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特許7704958電流検出装置及びこれを備えるモータ駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】電流検出装置及びこれを備えるモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20250701BHJP
   G01R 15/00 20060101ALI20250701BHJP
   G01R 19/25 20060101ALI20250701BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20250701BHJP
   H02P 29/028 20160101ALI20250701BHJP
【FI】
G01R19/00 N
G01R15/00 500
G01R15/00 100B
G01R19/25
G01R35/00 E
H02P29/028
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024502763
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2022008357
(87)【国際公開番号】W WO2023162246
(87)【国際公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】大井 陽一郎
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-106125(JP,A)
【文献】特開2010-141776(JP,A)
【文献】国際公開第2012/153371(WO,A1)
【文献】特開2000-201074(JP,A)
【文献】特開2016-12760(JP,A)
【文献】特開2017-96628(JP,A)
【文献】米国特許第5486788(US,A)
【文献】中国実用新案第206411180(CN,U)
【文献】特表2001-520391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
G01R 15/00
G01R 35/00
H03M 1/10
H03F 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流経路上の電流を検出して該電流に対応するディジタルデータを出力するメイン電流検出回路と、
前記メイン電流検出回路と同じ検出箇所にて前記電流経路上の前記電流を検出して該電流に対応するディジタルデータを出力するオフセット補正用電流検出回路と、
前記オフセット補正用電流検出回路内のADコンバータの電流入力端子間を短絡する短絡部と、
前記短絡部による前記電流入力端子間の短絡時に前記オフセット補正用電流検出回路から出力される第1のオフセットを測定し、前記オフセット補正用電流検出回路の出力から前記第1のオフセットに相当する量を除去する補正を実行する第1のオフセット補正部と、
前記短絡部が前記電流入力端子間を短絡しない時において同じ検出タイミングで得られた前記メイン電流検出回路の出力と前記オフセット補正用電流検出回路の前記第1のオフセット補正部による補正済の出力とに基づいて、前記メイン電流検出回路から出力される第2のオフセットを計算し、前記メイン電流検出回路の出力から前記第2のオフセットに相当する量を除去する補正を実行する第2のオフセット補正部と、
を備える、電流検出装置。
【請求項2】
前記第1のオフセット補正部は、予め定めた周期で前記第1のオフセットの測定及び前記オフセット補正用電流検出回路の出力に対する補正を実行する、請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記第2のオフセット補正部は、前記短絡部が前記電流入力端子間を短絡しない時において複数時刻のそれぞれにおいて同じ検出タイミングで得られた前記メイン電流検出回路の出力と前記オフセット補正用電流検出回路の前記第1のオフセット補正部による補正済の出力とに基づいて、前記第2のオフセットを計算する、請求項1または2に記載の電流検出装置。
【請求項4】
前記短絡部が前記電流入力端子間を短絡しない時において、時刻t1における前記メイン電流検出回路の出力をI1(t1)、前記時刻t1における前記オフセット補正用電流検出回路の前記第1のオフセット補正部による補正済の出力をI2(t1)、時刻t2における前記メイン電流検出回路の出力をI1(t2)、前記時刻t2における前記オフセット補正用電流検出回路の前記第1のオフセット補正部による補正済の出力をI2(t2)としたとき、前記第2のオフセット補正部は、
【数1】

に従って前記第2のオフセットであるIofを計算する、請求項3に記載の電流検出装置。
【請求項5】
前記メイン電流検出回路及び前記オフセット補正用電流検出回路の各々は、シャント抵抗方式電流検出回路であり、
前記メイン電流検出回路及び前記オフセット補正用電流検出回路の各々のADコンバータの入力側に設けられる各フィルタ抵抗は、前記メイン電流検出回路及び前記オフセット補正用電流検出回路内で共有されるシャント抵抗よりも大きい抵抗値を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の電流検出装置。
【請求項6】
前記短絡部による前記電流入力端子間の短絡時は前記電流経路から前記電流入力端子への電流の流入を遮断し、前記短絡部が前記電流入力端子間を短絡しない時は前記電流経路から前記電流入力端子への電流の流入を遮断しないスイッチ部をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の電流検出装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電流検出装置を備え、
前記メイン電流検出回路の前記第2のオフセット補正部による補正済の出力を用いてモータの駆動を制御する、モータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出装置及びこれを備えるモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動装置においては、モータの駆動を制御するためにモータに流れる電流を検出する電流検出装置が設けられる。
【0003】
例えば、メインオペアンプ(21)と、該メインオペアンプ(21)に接続したオフセット調整回路(22)とを有し、該オフセット調整回路(22)が動作したときに、上記メインオペアンプ(21)から、該メインオペアンプ(21)の入力オフセット電圧(ΔVm)を除去した出力電圧(Vo)が発生するよう構成されたオートゼロアンプ(2)と、上記出力電圧(Vo)を測定する電圧測定部(3)と、上記オートゼロアンプ(2)及び上記電圧測定部(3)に接続した制御回路部(4)とを備え、該制御回路部(4)は、上記オフセット調整回路(22)を動作させるオートゼロモードと、上記オフセット調整回路(22)を動作させない非オートゼロモードとを切り替え制御し、上記制御回路部(4)は、上記オートゼロモードから上記非オートゼロモードに切り替える前後で、上記出力電圧(Vo)をそれぞれ測定し、上記非オートゼロモードにおける上記出力電圧(Von)の測定値から上記オートゼロモードにおける上記出力電圧(Voa)の測定値を減算することにより、上記入力オフセット電圧(ΔVm)を算出し、その後、上記非オートゼロモードにおいて、上記出力電圧(Vo)の測定を行い、上記入力オフセット電圧(ΔVm)の算出値を用いて、上記出力電圧(Vo)の測定値を補正するよう構成されていることを特徴とする出力電圧測定システム(1)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
例えば、入力される差動信号のオフセットを補正するオートゼロアンプ回路と、前記オートゼロアンプ回路から出力される出力信号をデジタル信号に変換するコンパレータ回路と、を備え、前記オートゼロアンプ回路と、前記コンパレータ回路とは、同一のパッケージ内に構成される、演算回路が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-208308号公報
【文献】特開2019-062450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、電流検出回路のオフセット補正は、モータ駆動装置の動作を止めることで電流検出回路に入力される電流を0(ゼロ)の状態にしたときにおける電流検出回路の出力値をオフセットとして事前に測定しておき、その後の通常動作時において電流検出回路による電流検出値からオフセット相当量を除去(減算)することで実現していた。すなわち、オフセット補正をするためには、電流検出回路の入力を0にするため通常の電流検出処理を一度停止しなければならず、効率が悪かった。また、通常の使用において電流検出回路により電流を検出し続けていると、温度ドリフトにより電流検出回路のオフセットが変化する。従来、事前に測定したオフセットをそのままオフセット補正に用い続けていたので、オフセットの変化に対応したオフセット補正がなされていなかった。したがって、電流検出処理を停止することなく電流検出回路のオフセットの補正を継続的に行うことができる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、電流検出装置は、電流経路上の電流を検出して該電流に対応するディジタルデータを出力するメイン電流検出回路と、メイン電流検出回路と同じ検出箇所にて電流経路上の電流を検出して該電流に対応するディジタルデータを出力するオフセット補正用電流検出回路と、オフセット補正用電流検出回路内のADコンバータの電流入力端子間を短絡する短絡部と、短絡部による電流入力端子間の短絡時にオフセット補正用電流検出回路から出力される第1のオフセットを測定し、オフセット補正用電流検出回路の出力から第1のオフセットに相当する量を除去する補正を実行する第1のオフセット補正部と、短絡部が電流入力端子間を短絡しない時において同じ検出タイミングで得られたメイン電流検出回路の出力とオフセット補正用電流検出回路の第1のオフセット補正部による補正済の出力とに基づいて、メイン電流検出回路から出力される第2のオフセットを計算し、メイン電流検出回路の出力から第2のオフセットに相当する量を除去する補正を実行する第2のオフセット補正部と、を備える。
【0008】
また、本開示の一態様によれば、モータ駆動装置は、上記電流検出装置を備え、メイン電流検出回路の第2のオフセット補正部による補正済の出力を用いてモータの駆動を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、電流検出処理を停止することなく電流検出回路のオフセットの補正を継続的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態による電流検出装置を示す回路図である。
図2】メイン電流検出回路から出力される第2のオフセットの計算方法について説明するブロック図である。
図3】本開示の一実施形態による電流検出装置の動作を例示するタイミングチャートを示す図である。
図4】本開示の一実施形態による電流検出装置の動作フローを示すフローチャートである。
図5】本開示の一実施形態の変形例による電流検出装置を示す回路図である。
図6図5に示す電流検出装置の動作を例示するタイミングチャートを示す図である。
図7図5に示す電流検出装置の動作フローを示すフローチャートである。
図8】本開示の一実施形態による電流検出装置を備えるモータ駆動装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を参照して、電流検出装置及びこれを備えるモータ駆動装置について説明する。各図面において、同様の部材には同様の参照符号が付けられている。また、理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。図示される形態は実施をするための1つの例であり、これらの形態に限定されるものではない。また、以下の説明では、オフセット補正用電流検出回路のオフセットを「第1のオフセット」と称し、メイン電流検出回路のオフセットを「第2のオフセット」と称する。
【0012】
図1は、本開示の一実施形態による電流検出装置を示す回路図である。以降、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは同じ機能または類似する機能を有する構成要素であることを意味するものとする。
【0013】
本開示の一実施形態による電流検出装置1は、メイン電流検出回路11と、オフセット補正用電流検出回路12と、短絡部13と、第1のオフセット補正部14と、第2のオフセット補正部15とを備える。
【0014】
メイン電流検出回路11は、電流経路2上の電流を検出して該電流に対応するディジタルデータを出力するものである。メイン電流検出回路11は、シャント抵抗方式電流検出回路、ホール素子方式電流検出回路、あるいはコア方式電流検出回路のいずれであってもよい。図1では、一例として、メイン電流検出回路11をシャント抵抗方式電流検出回路にて構成した場合を示している。
【0015】
メイン電流検出回路11は、電流検出抵抗(シャント抵抗)21と、絶縁型のADコンバータ22と、フィルタ抵抗31及び32と、フィルタコンデンサ33とを備える。ADコンバータ22の変換方式としては、逐次比較型、デルタシグマ型、二重積分型、フラッシュ型(並列比較型)、及びパイプライン型などがある。ADコンバータ22の入力側には、フィルタ抵抗31及び32並びにフィルタコンデンサ33で構成されるフィルタが設けられる。ADコンバータ22の非反転入力端子(+)と反転入力端子(-)との間にフィルタコンデンサ33が電気的に接続され、フィルタコンデンサ33の両端子にはフィルタ抵抗31及び32がそれぞれ電気的に接続される。電流経路2上に電流が流れると、電流検出抵抗21の両端子間に電位差が生じ、各電位信号は、フィルタ抵抗31及び32並びにフィルタコンデンサ33を介してADコンバータ22の非反転入力端子(+)と反転入力端子(-)のそれぞれに入力される。ADコンバータ22は、入力された各電位信号に基づいて、電流経路2上の電流に対応するディジタルデータを出力する。ADコンバータ22から出力されたディジタルデータは、ディジタル演算回路であるLSI(大規模集積回路)40に入力され、後述のオフセット補正が施された後、電流値ディジタルデータとして外部に出力される。
【0016】
オフセット補正用電流検出回路12は、メイン電流検出回路11と同じ検出箇所にて電流経路2上の電流を検出して該電流に対応するディジタルデータを出力するものである。オフセット補正用電流検出回路12は、シャント抵抗方式電流検出回路、ホール素子方式電流検出回路、あるいはコア方式電流検出回路のいずれであってもよい。図1では、一例として、オフセット補正用電流検出回路12をシャント抵抗方式電流検出回路にて構成した場合を示している。オフセット補正用電流検出回路12は、メイン電流検出回路11の近傍に設置されるのが好ましい。
【0017】
オフセット補正用電流検出回路12は、電流検出抵抗(シャント抵抗)21と、絶縁型のADコンバータ23と、フィルタ抵抗34及び35と、フィルタコンデンサ36とを備える。メイン電流検出回路11とオフセット補正用電流検出回路12とで電流検出抵抗21を共有することで、メイン電流検出回路11とオフセット補正用電流検出回路12とは同じ検出箇所にて電流経路2上の電流を検出することができる。ADコンバータ23の変換方式としては、逐次比較型、デルタシグマ型、二重積分型、フラッシュ型(並列比較型)、及びパイプライン型などがある。ADコンバータ23の入力側には、フィルタ抵抗34及び35並びにフィルタコンデンサ36で構成されるフィルタが設けられる。ADコンバータ23の非反転入力端子(+)と反転入力端子(-)との間にフィルタコンデンサ36が電気的に接続され、フィルタコンデンサ36の両端子にはフィルタ抵抗34及び35がそれぞれ電気的に接続される。電流経路2上に電流が流れると、電流検出抵抗21の両端子間に電位差が生じ、各電位信号は、フィルタ抵抗34及び35並びにフィルタコンデンサ36を介してADコンバータ23の非反転入力端子(+)及び反転入力端子(-)のそれぞれに入力される。ADコンバータ23は、入力された各電位信号に基づいて、電流経路2上の電流に対応するディジタルデータを出力する。ADコンバータ23から出力されたディジタルデータは、ディジタル演算回路であるLSI(大規模集積回路)40に入力される。
【0018】
短絡部13は、オフセット補正用電流検出回路12内のADコンバータ23の電流入力端子間である非反転入力端子(+)と反転入力端子(-)との間を短絡・開放する開閉スイッチである。短絡部13は、FETなどのユニポーラトランジスタ、バイポーラトランジスタ、IGBT、サイリスタ、GTOなどの半導体スイッチング素子にて構成されるが、半導体スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他の半導体スイッチング素子であってもよい。LSI(大規模集積回路)40内の第1のオフセット補正部14による制御により、短絡部13は短絡と開放とを周期的に繰り返す。
【0019】
第1のオフセット補正部14は、短絡部13によるADコンバータ23の電流入力端子間の短絡時にオフセット補正用電流検出回路12から出力される第1のオフセットを測定し、オフセット補正用電流検出回路12の出力から第1のオフセットに相当する量を除去する補正を実行する。
【0020】
短絡部13によるADコンバータ23の電流入力端子間の短絡時には、電流経路2からオフセット補正用電流検出回路12内のADコンバータ23には電流は流れ込まないので、オフセット補正用電流検出回路12内のADコンバータ23からはオフセット補正用電流検出回路12のオフセット(すなわち第1のオフセット)のみが出力される。第1のオフセット補正部14は、この第1のオフセットを短絡部13によるADコンバータ23の電流入力端子間の短絡時に測定し、当該測定時以降のオフセット補正用電流検出回路12の出力に第1のオフセットが含まれないよう、オフセット補正用電流検出回路12の出力から第1のオフセットに相当する量を除去する補正を実行する。
【0021】
このように、第1のオフセット補正部14による第1のオフセットの測定及びオフセット補正用電流検出回路12の出力に対する補正は、短絡部13によるADコンバータ23の電流入力端子間の短絡時に実行される。短絡部13は短絡と開放とを周期的に繰り返すので、第1のオフセット補正部14による第1のオフセットの測定及びオフセット補正用電流検出回路12の出力に対する補正は、あらかじめ定めた周期で繰り返し実行されることになる。よって、温度ドリフトによりオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセットが変化しても、短絡部13によるADコンバータ23の電流入力端子間の短絡時にオフセット補正用電流検出回路12の出力に対する補正がすぐに実行され、当該短絡に続くADコンバータ23の電流入力端子間の開放時には、オフセット補正用電流検出回路12からは第1のオフセットが除去された補正済のディジタルデータが出力されることになる。よって、オフセット補正用電流検出回路12の出力について、温度ドリフトの影響を最小限に抑えることができる。
【0022】
第2のオフセット補正部15は、短絡部13がADコンバータ23の電流入力端子間を短絡しない時(すなわちADコンバータ23の電流入力端子間の開放時)において同じ検出タイミングで得られたメイン電流検出回路11の複数の出力とオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の複数の出力とに基づいて、メイン電流検出回路11から出力される第2のオフセットを計算し、メイン電流検出回路11の出力から第2のオフセットに相当する量を除去(減算)する補正を実行する。
【0023】
上述のように短絡部13がADコンバータ23の電流入力端子間を短絡しない時(すなわちADコンバータ23の電流入力端子間の開放時)には、オフセット補正用電流検出回路12からは第1のオフセットが除去された補正済のディジタルデータが出力されている。第2のオフセット補正部15は、短絡部13がADコンバータ23の電流入力端子間を短絡しない時において、同じ検出タイミングで得られたメイン電流検出回路11の複数の出力とオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の複数の出力とに基づいて、メイン電流検出回路11から出力される第2のオフセットを計算する。メイン電流検出回路11の複数の出力とオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の複数の出力を得るために、メイン電流検出回路11及びオフセット補正用電流検出回路12における電流経路2上の電流の同時検出(同時入力)が、短絡部13がADコンバータ23の電流入力端子間を短絡しない間に、複数回行われる。
【0024】
ここで、メイン電流検出回路11から出力される第2のオフセットの計算方法について説明する。図2は、メイン電流検出回路から出力される第2のオフセットの計算方法について説明するブロック図である。
【0025】
短絡部13がADコンバータ23の電流入力端子間を短絡しない時(すなわち開放時)において、時刻tにおける電流経路2上の電流の値をI(t)、メイン電流検出回路11の出力をI1(t)、オフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力をI2(t)とする。
【0026】
メイン電流検出回路11のゲインをG1、メイン電流検出回路11の第2のオフセットをIofとしたとき、時刻tにおけるメイン電流検出回路11の出力I1(t)は、式1のように表される。
【0027】
【数1】
【0028】
オフセット補正用電流検出回路12のゲインをG2としたとき、時刻tにおけるオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力I2(t)は、式2のように表される。オフセット補正用電流検出回路12の出力I2(t)は、ADコンバータ23の電流入力端子間の当該開放時よりも前の短絡時に第1のオフセット補正部14により既に補正されているので、第1のオフセットは0であり、すなわち式2には第1のオフセットは現れない。
【0029】
【数2】
【0030】
式1に式2を代入すると、式3が得られる。
【0031】
【数3】
【0032】
式1~式3を利用して、2つの時刻のそれぞれにおいて同じ検出タイミングで得られたメイン電流検出回路11の出力とオフセット補正用電流検出回路12の補正済の出力とに基づいて第2のオフセットを計算する例について説明すると次の通りである。
【0033】
メイン電流検出回路11の2つの出力とオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の2つの出力を得るために、メイン電流検出回路11及びオフセット補正用電流検出回路12における電流経路2上の電流の同時検出(同時入力)、短絡部13がADコンバータ23の電流入力端子間を短絡しない間に、2回行われる。
【0034】
短絡部13がADコンバータ23の電流入力端子間を短絡しない時(すなわちADコンバータ23の電流入力端子間の開放時)において、時刻t1におけるメイン電流検出回路11の出力I1(t1)は式4で表され、時刻t1におけるオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力I2(t1)は式5で表される。
【0035】
【数4】
【0036】
【数5】
【0037】
短絡部13がADコンバータ23の電流入力端子間を短絡しない時(すなわちADコンバータ23の電流入力端子間の開放時)において、時刻t2におけるメイン電流検出回路11の出力I1(t2)は式6で表され、時刻t2におけるオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力I2(t2)は式7で表される。
【0038】
【数6】
【0039】
【数7】
【0040】
式4と式6との辺々を引くと、式8が得られる。
【0041】
【数8】
【0042】
式5と式7との辺々を引くと、式9が得られる。
【0043】
【数9】
【0044】
式8に式9を代入して整理すると、式10が得られる。
【0045】
【数10】
【0046】
t=t1のときの式3に式10を代入すると、式11が得られる。
【0047】
【数11】
【0048】
式11を整理すると、式12が得られる。
【0049】
【数12】
【0050】
第2のオフセット補正部15は、式12に従って、第2のオフセットであるIofを計算することができる。
【0051】
上述の実施形態では、2つの時刻のそれぞれにおいて同じ検出タイミングで得られた各出力に基づいて第2のオフセットを計算したが、3つ以上の時刻のそれぞれにおいて同じ検出タイミングで得られた各出力に基づいて第2のオフセットを計算してもよい。以下、3つ以上の時刻の各出力に基づいて第2のオフセットを計算する形態についていくつか列記する。
【0052】
第1の形態は、各時刻で測定された各出力の平均に基づいて第2のオフセットを計算するものである。ここで、6つの時刻のそれぞれにおいて同じ検出タイミングで得られたメイン電流検出回路11の出力とオフセット補正用電流検出回路12の補正済の出力とに基づいて、第2のオフセットを計算する場合を例にとり第1の形態について説明する。
【0053】
メイン電流検出回路11の6つの出力とオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の6つの出力を得るために、メイン電流検出回路11及びオフセット補正用電流検出回路12における電流経路2上の電流の同時検出(同時入力)、短絡部13がADコンバータ23の電流入力端子間を短絡しない間に、6回行われる。
【0054】
短絡部13がADコンバータ23の電流入力端子間を短絡しない時(すなわちADコンバータ23の電流入力端子間の開放時)において、時刻t1において測定されたメイン電流検出回路11の出力をI1(t1)、時刻t2において測定されたメイン電流検出回路11の出力をI1(t2)、時刻t3において測定されたメイン電流検出回路11の出力をI1(t3)、時刻t4において測定されたメイン電流検出回路11の出力をI1(t4)、時刻t5において測定されたメイン電流検出回路11の出力をI1(t5)、時刻t6において測定されたメイン電流検出回路11の出力をI1(t6)とする。
【0055】
1(t1)、I1(t2)及びI1(t3)の平均出力I’1(T1)は、式13のようになる。
【0056】
【数13】
【0057】
1(t4)、I1(t5)及びI1(t6)の平均出力I’1(T2)は、式14のようになる。
【0058】
【数14】
【0059】
同様に、短絡部13がADコンバータ23の電流入力端子間を短絡しない時(すなわちADコンバータ23の電流入力端子間の開放時)において、時刻t1において測定されたオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力をI2(t1)、時刻t2において測定されたオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力をI2(t2)、時刻t3において測定されたオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力をI2(t3)、時刻t4において測定されたオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力をI2(t4)、時刻t5において測定されたオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力をI2(t5)、時刻t6において測定されたオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力をI2(t6)とする。
【0060】
2(t1)、I2(t2)及びI2(t3)の平均出力I’2(T1)は、式15のようになる。
【0061】
【数15】
【0062】
2(t4)、I2(t5)及びI2(t6)の平均出力I’2(T2)は、式16のようになる。
【0063】
【数16】
【0064】
式12のI1(t1)、I1(t2)、I2(t1)及びI2(t2)をI’1(T1)、I’1(T2)、I’2(T1)及びI’2(T2)に置き換えると、式17に示されるような第2のオフセットIofが得られる。第2のオフセット補正部15は、式17に従って、第2のオフセットIofを計算することができる。
【0065】
【数17】
【0066】
第2の形態は、2つの時刻ごとの出力に基づいて計算された第2のオフセット暫定値を複数計算しこれら第2のオフセット暫定値の平均をとって最終的な第2のオフセットを計算するものである。ここで、4つの時刻のそれぞれにおいて同じ検出タイミングで得られたメイン電流検出回路11の出力とオフセット補正用電流検出回路12の補正済の出力とに基づいて、第2のオフセットを計算する場合を例にとり第2の形態について説明する。
【0067】
メイン電流検出回路11の4つの出力とオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の4つの出力を得るために、メイン電流検出回路11及びオフセット補正用電流検出回路12における電流経路2上の電流の同時検出(同時入力)、短絡部13がADコンバータ23の電流入力端子間を短絡しない間に、4回行われる。
【0068】
短絡部13がADコンバータ23の電流入力端子間を短絡しない時(すなわちADコンバータ23の電流入力端子間の開放時)において、時刻t1において測定されたメイン電流検出回路11の出力をI1(t1)、時刻t2において測定されたメイン電流検出回路11の出力をI1(t2)、時刻t3において測定されたメイン電流検出回路11の出力をI1(t3)、時刻t4において測定されたメイン電流検出回路11の出力をI1(t4)とする。また、短絡部13がADコンバータ23の電流入力端子間を短絡しない時(すなわちADコンバータ23の電流入力端子間の開放時)において、時刻t1において測定されたオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力をI2(t1)、時刻t2において測定されたオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力をI2(t2)、時刻t3において測定されたオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力をI2(t3)、時刻t4において測定されたオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力をI2(t4)とする。
【0069】
時刻t1において測定されたメイン電流検出回路11出力I1(t1)及びオフセット補正用電流検出回路12の補正済の出力I2(t1)と、時刻t2において測定されたメイン電流検出回路11の出力I1(t2)及びオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力I2(t2)を式12に代入すると、式18に示されるような第2のオフセット暫定値Ioft1が得られる。
【0070】
【数18】
【0071】
同様に、式12のI1(t1)、I1(t2)、I2(t1)及びI2(t2)をI1(t3)、I1(t4)、I2(t3)及びI2(t4)に置き換えると、式19に示されるような第2のオフセット暫定値Ioft2が得られる。
【0072】
【数19】
【0073】
式18で示される第2のオフセット暫定値Ioft1と式19で示される第2のオフセットI暫定値oft2との平均をとると、最終的には式20に示されるような第2のオフセットIofが得られる。第2のオフセット補正部15は、式20に従って、第2のオフセットIofを計算することができる。
【0074】
【数20】
【0075】
続いて、本開示の一実施形態による電流検出装置の動作について、具体例を示して説明する。図3は、本開示の一実施形態による電流検出装置の動作を例示するタイミングチャートを示す図である。図3において、第1のオフセット補正、第2のオフセット補正、オフセット補正用電流検出回路12による第1のオフセットの測定、及びメイン電流検出回路11による電流の測定のそれぞれについての実行タイミングを、「棒状の太線」で示している。
【0076】
ここでは、2つの時刻のそれぞれにおいて同じ検出タイミングで得られたメイン電流検出回路11の出力とオフセット補正用電流検出回路12の補正済の出力とに基づいて第2のオフセットを計算する例について説明する
【0077】
図3に示すように、短絡部13は、LSI(大規模集積回路)40内の第1のオフセット補正部14による制御により、オフセット補正用電流検出回路12内のADコンバータ23の電流入力端子間の短絡(ON)と開放(OFF)とを周期的に繰り返す。
【0078】
メイン電流検出回路11は、短絡部13による短絡(ON)・開放(OFF)の周期と関係なく、所定の電流検出周期で電流経路2上の電流を検出する。メイン電流検出回路11による電流検出周期は、短絡部13による短絡(ON)・開放(OFF)の周期よりも短い方が好ましい。
【0079】
短絡部13によるADコンバータ23の電流入力端子間の短絡(ON)時において、第1のオフセット補正部14は、時刻t1でオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセットを測定し、時刻t2でオフセット補正用電流検出回路12の出力から第1のオフセットに相当する量を除去(減算)する補正を実行する。なお、この時点ではメイン電流検出回路11は、1つ前の周期で計算された第2のオフセットIof1に相当する量が除去された「補正済のディジタルデータ」を出力している。当該短絡(ON)に続くADコンバータ23の電流入力端子間の開放(OFF)時において、オフセット補正用電流検出回路12は、メイン電流検出回路11の検出タイミングである時刻t3及び時刻t4で電流経路2上の電流を検出する。上述のようにメイン電流検出回路11は所定の電流検出周期で電流経路2上の電流を検出しているので、第1のオフセット補正部14を有するLSI(大規模集積回路)40は、メイン電流検出回路11による電流検出周期を監視し、メイン電流検出回路11の検出タイミングと一致するタイミングでオフセット補正用電流検出回路12に電流を検出させるように制御する。これにより、メイン電流検出回路11及びオフセット補正用電流検出回路12は、同じ検出タイミングである時刻t3で電流経路2上の電流を検出し、同じ検出タイミングである時刻t4で電流経路2上の電流を検出する。第2のオフセット補正部15は、同じ検出タイミングである時刻t3及びt4で得られたメイン電流検出回路11の出力とオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力とに基づいて、時刻t5において、メイン電流検出回路11から出力される第2のオフセットIof2を計算し、メイン電流検出回路11の出力から第2のオフセットIof2に相当する量を除去(減算)する補正を実行する。時刻t5以降、メイン電流検出回路11は、時刻t5で計算された第2のオフセットIof2に相当する量が除去された「補正済のディジタルデータ」を出力することになる。
【0080】
上記開放(OFF)に続く短絡部13によるADコンバータ23の電流入力端子間の短絡(ON)時において、第1のオフセット補正部14は、時刻t6でオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセットを測定し、時刻t7でオフセット補正用電流検出回路12の出力から第1のオフセットに相当する量を除去(減算)する補正を実行する。当該短絡(ON)に続くADコンバータ23の電流入力端子間の開放(OFF)時において、メイン電流検出回路11及びオフセット補正用電流検出回路12は、同じ検出タイミングである時刻t8で電流経路2上の電流を検出し、同じ検出タイミングである時刻t9で電流経路2上の電流を検出する。第2のオフセット補正部15は、同じ検出タイミングである時刻t8及びt9で得られたメイン電流検出回路11の出力とオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力とに基づいて、時刻t10において、メイン電流検出回路11から出力される第2のオフセットIof3を計算し、メイン電流検出回路11の出力から第2のオフセットIof3に相当する量を除去(減算)する補正を実行する。時刻t10以降、メイン電流検出回路11は、時刻t10で計算された第2のオフセットIof3に相当する量が除去された「補正済のディジタルデータ」を出力することになる。時刻t10以降も、上述の同様の各処理が繰り返し実行される。すなわち、第1のオフセット補正部14は、時刻t11でオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセットを測定し、時刻t12でオフセット補正用電流検出回路12の出力から第1のオフセットに相当する量を除去(減算)する補正を実行する。
【0081】
図4は、本開示の一実施形態による電流検出装置の動作フローを示すフローチャートである。
【0082】
メイン電流検出回路11は、短絡部13による短絡・開放の周期と関係なく、所定の電流検出周期で電流経路2上の電流を検出し続ける(ステップS200)。メイン電流検出回路11による電流検出周期は、短絡部13による短絡・開放の周期よりも短い方が好ましい。
【0083】
ステップS101において、オフセット補正用電流検出回路12内のADコンバータ23の電流入力端子間である非反転入力端子(+)と反転入力端子(-)との間を短絡する。
【0084】
ステップS102において、第1のオフセット補正部14は、オフセット補正用電流検出回路12から出力される第1のオフセットを測定する。
【0085】
ステップS103において、第1のオフセット補正部14は、オフセット補正用電流検出回路12の出力から第1のオフセットに相当する量を除去(減算)する補正を実行する。
【0086】
ステップS104において、オフセット補正用電流検出回路12内のADコンバータ23の電流入力端子間である非反転入力端子(+)と反転入力端子(-)との間を開放する。
【0087】
ステップS105において、オフセット補正用電流検出回路12は、メイン電流検出回路11と同じ検出タイミングの複数の時刻で電流経路2上の電流を検出する。
【0088】
ステップS106において、第2のオフセット補正部15は、同じ検出タイミングで得られたメイン電流検出回路11の出力とオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力とに基づいて、メイン電流検出回路11から出力される第2のオフセットを計算する。なお、第2のオフセット及び第2のオフセット暫定値については、式12及び式17~式19に示される分母が0になる可能性がある。式12及び式17~式19に示される分母が0になると、ステップS106において算出された第2のオフセットが発散してしまう。このような発散を防ぐために、ステップS106において算出された第2のオフセットが発散してしまう場合にはステップS105に戻り、再度、メイン電流検出回路11及びオフセット補正用電流検出回路12による同じタイミングの電流検出、及びそれに続くステップS106における第2のオフセットの計算を実行する。
【0089】
ステップS107において、第2のオフセット補正部15は、メイン電流検出回路11の出力から第2のオフセットに相当する量を除去(減算)する補正を実行する。これにより、メイン電流検出回路11は、第2のオフセットに相当する量が除去された「補正済のディジタルデータ」を出力することになる(ステップS200)。その後、ステップS101に戻り、上述の処理が再び実行される。このように、メイン電流検出回路11の電流検出処理は、オフセット補正処理とは異なる周期で実行され続けるので、メイン電流検出回路11の電流検出処理を停止することなくメイン電流検出回路11の第2のオフセットの補正を継続的に行うことができる。
【0090】
なお、上述の実施形態では、短絡部13によりオフセット補正用電流検出回路12内のADコンバータ23の電流入力端子間を短絡させるが、この短絡がメイン電流検出回路11の電流検出処理に影響を与えないような構成を電流検出装置1に設けるべきである。このため、例えばメイン電流検出回路11及びオフセット補正用電流検出回路12の各々がシャント抵抗方式電流検出回路である場合は、メイン電流検出回路11内のADコンバータ22の入力側に設けられるフィルタ抵抗31及び32、並びにオフセット補正用電流検出回路12のADコンバータ23の入力側に設けられるフィルタ抵抗34及び35は、メイン電流検出回路11及びオフセット補正用電流検出回路12内で共有される電流検出抵抗(シャント抵抗)21よりも大きい抵抗値を有するように設定する。電流検出抵抗21の抵抗値に対してフィルタ抵抗31、32、34及び35の各抵抗値を例えば1000倍程度に高くするのが好ましい。例えば、電流検出抵抗21の抵抗値6.4mΩに対し、フィルタ抵抗31、32、34及び35の各抵抗値はそれぞれ22Ωに設定する。なお、ここで挙げた数値はあくまでも一例であって、これ以外の数値であってもよい。なお、メイン電流検出回路11及びオフセット補正用電流検出回路12の各々がホール素子方式電流検出回路あるいはコア方式電流検出回路である場合も同様であり、メイン電流検出回路11内のADコンバータ22の入力側に設けられるフィルタ抵抗31及び32、並びにオフセット補正用電流検出回路12のADコンバータ23の入力側に設けられるフィルタ抵抗34及び35は、メイン電流検出回路11及びオフセット補正用電流検出回路12内で共有されるホール素子またはコアの抵抗値(インピーダンス)よりも大きい抵抗値を有するように設定する。
【0091】
続いて、本開示の一実施形態の変形例による電流検出装置について説明する。
【0092】
図5は、本開示の一実施形態の変形例による電流検出装置を示す回路図である。
【0093】
本変形例では、短絡部13によりオフセット補正用電流検出回路12内のADコンバータ23の電流入力端子間を短絡がメイン電流検出回路11の電流検出処理により確実に影響を与えないようにするためのスイッチ部51を電流検出装置1にさらに設けたものである。
【0094】
スイッチ部51は、短絡部13によるADコンバータ23の電流入力端子間の短絡時は電流経路2からADコンバータ23の電流入力端子への電流の流入を遮断するためにオフ(OFF:開放)し、短絡部13がADコンバータ23の電流入力端子間を短絡しない時は電流経路2からADコンバータ23の電流入力端子への電流の流入を遮断しないためにオン(ON:閉成)する。スイッチ部51は、FETなどのユニポーラトランジスタ、バイポーラトランジスタ、IGBT、サイリスタ、GTOなどの半導体スイッチング素子にて構成されるが、半導体スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他の半導体スイッチング素子であってもよい。LSI(大規模集積回路)40内の第1のオフセット補正部14による制御により、スイッチ部51はオフ(OFF)とオン(ON)を周期的に繰り返す。なお、スイッチ部51以外の回路構成要素については図1に示す回路構成要素と同様であるので、同一の回路構成要素には同一符号を付して当該回路構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0095】
図6は、図5に示す電流検出装置の動作を例示するタイミングチャートを示す図である。図6において、第1のオフセット補正、第2のオフセット補正、オフセット補正用電流検出回路12による第1のオフセットの測定、及びメイン電流検出回路11による電流の測定のそれぞれについての実行タイミングを、「棒状の太線」で示している。図6は、特に図3に示したタイミングチャートにおいてスイッチ部51の動作状態をさらに付加したものである。
【0096】
スイッチ部51は、短絡部13によるADコンバータ23の電流入力端子間の短絡(ON)時は電流経路2からADコンバータ23の電流入力端子への電流の流入を遮断するためにオフ(OFF)し、短絡部13がADコンバータ23の電流入力端子間を短絡しない(OFF)時は電流経路2からADコンバータ23の電流入力端子への電流の流入を遮断しないためにオン(ON)する。なお、第1のオフセット補正、第2のオフセット補正、オフセット補正用電流検出回路12による第1のオフセットの測定、及びメイン電流検出回路11による電流の測定のそれぞれについての実行タイミングについては、図3を参照して説明したものと同様であるので、各実行タイミングについての詳細な説明は省略する。
【0097】
図7は、図5に示す電流検出装置の動作フローを示すフローチャートである。
【0098】
メイン電流検出回路11は、短絡部13による短絡・開放の周期と関係なく、所定の電流検出周期で電流経路2上の電流を検出し続ける(ステップS200)。メイン電流検出回路11による電流検出周期は、短絡部13による短絡・開放の周期及びスイッチ部51の開放(OFF)・閉成(ON)の周期よりも短い方が好ましい。
【0099】
ステップS301において、スイッチ部51は、電流経路2からADコンバータ23の電流入力端子への電流の流入を遮断するためにオフ(OFF)する。
【0100】
ステップS302において、オフセット補正用電流検出回路12内のADコンバータ23の電流入力端子間である非反転入力端子(+)と反転入力端子(-)との間を短絡する。
【0101】
ステップS303において、第1のオフセット補正部14は、オフセット補正用電流検出回路12から出力される第1のオフセットを測定する。
【0102】
ステップS304において、第1のオフセット補正部14は、オフセット補正用電流検出回路12の出力から第1のオフセットに相当する量を除去(減算)する補正を実行する。
【0103】
ステップS305において、オフセット補正用電流検出回路12内のADコンバータ23の電流入力端子間である非反転入力端子(+)と反転入力端子(-)との間を開放する。
【0104】
ステップS306において、電流経路2からADコンバータ23の電流入力端子への電流の流入を遮断しないためにオン(ON)する。
【0105】
ステップS307において、オフセット補正用電流検出回路12は、メイン電流検出回路11と同じ検出タイミングの複数の時刻で電流経路2上の電流を検出する。
【0106】
ステップS308において、第2のオフセット補正部15は、同じ検出タイミングで得られたメイン電流検出回路11の出力とオフセット補正用電流検出回路12の第1のオフセット補正部14による補正済の出力とに基づいて、メイン電流検出回路11から出力される第2のオフセットを計算する。なお、第2のオフセット及び第2のオフセット暫定値については、式12及び式17~式19に示される分母が0になる可能性がある。式12及び式17~式19に示される分母が0になると、ステップS308において算出された第2のオフセットが発散してしまう。このような発散を防ぐために、ステップS308において算出された第2のオフセットが発散してしまう場合にはステップS307に戻り、再度、メイン電流検出回路11及びオフセット補正用電流検出回路12による同じタイミングの電流検出、及びそれに続くステップS308における第2のオフセットの計算を実行する。
【0107】
ステップS309において、第2のオフセット補正部15は、メイン電流検出回路11の出力から第2のオフセットに相当する量を除去(減算)する補正を実行する。これにより、メイン電流検出回路11は、第2のオフセットに相当する量が除去された「補正済のディジタルデータ」を出力することになる(ステップS200)。その後、ステップS301に戻り、上述の処理が再び実行される。このように、メイン電流検出回路11の電流検出処理は、オフセット補正処理とは異なる周期で実行され続けるので、メイン電流検出回路11の電流検出処理を停止することなくメイン電流検出回路11の第2のオフセットの補正を継続的に行うことができる。
【0108】
上述した本開示の一実施形態及びその変形例による電流検出装置1を用いて、モータの駆動を制御するためにモータに流れる電流を検出することができる。
【0109】
図8は、本開示の一実施形態による電流検出装置を備えるモータ駆動装置を示す図である。
【0110】
一例として、三相の交流電源200に接続されたモータ駆動装置100により、三相交流のモータ300を制御する場合について説明する。なお、図示の例では、交流電源200の相数を三相としたが、交流電源200の相数は本発明を特に限定するものではなく、三相の他に、例えば単相やその他の多相の交流電源であってもよい。交流電源200の一例を挙げると、三相交流400V電源、三相交流200V電源、三相交流600V電源、単相交流100V電源などがある。また、図示の例では、モータ300の相数を三相としたが、モータ300の相数は本発明を特に限定するものではなく、三相の他に、例えば単相やその他の多相のモータであってもよい。また、モータ300は、誘導モータであっても同期モータであってもよい。モータ300は、例えば工作機械の送り軸や主軸、あるいは産業機械、産業用ロボットのアーム等の駆動源として用いられる。
【0111】
モータ駆動装置100は、コンバータ61と、インバータ62と、平滑コンデンサ63と、モータ制御部64、電流検出装置1とを備える。
【0112】
コンバータ61は、交流電源200から供給される交流電力を直流電力に変換してDCリンクへ出力する。コンバータ61は、交流電源200から三相交流電力が供給される場合は三相ブリッジ回路で構成され、交流電源200から単相交流電力が供給される場合は単相ブリッジ回路で構成される。図示の例では、交流電源200を三相交流電源としたので、コンバータ61は三相ブリッジ回路で構成されるコンバータ61の例としては、ダイオード整流回路、120度通電型整流回路、及びPWMスイッチング制御方式の整流回路などがある。
【0113】
コンバータ61の直流出力側とインバータ62の直流入力側とを電気的に接続する回路部分であるDCリンクには、平滑コンデンサ63が設けられる。DCリンクは、「DCリンク部」、「直流リンク」、「直流リンク部」、「直流母線」あるいは「直流中間回路」などと称されることがある。平滑コンデンサ63は、「DCリンクコンデンサ」などと称されることがある。平滑コンデンサ63は、DCリンクにおいてエネルギー(直流電力)を蓄積する機能及びコンバータ61の直流側の出力の脈動分を抑える機能を有する。平滑コンデンサ63に電荷が充電されることにより、DCリンクに直流電力が蓄積されることになる。
【0114】
インバータ62は、DCリンクにおける直流電力を交流電力に変換してモータ300側へ出力する。インバータ62は、スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなる。インバータ62は、モータ300が三相交流モータである場合は三相ブリッジ回路で構成され、モータ300が単相交流モータである場合は単相ブリッジ回路で構成される。図示の例では、モータ300を三相交流モータとしたので、インバータ62は三相ブリッジ回路で構成される。インバータ62の例としては、内部に半導体スイッチング素子を備えるPWMインバータなどがある。半導体スイッチング素子は、例えば、FETなどのユニポーラトランジスタ、バイポーラトランジスタ、IGBT、サイリスタ、GTOなどで構成されるが、半導体スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他の半導体スイッチング素子であってもよい。
【0115】
例えばインバータ62とモータ300との間を結ぶ電力線上に電流検出装置1が設けられる。
【0116】
モータ制御部64は、インバータ62の各半導体スイッチング素子をオンオフ制御するための駆動指令を生成し、これをインバータ62へ出力する。モータ制御部64は、電流検出装置1から出力された電流値ディジタルデータ(第2のオフセット補正部15による補正済)、位置検出器(図示せず)により検出されたモータ300の回転速度(速度フィードバック)、所定のトルク指令、及びモータ300の動作プログラムなどに基づいて、インバータ62の電力変換動作を制御する。モータ300は、インバータ62から供給される交流電力に基づいて、速度、トルクまたは回転子の位置が制御される。なお、ここで説明したモータ制御部64の構成はあくまでも一例であって、例えば、位置指令生成部、位置制御部、速度制御部、電流制御部、トルク指令作成部などの用語を含めてモータ制御部64の構成を規定してもよい。モータ制御部64内には、演算処理装置(プロセッサ)が設けられる。演算処理装置としては、例えばIC、LSI、CPU、MPU、DSPなどがある。演算処理装置を有するモータ制御部64は、例えば、プロセッサ上で実行されるコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。例えば、モータ制御部64をコンピュータプログラム形式で構築する場合は、演算処理装置をこのコンピュータプログラムに従って動作させることで、各部の機能を実現することができる。モータ制御部64の処理を実行するためのコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された形で提供されてもよい。またあるいは、モータ制御部64を、当該機能を実現するコンピュータプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。
【0117】
なお、図8に示した電流検出装置1の設置個所及び用途は一例である。例えば、電流検出装置1は、コンバータ61の入力側の電力線に設けられてモータ駆動装置100への入力電流の検出に用いられてもよい。また例えば、電流検出装置1は、DCリンクに設けられてDCリンク電流の検出に用いられてもよい。また、電流検出装置1は、直流モータの駆動を制御するモータ駆動装置における各種電流の検出に用いられてもよい。また、電流検出装置1は、モータ駆動装置に限らず、コンピュータ製品、家電製品、電車、自動車、航空機など各種電気機器における電流検出に用いられてもよい。上述したいずれの適用例においても、電流検出装置1から出力された電流値ディジタルデータ(第2のオフセット補正部15による補正済)が、当該電気機器における電流検出値として利用される。
【0118】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0119】
1 電流検出装置
2 電流経路
11 メイン電流検出回路
12 オフセット補正用電流検出回路
13 短絡部
14 第1のオフセット補正部
15 第2のオフセット補正部
21 電流検出抵抗
22、23 ADコンバータ
31、32、34、35 フィルタ抵抗
33、36 フィルタコンデンサ
40 LSI(大規模集積回路)
51 スイッチ部
61 コンバータ
62 インバータ
63 平滑コンデンサ
64 モータ制御部
100 モータ駆動装置
200 交流電源
300 モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8