(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】車両用冷却システム
(51)【国際特許分類】
B60L 53/16 20190101AFI20250701BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20250701BHJP
H01R 13/533 20060101ALI20250701BHJP
H02G 3/03 20060101ALI20250701BHJP
B60R 16/04 20060101ALN20250701BHJP
【FI】
B60L53/16
B60L50/60
H01R13/533 A
H02G3/03
B60R16/04 T
(21)【出願番号】P 2023013268
(22)【出願日】2023-01-31
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】桂巻 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】古田 拓
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-7469(JP,A)
【文献】特開2019-149281(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0200206(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108493725(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0391601(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 53/16
H01R 13/533
B60L 50/60
H02G 3/03
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線および前記電線に沿って延在し内部を流通する冷媒によって前記電線を冷却する2本の冷媒流通路を有するケーブルと、
前記ケーブルの端末部に取り付けられ、車両に搭載された相手側コネクタに嵌合接続されるコネクタと、を備え、
前記コネクタに、前記ケーブルの2本の冷媒流通路を互いに連通させることで、前記2本の冷媒流通路のうちの一方を流れてくる冷媒を他方に流入させる接続流路が設けられて
おり、
前記ケーブル内の前記2本の冷媒流通路および前記コネクタ内の前記接続流路によって構成されるケーブル側冷媒通路が、前記車両の内部に配置されている、
車両用冷却システム。
【請求項2】
前記ケーブルの、一方の端末部に、車両に搭載された相手側コネクタに嵌合接続される前記コネクタが取り付けられ、かつ、他方の端末部に、車両外の充電ケーブルが接続される充電インレットが取り付けられており、
前記充電インレットに、前記ケーブルの電線と前記車両外の充電ケーブルの電線とを電気接続する充電端子と、前記ケーブルの2本の冷媒流通路と車両外の2本の冷媒通路とをそれぞれ流路接続する冷媒通路接続口と、が設けられている、
請求項1に記載の車両用冷却システム。
【請求項3】
前記ケーブル内の2本の冷媒流通路は、前記ケーブル内の一対の前記電線の間に配置され、
前記コネクタには、前記一対の電線が配置される一対の電線配置部が設けられ、
前記コネクタ内の前記接続流路が、前記一対の電線配置部の間に配置されている、
請求項1に記載の車両用冷却システム。
【請求項4】
電線および前記電線に沿って延在し内部を流通する冷媒によって前記電線を冷却する2本の冷媒流通路を有するケーブルと、
前記ケーブルの端末部に取り付けられ、車両に搭載された相手側コネクタに嵌合接続されるコネクタと、を備え、
前記コネクタに、前記ケーブルの2本の冷媒流通路を互いに連通させることで、前記2本の冷媒流通路のうちの一方を流れてくる冷媒を他方に流入させる接続流路が設けられており、
前記ケーブル内の2本の冷媒流通路は、前記ケーブル内の一対の前記電線の間に配置され、
前記コネクタには、前記一対の電線が配置される一対の電線配置部が設けられ、
前記コネクタ内の前記接続流路が、前記一対の電線配置部の間に配置されており、
前記コネクタのハウジングは、互いに合わせ面を合わせることで1つに合体される2つの半割体に半割りされており、前記2つの半割体の一方と他方とに前記一対の電線配置部の一方と他方とがそれぞれ設けられ、前記合わせ面の間に前記接続流路が配置されている、
車両用冷却システム。
【請求項5】
前記2つの半割体の合わせ面の少なくとも一方にU字状の凹部が設けられ、前記凹部に前記接続流路を形成するU字状の配管が組み付けられている、
請求項4に記載の車両用冷却システム。
【請求項6】
電線および前記電線に沿って延在し内部を流通する冷媒によって前記電線を冷却する2本の冷媒流通路を有するケーブルと、
前記ケーブルの端末部に取り付けられ、車両に搭載された相手側コネクタに嵌合接続されるコネクタと、を備え、
前記コネクタに、前記ケーブルの2本の冷媒流通路を互いに連通させることで、前記2本の冷媒流通路のうちの一方を流れてくる冷媒を他方に流入させる接続流路が設けられており、
前記ケーブル内の電線の端末部に、前記相手側コネクタの相手側端子と接続される接続端子が取り付けられ、
前記コネクタ内の電線配置部に、その内部において前記相手側端子と前記接続端子との嵌合接続を可能にするための貫通孔が設けられ、
前記コネクタ内の前記接続流路の一端に、前記ケーブル内の一方の冷媒流通路に接続される第1接続部が設けられ、かつ、前記コネクタ内の前記接続流路の他端に、前記ケーブル内の他方の冷媒流通路に接続される第2接続部が設けられている、
車両用冷却システム。
【請求項7】
電線および前記電線に沿って延在し内部を流通する冷媒によって前記電線を冷却する2本の冷媒流通路を有するケーブルと、
前記ケーブルの端末部に取り付けられ、車両に搭載された相手側コネクタに嵌合接続されるコネクタと、を備え、
前記コネクタに、前記ケーブルの2本の冷媒流通路を互いに連通させることで、前記2本の冷媒流通路のうちの一方を流れてくる冷媒を他方に流入させる接続流路が設けられており、
前記ケーブル内の前記2本の冷媒流通路および前記コネクタ内の前記接続流路によって構成されるケーブル側冷媒通路が、前記車両の内部に配置されて、前記車両に搭載された冷却対象物を冷却する冷媒循環通路の一部として組み込まれている、
車両用冷却システム。
【請求項8】
前記接続流路を有するコネクタが、前記ケーブルの一端側と他端側の両方に取り付けられており、
前記ケーブル内の2本の冷媒流通路のうちの一方が、長さ方向の途中で連通遮断され、その連通遮断箇所の両側の連通遮断端に冷媒流入口と冷媒流出口とが設けられ、
前記冷媒流入口および前記冷媒流出口により、前記ケーブル内の冷媒流通路が、前記車両内の冷媒循環通路に直列に接続されている、
請求項7に記載の車両用冷却システム。
【請求項9】
前記接続流路を有する前記コネクタは前記ケーブルの一端側にのみ取り付けられ、前記ケーブルの他端側には、車両に搭載された第2の相手側コネクタに嵌合接続される第2のコネクタが取り付けられ、
前記ケーブルの他端側の前記2本の冷媒流通路の端部は、前記ケーブルの他端側に取り付けられた前記第2のコネクタおよび第2の相手側コネクタの内部通路を通して、前記車両内の冷媒循環通路に接続されている、
請求項7に記載の車両用冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車等の車両用冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等の高出力化に伴って、高電圧・高電流に耐える導電経路が必要になって来ている。高電圧化・高電流化が進むと、導電経路の発熱量の増大が問題となるため、例えば、充電ケーブルやモータケーブルなどのケーブルを大径化せざるを得なくなる。しかし、ケーブルを大径化すると、重量増の問題や搭載スペース増の問題が生じるため、大径化を抑制する要求が強まっている。
【0003】
特許文献1には、端子の内部に形成した流体通路に冷媒を流すことで、端子を冷却する技術が開示されている。しかし、ケーブルの冷却までは行われないため、ケーブルの大径化を防ぐことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した技術においては、車両内のケーブルが冷却されず、ケーブルの大径化を抑制することが困難であったため、ケーブルの重量増の問題や搭載スペース増の問題が生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気自動車の高出力化に伴うケーブルの大径化を極力抑制することが可能な車両用冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用冷却システムは、下記を特徴としている。
【0008】
電線および前記電線に沿って延在し内部を流通する冷媒によって前記電線を冷却する2本の冷媒流通路を有するケーブルと、
前記ケーブルの端末部に取り付けられ、車両に搭載された相手側コネクタに嵌合接続されるコネクタと、を備え、
前記コネクタに、前記ケーブルの2本の冷媒流通路を互いに連通させることで、前記2本の冷媒流通路のうちの一方を流れてくる冷媒を他方に流入させる接続流路が設けられており、
前記ケーブル内の前記2本の冷媒流通路および前記コネクタ内の前記接続流路によって構成されるケーブル側冷媒通路が、前記車両の内部に配置されている、
車両用冷却システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気自動車の高出力化に伴うケーブルの大径化を極力抑制することが可能になる。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、同実施形態におけるケーブルの端末部と、その端末部に取り付けられたコネクタと、そのコネクタが嵌合接続される相手側コネクタの関係を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、前記コネクタの一具体例を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態の概略構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3実施形態の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の車両用冷却システムの概略構成を示す。
図1において、点線で区分けされた左側の領域Aは電気自動車の車両内の構成を示し、右側の領域Bは車両外の充電設備の構成(インフラ側の構成)を示している。
【0013】
車両外(領域B)の充電設備としては、図示しない電源装置に繋がる充電コネクタ50が用意されている。充電コネクタ50は、図示略の充電ケーブルの先端に取り付けられている。充電コネクタ50には、図示しないプラスとマイナスの一対の充電用端子の他に、冷媒流入通路50Aと冷媒流出通路50Bとが設けられている。
【0014】
充電コネクタ50の冷媒流入通路50Aは、例えば、充電ケーブルと一緒または別に設けた冷媒配管を介して、インフラ側の冷媒循環ポンプ60の冷媒吐出口に接続されている。また、充電コネクタ50の冷媒流出通路50Bは、同様に、充電ケーブルと一緒または別に設けた冷媒配管を介して、インフラ側の冷媒循環ポンプ60の冷媒吸入口に接続されている。なお、冷媒循環ポンプ60には、図示しない冷却回路が付設されており、吐出する冷媒を冷却できるようになっている。
【0015】
車両内(領域A)には、車両内各設備に電力を供給する充電可能なバッテリ1が搭載されている。バッテリ1にはジャンクションブロック(J/B)2が接続され、ジャンクションブロック2にオスコネクタ3が設けられている。オスコネクタ3は、相手側コネクタの一例である。そして、この車両内(領域A)のオスコネクタ3と車両外(領域B)の充電コネクタ50とを繋ぐ装置として、充電用ケーブル装置10が配置されている。この充電用ケーブル装置10は、車両内(領域A)に配置されている。
【0016】
この充電用ケーブル装置10は、ケーブル11と、ケーブル11の一端側に取り付けられたメスコネクタ12と、ケーブル11の他端側に取り付けられた充電インレット18と、を備えている。
【0017】
図2は、ケーブル11の一端側の端末部と、その端末部に取り付けられたメスコネクタ12と、そのメスコネクタ12が嵌合接続される相手側のオスコネクタ3の関係を示している。
【0018】
図2に示すように、ケーブル11の外装体11Aの内部には、2本の電線21、22と、電線21、22に沿って延在し内部を流通する冷媒によって電線21、22を冷却する2本の冷媒流通路31、32とが設けられている。2本の電線21、22は互いに絶縁状態に保たれているが、冷媒流通路31、32を流通する冷媒によって効率よく冷却されるようになっている。
【0019】
図1に示すように、ケーブル11の端末部に取り付けられたメスコネクタ12は、車両に搭載された相手側のオスコネクタ3に嵌合接続されるもので、このメスコネクタ12内にはUターン接続流路33が設けられている。Uターン接続流路33は、接続流路の一例である。Uターン接続流路33は、ケーブル11の端末部にメスコネクタ12が取り付けられた際に、ケーブル11内の2本の冷媒流通路31、32を互いに連通させる。このようにケーブル11内の2本の冷媒流通路31、32を互いに連通させることにより、2本の冷媒流通路31、32のうちの一方を流れて来る冷媒を他方に流入させることができるようになる。従って、このメスコネクタ12を冷媒循環対応型高圧メスコネクタと呼ぶことができる。
【0020】
ケーブル11の一方の端末部には、上述のように、車両に搭載されたオスコネクタ3に嵌合接続されるメスコネクタ12が取り付けられている。一方、ケーブル11の他方の端末部には、車両外の充電コネクタ50が接続される充電インレット18が取り付けられている。充電コネクタ50は、充電ケーブルの先端に配置されている。
【0021】
充電インレット18には、ケーブル11内の電線21、22と車両外(領域B)の図示しない充電ケーブルの電線(充電コネクタ50の充電用端子)とを電気接続する充電端子(図示略)が設けられている。また、充電インレット18には、ケーブル11内の2本の冷媒流通路31、32と車両外(領域B)の充電コネクタ50内の2本の冷媒通路(冷媒流入通路50Aと冷媒流出通路50B)とをそれぞれ流路接続する冷媒通路接続口18A、18Bが設けられている。
【0022】
従って、車両内(領域A)の充電インレット18に車両外(領域B)の充電コネクタ50を接続することで、インフラ側の冷媒循環ポンプ60の吐出する冷媒を、充電用ケーブル装置10のケーブル11に循環させることができる。
図1中の矢印Rは、冷媒の流れる方向を示している。
【0023】
図2を用いて、ケーブル11内の電線21、22と冷媒流通路31、32の配置関係について述べると、ケーブル11内の2本の冷媒流通路31、32は、ケーブル11内の一対の電線21、22の間に配置されている。また、メスコネクタ12には、ケーブル11内の一対の電線21、22が配置される一対の電線配置部12A、12Bが設けられており、メスコネクタ12内のUターン接続流路33は、一対の電線配置部12A、12Bの間に配置されている。
【0024】
ケーブル11内の電線21、22の端末部には、オスコネクタ3の相手側端子3A、3Bと接続される接続端子21A、22Aが取り付けられている。メスコネクタ12内の電線配置部12A、12Bには、その内部において相手側端子3A、3Bと接続端子21A、22Aとの嵌合接続を可能にするための貫通孔16が設けられている。また、メスコネクタ12内のUターン接続流路33の一端には、ケーブル11内の一方の冷媒流通路31の端部31Aに接続される第1接続部33Aが設けられる。さらに、メスコネクタ12内のUターン接続流路33の他端には、ケーブル11内の他方の冷媒流通路32の端部32Aに接続される第2接続部33Bが設けられている。
【0025】
図3は、メスコネクタ12の一例を示す分解斜視図である。
このメスコネクタ12のコネクタハウジング13は、互いに合わせ面14A、14Bを合わせることで1つに合体される2つの半割体13A、13Bに半割りされている。半割体13A、13Bの一方と他方には、一対の電線配置部12A、12Bの一方と他方とがそれぞれ設けられている。また、半割体13A、13Bの合わせ面14A、14Bの間にUターン接続流路33が配置されている。
【0026】
2つの半割体13A、13Bの合わせ面14A、14Bの少なくとも一方にはU字状の凹部15A、15Bが設けられており、その凹部15A、15BにU字状の配管17が組み付けられることで、Uターン接続流路33が形成されている。
【0027】
本実施形態の車両用冷却システムによれば、
図1に示すように、充電用ケーブル装置10の一端側に設けたメスコネクタ12をオスコネクタ3に接続し、充電用ケーブル装置10の他端側に設けた充電インレット18に、車両外(領域B)の充電コネクタ50を接続する。この構成により、
図1中矢印Rで示すように、インフラ側の冷媒循環ポンプ60の吐出する冷媒を充電用ケーブル装置10のケーブル11に循環させることができる。
【0028】
即ち、ケーブル11の一端側の端末部に取り付けられたメスコネクタ12がUターン接続流路33を有するので、ケーブル11内の一方の冷媒流通路31を通過した冷媒を、メスコネクタ12内のUターン接続流路33を経て、ケーブル11内の他方の冷媒流通路32に流入させられる。したがって、ケーブル11内で冷媒を循環させることができる。これにより、冷媒流通路31、32を流れる冷媒によって電線21、22を冷却することができ、電線21、22、ひいてはケーブル11の大径化を防ぐことができる。その結果、ケーブル11の重量増を防ぐことができ、かつ、ケーブル11の搭載スペースの削減を図ることが可能になる。具体的には、
図1に示すように、充電インレット18から先の急速充電に対応したケーブル11の大径化を抑制することができる。
【0029】
また、本実施形態では、一対の電線21、22の間を冷媒が循環するようになっていることから、2本の電線21、22を効率よく冷却することができる。
【0030】
また、本実施形態では、メスコネクタ12の電線配置部12A、12Bに設けた貫通孔16を通して、ケーブル11側の電線21、22を直接オスコネクタ3の相手側端子3A、3Bに接続するので、余計な接触導通点を減らせる。
【0031】
また、本実施形態では、2つの半割体13A、13Bを合体させることにより、Uターン接続流路33を有するメスコネクタ12を構成するので、組み付けが容易である。
【0032】
また、本実施形態では、U字状の凹部15A、15BにU字状の配管17を組み付けることで、Uターン接続流路33をメスコネクタ12のコネクタハウジング13内部に作る。この構成により、コネクタハウジング13に直接Uターン接続流路33を形成する場合と比べて、コネクタハウジング13の射出成形が容易となる。また、コネクタハウジング13に対する液密処理が不要となるので、Uターン接続流路33を内在するメスコネクタ12の製造が容易になる。
【0033】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態の概略構成を示す模式図である。
この実施形態の車両用冷却システムは、車両内で成立する冷却システムであり、車両駆動用の高圧モータ150にバッテリ1から給電する給電経路上のモータケーブル111(以下、ケーブル111という。)を冷却するためのものである。
【0034】
図4に示すように、本実施形態の車両用冷却システムでは、Uターン接続流路33を有するメスコネクタ12が、ケーブル111の一端側と他端側の両方に取り付けられた給電ケーブル装置110が使用されている。
【0035】
給電ケーブル装置110のケーブル111は、第1実施形態と同様に、一対の電線21、22と、電線21、22に沿って延在し内部を流通する冷媒によって電線21、22を冷却する2本の冷媒流通路31、32と、を有している。但し、ケーブル111内の2本の冷媒流通路31、32のうちの一方の冷媒流通路32(132)は、長さ方向の途中で連通遮断されており、その連通遮断箇所の両側の連通遮断端に冷媒流入口132Aと冷媒流出口132Bとが設けられている。なお、これら電線21、22および冷媒流通路31、32(132)は、第1実施形態と同様に、ケーブル111の外装体(図示せず)の内部に配置されている。
【0036】
給電ケーブル装置110は、一端側のメスコネクタ12がバッテリ1側のオスコネクタ3に接続され、他端側のメスコネクタ12が高圧モータ150側のオスコネクタ103に接続されることで、バッテリ1側の給電回路と高圧モータ150とを電気的に接続している。オスコネクタ103は、相手側コネクタの一例である。また、給電ケーブル装置110には、ケーブル111の両端にUターン接続流路33を有するメスコネクタ12が取り付けられている。この構成により、冷媒流入口132Aから導入された冷媒を、ケーブル111内の冷媒流通路31、32に循環させて、冷媒流出口132Bから導出するケーブル側冷媒通路SBを構成することができる。
【0037】
一方、車両内には、予め、車両に搭載された冷却対象物を冷却する冷却システムが装備されている。冷却対象物の具体例としては、発熱部品であるバッテリ1などが挙げられる。そして、その冷却システムの冷媒循環通路SAの一部として、上述した給電ケーブル装置110のケーブル側冷媒通路SBが直列に接続されている。即ち、ケーブル側冷媒通路SBの冷媒流入口132Aが冷却システムの冷媒循環通路SAの吐出側に接続され、ケーブル側冷媒通路SBの冷媒流出口132Bが冷却システムの冷媒循環通路SAの吸入側に接続されている。なお、冷媒循環通路SAには、冷媒循環ポンプ160や冷却回路(図示せず)が組み込まれている。
【0038】
このように、車載バッテリ1等の冷却対象物に配された冷媒循環通路SAにケーブル側冷媒通路SBを直列に組み込む。この構成により、冷媒経路を
図4中矢印Rの方向に循環する冷媒によって、バッテリ1などの冷却対象物とケーブル111の電線21、22とを一つの車内冷却系統で一緒に冷却することができる。
【0039】
特に、本実施形態では、ケーブル111の両端にUターン接続流路33を有するメスコネクタ12が取り付けられているので、ケーブル111の端末部に設けるメスコネクタ12の種類の統一を図ることができる。また、相手側のオスコネクタ3、103等に冷媒を流通させるための必要以上の内部通路を設ける必要がないため、コスト削減に寄与することができる。
【0040】
<第3実施形態>
図5は、本発明の第3実施形態の概略構成を示す模式図である。
この実施形態の車両用冷却システムも、第2実施形態と同様に、車両内で成立する冷却システムであり、車両駆動用の高圧モータ150にバッテリ1から給電する給電経路上のモータケーブル211(以下、ケーブル211という。)を冷却するためのものである。
【0041】
図5に示すように、本実施形態の車両用冷却システムでは、Uターン接続流路33を有するメスコネクタ12が、ケーブル211の一端側にのみ取り付けられた給電ケーブル装置210が使用されている。ケーブル211の他端側には、車両に搭載された第2の相手側オスコネクタ203に嵌合接続される第2のメスコネクタ212が取り付けられている。第2のメスコネクタ212は、第2のコネクタの一例であり、第2の相手側オスコネクタ203は、第2の相手側コネクタの一例である。この第2のメスコネクタ212には、Uターン接続流路は設けられておらず、直線的な2本の内部通路212A、212Bが設けられている。
【0042】
給電ケーブル装置210のケーブル211は、第1実施形態と同様のものであり、一対の電線21、22と、電線21、22に沿って延在し内部を流通する冷媒によって電線21、22を冷却する2本の冷媒流通路31、32と、を有している。高圧モータ150に接続されるケーブル211の一端側にのみ、Uターン接続流路33を有する第2のメスコネクタ212が取り付けられている。バッテリ1側に接続されるケーブル211の他端側の2本の冷媒流通路31、32は、第2のメスコネクタ212の2本の内部通路212A、212Bにそれぞれ繋がっている。
【0043】
給電ケーブル装置210は、一端側のメスコネクタ12が高圧モータ150側のオスコネクタ103に接続され、他端側の第2のメスコネクタ212が、バッテリ1側のジャンクションブロック202に設けた第2の相手側オスコネクタ203に接続される。給電ケーブル装置210は、このように、バッテリ1側の給電回路と高圧モータ150とを電気的に接続している。また、給電ケーブル装置210は、ケーブル211の一方の端部にUターン接続流路33を有するメスコネクタ12が取り付けられている。この構成により、第2のメスコネクタ212の一方の内部通路212Aから導入された冷媒を、ケーブル211内の冷媒流通路31、32に循環させて、他方の内部通路212Bから導出するケーブル側冷媒通路SBを構成することができる。つまり、第2のメスコネクタ212の一方の内部通路212Aがケーブル側冷媒通路SBの冷媒流入口、他方の内部通路212Bがケーブル側冷媒通路SBの冷媒流出口となっている。
【0044】
一方、第2実施形態と同様に、車両内には、予め、車両に搭載された、バッテリ1などの冷却対象物を冷却する冷却システムが装備されている。その冷却システムの冷媒循環通路SAの一部として、上述した給電ケーブル装置110のケーブル側冷媒通路SBが直列に接続されている。即ち、ケーブル側冷媒通路SBの冷媒流入口(第2のメスコネクタ212の一方の内部通路212A)が、バッテリ1側の第2の相手側オスコネクタ203の一方の内部通路203Aとジャンクションブロック202の一方の内部通路202Aを介して、冷却システムの冷媒循環通路SAの吐出側に接続されている。また、ケーブル側冷媒通路SBの冷媒流出口(第2のメスコネクタ212の他方の内部通路212B)が、第2の相手側オスコネクタ203の他方の内部通路203Bとジャンクションブロック202の他方の内部通路202Bを介して、冷却システムの冷媒循環通路SAの吸入側に接続されている。なお、冷媒循環通路SAには、第2実施形態と同様に、冷媒循環ポンプ160や冷却回路(図示せず)が組み込まれている。
【0045】
このように、第3実施形態においては、第2実施形態と同様に、車載バッテリ1等の冷却対象物に配された冷媒循環通路SAにケーブル側冷媒通路SBを直列で組み込む。この構成により、冷媒経路を
図5中矢印Rの方向に循環する冷媒によって、冷却対象物(バッテリ1など)とケーブル211の電線21、22とを一つの車内冷却系統で一緒に冷却することができる。
【0046】
特に、本実施形態では、ケーブル211の他端側に取り付けた第2のメスコネクタ212とその第2のメスコネクタ212が嵌合接続された第2の相手側オスコネクタ203およびジャンクションブロック202の内部通路203A、203B、202A、202Bを通して、ケーブル211に冷媒を循環させる。よって、冷媒循環通路の単純化が図れる。
【0047】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る車両用冷却システムの特徴をそれぞれ以下[1]~[9]に簡潔に纏めて列記する。
【0048】
[1] 電線(21、22)および前記電線に沿って延在し内部を流通する冷媒によって前記電線を冷却する2本の冷媒流通路(31、32)を有するケーブル(11、111、211)と、
前記ケーブルの端末部に取り付けられ、車両に搭載された相手側コネクタ(オスコネクタ3)に嵌合接続されるコネクタ(メスコネクタ12)と、を備え、
前記コネクタに、前記ケーブルの2本の冷媒流通路を互いに連通させることで、前記2本の冷媒流通路のうちの一方を流れてくる冷媒を他方に流入させる接続流路(Uターン接続流路33)が設けられている、
車両用冷却システム。
【0049】
上記[1]の構成によれば、ケーブルの端末部に取り付けられたコネクタが接続流路を有するので、ケーブル内の一方の冷媒流通路を通って来た冷媒を、コネクタ内の接続流路を経て、ケーブル内の他方の冷媒流通路に流入させることができる。つまり、コネクタで冷媒をUターンさせることにより、ケーブル内で冷媒を循環させることができるようになり、冷媒流通路を流れる冷媒によって電線を冷却することができる。従って、車両の外部または内部に設けられた冷媒循環ポンプによって冷媒を車両側で循環させ、車両内部に配索された電線を冷却することができ、それにより電線の大径化を防ぐことができる。その結果、ケーブルの重量増を防ぐことができ、かつ、ケーブルの搭載スペースの削減を図ることが可能になる。
【0050】
[2] 前記ケーブル(11)の、一方の端末部に、車両に搭載された相手側コネクタ(オスコネクタ3)に嵌合接続される前記コネクタ(メスコネクタ12)が取り付けられ、かつ、他方の端末部に、車両外の充電ケーブルが接続される充電インレット(18)が取り付けられており、
前記充電インレットに、前記ケーブルの電線と前記車両外の充電ケーブルの電線とを電気接続する充電端子と、前記ケーブルの2本の冷媒流通路と車両外の2本の冷媒通路(冷媒流入通路50A、冷媒流出通路50B)とをそれぞれ接続する冷媒通路接続口(18A、18B)と、が設けられている、
上記[1]に記載の車両用冷却システム。
【0051】
上記[2]の構成によれば、充電インレットから先の急速充電に対応したケーブルの大径化を抑制することができる。
【0052】
[3] 前記ケーブル(11)内の2本の冷媒流通路(31、32)は、前記ケーブル内の一対の前記電線(21、22)の間に配置され、
前記コネクタ(メスコネクタ12)には、前記一対の電線が配置される一対の電線配置部(12A、12B)が設けられ、
前記コネクタ内の前記接続流路(Uターン接続流路33)が、前記一対の電線配置部の間に配置されている、
上記[1]又は[2]に記載の車両用冷却システム。
【0053】
上記[3]の構成によれば、一対の電線の間を冷媒が循環するので、効率よく電線を冷却することができる。
【0054】
[4] 前記コネクタ(メスコネクタ12)のハウジング(コネクタハウジング13)は、互いに合わせ面(14A、14B)を合わせることで1つに合体される2つの半割体(13A、13B)に半割りされており、前記2つの半割体の一方と他方とに前記一対の電線配置部の一方と他方とがそれぞれ設けられ、前記合わせ面の間に前記接続流路(33)が配置されている、
上記[1]から[3]のいずれか一に記載の車両用冷却システム。
【0055】
上記[4]の構成によれば、2つの半割体を合体させることにより、接続流路を有するコネクタハウジングを構成できるので、組み付けが容易である。
【0056】
[5] 前記2つの半割体(13A、13B)の合わせ面(14A、14B)の少なくとも一方にU字状の凹部(15A、15B)が設けられ、前記凹部に前記接続流路(33)を形成するU字状の配管(17)が組み付けられている、
上記[4]に記載の車両用冷却システム。
【0057】
上記[5]の構成によれば、U字状の凹部にU字状の配管を組み付けることで、Uターン接続流路をコネクタのハウジング内部に作ることができる。従って、コネクタハウジングに直接Uターン接続流路を形成する場合と比べて、コネクタハウジングの射出成形が容易となる。また、コネクタハウジングに対する液密処理が不要となるので、Uターン接続流路を有するコネクタの製造が容易になる。
【0058】
[6] 前記ケーブル(11)内の電線(21、22)の端末部に、前記相手側コネクタ(オスコネクタ3)の相手側端子(3A、3B)と接続される接続端子(21A、22A)が取り付けられ、
前記コネクタ内の電線配置部(12A、12B)に、その内部において前記相手側端子と前記接続端子との嵌合接続を可能にするための貫通孔(16)が設けられ、
前記コネクタ内の前記接続流路(Uターン接続流路33)の一端に、前記ケーブル(11)内の一方の冷媒流通路(31)に接続される第1接続部(33A)が設けられ、かつ、前記コネクタ内の前記接続流路の他端に、前記ケーブル内の他方の冷媒流通路(32)に接続される第2接続部(33B)が設けられている、
上記[1]から[5]のいずれか一に記載の車両用冷却システム。
【0059】
上記[6]の構成によれば、コネクタの電線配置部に設けた貫通孔を通して、ケーブル側の電線を直接相手側コネクタの端子に接続するので、余計な接触導通点を減らせる。
【0060】
[7] 前記ケーブル(11)内の前記2本の冷媒流通路(31、32)および前記コネクタ(メスコネクタ12)内の前記接続流路(Uターン接続流路33)によって構成されるケーブル側冷媒通路が、前記車両の内部に配置されて、前記車両に搭載された冷却対象物(バッテリ1)を冷却する冷媒循環通路の一部として組み込まれている、
上記[1]に記載の車両用冷却システム。
【0061】
上記[7]の構成によれば、車載バッテリ等の冷却対象物に配された冷媒循環通路にケーブル側冷媒通路を組み込むので、冷却対象物とケーブルの電線とを一緒に冷却することができる。
【0062】
[8] 前記接続流路を有する前記コネクタ(メスコネクタ12)が、前記ケーブルの一端側と他端側の両方に取り付けられており、
前記ケーブル(111)内の2本の冷媒流通路のうちの一方が、長さ方向の途中で連通遮断され、その連通遮断箇所の両側の連通遮断端に冷媒流入口(132A)と冷媒流出口(132B)とが設けられ、
前記冷媒流入口および前記冷媒流出口により、前記ケーブル内の冷媒流通路が、前記車両内の冷媒循環通路(SA)に直列に接続されている、
上記[7]に記載の車両用冷却システム。
【0063】
上記[8]の構成によれば、ケーブルの両端にUターン接続流路を有するコネクタが取り付けられているので、ケーブルの端末部に設けるコネクタの種類の統一を図ることができる。また、相手側コネクタ等に冷媒を流通させるための必要以上の内部通路を設ける必要がないため、コスト削減に寄与することができる。
【0064】
[9] 前記接続流路を有する前記コネクタは前記ケーブル(211)の一端側にのみ取り付けられ、前記ケーブルの他端側には、車両に搭載された第2の相手側コネクタ(第2の相手側オスコネクタ203)に嵌合接続される第2のコネクタ(第2のメスコネクタ212)が取り付けられ、
前記ケーブルの他端側の前記2本の冷媒流通路の端部は、前記ケーブルの他端側に取り付けられた前記第2のコネクタおよび第2の相手側コネクタの内部通路を通して、前記車両内の冷媒循環通路(SA)に接続されている、
上記[7]に記載の車両用冷却システム。
【0065】
上記[9]の構成によれば、ケーブルの他端側に取り付けた第2のコネクタとその第2のコネクタが嵌合接続された第2の相手側コネクタの内部通路を通して、ケーブルに冷媒を循環させるので、冷媒循環通路の単純化が図れる。
【符号の説明】
【0066】
1 バッテリ(冷却対象物)
3 オスコネクタ(相手側コネクタ)
3A,3B 相手側端子
11、111、211 ケーブル
12 メスコネクタ
12A,12B 電線配置部
13 コネクタハウジング
13A,13B 半割体
14A,14B 合わせ面
15A,15B U字状の凹部
16 貫通孔
17 U字状の配管
18 充電インレット
18A,18B 冷媒通路接続口
21,22 電線
21A,22A 接続端子
31,32 冷媒流通路
33 Uターン接続流路
33A 第1接続部
33B 第2接続部
60,160 冷媒循環ポンプ
132A 冷媒流入口
132B 冷媒流出口
203 第2の相手側オスコネクタ
202A,202B 203A,203B 内部通路
212 第2のメスコネクタ
212A,212B 内部通路
SB ケーブル側冷媒通路
SA 冷媒循環通路