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特許7705231少なくとも2つのモータ付きのブレーキ装置のための制御システム、および、少なくとも2つのモータ付きのブレーキ装置を装備する車両のための自律的なブレーキ方法
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  • 特許-少なくとも2つのモータ付きのブレーキ装置のための制御システム、および、少なくとも2つのモータ付きのブレーキ装置を装備する車両のための自律的なブレーキ方法 図1
  • 特許-少なくとも2つのモータ付きのブレーキ装置のための制御システム、および、少なくとも2つのモータ付きのブレーキ装置を装備する車両のための自律的なブレーキ方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-01
(45)【発行日】2025-07-09
(54)【発明の名称】少なくとも2つのモータ付きのブレーキ装置のための制御システム、および、少なくとも2つのモータ付きのブレーキ装置を装備する車両のための自律的なブレーキ方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/22 20060101AFI20250702BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20250702BHJP
   B60T 13/12 20060101ALI20250702BHJP
   B60T 8/94 20060101ALI20250702BHJP
【FI】
B60T17/22 Z
B60T13/74 D
B60T13/12
B60T8/94
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020159300
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2021062861
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】10 2019 215 189.2
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】マルカルト マルティン
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-509329(JP,A)
【文献】特開2013-240230(JP,A)
【文献】特開2015-110378(JP,A)
【文献】特開2009-040290(JP,A)
【文献】特表2016-515493(JP,A)
【文献】米国特許第09145119(US,B2)
【文献】特開2013-041549(JP,A)
【文献】国際公開第2018/192986(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/011538(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/18-17/22
B60T 13/12-13/22
B60T 13/74
B60T 8/92- 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の少なくとも2つのモータ付きのブレーキ装置(12,14)のための制御システム(10)であって、
前記制御システム(10)は、2つの前記モータ付きのブレーキ装置(12,14)のうちの少なくとも一方を、自律的に実行されるべき車両の目標減速に関して自己判定または提供される少なくとも1つの目標量(16)を考慮したうえで、制御される少なくとも1つの前記モータ付きのブレーキ装置(12,14)によって車両を制動可能であるように制御可能である自律的なモードで2つの前記モータ付きのブレーキ装置(12,14)を少なくとも作動させるために設計される、制御システムにおいて、
前記制御システム(10)は、自律的なモードの間に追加的に、2つの前記モータ付きのブレーキ装置のうちの第1のブレーキ装置(12)における少なくとも1つの機能障害の存在に関して自己判定または提供される情報(24)が存在するとき、前記第1のモータ付きのブレーキ装置(12)を所定のテスト機能を実行するように制御し、
テスト機能を実行するように制御された前記第1のモータ付きのブレーキ装置(12)により実行される実際機能に関して自己判定または提供される少なくとも1つのセンサ値(28)が少なくとも1つの所定の標準値範囲内にある限りにおいて、2つの前記モータ付きのブレーキ装置のうちの第2のブレーキ装置(14)を少なくとも1つの目標量(16)を考慮したうえで制御可能であり、それにより制御される前記第2のモータ付きのブレーキ装置(14)によって車両を制動可能である自律的なモードを続行するように設計されることを特徴とする制御システム。
【請求項2】
少なくとも1つの前記センサ値(28)が少なくとも1つの標準値範囲外にある限りにおいて、前記制御システム(10)は、前記第2のモータ付きのブレーキ装置(14)を遅滞なく制御して、制御される前記第2のモータ付きのブレーキ装置(14)により車両を停止へと移行可能であるようにするために設計される、請求項1に記載の制御システム(10)。
【請求項3】
車両のためのブレーキシステムにおいて、
請求項1または2に記載の制御システム(10)と、
協同作用する前記第1のモータ付きのブレーキ装置(12)と、
協同作用する前記第2のモータ付きのブレーキ装置(14)とを有しているブレーキシステム。
【請求項4】
前記第2のモータ付きのブレーキ装置(14)は、ポンプモータにより作動可能な少なくとも1つのポンプを有する液圧ユニットを含む、請求項3に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記第1のモータ付きのブレーキ装置(12)は前記液圧ユニットのマスタブレーキシリンダに前置された電気機械式のブレーキブースタを含む、請求項4に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記第2のモータ付きのブレーキ装置(14)は少なくとも1つのセンサデバイス(30)を有し、該センサデバイスによって少なくとも1つの前記センサ値(28)を測定可能であり、前記制御システム(10)に提供可能である、請求項4または5に記載のブレーキシステム。
【請求項7】
前記液圧ユニットの表面および/または内部に少なくとも1つの液圧式の圧力センサが少なくとも1つの前記センサデバイス(30)として配置され、該センサデバイスによって少なくとも1つの前記センサ値(28)を測定可能であり、前記制御システム(10)に提供可能である、請求項6に記載のブレーキシステム。
【請求項8】
2つのモータ付きのブレーキ装置(12,14)を装備する車両のための自律的なブレーキ方法であって、
2つの前記モータ付きのブレーキ装置(12,14)が次の各ステップをもって車両の走行中に自律的なモードで作動し、
自律的に実行されるべき車両の目標減速に関わる少なくとも1つの目標量(16)が自律的に規定され(S1a)、
2つの前記モータ付きのブレーキ装置(12,14)のうちの少なくとも一方が少なくとも1つの前記目標量(16)を考慮したうえで制御され、それにより制御される少なくとも1つの前記モータ付きのブレーキ装置(12,14)によって車両が制動される(S1b)方法において、
次の各ステップ、
2つの前記モータ付きのブレーキ装置のうち第1のブレーキ装置(12)における少なくとも1つの機能障害の存在が確認されたとき、所定のテスト機能を実行するように前記第1のモータ付きのブレーキ装置(12)が制御され(S3a)、
テスト機能を実行するように制御された前記第1のモータ付きのブレーキ装置(12)により実行された実際機能に関わる少なくとも1つのセンサ値(28)が判定され(S3b)、
少なくとも1つの前記センサ値(28)が少なくとも1つの所定の標準値範囲内にある限りにおいて、2つの前記モータ付きのブレーキ装置のうちの第2のブレーキ装置(14)が少なくとも1つの前記目標量(16)を考慮したうえで制御されて、制御される前記第2のモータ付きのブレーキ装置(14)によって車両が制動される自律的なモードが続行される(S5)を有することを特徴とする方法。
【請求項9】
少なくとも1つの前記センサ値(28)が少なくとも1つの標準値範囲外にある限りにおいて、前記第2のモータ付きのブレーキ装置(14)が遅滞なく制御されて、制御される前記第2のモータ付きのブレーキ装置(14)によって車両が停止へと移行される(S7)、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの前記センサ値(28)は、少なくとも1つの液圧式の圧力センサによって、少なくとも1つの減速センサによって、および/または少なくとも1つのホイール回転数センサによって測定される、請求項8または9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つのモータ付きのブレーキ装置のための制御システム、および、車両のためのブレーキシステムに関する。同様に本発明は、2つのモータ付きのブレーキ装置を装備する車両のための自律的なブレーキ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術より、モータ付きの2つのブレーキ装置を装備する車両のためのブレーキシステムが知られている。たとえば特許文献1のブレーキシステムは、そのマスタブレーキシリンダに前置された電気機械式のブレーキブースタをその第1のモータ付きのブレーキ装置として有するとともに、ポンプモータにより作動可能な少なくとも1つのポンプを有する液圧ユニットを第2のモータ付きのブレーキ装置として有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102012222974号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明は、請求項1の構成要件を有する、少なくとも2つのモータ付きのブレーキ装置のための制御システム、請求項3の構成要件を有する、車両のためのブレーキシステム、および請求項8の構成要件を有する、2つのモータ付きのブレーキ装置を装備する車両のための自律的なブレーキ方法を提供する。
【0005】
本発明は、2つのモータ付きのブレーキ装置を装備する車両を自律的に制動可能である自律的なモードの実施可能性を拡張するための手段を提供するものであり、それは、2つのモータ付きのブレーキ装置のうちの第1のブレーキ装置に少なくとも1つの機能障害が生じたときにも、良好な走行快適性と高い安全性水準を確保したうえで自律的なモードを依然として続行可能であることによってであり、ただし第1のモータ付きのブレーキ装置は依然として「リザーバブレーキ」(「バックアップブレーキ」)として利用可能である。自律的なモードとは、特に、自律的な速度制御モードまたは自律的な走行モードであると理解することができる。このように本発明は、車両の自律的な走行モード/自律的な走行の実施可能性の向上のためにも寄与する。それに伴って本発明は、本発明を適用する車両を自律的に走行させるための利用可能性も高める。
【0006】
指摘しておくと、2つのモータ付きのブレーキ装置を装備する車両での本発明の適用は、通常、ハードウェアの拡張やそれぞれの車両のセンサ機構の拡張を必要としない。その代わりに本発明は、従来技術からすでに知られている、すでに多くの場合に従来から車両に組み込まれている2つのモータ付きのブレーキ装置を装備する車両のハードウェアとセンサ機構によって、実施することができる。したがって本発明は低コストであり、2つのモータ付きのブレーキ装置を装備する車両の総重量を増やすことなく実施可能である。たとえば本発明は、本発明に基づく制御システムの相応の構成/プログラミングによって具体化可能である。
【0007】
制御システムの好ましい実施形態では、少なくとも1つのセンサ値が少なくとも1つの標準値範囲外にある限りにおいて、制御システムは、第2のモータ付きのブレーキ装置を遅滞なく制御して、制御される第2のモータ付きのブレーキ装置によって車両を停止へと移行可能であるように設計される。このようにして、第2のモータ付きのブレーキ装置が故障した場合に備えての「リザーバブレーキ」(「バックアップブレーキ」)として第1のモータ付きのブレーキ装置を利用できなくなった車両が、迅速に停止へと移行されることを保証可能である。このことは、場合により車両の中にいる乗員や他の交通関与者にとっての高い安全性水準を保証する。
【0008】
このような種類の制御システム、協同作用する第1のモータ付きのブレーキ装置、および協同作用する第2のモータ付きのブレーキ装置を有する車両のためのブレーキシステムも、上記で説明した利点をもたらす。
【0009】
たとえば第2のモータ付きのブレーキ装置は、ポンプモータによって作動可能な少なくとも1つのポンプを有する液圧ユニットを含むことができる。このような種類の液圧ユニットはブレーキシステムで頻繁に使用されているので、このようにして本発明の適用のために、数多くの標準的なブレーキシステム型式を利用することができる。
【0010】
第1のモータ付きのブレーキ装置は、特に、液圧ユニットのマスタブレーキシリンダに前置された電気機械式のブレーキブースタを含むことができる。このような種類の電気機械式のブレーキブースタは、液圧ユニットと好ましく協同作用することができる。
【0011】
第2のモータ付きのブレーキ装置は少なくとも1つのセンサデバイスを有するのが好ましく、これによって少なくともセンサ値を測定可能であり、制御システムへ提供可能である。このように、第2のモータ付きのブレーキ装置は、通常、第1のモータ付きのブレーキ装置における少なくとも1つの機能障害の存在に関わりがなく/ほぼ関わりがないので、第2のモータ付きのブレーキ装置の少なくとも1つのセンサデバイスは、第2のモータ付きのブレーキ装置が故障した場合に第1のモータ付きのブレーキ装置を少なくともさらに「リザーバブレーキ」(「バックアップブレーキ」)として依然として利用できるか否かをチェックするために高い信頼度で利用することができる。少なくとも1つのセンサデバイスは、たとえば少なくとも1つの減速センサ、特に少なくとも1つのホイール回転数センサおよび/または少なくとも1つのホイール回転数検出器のような少なくとも1つのホイールセンサ、少なくとも1つの液圧式の圧力センサ、および/または周囲監視のために設計されたカメラシステムであってよい。
【0012】
液圧ユニットの表面および/または内部に、少なくとも1つの液圧式の圧力センサが少なくとも1つのセンサデバイスとして配置されるのが好ましく、これによって少なくとも1つのセンサ値を測定可能であり、制御システムへ提供可能である。少なくとも1つの液圧式の圧力センサにより、テスト機能として液圧ユニットの少なくとも1つの部分容積部で圧力を若干上昇させるように制御される電気機械式のブレーキブースタが、これを「リザーバブレーキ(「バックアップブレーキ」)として依然として適しているようにする、ある程度の最低機能性を依然として備えているか否かを高い信頼度でチェックすることができる。このように、通常はすでに液圧ユニットの表面/内部に組み付けられているセンサ型式を、本発明の実施のために利用することができる。
【0013】
さらに、2つのモータ付きのブレーキ装置を装備する車両のための自律的なブレーキ方法の実施も、上に説明した利点をもたらす。明文をもって指摘しておくと、この自律的なブレーキ方法は、上に説明した制御システムおよびブレーキシステムの各実施形態に準じて発展形にすることができる。
【0014】
本発明のその他の構成要件と利点は、以下に図面を参照しながら説明する。図面は次のものを示す:
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】2つのモータ付きのブレーキ装置を装備する車両のための自律的なブレーキ方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。
図2】制御システムないしこれと協同作用するブレーキシステムの実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、2つのモータ付きのブレーキ装置を装備する車両のための自律的なブレーキ方法の実施形態を説明するためのフローチャートを示している。
【0017】
以下に説明する自律的なブレーキ方法により、車両の2つのモータ付きのブレーキ装置を車両の走行中に自律的なモードで作動する。自律的なモードとは、車両が運転者のブレーキ希望設定なしに、すなわちたとえばブレーキペダルなどの車両のブレーキ操作部材の運転者による操作なしに制動可能である/制動される、自律的な/自動化されたモードであると理解される。自律的なモードとは、特に、たとえば距離制御クルーズコントロールモードなどの自律的な/自動化された速度制御モード、または自律的な/自動化された走行モードであると理解することができる。自律的な/自動化された走行モードとは、特に、ドライバーレス走行モードであると理解することができる。
【0018】
指摘しておくと、以下に説明する自律的なブレーキ方法の実施可能性は、それぞれの車両/自動車の特別な車両型式/自動車型式に限定されるものではない。自律的なブレーキ方法の実施可能性は、通常、それぞれの車両に2つのモータ付きのブレーキ装置を装備することを必要とするにすぎない。たとえば、ポンプモータによって作動可能な少なくとも1つのポンプを有する液圧ユニットと、液圧ユニットのマスタブレーキシリンダに前置された電気機械式のブレーキブースタとを、モータ付きのブレーキ装置として自律的なブレーキ方法により作動させることができる。
【0019】
自律的なモードで実行される車両の走行中、まず方法ステップS1が実行されて、場合により複数回繰り返される。方法ステップS1の部分ステップS1aで、自律的に実行されるべき車両の目標減速に関わる少なくとも1つの目標量が自律的に規定される。そのために、たとえば車両のセンサシステムおよび/または評価システムによって、および/または車両外部のセンサシステムおよび/または評価システムによって、車両により実行されるべき可能性のある目標減速に関して車両の少なくとも1つの部分的周辺が検査される。少なくとも1つの目標量は車両のセンサシステムおよび/または評価システムによって、および/または車両外部のセンサシステムおよび/または評価システムによって、相応に減速された車両が所定の目標走行形態を順守するように、または好ましい走行形態を実行するように、自律的に規定されるのが好ましい。車両の少なくとも部分的周辺で生じている状況の観点からして車両の一定の速度保持または加速が好ましい場合には、部分ステップS1aで、少なくとも1つの目標量をゼロに等しい目標減速に準じて自律的に規定することもできる。
【0020】
方法ステップS1の別の部分ステップS1bで、2つのモータ付きのブレーキ装置のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの目標量を考慮したうえで、制御される少なくとも1つのモータ付きのブレーキ装置によって車両が制動されるように制御される。2つのモータ付きのブレーキ装置のうちの少なくとも1つの制御は、制御される少なくとも1つのモータ付きのブレーキ装置によって、少なくとも1つの目標量に相当する実際減速をもって車両が制動されるように行われるのが好ましい。
【0021】
それが望まれる限りにおいて、2つのモータ付きのブレーキ装置のうちの第1のブレーキ装置によって車両の規定された目標減速を単独でもたらすことが可能である間は、制御される第1のモータ付きのブレーキ装置のみによって車両を制動することができる。このケースでは、第1のモータ付きのブレーキ装置は方法ステップS1の間に「アクティブなブレーキ」または「マスタ・ブレーキ」として車両の制動のために利用され、それに対して、車両の2つのモータ付きのブレーキ装置のうちの第2のモータ付きのブレーキ装置は方法ステップS1の実行中、「リザーバブレーキ」、「非常ブレーキ」(「バックアップブレーキ」)、または「補足ブレーキ」としてのみ存在する。しかしながら別案では、第1のモータ付きのブレーキ装置と第2のモータ付きのブレーキ装置を、方法ステップS1の実行にあたって車両の制動のために一緒に利用することもできる。
【0022】
方法ステップS1の間に、第1のモータ付きのブレーキ装置に少なくとも1つの機能障害が存在するか否かが判定される任意選択の部分ステップS1cを少なくとも1回実行することもできる。第1のモータ付きのブレーキ装置の少なくとも1つの機能障害の存在とは、第1のモータ付きのブレーキ装置の故障であると理解することもできる。部分ステップS1cを実行するために、第1のモータ付きのブレーキ装置のセンサ機構を利用することができる。たとえば電気機械式のブレーキブースタとして施工されている第1のモータ付きのブレーキ装置では、電気機械式のブレーキブースタのモータの巻線に印加される電圧をセンサ機構によって測定し、所定の電圧閾値と比較することができる。このケースでは電圧閾値は、巻線に印加される電圧が所定の電圧閾値を下回っているときに、電気機械式のブレーキブースタの機能障害を少なくとも示唆する過小電圧が、電気機械式のブレーキブースタのモータに高い確率で存在するように設定されていてよい。
【0023】
第1のブレーキ装置に少なくとも1つの機能障害の存在が確認されると、方法ステップS1から方法ステップS2へと飛ぶ。方法ステップS2は、所定の、または待機される移行時間インターバルにわたって実行され/反復される。方法ステップS2が実行されるとき、すでに上で説明した方法ステップS2の部分ステップS1aが実行されるたびに方法ステップS2の部分ステップS2aが実行され、そこで少なくとも1つの目標値を考慮したうえで第2のモータ付きのブレーキ装置のみが制御されて、制御される第2のブレーキ装置によってのみ車両が制動されるようにされる。このように方法ステップS2中には、第2のモータ付きのブレーキ装置が「アクティブなブレーキ」または「マスタ・ブレーキ」として車両の制動のために利用される。このことは、第1のモータ付きのブレーキ装置の格下げと呼ぶこともできる。
【0024】
さらに、第1のモータ付きのブレーキ装置で少なくとも1つの機能障害の存在が認識されると、方法ステップS3が実行される。たとえば方法ステップS3は、第1のモータ付きのブレーキ装置における少なくとも1つの機能障害の認識の直後に始めることができる。しかし別案として、第1のモータ付きのブレーキ装置における少なくとも1つの機能障害の存在の認識後に、さらに所定の待機時間を待機してから、方法ステップS3の実行を始めることもできる。
【0025】
方法ステップS3の部分ステップS3aで、第1のモータ付きのブレーキ装置が所定のテスト機能を実行するように制御される。その実行のために、第1のモータ付きのブレーキ装置が制御されるテスト機能とは、第1のモータ付きのブレーキ装置によってテスト機能を実際に実行可能である限りにおいて車両の少なくとも微低速化をもたらす、第1のモータ付きのブレーキ装置のアクションであると理解することができる。このようにテスト機能は、車両の「試験ブレーキング」をもたらすことができる。車両は、テスト機能を(実際に)実行する第1のモータ付きのブレーキ装置によって、車両乗員もその他の交通関与者も車両の低速化に基づいて苛立つことがない程度にのみ微減速されるのが好ましい。たとえば電気機械式のブレーキブースタとして構成された第1のモータ付きのブレーキ装置では、電気機械式のブレーキブースタのモータがテスト機能として制御されて、モータ動作により(後置されている)マスタブレーキシリンダの少なくとも1つの位置調節可能なピストンが位置調節されて、マスタブレーキシリンダで生じているマスタブレーキシリンダ圧力/フィード圧力が、および通常であればマスタブレーキシリンダに接続される少なくとも1つのホイールブレーキシリンダにおける少なくとも1つのブレーキ圧も、(わずかに)上昇するようにされる。
【0026】
さらに、方法ステップS3の別の部分ステップS3bで、テスト機能の実行のために制御された第1のモータ付きのブレーキ装置により実行された実際機能に関わる少なくとも1つのセンサ値が判定/測定される。判定/測定される少なくとも1つのセンサ値とは、テスト機能を(実際に)実行する第1のモータ付きのブレーキ装置によって上昇または低下されたセンサ量であると理解される。少なくとも1つのセンサ値を測定するために、第2のモータ付きのブレーキ装置の少なくとも1つのセンサデバイス、および/または車両の少なくとも1つのブレーキシステム外部のセンサが利用されるのが好ましい。このように少なくとも1つのセンサ値を測定するにあたって、第1のモータ付きのブレーキ装置の少なくとも1つの機能障害の存在を判定するためにすでに利用されているセンサ機構をあらためて使用することを問題なく省略することができる。このようにして、第1のモータ付きのブレーキ装置における少なくとも1つの機能障害の存在の不当な想定につながる、第1のモータ付きのブレーキ装置のセンサ機構で生じているかもしれない不具合が、方法ステップS3により実行される第1のモータ付きのブレーキ装置のチェックにも悪影響を及ぼすことを防止可能である。このように方法ステップS3は「グッドチェック」を来たし、これによって第1のモータ付きのブレーキ装置の機能性/信頼性ばかりでなく、そのセンサ機構の機能性/信頼性も(間接的に)チェック可能である。
【0027】
少なくとも1つのセンサデバイスは、たとえば少なくとも1つの減速センサ、特に少なくとも1つのホイール回転数センサおよび/または少なくとも1つのホイール回転数検出器のような少なくとも1つのホイールセンサ、少なくとも1つの液圧式の圧力センサ、および/または周囲監視のために設計されたカメラシステムであってよい。ただし、ここに列挙した少なくとも1つのセンサデバイスの例は、完結したものとして解釈されるべきではない。
【0028】
少なくとも1つのセンサ値は、少なくとも1つの液圧式の圧力センサによって、少なくとも1つの減速センサ/加速度センサによって、および/または少なくとも1つのホイールセンサによって測定されるのが好ましい。電気機械式のブレーキブースタとして構成される第1のモータ付きのブレーキ装置では、たとえばマスタブレーキシリンダ圧力/フィード圧力および/または少なくとも1つのブレーキ圧の検出された上昇だけでなく、車両の検出された減速を参照しても、上に説明したテスト機能を検証することができる。このように、テスト機能を検証するために、通常はすでに車両に組み付けられているセンサ型式を利用することができる。
【0029】
方法ステップS3は、方法ステップS2の間に/移行時間インターバルの間に実行されるのが好ましい。方法ステップS2の移行時間インターバルは、方法ステップS3の開始前の所定の待機時間を待機した後でさえ、方法ステップS3が依然として方法ステップS2の実行中に行われるように相応に適合化されていてよい。このケースでは、移行時間インターバルを方法ステップS3の完了まで待機することができる。
【0030】
少なくとも1つのセンサ値が少なくとも1つの所定の標準値範囲内にある限りにおいて、方法ステップS3から(任意選択の)方法ステップS4へと飛び、そこで、第2のモータ付きのブレーキ装置が完全に故障したときでさえ第1のモータ付きのブレーキ装置による車両の停止を(第2のモータ付きのブレーキ装置の共同利用なしに)もたらすのに依然として十分である、第1のモータ付きのブレーキ装置の少なくとも1つの部分機能性が依然として成立していることが確立される。したがって、第1のモータ付きのブレーキ装置は少なくとも「リザーバブレーキ」、「非常ブレーキ」(「バックアップブレーキ」)、または「補足ブレーキ」として依然として適している。
【0031】
したがって、少なくとも1つのセンサ値が少なくとも1つの所定の標準値範囲内にある限りにおいて、自律的なモードが方法ステップS5により続行され、そこでは、第2のモータ付きのブレーキ装置が少なくとも1つの目標量を考慮したうえで制御されて、制御される第2のモータ付きのブレーキ装置によって車両が制動される。場合により、方法ステップS5で自律的なモードを「限定的な自律的な走行モード」として続行することができ、それは、たとえばすでに始まっている車両の自律的な走行を運転者側で設定された目標地で終了するため、および/あるいは、車両の自律的な走行を工場まで継続するためである。
【0032】
少なくとも1つのセンサ値が少なくとも1つの標準値範囲外にある限りにおいて、方法ステップS3から(任意選択の)方法ステップS6へと飛び、そこで、第2のモータ付きのブレーキ装置が完全に故障した場合に第1のモータ付きのブレーキ装置による車両の停止を(第2のモータ付きのブレーキ装置の共同利用なしに)もたらすのに依然として十分である、第1のモータ付きのブレーキ装置の部分機能性がまだ保証されていないと確認される。したがって、第1のモータ付きのブレーキ装置は「リザーバブレーキ」、「非常ブレーキ」(「バックアップブレーキ」)、または「補足ブレーキ」として決して利用可能ではない。
【0033】
したがって、少なくとも1つのセンサ値が少なくとも1つの標準値範囲外にある限りにおいて、方法ステップS7として、第2のモータ付きのブレーキ装置が遅滞なく制御されて、制御される第2のモータ付きのブレーキ装置によって車両が停止へと移行される。
【0034】
このように、ここで説明している自律的なブレーキ方法は、第1のモータ付きのブレーキ装置が依然として少なくとも「リザーバブレーキ」、「非常ブレーキ」(「バックアップブレーキ」)、または「補足ブレーキ」として利用可能である限りにおいて、自律的なモードで行われる走行の続行を、良好な走行快適性と高い安全性水準を保証したうえで可能にする。しかしこれに加えて自律的なブレーキ方法の実行時に、第1のモータ付きのブレーキ装置が「リザーバブレーキ」、「非常ブレーキ」(「バックアップブレーキ」)、または「補足ブレーキ」としていつ利用可能でなくなったかを認識し、場合により相応に対応をすることができる。
【0035】
図2は、制御システムないしこれと協同作用するブレーキシステムの実施形態の模式図を示している。
【0036】
図2に模式的に示す制御システム10は、車両の少なくとも2つのモータ付きのブレーキ装置12および14を自律的なモードで作動させるために設計されている。あらためて自律的なモードとは、自律的な/自動化された速度制御モード、たとえば距離制御クルーズコントロールモード、または自律的な/自動化された走行モード(ドライバーレス走行モード)であると理解することができる。そのために制御システム10は、自律モード中に2つのモータ付きのブレーキ装置12および14のうち少なくとも一方が、自律的に実行されるべき車両の目標減速に関わる少なくとも1つの目標量16を考慮したうえで、制御システム10の少なくとも1つの制御信号12aおよび/または14aによって制御可能であり/制御されるように設計される。このようにして、車両が少なくとも1つの制御されるモータ付きのブレーキ装置12および/または14によって制動可能であり/制動される。
【0037】
制御システム10とは、2つのモータ付きのブレーキ装置12および14を制御するためだけに設計された制御エレクトロニクス、特に(一体的な)制御ユニットを意味し得る。同様に制御システム10は、2つのモータ付きのブレーキ装置12および14に追加して、車両の少なくとも1つの別の車両コンポーネントをさらに制御するために構成されていてもよい。制御システム10は、特に、車両の中央の車両制御システムであってよい。
【0038】
第1のモータ付きのブレーキ装置12は、たとえば電気機械式のブレーキブースタを含むことができる。その代替または補足として、第2のモータ付きのブレーキ装置14は、ポンプモータにより作動可能な少なくとも1つのポンプを有する液圧ユニットを含むことができる。第1のモータ付きのブレーキ装置12として利用される電気機械式のブレーキブースタは、このケースでは、液圧ユニットのマスタブレーキシリンダに前置されるのが好ましい。
【0039】
少なくとも1つの目標量16が、たとえば車両のセンサシステムおよび/または評価システム18から制御システム10に提供されていてよい。同様に少なくとも1つの目標量16が、車両外部のセンサシステムおよび/または評価システム20から制御システム10に提供されていてもよい。別案として、車両のセンサシステムおよび/または評価システム18、および/または車両外部のセンサシステムおよび/または評価システム20が、車両の好ましい目標減速の規定のために適したデータ22も制御システム10に提供することができ、これを考慮したうえで、制御システム10が少なくとも1つの目標量16を自己判定する。車両のセンサシステムおよび/または評価システム18は、少なくとも1つの目標量16および/またはデータ22を車両のバス接続を介して制御システム10へ問題なく提供することができる。車両外部のセンサシステムおよび/または評価システム20はケーブルレス式のデータ伝送によって、少なくとも1つの目標量16および/またはデータ22を同じく確実に制御システム10に提供することができる。
【0040】
制御システム10は、これに加えて自律的なモード中に、2つのモータ付きのブレーキ装置のうちの第1のモータ付きのブレーキ装置12における少なくとも1つの機能障害の存在に関わる情報24が存在するとき、所定のテスト機能を実行するように第1のモータ付きのブレーキ装置12を制御するために設計される。情報24は、特に第1のモータ付きのブレーキ装置12のセンサ機構26などのセンサ機構26から、制御システム10に提供されていてよい。しかしながら別案として、センサ機構26が少なくとも1つのセンサ信号を制御システム10に出力するだけであってもよく、制御システム10が少なくとも1つのセンサ信号を参照して情報を自己判定する。
【0041】
その実行のために、第1のモータ付きのブレーキ装置12が制御システム10によって制御可能である/制御されるテスト機能とは、テスト機能を実際に第1のモータ付きのブレーキ装置12により実行可能である限りにおいて、少なくとも車両の微低速化をもたらす第1のモータ付きのブレーキ装置12のアクションであると理解することができる。上ですでに説明したとおり、たとえば電気機械式のブレーキブースタとして構成された第1のモータ付きのブレーキ装置12では、電気機械式のブレーキブースタのモータをテスト機能として制御して、生じられるモータ動作により(後置された)マスタブレーキシリンダの少なくとも1つの位置調節可能なピストンが位置調節されて、マスタブレーキシリンダで生じているマスタブレーキシリンダ圧力/フィード圧力が上昇し、および通常、マスタブレーキシリンダと接続されている少なくとも1つのホイールブレーキシリンダにおける少なくとも1つのブレーキ圧も(わずかに)上昇するようにすることができる。
【0042】
さらに制御システム10は、第1のモータ付きのブレーキ装置12に要求されるテスト機能を、制御システム10により自己判定される、または制御システム10に提供される、少なくとも1つのセンサ値28を参照して検証するように設計される。第2のモータ付きのブレーキ装置14は少なくとも1つのセンサデバイス30を有するのが好ましく、これによって少なくとも1つのセンサ値28を測定可能であり、制御システム10に提供可能である。特にこのようにして、第1のモータ付きのブレーキ装置12のセンサ機構26の機能障害/故障がテスト機能の検証に悪影響を及ぼすのを防止可能である。少なくとも1つのセンサデバイス30として、たとえば少なくとも1つの減速センサ、特に少なくとも1つのホイール回転数センサおよび/または少なくとも1つのホイール回転数検出器のような少なくとも1つのホイールセンサ、少なくとも1つの液圧式の圧力センサ、および/または周囲監視のために設計されたカメラシステムが利用されていてよい。電気機械式のブレーキブースタとして構成された第1のモータ付きのブレーキ装置12では、少なくとも1つのセンサ値28は、たとえば少なくとも1つの液圧式の圧力センサ、車両の減速センサ/加速度センサ、および/またはホイールセンサによって確実に測定することができる。
【0043】
テスト機能を実行するように制御された第1のモータ付きのブレーキ装置12により実行された実際機能に関して制御システム10により自己判定される、または制御システム10に提供される少なくとも1つのセンサ値28が少なくとも1つの所定の標準値範囲内にある限りにおいて、制御システム10は、2つのモータ付きのブレーキ装置のうちの第2のブレーキ装置14が少なくとも1つの目標量16を考慮したうえで制御可能であり/制御され、それにより制御される第2のモータ付きのブレーキ装置14によって車両が制動可能であり/制動される自律的なモードを続行するように設計されている。そうでない場合、すなわち少なくとも1つのセンサ値28が少なくとも1つの標準値範囲外にあるとき、制御システム10は、第2のモータ付きのブレーキ装置14を遅滞なく制御して、制御される第2のモータ付きのブレーキ装置14によって車両を停止へと移行可能であるように設計されるのが好ましい。液圧ユニットとして構成された第2のモータ付きのブレーキ装置14により、2.44m/sの減速でさえ依然として確実にもたらすことができるので、停止への車両の迅速な移行を容易に実行可能である。
【0044】
このように制御システム10も、上に説明した方法の利点をもたらす。さらに指摘しておくと、上に説明した方法のさらに別の方法ステップもこの制御システムによって実行可能であってよい。
【0045】
図2の制御システム10の「コンパクトユニット」としての図面は、例示としてのみ解釈されるべきものである。別案として、制御システムが少なくとも2つの「個別の制御装置」を含むこともできる。たとえば制御システムは、第1のモータ付きのブレーキ装置12/電気機械式のブレーキブースタの制御装置と、第2のモータ付きのブレーキ装置14/液圧ユニットの別の制御装置とを含むことができる。
【0046】
上に説明した方法、およびこれに対応する制御システム10は、自律的に走行する車両(場合によりドライバーなし)に特別に好ましく適している。なぜならば、自律的に走行する車両(ドライバーレス車両)では、しばしば運転者の不在に基づき、および/またはブレーキ操作部材/ブレーキペダルの欠如に基づき、機械的なフォールバックレベルが可能でないからである。一方で、上に説明した方法およびこれに対応する制御システム10は、両方のモータ付きのブレーキ装置12および14の利用可能性がなくなったときに、車両がただちに停止することを保証することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 制御システム
12 第1のモータ付きのブレーキ装置
14 第2のモータ付きのブレーキ装置
16 目標量
24 情報
28 センサ値
30 センサデバイス
図1
図2