(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-30
(45)【発行日】2025-07-08
(54)【発明の名称】バッテリー管理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/367 20190101AFI20250701BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250701BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20250701BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250701BHJP
【FI】
G01R31/367
H02J7/00 S
H02J7/00 Y
H02H7/18
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2024517544
(86)(22)【出願日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 KR2023009970
(87)【国際公開番号】W WO2024014880
(87)【国際公開日】2024-01-18
【審査請求日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】10-2022-0087606
(32)【優先日】2022-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヒョン・キム
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-502969(JP,A)
【文献】特表2017-536794(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0037882(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0010004(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0051461(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0134187(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H02J 7/00
H02H 7/18
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーの電圧を周期的に測定し、測定結果をバッテリー管理集積回路(BMIC)、第1の過電圧検出部および第2の過電圧検出部に提供するモニタリング部と、
前記モニタリング部で測定された前記バッテリーの電圧を設定電圧範囲と比較し、前記設定電圧範囲外の異常電圧の場合と正常電圧の場合で異なるレベルの診断信号を生成し、マイクロ制御ユニット(MCU)に引き渡すバッテリー管理集積回路(BMIC)と、
前記診断信号を生成する前記バッテリー管理集積回路(BMIC)の診断誤りによって過電圧の検出が不可能になることに備えて、前記モニタリング部から前記バッテリーの電圧の測定結果を受信し、それぞれ第1の検出信号および第2の検出信号を生成する第1の過電圧検出部および第2の過電圧検出部と、
前記バッテリー管理集積回路(BMIC)からの診断信号に基づいて前記バッテリーを制御し、前記第1の検出信号及び前記第2の検出信号
がハイレベルであるかローレベルであるかに基づいて
前記バッテリー管理集積回路(BMIC)、前記第1の過電圧検出部および第2の過電圧検出部の異常を診断するマイクロ制御ユニット(MCU)と、を備
え、
前記第1の過電圧検出部は、前記バッテリーの電圧を第1の基準電圧と比較し、比較結果に基づいて異なるレベルの第1の検出信号を生成し、
前記第2の過電圧検出部は、前記バッテリーの電圧を前記第1の基準電圧よりも高い第2の基準電圧と比較し、比較結果に基づいて異なるレベルの第2の検出信号を生成する、バッテリー管理装置。
【請求項2】
前記第1の過電圧検出部は、前記バッテリーの電圧が前記第1の基準電圧よりも高ければ、前記第1の検出信号を
ハイレベルで出力し、
前記第2の過電圧検出部は、前記バッテリーの電圧が前記第2の基準電圧よりも高ければ、前記第2の検出信号を
ハイレベルで出力する、請求項
1に記載のバッテリー管理装置。
【請求項3】
前記マイクロ制御ユニット(MCU)は、前記第2の検出信号が発生しなければ、前記バッテリー管理集積回路(BMIC)、前記第1の過電圧検出部、前記第2の過電圧検出部、及び周辺回路が正常動作していると判断する、請求項
2に記載のバッテリー管理装置。
【請求項4】
前記マイクロ制御ユニット(MCU)は、前記第2の検出信号が発生する場合、
前記モニタリング部によって周期的に測定されたバッテリーの電圧のうちの最大電圧である前記バッテリーの最大電圧と前記第2の基準電圧とを比較する、請求項
2に記載のバッテリー管理装置。
【請求項5】
前記マイクロ制御ユニット(MCU)は、前記バッテリーの最大電圧が前記第2の基準電圧よりも高ければ、前記第2の過電圧検出部の正常動作であると判断し、
前記バッテリーの最大電圧が前記第2の基準電圧よりも低ければ、前記バッテリー管理集積回路(BMIC)又は前記マイクロ制御ユニット(MCU)のバッテリーの電圧の計測誤り又は前記第2の過電圧検出部の異常発生であると判断する、請求項
4に記載のバッテリー管理装置。
【請求項6】
前記マイクロ制御ユニット(MCU)は、前記第2の検出信号が発生する場合、前記第1の検出信号に基づいて、前記第1の過電圧検出部及び前記第2の過電圧検出部のうちの少なくとも一方の誤りを判断する、請求項
4に記載のバッテリー管理装置。
【請求項7】
前記第2の検出信号が発生し、かつ前記第1の検出信号が発生すれば、前記第2の過電圧検出部が正常動作していると判断する、請求項
6に記載のバッテリー管理装置。
【請求項8】
前記第2の検出信号が発生し、かつ前記第1の検出信号が発生しなければ、前記第1の過電圧検出部及び前記第2の過電圧検出部のうちの少なくとも一方が異常動作したと判断する、請求項
7に記載のバッテリー管理装置。
【請求項9】
バッテリーの
電圧を
周期的に計測する過程と、
前記バッテリーの電圧計測値を第1の過電圧検出部の第1の基準電圧及び第2の過電圧検出部の第2の基準電圧とそれぞれ比較する過程と、
前記バッテリーの電圧計測値が
前記第2の基準電圧よりも高くて前記第2の過電圧検出部から第2の検出信号が発生したか否かを判断する過程と、
前記第2の検出信号が発生しなければ、前記バッテリーの正常動作であると判断する過程と、
前記第2の検出信号が発生すれば、
前記周期的に計測されたバッテリーの電圧のうちの最大電圧である前記バッテリーの最大電圧と前記第2の基準電圧とを比較する過程と、
前記バッテリーの最大電圧が前記第2の基準電圧よりも高ければ、前記第2の過電圧検出部が正常動作したと判断する過程と、
前記バッテリーの最大電圧が前記第2の基準電圧よりも低ければ、前記バッテリーの電圧計測の誤り又は前記第2の過電圧検出部の異常発生であると判断する過程と、を含むバッテリー管理方法。
【請求項10】
前記第1の基準電圧は、前記第2の基準電圧よりも低い、請求項
9に記載のバッテリー管理方法。
【請求項11】
前記第2の検出信号が発生し、かつ前記バッテリーの電圧が前記第1の基準電圧よりも高くて第1の検出信号が発生したか否かを判断する過程と、
前記第1の検出信号が発生する場合、前記第2の過電圧検出部が正常動作していると判断する過程と、
前記第1の検出信号が発生しなかった場合、前記第1の過電圧検出部及び前記第2の過電圧検出部のうちの少なくとも一方が異常動作したと判断する過程と、をさらに含む請求項
9又は請求項
10に記載のバッテリー管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー管理装置(BMS:Battery management system)に関し、特に、バッテリー管理装置のバッテリー管理集積回路(BMIC:battery monitoring Integrated Circuit)とマイクロ制御ユニット(MCU: Micro Control Unit)の計測誤りによる診断不良を防ぐことのできるバッテリー管理装置及び方法に関する。さらに、これを防ぐための過電圧検出集積回路(IC)を適用するに際して、従来の過電圧検出ICの診断に誤り(エラー)が生じる場合があるが、本発明は、従来の過電圧検出ICの診断誤りを防ぐバッテリー管理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
充放電可能な二次電池、すなわち、バッテリー(battery)は、スマートフォンなどのモバイル機器のエネルギー源として広範に用いられている。のみならず、バッテリーは、化石燃料を用いるガソリン車両、ディーゼル車両などによる大気汚染などを解決するための方策として提示される電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの環境にやさしい自動車のエネルギー源としても用いられている。バッテリーを用いる応用の種類は非常に多様化しており、今後からは、現在よりはさらに多くの分野と製品にバッテリーが適用される見込みである。
【0003】
現在、商用化されているバッテリーとしては、ニッケルカドミウムバッテリー、ニッケル水素バッテリー、ニッケル亜鉛バッテリー、リチウムイオンバッテリーなどが挙げられるが、中でも、リチウムイオンバッテリーは、ニッケル系のバッテリーに比べてメモリ効果が殆ど起きないため充放電が自在であり、自己放電率が非常に低くエネルギー密度が高いという長所で脚光を浴びている。また、リチウムイオンバッテリーは、小型・軽量に作製可能であることから、移動機器の電源として用いられ、電気自動車の電源へと使用範囲が広がって次世代のエネルギー貯蔵媒体として注目を集めている。
【0004】
バッテリーを動力として用いる電気・電子機器などには、バッテリーの動作を制御するためにバッテリー管理装置(Battery management system;BMS)などが備え付けられていなければならない。BMSは、バッテリーの温度、電圧及び電流などの状態をモニタリングし、モニタリングされたバッテリーの状態を基にバッテリーのバランシング、充電状態(SOC:State Of Charge)の推定を行うことで、充電又は放電などを制御することができる。このようなBMSは、バッテリーの状態をモニタリングして診断信号を生成するためのバッテリー管理集積回路(BMIC:battery monitoring IC)と、バッテリーの状態に応じてバッテリーを制御するためのマイクロ制御ユニット(Micro Controller Unit;MCU)と、を備えていてもよい。このとき、BMICとMCUとは、所定の通信ラインにより結ばれてデータ又は信号を入出力する。すなわち、BMICは、バッテリーを対象として測定された電圧、電流及び温度などの状態情報から診断信号を生成してMCUに引き渡す。また、MCUは、BMICから診断信号を入力されてバッテリーの状態を判断し、バッテリーの状態に応じた判断結果に基づいてバッテリーを制御することができる。
【0005】
一方、バッテリー管理装置は、MCUやBMICの計測誤りにより、バッテリーの、例えば過電圧(Over Voltage)を診断できない可能性もあり、このような状況下でバッテリーを安全状態(Safety state)に保持するために過電圧検出部を備える。過電圧検出部は、バッテリーの電圧モニタリング結果を受け取って、バッテリーの電圧が設定された電圧を超える過電圧であるか否かを検出する。このとき、過電圧検出部は、バッテリー管理装置内に単一で設けられ得る。すなわち、従来には、BMS内に過電圧検出部が単一で設けられてバッテリーの電圧モニタリング結果が設定された電圧を超える過電圧であるか否かを検出し、MCUを用いてバッテリーが安全状態に保持されるようにしていた。
【0006】
ところが、単一の過電圧検出部を用いて過電圧を判断する従来の技術によれば、過電圧検出部の故障や過電圧検出部の周辺回路の故障によって誤検出の問題が生じる虞がある。すなわち、過電圧検出部それ自体が故障したり、過電圧検出部の周辺回路の故障によって過電圧検出部が過電圧をまともに検出できなくなったりするという問題が生じる虞がある。このように、単一の過電圧検出部の故障によって過電圧をまともに検出できなくなると、バッテリーを制御することができず、その結果、バッテリーを使えなくなるという問題が生じる懸念が高い。
【0007】
これに関連する先行技術としては、次に掲げる文献が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第10-2021-0049470号公報
【文献】特開2011-002350号公報
【文献】韓国公開特許第2008-0021255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、過電圧検出部の誤検出を防ぐことのできるバッテリー管理装置及び方法を提供する。
【0010】
本発明は、基準電圧が互いに異なる少なくとも2つの過電圧検出部を備えてバッテリーの電圧を検出することにより、過電圧の誤検出を防ぐことのできるバッテリー管理装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係るバッテリー管理装置は、バッテリーの状態を診断するバッテリー管理集積回路(BMIC:battery monitoring Integrated Circuit)と、バッテリーの電圧を第1の基準電圧と比較して第1の検出信号を生成する第1の過電圧検出部と、前記バッテリーの電圧を前記第1の基準電圧とは異なる第2の基準電圧と比較して第2の検出信号を生成する第2の過電圧検出部と、前記バッテリー管理集積回路(BMIC)からの診断信号に基づいてバッテリーを制御し、前記第1及び第2の検出信号に基づいて装置内の異常を診断するマイクロ制御ユニット(MCU:Micro Controller Unit)と、を備える。
【0012】
前記第1の基準電圧は、前記第2の基準電圧よりも低い。
【0013】
前記第1の過電圧検出部は、前記バッテリーの電圧が前記第1の基準電圧よりも高ければ、前記第1の検出信号を生成し、前記第2の過電圧検出部は、前記バッテリーの電圧が前記第2の基準電圧よりも高ければ、前記第2の検出信号を生成する。
【0014】
前記マイクロ制御ユニット(MCU)は、前記第2の検出信号が発生しなければ、バッテリー管理集積回路(BMIC)と、第1の過電圧検出部及び第2の過電圧検出部、及びその周辺回路が正常動作すると判断する。
【0015】
前記マイクロ制御ユニット(MCU)は、前記第2の検出信号が発生する場合、バッテリーの最大電圧と前記第2の基準電圧とを比較する。
【0016】
前記マイクロ制御ユニット(MCU)は、前記バッテリーの最大電圧が前記第2の基準電圧よりも高ければ、前記第2の過電圧検出部の正常動作であると判断し、前記バッテリーの最大電圧が前記第2の基準電圧よりも低ければ、バッテリー管理集積回路(BMIC)又はマイクロ制御ユニット(MCU)のバッテリーの電圧の計測誤り又は前記第2の過電圧検出部の異常発生であると判断する。
【0017】
前記マイクロ制御ユニット(MCU)は、前記第2の検出信号が発生する場合、前記第1の検出信号に基づいて、前記第1の過電圧検出部及び第2の過電圧検出部のうちの少なくともどちらか一方の誤りを判断する。
【0018】
前記第2の検出信号が発生し、前記第1の検出信号が発生すれば、前記第2の過電圧検出部が正常動作すると判断する。
【0019】
前記第2の検出信号が発生し、前記第1の検出信号が発生しなければ、前記第1の過電圧検出部及び第2の過電圧検出部のうちの少なくともどちらか一方が異常動作したと判断する。
【0020】
本発明の他の態様に係るバッテリー管理方法は、バッテリーの状態を計測する過程と、バッテリーの電圧計測値を第1の過電圧検出部の第1の基準電圧及び第2の過電圧検出部の第2の基準電圧とそれぞれ比較する過程と、前記第2の基準電圧がバッテリーの計測電圧よりも高くて前記第2の過電圧検出部から第2の検出信号が発生したか否かを判断する過程と、前記第2の検出信号が発生しなければ、正常動作であると判断する過程と、前記第2の検出信号が発生すれば、バッテリーの最大電圧と前記第2の基準電圧とを比較する過程と、前記バッテリーの最大電圧が前記第2の基準電圧よりも高ければ、前記第2の過電圧検出部が正常動作したと判断する過程と、前記バッテリーの最大電圧が前記第2の基準電圧よりも低ければ、バッテリーの電圧計測の誤り又は前記第2の過電圧検出部の異常発生であると判断する過程と、を含む。
【0021】
前記第1の基準電圧は、前記第2の基準電圧よりも低い。
【0022】
前記バッテリー管理方法は、前記第2の検出信号が発生し、前記バッテリーの電圧が前記第1の検出信号が発生したか否かを判断する過程と、前記第1の検出信号が発生する場合、前記第2の過電圧検出部が正常動作すると判断する過程と、前記第1の検出信号が発生しなかった場合、第1及び第2の過電圧検出部のうちの少なくともどちらか一方が異常動作したと判断する過程と、をさらに含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施形態に係るバッテリー管理装置は、BMCIとMCUとの間に互いに異なる第1の基準電圧及び第2の基準電圧を有する第1の過電圧検出部及び第2の過電圧検出部を備える。第1の過電圧検出部及び第2の過電圧検出部は、バッテリーの計測電圧を第1の基準電圧及び第2の基準電圧とそれぞれ比較して第1の検出信号及び第2の検出信号をそれぞれMCUに出力する。MCUは、第1の検出信号及び第2の検出信号を用いてBMICと第1の過電圧検出部及び第2の過電圧検出部、並びにその周辺回路の異常を診断することができる。すなわち、MCUは、第2の検出信号が発生する場合、BMICから入力されたバッテリーの電圧と第2の基準電圧とを比較してBMIC又はMCUの計測誤りを診断することができる。また、MCUは、第2の検出信号が発生する場合、第1の検出信号の発生有無に応じて、第1の過電圧検出部及び第2の過電圧検出部のうちの少なくともどちらか一方の誤りを診断することができる。
【0024】
したがって、本発明は、従来に比べて過電圧検出部の故障や過電圧検出部の周辺回路の故障による誤検出の問題を防ぐことができる。すなわち、互いに異なる基準電圧を有する2つの過電圧検出部を用いることにより、過電圧検出部それ自体が故障したり、過電圧検出部の周辺回路の故障によって過電圧検出部が過電圧をまともに検出できなくなったりするという問題を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバッテリー管理装置の構成を説明するためのブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るバッテリー管理装置のMCUの構成を説明するためのブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るバッテリー管理装置の駆動方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化されることが可能なものであって、以下の実施形態は、単に本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範ちゅうを完全に知らせるために提供されるものである。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係るバッテリー装置の構成を説明するためのブロック図である。すなわち、
図1は、バッテリーとバッテリー管理装置を備えるバッテリー装置のブロック図である。また、
図2は、本発明の一実施形態に係るバッテリー管理システムのMCUの構成を説明するためのブロック図である。
【0028】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係るバッテリー装置は、充放電可能な複数のバッテリーセルを備えるバッテリー100と、バッテリー100の状態をモニタリングするモニタリング部200と、バッテリー100のモニタリング結果に基づいて、バッテリー100の状態を診断するバッテリー管理集積回路(BMIC:battery monitoring IC)300と、第1の基準電圧を有し、モニタリング部200からのバッテリー100の電圧を第1の基準電圧と比較する第1の過電圧検出部400と、第1の基準電圧とは異なる第2の基準電圧を有し、モニタリング部200からのバッテリー100の電圧を第2の基準電圧と比較する第2の過電圧検出部500と、BMIC300と通信を通じて信号をやり取りし、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500から検出信号を受信してバッテリー100の状態に応じてバッテリー100を制御するためのMCU600と、を備えていてもよい。ここで、モニタリング部200と、BMIC300と、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500、及びMCU600がバッテリー管理装置をなす。このような本発明に係るバッテリー及びバッテリー管理装置を備えるバッテリー装置を各構成要素ごとにさらに詳しく説明すれば、下記の通りである。
【0029】
1.バッテリー
【0030】
バッテリー100は、電力消費装置にエネルギーを提供して電力消費装置を駆動する電気エネルギー源である。ここで、電力消費装置は、スマートフォンなどのモバイル機器と、電気スクーター、電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの運送手段を網羅し得る。バッテリー100は、少なくとも1つのバッテリーパックを備えていてもよい。このとき、少なくとも1つのバッテリーパックは、それぞれ複数のバッテリーモジュールを備えていてもよく、バッテリーモジュールは、充放電可能な複数のバッテリーセルを備えていてもよい。すなわち、バッテリー100は、複数のバッテリーセルを備え、複数のバッテリーセルを所定の単位で束ねてバッテリーモジュールをなしてもよいし、あるいは、複数のバッテリーモジュールが1つのバッテリーパックをなしてもよい。一方、複数のバッテリーセルは、電力消費装置のスペック(specification)に見合うように様々な方法により直列及び/又は並列に接続され得る。いうまでもなく、複数のバッテリーセルをそれぞれ備える複数のバッテリーパックもまた直列及び/又は並列に接続され得る。ここで、バッテリーセルの種類は特に限定されず、例えば、リチウムイオンバッテリー、リチウムポリマーバッテリー、ニッケルカドミウムバッテリー、ニッケル水素バッテリー、ニッケル亜鉛バッテリーなどから構成してもよい。
【0031】
2.モニタリング部
【0032】
モニタリング部200は、バッテリー100の状態をモニタリングするために設けられてもよい。例えば、モニタリング部200は、バッテリー100の電流、電圧、温度などを測定することができる。また、モニタリング部200は、バッテリーパック、バッテリーモジュール及びバッテリーセルの状態を測定することができる。すなわち、モニタリング部200は、複数のバッテリーセルのそれぞれの状態を測定することもでき、複数のバッテリーセルが束ねられたバッテリーモジュールの状態を測定することもでき、複数のバッテリーモジュールが束ねられたバッテリーパックの状態を測定することもできる。このために、モニタリング部200は、複数のセンサーを備えていてもよい。すなわち、モニタリング部200は、少なくとも1つの電流センサー、少なくとも1つの電圧センサー及び少なくとも1つの温度センサーを備えていてもよい。電流センサーと、電圧センサー及び温度センサーは、バッテリー100の電流、電圧及び温度を周期的に測定し、測定結果をBMIC300に提供することができる。測定結果は、アナログ信号又はデジタル信号としてBMIC300に提供され得る。ここで、電流センサーは、充電電流の大きさに相当する信号を生成することができる。いうまでもなく、電流センサーは、充電電流のみならず、放電電流の大きさも測定することができる。このために、電流センサーは、例えば、バッテリー100において充放電電流が流れる経路である充放電経路の上に配設されてもよい。一方、本発明に係る電流センサーは、シャント抵抗を含んでいてもよい。また、電圧センサーは、バッテリー100の正極と負極との間に印加される電圧に相当する信号を生成する。電圧センサーは、一例として、バッテリー100の正極端子と負極端子との間の電圧差に相当する電圧信号を出力する差動増幅回路を備えていてもよい。そして、温度センサーは、一例として、温度の測定に用いられるサーモカプラーであってもよい。温度センサーは、バッテリー100の温度に相当する信号を生成する。また、温度センサーは、バッテリー100の温度を測定する温度センサーの他に、バッテリー100の熱が発散される外部の温度を測定する外部温度センサーをさらに備えていてもよい。外部温度センサーは、温度センサーと同一のセンサー類から構成されてもよく、外部の温度に相当する信号を生成する。一方、モニタリング部200は、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500と接続されて第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500に電圧測定結果を提供することができる。すなわち、電圧センサーから測定されたバッテリー100の電圧は、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500に提供され、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500の過電圧の検出に利用可能である。
【0033】
3.BMIC
【0034】
BMIC300は、モニタリング部200において測定されたバッテリーの状態信号を入力し、測定された状態情報から診断信号を生成してMCU600に引き渡す。例えば、BMIC300は、モニタリング部200から測定されたバッテリーの電圧を設定電圧範囲と比較して比較結果に基づく診断信号を生成することができる。具体例を挙げると、バッテリーの電圧が3V~4.5Vに設定された場合、BMIC300は、バッテリーの電圧を設定電圧範囲と比較して、設定電圧範囲以外の異常電圧の場合と正常電圧の場合とにおいて互いに異なるレベルの診断信号を生成してMCU600に引き渡すことができる。電流の場合にも、設定電流範囲以内であるか、あるいは、設定電流範囲から外れているかを判断して異常電流を判断し、それに基づく診断信号を生成することができる。BMIC300とMCU600とは、所定の通信ラインを介して結ばれ得る。したがって、診断信号は、BMIC300の出力端から通信ラインを介してMCU600の入力端へと引き渡されることが可能になる。一方、BMIC300は、MCU600から伝送される制御信号に基づいて、バッテリー100を制御することができる。例えば、BMIC300は、MCU600から伝送されるセルバランシング信号に基づいて、複数のバッテリーセルのうちのバランシング対象のセルをセルバランシング回路を介して放電することができる。このために、BMIC300は、MCU600のセルバランシング信号に基づいて、複数のスイッチング信号を生成することができる。このとき、複数のバッテリーセルにはスイッチが接続されてもよく、スイッチング信号のそれぞれは、対応するスイッチのスイッチング動作を制御することができる。オンレベルのスイッチング信号が対応するスイッチに供給されれば、スイッチがターンオンして当該バッテリーセルが放電される。このように、BMIC300とMCU600とは、所定のデータ又は信号を入出力するために通信ラインにより結ばれ得る。すなわち、BMIC300の診断信号などの状態信号を通信ラインを介してMCU600に出力するための出力部と、BMIC300からセルバランシング信号などの信号を通信ラインを介して入力するための入力部と、を備える通信部が設けられてもよい。
【0035】
4.第1の過電圧検出部
【0036】
第1の過電圧検出部400は、モニタリング部200と接続されてモニタリング部200からバッテリー100の電圧計測値を受信する。すなわち、第1の過電圧検出部400は、モニタリング部200の電圧センサーからバッテリー100の電圧計測値を受信する。第1の過電圧検出部400は、第1の基準電圧を有し、バッテリー100の電圧と第1の基準電圧とを比較する。ここで、第1の過電圧検出部400の第1の基準電圧は、第2の過電圧検出部500の第2の基準電圧よりも低いフォールトレベル(fault level)に設定され得る。したがって、第1の過電圧検出部400は、第2の過電圧検出部500が正常の状態でバッテリー100の電圧を検出したか否かを確認する役割を果たす。一方、第1の過電圧検出部400は、第1の基準電圧とバッテリー100の電圧との比較結果に基づいて、互いに異なるレベルの第1の検出信号を出力する。例えば、第1の過電圧検出部400は、バッテリー100の電圧が第1の基準電圧よりも低ければ、ロー(low)レベルの第1の検出信号を出力し、バッテリー100の電圧が第1の基準電圧よりも高ければ、ハイ(high)レベルの第1の検出信号を出力する。第1の過電圧検出部400からの第1の検出信号は、MCU600に引き渡される。このような第1の過電圧検出部400は、BMIC300の診断誤りによって過電圧の検出が不可能になることに備えて設けられ得る。
【0037】
5.第2の過電圧検出部
【0038】
第2の過電圧検出部500は、モニタリング部200と接続されてモニタリング部200からバッテリー100の電圧計測値を受信する。すなわち、第2の過電圧検出部500は、第1の過電圧検出部400と同時にモニタリング部200の電圧センサーからバッテリー100の電圧計測値を受信する。第2の過電圧検出部500は、第2の基準電圧を有し、バッテリー100の電圧と第2の基準電圧とを比較する。ここで、第2の過電圧検出部500の第2の基準電圧は、第1の過電圧検出部400の第1の基準電圧よりも大きなフェイルレベル(fail level)に設定され得る。すなわち、第2の過電圧検出部500は、実際に安全状態に進入するための基準電圧を有している。一方、第2の過電圧検出部500は、第2の基準電圧とバッテリー100の電圧との比較結果に基づいて、互いに異なるレベルの第2の検出信号を出力する。例えば、第2の過電圧検出部500は、バッテリー100の電圧が第2の基準電圧よりも低ければ、ロー(low)レベルの第2の検出信号を出力し、バッテリー100の電圧が第2の基準電圧よりも高ければ、ハイ(high)レベルの第2の検出信号を出力する。第2の過電圧検出部500からの第2の検出信号は、MCU600に引き渡される。このような第2の過電圧検出部500は、BMIC300の診断誤りによって過電圧の検出が不可能になることに備えて、本発明により第1の過電圧検出部400と一緒に設けられ得る。
【0039】
6.MCU
【0040】
MCU600は、BMIC300から診断信号を入力されてバッテリー100の状態をモニタリングし、バッテリー100の状態に応じて、バッテリー100を制御することができる。例えば、BMIC300からバッテリーの電圧又は電流の異常診断信号が入力されれば、MCU600は、通信オフなどの機能を用いてバッテリーの動作を停止することができる。このために、MCU600は、異常診断部610を備えていてもよい。すなわち、バッテリー100の電圧が設定電圧範囲から外れている場合、又はバッテリー100の電流が設定電流範囲から外れている場合に発生する異常診断信号に基づいて、MCU600の異常診断部610は、バッテリー100の動作を停止することができる。また、MCU600は、BMIC300の診断信号に基づいて、バッテリーの充放電又はセルバランシングなどバッテリーの動作を制御することができる。このために、MCU600は、バッテリー制御部620を備えていてもよい。すなわち、バッテリーの電圧が設定電圧範囲以内である場合、又はバッテリーの電流が設定電流範囲以内である場合に、正常診断信号に基づいて、MCU600のバッテリー制御部620は、バッテリーの動作を停止することができる。このとき、MCU600は、バッテリー制御部620を介して、バッテリーの電圧又は電流が低い場合にバッテリーの充電を制御するようにでき、電圧又は電流が安定している場合にバッテリーの放電を制御するようにできる。また、MCU600は、バッテリー制御部620を介して、少なくとも1つのバッテリーセルが設定電圧又は電流よりも高い場合にセルバランシングを制御するようにできる。セルバランシングのために、MCU600は、BMIC300にバランシング制御信号を出力してBMIC300を介してセルバランシングを制御することができる。このような動作のために、MCU600は、BMIC300と所定の通信ラインにより接続され得る。すなわち、MCU600には、BMIC300から診断信号などの状態信号を通信ラインを介して入力するための入力部と、BMIC300にセルバランシング信号などの信号を通信ラインを介して出力するための出力部TXと、を備える通信部が設けられ得る。
【0041】
また、本発明に係るMCU600は、BMIC300から診断されたバッテリー100の電圧のみならず、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500から第1の検出信号及び第2の検出信号をそれぞれ入力する。すなわち、MCU600は、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500から第1の検出信号及び第2の検出信号をそれぞれ入力するための第1の検出信号入力部630及び第2の検出信号入力部640を備えていてもよい。MCU600は、第1の検出信号及び第2の検出信号を用いて、BMIC300と第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500、並びにその周辺回路の異常を診断することができる。このために、MCU600は、比較判断部650を備えていてもよい。比較判断部650は、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500からの第1の検出信号及び第2の検出信号が入力される場合、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500のそれぞれの第1の基準電圧及び第2の基準電圧とバッテリーの電圧とを比較して、BMIC300と第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500、並びにその周辺回路の異常を診断することができる。すなわち、MCU600は、第2の過電圧検出部500から第2の検出信号が発生する場合、すなわち、第2の検出信号がハイレベルで入力される場合、BMIC300から異常診断部610を介して入力されたバッテリー100の電圧と第2の過電圧検出部500の第2の基準電圧とを比較して、BMIC300又はMCU600の計測誤りを診断することができる。また、MCU600は、第2の過電圧検出部500から第2の検出信号がハイレベルで入力される場合、第1の過電圧検出部400からの第1の検出信号に基づいて、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500のうちの少なくともどちらか一方の誤りを診断することができる。すなわち、MCU600は、第2の検出信号が発生しなければ、すなわち、第2の検出信号がローレベルで入力されれば、BMIC300と、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500と、MCU600、及びその周辺回路が正常動作すると判断し、第2の検出信号がハイレベルで入力されれば、診断動作を行う。このようなMCU600の診断動作に基づく駆動方法についてさらに詳しく説明すれば、下記の通りである。MCU600は、第2の過電圧検出部500からの第2の検出信号がハイレベルで入力されれば、BMIC300からのバッテリー100の最大電圧(cell max voltage)と第2の過電圧検出部500の第2の基準電圧とを比較する。バッテリー100の最大電圧が第2の基準電圧よりも高ければ、第2の過電圧検出部500が正常動作したと判断する。ところが、第2の過電圧検出部500からの第2の検出信号がハイレベルで入力され、バッテリー100の最大電圧が第2の基準電圧よりも低ければ、MCU600は、バッテリー100の電圧計測の誤り又は第2の過電圧検出部500の異常発生であると判断することができる。すなわち、バッテリー100の最大電圧が第2の基準電圧よりも低ければ、BMIC300又はMCU600などの誤りによってバッテリーの電圧が誤って計測された場合であるか、あるいは、第2の過電圧検出部500又はその周辺回路の異常によって第2の過電圧検出部500から第2の検出信号が誤って出力される場合であると判断可能である。
【0042】
また、MCU600は、第2の過電圧検出部500から第2の検出信号がハイレベルで入力されるとともに、第1の過電圧検出部400から第1の検出信号がハイレベルで入力される場合、第1の基準電圧が第2の基準電圧よりも低いため、第2の過電圧検出部500が正常動作すると判断することができる。しかしながら、第2の過電圧検出部500から第2の検出信号がハイレベルで入力されるとともに、第1の過電圧検出部400から第1の検出信号がローレベルで入力される場合、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500のうちの少なくともどちらか一方が異常動作したと判断することができる。すなわち、過電圧検出部の異常発生であると判断することができる。
【0043】
上述したように、本発明の一実施形態に係るバッテリー装置は、BMIC300とMCU600との間に第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500を備える。すなわち、本発明は、従来に比べて過電圧検出部が追加で1つ備えられる。ここで、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500は、互いに異なる第1の基準電圧及び第2の基準電圧を有し、第1の基準電圧が第2の基準電圧よりも低い値を有する。第1及び第2の過電圧検出部400、500は、モニタリング部200によって計測されたバッテリー100の電圧を第1の基準電圧及び第2の基準電圧とそれぞれ比較して、第1の検出信号及び第2の検出信号をそれぞれ出力する。第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500は、バッテリーの電圧が第1の基準電圧及び第2の基準電圧よりもそれぞれ大きければ、第1の検出信号及び第2の検出信号をそれぞれ発生させてMCU600に供給する。MCU600は、第1の検出信号及び第2の検出信号を用いて、BMIC300と第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500、並びにその周辺回路の異常を診断することができる。すなわち、MCU600は、第2の過電圧検出部500から第2の検出信号が発生する場合、BMIC300から入力されたバッテリー100の電圧と第2の過電圧検出部500の第2の基準電圧とを比較して、BMIC300又はMCU600の計測誤りを診断することができる。また、MCU600は、第2の過電圧検出部500から第2の検出信号がハイレベルで入力される場合、第1の過電圧検出部400からの第1の検出信号に基づいて、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500のうちの少なくともどちらか一方の誤りを診断することができる。すなわち、MCU600は、第2の検出信号が発生しなければ、すなわち、第2の検出信号がローレベルで入力されれば、BMIC300と、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500と、MCU600、及びその周辺回路が正常動作すると判断し、第2の検出信号がハイレベルで入力されれば、診断動作を行う。
【0044】
従って、本発明は、従来の技術に比べて過電圧検出部の故障や過電圧検出部の周辺回路の故障による誤検出の問題を防ぐことができる。すなわち、互いに異なる基準電圧を有する2つの過電圧検出部を用いることにより、過電圧検出部それ自体が故障したり、過電圧検出部の周辺回路の故障によって過電圧検出部が過電圧をまともに検出できなくなったりするという問題を防ぐことができる。
【0045】
図3は、本発明の一実施形態に係るバッテリー装置の動作方法を説明するためのフローチャートである。
【0046】
図3を参照すると、本発明の一実施形態に係るバッテリー装置の動作方法は、バッテリー100の状態を計測する過程(S110)と、バッテリー100の電圧計測値を第1の基準電圧Vref1及び第2の基準電圧Vref2とそれぞれ比較する過程(S120)と、第2の基準電圧Vref2がバッテリーの計測電圧よりも高くて第2の検出信号が発生したか否かを判断する過程(S130)と、第2の検出信号が発生しなければ、正常動作であると判断する過程(S140)と、第2の検出信号が発生すれば、バッテリー100の最大電圧Vmaxと第2の基準電圧Vref2とを比較する過程(S150)と、バッテリー100の最大電圧Vmaxが第2の基準電圧Vref2よりも高ければ、第2の過電圧検出部500が正常動作したと判断する過程(S160)と、バッテリー100の最大電圧が第2の基準電圧よりも低ければ、バッテリー100の電圧計測の誤り又は第2の過電圧検出部500の異常発生であると判断する過程(S170)と、第2の検出信号が発生し、第1の検出信号が発生したか否かを判断する過程(S180)と、第1の検出信号が発生する場合、第2の過電圧検出部500が正常動作すると判断する過程(S190)と、第1の検出信号が発生しなかった場合、第1の過電圧検出部及び第2の過電圧検出部のうちの少なくともどちらか一方が異常動作したと判断する過程(S200)と、を含んでいてもよい。ここで、S150とS180とは同時に行われてもよいし、あるいは、順次に行われてもよい。S150とS180とが順次に行われる場合、S150が先に行われ、S180が後ほどに行われてもよいし、あるいは、これとは逆に、S180が先に行われた後、引き続いてS150が行われてよい。
【0047】
このような本発明の一実施形態に係るバッテリー装置の動作方法を各過程ごとにさらに詳しく説明すれば、下記の通りである。
【0048】
S110:モニタリング部200は、バッテリー100の状態をモニタリングする。例えば、モニタリング部200は、バッテリー100の電流、電圧、温度などを測定することができる。このとき、モニタリング部200は、バッテリーパック、バッテリーモジュール及びバッテリーセルの状態を測定することができる。このために、モニタリング部200は、少なくとも1つの電流センサーと、少なくとも1つの電圧センサー及び少なくとも1つの温度センサーを備えていてもよい。電流センサーと、電圧センサー及び温度センサーは、バッテリー100の電流、電圧及び温度を周期的に測定し、測定結果をBMIC300に提供することができる。ここで、電流センサーは、充電電流の大きさに相当する信号を生成することができる。いうまでもなく、電流センサーは、充電電流のみならず、放電電流の大きさも測定することができる。また、電圧センサーは、バッテリー100の正極と負極との間に印加される電圧に相当する信号を生成する。電圧センサーは、一例として、バッテリー100の正極端子と負極端子との間の電圧差に相当する電圧信号を出力する差動増幅回路を備えていてもよい。そして、温度センサーは、一例として、温度の測定に用いられるサーモカプラーであってもよい。温度センサーは、バッテリー100の温度に相当する信号を生成する。また、モニタリング部200は、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500と接続されて第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500に電圧測定結果を提供することができる。すなわち、電圧センサーから測定されたバッテリー100の電圧は第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500に提供され、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500の過電圧の検出に利用可能である。
【0049】
一方、BMIC300は、モニタリング部200において測定されたバッテリーの状態信号を入力し、測定された状態情報から診断信号を生成してMCU600に引き渡す。例えば、BMIC300は、モニタリング部200から測定されたバッテリーの電圧を設定電圧範囲と比較して、比較結果に基づく診断信号を生成することができる。具体例を挙げると、バッテリーの電圧が3V~4.5Vに設定された場合、BMIC300は、バッテリーの電圧を設定電圧範囲と比較して設定電圧範囲以外の異常電圧の場合と正常電圧の場合とにおいて互いに異なるレベルの診断信号を生成してMCU600に引き渡すことができる。電流の場合にも、設定電流範囲以内であるか、あるいは、設定電流範囲から外れているかを判断して異常電流を判断し、それに基づく診断信号を生成することができる。BMIC300とMCU600とは、所定の通信ラインを介して結ばれ得る。したがって、診断信号は、BMIC300の出力端から通信ラインを介してMCU600の入力端へと引き渡されることが可能になる。
【0050】
S120:モニタリング部200によるバッテリー100の電圧計測値を第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500の第1の基準電圧Vref1及び第2の基準電圧Vref2とそれぞれ比較する。このために、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500は、第1の基準電圧Vref1及び第2の基準電圧Vref2をそれぞれ有し、モニタリング部200からバッテリー100の電圧計測値をそれぞれ受信する。そして、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500は、バッテリー100の電圧と第1の基準電圧及び第2の基準電圧とをそれぞれ比較する。ここで、第1の過電圧検出部400の第1の基準電圧は、第2の過電圧検出部500の第2の基準電圧よりも低いフォールトレベル(fault level)に設定され得、第2の基準電圧は、第1の基準電圧よりも高いフェイルレベル(fail level)に設定され得る。一方、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500は、第1の基準電圧及び第2の基準電圧とバッテリー100の電圧との比較結果に基づいて、互いに異なるレベルの第1及び第2の検出信号をそれぞれ出力する。例えば、第1の過電圧検出部400は、バッテリー100の電圧が第1の基準電圧よりも低ければ、ロー(low)レベルの第1の検出信号を出力し、バッテリー100の電圧が第1の基準電圧よりも高ければ、ハイ(high)レベルの第1の検出信号を出力する。また、第2の過電圧検出部500は、バッテリー100の電圧が第2の基準電圧よりも低ければ、ロー(low)レベルの第2の検出信号を出力し、バッテリー100の電圧が第2の基準電圧よりも高ければ、ハイ(high)レベルの第2の検出信号を出力する。すなわち、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500は、バッテリーの電圧が第1の基準電圧及び第2の基準電圧よりも高い場合、第1の検出信号及び第2の検出信号をそれぞれ発生させる。第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500からの第1の検出信号及び第2の検出信号は、MCU600にそれぞれ引き渡される。
【0051】
S130:MCU600は、第2の過電圧検出部500から第2の検出信号が入力したか否かを判断する。すなわち、バッテリー100の電圧が第2の基準電圧よりも高くて第2の過電圧検出部500が第2の検出信号をハイ(high)レベルで発生させてMCU600に出力すれば、MCU600は、第2の検出信号がハイレベルで入力されたか否かを判断する。
【0052】
S140:第2の過電圧検出部500から第2の検出信号が入力されなければ、すなわち、バッテリー100の電圧が第2の基準電圧よりも低くてローレベルの第2の検出信号が入力されれば、MCU600は、正常動作であると判断する。すなわち、このような場合、MCU600は、BMIC300と、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500と、MCU600、及びその周辺回路が正常動作すると判断することができる。
【0053】
S150:第2の過電圧検出部500から第2の検出信号が入力されたと判断されれば、MCU600は、BMIC300からのバッテリー100の最大電圧Vmaxと第2の過電圧検出部500の第2の基準電圧Vref2とを比較する。
【0054】
S160:バッテリー100の最大電圧が第2の基準電圧よりも高ければ、第2の過電圧検出部500が正常動作すると判断する。
【0055】
S170:ところが、第2の過電圧検出部500からの第2の検出信号がハイレベルで入力され、バッテリー100の最大電圧が第2の基準電圧よりも低ければ、MCU600は、バッテリー100の電圧計測の誤り又は第2の過電圧検出部500の異常発生であると判断することができる。すなわち、BMIC300からのバッテリー100の最大電圧が第2の基準電圧よりも低ければ、BMIC300又はMCU600などの誤りによってバッテリーの電圧が誤って計測された場合であるか、あるいは、第2の過電圧検出部500又はその周辺回路の異常によって第2の過電圧検出部500から第2の検出信号が誤って出力される場合であると判断可能である。
【0056】
S180:また、MCU600は、第2の過電圧検出部500から第2の検出信号がハイレベルで入力されるとともに、第1の過電圧検出部400から第1の検出信号がハイレベルで入力されるか否かを判断する。
【0057】
S190:第2の検出信号とともに第1の検出信号がハイレベルで入力される場合、第2の過電圧検出部500が正常動作すると判断することができる。
【0058】
S200:しかしながら、第2の過電圧検出部500から第2の検出信号がハイレベルで入力されるとともに、第1の過電圧検出部400から第1の検出信号がローレベルで入力される場合、第1の過電圧検出部400及び第2の過電圧検出部500のうちの少なくともどちらか一方が異常動作したと判断することができる。すなわち、過電圧検出部の異常発生であると判断することができる。
【0059】
上述したような本発明の技術的思想は、前記実施形態に基づいて具体的に記述されたが、前記実施形態はその説明のためのものであり、その制限のためのものではないということに留意されたい。なお、本発明の技術分野における当業者であれば、本発明の技術思想の範囲内において種々の実施形態が実施可能であるということが理解できるものである。
【0060】
本発明において用いられている各構成要素の図面符号の名称は、下記の通りである。
【符号の説明】
【0061】
100:バッテリー
200:モニタリング部
300:BMIC
400:第1の過電圧検出部
500:第2の過電圧検出部
600:MCU