上記の評価のそれぞれを、この研究で使用するために選択し、血液腫瘍学の設定において十分に確立され、関連があると見なす。
【0104】
II.研究デザイン
適格性基準(以下でさらに詳細に説明される)の確認後、患者は、以下の表Dに示されている2つの群のうちの1つに3:2の比率(実験群:対照群)で対話型応答技術(IRT)システムを使用して無作為に割り当てられる。予想される患者の総数は300人である(IKd群で180人、Kd群で120人)。研究デザインの概略図も図1に提供されている。
【0105】
【表5】
【0106】
無作為化は、以前の治療ラインの数(1対1超)およびR-ISSステージ(IまたはII対III対未分類)によって層別化した。Palumbo A,et al.Revised International Staging System for Multiple Myeloma:A Report From International Myeloma Working Group.J Clin Oncol.2015;33(26):3863-9を参照のこと。患者は、疾患の進行、容認できない有害事象(例えば、容認できない毒性)、または患者の希望のいずれか早い方まで処置される。
【0107】
A.各患者の研究参加期間
インフォームドコンセントの署名から死亡、同意の撤回、または全生存分析のカットオフ日までのいずれか早い方まで、各患者が研究で考慮される。
【0108】
患者のための研究の期間は、3週間までのスクリーニングのための期間を含む。各処置周期の期間は28日であった。患者は、疾患の進行、容認できないAE、患者の希望、またはその他の理由が生じるまで、試験処置を継続する。インフォームドコンセントの署名後に発生する全てのAEは、最後の試験処置投与後30日以内に報告される。
【0109】
試験処置の中止後、患者は、処置の終了のための試験処置の最後の投与の30日後、またはさらなる抗骨髄腫療法の開始の前のいずれか早い方、処置終了(EOT)評価の最後、およびHRQL質問票の試験処置の投与後90日後に研究施設に戻る。
【0110】
試験処置中止の時点で進行中の試験処置との関係に関係なく、関連するAEおよび全てのSAEは、解決または安定化までのフォローアップ期間中にフォローアップされる。フォローアップ期間中、試験処置および任意の第2の原発性悪性腫瘍に関連する全ての(重篤または非重篤な)新しいAEを収集して、解決または安定化するまでフォローアップする。
【0111】
進行性疾患(PD)に起因して試験処置を中止した患者は、3カ月(12週間)ごとに、最初のFU訪問(最後の試験処置から90日後)でのHRQL、さらなる抗骨髄腫療法、第2の原発性悪性腫瘍、PFS2、および生存について、死亡または最終的なPFS分析のカットオフ日のいずれか早い方までフォローアップされる。PDの記録の前に試験処置を中止した患者は、疾患が進行するまで(PDなしでさらに抗骨髄腫療法を開始する患者でも)、最後の試験処置からHRQL90日後、次いで、疾患の進行の確認後、さらなる抗骨髄腫療法のために3か月(12週間)ごとに、第2の原発性悪性腫瘍、PFS2、および生存について、死亡または最終PFS分析のカットオフ日まで、いずれか早い方まで、4週間ごとにフォローアップされる。
【0112】
最終PFS分析カットオフ日における全ての生存患者について、生存状態は、最終PFS分析カットオフ日から約1年後、その後、最終PFS分析カットオフ日から最大3年後まで毎年収集される。
【0113】
最終PFS分析カットオフ日またはOS分析カットオフ日の時点でまだ処置中であり、試験処置の恩恵を受けている患者は、疾患の進行か、容認できないAEか、患者がさらに試験処置を中止したいか、またはその他の理由までは、試験処置を継続する。カットオフ日以降に施された周期の場合、このカットオフ日に進行中の全てのSAE(関連するかどうかに関係なく)および全ての進行中の関連する非深刻なAE、全ての新しい関連するAE(深刻かどうかに関係なく)、IP管理、およびEOTの理由は継続して収集される。患者が最終的なPFS分析のカットオフ日に10周期未満しか受けなかった場合、抗薬物抗体(ADA)/PKサンプルは停止される。最後のADAが陽性または不確定の場合、3か月後に追加のADAをサンプリングする。この3か月のサンプルが陽性であっても、それ以上のADAはサンプリングしない。
【0114】
B.臨床試験終了の決定(全ての患者)
PFS分析(主要エンドポイント分析)は事象駆動型であり、最終的なPFS分析のカットオフ日は、159のPFS事象(進行または死亡のいずれか早い方)が発生した日付である(最初の患者が無作為化されてから約36か月)。OS分析のカットオフ日は、一次PFS分析のカットオフ日から約3年後である。PFSの一次分析は、ポジティブな中間分析または最終PFS分析のいずれかに対応する。
【0115】
III.患者の選択
A.包含基準
適格な患者は、以下の全ての基準を満たしている場合、包含を検討される。
・ 多発性骨髄腫。
・ 測定可能な疾患:血清タンパク質免疫電気泳動を使用して測定された血清Mタンパク質≧0.5g/dL、および/または尿タンパク質免疫電気泳動を使用して測定された尿Mタンパク質≧200mg/24時間。
・ IMiDs(登録商標)およびプロテアソーム阻害剤を含む、少なくとも1つの以前のラインおよび3つ以下の以前のラインを伴う再発性および/または不応性のMMの患者。
・ 患者は、通常の医療の一部ではない研究関連の手順を実行する前に、自発的な書面によるインフォームドコンセントを与えている。
【0116】
あるラインの治療は、単一薬剤の1回以上の完全な周期、いくつかの薬物の組合せからなるレジメン、または様々なレジメンの計画された連続治療からなる。次の3つの条件のいずれかが満たされた場合、処置は新しいラインと見なされる(例えば、Rajkumar等、Guidelines for the determination of the number of prior lines of therapy in multiple myeloma.Blood 2015;127(7):921-2を参照のこと)。
i.以前のラインの中止後の新しい処置ラインの開始。
何らかの理由で処置レジメンが中止され、異なるレジメンが開始された場合、それは新しい治療ラインと見なされるべきである。あるレジメンの全ての薬剤が中止された場合、そのレジメンは中止されたと見なされる。全てではないが、レジメンの一部の薬剤が中止された場合、レジメンは中止されたとは見なされない。中止、追加、置換、または幹細胞移植(SCT)の理由は、ラインのカウント方法には影響しない。変更の理由には、計画された治療の終了、毒性、進行、応答の欠如、不十分な応答が含まれる可能性があることが認識されている。
ii.既存のレジメンにおける1つまたはそれ以上の薬剤の計画外の追加または置換。
何らかの理由に起因して計画外に新薬を追加するか、または異なる薬物(または薬物の組合せ)に切り替えたりすることは、新しい治療ラインと見なされる。
幹細胞移植(SCT):1 SCTを超える患者では、事前定義された間隔(3か月など)で計画されたタンデムSCTの場合を除き、各SCT(自己または同種異系)は、使用されるコンディショニングレジメンが同じか異なるかにかかわらず、新しい治療ラインと見なす必要がある。SCTのタイプに関するデータもキャプチャすることを推奨する。計画されたタンデムSCTは1ラインと見なされる。計画された誘導および/または統合、任意のSCT(フロントライン、再発、自家、または同種異系)による維持は1ラインと見なされる。
iii.中断および用量変更
あるレジメンが何らかの理由で中断または中止され、同じ薬物または組合せが他の介入レジメンなしで再開されたならば、それは単一のラインとしてカウントされるべきである。ただし、何らかの理由であるレジメンが中断または中止され、後で再開されたが、その間に1つまたはそれ以上の他のレジメンが投与されるか、または1つまたはそれ以上の薬剤を追加してそのレジメンが変更されたならば、2ラインとしてカウントされなければならない。同じレジメンの投薬の変更は、新しい治療のラインと見なされるべきではない。
【0117】
B.除外基準
上記の全ての包含基準を満たす患者を、以下の除外基準についてスクリーニングする:
・ 18歳未満(または法定年齢が18歳を超える場合は、国の法定成年)。
・ 一次不応性MM。疾患経過中に何らかの処置で少なくともMRを達成したことがない患者として定義される。
・ 無血清軽鎖(FLC)測定可能な疾患のみの患者。
・ 抗CD38mAb処置の終了後60日以内に進行した、または処置に対して少なくともMRを達成不能であった(すなわち、抗CD38に不応性の)以前の抗CD38mAb処置を受けた患者。
・ デキサメタゾンを含む、無作為化前の14日以内の抗骨髄腫薬処置。
・ 無作為化前の28日以内にこの研究のために他の治験薬または禁止された治療を受けた患者。
・ カルフィルゾミブによる以前の処置。
・ CAPTISOL(登録商標)(カルフィルゾミブを可溶化するために使用されるシクロデキストリン誘導体)に対するアレルギーの既往歴、スクロース、ヒスチジン(塩基および塩酸塩として)、ポリソルベート80、またはステロイドまたはH2ブロッカーによる前投薬には適していない試験処置の任意の成分(活性物質または賦形剤)に対する以前の過敏症(これらの薬剤によるさらなる処置を禁ずる)。
・ デキサメタゾンに禁忌のある患者。
・ 活動性移植片対宿主病を伴う以前の同種造血幹細胞移植(任意のグレードおよび/または無作為化前の2か月以内に免疫抑制処置を受けている)。
・ 既知のアミロイドーシスまたは付随する形質細胞白血病。
・ 無作為化前の14日以内の胸腔穿刺を必要とする胸水または穿刺を必要とする腹水または任意の主要な手技:例えば、血漿交換、根治的放射線療法、主要な手術(椎体形成術は主な手技とは見なされない)。
・ 米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)のパフォーマンスステータス(PS)>2。
・ 血小板<50,000細胞/μL(BM有核細胞の<50%が形質細胞の場合)および<30,000細胞/μL(BM有核細胞の≧50%が形質細胞の場合)。スクリーニング血液検査前の3日以内に血小板輸血は許されない。
・ 好中球絶対数(ANC)<1000μ/L(1×10/L)。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の使用は、このレベルに達することはできない。
・ クレアチニンクリアランス<15mL/分/1.73m(腎疾患における食事療法の変更[MDRD]式:糸球体濾過率(mL/分/1.73m)=175×(Scr)-1.154×(年齢)-0.203×(女性の場合は0.742)×(アフリカ系アメリカ人の場合は1.212);Scrは、mg/dLで表される血清クレアチニンであり、年齢は年で表される)。
・ 既知のジルベール症候群を除いて、総ビリルビン>1.5×正常上限(ULN)。
・ 修正された血清カルシウム>14mg/dL(>3.5mmol/L)。
・ アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)および/またはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT])>3×ULN。
・ グレード>1の以前の抗骨髄腫療法による進行中の毒性(脱毛症および適格基準に記載されているものを除く)(米国国立がん研究所の有害事象共通用語[NCI-CTCAE]v4.03)
・ 以前の悪性腫瘍。適切に処置された基底細胞または扁平上皮細胞の皮膚または表在性(pTis、pTa、およびpT1)膀胱癌または低リスクの前立腺癌または治癒的治療後の任意のインサイチュ悪性腫瘍は可能であり、ならびに無作為化の5年以上前で、治療が完了し5年以上患者が無病であった任意の他の癌。
・ 無作為化前の6か月以内の以下のいずれか:心筋梗塞、重度/不安定狭心症、冠状動脈/末梢動脈バイパス移植片、ニューヨーク心臓協会クラスIIIまたはIVうっ血性心不全(CHF)、グレード3以上の不整脈、脳卒中、または一過性脳虚血発作。
・ 左心室駆出率(LVEF)<40%。
・ 既知の後天性エイズ関連疾患もしくは抗レトロウイルス処置を必要とするHIV疾患、または活動性のA型肝炎、B型肝炎(既知の陽性B型肝炎表面抗原(HBsAg)の結果として定義)、もしくはC型肝炎(アッセイまたは陽性HCV抗原の検出下限よりも大きい、既知の定量的HCV RNAの結果として定義される)の感染を有することが既知。
・ 無作為化前の3か月以内の次のいずれか:処置抵抗性消化性潰瘍疾患、びらん性食道炎または胃炎、感染性または炎症性腸疾患、憩室炎、肺塞栓症、またはその他の制御不能な血栓塞栓の事象。
・ 患者が研究に参加する能力を損なうか、または研究結果の解釈を妨げる可能性のある(例えば、抗感染症治療が採用されていない場合の全身感染)、または患者が研究手順を厳守できない、任意の重度の急性または慢性の病状。
・ 妊娠中または授乳中の女性患者。
・ 非常に効果的な避妊方法で保護されていない出産の可能性のある女性(WOCBP)、および/または妊娠の検査を望まないか、もしくはできない女性。
・ 非常に効果的な避妊方法によって保護されていない、出産の可能性のある女性のパートナーを持つ男性の参加者。
【0118】
IV.試験処置
A.治験医薬品(IMP)
i.イサツキシマブ(IV投与)
イサツキシマブは、20mg/mL(500mg/25mL)イサツキシマブを、20mMヒスチジン、10%(w/v)スクロース、0.02%(w/v)ポリソルベート80、pH6.0緩衝液中に含むバイアルに注入するための濃縮溶液として処方される。イサツキシマブは、非経口投与用に、白色からオフホワイトの粒子を含み得る注入用溶液用の無菌、非発熱性、注射可能、無色の20mg/mL濃縮液として供給され、エラストマークロージャーが取り付けられた30mLガラスバイアルにパッケージされた。各バイアルには、500mgのイサツキシマブの公称含有量が含まれている。充填容量は、25mLを確実に除去するように設定されている。患者への投与のために、適切な容量のイサツキシマブを0.9%塩化ナトリウム溶液の注入バッグで希釈する。イサツキシマブの用量に対応する最終注入容量は、投与される用量に依存し、1時間あたりに与えられるタンパク質量に基づく期間にわたって投与される。
【0119】
イサツキシマブは、第1の28日周期については1、8、15、および22日目に、その後、それぞれその後の28日周期について1日目および15日目に、静脈内注入を介してIKd群の患者に10mg/kgの用量で投与される。(全ての周期の期間は28日であった。)毒性の場合には、用量変更(以下でさらに詳細に説明)が適用された。
【0120】
ii.カルフィルゾミブ(IV投与)
入手可能な市販の供給品からのカルフィルゾミブ(Kyprolis(登録商標))が、該当する場合、この研究に使用される。それ以外の場合は、治験施設に供給される前に、適正製造基準(GMP)ガイドラインに従ってスポンサーによってラベルが付け直される。カルフィルゾミブの処方、保管、および取り扱い手順に関する詳細は、市販の添付文書に記載されている。凍結乾燥された製品は、投与前に2mg/mLの最終カルフィルゾミブ濃度に注射するために水で復元される。
【0121】
iii.デキサメタゾン(経口またはIV投与)
入手可能な市販の供給品からのデキサメタゾンは、該当する場合、この研究に使用される。それ以外の場合は、治験施設に供給される前に、適正製造基準(GMP)ガイドラインに従ってスポンサーによってラベルが付け直される。デキサメタゾンの処方および取り扱い手順に関する詳細は、市販の添付文書に記載されている。
【0122】
B.非調査用医薬品(NIMP)-注入反応(IR)の予防のための前投薬
IKd群に割り当てられた全ての患者は、モノクローナル抗体の投与で一般的に観察されるIARのリスクおよび重症度を低減するために、イサツキシマブ注入の前に前投薬を受ける。推奨される前投薬剤は次のとおりである:ジフェンヒドラミン25~50mgのIV(または等価物:例えば、セチリジン、プロメタジン、デクスクロルフェニラミン、地域の承認および入手可能性による)。少なくとも最初の4回の注入には静脈内経路が好まれた)、デキサメタゾン経口/IV(以下に示す用量)、ラニチジン50mgのIV(または等価物:他の承認されたH2拮抗薬(例えば、シメチジン)、経口プロトンポンプ阻害薬(例えば、オメプラゾール、エソメプラゾール)およびアセトアミノフェン650~1000mg経口15~30分(ただし、60分以内)イサツキシマブ注入の前。前投薬レジメンが完了すると、イサツキシマブ注入はすぐに開始される。
【0123】
イサツキシマブ注入の日に、以下のNIMPが以下の順序で投与される:
・ アセトアミノフェン(パラセタモール)650mg~1000mg経口;次いで
・ ラニチジン50mgIV(または等価物);次いで
・ ジフェンヒドラミン25mg~50mgのIV(または等価物);次いで
・ デキサメタゾン20mgのIV(これも試験処置の一部である)。
【0124】
デキサメタゾンを静脈内投与した場合、前投薬は以下の順序で投与した。
・ アセトアミノフェン650mg~1000mgの経口;次いで
・ ラニチジン50mgIV(または等価物);次いで
・ ジフェンヒドラミン25mg~50mgのIV(または等価物);次いで
・ デキサメタゾン40mgIV(または75歳以上の患者の場合は20mgIV)。
【0125】
ジフェンヒドラミンまたは等価物のIV製剤がない領域では、最初のイサツキシマブ注入から経口製剤が許可される。この場合、イサツキシマブ注入開始の前に1~2時間かかる。
【0126】
カルフィルゾミブがイサツキシマブなしで投与される場合(Kd群に割り当てられた患者、およびIKd群に割り当てられた患者については2、8、および16日目に)、デキサメタゾンは、カルフィルゾミブ注入の少なくとも30分前に投与される。
【0127】
デキサメタゾンが時期尚早に中止され、他の試験処置が継続されている場合、治験責任医師の判断によれば、IAR前投薬が依然としてイサツキシマブおよび/またはカルフィルゾミブに必要であるならば、ステロイド前投薬はメチルプレドニゾロン100mgのIVで考慮され得る。
【0128】
イサツキシマブの4回の連続投与でIARを経験しない患者の場合、治験責任医師は、IARに対する特定のイサツキシマブ前投薬の必要性を再考し得る。
【0129】
V.投与量およびスケジュール
主要な毒性、疾患の進行、またはなんら他の中止基準がない場合、投与される周期の数に制限はない。検査基準に基づいて行われたPD診断は、処置中止前の2つの連続した測定によって確認される。PDが確認されるまで処置を継続する。
【0130】
用量調整(用量遅延、用量省略、ならびにカルフィルゾミブおよびデキサメタゾン用量減少に関して)は、個々の患者の耐性に基づいて、その後の処置周期のために許可される。用量調整に関する追加の詳細を以下に示す。イサツキシマブの注入では、用量減量は許可されていない。
【0131】
A.試験処置(IMP)
試験処置は、IKd実験群におけるイサツキシマブ/カルフィルゾミブ/デキサメタゾンおよびKd対照群におけるカルフィルゾミブ/デキサメタゾンとして定義される。
【0132】
イサツキシマブおよびカルフィルゾミブの両方がIARを誘発する可能性があり、それらの投与の前に前投薬が必要である。
【0133】
IKd群に割り当てられた患者は、イサツキシマブ注入の前に、mAbおよびカルフィルゾミブで一般的に観察されるIARのリスクおよび重症度を低減するために、デキサメタゾンも含む前投薬を定期的に受ける。デキサメタゾンは、Kd群に割り当てられた患者に対してカルフィルゾミブの前に投与される。IKd群に割り当てられた患者については、イサツキシマブ注入がない場合(周期1の2、9、および16日目、およびそれ以降の周期の2、8、9、および16日目など)に、デキサメタゾンがカルフィルゾミブの前に投与される。
【0134】
2回の最初のカルフィルゾミブ投与の前に(周期1の1日目および2日目)、水分補給が必要である。水分補給は、周期1の1日目の少なくとも48時間前に経口で開始する必要がある。周期1およびさらなる周期内のさらなる注入のための水分補給は、治験責任医師の判断に委ねられる。(水分補給の詳細は以下に示されている。)体表面積(BSA)が2.2mを超える患者は、カルフィルゾミブの投与量の決定に2.2mを使用する。
【0135】
i.IKd群(実験群)
イサツキシマブ、カルフィルゾミブ、およびデキサメタゾンの組合せで処置された患者に対する薬物投与(以下に記載される前投薬後)は以下のとおりである:
【0136】
デキサメタゾン20mgを、28日周期の1、2、8、9、15、16、22、および23日目に、イサツキシマブの15~30分前(ただし60分以内)、またはイサツキシマブ投与がない日のカルフィルゾミブの少なくとも30分前に。デキサメタゾンは、イサツキシマブおよび/またはカルフィルゾミブ投与の日にIV投与され、他の日にPO投与される。デキサメタゾンによる注入後の予防は必要ない。
【0137】
イサツキシマブは、最初の月(例えば、28日周期)の間、毎週10mg/kgの用量でIV投与され、その後、各28日周期についてQ2Wで投与される。イサツキシマブの注入速度は175mg/時間で開始される。最初の注入:注入は175mg/時間で開始される。1時間の注入後にIARがない場合、注入速度は、最大400mg/時間まで、30分ごとに50mg/時間ずつ増大される。その後の注入:注入は175mg/時間で開始される。1時間の注入後にIARがない場合、注入速度は、最大400mg/時間まで、30分ごとに100mg/時間ずつ増大される。
【0138】
カルフィルゾミブ(適切な水分補給後)は、周期1の1日目および2日目に20mg/mの用量で、周期1の8、9、15、および16日目に56mg/mの用量で、次いで以降の全ての周期の1、2、8、9、15、および16日目に56mg/mで30分にわたってIV投与される。カルフィルゾミブ注入は、イサツキシマブ注入に続き、イサツキシマブ注入の終了直後に開始される。その用量は8日目に、患者がグレード2を超える毒性(合併症のない血液毒性(試験処置に関連する毒性を意味する)も、回復した腫瘍崩壊症候群(TLS)も除く)を経験しない場合は、さらなる投与のために56mg/mに増量される。
【0139】
ii.Kd群(対照群)
カルフィルゾミブおよびデキサメタゾンの組合せで処置された患者に対する薬物投与は、以下のように実施される:
【0140】
デキサメタゾン20mgを、1、2、8、9、15、16、22、および23日目にカルフィルゾミブ投与日のカルフィルゾミブの少なくとも30分前に。デキサメタゾンは、カルフィルゾミブ投与の日にIV投与され、他の日にPO投与される。
【0141】
カルフィルゾミブ(適切な水分補給後)は、周期1の1日目および2日目に20mg/m、周期1の8、9、15、および16日目に56mg/m、次いで以降の全ての周期の1、2、8、9、15、および16日目に56mg/mの用量で30分にわたってIV投与される。患者がグレード2より高い毒性(合併症のない血液毒性(試験処置に関連する毒性を意味する)または回復したTLSを除く)を経験しない場合、用量は8日目に56mg/mおよびさらなる投与のために増量される。
【0142】
B.カルフィルゾミブの水分補給
周期1の1日目の少なくとも48時間前に、経口水分補給を次のように行う:30mL/kg/日(1日あたり約6~8カップの液体)を処置時まで継続する。患者のコンプライアンスは、処置を開始する前に評価され、処置は、経口水分補給が適切でない場合は延期される。経口水分補給は、治験責任医師の裁量により、周期1内および周期2以降の注入に対して継続される。腫瘍崩壊症候群(TLS)が以前の試験処置投与後に発生した場合、その後の注入のための水分補給は、治験責任医師の判断に従って必要に応じて行われる。
【0143】
心臓病(CHFおよび心筋症など)または肺水腫の病歴を有する患者は、体液過剰の兆候について綿密に監視される。病歴のある高血圧症の患者は、処置開始前に血圧をコントロールしている。
【0144】
静脈内水分補給は、周期1中のD1およびD2のカルフィルゾミブの直前、および周期1後の治験責任医師の裁量で与えられる。静脈内水分補給は、30~60分にわたるカルフィルゾミブ注入前の500mLの生理食塩水または他の適切なIV流体からなる。水分補給プログラムの目標は、堅調な尿量を維持することである(例えば、≧2L/日)。この期間中、患者は体液過剰の証拠がないか定期的に監視される。
【0145】
イサツキシマブおよびカルフィルゾミブの両方が投与される日に、イサツキシマブ注入の容量を、カルフィルゾミブ注入の前に必要とされる水分補給において考慮する。イサツキシマブ注入容量が少なくとも500mLに達しない場合は、少なくとも500mLに達するまで、追加の水分補給を行う。この場合、イサツキシマブ注入の開始前に追加の容量を投与する。水分補給の総量は500mL未満(250mL以上)にしてもよく、または500mLに保ってもよい。境界線の左心室駆出率(LVEF)の患者、および/または治験責任医師の判断によって心臓代償不全のリスクがある患者には、より長時間にわたって水分補給を行う。イサツキシマブの注入が完了した後、カルフィルゾミブの注入を開始する。
【0146】
C.用量の変更
用量調整(用量遅延、用量省略、および用量減少(カルフィルゾミブおよび/またはデキサメタゾンのみに関して))は、個々の患者の耐性に基づいて、その後の処置周期で許可される。毒性が発生し、注入/投与の予定日から3日以内に患者が回復しない場合、患者は周期内で投与を省略(イサツキシマブおよび/またはカルフィルゾミブおよび/またはデキサメタゾン)してもよい。試験処置(イサツキシマブおよび/またはカルフィルゾミブおよび/またはデキサメタゾン)の投与は、適切な用量変更または治験責任医師の意見で中止を保証するその他のAEにもかかわらず持続するAEの事象では中止される。試験処置投与に対する全ての変更を記録する。患者は、治験責任医師によって評価された基準に基づいて、毒性が回復した後、次の試験処置周期を受ける。
【0147】
カルフィルゾミブおよびデキサメタゾンの用量減少ステップは、それぞれ、以下の表E1およびE2に示されている。
【0148】
【表6】
【0149】
【表7】
【0150】
イサツキシマブ注入に関して用量減少は許されない。
【0151】
V.疾患の評価
対象が処置を継続することを許可するか否かに関して治験責任医師によってなされた決定は、有効性データ(地方および/または中央の研究所から得られた)、放射線学的評価、および研究を通して実施された、またはIMWG基準に従って示された場合の骨髄評価に基づいた。処置応答を評価するための参照値は、処置前の周期1の1日目に各患者から採取されたサンプルで測定された値であった(上記のセクションI.A.主な目的を参照)。評価とスケジュールの概要を以下の表Fに示す。Mタンパク質サブタイプ、骨髄および髄外疾患の程度、細胞遺伝学(中央研究所による評価)、およびR-ISSなどの疾患特性もベースラインで記録される。
【0152】
【表8】
【0153】
2016年のIMWG基準(例えば、Kumar S、Paiva B、Anderson KC等、International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma.The Lancet.Oncology,17(8),e328-e346(2016)を参照のこと)は、応答および疾患の進行を評価するために適用される。評価は、あらゆる周期の初日および処置が停止されたときに行う。PFS(無作為化から進行性疾患の最初の記録された発生または何らかの原因による患者の死亡のいずれか早い方までの時間として定義される)は、主要な有効性エンドポイントである。応答は、フォローアップ中および疾患の進行前に治療を中止した患者の疾患の進行まで評価される。PFSのサブグループ分析(例えば、細胞遺伝学的リスク状態、以前の処置ラインの数による)も実施する。次世代シーケンシング(NGS)を、MRDの評価に使用する。
【0154】
安全性評価には、バイタルサイン、血液学および生化学評価、身体検査、心電図、およびAEが含まれる:これらは、研究全体を通して追跡される。AEは、米国国立がん研究所のAEv4.03の共通用語基準に従って等級付けされる。免疫原性は、試験処置中に評価される。間接クームス試験は、ベースライン時および処置開始後に、イサツキシマブに加えてカルフィルゾミブ/デキサメタゾンの群でのみ実施される。
【0155】
患者報告アウトカム(PRO)評価は、あらゆる周期の1日目、処置の終了時、ならびにPRO/HRQoLおよび健康ユーティリティ機器(欧州癌研究治療機構のクオリティーオブライフに関する質問票C30およびMY20[EORTCQLQ-C30およびQLQMY20]およびEuroQoL質問票EQ-5D-5L)を使用することにより試験処置投与の90日後に測定される。
【0156】
実施例1B:実施例1Aで説明した第III相試験の初期結果
302人の患者を以下のように無作為化した:179人の患者をイサツキシマブ+カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(Isa+car+dex)群に割り当て、123人の患者をカルフィルゾミブ+デキサメタゾン(car+dex)群に割り当てた。患者の特徴は、両群でよくバランスが取れていた。年齢の中央値は64歳であった(範囲:33~90)。患者の25.8%がR-ISSステージI、59.6%の患者がR-ISSステージIIであって、7.9%の患者がR-ISSステージIIIであった。患者の44%は多発性骨髄腫に対して1回の以前の治療ラインを受け、33%は2回の以前の治療ラインを受け、23%は3回以上の以前のラインを受けた。患者の90%はプロテアソーム阻害剤による以前の治療を受けており、患者の78%は免疫調節薬(すなわちIMiD(登録商標))による以前の治療を受けていた。以前のラインの数の中央値は2であった。患者の24%が高リスクの細胞遺伝学を有した(すなわち、次の染色体/細胞遺伝学的異常の1つまたはそれ以上:del(17p)、t(4;14)、およびt(14;16))。
【0157】
実施例1Aで考察されるとおり、実験群の患者は、イサツキシマブを10mg/kgの用量での週1回4週間、その後、隔週で28日周期で、カルフィルゾミブ週2回、20/56mg/m用量と組み合わせて、およびデキサメタゾンを標準用量で処置期間中、静脈内注入によって投与された。対照群の患者は、処置期間中、20/56mg/mの用量で週2回カルフィルゾミブを投与され、標準用量でデキサメタゾンを投与された。この研究の主要エンドポイントは、無増悪生存であった。二次エンドポイントには、全奏効率(ORR)、最良部分奏効率以上(≧VGPR)、微小残存病変(MRD)、完全奏効率(CR)、全生存率(OS)、および安全性が含まれていた。
【0158】
20.7カ月というフォローアップ期間中央値で、IRC(独立審査委員会)による103の無増悪生存期間(PFS)事象で、PFS中央値は、isa+car+dex群では到達しなかった。car+dex群のPFS中央値は19.15か月であった(HR0.531(99%CI 0.318-0.889)、片側p=0.0007)。したがって、事前に指定された有効性の境界(p=0.005)を超えた。PFS利益は、サブグループ間で一貫していた。全奏効率(ORR)(すなわち、部分奏効(PR)以上を達成した患者の割合)は、isa+car+dex群で86.6%であったのに対し、car+dex群では82.9%であった(片側p=0.1930)。car+dex群の患者の56.1%と比較して、isa+car+dex群の患者の72.6%が≧VGPR(最良部分奏効)を達成した(p=0.0011)。isa+car+dex群の患者の39.7%が完全奏効(CR)を達成したのに対し、car+dex群の患者の27.6%は完全奏効を達成した。治療企図のある集団におけるMRD陰性率(10-5)は、isa+car+dex群で29.6%(53/179)であったのに対し、car+dex群では13.0%(16/123)であった。
【0159】
isa+car+dex群の患者の52.0%に対して、car+dex群の患者の30.9%が処置を継続した。処置中止の主な理由は、疾患の進行(isa+car+dex群で29.1%、対car+dex群で39.8%)および有害事象(isa+car+dex群で8.4%、対car+dex群で13.8%であった)。グレード3以上の処置に起因する有害作用(TEAE)は、isa+car+dex群の患者の76.8%に対して、car+dex群の患者の67.2%で観察された。処置に起因する重篤な有害事象(TE-SAE)と致命的なTEAEは、両群で類似していた:isa+car+dex群の患者の59.3%がTE-SAEを経験したのに対し、car-dex群の患者は57.4%であった;そしてisa+car+dex群の患者の3.4%が致命的なTEAEを経験したのに対し、car+dex群の患者は3.3%が致命的であった。注入反応は、isa+car+dex群の患者の45.8%(0.6%グレード3~4)およびcar+dex群の患者の3.3%(0%グレード3~4)で報告された。グレード3以上の呼吸器感染症(グループ分け)は、isa+car+dex群の患者の32.2%に対して、car+dex群の患者の23.8%で見られた。グレード3以上の心不全(グループ分け)は、isa+car+dex群の患者の4.0%に対して、car+dex群の患者の4.1%で報告された。ラボの結果によると、グレード3~4の血小板減少症は、isa+car+dex群の患者の29.9%に対して、car+dex群の患者の23.8%で報告された;好中球減少症は、isa+car+dex群の患者の19.2%に対して、car+dex群の患者の7.4%で報告された。
【0160】
カルフィルゾミブ+デキサメタゾンへのイサツキシマブの追加は、再発した多発性骨髄腫を有する患者の標準治療のカルフィルゾミブ+デキサメタゾン(すなわち、イサツキシマブなし)と比較して、臨床的に意味のある応答の強度(すなわち、MRD)の改善を伴うPFSの優れた統計的に有意な改善を提供した。イサツキシマブをカルフィルゾミブ+デキサメタゾンに追加すると、標準治療のカルフィルゾミブ+デキサメタゾン(すなわち、イサツキシマブなし)と比較して、疾患の進行または死亡のリスクが有意に減少した。イサツキシマブ+カルフィルゾミブ+デキサメタゾンの組合せは、管理可能な安全性と良好なベネフィット-リスクプロファイルで十分に許容された。この研究では、新しい安全性シグナルは確認されなかった。
【0161】
実施例1C:実施例1Aで説明した第III相試験のさらなる結果
実施例1Aに記載されている第III相臨床試験および治験からの中間結果に関するさらなる詳細が、この実施例に提供されている。
【0162】
実施例1Aに記載の包含および除外基準を満たした再発性多発性骨髄腫の患者は、以下のように研究の2つの群に無作為化された:IKd群(イサツキシマブ+カルフィルゾミブ+デキサメタゾン)に無作為化された3人の患者ごとに、2人をKd群(カルフィルゾミブ+デキサメタゾン)に無作為化した。上記の表Dを参照のこと。全ての患者は、多発性骨髄腫に対して1~3回の以前のラインの処置を受けていた。カルフィルゾミブによる以前の治療を受けた患者はいなかった。以前の抗CD38療法に不応性である患者はいなかった。患者は、各群への参加者のサブグループの均等な割り当てを確実にするために、以前の治療ライン(すなわち、1を超えるラインに対して1つの以前のライン)およびR-ISSスコア(すなわち、IまたはII対III対分類されていない)に従って層別化した。(R-ISSのさらなる詳細については、Palumbo A,et al.Revised International Staging System for Multiple Myeloma:A Report From International Myeloma Working Group.J Clin Oncol.2015;33(26):3863-9を参照のこと。)
【0163】
主要な患者の人口統計およびベースライン特性は、以下の表Gに示されている。患者の特徴は両群でバランスが取れていた。細胞遺伝学的分析では、del17pは50%のカットオフを使用して定義され、t(4;14)および4(14;16)は30%のカットオフを使用して定義された。IKd群の3人の患者(1.7%)およびKd群の2人の患者(1.6%)は、多発性骨髄腫に対して3回以上の以前のラインを受けた。
【0164】
【表9】
【0165】
処置は、患者が進行性疾患(PD)を示すか、許容できない毒性を経験するか、または研究から離れることを選択するまで続けられた。
【0166】
研究の主要エンドポイントは、独立審査委員会(IRC)によって評価されたように、無増悪生存(PFS)を含んだ。研究の二次エンドポイントには、全奏効率(ORR)、最良部分奏効(VGPR)以上の率、微小残存病変(MRD)陰性;完全奏効(CR)率、および全生存(OS)を含んだ。
【0167】
結果
20.7カ月のフォローアップにおいて、患者の性向は以下のとおりであった:IKd群の179人の患者のうち、177人を処置した。IKd群の84人(46.9%)の患者が処置を中止した。52人(29.1%)は、進行性疾患(PD)に起因して中止された;15人(8.4%)は有害事象(AE)に起因して中止され、6人(3.4%)は他の理由で中止された。IKd群の93人(52%)の患者が処置を続けた。Kd群の123人の患者のうち、122人が処置を受けた。Kd群の84人(68.3%)の患者が処置を中止した。49人(39.8%)は、進行性疾患(PD)に起因して中止された。17人(13.8%)は有害事象(AE)のために中止され、4人(3.3%)は他の理由で中止された。Kd群の38人(30.9%)の患者が処置を続けた。Kd群と比較してIKd群の患者のより高い割合が処置を継続した(すなわち、Kd群の約54%と比較して、IKd群の患者の約37%がPDまたはAEに起因して処置を中止した)。
【0168】
独立審査委員会(IRC)による中間PFS分析は、中央値PFS(mPFS)がIKd群ではまだ到達していないが、Kd群のmPFSは、19.15カ月(95%CI:15.770-NE)であったことを示した。HR 0.531(99%CI:0.318-0.889)、p=0.0007。IKdを投与された患者は、Kd群の患者と比較して、PFSの改善を示し、疾患の進行または死亡のリスクが47%減少した。図3を参照のこと。サブグループ分析はPFSに対して実行した。図4に示すように、全てのサブグループはIKd対Kdを支持した。分析された全てのサブグループにわたってIKdに対して一貫した処置効果が見られた(例えば、年齢、ベースライン腎機能(eGFR)、以前の治療ラインの数、最後のラインでの以前のプロテアソーム阻害剤処置、最後のラインでの以前の免疫調節薬処置、高リスク細胞遺伝学的状態、試験開始時のISS病期分類、およびレナリドミドに不応性になっている)。
【0169】
Kdで処置された患者と比較して、IKdで処置された患者においてより強い応答が見られ、PFSの改善と一致した。IKd群の患者の全奏効率(ORR)は86%であったが、Kd群の患者のORRは82%であった(p=0.19、層別コクラン・マンテル・ヘンツェル検定;片側有意水準は0.025である)。Kd群の患者の56.1%と比較して、IKd群の患者の72.6%はVGPR以上を達成した(p=0.0011)。Kd群の患者の27.6%と比較して、IKd群の患者の39.7%がCRを達成した。さらに、IKd群では、Kd群よりもMRD陰性(すなわち、次世代シーケンシング(NGS)で評価した場合、10-5の閾値で「微小残存病変陰性」)の患者が多かった。Intent To Treat(治療企図)患者のうちで、IKd群の53/179(29.6%)は、Kd群の16/123(13%)と比較して、MRD陰性であった。VGPR以上を達成した研究の患者の中で、IKd群の53/128(41.4%)は、Kd群の16/70(22.9%)と比較して、MRD陰性であった。
【0170】
IKdでの処置は、Kdでの処置と比較して、PFSの改善と一致して、次の処置までの時間の顕著な遅延をもたらした。図5および表Hを参照のこと。
【0171】
【表10】
【0172】
20.73カ月のフォローアップでは、分析の時点で、全生存(OS)データは未完であった。
【0173】
各処置群における試験処置への曝露を表Iに示す。IKd群におけるイサツキシマブおよびカルフィルゾミブの両方の高い相対用量強度は、組合せの実現可能性を実証している。
【0174】
【表11】
【0175】
IKdのより多くの患者が、Kd群よりもグレード3以上の処置に起因する有害事象(TEAE)を経験した(76.8%IKd対67.2%Kd)。イサツキシマブをカルフィルゾミブに追加しても、カルフィルゾミブ+デキサメタゾンに対して、死亡率、重篤なTEAE、または処置の中止につながる事象は増大しなかった。IKdは、新しい安全性シグナルのない管理可能な安全性プロファイルを有する。注入反応(IR)は主に最初の注入中に発生し、ほとんどがグレード1または2であった。
【0176】
結論
Kdへのイサツキシマブの添加は、0.531のHRでPFSの統計的に有意な改善をもたらし、これは、進行または死亡のリスクの47%の減少に対応する。IKdは、満たされていない高い医療ニーズ(高齢者、高リスクの細胞遺伝学的、腎障害)で処置が困難なものを含む、複数のサブグループにわたって一貫した利益を示した。IKdは、Kdと比較して顕著な応答の強度を示し、ITT母集団のMRD陰性率は30%対13%であった。IKdは、再発性MMの患者において、管理可能な安全性プロファイルおよび好ましいリスク/ベネフィットを実証した。
【0177】
実施例1D:再発性多発性骨髄腫におけるイサツキシマブに加えてカルフィルゾミブおよびデキサメタゾンの応答の強度および反応速度論
序章
多発性骨髄腫(MM)における微小残存病変陰性(MRD-)状態の達成は、無増悪生存(PFS)および全生存(OS)の改善と関連している。イサツキシマブ(Isa)は、承認された抗CD38 IgGカッパモノクローナル抗体である。実施例1Aに記載された研究におけるMRD-、長期転帰、および腫瘍応答の動態を含む応答の強度を分析した。標準的な免疫固定アッセイにおけるIsaとの干渉を克服するために、血清Mタンパク質の質量分析による測定も実施した。
【0178】
方法
実施例1Aは、1~3ラインの治療を受けた再発性MMを有する患者において、Isaに加えてカルフィルゾミブおよびデキサメタゾン(Isa-Kd)対Kdを調査した、無作為化、非盲検、多施設第3相試験を記載する。PFSの主要エンドポイントおよび全奏効率(ORR)の二次エンドポイント、最良部分奏効以上(≧VGPR)および完全奏効(CR)率は、Mタンパク質の中央データ、中央イメージングレビューおよび国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)基準に従った形質細胞浸潤のための局所骨髄に基づいて独立応答委員会(IRC)によって決定された(例えば、Kumar等(2016)“International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma.”Lancet Oncol.17(8):e328-e346)およびDurie等(2006)“International uniform response criteria for multiple myeloma.Leukemia.20:1467-1473を参照のこと)。MRD(すなわち、微小残存病変)は、10-5の感度レベルでの次世代シーケンシングによってVGPR以上を達成した患者からの骨髄吸引液で評価した。質量分析は、Isa干渉なしで血清Mタンパク質を測定するために実行した。ハザード比および対応する信頼区間は、Cox比例ハザードモデルを使用して推定された。コクラン・マンテル・ヘンツェル検定を使用して、処置群間で二次エンドポイントを比較した。MRD-に到達していないか、またはMRD評価なしで無作為化された全ての患者をMRD+として分析した。
【0179】
結果
実施例1Aで考察するとおり、302人の患者(179人Isa-Kd、123人Kd)を無作為化した。フォローアップの中央値20.7か月で、Kdを投与された患者よりもIsa-Kdを投与された患者でより強い応答が観察された。Isa-Kd群の患者の72.6%がVGPR以上を達成したのに対し、Kd群の患者では56.1%が達成した(公称p=0.011)。Isa-kd群の患者の39.7%がCR以上を達成したのに対し、Kd群の患者の27.6%が達成した。MRD-は、Isa-Kd群の患者の53/179(30%)に対して、Kd群の患者の16/123(13%)で発生した(公称p=0.0004)。(例えば、実施例1Bおよび1Cも参照のこと)。Isa-Kd群の患者の20.1%(36/179)は、Kd群の10.6%(13/123)の患者と比較して、CRとMRD-の両方を達成した。両方の処置群(すなわち、Isa-Kd対Kd)におけるMRD状態による無増悪生存(PFS)を図6に示す。ハザード比(HR)は、MRD-患者(HR 0.578、95%CI:0.052-6.405)とMRD+患者(HR 0.670、95%CI:0.452-0.993)の両方で、KdではなくIsa-Kdを支持する。MRD-患者は、MRD+患者よりもPFSが長かった。Isa-Kd群内では、腎機能障害のある患者でMRD陰性の状態が得られる場合があり、すなわちeGFR<60mL/分/1.73m(26.5%MRD-対25.9%MRD+);診断時にISSステージIIIを伴う(32.1%MRD-対27.8%MRD+)であり;t(4;14)[13.2%MRD-対11.9%MRD+]、gain(1q21)[45.3%MRD-対40.5%MRD+]であり;高度に前処置された3回以上の以前のライン(22.6%MRD-対19.0%MRD+)または最後のレジメンでレナリドミドに不応性(18.9%MRD-対20.6%MRD+)である。Isa-Kd群内では、プロテアソーム阻害剤(PI)に不応性の患者[18.9%MRD-対36.5%MRD+]またはdel(17p)[3.8%MRD-対12.7%MRD+]でMRD陰性状態に達する頻度は低かった。
【0180】
イサツキシマブとMタンパク質との干渉を調査した:CRに近い(血清免疫固定(IF)陽性IgGカッパのみ)または潜在的なCR(IF陽性IgGカッパを伴う血清残存Mタンパク質≦0.5g/dL)を有する27人の患者由来のサンプルを、Isa-Kd群で、質量分析によって試験した。それらの中で、11人の近CRまたは潜在的なCRptsは、骨髄中の5%未満の形質細胞を記録し、質量分析陰性であった(中央ラボ免疫固定の定量限界(LOQ)を下回る残存骨髄腫Mタンパク質レベル)。さらに、11人の近CRまたは潜在的なCR患者のうち、7人もMRD-であった。これらの結果は、現在のCR率とMRD-CR率の両方が過小評価されていることを裏付けている(潜在的な調整済みCR率は45.8%;潜在的な調整済みMRD-CR率は24%)。
【0181】
処置に対する応答は、両群で迅速に起こった。最初の応答に対する応答者の時間の中央値は、Isa-Kd群では32.0(28-259)日に対して、Kd群では33.0(27-251)日であった。最高の応答を示す応答者の時間の中央値は、Isa-Kdでは120.0(29-568)日に対して、Kd群では104.5(29-507)日であった。最初のCRに対する応答者の時間の中央値は、Isa-Kd群では184.0(30-568)日に対して、Kd群では229.5(58-507)日であった。最初の≧VGPRに対する応答者の時間の中央値は、Isa-Kd群では88.0(28-432)日に対して、Kd群では90.0(29-491)日であった。応答の強度の増大に加えて、欧州癌研究治療機構(EORTC)のクオリティーオブライフに関する質問票-C30グロ-バルヘルスステータススコアによって測定されたクオリティーオブライフは、記述的分析についてIsa-Kdで処置された患者では維持された。
【0182】
結論
Isa-Kdで処置された患者では、Kdで処置された患者に対して、応答の強度において臨床的に意味のある改善があった。干渉に起因して過小評価された研究のIsa-Kd群での39.7%のCR率。質量分析の結果によって、Isa-Kdで処置された1~3の以前のラインの患者の約半数でCRに達する可能性があることが示唆される。Kd群よりもIsa-Kd群の方がMRD陰性に達した患者が多く(30%対13%)、IsaKd群の患者の少なくとも2倍がKd群のCR MRD-に達した(20.1%対10.6%;それぞれ24%対10.6%に調整)。MRD陰性に達することは、両群でより長いPFSと関連していた。
【0183】
実施例1E:実施例1Aで説明した第III相試験のさらなる結果
適格な患者は、再発性および/または不応性の多発性骨髄腫であり、1~3回の以前のラインの治療および測定可能な疾患の証拠(血清Mタンパク質≧0.5g/dlおよび/または尿Mタンパク質≧200mg/24時間)を有していた。国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)の応答基準に従って、原発性不応性の多発性骨髄腫を患っている場合(例えば、Kumar等(2016)“International Myeloma Working Group consensus criteria for response and minimal residual disease assessment in multiple myeloma.”Lancet Oncol.17(8):e328-e346)およびDurie等(2006)“International uniform response criteria for multiple myeloma.Leukemia.20:1467-1473)、無血清軽鎖測定可能疾患のみ、または米国東海岸癌臨床試験グループのパフォーマンスステータス>2の場合、患者は除外された。無作為化から14日以内に抗骨髄腫処置を受けた場合、カルフィルゾミブによる以前の処置を受けた場合、抗CD38抗体療法に不応性であった場合、またはデキサメタゾンが禁忌であった場合、患者は除外された。腎疾患における食事療法の変更式<15ml/分/1.73mまたは左心室駆出率<40%による推定糸球体濾過率(eGFR)の患者も除外された。慢性閉塞性肺疾患を含む以前の肺合併症のある患者を登録した。患者は上で考察したように無作為化し、無作為化は上記で考察したように層別化した。各群の患者は、表Dに概説されているように処置した。
【0184】
有効性のエンドポイントおよび評価
主要有効性エンドポイントは、盲検化された独立応答委員会(IRC)によると、無増悪生存であった。IRCは、応答および進行について疾患評価を審査した(中央放射線評価、中央検査室からのMタンパク質定量化、および必要に応じて形質細胞浸潤のための局所骨髄穿刺)。重要な二次有効性エンドポイントには、IMWG応答基準に従った全奏効率、最良部分奏効(VGPR)またはそれ以上の率、微小残存病変(MRD)陰性率、完全奏効(CR)率、および全生存率が含まれた。
【0185】
MRDは、VGPR以上に達する患者において、10個の有核細胞のうちの1個という最小感度で次世代シーケンシングによって評価された。細胞遺伝学は、中央研究所によるスクリーニング中に蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)によって評価し、カットオフはdel(17p)で50%、t(4;14)、t(14;16)、およびgain(1q21)で30%であった。高リスクの細胞遺伝学的状態は、del(17p)、t(4;14)またはt(14;16)の存在として定義された。
【0186】
有効性評価は、あらゆる周期の1日目および処置が停止したときに完了した。安全性評価には、有害事象、実験室パラメータ(両方とも、国立がん情報センター-共通用語基準(NCIC-CTC)バージョン4.03に従って評価)、バイタルサイン、心電図、および米国東海岸癌臨床試験グループのパフォーマンスステータスの記録が含まれていた。有効性分析は、治療企図(intent-to-treat)集団で実施し、無作為化処置によって要約した。安全性分析および試験処置の程度は、安全性集団内で受けた実際の処置によって評価および要約された。
【0187】
患者および処置
人口統計および臨床的特徴は、ベースラインで十分にバランスが取れていた(表J)。年齢の中央値は64歳(範囲、33~90歳)であった。以前のラインの中央値は2(範囲、1~4)であり、群間で類似しており、44%、33%、および23%がそれぞれ1、2、および≧3の以前のラインを受けた。1人の患者(イサツキシマブ群)と2人の患者(対照群)は4回の以前のラインを受けた。全体として、患者の45%が免疫調節薬に不応性であり、そのうち32.8%がレナリドミド不応性であった。イサツキシマブ群では、患者の23.5%が対照群(25.2%)と同様に高リスクの細胞遺伝学を持っていた。ベースラインでは、患者の26.1%がイサツキシマブ群で腎機能障害(eGFR<60ml/分/1.73m)であったのに対し、対照群では16.2%であった。
【0188】
【表12-1】
【表12-2】
【0189】
分析の時点で、処置期間の中央値は、イサツキシマブ群で80.0週間(範囲、1~111)であり、対照群で61.4週間(範囲1~114)であった。カルフィルゾミブとデキサメタゾンの相対用量強度の中央値は、両群で類似していた(イサツキシマブ群で91.2%および84.8%に対して、それぞれ、対照群では91.4%および88.4%)。イサツキシマブの相対用量強度の中央値は94.3%であった。イサツキシマブ対、対照群の処置を中止した患者は少なかった(46.9%対68.3%)。
【0190】
有効性
フォローアップの中央値が20.7カ月で、カルフィルゾミブ-デキサメタゾンへのイサツキシマブの添加は、ハザード比0.531(99%CI、0.318~0.889、片側P値=0.0007))で無増悪生存期間の統計的に有意な改善を示し、進行または死亡のリスクの46.9%の減少に対応する。Kdでの無増悪生存期間の中央値19.15か月(95%CI、15.770-未到達)は、プロトコルの仮定である19か月と一致していた。IKd群ではPFSの中央値に達しなかった。2年後の無増悪生存の可能性は、68.9%(IKd群)対45.7%(Kd群)であった。
【0191】
治療企図集団において、全奏効率は、86.6%(IKd群)対82.9%(Kd群)であり、片側P値=0.1930であった。群間の差は統計的に有意ではなかったため、後続の重要な二次エンドポイントのP値は説明目的でのみ提供されている。VGPR以上の率は72.6%(IKd群)対56.1%(Kd群)であった(P=0.0011)。CR率は39.7%(IKd群)対27.6%(Kd群)であった。カルフィルゾミブ-デキサメタゾンにイサツキシマブを追加することにより、MRD陰性率は治療企図のある集団で2倍以上になった:29.6%(IKd群)対13.0%(Kd群)(P=0.0004)(表K)。CRとMRD陰性との両方の応答を達成した患者の割合は、20.1%(IKd群)と10.6%(Kd群)であった。中間分析では全生存率は未完であったが、患者の17.3%と20.3%がそれぞれイサツキシマブ群および対照群で死亡した。
【0192】
【表13-1】
【表13-2】
【0193】
事前に指定されたサブグループ分析において、イサツキシマブとカルフィルゾミブ-デキサメタゾンを支持する臨床的利益が、ほぼ全てのグループにわたって生じた(図7)。腎障害患者の無増悪生存期間の中央値は、IKd群では到達しないのに対して、Kd群では13.41か月(95%CI、4.830-未到達)であり、ハザード比0.273[95%CI、0.113-0.660]であった。腎臓の完全奏効(ベースラインでeGFRが50ml/分/1.73m未満から60ml/分/1.73m以上への改善)は、52%(IKd群)対30.8%(Kd群)で発生し、それぞれ、患者のうち32.0%(IKd群)対7.7%(Kd群)では持続した。カルフィルゾミブ-デキサメタゾンを伴うイサツキシマブを支持する無増悪生存の利益は、75歳以上の患者のハザード比0.244(95%CI、0.060~1.000)を含む高齢患者(65歳以上)で観察された。
【0194】
応答者における最初の応答までの時間の中央値は、両方の群で類似していた:32日(IKd群)および33日(Kd群);応答期間はIKd群の方が長く、ハザード比は0.425(95%CI、0.269~0.672)であった。イサツキシマブに加えてカルフィルゾミブ-デキサメタゾンの併用により、次の処置までの時間が遅れた(ハザード比、0.566;95%CI、0.380-0.841)。患者のうち43.1%(Kd群)に対して、患者の26.3%(IKd群)が少なくとも1回のさらなる抗骨髄腫療法を受け、その後の処置を受けた患者のうちそれぞれ21.3%および47.2%がダラツムマブを受けた。QLQ-C30グロ-バルヘルスステータススコアで測定される健康関連のクオリティーオブライフは、イサツキシマブに加えてカルフィルゾミブ-デキサメタゾンで維持された。
【0195】
考察
この無作為化第3相試験の結果によって、イサツキシマブのカルフィルゾミブ-デキサメタゾンへの追加が、カルフィルゾミブ-デキサメタゾン単独に対して再発性多発性骨髄腫の患者の無増悪生存における有意な利益と関連することが示された。疾患の進行または死亡のリスクは、イサツキシマブ群で47%低く、ハザード比が非常に低いことが示されている(0.531[99%CI、0.318-0.889])。対照群における無増悪生存期間の中央値19.15か月は、プロトコルの仮定(19か月)および1~3回の以前のラインの後の再発/不応性多発性骨髄腫患者におけるカルフィルゾミブ+デキサメタゾン対ボルテゾミブ+デキサメタゾンの有効性を評価した以前の第3相試験と一致していた。本発明の結果、IKd群の優位性がパフォーマンスの低い対照群(すなわち、Kd群)とは関係がなかったことが示されている。
【0196】
無増悪生存における利益は、IKd群のほぼ全てのサブグループで見られ、これには、高リスクの細胞遺伝学、試験登録時の国際病期分類体系ステージIII、高齢患者、腎機能障害のある患者、1以上の以前のラインの治療のある患者、免疫調節薬への事前曝露、プロテアソーム阻害剤への事前曝露、および免疫調節薬とプロテアソーム阻害剤の両方への事前曝露が挙げられる。重要なことに、細胞遺伝学的リスクは、FISH陽性の国際的に認められたカットオフを使用して全ての患者について一元的に評価され、患者全体の88%で決定的であった。
【0197】
応答の強度および質は、Kd群よりもIKd群の方が優れており、VGPR、CR、MRD陰性、およびMRD陰性を伴うCRの割合が高かった。具体的には、IKd群におけるMRD陰性およびMRD陰性を伴うCRの割合は、これらの患者の以前のラインの中央値が2であることを考慮すると、非常に高かった。さらに、CRは干渉アッセイを使用せずに評価されたので、MRD陰性のCRの割合は過小評価されている可能性がある(例えば、実施例1Dを参照のこと)。
【0198】
再発性多発性骨髄腫の患者で実施されたこの研究において、イサツキシマブのカルフィルゾミブ-デキサメタゾンへの追加は、カルフィルゾミブ-デキサメタゾン単独と比較して、有意に長い無増悪生存期間をもたらした。応答の強度および質は、無増悪生存および全生存の予後因子であるMRD陰性率を伴う高いCRを含め、イサツキシマブ群でより良好であった。安全性プロファイルは管理可能で期待されており、心血管事象の増大はなかった。まとめると、これらの結果により、イサツキシマブに加えてカルフィルゾミブ-デキサメタゾンの併用が、再発性多発性骨髄腫患者の可能性のある新しい標準治療であることが示されている。
【0199】
本明細書に記載の各実施形態は、反対に明確に示されない限り、他の任意の実施形態(複数可)と組み合わせてもよい。特に、好ましいまたは有利であると示される任意の特徴または実施形態は、反対に明確に示されない限り、好ましいまたは有利であると示される任意の他の特徴(複数可)または実施形態(複数可)と組み合わせてもよい。
【0200】
本出願で引用される全ての参考文献は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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