(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】冶金容器における材料の状態の評価のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 22/00 20060101AFI20250701BHJP
G01N 22/02 20060101ALI20250701BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20250701BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
G01N22/00 S
G01N22/02 A
F27D21/00 Q
F27D1/00 V
(21)【出願番号】P 2022560878
(86)(22)【出願日】2021-04-05
(86)【国際出願番号】 US2021025706
(87)【国際公開番号】W WO2021207044
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2024-01-15
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516286453
【氏名又は名称】パネラテック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PaneraTech, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】バイラム,ヤクプ
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-115291(JP,A)
【文献】特開2006-153845(JP,A)
【文献】特表2017-520765(JP,A)
【文献】特開2014-210705(JP,A)
【文献】特開2003-294430(JP,A)
【文献】特開平09-264735(JP,A)
【文献】特開昭52-045952(JP,A)
【文献】特開昭48-038207(JP,A)
【文献】特表2019-534466(JP,A)
【文献】特表2018-535408(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0123467(US,A1)
【文献】米国特許第06198293(US,B1)
【文献】仏国特許出願公開第02685952(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N22/00-G01N22/04
G01B15/00-G01B15/08
G01N29/00-G01N29/52
G01B17/00-G01B17/08
G01S 7/00-G01S 7/42
G01S13/00-G01S13/95
F27D 1/00-F27D 1/18
F27D17/00-F27D99/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉の一部を形成する耐火物材料の状態を評価する装置であって、
前記炉は、前記耐火物材料と異なる溶融材料を収容し、
前記装置は、
送信または受信する高周波信号の複数の反射及びプローブリンギングを低減するように物理的に構成される少なくとも1つの
第1アンテナであって、低減は、送信高周波信号が前記耐火物材料の離れた不連続から散乱された後に散乱高周波信号の検知を可能にする充分な程度であって、前記少なくとも1つの
第1アンテナは、前記送信高周波信号が前記炉
の外側に配置された外部構造に最低限到達するように物理的に構成及び配置され、前記外部構造が前記耐火物材料を少なくとも部分的に囲み、前記外部構造を通じた前記送信高周波信号の伝播を阻害し、前記少なくとも1つの
第1アンテナは、前記耐火物材料の部分に埋め込まれ、前記外部構造と前記溶融材料との間に配置され、前記散乱高周波信号と他の不連続から反射されたスプリアス信号とを区別できる程度に十分な時間内において、前記耐火物材料の前記離れた不連続からの前記散乱高周波信号の受信を可能にするように適合される、少なくとも1つの
第1アンテナと、
前記少なくとも1つの
第1アンテナによって送信された前記高周波信号を生成可能であって、前記少なくとも1つの
第1アンテナによって受信された前記高周波信号を検知可能であって、前記少なくとも1つの
第1アンテナに電磁的に結合される、トランシーバと、
データストレージ装置と、時間ドメインデータまたは時間ドメインデータに変換される周波数ドメインデータを生成するように受信された前記散乱高周波信号を測定し、前記時間ドメインデータを距離ドメインデータに校正し、前記耐火物材料の前記離れた不連続に関連した距離ドメインプロファイルにおける振幅のピークを特定し、受信された前記散乱高周波信号が移動した距離を決定するように構成された実行可能なコンピュータコードとを有する、第1コンピュータ型プロセッサと、
前記少なくとも1つの
第1アンテナと、前記トランシーバ及び前記第1コンピュータ型プロセッサのうちの少なくとも1つとの結合を可能にし、送信線、通信線、制御線、及びパワー線
を有するグループから選択される少なくとも1つの要素を有し、ケーブルのセットと無線とのうちの少なくとも1つによって構成され
る、接続チャネルと、
を備える、装置。
【請求項2】
前記
少なくとも1つの第1アンテナは、長方形の断面を有するピラミッド型のホーンアンテナを有し、第1フレアプレートと、前記第1フレアプレートに対向するように配置された第2フレアプレートと有し、
前記第1フレアプレートは、平面状の部分と、前記第1フレアプレートの前記平面状の部分の対向する側面エッジに沿った2つのフレア部分とを有し、
前記第2フレアプレートは、平面状の部分と、前記第2フレアプレートの前記平面状の部分の対向する側面エッジに沿った2つのフレア部分とを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1フレアプレートと前記第2フレアプレートとのうちの少なくとも1つの厚みは、変更可能である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1フレアプレートと前記第2フレアプレートとのうちの少なくとも1つの厚み対長さの比は、15%から85%の範囲内である、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記第1フレアプレートと前記第2フレアプレートとの間の体積領域の少なくとも一部は、絶縁体材料を有し、
前記絶縁体材料は、前記第1フレアプレートと前記第2フレアプレートとのうちの少なくとも1つの前記平面状の部分の前記対向する側面エッジに沿った2つの前記フレア部分を超えて延びる、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの
第1アンテナは、前記耐火物材料に埋め込まれた状態で作動し、前記耐火物材料に本質的にインピーダンス整合されるように設計及び物理的に構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの
第1アンテナは、前記耐火物材料の少なくとも1つの鍛造部分に埋め込まれている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記トランシーバと前記第1コンピュータ型プロセッサとのうちの少なくとも1つの少なくとも一部は、前記耐火物材料に埋め込まれている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記耐火物材料を少なくとも部分的に囲む前記外部構造は、前記炉の一部を形成する伝導性材料から形成されるシェル、前記炉に追加の機械的支持を提供する格子構造、及び前記炉の近くに配置される構造
を有するグループから選択される要素を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
評価する前記耐火物材料の前記状態は、前記耐火物材料の厚み、前記耐火物材料の欠陥、及び前記耐火物材料への前記溶融材料の進入のレベル
を有するグループから選択される要素である、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの
第1アンテナは、前記少なくとも1つの
第1アンテナのアンテナ放射パターン、前記少なくとも1つの
第1アンテナと前記少なくとも1つの
第1アンテナを囲む他の要素との間の電磁結合効果及び生じ得る干渉、前記外部構造の位置、及び評価下の前記耐火物材料の関心領域
を有するグループから選択される少なくとも1つの要素に応じて配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
複数のアンテナのセットに配置される複数のアンテナを有し、
前記複数のアンテナのセットのそれぞれのセットは、第2コンピュータ型プロセッサによって制御され、
前記第2コンピュータ型プロセッサは、前記第1コンピュータ型プロセッサによって制御される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記第1コンピュータ型プロセッサは、前記耐火物材料の前記状態の決定及び可視化と、前記炉の残りの稼働寿命及びメンテナンス計画の予測とのためのデータのセットを処理するように、時間ドメインと周波数ドメインのうちの少なくとも1つの信号処理方法の実施を可能にするように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記耐火物材料及び前記外部構造は、前記接続チャネルのルーティングを可能にする物理的な構成を有し、
前記物理的な構成は、溝、孔、凹部、切込み、ダクト及び通路を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記接続チャネルは、少なくとも500℃の高温を耐え得る少なくとも1つのケーブルを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記溶融材料が処理される前記炉のチャンバ内に配置され
る少なくとも1つの第2アンテナをさらに備え、
前記少なくとも1つの第2アンテナは、前記チャンバの実質的中央、前記チャンバの中央からオフセットされた位置、及び前記耐火物材料の内壁に隣接した位置
を有するグループから選択される位置に配置さ
れ、
前記実行可能なコンピュータコードは、前記炉が作動していない、または完全にまたは部分的に空であるときに実行される、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
炉の一部を形成する耐火物材料の状態を評価する方法であって、
送信または受信する高周波信号の複数の反射及びプローブリンギングを低減するように物理的に構成される少なくとも1つの
第1アンテナであって、低減は、送信高周波信号が前記耐火物材料の離れた不連続から散乱された後に散乱高周波信号の検知を可能にする充分な程度であって、前記少なくとも1つの
第1アンテナは、前記送信高周波信号が前記炉
の外側に配置された外部構造に最低限到達するように物理的に構成及び配置され、前記外部構造が前記耐火物材料を少なくとも部分的に囲み、前記外部構造を通じた前記送信高周波信号の伝播を阻害し、前記少なくとも1つの
第1アンテナは、前記耐火物材料の部分に埋め込まれ、前記外部構造と溶融材料との間に配置され、前記散乱高周波信号と他の不連続から反射されたスプリアス信号とを区別できる程度に十分な時間内において、前記耐火物材料の前記離れた不連続からの前記散乱高周波信号の受信を可能にするように適合される、少なくとも1つの
第1アンテナを提供することと、
前記送信高周波信号が評価下の前記耐火物材料の既定の関心領域に入射し、受信された前記散乱高周波信号は評価下の前記耐火物材料の前記既定の関心領域から散乱されるように、前記少なくとも1つの
第1アンテナのアンテナ放射パターン、前記少なくとも1つの
第1アンテナと前記少なくとも1つの
第1アンテナを囲む他の要素との間の電磁結合効果及び生じ得る干渉、前記外部構造の位置、及び評価下の前記耐火物材料の関心領域
を有するグループから選択される少なくとも1つの要素に応じて、前記少なくとも1つの
第1アンテナを配置することと、
少なくとも1つの送信高周波信号が評価下の前記耐火物材料の前記関心領域に入射するように、トランスミッタと前記少なくとも1つの
第1アンテナとを用いて、少なくとも1つの高周波信号を送信することと、
前記少なくとも1つの送信高周波信号が前記関心領域に入射し、評価下の前記耐火物材料の前記離れた不連続から散乱された後、レシーバと前記少なくとも1つの
第1アンテナとを用いて、少なくとも1つの高周波信号を検知することと、
評価下の前記耐火物材料の前記離れた不連続から散乱された検知高周波信号が移動した決定距離に基づいて、前記耐火物材料の前記状態を決定することと、
を含む、方法。
【請求項18】
記録データを生成するように、少なくとも1つの前記検知高周波信号に関するデータのセットを測定し、記録することと、
適用可能であると、前記記録データを時間ドメインデータに変換することと、
前記時間ドメインデータを距離ドメインデータと校正することと、
評価下の前記耐火物材料の前記離れた不連続から散乱された前記検知高周波信号に関連した前記距離ドメインデータにおけるピークを特定することと、
評価下の前記耐火物材料の前記離れた不連続から散乱された前記検知高周波信号が移動した距離を決定することと、
前記離れた不連続から散乱された前記検知高周波信号が移動した決定距離と、前記耐火物の性質、前記少なくとも1つの
第1アンテナの性質及び配置、並びに評価下の前記耐火物材料に接触する溶融材料のタイプに応じて選択された少なくとも1つの信号処理方法と、に基づいて、前記材料の前記状態を決定することと、
をさらに含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの
第1アンテナは、前記耐火物材料の少なくとも1つの鍛造部分に埋め込まれている、請求項
17に記載の方法。
【請求項20】
前記耐火物材料を少なくとも部分的に囲む前記外部構造は、前記炉の一部を形成する伝導性材料から形成されるシェル、前記炉に追加の機械的支持を提供する格子構造、及び前記炉の近くに配置される構造
を有するグループから選択される要素を有する、請求項
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、本明細書の発明者によって、2020年4月6日に米国特許商標庁に出願され、「冶金容器における材料の状態の評価のための方法及び装置」と題された係属中の米国仮特許出願第63/005,499号に基づいて、これに基づく優先権を主張し、参照によって、当該出願の明細書は本明細書に含まれる。
【0002】
本発明は、一般的に、材料の状態を評価するシステム及び方法に関する。より具体的に、本発明は、高周波(RF)信号を用いて耐火物材料の状態を監視し、決定するセンサシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
RF信号を用いて、特定の材料の形成の間またはその後の性質を測定する複数の評価方法及び装置は、様々な業界において、開示されている。表面特性、内部の均質性、残留材料厚み、材料の浸食の速度(rate)、第1材料の第2材料への進入の速度は、監視及び評価を要する可能性がある重要な属性である。主に、評価する材料の周りのセンサのタイプと配置は、これらの属性をどの程度まで測定できるかを決定する上で重要な役割を果たす。
【0004】
特に、冶金業界は、処理に使用する原材料を溶解するように炉及び取鍋等の大きな容器を使用する。これらは、コスト及び稼働上の機能性の観点から、製造者にとって重要な設備である。高い稼働温度において、内部の熱損失を最小化するように、これらの炉及び取鍋は、高い溶融温度及び良好な絶縁性質を有する耐火物材料を用いて、耐火物溶融チャンバを形成するように、構成される。しかしながら、炉及び取鍋の内側耐火物壁は稼働において劣化する。この劣化の影響は、耐火物浸食、耐火物腐食、応力クラック、及び溶融材料への耐火物材料の拡散を含む。他方で、耐火物材料が時間経過とともに劣化すると、溶融材料は、耐火物材料に進入する可能性があり、劣化プロセスを促進し、甚大な被害をもたらす可能性がある耐火物壁を通じた溶融材料の漏れの高いリスクが生じる。
【0005】
具体的には、炉壁等の材料の厚みを測定するためにマイクロ波を使用することは、ウォスコフその他による米国特許第6,198,293号、及びウォルトンその他による米国特許第9,255,794号において説明されるように、先行技術において開示されている。しかしながら、これらの試みは、特定の課題及び問題点に直面している。特に、高温の炉の炉壁厚みを決定しようとするこれらの試みは、特に、比較的高い周波数のバンドにおいて炉の外側から発信されたマイクロ波信号を用いた場合、耐火物材料の内側の表面の評価に関する大きな信号損失の問題を有する。同様に、比較的低い周波数帯の信号には、損失があり、既存のシステムによって求められる帯域幅及び分解能には限界がある。さらに、評価すべき耐火物材料の表面の近くにシステムの部品を配置することにおいて、スプリアス信号反射が、対象としている反射信号を分離することを難しくして、したがってこれらの材料の内側表面または内部の状態の評価をさらに困難にする。大きな課題の1つは、炉壁が、温度の増加とともに、電気伝導性が高くなることである。したがって、高温な炉壁を通過する信号には、大きな損失があり、これらの信号の検知は困難である。加えて、多くの場合、監視センサは、評価下の耐火物材料への直接的な物理的なアクセスが必要であって、特に金属材料で形成された近くの特定の対象物の存在に敏感である。
【0006】
ベイラムその他による米国特許第10,151,709号、リュージュその他による米国特許第9,880,110号、及びベイラムその他による米国特許第10,054,367号において説明されるように、耐火物材料の評価に関する損失及びスプリアス信号のレベルを抑制することによって、電磁波を用いて材料の状態を評価するために他の労力がなされている。しかしながら、これらのシステムは、受信した信号に関連する乱雑さを抑制するように使用される電磁波の複数反射効果を改善することを主な目的とする。加えて、これらの試みは、炉の外側から耐火物材料に電磁波を送信する独立したシステムに集中している。その結果、これらの労力は、炉または取鍋が外側シェルまたは特定の支持構造によって囲まれている場合であって、これらのシェル及び構造が、高い伝導性を有する材料によって形成され、これらを通じる電磁波の伝播を阻害する場合、または外部の評価システムを正しく設置できないようなアクセスが困難な領域における用途において、効果的でなくなる。
【0007】
それぞれの前述の参照された米国特許の明細書は、その全体において、参照によって本明細書に含まれる。
【0008】
特に鋼の冶金において、高炉または電気アーク炉は、鋼の高速溶融、及び高設の最終的な化学組成を調節するように冶金反応を実行するために使用される。その後、溶融した鋼は、さらなる精錬のために取鍋に輸送される。取鍋における鋼の処理は、還元剤、スラグ形成剤、脱硫剤、及び合金形成剤の追加を含む。これらの添加材は、取鍋が稼働する高温とともに、内壁及び取鍋の底の両方の大きな応力、摩耗、及び劣化を促進し、これらの大きな一因となる。特に、50トン以上の容量を有する電気アーク炉及び取鍋は、主に鋼を生産するように使用される。これらの取鍋は、残留物の除去及び検査のためのメンテナンスの対象とされることを要し、時には1週間単位で修理されることもある。同様に、鋼の製造は、連続的な溶解動作を行う高炉を含んでもよい。これらの炉は、外側に鋼のライニング(lining)を有し、内側に溶解した材料と相互作用する耐火物を有する。耐火物が劣化すると、予定していない生産の中断が発生しないように、高炉のメンテナンスが求められる。
【0009】
さらに、溶融した鋼等の溶融材料の流れは、高温において、冶金材料の内側表面を浸食し、劣化させて、耐火物材料の壁を通じた溶融鋼の漏れの高いリスク及び/または炉の外側シェルへの大きなダメージをもたらす。炉の壁における隙間及びクラックを通じた溶融鋼の主な漏れは、炉を稼働モードに戻すことができる前に、冷却、修理及び再稼働するため、少なくとも30日の生産中断を要する場合がある。さらに、溶融鋼の漏れは、炉の周りの装置に大幅なダメージをもたらす可能性があり、もっとも重大なことに、作業員の健康及び命をリスクにさらす。これらの理由のため、多くの場合において、炉のオーバーホールは必要とされるときより大幅に早い時期に行われる。これは、初期投資及び炉の稼働期間中の生産能力低下の観点において、生産者によって大きなコストにつながる。
【0010】
したがって、炉の作業者にとって、炉の稼働寿命を延ばし、本当に必要なときに必要な炉の停止を計画するように、メンテナンスを効率的に計画し、炉壁の耐火物材料の劣化を監視することは重要である。炉の寿命は、稼働年齢、平均稼働温度、加熱及び冷却における温度レート、稼働温度の範囲、稼働サイクルの数、耐火物材料の種類及び品質、及び炉内で使用される溶融材料及び添加剤の量(load)及び種類を含む、複数の要因によって影響を受ける。これらの要因のそれぞれには、炉の期待寿命、及び対応するメンテナンスタスクを実行する時期の正確な予測を生成することを難しくするような不確かさがある。
【0011】
現在、決定的に及び効果的に、内部壁の厚み及び浸食プロファイル、または外側シェルを有する炉また取鍋の周囲の耐火物材料への溶融材料の進入レベルまたはレートを測定するための確立された方法及び装置がない。これは、多くの炉及び取鍋の稼働寿命及びメンテナンス計画の両方を正確に予測する能力を阻害する。その結果、製造者は、炉壁を通じた溶融材料の予測外の漏れ、炉の外側シェルへの深刻なダメージ、または、炉の期待寿命に関する製造者の経験に基づく、漏れまたは深刻なダメージの可能性を抑制するように、再構築のために炉を保守的に停止させる必要性を経験するおそれがある。
【0012】
他の重要な課題は、炉の耐火物チャンバを形成するように使用された材料が、表面検査によって視認できない内部欠陥を有することである。これは、炉の寿命の短縮につながり、炉の稼働において深刻なリスクをもたらす。したがって、炉の作業者にとって、炉の故障の影響を最小化し、炉の稼働寿命を延ばすように、炉の外側耐火物壁を囲む格子構造を建てることが常識である。通常、この格子は、鋼または比較的高い電気伝導性を有する材料によって形成されるプレートまたはバー等の要素のセットを有し、グリッドを形成するように互いに対して実質的に平行及び直交に配置される。
【0013】
格子は、劣化した耐火物壁のみならず、予防的または修正的なメンテナンス手段として炉に設置される追加の耐火物にも、構造的な支持を提供する。加えて、熱を吸収及び放熱することによって、格子は耐火物材料を冷却することに貢献する。しかしながら、隣接する要素の間の格子間隔は、数センチメートル程度小さい場合があり、これは、高周波信号を用いる多くのセンサに求められている炉壁への直接的なアクセスを困難にし、または格子間隔の大きさ内に物理的に収まることができないセンサにとって信号の阻害をもたらす。したがって、アンテナ等のセンサ、及び炉の耐火物材料を囲む既存の、または設置される格子の効果的な統合の阻害は、残りの稼働寿命と炉または取鍋のメンテナンス計画を予測できなくなることにつながる恐れがある。
【0014】
したがって、本分野において、先行技術における方法及び装置の問題点を回避した、伝播するRF信号の測定を通じて、炉または取鍋の一部を形成する耐火物材料の状態を遠隔に評価できる方法及び装置が求められている。
【発明の概要】
【0015】
耐火物の炉または取鍋等の冶金容器の一部を形成する耐火物材料の状態を評価し、監視するための装置及び方法であって、耐火物材料を少なくとも部分的に囲む外部構造が、高周波信号の伝播を阻害する装置及び方法は、本明細書にて開示される。例示的な実施の形態の1つまたは複数の態様は、利点を提供しつつ、先行技術の欠点を回避する。装置及び方法は、高周波信号を用いて、欠陥を特定し、浸食プロファイル、耐火物材料の厚み、及び耐火物材料への溶融材料の進入のレベルまたはレートを決定するように作動する。装置は、耐火物材料に埋め込まれ、またはアンテナによって耐火物材料へ送信される高周波の伝播に関連したデータを収集するように設計された容器のチャンバ内に配置されたアンテナを有する。さらに、信号処理技術は、容器の稼働寿命及びメンテナンス性を向上させるように、稼働摩耗、稼働時間、欠陥、クラック、腐食、浸食の存在によって容器の内壁の状態を決定することを可能にする。
【0016】
容器の耐火物材料を少なくとも部分的に囲む外部構造は、冶金取鍋及び特定の炉においては通常であるように、容器の一部であってもよく、既存の炉に追加の機械的支持を提供する格子構造等の追加されたものでもよく、または、容器の外側から、耐火物材料の内側にRF信号の送信を正しく設定するためのアクセスを阻害する近隣の構造であってもよい。加えて、本発明の範囲において、容器は炉または取鍋を含んでもよく、炉または取鍋の用語は、本発明がいずれか1つまたは両方にも適用可能であるため、区別することなく使用される。
【0017】
アンテナは、評価する材料の関心領域にRF信号を送信する。RF信号がこのような領域に入射すると、散乱し、離れた不連続を通じて、少なくとも部分的に反射され、少なくとも部分的に透過される。離れた不連続とは、いずれかのボイド、欠陥、評価すべき材料内の異なる材料の存在、空気を含む2つの異なる材料の間のいずれかの界面であってもよい。散乱されたRF信号は、同一または異なるアンテナによって受信され、その後、送信されたRF信号、またはアンテナと評価対象材料の表面の界面等、元々設置されていた不連続面から散乱されたRF信号を基準として、測定、記録、コンピュータ型プロセッサによる処理、及び時間計測が行われる。
【0018】
コンピュータ型プロセッサは、時間ドメインデータまたは時間ドメインデータに変換される周波数ドメインデータのいずれかを生成し、時間ドメインデータを距離ドメインデータに校正するように受信した散乱RF信号を測定するように構成された実行可能なコンピュータコードを有する。特に、乱雑さの大きさは、評価下の材料の離れた不連続から散乱したRF信号の大きさより小さい場合、コンピュータ型プロセッサは、この不連続に関連する大きさのピークレベルを特定し、この不連続から参照RF信号に関連した位置への距離を決定する。評価下の材料の関心領域上の1つまたは複数の評価は、材料の厚み、特定の欠陥の位置または材料内の付着した要素の位置を提供してもよい。さらに、時間ドメイン型及び/または周波数ドメイン型信号処理技術または両方の組み合わせは、評価している関心領域の状態を決定し、可視化するように使用されてもよい。
【0019】
本発明において、アンテナは、望ましくは、1つ以上の鋳造された耐火物レンガを用いて、アンテナ放射端と耐火物材料との間に隙間を有することなく耐火物材料に適合するように、耐火物材料に埋め込まれている。しかしながら、これは、容器の初期の建築または大きな修理の際においてのみ実施することが可能である。代わって、本発明の他の実施の形態は、容器のチャンバ内に配置されたアンテナを有する。結果として、既存の容器の耐火物材料も評価されてもよい。加えて、異なる取付機構は、容器のチャンバ内にアンテナを物理的に配置するようにアンテナが含まれてもよい。
【0020】
冶金容器の一部を形成する耐火物材料を含む異なる材料の浸食プロファイル及び厚みの状態を評価し、測定すること、及び耐火物材料への溶融材料の進入のレベルまたはレートを測定する方法は、材料内に埋め込まれたまたは容器のチャンバ内に配置された少なくとも1つのアンテナを設置するステップを含む。方法は、さらに、評価下の材料の関心領域に少なくとも1つのRF信号を送信するステップと、このような領域に入射した少なくとも1つのRF信号を受信するステップとを含む。方法は、処理されたデータの結果に基づいて、評価下の材料の状態を決定するように少なくとも1つのRF信号の大きさ及び位相を測定、記録、移送または処理することを含む。
【0021】
アンテナ等の装置の少なくとも一部を耐火物材料に埋め込むこと、または冶金容器のチャンバ内にアンテナを配置することによって、装置及び方法は、これらの材料の欠陥を特定し、内側面の浸食プロファイル及び耐火物材料への溶融材料の進入を測定する。したがって、容器の残りの稼働時間の予測がより正確になり、実務において、容器の寿命を延ばすことにつながってもよい。これは、稼働中断、溶融材料のもれ、または容器の金属外側シェルへの重大なダメージのリスクのレベルの大幅な減少とともに、冶金容器の修理、廃炉、または交換の高額なプロセスをよりよく管理するように、より効率的、より正確な計画をもたらす。したがって、装置及び方法は、冶金容器等の高額及び危険性を有する設備の稼働寿命を延ばし、メンテナンス計画の改善をもたらし得る1つまたは複数の条件のより効率的な評価、管理、診断、または追跡を可能にする。
【0022】
本発明の複数の利点は、添付の図面を参照することで、当業者によってよりよく理解されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】ある実施の形態の態様による炉または取鍋の一部である材料の状態を評価するために使用される装置の様々な態様を示す。
【
図1B】ある実施の形態の態様による炉または取鍋の一部である材料の状態を評価するために使用される装置の様々な態様を示す。
【
図1C】ある実施の形態の態様による炉または取鍋の一部である材料の状態を評価するために使用される装置の様々な態様を示す。
【
図2A】他の実施の形態の態様による炉または取鍋の一部である材料の状態を評価するために使用される装置の様々な態様を示す。
【
図2B】他の実施の形態の態様による炉または取鍋の一部である材料の状態を評価するために使用される装置の様々な態様を示す。
【
図2C】他の実施の形態の態様による炉または取鍋の一部である材料の状態を評価するために使用される装置の様々な態様を示す。
【
図3A】他の実施の形態の態様による炉または取鍋の一部である材料の状態を評価するために使用される装置の様々な態様を示す。
【
図3B】他の実施の形態の態様による炉または取鍋の一部である材料の状態を評価するために使用される装置の様々な態様を示す。
【
図3C】他の実施の形態の態様による炉または取鍋の一部である材料の状態を評価するために使用される装置の様々な態様を示す。
【
図4】他の実施の形態の態様による材料の状態を評価するための方法の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の特定の実施の形態の後続の説明は、本発明の実施例を実施できるように記載されており、望ましい実施の形態を限定することを意図しておらず、その特定の例を示すことを意図している。当業者は、本発明と同一の目的を実施するための他の方法及びシステムを改造または設計する基礎として、開示される思想及び特定の実施の形態を容易に使用できることを認識する。当業者は、このような同等の構造は、発明の最も広い思想及び範囲から逸脱しないと認識する。
【0025】
本発明の実施の形態の特定の態様によると、
図1Aから
図1Cは、炉12の状態を示すために使用される装置10の様々な態様を示す。この例において、炉12は、鋼の外側シェルを有する。より具体的に、装置10は、炉12のチャンバ15を通常少なくとも部分的に囲む耐火物材料14の状態を評価する。言い換えると、耐火物材料14は、鋼等の材料の溶融が起こるチャンバ15と、外側鋼シェルを含む炉12の底部及び外側側面との間で1つまたは複数の層において配置される。通常、耐火物材料14の様々な層は、炉12の下から上まで隣り合わせで配置されるレンガを用いて形成される。したがって、耐火物材料14は、取鍋または炉12のチャンバ15を囲む1つまたは複数の壁を形成し、ここで、耐火物材料14の内壁の離れた表面は、炉12のチャンバ15に隣接した壁または表面の領域を意味する。同様に、耐火物材料14の外側の壁は、炉12のチャンバ15から最も離れて配置された耐火物材料14の壁によって画定される。加えて、少なくとも1つのアンテナを有する1つまたは複数のアンテナのセットは、耐火物材料14内に埋め込まれてもよい。それぞれのアンテナのセットは、第2コンピュータ型プロセッサによって制御されてもよく、第1コンピュータ型プロセッサは、全ての第2コンピュータ型プロセッサを制御する。
【0026】
この特定の実施の形態において、装置10は、耐火物材料14に埋め込まれた3つのアンテナ17a、17b、17cのセットを有する。望ましくは、アンテナ17a、17b、17cは、耐火物材料14の層の1つに埋め込まれた状態で作動するように設計及び物理的に構成されている。その結果、アンテナ17a、17b、17cは、耐火物材料14に本質的にインピーダンス整合し、追加のインピーダンス整合の工夫は不要である。より望ましくは、アンテナ17a、17b、17cは、耐火物材料14とチャンバ15との間の境界を画定する輪郭16の大部分に到達するように、アンテナ17a、17b、17cからの送信信号が耐火物材料14を通じて伝播するように、耐火物材料14に埋め込まれて配置される。より望ましくは、それぞれのアンテナ17a、17b、17cは、耐火物材料14の1つまたは複数の鍛造レンガに埋め込まれている。理想的には、炉の設計において、アンテナ17a、17b、17cの正しい位置が画定され、それぞれのアンテナ17a、17b、17cのマトリックスは、耐火物材料14の内壁の一部である鍛造可能な耐火物レンガのセットで鍛造によって構成される。したがって、アンテナ17a、17b、17cは、炉の建築において、既定の位置において設置される。代わって、アンテナ17a、17b、17cが埋め込まれた鍛造された耐火物レンガのセットは、炉のメンテナンスで、既定の位置において、通常の鍛造されていない耐火物レンガとの交換において使用されてもよい。
【0027】
さらに、この構成において、アンテナの放射エッジと耐火物材料との間に隙間が無いようにアンテナが耐火物材料に合うように耐火物レンガに鍛造されるように設計し、そのため、アンテナが鍛造されず、耐火物材料に対して外側に設置される場合において通常であるように、アンテナのインピーダンスを耐火物材料のインピーダンスと整合させる特段の工夫は不要である。
【0028】
装置10は、RF信号を送信及び受信できるトランシーバ18と、トランシーバ18とアンテナ17a、17b、17cのそれぞれとを結合するケーブル19a、19b、19cのセットとをさらに有する。装置10は、データを格納するデータストレージ装置と、単一のコンピュータ型プロセッサとをさらに有し、両方がトランシーバ18に統合されてもよい。格納されたデータは、ポータブルメモリドライブ、ケーブルまたは当業者に知られた他の電子的な手段を用いて取り出し可能であってもよい。さらに、少なくとも部分的に、トランシーバ18は、アンテナ17a、17b、17cの1つまたは複数と統合されてもよい。したがって、トランシーバ18と、アンテナ17a、17b、17cとの統合の程度に基づいて、耐火物レンガと炉12の外側鋼シェルは、アンテナ17a、17b、17cまたは少なくともトランシーバ18の一部から、容器12の外側に、ケーブル19a、19b、19cのセット、または他の制御、パワーまたは通信線のルーティングを可能にするように物理的に構成されている。これらの物理的な構成は、溝、孔、凹部、切込み、ダクト、または通路を含んでもよい。加えて、ケーブル19a、19b、19cのセットは、少なくとも500℃の高温を耐えることができることを必要とする。トランシーバ18、特にストレージ装置及びコンピュータ型プロセッサの部品は、本実施の形態の説明にとって重要でないため、図示されていないと認識されよう。
【0029】
耐火物材料14の状態の評価において、より具体的に、耐火物材料14の輪郭16の状態の評価において、トランシーバ18から送信され、アンテナ17a、17b、17cを通じて輪郭16に到達するRF信号は、部分的に反射される。この反射は、伝播するRF信号が直面する、耐火物材料14と、炉12のチャンバ15内の材料との間の境界における媒体の不連続によって生じる。望ましくは、アンテナ17a、17b、17cは、アンテナ17a、17b、17cからの送信信号が、輪郭16が炉12のチャンバ15内の溶融材料に隣接する領域において、輪郭16に実質的に直交して入射するように配置される。さらに望ましくは、アンテナ17a、17b、17cは、耐火物材料14の離れた不連続によって散乱された後の高周波信号の検知を可能にするような充分な程度によってアンテナ17a、17b、17cによって送信または受信された高周波信号の複数の反射及びプローブリンギングを軽減するように物理的に構成されている。最も望ましくは、アンテナ17a、17b、17cは、アンテナ17a、17b、17cからの送信信号が容器12の外側鋼シェルに最小限到達し、容器12の外側鋼シェルによって反射された後でトランシーバ18によって受信された信号の効果を最小化するように、物理的に構成され、配置される。
【0030】
通常、チャンバ15は、鋼または(チャンバ15が空であると)空気を収容する。輪郭16において反射されたRF信号は、アンテナ17a、17b、17cによって受信され、さらなる処理、格納または加工のためにトランシーバ18に送信される。トランシーバ18は、0.5GHzから70GHzの範囲における1つまたは複数の周波数帯における受信信号の振幅及び位相を測定する。さらに、周波数及び/または時間ドメインにおける1つまたは複数の信号処理方法を用いたこれらの信号の処理において、装置10は、輪郭16の形状と、輪郭16の異なる点に沿った耐火物材料14の対応する厚みとを決定できる。加えて、装置10は、耐火物材料14へのチャンバ15の溶融材料の進入のレベル及びレートを決定できる。
【0031】
代わって、アンテナ17a、17b、17cは、耐火物材料14に埋め込まれている代わりに容器12の耐火物材料14に取り付けられてもよい。いずれの場合においても、それぞれのアンテナ17a、17b、17cは、耐火物材料14と物理的に接触しており、望ましくは、長方形の断面を有するピラミッド型のホーンアンテナを有し、平面状の部分及び第1フレアプレートの平面状の部分の対向する側面エッジに沿った2つのフレア部分を有する第1フレアプレートと、第1フレアプレートに対向するように配置された第2フレアプレートとをさらに有し、第2フレアプレートは、平面状の部分及び第2フレアプレートの平面状の部分の対向する側面エッジに沿った2つのフレア部分を有する。特に、第1フレアプレートと第2フレアプレートとの少なくとも1つの厚みは変更可能であって、望ましくは、第1フレアプレートと第2フレアプレートとの少なくとも1つの厚み対長さの比は、15%から85%の範囲内である。このような構成において、より望ましくは、それぞれのアンテナ17a、17b、17cは、第1フレアプレートと第2フレアプレートとの間の体積領域の少なくとも一部に配置される絶縁体材料をさらに有し、第1フレアプレートと第2フレアプレートとの対向する側面エッジに沿った2つのフレア部分を超えて延びる。より望ましくは、絶縁体材料は、耐火物材料14の誘電率と整合する誘電率を有し、絶縁体材料と耐火物材料14との間の媒体の不連続を緩やかにする。代わって、耐火物材料自体が絶縁体材料として使用される。
【0032】
当業者は、ホーンアンテナ以外の異なるタイプのアンテナ、及び/または平滑なロール(rolled)エッジを有するまたは有しないアンテナが装置10に使用されてもよいと認識する。より具体的に、4つのフレアプレートを有するホーンアンテナ、円錐型等のピラミッド型でないホーンアンテナ、または楕円形等の長方形でない断面を有するホーンアンテナが使用されてもよい。同様に、当業者は、装置10が、フィルタ、インピーダンス整合ネットワーク、増幅器、非コヒーレント検出器等のRF部品の様々な配置をさらに有してもよく、及び送信及び受信されたRF信号の測定を実現し、先行技術において知られているようにトランシーバ18及びコンピュータ型プロセッサの機能を実行するように、様々な方法で使用される他のテスト計装をさらに有してもよいことを認識する。さらに当業者は、ケーブル19a、19b、19cは、アンテナ17a、17b、17cをトランシーバ18に結合するように無線システムに交換されてもよいことを認識する。
【0033】
特に、
図1Aは、装置10を示す炉12の横方向の断面の側面図を示し、アンテナ17a、17b、17cは、炉12の1つの壁の一部を形成する耐火物材料14に埋め込まれている。同様に、
図1Bは、装置10を示す炉12の横方向の断面の下面図を示し、アンテナ17a、17b、17cは、炉12の1つの壁の一部を形成する耐火物材料14に埋め込まれている。より具体的には、アンテナ17a、17b、17cは、耐火物材料14とチャンバ15との間の境界における輪郭16の評価可能な領域を大きくするような配置において、耐火物材料14の上で配置される。
【0034】
図1Cを参照して、装置10を示す炉12の横方向の断面の側面図が示され、アンテナ17a、17b、17cは、炉12の1つの壁の一部を形成する耐火物材料14に埋め込まれて、アンテナ17d、17e、17fも、炉12の1つの壁の一部を形成する耐火物材料14に埋め込まれて、アンテナ17d、17e、17fはアンテナ17a、17b、17cと対向する。この構成において、装置10は、RF信号を送信及び受信できる第2トランシーバ13と、トランシーバ13をそれぞれアンテナ17d、17e、17fに結合するケーブル19d、19e、19fのセットをさらに有する。装置10は、第2データストレージ装置と、第2コンピュータ型プロセッサをさらに有し、両方ともにトランシーバ13と統合されてもよい。さらに、少なくとも部分的に、トランシーバ13は、アンテナ17d、17e、17fの1つまたは複数と統合されてもよい。トランシーバ13の部品、特にストレージ装置及びコンピュータ型プロセッサの部品は、本実施の形態の説明にとって重要でないため、図示されていないと認識されよう。当業者は、アンテナ17d、17e、17fは、ケーブル19d、19e、19fを通じてトランシーバ18に接続されてもよく、よって6つのアンテナ17a~17fの全てのために1つのトランシーバが使用される。
【0035】
望ましくは、アンテナ17a、17b、17cとアンテナ17d、17e、17fとはそれぞれ互いに向き合っている。より望ましくは、アンテナ17a、17b、17cによって送信されたRF信号は、アンテナ17d、17e、17fの少なくとも1つによって受信される。最も望ましくは、
図1Cを参照して、この特定の構成を用いた耐火物材料14の状態の評価は、炉12のチャンバ15が少なくとも部分的に空であるときに実行され、よってチャンバ15を通じて送信される信号は、チャンバ15が空でない場合の信号ほど減衰していない。この特定の構成は、アンテナ17a、17b、17cの1つまたは複数から、アンテナ17d、17e、17fの1つまたは複数への送信信号が輪郭16を少なくとも2つの異なる領域において通過するため、送信信号に関する追加の情報を提供してもよい。耐火物材料14とチャンバ15との間の境界における輪郭16の第1領域は、送信アンテナ17a、17b、17cの1つまたは複数に近く、耐火物材料14とチャンバ15との間の境界における輪郭16の第2領域は、受信アンテナ17d、17e、17fの1つまたは複数に近い。当業者は、アンテナ17a~17fのそれぞれは送信または受信アンテナとして使用されてもよいことを認識する。主な課題は、送信アンテナの少なくとも1つを受信アンテナの少なくとも1つに向かせることである。
【0036】
図2Aから
図2Cは、実施の形態のさらなる態様による、円柱型の炉22の状態を評価するために使用される装置20の様々な態様を示す。より具体的には、装置20は、通常、炉22のチャンバ25を少なくとも部分的に囲む耐火物材料24の状態を評価する。言い換えれば、耐火物材料24は、鋼等の材料の溶融が生じるチャンバ25と、取鍋22の底及び側壁との間の1つまたは複数の層において配置される。通常、耐火物材料24の様々な層は、取鍋22の下から上まで隣り合わせで配置されるレンガを用いて形成される。したがって、耐火物材料24は、取鍋22のチャンバ25を囲む1つまたは複数の壁を形成する。
【0037】
この特定の構成において、装置20は、取鍋22が作動しておらず、完全にまたは部分的に空であるときに、チャンバ25内に配置され、アンテナアレー27を形成する1つまたは複数のアンテナを有する。望ましくは、アンテナアレー27は、アンテナアレー27からの送信信号が、耐火物材料24とチャンバ25との間の境界を画定する輪郭26の大半に到達するようにチャンバ25内で伝播するように、配置される。より望ましくは、アンテナアレー27は、アンテナアレー27からの送信信号が輪郭26に実質的に直交して入射するように配置される。最も望ましくは、アンテナアレー27は、炉の稼働の間または炉が稼働しない間、チャンバ25内のアンテナアレー27の位置を支持し、調整できる機械的構造28の上に取り付けられている。
【0038】
さらに、装置20は、構造28に取付可能であって、1つまたは複数のモータ付き機構によって、アンテナアレー27を自動的に配置するようにプログラムできるコントローラをさらに有してもよい。望ましい実施の形態において、構造28は、評価下の輪郭36の領域に実質的に平行な軸に沿って回転されてもよく、またはアンテナアレー27が輪郭26によって画定される領域の全てから反射されるRF信号を受信できるように、様々な位置において設置されてもよい。加えて、装置20は、材料の状態の対応する評価を実行するために、構造28の位置を自動的に制御し、測定されたデータを記録及び格納し、または評価プロセスの少なくとも一部をステップ毎に誘導するように使用されるソフトウェアをさらに有してもよい。
【0039】
装置20は、RF信号を送信及び受信できるトランシーバと、アンテナアレー27をトランシーバに結合するためのケーブルのセットとをさらに有する。装置20は、データストレージ装置と、コンピュータ型プロセッサとをさらに有し、両方ともにトランシーバに統合されてもよい。さらに、少なくとも部分的に、トランシーバは、アンテナアレー27に統合されてもよい。トランシーバ、ストレージ装置、コンピュータ型プロセッサ、コントローラ、及びモータは、本実施の形態の説明にとって重要でないため、図示されていないと認識されよう。さらに、適用できる場合において、構造28は、ケーブルのルーティングのため、またはトランシーバ、ストレージ装置、コンピュータ型プロセッサ、コントローラ、モータ、及びレーザ、LIDAR、または超音波センサ等のセンサの取付のための支持機構を提供してもよい。
【0040】
耐火物材料24の状態の評価において、より具体的には、耐火物材料24の輪郭26の状態の評価において、アンテナアレー27によって送信され、輪郭26に到達するRF信号は、部分的に反射される。この反射は、チャンバ25と耐火物材料24との間の境界において、伝播するRF信号が直面する媒体の不連続によって生じる。輪郭26において反射されたRF信号は、アンテナアレー27によって受信され、
図1Aから
図1Cを参照して装置10の場合で説明されるように、さらなる処理、格納、及び加工のためにトランシーバに送信される。
【0041】
代わって、アンテナアレー27は、構造28に取り付けられる代わりに、取鍋22の耐火物材料24に接続されてもよい。いずれの場合においても、
図1Aから
図1Cを参照して装置10の場合で説明されるように、アンテナアレー27のそれぞれのアンテナは、望ましくはピラミッド型のホーンアンテナを有する。当業者は、ホーンアンテナ以外の異なるタイプのアンテナ、及び/または平滑なロールエッジを有するまたは有しないアンテナが装置20に使用されてもよいと認識する。より具体的に、4つのフレアプレートを有するホーンアンテナ、円錐型等のピラミッド型でないホーンアンテナ、または楕円形等の長方形でない断面を有するホーンアンテナが使用されてもよい。同様に、当業者は、装置20が、フィルタ、インピーダンス整合ネットワーク、増幅器、非コヒーレント検出器等のRF信号の様々な配置をさらに有してもよく、及び送信及び受信されたRF信号の測定を実現し、先行技術において知られているようにトランシーバ及びコンピュータ型プロセッサの機能を実行するように、様々な方法で使用される他のテスト計装をさらに有してもよいことを認識する。
【0042】
特に、
図2Aは、装置20を示す取鍋22の横方向の断面の側面図を示し、アンテナアレー27は、構造28の上に取り付けられ、チャンバ25の中央に実質的に配置され、よってアンテナアレー27によって送信されるRF信号は、取鍋22のチャンバ25の側面に配置された輪郭26の領域に実質的に直交して入射する。同様に、
図2Bは、装置20を示す取鍋22の横方向の断面の側面図を示し、アンテナアレー27は、構造28の上に取り付けられ、チャンバ25の中央に実質的に配置され、よってアンテナアレー27によって送信されるRF信号は、取鍋22のチャンバ25の底面に配置された輪郭26の領域に実質的に直交して入射する。
【0043】
図2Cを参照して、装置20を示す取鍋22の横方向の断面の側面図が示されており、第1アンテナアレー27と第2アンテナアレー29とは、構造28の上に取り付けられ、チャンバ25の中央に実質的に配置され、よって、アンテナアレー27によって送信されるRF信号は、取鍋22のチャンバ25の側壁に位置する輪郭26の領域に実質的に直交して入射する。このような構成において、アンテナアレー27、29が、
図2Aに示すようにアンテナアレー27のみが用いられる場合と比較して、輪郭26のより大きい領域にRF信号を送信することができるため、装置20は、回転しなくてもよく、またはより小さく回転してもよい。
【0044】
図3Aから
図3Cは、実施の形態のさらなる態様による円柱型の取鍋32の状態を評価するために使用される装置30の様々な態様を示す。より具体的には、装置30は、耐火物材料34の状態を評価し、耐火物材料34は、通常、取鍋32のチャンバ35を少なくとも部分的に囲む。言い換えれば、耐火物材料34は、鋼等の材料の溶融が生じるチャンバ35と、取鍋32の底面及び側面との間の1つまたは複数の層に配置される。通常、耐火物材料34の様々な層は、取鍋32の下から上に隣り合わせて配置されるレンガを用いて形成される。したがって、耐火物材料34は、取鍋32のチャンバ35を囲む1つまたは複数の壁を形成する。
【0045】
この特定の構成において、装置30は、RF信号が伝播する導波管38に沿ってスロットアンテナアレー37を形成する1つまたは複数のスロットアンテナを有する。スロットアンテナアレー37及び導波管38は、取鍋32は作動しておらず、完全にまたは部分的に空であるとき、チャンバ35内に配置される。望ましくは、スロットアンテナアレー37は、スロットアンテナアレー37からの送信信号が、耐火物材料34とチャンバ35との間の境界を画定する輪郭36の大半に到達するようにチャンバ25内で伝播するように、配置される。より望ましくは、スロットアンテナアレー37は、スロットアンテナアレー37からの送信信号が輪郭36の全ての領域に実質的に直交して入射するように配置される。最も望ましくは、導波管38は、炉の稼働の間または炉が稼働していない間、チャンバ35内におけるスロットアンテナアレー37の位置を支持し、調節することができる機械的構造の一部である。
【0046】
さらに、装置30は、導波管38に取付可能であって、1つまたは複数のモータ付き機構によって、スロットアンテナアレー37を自動的に配置するようにプログラムできるコントローラをさらに有してもよい。望ましい実施の形態において、導波管38は、評価下の輪郭36の領域に実質的に平行な軸の周りで回転されてもよく、スロットアンテナアレー37が輪郭36によって画定される領域の全てから反射されるRF信号を受信できるような様々な位置に設置されてもよい。望ましくは、導波管38は、取鍋32のチャンバ35の底部に配置される輪郭36の領域に実質的に直交するRF信号をさらに送信するように、開放端を有する導波管である。加えて、装置20は、材料の状態の対応する評価を実行するために、構造28の位置を自動的に制御し、測定されたデータを記録及び格納し、または評価プロセスの少なくとも一部をステップ毎に案内するように使用されるソフトウェアをさらに有してもよい。
【0047】
装置30は、RF信号を送信及び受信できるトランシーバと、トランシーバに導波管38を結合できるケーブルのセット及び/またはアダプタとをさらに有する。装置30は、データストレージ装置と、コンピュータ型プロセッサとをさらに有し、両方ともにトランシーバに統合されてもよい。さらに、少なくとも部分的に、トランシーバは、導波管38に統合されてもよい。トランシーバ、ストレージ装置、コンピュータ型プロセッサ、コントローラ、及びモータは、本実施の形態の説明にとって重要でないため、図示されていないと認識されよう。さらに、適用できる場合において、導波管38は、ケーブルのルーティングのため、またはトランシーバ、ストレージ装置、コンピュータ型プロセッサ、コントローラ、モータ、及びレーザ、LIDAR、または超音波センサ等のセンサの取付のための支持機構を提供してもよい。
【0048】
耐火物材料34の状態の評価において、より具体的に、耐火物材料34の輪郭36の状態の評価において、スロットアンテナアレー37によって送信され、輪郭36に到達するRF信号は部分的に反射される。この反射は、チャンバ35と耐火物材料34との間の境界において、伝播するRF信号が直面する媒体の不連続によって生じる。輪郭36において反射されたRF信号は、スロットアンテナアレー37によって受信され、
図1Aから
図1Cを参照して装置10の場合で説明されるように、さらなる処理、格納、及び加工のために導波管38を通じてトランシーバに送信される。
【0049】
代わって、導波管38は、取鍋32の耐火物材料34に取り付けられてもよい。いずれの場合においても、スロットアンテナアレー37のそれぞれのアンテナは、望ましくは、先行技術で知られているように、導波管38の側面において、RF信号を送信及び受信するような寸法を有する開口を有する。当業者は、装置30において、大きさ及び形状が異なるタイプのスロットアンテナが使用されてもよいと認識する。同様に、当業者は、装置30が、フィルタ、インピーダンス整合ネットワーク、増幅器、非コヒーレント検出器等のRF信号の様々な配置をさらに有してもよく、及び送信及び受信されたRF信号の測定を実現し、先行技術において知られているようにトランシーバ及びコンピュータ型プロセッサの機能を実行するように、様々な方法で使用される他のテスト計装をさらに有してもよいことを認識する。
【0050】
特に、
図3Aは、装置30を示す取鍋32の横方向の断面の側面図を示し、スロットアンテナアレー37は、導波管38の上に取り付けられ、導波管38は、チャンバ35の中央に実質的に配置され、よってスロットアンテナアレー37から送信されるRF信号は、取鍋32のチャンバ35の側面に配置された輪郭36の領域に実質的に直交して入射する。望ましくは、導波管38は、取鍋32のチャンバ35の底部に配置される輪郭36の領域に実質的に直交するRF信号をさらに送信するように、開放端を有する導波管である。
【0051】
同様に、
図3Bは、装置30を示す取鍋32の横方向の断面の側面図を示し、スロットアンテナアレー37は、導波管38の上に取り付けられ、チャンバ35の中央に実質的に配置され、よってスロットアンテナアレー37から送信されるRF信号は、取鍋32のチャンバ35の側面に配置された輪郭36の領域に実質的に直交して入射する。この特定の構成において、導波管38は、導波管38の端部に配置されるアンテナ39のフィード機構として使用される。アンテナ39は、アンテナ39によって送信及び反射されるRF信号に追加利得を提供する。加えて、アンテナ39は、取鍋32のチャンバ35の底部において配置される輪郭36の領域に実質的に直交するRF信号を送信してもよい。望ましくは、アンテナ39は、
図1Aから
図1Cを参照して、装置10の場合において、上述のようにピラミッド型のホーンアンテナを有する。当業者は、ホーンアンテナ以外のタイプの異なるアンテナ、及び/または平滑なロールエッジを有するまたは有しないアンテナが装置30に使用されてもよいと認識する。より具体的に、4つのフレアプレートを有するホーンアンテナ、円錐型等のピラミッド型でないホーンアンテナ、または楕円形等の長方形でない断面を有するホーンアンテナが使用されてもよい。
【0052】
図3Cを参照して、装置30を示す取鍋32の横方向の断面の側面図が示されており、第1スロットアンテナ37a、第2スロットアンテナ37b、及び第3スロットアンテナ37cは、それぞれ導波管38a、38b、38cに取り付けられている。導波管38a、38b、38cは、チャンバ35の中央に実質的に配置され、よってスロットアンテナアレー37a、37b、37cによって送信されるRF信号は、取鍋32のチャンバ35の側面に配置された輪郭36の領域に実質的に直交して入射する。望ましくは、導波管38a、38b、38cの少なくとも1つは、取鍋32のチャンバ35の底部に配置される輪郭36の領域に実質的に直交するRF信号をさらに送信できるように、開放端を有する導波管である。さらに望ましくは、導波管38a、38b、38cの少なくとも1つは、アンテナにおいて終了する。
【0053】
上記に示した様々な実施の形態における各アンテナは、概ね直線偏波又は概ね円偏波を含む楕円偏波で作動することができる。さらに、1つまたは複数のアンテナは送信専用モードで作動してもよく、1つまたは複数の異なるアンテナは受信専用モードで作動してもよく、よってシステムは、バイスタティックまたはマルチスタティック構成で作動する。代わって、複数のアンテナが送信専用モード、受信専用モード、または送受信モードで作動してもよく、よってシステムは、多入力多出力(MIMO)構成で作動する。さらに、アンテナからの対応する信号の送信は、同時に実行されてもよく、異なるタイミングで実行されてもよく、電子走査機構を使用してもよい。さらに、これらのアンテナの各々は、少なくとも1つのアンテナの性能を向上させるように、または少なくとも1つのアンテナと、他のアンテナ、若しくは少なくとも1つのアンテナを支持する若しくは炉の一部を形成する若しくは炉内にある構造の部品との間の電磁結合を低減するように構成された、可変伝導率を有する1つまたは複数の材料、RF吸収材料、メタ材料、強磁性材料、またはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0054】
同様に、周波数および/または時間ドメインにおける1つまたは複数の信号処理方法は、チャンバ炉内の耐火物材料の内壁および/または底部の表面トポロジーを決定するように使用されてもよい。特に、材料の状態の評価結果の2次元および3次元画像は、逆投影、遅延和、合成開口レーダ画像、逆伝搬、逆散乱、及び超解像を含む1つまたは複数の信号処理方法を用いて、収集したデータから生成されてもよい。さらに、信号処理技術の適用は、上記のいずれかのアンテナの、電磁界、電流、電磁放射利得、入力インピーダンス、及び偏波に限定されないが、これらを含む特性値を算出し、測定準備及びデータ収集プロセスを支持または誘導するように使用されてもよい。
【0055】
上述の構成は、例示的な態様において、本明細書で説明されており、使用されている用語は、限定的なものでなく、説明のための用語であると理解されよう。本明細書にて開示されているいずれかの構成は、他の構成の1つまたは複数の態様を含んでもよい。本明細書において記載されている例示的な実施の形態は、当業者が本発明を実施できるように本発明のいずれかの原理を説明するように記載されてもよい。
【0056】
[方法]
本発明の実施の形態のさらなる態様による材料の状態を評価する方法が説明される。方法は、以下のように、トランシーバと少なくとも1つのアンテナとを用いて少なくとも1つのRF信号を測定するように実行され、少なくとも1つのアンテナは、評価する材料の既定領域に入射し、及び/またはそこから反射されるRF信号を送信及び/または受信するように適切に配置される。
【0057】
1.ステップ110において、RF信号が、評価する材料の既定の関心領域に入射し、そこから反射されるように、ある周波数帯にわたってアンテナを囲む領域に及びそこからRF信号を送信及び受信できるように少なくとも1つのアンテナを配置する。特に、炉または取鍋のために、少なくとも1つのアンテナは、望ましくは、RF信号がチャンバの内壁及び/または底部の関心領域に送信されるように、内壁に取り付けられ、または炉または取鍋のチャンバを囲む耐火物材料に永久的に埋め込まれて配置される。代わって、少なくとも1つのアンテナは、取鍋または炉のチャンバの内部に挿入されてもよい構造において設置されてもよい。望ましくは、複数のアンテナは、評価する材料における既定の関心領域のより大きい部分のより正確な、効率的な評価を実施するように適切に配置されている。
【0058】
2.ステップ120において、ステップ110において説明されるように、少なくとも1つのRF信号を送信することと、トランスミッタ及び少なくとも1つのアンテナを使用することとを含み、よって、少なくとも1つのRF信号が評価下の材料の関心領域に入射する。特に、取鍋のために、少なくとも1つのRF信号は、取鍋チャンバの内壁及び/または底部内に送信されるべきである。望ましくは、複数のRF信号は、複数のアンテナを使用して送信される。
【0059】
3.ステップ130において、少なくとも1つの送信されたRF信号が評価下の材料の関心領域に入射した後、ステップ110において説明されるように、少なくとも1つのRF信号を受信することと、レシーバ及び少なくとも1つのアンテナを使用することとを含む。代わって、少なくとも1つのRF信号は、第1アンテナによって送信され、第2アンテナによって受信される。特に、取鍋のためには、少なくとも1つのRF信号は取鍋チャンバの内壁及び/または底部に入射すべきである。望ましくは、複数のRF信号は、複数のアンテナを用いて受信される。
【0060】
4.ステップ140において、評価下の材料の関心領域に入射した後、受信された少なくとも1つのRF信号の振幅及び位相を測定することを含む。これは、評価下の材料の関心領域から反射されて受信されたRF信号のS11及び/またはS22の散乱パラメータを測定することに対応してもよい。代わって、これは、評価下の材料の関心領域に入射した後、第1アンテナによって送信され、第2アンテナによって受信されるRF信号に関連したS12及び/またはS21散乱パラメータを測定することに対応してもよい。
【0061】
5.続いて、ステップ150において、ステップ140において説明したように、評価下の材料の関心領域に入射した後、受信された少なくとも1つのRF信号の測定された振幅及び位相(S11、S22、S12、及び/またはS21散乱パラメータ)を、ストレージ装置に記録することを含む。
【0062】
6.続いて、ステップ160において、適用可能であれば、少なくとも1つの送信及び受信アンテナの複数の位置のために、または代わって、少なくとも1つの送信アンテナ及び少なくとも1つの受信アンテナのために、ステップ110から150を繰り返すことを含み、評価下の材料の既定の関心領域の評価を完成させる。特に、取鍋のために、少なくとも1つのアンテナの複数の位置は、取鍋チャンバの内壁及び/または底部を有する材料の状態の評価を可能にする。
【0063】
7.続いて、ステップ170において、適用可能である場合において、少なくとも1つのアンテナを復活させることを含む。
【0064】
8.続いて、ステップ180において、収集したデータをコンピュータ型プロセッサに移送することを含む。
【0065】
9.続いて、ステップ190において、少なくとも1つの信号処理方法によって、収集したデータを処理することを含む。望ましくは、信号処理方法は、厚み、層の数、種類、及び操作周波数帯に関してもよい材料の寸法、使用アンテナのタイプ、アンテナの特定の位置、または、評価下の材料に接触する溶融材料等の材料のタイプ等の、評価下の材料の特性によって選択される。
【0066】
10.最後に、ステップ200において、処理したデータに基づいて、評価下の材料の状態を決定することを含む。
【0067】
収集されたデータの処理を含む材料の評価が完成すると、材料の状態を決定できる。材料の状態は、厚み、浸食プロファイル、操作摩耗、稼働時間、欠陥、クラック、浸食の存在、及び評価下の材料への他の材料の進入のレベルまたはレートを含む様々な要因による材料の劣化のレベルまたはレートを含んでもよい。
【0068】
方法は、少なくとも1つのアンテナと、他のアンテナ、または少なくとも1つのアンテナを支持する構造の部品、または炉の一部を形成する構造の部品、または炉内の構造の部品との電磁気結合を軽減するステップをさらに含んでもよい。加えて、当業者は、上述のステップが、材料の特定の評価または評価下の特定の材料のタイプのために対応して調節されてもよいと認識する。特に、収集するデータのタイプは、S12またはS21パラメータ、及び/またはS11及びS22パラメータの測定において、より具体的に、収集したデータを処理するために使用される技術において異なってもよい。
【0069】
材料の状態の評価のための本方法と装置は、本明細書にて例示的な態様において開示され、使用されている用語は、限定的ではなく、説明のために使用されていると理解されよう。当業者は、上記の教示を参照して、本発明の様々な改造及び変形が可能であることを認識する。上記の教示を参照して、本発明の様々な改造及び変形が可能であることは明らかである。本発明は、添付の請求項とその法的に同等なものとの範囲内において、具体的に説明されたものと異なるものによって実施されてもよい。