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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-01
(45)【発行日】2025-07-09
(54)【発明の名称】低抵抗の複合シリコンベース電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20250702BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20250702BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20250702BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20250702BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20250702BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20250702BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20250702BHJP
   H01M 50/534 20210101ALI20250702BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M10/058
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M10/0566
H01M10/052
H01M50/534
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023511872
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2021071199
(87)【国際公開番号】W WO2022037916
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-12-12
(31)【優先権主張番号】16/994,813
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】トドロフ、テオドール、クラシミロフ
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】アフザリ、アルダカニ、アリ
(72)【発明者】
【氏名】デ、スーザ、ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】サダナ、デヴァンドラ
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-234988(JP,A)
【文献】特開2005-166469(JP,A)
【文献】特開2017-204468(JP,A)
【文献】国際公開第2020/130822(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
H01M10/05-10/0587,10/36-10/39
H01M50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合電極であって、
シリコンベース電極と、
前記シリコンベース電極上に直接配置された誘電体層であって、前記誘電体層は、15ナノメートル(nm)~30(nm)の間の誘電体層厚を有する、誘電体層と、
前記誘電体層上に配置された導電層であって、前記導電層前記誘電体層は層ペアを形成し、前記導電層はリチウムイオンに対して高い導電性を有するリチウム含有塩からなり、前記層ペアは前記シリコンベース電極の溝の底面にある導電層と、
を含む、複合電極と、
前記複合電極上および前記溝内に配置されたアノードと、
前記アノード上に配置された電解質層と、
前記電解質層上に配置されたカソードと、
前記アノードと前記カソードとの間の電極の流れを妨げるセパレータ層と、
を含み、
前記複合電極は、40オームcm未満の抵抗率を有し、
前記誘電体層は、フッ化リチウム(LiF)からなり、
前記リチウム含有塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、LiBF 、LiBF 、塩化リチウム、リン酸リチウム化合物、臭化リチウム化合物、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)、およびリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)の材料のうちの1または複数である、
エネルギー貯蔵デバイス
【請求項2】
電荷移動時定数は2.25E-6秒未満である、請求項1に記載のエネルギー貯蔵デバイス
【請求項3】
前記誘電体層厚は18nm~23nmの間である、請求項1に記載のエネルギー貯蔵デバイス
【請求項4】
前記導電層は、1nm~50nmの間の導電層厚を有する、請求項1に記載のエネルギー貯蔵デバイス
【請求項5】
前記シリコンベース電極は、バルクシリコン、結晶シリコン、非結晶シリコン、ドープシリコン、ホウ素ドープシリコン、多孔質シリコン、非多孔質シリコン、シリコンゲルマニウム合金、および炭素ドープシリコンベース合金の材料のうちの1または複数からなる、請求項1に記載のエネルギー貯蔵デバイス
【請求項6】
導電材料、金属、金属窒化物、タングステン(W)、銅(Cu)、チタン(Ti)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、金(Au)、窒化チタン(TiN)のうちの1または複数からなる電極接点をさらに有する、請求項1に記載のエネルギー貯蔵デバイス
【請求項7】
前記層ペアは、前記層ペアの対底面が前記シリコンベース電極の電極対面と直接物理的および電気的に接触するように、前記シリコンベース電極上に直接配置され、前記対底面と前記電極対面とが接触しているところが電極界面である、請求項1に記載のエネルギー貯蔵デバイス
【請求項8】
前記電解質層は、高分子固体電解質(SPE)、固体電解質、ハイブリッドポリマー/固体電解質、および液体電解質のうちの1つである、請求項1に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項9】
複合体からなり、2.25E-6秒未満の電荷移動時定数を有する、請求項1に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項10】
前記シリコンベース電極はホウ素ドープ結晶シリコンからなり、前記誘電体層はLiFからなり、前記導電層はビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)からなり、前記電解質層はポリカプロラクトン、スクシノニトリル(SN)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)をさらに混合した高分子固体電解質(SPE)からなる、
請求項1に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面抵抗/インピーダンスを低減したシリコンベース層との界面に関する。より具体的には、本発明は、エネルギー貯蔵デバイスにおいて界面抵抗および電荷移動抵抗を低減するためにシリコンベース層と界面する導電層および構造強化層を含む複合リチウムに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプロセッサやメモリチップにバッテリーなどのエネルギー貯蔵デバイスを統合することは、IoT(モノのインターネット)デバイスの重要な要件である。IoTアプリケーションに加えて、オンボードの次世代エネルギー貯蔵デバイスを統合する新しいアプリケーションは、モバイルデバイス、通信機器、ドローン・車両・ロボット・感覚器などの遠隔電力、環境・生物・社会の自律機能マシン、スマートダスト、もしくは生体感覚デバイス/薬物送達デバイス、またはその組み合わせを含む。
【0003】
さらに、電気化学的に活性な材料や電気化学的プロセスを、電気自動車、モバイルコンピューティングや通信機器、グリッドストレージなど、従来のアプリケーションと統合しながらスケーリングする必要がある。
【0004】
人間が制御するデバイスや自律型デバイスの小型化が進むにつれて、電子デバイスに電力を供給するエネルギー源からの総エネルギー消費量の要件は低下する。しかし、これらの統合デバイスの消費電力は1ワット未満であると予想されるが、小型化によってデバイスの体積も減少するため、単位体積当たりのエネルギー密度と電力密度は、小型化されたデバイスで増加し続けることになる。
【0005】
単位体積当たりのエネルギー密度と電力密度を高めるために、リチウム(Li)金属の非常に高い理論比容量(~3860mAh/g)により、リチウム電極材料は半固体または全固体エネルギー貯蔵デバイスのセル構造全体に組み込まれる。多くの用途において、リチウムベースエネルギー貯蔵デバイスは、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)回路に組み込まれる、もしくはそれとインタフェースする、またはその両方であるため、1または複数のリチウムベースコンポーネントがシリコン(Si)層とインタフェースすることになる。また、小型化されたスケールで製造され、大量生産できる高エネルギー/高電力密度貯蔵デバイスは、モバイルエレクトロニクス、電気自動車、再生可能グリッドストレージなどのスケーラブルなアプリケーションに直接適用できると仮定されている。
【0006】
特に、高エネルギー密度および高電力密度の貯蔵デバイスにおいて、シリコンベース層とリチウムベースコンポーネントとの間の低抵抗界面が必要とされている。このような低抵抗界面は、電力損失の低減、効率の向上、もしくは、体積膨張、過加熱またはデバイス内のLiデンドライト形成によるシリコン活性電極含有デバイスの劣化の防止、またはその組み合わせに必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、2つの層を組み合わせたシリコンベース電極(層ペア)を含む複合電極が開示される。層ペアは、1.シリコンベース電極の電極表面に配置され、付着しているリチウム(Li)化合物、例えばフッ化リチウム、LiFからなる薄い半誘電体のリチウム導電層、および、2.半誘電体層上に配置された、リチウム含有塩の溶融リチウムイオン濃縮導電層(リチウム塩層)を含む。リチウム塩層は、リチウムイオン(Li)に対して高い導電性を有している。
【0008】
層ペアの上に1または複数のデバイス層が配置され得る。デバイス層の非限定的な例としては、1または複数のカソード電極、1または複数の高分子固体電解質(SPE)層または液体電解質層、1または複数のアノード層、もしくは1または複数の他の内部電池コンポーネント層、またはその組み合わせが挙げられる。
【0009】
層ペアは、シリコン界面および電解質/層ペア界面にわたる電荷移動抵抗を下げる効果があるため、デバイス層とシリコンベース電極との間に驚くほど低いインピーダンス/抵抗の界面を形成する。この層ペアは、マイクロ抵抗器、次世代イオンベースのアナログメモリデバイス、リチウムイオン電池のようなエネルギー貯蔵デバイスなどを含むシリコンベース電極を有するデバイスに使用されている。
【0010】
本発明の様々な実施形態は、ここで簡単に説明されている添付図面を参照しながら、以下により詳細に説明される。図は、本発明の実施形態に関連する様々な装置、構造、およびプロセスステップを示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】2つのシリコンベース電極の間およびセパレータ層の周囲に対称的に配置された2つの層ペアを含む対称セルの一実施形態の断面図である。
図2】高分子固体電解質(SPE)層と層ペア上に配置されたデバイス層の一部との間にセパレータ層を有するシリコンベース電極上に配置された層ペアを含むセルの代替実施形態の断面図である。
図3】シリコンベース電極の電極表面に配置され、付着しているリチウム(Li)化合物、例えばフッ化リチウム、LiFからなる薄い半誘電体層を示す顕微鏡写真である。
図4】層ペア上に配置された1または複数のデバイス層を有するシリコンベース電極上に配置された層ペアを示す顕微鏡写真である。
図5】電気化学インピーダンス分光法(EIS)スペクトルのフィッティングに使用する、エネルギー貯蔵デバイス(例えば対称セルエネルギー貯蔵デバイス)のRC(抵抗器/コンデンサ)モデルである。
図6】対称セルの成分値を決定するために、図5のRCモデルを用いてフィッティングしたナイキストプロットである。
図6A図6のナイキストプロットから高周波数から中周波数のデータポイントを拡大した図である。
図7】リチウム電池に用いられるシリコンベース電極上に層ペアが配置された状態を示すブロック図である。
図8】シリコンベース電極との界面における抵抗を実質的に減少させるために層ペアを使用してリチウム電池を形成するプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態は、本明細書に開示された例示的な方法、装置、構造、システムおよびデバイスに限定されるものではなく、代わりに、本開示が与えられた当業者にとって明らかになるであろう他の代替的かつより広い方法、装置、構造、システムおよびデバイスにより広く適用可能であることが理解されよう。
【0013】
さらに、添付図面に示された様々な層、構造、もしくは領域、またはその組み合わせは縮尺通りに描かれておらず、一般的に使用されるタイプの1または複数の層、構造、もしくは領域、またはその組み合わせが所定の図面に明示的に示されていない場合があることを理解されたい。これは、明示的に示されていない層、構造、もしくは領域、またはその組み合わせが実際のデバイスから省略されることを意味するものではない。
【0014】
さらに、説明が省略された要素に必ずしも集中していない場合、明確化もしくは単純化またはその両方のために、特定の要素が図から省略されることがある。さらに、図面全体で使用される同一または類似の参照番号は、同一または類似の特徴、要素、または構造を示すために使用され、したがって、同一または類似の特徴、要素、または構造についての詳細な説明は、図面のそれぞれについて繰り返されることはないだろう。
【0015】
本発明の実施形態に従って開示される半導体デバイス、構造、および方法は、アプリケーション、ハードウェア、もしくは電子システム、またはその組み合わせにおいて採用することができる。本発明の実施形態を実装するための適切なハードウェアおよびシステムは、半導体、パーソナルコンピュータ、通信ネットワーク、電子商取引システム、携帯通信機器(例えば、セルおよびスマートフォン)、ソリッドステートメディアストレージデバイス、エキスパートおよび人工知能システム、機能回路、ニューラルネットワークなどを含むことができるが、これらに限定されるものではない。半導体デバイスおよび構造体に本発明を組み込んだシステムおよびハードウェアは、本発明の実施形態として企図されている。
【0016】
本明細書で使用される場合、「高さ(height)」は、要素(例えば、層、溝、穴、開口部など)の底面から上面まで測定された断面図または立面図における要素の垂直サイズを指す、もしくは、要素が配置された表面に対して測定される、またはその両方である。
【0017】
逆に、「深さ(depth)」は、要素(例えば、層、溝、穴、開口部など)の上面から下面まで測定された断面図または立面図における要素の垂直方向の大きさを指す。「厚さ(thick)」、「厚さ(thickness)」、「薄さ(thin)」などの用語またはその派生語は、「高さ(height)」の代わりに使用されることがある。
【0018】
本明細書で使用される場合、「側面(lateral)」、「側面(lateral side)」、「側面(side)」、および「外側面(lateral surface)」は、図面における左側面または右側面などの要素(例えば、層、開口部など)の側面のことを指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、「幅(width)」または「長さ(length)」は、要素(例えば、層、溝、穴、開口部など)の側面から反対側の表面まで測定された図面における要素の大きさを指す。「厚さ(thick)」、「厚さ(thickness)」、「薄さ(thin)」などの用語またはその派生語は、「幅」または「長さ」の代わりに使用されることがある。
【0020】
本明細書で使用される場合、「上(upper)」、「下(lower)」、「右(right)」、「左(left)」、「垂直(vertical)」、「水平(horizontal)」、「上(top)」、「下(bottom)」などの用語およびそれらの派生語は、描かれている図面に方向付けられた、開示される構造および方法に関するものとする。例えば、本明細書で使用される場合、「垂直(vertical)」は、立面図における基板の上面に垂直な方向を指し、「水平(horizontal)」は、立面図における基板の上面に平行な方向を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、特に指定しない限り、「上に(on)」、「上に重ねる(overlying)」、「上に(atop)」、「上に(on top)」、「上に位置する(positioned on)」または「上に位置する(positioned atop)」などの用語は、第1の要素が第2の要素上に存在し、介在要素が第1の要素と第2の要素との間に存在し得ることを意味している。本明細書で使用される場合、特に指定しない限り、「上に(on)」、「上に重ねる(overlying)」、「上に(atop)」、「上に(on top)」、「上に位置する(positioned on)」、または「上に位置する(positioned atop)」、「配置された(disposed on)」という用語、または「接触している(in contact)」または「直接接触(direct contact)」という用語に関連して使用される「直接(directly)」という用語は、第1の要素と第2の要素との間に存在する、例えば中間導電層、絶縁層または半導体層などの介在要素なしに、第1の要素および第2の要素が接続されることを意味している。
【0022】
これらの用語は、説明されているデバイスの向きによって影響を受ける可能性があることが理解される。例えば、デバイスを上下逆さまに回転させた場合、これらの説明の意味は変わるかもしれないが、本発明の特徴間の相対的な関係を説明しているため、説明は有効であり続ける。
【0023】
ここで図を参照する。
【0024】
図1は、2つのシリコンベース電極105/105Uの間およびセパレータ層115の周囲に対称的に配置された2つの層ペア(150/150U)を含む対称セル100の一実施形態を示す断面図である。この対称セル100は、後述する電気化学インピーダンス分光法(EIS)分析に用いられる。
【0025】
層ペア150/150Uのそれぞれは、半誘電体層111/111Uと、溶融イオン導電層112/112Uとからなる。溶融イオン導電層112/112Uはそれぞれ、半誘電体層111/111Uを有するそれぞれの界面140/140Uを有している。半誘電体層111/111Uの各々は、半誘電体層厚121を有し、溶融イオン導電層112/112Uの各々は、溶融イオン導電層厚122を有する。
【0026】
各シリコンベース電極105/105Uは、それぞれの層ペア150/150Uと結合して、複合電極105/150を形成する。
【0027】
セパレータ層115は、セパレータ層115の一方の面上にある層ペア150およびシリコンベース電極110を、セパレータ層115の他方の面上にある層ペア150Uおよびシリコンベース電極110Uから電気的に絶縁している。すなわち、セパレータ層115は、セパレータ層115の対向する側上の層ペア150/150Uおよびシリコンベース電極110/110Uの間で電子が流れることを実質的に妨げている。これにより、セル100の電気的短絡が妨げられる。ただし、セパレータ層115は、イオン、例えばリチウムイオン(Li+)の通過を許容する。したがって、セパレータ層115は、電子電流の大部分を妨げながら、イオン電流が流れることを許容する。
【0028】
高分子固体電解質(SPE)層114が含まれる。本実施形態100では、セパレータ層115は、高分子固体電解質(SPE)層114を、セパレータ層115の上の上部SPE層114Bとセパレータ層115の下の下部SPE層114Aとに分割している。SPE層114A/114Bは、セパレータ層115を介しても飽和する。
【0029】
いくつかの実施形態では、電解質層114(例えば114A/114B)は、ガーネット/ポリマー電解質複合体(例えば、Li6.5LaZr1.5Ta0.512/PEO複合体)からなり、固体ポリマー電解質114およびセパレータ115として共に機能する。他の実施形態では、電解質がLi金属よりも硬い場合(例えば、スパッタリングされたLiPON)、電解質はセパレータと電解質の両方として機能するため、セパレータは必要ない。
【0030】
この図1において、参照番号の「U」は、参照番号の「U」がない層に対して、セパレータ層115の上方(または反対側)に相対的に位置し、かつセパレータ層115を中心として対称的であることを表している。以下の議論では、一般性を損なわず、共通で対称である層について説明する場合、一般的な数値表記における「U」は、明確化のために省略することができる。
【0031】
層ペア150は、対上面151(セパレータ115側面)と対底面152(電極側面152/152U)とを有する。対底面152がシリコンベース電極110の電極対面131(半誘電体層111側)と物理的および電気的に直接接触するように、層ペア150がシリコンベース電極110上に直接配置される。電極界面131/152(それぞれ131U/152U)は、対底面152(電極側面152/152U)と電極対面131/131Uとがそれぞれ直接接触しているところである。
【0032】
いくつかの実施形態では、シリコンベース電極110/110Uは、それぞれ電極接点105/105U上に配置される。シリコンベース電極110は、電極接点105/105Uと電気的に接触するシリコンベース電極面132/132Uを有し、電極対面131/131Uは、電極界面131/152(それぞれ131U/151U)で半誘電体層111対底面152(または半誘電体層底面152、すなわち電極接点105側)と電気的に接触している。いくつかの実施形態では、シリコンベース電極110は、直径が約15.5ミリメートル(mm)であり、電極対面131の面積が約1.88cmであるディスクである。
【0033】
任意の電極接点105/105Uは、導電性材料、例えば、銅(Cu)、チタン(Ti)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、金(Au)、タングステン(W)、またはチタンナイトライド(TiN)などの金属からなる。電極接点105/105Uは、導電性金属の単層、例えば導電性金属窒化物、または少なくとも2つの異なる導電性金属もしくは導電性金属窒化物またはその両方を含む材料スタックを含んでもよい。一例では、電極接点105は、下から上へ、チタン(Ti)、プラチナ(Pt)およびチタン(Ti)のスタック(不図示)を含むことができる。電極接点105は、当業者によく知られている堆積技術を利用して形成することができる。
【0034】
もしあれば、電極接点105は、シリコンベース電極110のシリコン電極面132に機械的または化学的に付着、接着、または結合されてもよい。
【0035】
シリコンベース電極110/110Uは、シリコンと共に半導体材料もしくは半導体特性を有する他の任意の材料またはその両方を含んでもよい。一実施形態では、シリコンベース電極110/110Uは、バルク半導体基板である。「バルク」とは、ベース基板が、少なくとも1つの半導体材料、例えば結晶シリコンで全体が構成されていることを意味する。一例では、シリコンベース電極110/110Uは、全体が単結晶であってもよいシリコンで構成されてもよい。いくつかの実施形態では、バルク半導体は、少なくとも2つの異なる半導体材料を含む多層半導体材料スタックを含んでもよく、そのうちの1つはシリコンである。一例では、多層半導体材料スタックは、任意の順序で、Siとシリコンゲルマニウム合金のスタックを含んでもよい。別の実施形態では、多層半導体材料は、任意の順序で、Siと、シリコンゲルマニウムまたは炭素ドープシリコンベース合金などの単一または複数のシリコンベース合金とのスタックを含んでもよい。
【0036】
本願によれば、シリコン電極110は、シリコンを含む材料で構成されており、すなわち、シリコン電極110は、シリコンベースである。「シリコンベース」という用語は、本願を通じて、少なくともシリコンを含み、半導体材料としての性質を有する材料を示すために使用される。シリコンベース電極110として採用することができるシリコンベース材料の例としては、シリコン(Si)、シリコンゲルマニウム合金、または炭素ドープシリコンベース合金を挙げることができる。典型的には、シリコンベース電極110は、シリコン(Si)のみで構成される。
【0037】
シリコンベース電極110に備えられるシリコンベース材料は、非結晶性半導体材料であってもよいし、結晶性半導体材料であってもよい。シリコンベース電極110は、全体的に非多孔質であってもよいし、全体的に多孔質であってもよいし、非多孔質である一部の領域と多孔質である他の領域とを含んでもよい。シリコン含有材料は、非ドープであってもよいし、ドープされていてもよいし、ドープされている一部の領域と非ドープである他の領域とを含んでもよい。ドーパントは、p型ドーパントまたはn型ドーパントであってよい。
【0038】
「p型」は、価電子の欠乏を作り出す真性半導体への不純物の添加を指す。シリコン含有半導体材料において、p型ドーパント、すなわち不純物の例としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウムおよびインジウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。シリコンベース電極110を提供するシリコン含有材料内のp型ドーパントの濃度は、1E16atoms/cm~3E20atoms/cmまでの範囲とすることができる。
【0039】
「n型」は、自由電子を真性半導体に与える不純物の添加を指す。シリコン含有半導体材料において、n型ドーパント、すなわち不純物の例としては、アンチモン、ヒ素、およびリンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。シリコンベース電極110/110Uのシリコン含有材料内のn型ドーパントの濃度は、1E16atoms/cm~1E21atoms/cmまでとすることができる。
【0040】
シリコンベース電極110/110Uとして使用できるシリコン含有材料の例示的な例としては、非多孔質シリコン、部分多孔質結晶シリコン、単結晶非多孔質シリコン、結晶シリコン、低抵抗ドープ結晶シリコン、ホウ素ドープ結晶シリコンまたはホウ素ドープ結晶多孔質シリコンが挙げられる。一実施形態では、シリコンベース電極110として、1×1019atoms/cm~3×1020atoms/cmのホウ素ドーパント濃度を有するホウ素ドープ結晶シリコンを使用する。
【0041】
「低抵抗ドープ結晶シリコン」という用語は、2018年7月3日に出願された「Battery Structure with Anode Structure Containing a Porous Region and Method of Operation」と題する米国シリアル番号16/026,461に定義されるように、単位構造(すなわち、モノリス構造)であり非多孔質領域および多孔質領域を含むシリコンベース電極110を示し、その内容および開示の全体は参照により本書に組み込まれるものとする。
【0042】
シリコンベース電極110/110Uとして使用できる低抵抗ドープ結晶シリコンは、標準的な有機洗浄プロセスを用いて洗浄されたp型シリコン材料の少なくとも上部領域を含む基板を、濃縮HF(49%)の溶液に浸し、白金をアノード、基板をカソードとして電流を流す陽極酸化処理を用いて製造することができる。陽極酸化処理は、0.05mA/cm~150mA/cmの電流密度で動作する定電流源で実施され、ここで、mAはミリアンペアである。いくつかの例では、電流密度は、1mA/cm、2mA/cm、5mA/cm、50mA/cm、または100mA/cmである。好ましい実施形態では、電流密度は、1mA/cm~10mA/cmである。電流密度は、1秒~5時間まで印加することができる。いくつかの例では、電流密度は、5秒、30秒、20分、1時間、または3時間まで印加されてもよい。一実施形態において、電流密度は、10秒~4800秒、具体的には、1019atoms/cmの範囲のドーピングレベルについて印加されてもよい。陽極酸化処理は、典型的には、(20℃)~(30℃)の公称室温で、または室温からわずかに上昇した温度で行われる。陽極酸化処理の後、構造は、典型的には、脱イオン水で洗浄され、次いで乾燥される。
【0043】
半誘電体層111(111U)は、電極対面131、電極界面131/151(それぞれ131U/151)において、シリコンベース電極110(それぞれ110U)によく付着する薄い層121である。半誘電体層111の厚さ121は、トレードオフを伴う。半誘電体層111は電気絶縁体であるため、通常、電極対面131に接する誘電体材料を用いることで、電極界面131/152(131U/152U)、およびシリコンベース電極110と溶融イオン導電層112との間の抵抗/インピーダンスを増加させることになる。しかし、半誘電体層111を非常に薄い121に保つことで、この電極界面131/152での抵抗が減少する。それでも半誘電体層111の厚さ121は、シリコンベース電極110への強い接着を可能にし、電極対面131全体にわたって均一な接触を維持するのに十分な大きさである必要がある。いくつかの実施形態では、半誘電体層111の厚さ121は、15ナノメートル(nm)~30(nm)の間である。他の実施形態では、厚さ121は、15nmと23nmの間であり、他の実施形態では、厚さ121は、18nmと23nmの間である。
【0044】
いくつかの実施形態では、半誘電体層111は、リチウムを含む誘電体からなる。いくつかの実施形態では、半誘電体層111は、フッ化リチウム(LiF)からなる。フッ化リチウム半誘電体層111は、シリコンベース電極110の電極対面131上に直接配置された非晶質フッ化リチウム層111を形成し、電極界面131/152を形成する電極対面131に蒸発させることによってシリコンベース電極110上に堆積させることができる。
【0045】
半誘電体層111は、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ルビジウム、酸化タングステン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、および前述のいずれかのリチウム化物を含むがこれらに限定されない他の材料で作ることができる。
【0046】
蒸発は、フッ化リチウムの材料を提供することを含む。次に、原料物質は、真空中で蒸発する。真空は、フッ化リチウム、LiFの蒸気粒子をシリコンベースの電極110に移動させることを可能にし、そこで蒸気粒子は凝縮して固体状態に戻る。蒸発は、堆積される原料物質、例えばLiFを蒸発させる、少なくとも真空ポンプとエネルギー源とを含む蒸発装置を含む。蒸発プロセスには、電子ビーム蒸発、Ni、Ta、Mo、またはWボートを用いた熱蒸発、または無線周波(RF)スパッタリングが含まれるが、これらに限定されるわけではない。堆積中の圧力は、通常、10E-8~10E-4Torr、温度は875℃~1180℃に制御される。半誘電体層111の厚さ121は、蒸発した材料の質量を予め測定することで、または水晶マイクロバランスレートモニタを介して制御することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、直径5/8インチの結晶ホウ素ドープ(上記定義された濃度で)シリコンディスク110を、25秒~60秒の間に4%~10%の濃度のフッ化水素酸でエッチングし、自然酸化物層を除去した。その後、これらのシリコンディスクを直ちに鋼板105に取り付け、窒素環境のグローブボックス内にある蒸発システム内にターゲット物体として真空封入した。フッ化リチウム、LiFの層を、3.5~6.5ミリグラム(mg)の間の事前測定量のLiFを用いて熱蒸発させ、蒸発システムのユーザ制御電源に取り付けられている導電性粉末サンプルホルダーに堆積させた。LiF粉末はタングステンボート内で抵抗加熱され、2×10-5バール未満の真空下で、ボートを1100℃以上に加熱する20アンペア~50アンペアの電流を印加することによって完全に蒸発させた。
【0048】
その後、溶融イオン導電層112を半誘電体層111上に堆積して層ペア150の形成を完了する。溶融イオン導電層112の堆積により、半誘電体層111と溶融イオン導電層112との間に対界面140が形成される。対上面151は、対界面140に対向する溶融イオン導電層112の表面である。
【0049】
溶融イオン導電層112は、イオンに対して高い導電性を有する材料(特に、リチウムイオン(Li+)に対して高い導電性を有する)からなる。いくつかの実施形態では、溶融イオン導電層112は、リチウム含有塩からなる。いくつかの実施形態では、溶融イオン導電層112は、以下のリチウム含有塩のうちの1または複数からなる:ヘキサフルオロリン酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、フッ化リチウム、LiBF、LiBF、塩化リチウム、リン酸リチウム化合物、臭化リチウム化合物、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)、またはリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)。
【0050】
いくつかの実施形態では、溶融イオン導電層112は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)からなる。
【0051】
溶融イオン導電層112は、半誘電体層111上に、上記で定義したようなリチウム含有塩の層を堆積させることによって形成することができる。リチウム含有塩の層の堆積は、例えば、ドロップコーティング、次いで、半誘電体層111の表面上にリチウム含有塩の均質かつ均一な層を提供するためにドクターブレードを使用するなど、任意の従来の堆積技術を含んでもよい。次に、リチウム含有塩の層は、溶融リチウム含有塩を提供する温度まで加熱される。本願のいくつかの実施形態では、加熱は、溶融リチウムイオンを提供するために摂氏350度(℃)を超える温度で実施することができる。加熱は、例えば、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)もしくは窒素(N)またはその組み合わせなどの不活性雰囲気中で実施することができる。一例として、加熱は、窒素グローブボックス内で415℃で行われる。溶融塩は、均一な層厚122を提供する半誘電体層111上の高濃度移動性リチウムの付着(濡れ)を増加させた。次に、溶融リチウム含有塩を冷却して、溶融リチウム含有塩からなる溶融イオン導電層112を形成する。冷却は、加熱温度から公称室温まで行われ、15℃~25℃の範囲、またはそれ以下とすることができる。冷却されると、溶融イオン導電層112は、対界面140で半誘電体層111上に形成される固体連続層である。
【0052】
いくつかの実施形態では、溶融イオン導電層112は、1nm~500nmの間の厚さ122を有することができる。他の実施形態では、溶融イオン導電層112は、1nm~50nmの間の厚さ122を有することができる。他の厚さが想定される。
【0053】
セパレータ層115の反対側にある場合、層の堆積の順序は逆でもよい。
【0054】
図2は、層ペア150上に配置された1または複数のデバイス層175を有するシリコンベース電極110上に配置された単一の層ペア150の代替実施形態200の断面図である。
【0055】
高分子固体電解質(SPE)層114が含まれる。この代替実施形態200では、セパレータ層115は、高分子固体電解質(SPE)層114を、セパレータ層115の上の上部SPE層114Bとセパレータ層115の下の下部SPE層114Aに分割する。
【0056】
いくつかの実施形態では、電解質層114は、ガーネット/ポリマー電解質複合体(例えば、Li6.5LaZr1.5Ta0.512/PEO複合体)からなり、固体ポリマー電解質114およびセパレータ115として共に機能する。他の実施形態では、電解質がLi金属よりも硬い場合(例えば、スパッタリングLiPON)、電解質はセパレータと電解質の両方として機能するため、セパレータは必要ない。
【0057】
図2において、対上面151に形成された層175(例えば、114(114Aおよび114B)、115、116、118、120)をデバイス層といい、典型的には175である。デバイス層175は、複数の形態をとることができ、デバイス/実施形態100の構造に応じて複数の組み合わせとすることができる。後述するように、シリコンベース電極110、層ペア150、および1または複数のデバイス層175の組み合わせは、ペア層150とシリコンベース電極110との間の電極界面131/152における抵抗/インピーダンスの低減に起因して、構造全体を通じた抵抗/インピーダンスを低減させることになる。
【0058】
電池の一実施形態において、電解質層114は、デバイス層175として対上面151上に配置される。電解質層114は、先行技術の電池で使用される任意の既知の電解質であり得る。一実施形態では、電解質層114は、固体電解質または高分子固体電解質(SPE)からなる。
【0059】
高分子固体電解質層(SPE)114の非限定的な実施形態は、Liイオンを導電することができる任意の固体高分子材料を含む。一実施形態では、高分子固体電解質層114は、高分子構造ホスト材料、Li導電性/可塑化材料、およびリチウム含有塩の混合物からなる。
【0060】
そのような実施形態では、混合物は、35重量パーセント~50重量パーセントの高分子構造ホスト材料、15重量パーセント~25重量パーセントの導電性/可塑化材料、および30重量パーセント~45重量パーセントのリチウム含有塩を含む。いくつかの実施形態では、高分子ホスト材料および導電性/可塑化材料は、1:2~1:10の間の固体:溶媒比を有する無水アセトニトリルに溶解され、1つの好ましい比は1:3である。この混合物は、当業者によく知られている技術を利用して作ることができる。
【0061】
高分子構造ホスト材料の例示は、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(塩化ビニル)、またはポリカプロラクトンの少なくとも1つを含む。
【0062】
Li導電性/可塑化材料の例示は、スクシノニトリル(SN)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、非プロトン性有機溶媒、もしくはジメチルスルホキシド(DMSO)、またはその組み合わせの少なくとも1つを含む。
【0063】
高分子固体電解質層の形成に用いることができる例示的なリチウム含有塩としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、フッ化リチウム、LiBF、塩化リチウム、リン酸リチウム化合物、臭化リチウム化合物、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)またはリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0064】
高分子固体電解質(SPE)層114に存在するリチウム含有塩は、溶融イオン導電層112を提供する際に使用されるリチウム含有塩と同じであっても、異なっていてもよい。典型的には、高分子固体電解質層114に使用されるリチウム含有塩は、溶融イオン導電層112に使用されるリチウム含有塩と同じである。一実施形態では、高分子固体電解質層114および溶融イオン導電層112に用いられるリチウム含有塩は、いずれもリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)からなる。
【0065】
例示的な一実施形態において、シリコンベース電極110は、ホウ素ドープ結晶シリコンからなり、半誘電体層111は、LiFからなり、溶融イオン導電層112は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)からなり、高分子固体電解質層114は、ポリカプロラクトン、サクシノニトリル(SN)およびリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)の混合物からなる。
【0066】
高分子固体電解質層114は、ドロップキャスト、スピンコーティング、ドクターブレード等の堆積プロセスを利用して形成することができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、任意の界面層116は、高分子固体電解質層114上に形成され得る。任意の界面層116は、1nm~50nmの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、界面層116は省略される。存在する場合、界面層116は、高分子固体電解質層114と対向電極118との間に界面116を形成する。
【0068】
いくつかの実施形態では、界面層116は、電気化学サイクルに伴ってカソード/電解質界面に発達する固体電解質界面相(SEI)層である。界面層116は、Liイオンに対しては導電性であるが、電子に対しては導電性ではない。
【0069】
いくつかの実施形態(典型的には、対向電極118がシリコンベース電極110を作る材料と同様または同じシリコン含有材料からなる場合に用いられる)において、界面層116はリチウム含有塩からなる。界面層116を作るリチウム含有塩は、上述した溶融イオン導電層112に用いられるリチウム含有塩のうちの1または複数を用いることができる。一実施形態では、界面層116と溶融イオン導電層112は、同じリチウム含有塩からなる。代替的な実施形態では、溶融イオン導電層112を作るリチウム含有塩および界面層116は異なる材料である。一実施形態では、溶融イオン導電層112および界面層116は、共にリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)からなる。
【0070】
いくつかの実施形態(典型的には、対向電極118がシリコンベース電極110を作る材料と同様または同じシリコン含有材料からなる場合に使用される)では、界面層116は、ポリマー内に混合されたリチウム含有塩からなる。一実施形態では、界面層は、LiTFSIリチウム塩を混合したポリアニリンからなる。
【0071】
いくつかの実施形態(典型的には、対向電極118がカソード材料または電極材料からなる場合に用いられる)では、界面層116は、例えば、炭素(C)ベースの材料、金(Au)または例えば酸化アルミニウム等の誘電体酸化物材料等の界面添加材料からなる。界面層116を作る材料は、限定はされないが、LiNbO、LiZrO、LiSiO、またはLiPOなど、電気絶縁性の成分だけでなくLiイオン導電性の成分の任意の組み合わせとの混合物であっても良い。
【0072】
選択された界面層116の材料に依存するように、界面層116は、例えば、化学気相成長(CVD)、プラズマ強化化学気相成長(PECVD)、蒸発、電気化学メッキ、ドロップキャスト、スピンコーティング、または原子層堆積(ALD)を含む堆積プロセスを使用して形成することが可能である。
【0073】
シリコンベース電極110が電極極性を有する実施形態では、対向電極118は、電極極性とは反対の対向電極極性を有する。本願のいくつかの実施形態では、シリコンベース電極110はアノード電極であってよく、対向電極118はカソード電極であってよい。本願の他の実施形態では、シリコンベース電極110はカソード電極であってよく、一方、対向電極118はアノード電極であってよい。
【0074】
対向電極118は、高分子固体電解質(SPE)層114上、または任意選択的に界面層116上に形成することができる。対向電極118は、アノード電極またはカソード電極として機能することができるが、典型的には、対向電極18は、リチウムホスティング電極、例えば、カソードである。
【0075】
シリコンベース電極110がアノード電極である実施形態では、対向電極118はカソード電極である。このような実施形態では、カソード電極(すなわち、対向電極118)も、シリコンベース材料からなる場合がある。対向電極118がシリコンベース材料からなる場合、対向電極118の材料は、シリコンベース電極110を作る材料と組成的に同じであっても、組成的に異なっていてもよく、上記のシリコンベース電極110の材料のうちの1つを使用することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、対向電極118がカソード電極118として機能する場合、カソード電極118を作る材料は、リチウム含有カソード材料である。リチウム含有カソード材料は、例えば、リチウムベース混合酸化物などのリチウム含有材料を含んでもよい。リチウム含有カソード材料として採用され得るリチウムベース混合酸化物の例としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、リチウムマンガンオキシフルオライド(Li2MnO2F)、五酸化バナジウムリチウム(LiV)、ニッケルマンガンコバルトリチウム(NMC)、ニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、硫黄ベース材料とリチウムおよび鉄などの構造支持元素の任意の組み合わせ、またはリン酸鉄リチウム(LiFePO)などがあるが、これらに限定されない。
【0077】
いくつかの実施形態では、例えばポリマーまたは液体電解質114が使用されるとき、リチウム含有カソード(対向電極118)材料の層は、スラリーキャスティング、積層およびカレンダリング、または電気めっきなどの堆積プロセスを使用して形成されてもよい。一実施形態では、リチウム含有カソード材料の層は、任意の従来の前駆体原料または前駆体原料の組み合わせを使用して非液体ベースの電解質を使用する場合に、スパッタリングによって形成される。一例では、リチウムコバルト混合酸化物を形成する際に、リチウム前駆体原料とコバルト前駆体原料とが採用される。
【0078】
スパッタリングは、不活性ガスと酸素との混和物中で行うことができる。そのような実施形態では、不活性ガス/酸素の混和物の酸素含有量は0.1原子パーセント~70原子パーセントとすることができ、混和物の残りは不活性ガスを含む。使用され得る不活性ガスの例には、酸素と組み合わせたアルゴン、ヘリウム、ネオン、窒素またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0079】
いくつかの実施形態では、リチウム含有カソード118材料の層は、電気化学的に活性な[カソード材料、電子導電材料(例えば、炭素ベース材料)]および不活性な(バインダー材料)成分の混合物を含み得るスラリーキャストによって形成されてもよい。このような層の厚さは、5マイクロメートル~500マイクロメートルの範囲となる可能性がある。これらのスラリーは、リチウムベースの塩と共に、電解質成分を混合物中に有することもできる。
【0080】
シリコンベース電極110がカソード電極である実施形態では、対向電極118はアノード電極である。このような実施形態では、アノード電極(すなわち、対向電極118)は、第2のシリコンベース電極であってもよい。この第2のシリコンベース電極118は、シリコンベース電極110と組成的に同じであってもよいし、組成的に異なるものであってもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、アノード電極(すなわち、対向電極118)は、リチウムイオン源材料またはリチウムインターカレーション活性材料を含む。アノード電極118として使用され得る材料の例としては、リチウム金属、例えばLiSiなどのリチウムベース合金、プレリチウムカーボンベース材料、プレリチウムシリコンベース材料、または例えばリチウムチタン酸化物(LiTiO)などのリチウムベース混合酸化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アノード電極は、当業者によく知られている堆積技術を利用して形成することができる。いくつかの実施形態では、アノード電極は、スパッタリングによって形成することができる。
【0082】
集電体120または対向電極118の接点120は、対向電極118の上に形成されてもよい。集電体120/対向電極接点120は、電極接点105を作る材料と同様または同一の1または複数の導電性材料からなる。いくつかの実施形態では、対向電極接点120は、当業者によく知られた技術を用いて形成することができる。
【0083】
図2に示された実施形態では、高分子固体電解質層は、下部領域14Aおよび上部領域14Bを有し、下部領域114Aと上部領域114Bとの間にセパレータ(または誘電体領域)115が存在する。セパレータ(または誘電体領域)115は、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリエチレンオキシド(PEO)ベースの共重合体マトリクスまたは構造膜、四級化ポリスルホン膜、エレクトロスパンポリニデンフロライド、またはメチルメタクリレート(MMA)/ポリエチレン(PE)複合体の少なくとも1つからなる場合がある。
【0084】
セパレータ層115は、シリコンベース電極110を対向電極118から電気的に絶縁している。すなわち、セパレータ層115は、シリコンベース電極110と対向電極118との間で電子が流れることを実質的に妨げる。しかしながら、セパレータ層115は、イオン、例えばリチウムイオン(Li+)の通過を許容している。したがって、セパレータ層115は、あらゆる電子電流を実質的に妨げながら、イオン電流を流すことを許容する。液体電解質116が採用されるいくつかの実施形態では、セパレータ材料は、液体透過性膜、例えば、ナフィオンからなる場合がある。
【0085】
いくつかの実施形態では、セル200は、マイクロ抵抗器として使用することができる。例えば、リチウムが電極にインターカレートされると、セルの抵抗が変化する。電極110に移動させたリチウムの量を制御し、その量を一定に保つことによって、セル200は特定の抵抗または抵抗状態を有する。セルの抵抗状態を作成または変更することによって、デバイスは、セル内に保持される抵抗の状態としてメモリが格納される抵抗ベースのコンピューティングデバイスとして使用することができる。いくつかの実施形態では、可変抵抗状態セルは、カソード118、電解質114、およびホストアノード(例えば、シリコン、炭素)110を有する。
【0086】
図3は、シリコンベース電極110の電極対面131上に配置され、付着しているリチウム(Li)化合物、例えばフッ化リチウム、LiFからなる薄い半誘電体層111を示す顕微鏡写真300である。半誘電体層111の厚さ121は、23.29nmである。なお、この顕微鏡写真300では、溶融イオン導電層112は示されておらず、層ペア150は形成されていない。
【0087】
顕微鏡写真300では、半誘電体層111とシリコンベース電極110との接着性が優れていることは確認できる。
【0088】
半誘電体層111は、上述したように、LiF粉末5.7mgを蒸発システムで30アンペア~33アンペアで蒸発させ、電極対面131の表面152にLiFを凝縮させることによって作製された。
【0089】
図4は、層ペア150上に配置された1または複数のデバイス層175を有するシリコンベース電極110上に配置された層ペア150を示す顕微鏡写真400である。顕微鏡写真は、対称セルの解体後の構造400、すなわちEIS試験後の構造100を表す。対称セル100の上半分(「U’s」で指定)は、対称セル100の切断中に分離され、それによって対称セル100の半分のみが表示される。
【0090】
半誘電体層111は、図3で説明したように、LiF粉末を蒸発、凝縮させることによって作られる。さらに、溶融イオン導電層112は、LiTFSI塩を蒸着し、溶融相が半誘電体層111上によく付着した溶融イオン導電層112を形成するまで加熱して、層ペア150を形成することにより作製される。層ペア150は、上述したように、シリコンベース電極110の上に形成される。半誘電体層111の厚さ121は26.04nmであり、溶融イオン導電層112の厚さ122は39.75nmである。電極界面131/152を示す。
【0091】
デバイス層175である相間層425は、セルが完成すると構造体400全体に材料、イオン、および電子が移動することによって形成され、デバイス構造体400の2つの電極間に固有の電圧差を含む。さらに、EIS測定で使用される小さな印加電位振幅は、システム内のLiイオンの動員を促進することができ、したがって、相間層425の形成も促進することができる。典型的には、電解質材料114と電極表面110/110Uとの反応により、相間層425が発生し、相間層425が形成される。固体電解質間相(SEI)層425は、電極を電気的に絶縁する一方で、イオンの電荷移動性を促進させる。この例では、相間層425は、42.49nmの厚さである。
【0092】
図5は、電気化学インピーダンス分光法(EIS)生成スペクトルのフィッティングに、使用される対称セルエネルギー貯蔵デバイス、例えば、シリコン/層ペア/SPE-PAN/層ペア/シリコンのRCモデル500である。
【0093】
一般に、EIS分析では、図6に示すように、ナイキストプロットの高周波数または最高周波数(左端のデータ点)におけるインピーダンスの実部分としてRが測定/推定される。Rは、電池のアノードとカソードなどの電極間のオーミック抵抗または直列型抵抗と呼ばれる純抵抗成分であり、しばしばセルの接触抵抗もしくは電解質の電気導電性によるセル内の電解質抵抗またはその両方と関連付けられることがある。
【0094】
一般に、モデル500における抵抗成分は、セルの電気化学モデル構成における抵抗のような要素を指し、コンデンサ素子は、所定の周波数における成分AC電流応答において抵抗素子を流れる電流に対して電圧/電流位相変化(-90度に向かって)を有するセルのインピーダンス成分を指す。例えば、高度な静電容量特性を有するEIS素子(例えば、「C」素子)は、セル100/200において、しばしば層、例えば、非親密接触(剥離層)に関連する1または複数の表面に対応する。定位相要素(CPE)は、所定の周波数範囲にわたってAC電流応答の一定の位相を維持することができるセルインピーダンスにおける素子である(しばしばin-situで成長または確立した遷移層と関連する)。これらの要素は、相間層がin-situで形成される、もしくは界面添加層がin-situまたはex-situで付着している、またはその両方である場合に、最適なRCモデルで利用されることが多い。
【0095】
このモデルは、直列またはオーミック関連抵抗Rを含み、抵抗R1とコンデンサ要素C1の並列組み合わせ、およびその関連インピーダンスと直列に、そして、抵抗R2と定位相要素CPE2の並列組み合わせと直列に接続する。また、「ワールブルグ」インピーダンス素子Ws1も直列に接続されている。
【0096】
RCモデル500における結合要素R1およびC1は、高(1MHz)から中(~100Hz)の周波数範囲にわたって所定の印加電圧(例えば、50mV)で電流として検出されるインピーダンスの実数および虚数の成分の影響を示し、電極界面131/152、すなわち半誘電体層111対底面152(または半誘電体層底面152)と電気接触する電極対面131を表すことが仮定される。したがって、RCモデルに存在するR1/C1時定数は、層ペア/シリコン界面を横切る電荷移動抵抗を代表するものである。抵抗R2と定位素子である静電容量CPE2の組み合わせのインピーダンスは、界面相425およびSPE114の界面を表すと考えられる。R2/CPE2の時定数は、in-situの界面形成により、より高いインピーダンスの大きさを表すと思われる。
【0097】
ワールブルグインピーダンス、Ws1は、電極および電解質セル構成要素を介したイオンの拡散、例えばリチウムイオンの拡散による100/200インピーダンス効果をモデル化するものである。一般に、高性能のイオン拡散を有するセルのEIS分析では、電極110/118、もしくは電解質に関連する物質輸送(電解質移動)、またはその両方に対して、中域(~100Hz)~低域(200mHz)周波数範囲にわたるセルのワールブルグインピーダンス成分は、ナイキストプロットのほぼ45度の「直線、対角線」セクションとして観察される。
【0098】
直列抵抗Rsは、セルの接触抵抗、もしくは電解質の電気導電率に起因するセル内の電解質抵抗、またはその両方に関連するインピーダンスの純粋な抵抗成分を表す。したがって、抵抗Rsの値は、セル内の電荷粒子の移動のしやすさに影響するため、電池/セル100/200で発生する電力損失および熱に重要な影響を与える。層ペア150に含まれる薄い半誘電体層111を含む本発明は、抵抗Rsの抵抗値および面積当たりの抵抗値(抵抗率)を現在公知の構造よりも5~10倍程度大幅に減少させることができる。したがって、層ペア150内に薄い半誘電体層111を使用することにより、電力損失および電池/セル100/200で発生する熱を低減することができる。
【0099】
図6は、図5で説明したEIS解析で使用したRCモデル500からの適合プロット625、615を伴うナイキストプロット600である。
【0100】
ナイキストプロット600に用いた電池構造体は、層ペア150を有するシリコンベース電極110と、ポリアクリロニトリル(PAN)セパレータを有する高分子固体電解質(SPE)とを含む対称セルで、層ペア150を有する相補的なシリコンベース電極110と一緒に挟まれたセルを有する。層ペア150の半誘電体層111は、23nmの厚さ121のLiF層であった。溶融イオン導電層112は、LiTFSI塩をその溶融温度程度にしたもの、または溶融温度を超える温度にしたものであった。SPE層114は、ポリカプロラクトン(PCI)、スクシノニトリル(SN)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)の混合物の混合物であり、飽和ポリアクリロニトリル(PAN)セパレータを含むものであった。
【0101】
ナイキストプロット600は、一連の点のプロットであり、各点、典型的には605は、セル、例えば100にわたる励起電圧の所定の周波数で測定される。各周波数において、ナイキストプロット600上の関連する点は、ナイキストプロット600のY軸626上のオームで測定される全インピーダンスの虚数成分Z”に対して、X軸624上のオームで測定されるセル(100、200)の全インピーダンスの実数成分、Z’を表す。典型的には、虚数成分Z”は、示されるように、負の値(静電容量を示す)である。低い周波数で測定された点605は、ナイキストプロット600の右側にあり、左に向かってより最初にスキャン/プロットされた点は高い周波数を有する、つまり、最高周波数は、典型的には0/0頂点に最も近い。各点605は、1つの独立した周波数で測定されたインピーダンスである。
【0102】
曲線610は、それぞれの点605で測定された正確なインピーダンスを適合させる線状曲線である。曲線615は、図5からのRCモデルから生成された、曲線610上の点605の「最良適合」曲線である。曲線615上の領域625は、ほぼ線形であり、45度付近の傾きを有する。これは、セル100/200を通るイオン、例えばリチウムイオン、Li+の輸送/拡散が、広範囲の周波数にわたって効率的であり、それによって、図5に表示されたワールブルグインピーダンス素子の使用を保証することを示す。
【0103】
この例示的な実施例では、セル全体が0ボルトにバイアスされた場合、印加電圧の周波数は50ミリボルトの励起電位振幅で1メガヘルツ~200ミリヘルツまで変化した。
【0104】
図6Aは、図6の拡大部分650のグラフであり、大きなナイキストプロット600の高~中周波数における点605およびRCモデルラインフィット615を示す。再び、各周波数において、ナイキストプロット650上の関連する点は、ナイキストプロット650のY軸665上のオームで測定される全インピーダンスの虚数成分Z”に対して、X軸664上のオームで測定されるセル(100、200)の全インピーダンスの実数成分、Z’を表す。
【0105】
このプロットにおいて、R1の値675は、シリコンベース電極110および層ペアの界面抵抗を表し、17オームと決定される。この値は、R1から指す黒い矢印で示すように、高周波領域における小さな半円の直径から抽出される。R2の値685は1114オームと決定されている。電解質および電極を介した物質輸送および拡散抵抗を表すバルクセル抵抗であるR2の値は、SPE電解質および潜在的に層ペアの厚さ121を減らすことによって、さらに減少し得ることが提案される。Rsは、最初の最も高い周波数のデータポイントからの実抵抗(X軸の値)として推定される。
【0106】
シリコンベース電極110とSPE114との間に層ペア150を含まない、同じ寸法の先行技術の対称セル/電池は、150オーム前後の範囲のR1値と4527オーム前後の範囲のR2値とを有する。したがって、層ペア1500を含むことによって、R1の値は10倍近く改善され、R2の値は約4倍改善される。
【0107】
【0108】
図7は、3次元パターニングされたフルリチウム電池セル700に用いられるシリコンベース電極上に配置された層ペア110を示すブロック図である。
【0109】
図7は、シリコンベース電極基板110/760における活性シリコン領域760A/110上に積層された活性アノード材料(LiTFSI-PANI&グラファイトスラリー)を有する新規エネルギー貯蔵デバイス700のブロック図である。活性アノード材料777は、溝750の基部と、初期電流サイクル中およびリチウム金属アノード層740の形成前に部分的にin-situ構造体700に形成される溝側壁754上とに存在する。
【0110】
本実施形態では、一例として、構造体700は、アノード777が、基板110/760の3D溝750の範囲内に完全に収まっている。この非限定的な例では、カソード接点785/118、セパレータ735/115、および電解質(732A/732B)は、溝750の外側で、フィールド756上に配置される。フィールド756は、溝750の外側にある基板760/110の表面である。さらに、活性アノード材料777、ポリマー770、および、サイクル時またはin-situ時には、リチウム金属アノード層740が、溝側壁754および溝底部771上に積層される。構造体700は、電池700内の構造体および構成要素を形成するために、循環させられた後、例えば、電池700を通して様々な振幅の電流に曝された後に示されている。
【0111】
電池構造体700は、基板760/110の溝750に部分的に封入される。ライナー/絶縁体754は、溝750の側壁751を覆い、フィールド756上で重なり合うことができる。ライナー754は、二酸化ケイ素(SiO)または窒化ケイ素(Si)、または複数の絶縁層の組み合わせのような誘電体、電気絶縁材料からなり、既知の方法によって堆積される。
【0112】
ライナー754は、溝750の側壁751上のライナー754層の間の溝底部領域770の表面である溝底部771の活性表面760A/110を覆わない。溝底部771の電気的に活性な表面760A/110は、ガルバニックサイクルによってこれらの表面で変質が起こり、最初にリチウム化基板領域760Aと溝底部771上のリチウム金属層740を形成する前に、溝750が最初に基板760/110と界面する部分である。
【0113】
いくつかの実施形態では、ペア層150は、活性表面725上と、側壁751上の絶縁層754上に部分的にまたは全体的に堆積する。さらに他の実施形態では、ペア層150は、絶縁層754上および基板760/110のフィールド756上に全体的に堆積する。ペア層150の異なる積層は、既知のマスク堆積技術によって行われる。
【0114】
いくつかの実施形態では、接着剤領域770は、溝750の溝底部771および側壁751を覆う層である。
【0115】
いくつかの実施形態では、アノード組成物(例えば、グラファイト混合物およびリチウム/電子導電性接着剤)777も溝750の側壁751を覆う。
【0116】
いくつかの実施形態では、電池構造体700は、セパレータ層735/115を有する電解質層732A/114Aおよび732B/114Bを備える。いくつかの実施形態では、電解質層732A/732Bは、例えば、上述したような高分子固体電解質(SPE)である。しかしながら、任意の電解質材料が構造体700において機能するであろう。
【0117】
カソード755/118は、導電性材料、例えばアルミニウム(Al)のような金属、もしくは上述した他の導電性材料またはその両方であるカソード接点785/120に電気的に接続されている。いくつかの実施形態では、カソード接点785/120は、コインセル導電性スペーサもしくはケーシングまたはその両方のような別の上部外側接点705に接続される。
【0118】
いくつかの実施形態では、コインセルケーシングのような底部外側接点710が基板760/110に取り付けられている。
【0119】
図8は、電池が40オームcm (2.25E-6秒の電荷移動時定数に相当)未満の電極界面抵抗率R1および2×10オームcm (1.26E-2秒の電荷移動時定数に相当)未満のバルクセル抵抗率R2を有するように層ペア150を使用してリチウム電池を製造または加工800する方法のフローチャートである。
【0120】
プロセス800は、上述したように、シリコンベース電極110上に薄型半誘電体層111を形成するステップ810から開始される。薄型半誘電体層111は、15ナノメートル(nm)および30nmの薄型半誘電体層の厚さ121を有する。
【0121】
ステップ820では、上述したように、溶融イオン導電層112を薄型半誘電体層111上に堆積させ、層ペア150を形成する。
【0122】
ステップ830では、1または複数のデバイス層が層ペア150の上に積層され、デバイス100/200/700が形成される。
【0123】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示の目的で提示されているが、網羅的であることを意図するものではなく、開示される実施形態に限定されることを意図するものでもない。説明した実施形態の範囲から逸脱することなく、多くの修正および変更が当業者には明らかであろう。例えば、本発明の実施形態に従って開示される半導体デバイス、構造、および方法は、アプリケーション、ハードウェア、もしくは電子システム、またはその組み合わせにおいて採用することができる。本発明の実施形態を実装するための適切なハードウェアおよびシステムは、パーソナルコンピュータ、通信ネットワーク、電子商取引システム、携帯通信デバイス(例えば、携帯電話およびスマートフォン)、ソリッドステートメディアストレージデバイス、エキスパートおよび人工知能システム、機能回路等を含むことができるが、これらに限定されるものではない。半導体デバイスを組み込んだシステムおよびハードウェアは、本発明の実施形態として企図されている。
【0124】
本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、市場で見られる技術に対する実際の適用または技術的改善を説明するため、または当業者が本明細書に記載の実施形態を理解できるようにするために選択された。実質的に同じ機能を果たし、実質的に同じ方法で働き、実質的に同じ用途を有し、もしくは同様のステップを実行する、またはその組み合わせである異なる用語で説明されたデバイス、コンポーネント、要素、特徴、装置、システム、構造、技術、および方法は、本発明の実施形態として企図されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図6A
図7
図8