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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-01
(45)【発行日】2025-07-09
(54)【発明の名称】自動複合材製造システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/38 20060101AFI20250702BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20250702BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20250702BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20250702BHJP
【FI】
B29C70/38
G05B19/418 Z
B29C70/54
B29K105:08
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021075802
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2021192974
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2024-04-18
(31)【優先権主張番号】16/875,908
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(74)【代理人】
【識別番号】100217467
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴崎 一磨
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィエンドラ シダース スーリヤアラチチ
(72)【発明者】
【氏名】ダレル ダーウィン ジョーンズ
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0151486(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0306228(US,A1)
【文献】特表2014-522747(JP,A)
【文献】特開昭51-069505(JP,A)
【文献】特開2018-149795(JP,A)
【文献】特開平03-003798(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0224928(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0314583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/38
B29C 70/54
B64C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層複合材コンポーネントを製造するためのシステムであって、
所定パターンに従って、複合材料のプライからコンポーネント層を分離するよう構成された切断ステーションと、
所定配向に従って、前記コンポーネント層を積層するよう構成された構築ステーションと、
積層された前記コンポーネント層を圧縮して、設置ステーションに前記積層複合材コンポーネントを供給するよう構成された仕上げステーションと、を含み、前記設置ステーションにおいて前記積層複合材コンポーネントの取付対象物に対してオンデマンドでリアルタイムに前記積層複合材コンポーネントを設置するように構成された、システム。
【請求項2】
前記切断ステーションから前記構築ステーションに前記コンポーネント層を移動させるよう構成された自動ピックアンドプレース装置をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ピックアンドプレース装置は、自動ロボット装置であり、当該自動ロボット装置は、
前記切断ステーションによって分離された前記コンポーネント層をピックアップして回転させ、前記構築ステーションへ移動させるよう構成されたロボットグリッパと、
前記ロボットグリッパによってピックアップされた前記コンポーネント層の各々の配向を特定して、前記構築ステーションのための所定配向に従って前記コンポーネント層を回転させるよう構成された配向設定装置と、を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記構築ステーションは、前記ロボットグリッパによって前記切断ステーションから前記コンポーネント層を受け取るよう構成された第2コンベヤを含み、前記コンポーネント層は、前記切断ステーションから前記構築ステーションへの移動中、前記ロボットグリッパによって前記所定配向に回転される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2コンベヤは、受け取った前記コンポーネント層のうちの最下層を前記第2コンベヤ上に維持するよう作用する接着材を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記コンポーネント層の各々は、他のコンポーネント層の各々に同心円状に積層及び整列されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記仕上げステーションは、
前記積層複合材コンポーネントを形成するために、積層された前記コンポーネント層に圧縮圧力を加えるよう構成された圧縮機と、
前記積層複合材コンポーネントに対応する視覚的インジケータを、前記積層複合材コンポーネントに刻印するよう構成された部品マーキング装置と、
前記積層複合材コンポーネントの品質保証を実行するよう構成された検査装置と、を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記切断ステーションは、
第1コンベヤと、
前記第1コンベヤに前記複合材料を供給するよう構成されたディスペンサと、
前記複合材料を前記第1コンベヤ上に維持するために、前記第1コンベヤに負圧を加えるよう構成された真空装置と、
前記複合材料から前記コンポーネント層を切り出すよう構成された切断装置と、を含み、前記所定パターンは、フレームフィラーに対応している、請求項1~7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記複合材料は、プリプレグ複合材料の単一のプライであり、前記切断装置は、超音波切断装置である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記所定パターンは、様々なサイズのパターンを含み、これによって、前記仕上げステーションにおいて所定の順序に従って前記コンポーネント層が積層されると、前記積層複合材コンポーネントが、テーパ状フレームフィラーを形成する、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
積層複合材コンポーネントを製造するための方法であって、
切断ステーションにおいて、所定パターンに従って複合材料のプライからコンポーネント層を分離することと、
構築ステーションにおいて、所定配向に従って前記コンポーネント層を積層することと、
仕上げステーションにおいて、積層された前記コンポーネント層を圧縮して、設置ステーションに前記積層複合材コンポーネントを供給することと、を含み、前記設置ステーションにおいて前記積層複合材コンポーネントの取付対象物に対してオンデマンドでリアルタイムに前記積層複合材コンポーネントを設置する、方法。
【請求項12】
自動ピックアンドプレース装置によって、前記切断ステーションから前記構築ステーションに前記コンポーネント層を移動させることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ピックアンドプレース装置は、自動ロボット装置であり、前記方法は、
前記切断ステーションによって分離された前記コンポーネント層を、ロボットグリッパによってピックアップして回転させ、前記構築ステーションへ移動させることと、
前記ロボットグリッパによってピックアップされた前記コンポーネント層の各々の配向を、配向設定装置によって特定して、前記構築ステーションのための所定配向に従って前記コンポーネント層を回転させることと、をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コンポーネント層を回転させることは、前記切断ステーションから前記構築ステーションへの移動中、前記ロボットグリッパによって前記コンポーネント層を回転させることを含み、前記構築ステーションで積層することは、前記切断ステーションから、前記ロボットグリッパを介して、前記構築ステーションにおける第2コンベヤで前記コンポーネント層を受け取ることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
接着材を使用して、受け取った前記コンポーネント層のうちの最下層を前記第2コンベヤ上に維持することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記コンポーネント層の各々を他のコンポーネント層の各々に同心円状に積層及び整列させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記仕上げステーションで圧縮することは、
前記積層複合材コンポーネントを形成するために、圧縮機によって、積層された前記コンポーネント層に圧縮圧力を加えることと、
部品マーキング装置によって、前記積層複合材コンポーネントに対応する視覚的インジケータ又は文字を、前記積層複合材コンポーネントに刻印することと、
検査装置によって、前記積層複合材コンポーネントの品質保証を実行することと、をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ディスペンサによって、前記切断ステーションにおける第1コンベヤに前記複合材料を供給することと、
前記複合材料を前記第1コンベヤ上に維持するために、真空装置によって、前記第1コンベヤに負圧を加えることと、
切断装置によって、前記複合材料から前記コンポーネント層を切り出すことと、をさらに含み、前記所定パターンは、フレームフィラーに対応している、請求項11~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記複合材料は、プリプレグ複合材料の単一のプライであり、前記切断装置は、超音波切断装置である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記所定パターンは、様々なサイズのパターンを含み、これによって、前記仕上げステーションにおいて所定の順序に従って前記コンポーネント層が積層されると、前記積層複合材コンポーネントが、テーパ状フレームフィラーを形成する、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して、複合材コンポーネントの製造に関する。より具体的には、本願は、自動複合材製造システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビークルの製造環境などの特定の製造環境においては、ビークルが、ある場所で組み立てられ、このようなビークルの組み立てに使用される部品又はコンポーネントは、例えば他の設備などの他の場所で製造される場合がある。これらの部品及びコンポーネントは、技術者が労力をかけて製造し、完成した部品は、保管領域に保管され、ビークルの組み立てに必要なときに取り出せるようになっている。このような製造環境において適切なサプライチェーンを維持することは、ビークルの組み立てに部品が必要な場合に当該部品が不足して生産性が低下することを避けるのに重要である。生産性に悪影響を与えないために、必要な場合にいつでも利用できるように全ての部品の在庫を保持するのに十分な大きさの保管領域が必要とされている。しかしながら、ビークルの生産が停止したり、不意に終了したり、遅れたりした場合、また、部品が消耗品であり長期にわたってフリーザから出されている場合や、部品の有効期間が過ぎてしまった場合、保管されている未使用部品の在庫が使用不可能な余剰部品となってしまい、最終的には廃棄せざるを得なくなる可能性があり、コスト及び資源の無駄になる。したがって、より効率的に部品を製造して無駄を低減するための技術が望まれている。
【発明の概要】
【0003】
一例によれば、積層複合材コンポーネントを製造するためのシステムが開示される。前記システムは、所定パターンに従って、複合材料のプライからコンポーネント層を分離するよう構成された切断ステーションと、所定配向に従って、前記コンポーネント層を積層するよう構成された構築ステーションと、積層された前記コンポーネント層を圧縮して、設置ステーションに前記積層複合材コンポーネントを供給するよう構成された仕上げステーションと、を含みうる。
【0004】
他の例によれば、積層複合材コンポーネントを製造するための方法が開示される。前記方法は、切断ステーションにおいて、所定パターンに従って複合材料のプライからコンポーネント層を分離することと、構築ステーションにおいて、所定配向に従って前記コンポーネント層を積層することと、仕上げステーションにおいて、積層された前記コンポーネント層を圧縮して、設置ステーションに前記積層複合材コンポーネントを供給することと、を含みうる。
【0005】
本発明の範囲は、請求の範囲により規定されるものであり、参照によりこのセクションに盛り込まれている。以下に詳細に説明する1つ以上の実施形態を考慮することにより、当業者は、本発明の実施形態をより完全に理解するとともに、その付加的な利点を実現することができるであろう。最初に、添付の図面を参照しながら、これらの図面について簡単な説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1-2】フレーム、ストリンガ、及びフレームフィラーを露出させた例示的な航空機用胴体を示す内観図である。
図3】硬化ツール上で組み立てられている例示的な航空機用胴体を示す外観図である。
図4】本開示の様々な実施例による、積層複合材コンポーネント製造システムを示す例示的なシステムレイアウトである。
図5】本開示の様々な実施例による、コンベヤを含む例示的な切断ステーションを示す側面図である。
図6】本開示の様々な実施例による、複合材料がコンベヤから落下するのを防止するための真空装置を使用する例示的なコンベヤを示す斜視図である。
図7-9】本開示の様々な実施例による、あるステーションから他のステーションに複合材料をピックアップ及び配置するために実施可能なロボット装置の例を示す図である。
図10】本開示の様々な実施例による、複合材料層のプライの積層体を圧縮するために実施可能な圧縮機の例を示す図である。
図11】本開示の様々な実施例による、積層複合材コンポーネント製造システムの製造タイミング図である。
図12】本開示の一実施例による、積層複合材コンポーネント製造システムのフロー図である。
図13】本開示の他の実施例による、積層複合材コンポーネント製造システムのフロー図である。
図14】本開示の他の実施例による、積層複合材コンポーネント製造システムのフロー図である。
図15】本開示の他の実施例による、積層複合材コンポーネント製造システムのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の実施形態及びその利点は、以下の詳細な説明を参照することによって最も理解されるであろう。別段の記載が無い限り、添付図面及び記載の全体を通して、同様の要素には同様の参照符号を付しており、これらについての説明は繰り返して行わない。図面において、要素、層、及び領域の相対的なサイズを、明確化のために誇張している場合がある。
【0008】
以下では、添付図面を参照して様々な実施例を詳細に説明している。しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で実施することができ、本明細書における実施例のみに限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施例は、本開示が十分且つ完全なものとなるように、また、本発明の態様及び特徴を当業者に十分に伝えることができるように、例として提示されたものである。したがって、本発明の態様及び特徴の完全な理解のために、当業者には必要でない処理、要素、及び技術については記載していない場合もある。
【0009】
例えば、商用旅客機などの航空機の胴体は、略円筒状の細長い形状をなす様々な構成要素を含む。図1及び図2には、構成要素のいくつかを露出させた例示的な航空機用胴体100の内観図が示されている。これらの構成要素は、胴体100の円筒形状を形成するアール状フレーム106と、胴体100に対して長手方向(例えば、前方及び後方)に延びるとともに、フレーム106に対して垂直なストリンガ102と、を含む。一般に、複数のストリンガ102及びフレーム106は、胴体100の構造を形成するものであり、スキン104によって覆われて、胴体100が完成する。
【0010】
ストリンガ102は、胴体本体を補強する部材であって、胴体100の位置によって厚みが異なりうる。例えば、胴体の底部付近に配置されたストリンガ102の厚みは、胴体の上部付近に配置されたストリンガ102の厚みよりも大きい。したがって、スキン104がストリンガ102上に直接設けられている場合、スキン104と、相対的に薄いストリンガ102との間に隙間が生じる可能性がある。この隙間を補うために、複合材料の複数のプライを互いに積層して形成されたフレームフィラー108を使用して、最も厚いストリンガ102とスキン104との間の高さを埋めている。
【0011】
図3には、硬化ツール110(例えば、マンドレル)上で組み立てられている例示的な胴体の外観図が示されている。したがって、この図においては、フレームフィラー108が2つのストリンガ102間に配置されるように、硬化ツール110上にストリンガ102及びフレームフィラー108が設置される。ストリンガ102及びフレームフィラー108が設置されると、これらの上でスキンが共硬化されて、フレームにボルトで固定される。このように、航空機、特に大型の航空機は、多くのストリンガ102及びフレーム106を有しており、数千ものフレームフィラー108(例えば、約2インチ×6インチ)が胴体100に共硬化されて隙間を埋めている。なお、各フレームフィラー108は、胴体の特定の位置に適合するように、特定のサイズ、形状、及び厚みにカスタマイズされる。したがって、個々のフレームフィラー108の形状、サイズ、及び/又は厚みは異なりうる。結果として、このような航空機のためのフレームフィラー108を製造するための従来の技術は、労力を要するものであり、作業者は、フレームフィラー108を形成するために、プリプレグの原料を正確に折り曲げて積み重ねなければならない。さらに、フレームフィラー108は、手作業による製造処理により、オンデマンドではなくバッチで製造される。すなわち、所定の製造処理中、ある仕様のフレームフィラー108のバッチ(又は、グループ)が作業員によって作製され、この完成したフレームフィラー108のバッチは、必要になるまで保管される。次の製造処理においては、異なる仕様のフレームフィラーが、再びバッチモードで製造されて、その後保管される。このようにして、フレームフィラー108の多くのバッチが製造され、航空機に取り付ける準備が整うまで部品(例えば、WIP)として保管される。したがって、フレームフィラー108の設置者は、機体に対してどのフレームフィラー108がその日の作業に必要かを把握して、保管場所から適切なフレームフィラー108を取り出す必要がある。環境によっては、このようなフレームフィラー108の製造は、航空機の組立工場とは異なる施設で行われる場合がある。例えば、フレームフィラー108は、異なる会社又は異なる下請業者によって、異なる施設又は異なる国で製造される場合があり、この結果として、そのような部品の注文及び配送に追加的な費用がかかる場合がある。
【0012】
本開示で提示される様々な実施例においては、機械及びロボット装置を使用して、フレームフィラーなどの積層複合材料の製造を自動化して、このような積層複合材料を設置する必要がある場合に、適切な速度及び適切な順序で当該積層複合材料をオンデマンドで製造するシステム及び方法が想定されている。例えば、第1サイズのフレームフィラーが必要とされ、次に第2サイズのフレームフィラーが必要とされ、その後再び第1サイズのフレームフィラーが必要とされる場合、上記システム及び方法は、この特定の順序でフレームフィラーを製造する。さらに、組み立て中の航空機と同じ施設におけるマンドレルでフレームフィラーを製造することができるため、各フレームフィラーが製造されると、組み立て現場の設置者にすぐに供給することができる。したがって、フレームフィラーの製造が終了すると、技術者は、完成したフレームフィラーを取得して、リアルタイムで航空機に取り付けることができ、このような態様によって、余分なフレームフィラーを製造することなく、その時点で必要なフレームフィラーのみを製造することができるので、施設内に部品を保管するための場所を設ける必要がなくなる。さらに、フレームフィラーが破損した場合、具体的には、設置者がフレームフィラーを取り付ける際に破損した場合や、フレームフィラーが落下して破損した場合などには、直ちに交換用のフレームフィラーを製造することができるため、部品の破損による生産の遅延を防止又は少なくとも低減することができる。
【0013】
図4には、本開示の様々な実施例による、積層複合材コンポーネント製造システムの例示的なシステムレイアウトが示されている。本開示においては、一例として、フレームフィラーの製造として積層複合材コンポーネントの製造に言及するが、本システム及び方法は、他の積層複合材コンポーネントにも適用可能であり、フレームフィラーのみに限定されないと理解すべきである。
【0014】
図示例によれば、システム400は、切断ステーション490と、構築ステーション492と、仕上げステーション494とを含む。したがって、システム400を構成する様々な機械及び装置によって、プリプレグ材料などの未加工の複合材料を処理することができ、この処理により、数分以内にフレームフィラーを完成させて、リアルタイムで航空機に設置する準備を整えることができる。
【0015】
切断ステーション490は、少なくともコンベヤ404と、ディスペンサ402とを含み、当該ディスペンサは、例えば、複合材料のスプールを保持し、コンベヤ404に複合材料408の単一のプライを供給するよう構成されている。コンベヤ404はまた、コンベヤ404に負圧を加えるよう構成された真空装置と、コンベヤ404上で複合材料408を切断するよう構成された切断装置410とを含みうる。一例によれば、切断装置410は、超音波カッター(USK)であってもよい。また、他の例においては、切断装置410は、レーザーカッター、又は当該技術分野で知られている他の高速カッターであってもよい。コンベヤ404に複合材料が供給されると、当該コンベヤは、切断ステーション490の第1端から切断ステーション490の第2端へ向かって矢印406で示す方向に複合材料408を移動させる。複合材料408が切断装置に移動すると、当該複合材料は、切断されてコンポーネント層412に分割され、最終的には、コンポーネント層の追加的なプライと共に積層された複合材料の単一のプライになる。コンポーネント層412は、製造されるコンポーネントの仕様に基づいて、所定の形状又はパターンを有しており、コンベヤ404の第2端へ向かって移動する。パターンが切り出されると、自動ピックアンドプレース装置が、コンポーネント層をピックアップして、複合材料408の単一のプライからコンポーネント層418を分離する。残りの余分な複合材料414は、コンベヤの第2端へ向かって移動し続けて、スクラップ容器416にスクラップ材料として収集される。
【0016】
図5には、本開示の様々な実施例による、コンベヤ404を含む例示的な切断ステーション490の側面図が示されている。図示のように、未加工の複合材料は、ディスペンサ402に搭載されたスプールの形態であってもよく、コンベヤ404上に広げられるよう構成されている。真空装置は、コンベヤに負圧502を加えて、複合材料がコンベヤから落下するのを防止する。
【0017】
図6には、本開示の様々な実施例による、複合材料606がコンベヤから落下するのを防止するための真空装置を使用する例示的なコンベヤの斜視図が示されている。例えば、コンベヤ404のコンベヤベルト602は、孔604を有しており、真空装置は、コンベヤベルト602上に複合材料606を維持するために、負圧502により当該孔から吸引を行う。したがって、コンベヤ404上に複合材料408のプライを配置したとき、複合材料408は、環境内で循環する空気によって(例えば、作業員の動作や機械により生成される空気の流れにより)吹き飛ばされることがない。図5には、コンベヤベルト602の近傍でコンベヤの表面に向かって負圧502を生成し、コンベヤ404の下側部分で正圧504を生成する真空装置の例示的な構成が示されている。この例において、スクラップ容器416は、コンベヤ404の下側に配置されており、真空装置は、コンベヤベルト602からスクラップを除去してスクラップ容器416に落下させるために、スクラップ容器416の近くで正圧504を加える。
【0018】
このようにして、未加工の複合材料408の単一のプライから、積層複合材フレームフィラーを形成する第1層が切り出される。この切り出し部分がフレームフィラーの第1層に求められる特定のサイズ及び形状に対応するように、所定のパターンを設定してもよい。切断装置410は、所望の形状又はパターンに切り出しを行うよう構成されている。したがって、切り出されるパターンの各々は、次の層に必要とされるサイズ及び形状によって異なりうる。
【0019】
再び図4を参照すると、構築ステーション492は、切断ステーション490からコンポーネント層412を受け取るよう構成された第2コンベヤ428を含む。例えば、ロボットアーム及び/又はロボットグリッパを有するロボット装置420が、切断ステーション490における第1コンベヤからコンポーネント層418をピックアップしてから、構築ステーション492へ移動させて第2コンベヤ428に載置するよう構成される。一例によれば、ロボット装置420は、さらに、配向設定ステーション422と共に動作するよう構成されてもよく、当該配向設定ステーションは、ロボット装置420によりコンポーネント層がピックアップされたときに当該コンポーネント層の配向を特定する配向特定装置424を含む。配向特定装置424は、カメラ(例えば、可視範囲カメラ、赤外線カメラ、又はサーマルカメラ)などの配向スキャナであってもよく、配向を特定するために画像処理を利用する。配向設定ステーション422は、回転テーブルなどの配向設定装置426をさらに含む。この回転テーブルは、コンポーネント層418が載置されると、当該コンポーネント層418を回転させて、当該コンポーネント層の配向を回転させるものであり、この回転は、配向特定装置424が、第2コンベヤにコンポーネント層を適切に配置するために配向すべきコンポーネント層の方向を特定すると、当該特定に基づいて行われる。他の例によれば、配向設定装置は、ロボット装置420の一部として埋設してもよい。したがって、ロボット装置420は、配向特定装置をさらに含んでもよく、ロボットアーム又はグリッパがコンポーネント層を保持している間に当該コンポーネント層を自動的に回転又は配向してもよい。このため、ロボット装置420は、切断ステーション490からコンポーネント層418をピックアップして構築ステーション492へ運ぶ途中に、例えば、ロボットアームや回転グリッパを使用して当該コンポーネント層の配向を回転させ、当該コンポーネント層を第2コンベヤ428に配置してもよい。
【0020】
本開示の他の例によれば、構築ステーション492は、第2コンベヤ428において接着ディスペンサ430に設けられた接着層のスプールを含む。これにより、第2コンベヤ428に接着層432を積層することができる。このようにすることで、コンポーネント層418を接着帯片に配置することができ、空気の流れ(例えば、作業員の動作により循環する空気や、機械により生成される空気の流れ)によってコンポーネント層418がコンベヤから落下したり吹き飛ばされたりしないようにすることができる。いくつかの例において、接着層432の一方の面はポリマーであってもよく、他方の面は紙であってもよい。したがって、コンポーネント層418は、切断ステーション490から移動されて、第2コンベヤ428の接着層432に載置される。なお、このプロセスは、製造する特定の積層複合材コンポーネントに使用されるプライの数に基づいて繰り返し行ってもよい。例えば、10プライのフレームフィラーを製造する場合、上記プロセスを10回繰り返し、各回において、各コンポーネント層がその下の他のコンポーネント層の各々に対して同心円状に積層及び整列されるように、新たなコンポーネント層を前回のコンポーネント層上に正確に積層する。いくつかの例において、フレームフィラーは、15度の傾斜又はテーパ―などの傾斜又はテーパが付いた縁を含む。このような傾斜角度又はテーパ―角度は、プライを積層したときにこれらの縁が角度をなすように、切り出されたコンポーネント層の各々のサイズを変更することによって、フレームフィラーで実現することができる。例えば、フレームフィラーの形状がピラミッド状である場合、最も下側のコンポーネント層が最も大きく、その上の次の層が最も下側のコンポーネント層よりも僅かに小さい、というようにする。このようにすると、最終段階でフレームフィラーを正確に切断して傾斜角度を形成することなく、傾斜縁を有するフレームフィラーを形成することができる。
【0021】
一例によれば、ロボット装置420は、当該ロボット装置420の動作を処理するためのコントローラを含みうる。いくつかの実施例において、コントローラは、ロボット装置420、切断ステーション490、構築ステーション492、及び仕上げステーション494と相互接続されてもよく、このようにすることで、システム400の様々なステージ内の様々な装置が互いに通信して処理を同期することができるようになる。例えば、コントローラは、特定のタイプの航空機を組み立てる際にコンポーネント層を切断する必要がある場合のシーケンスを処理するよう構成されており、これを実行するために、コントローラは、システム400で相互接続された装置と通信する。
【0022】
図7~9には、本開示の様々な実施例による、あるステーションから他のステーションに複合材料をピックアップ及び配置するために実施可能なロボット装置の例が示されている。図7に示す例示的な自動ロボット装置は、伸長及び/又は収縮する複数のアーム704によって支持されるグリッパ702を含む。したがって、アーム704が伸長及び/又は収縮すると、グリッパ702はある位置から別の位置へ自由に移動して、コンポーネント層418などの物体のピックアップ及び配置を行うことができる。図8には、グリッパ802及びロボットアーム804を含む他のタイプのロボット装置が示されている。この例において、ロボットアーム804は、様々な方向に移動してグリッパ802をある位置から他の位置に移動させ、コンポーネント層418などの物体のピックアップ及び配置を行うことができる。図9には、グリッパ1002及びロボットアーム1004を含む他のタイプのロボット装置が示されている。この例において、ロボットアーム1004は、人間の腕のように様々な方向に移動してグリッパ1002をある位置から他の位置に移動させ、物体のピックアップ及び配置を行うことができる。したがって、本明細書で説明するように、切断ステーション490からコンポーネント層418をピックアップして、構築ステーション492に配置する処理を実現するために、様々なタイプのロボット装置420を実施することが可能である。図7~9に示すロボット装置は、実施可能なピックアンドプレース装置のいくつかの例のみを表しているが、これらの例に限定されない。
【0023】
構築ステーション492で所望数のプライが積層されると、積層されたコンポーネント層は、矢印434の方向において、圧縮機438と、部品マーキング装置440と、検査装置442とを含む仕上げステーション494に搬送される。一例によれば、圧縮機438は、積層複合材コンポーネントを形成するために、積層されたコンポーネント層に圧縮圧力を加えるよう構成されている。いくつかの例において、圧縮機438は、約20~30psiの圧力を加えてもよく、他の例においては、これに代えて、より低い圧力又は高い圧力を加えてもよい。プリプレグ複合材料では、圧力を加えることにより、複数のプライを圧縮して強制的に密着させることで積層複合材コンポーネントが形成される。他の例においては、プライを互いに密着させ易くするために、積層されたコンポーネント層に熱を加えてもよい。例えば、第2コンベヤ428は、加温ブランケットを有していてもよいし、圧縮機は加熱装置を有していてもよい。図10には、本開示の様々な実施例による、複合材料層の積層体を圧縮するために実施可能な圧縮機の例が示されている。例示的な圧縮機は、第2コンベヤ428上のコンポーネント層436の積層体に力を加えるよう構成された圧縮ヘッド902を含みうる。
【0024】
コンポーネント層が圧縮されると、第2コンベヤ428は、部品マーキングステージに積層複合材コンポーネントを移動させ、当該ステージにおいて、部品マーキング装置440が、積層複合体に視覚的インジケータを刻印する。例えば、刻印は、積層複合材コンポーネントを設置するための正しい方向を設置者に示す矢印又は他の視覚的インジケータであってもよいし、フレームフィラーの特定の形状及びサイズに対応する部品番号であってもよい。
【0025】
コンポーネント層に部品マークが付されると、積層複合材コンポーネントは、検査セクションに移動され、当該セクションにおいて、積層複合材コンポーネントが、サイズ、形状、直角度、傾斜角度などの製造基準及び製造公差を満たしていることを確認するために、検査装置442による品質保証チェックが行われる。いくつかの例において、検査装置442は、画像処理を行う高解像度カメラであってもよい。完成したコンポーネント(例えば、フレームフィラー)が検査を通過した場合、当該フレームフィラーは、直ちに飛行機に取り付けることができる。いくつかの例によれば、フレームフィラーを設置者に供給してリアルタイムで使用するために、フレームフィラーを他のコンベヤ又は送給手段に載せてもよい。
【0026】
図11には、本開示の様々な実施例による、複合材フィラー製造システムのタイミング図が示されている。ステップ1102は、積層複合材コンポーネントの製造の開始点であり、第1コンベヤに連続的に供給される複合材料408のスプールに対応している。これは連続的な処理であり、スプールは連続的に繰り出されてもよい。特定のプリプレグ複合材料は、当該複合材料がコンベヤに供給されるときに自動的に除去される裏紙を有しうる。次に、ステップ1104において、USKなどの切断装置を使用して、複合材料を所定パターンに切断する。本開示で説明する例示的な切断装置によれば、このステップは、各プライを切断するのに約5秒かかりうる。コンポーネント層が切り出されると、ステップ1106において、ピックアンドプレース装置がコンポーネント層をピックアップする。一例において、このステップは、約1.5秒かかりうる。次に、ステップ1108において、ピックアンドプレース装置は、コンポーネント層が構築ステーションに移動される前に、当該コンポーネント層を正しい配向に回転させる。このステップは、約1.5秒かかりうる。正しく配向されたコンポーネント層は、ステップ1110において、構築ステーションの第2コンベヤに配置される。このステップは、約1.5秒かかりうる。コンポーネント層のプライをピックアップ、回転、及び配置する処理は、構築ステーションにおいて所望数又は所定数のプライが互いに積層されるまで繰り返される。プライが積層されると、ステップ1112において、圧縮装置が、この積層体に圧力を加えてコンポーネント層を圧縮する。いくつかの例において、積層複合材コンポーネントは、10枚のプライで形成されてもよく、この場合、圧縮装置による圧縮には約10秒かかりうる。他の例において、積層複合材コンポーネントは、12枚のプライで形成されてもよく、この場合、12枚のプライの圧縮にはより時間がかかりうる。圧縮された積層コンポーネントは、次に検査装置に供給され、ステップ1114において、当該検査装置は、完成した圧縮積層コンポーネントが設計仕様及び設計公差を満たしていることを確認するために、当該コンポーネントの品質を検証する。このステップは、各フレームフィラーについて約5秒かかりうる。次に、検査されたコンポーネントは、ステップ1116において、部品マーキング処理に供給される。この処理は、約5秒かかり、その後、ステップ1118において、マンドレルにおける使用ポイント(point-of-use)にフレームフィラーを移動させるのにさらに約2秒かかる。したがって、本開示で説明した自動処理を用いることにより、完成した使用準備の整ったフレームフィラーを約1分で原材料から製造することができる。実際にかかる時間は、特定のフレームフィラーで使用するプライの数、及び使用される機械のタイプによって異なりうる。例えば、特定のロボット装置は、他の装置よりも速く移動することができ、特定の切断装置は、より速く切断することができ、特定の圧縮装置は、より速くコンポーネント層を圧縮することができる場合がある。
【0027】
図12には、本開示の一実施例による、積層複合材コンポーネント製造システムのフロー図が示されている。このシステムは、切断ステーションにおいて、様々な所定パターンに従って複合材料のプライからコンポーネント層を分離するよう構成することができる(1202)。所定パターンは、意図するコンポーネントの設計要件に基づいて設定及び/又は選択される。したがって、フレームフィラーのサイズ、形状、及び厚みは、胴体において当該フレームフィラーを設置する位置によって決定され、USKが適切なパターンに切り出されるように切断装置にプログラムすることができる。その後、コンポーネント層は、自動ピックアンドプレース装置によって、切断ステーションから構築ステーションに移動される(1204)。コンポーネント層が構築ステーションに移動されると、所定の配向に従って当該コンポーネント層が他のコンポーネント層に積層される(1206)。例えば、あるフレームフィラーは、10枚のプライを積層して構成されており、他のフレームフィラーは、12枚以上のプライを積層して構成されている。必要な数のコンポーネント層のプライが積層されると、積層されたコンポーネント層は、仕上げステーションにおいて圧縮され、これによって、フレームフィラーなどの積層複合材コンポーネントが作製される。その後、完成したフレームフィラーは、設置ステーションに供給されて、当該ステーションにおいて、航空機にフレームフィラーが設置される(1208)。
【0028】
図13には、本開示の他の実施例による、積層複合材コンポーネント製造システムのフロー図が示されている。製造システムのピックアンドプレース装置は、切断ステーションにおける切断装置で切り出されたコンポーネント層を把持及びピックアップするよう構成されたロボットグリッパを有するロボット装置を実現することができる(1302)。ロボットグリッパによってピックアップされたコンポーネント層の配向は、例えば、カメラなどの配向特定装置によって特定され、コンポーネント層は、構築ステーションのための所定配向に従って回転される(1304)。コンポーネント層は、ロボット装置によって構築ステーションに移動される(1306)。
【0029】
図14には、本開示の他の実施例による、積層複合材コンポーネント製造システムのフロー図が示されている。切断ステーションにおいて、ディスペンサは、第1コンベヤに未加工の複合材料を供給する(1402)。真空装置は、複合材料をコンベヤ上に維持するために、コンベヤ(例えば、コンベヤベルト)の表面に負圧を加えるよう構成することができる。複合材料が切断装置へ向かって搬送されると、切断装置によってコンポーネント層が複合材料から切り出される。複合材層は、フレームフィラーのプライに対応する所定パターンに切断される(1406)。したがって、未加工の複合材料を供給して、所望の所定パターンに正確に切断することが可能である。
【0030】
図15には、本開示の他の実施例による、積層複合材コンポーネント製造システムのフロー図が示されている。コンポーネント層は、切断ステーションから構築ステーションに移動されている間にロボットグリッパによって回転される。したがって、コンポーネント層は、切断ステーションから構築ステーションへの移動中に回転される(1502)。例えば、コンポーネント層は、グリッパによってピックアップされた後であって、且つ第2コンベヤに載置される前のある時点でロボットグリッパによって回転されてもよい。他の例においては、最初にコンポーネント層を正しい配向に回転させるために、当該コンポーネント層が、図4に示すような配向設定装置上に配置される。そして、配向が正しく調節されたコンポーネント層がロボットグリッパにより再びピックアップされて、構築ステーションへと移動される。コンポーネント層の各プライが構築ステーションへと移動されると、ロボットグリッパは、構築ステーションの第2コンベヤにコンポーネント層を一枚ずつ積層し、コンポーネント層の各々が、他のコンポーネント層の各々に同心円状に積層及び整列される(1504)。いくつかの例において、第2コンベヤは、ロボット装置によって載置されたコンポーネント層のうちの最下層を保持又は維持するための接着材を有しうる(1506)。積層されたコンポーネント層は、その後、圧縮機が当該コンポーネント層に対して圧縮圧力を加えることにより圧縮されて、積層複合材コンポーネントが形成される(1508)。次に、積層複合材コンポーネントは、部品マーキング装置によって、当該積層複合材コンポーネントに対応する視覚的インジケータが刻印される(1510)。完成した積層複合材コンポーネントの品質保証チェックが、カメラなどの検査装置によって実行される(1512)。したがって、フレームフィラーは、使用ポイント(例えば、航空機の組立ライン)で使用される順番に、オンデマンドで製造することが可能である。したがって、航空機は、組み立てに必要なコンポーネント及び材料が連続的な流れでリアルタイムに使用ポイントに提供される自動車の組立ラインと同様の態様で製造することができ、これによって、効率を向上させ、無駄を減らし、コストを削減するとともに、航空機の製造に必要な空間のサイズを小さくすることができる。
【0031】
本明細書において、「第1」、「第2」、「第3」などの用語を用いて様々な要素、コンポーネント、領域、層、及び/又はセクションを説明しているが、これらの要素、コンポーネント、領域、層、及び/又はセクションは、これらの用語で限定されるべきでない。これらの用語は、ある要素、コンポーネント、領域、層、又はセクションを、他の要素、コンポーネント、領域、層、又は、セクションと区別するために用いられる。したがって、以下で説明する第1の要素、コンポーネント、領域、層、又はセクションを、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、第2の要素、コンポーネント、領域、層、又はセクションと呼ぶことも可能である。
【0032】
「下方」、「下」、「下側」、「真下」、「上方」、「上側」などの空間的な相対用語は、図に示すような、ある要素又は特異部と、他の(複数の)要素又は(複数の)特異部との関係の説明を容易にするために用いられている。なお、空間的な相対用語は、図示する配向に加えて、使用中又は動作中における装置の様々な配向を包含することを意図している。例えば、図示の装置をひっくり返した場合、他の要素又は特異部の「下」、「下方」、又は「真下」にあると説明される要素は、他の要素又は特異部の「上方」に配向されることになる。したがって、例示的な用語である「下」及び「真下」は、上と下の両方の配向を包含しうる。また、装置は、他の配向にする(例えば、90度回転させたり、他の配向にしたりする)ことができ、本明細書で使用される空間的に相対する記述は、これに応じて解釈されるべきである。
【0033】
なお、要素又は層が、別の要素又は層に対して「上にある」、「接続されている」、又は「連結されている」場合、別の要素又は層に対して、直接「上にある」、「接続されている」、又は「連結されている」場合もあれば、1つ以上の介在する要素又は層が存在している場合もある。また、要素又は層が、2つの要素又は層の「間に」あると記載されている場合、それが、これら2つの要素又は層の間の唯一の要素又は層である場合もあれば、1つ以上の介在する要素又は層が存在する場合もある。
【0034】
本明細書で説明した本発明の実施例による電子装置若しくは電気装置、及び/又は他の関連装置若しくはコンポーネントは、任意の適切なハードウェア、ファームウェア(例えば、特定用途向け集積回路)、又はソフトウェアを利用して、或いはソフトウェア、ファームウェア、及び/又はハードウェアの組み合わせを利用して、実現することができる。例えば、これらの装置の様々なコンポーネントは、1つの集積回路(IC)チップ又は個別のICチップ上に形成することができる。また、これらの装置の様々なコンポーネントは、フレキシブルプリント回路フィルム、テープキャリアパッケージ(TCP)、若しくはプリント回路基板(PCB)上に実装してもよいし、1つの基板上に形成してもよい。また、これらの装置の様々なコンポーネントは、1つ以上の演算装置における1つ以上のプロセッサで動作するプロセス又はスレッドであってもよく、本明細書で説明する様々な機能を実行するために、コンピュータプログラム命令を実行して、他のシステムコンポーネントと連携してもよい。コンピュータプログラム命令は、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)などの一般的なメモリデバイスを用いて演算装置内に実装可能なメモリに格納される。コンピュータプログラム命令は、例えば、CD-ROM、フラッシュドライブなどの、他の非一時的なコンピュータ可読媒体に格納することもできる。また、当業者であれば分かるように、本発明の例示的な実施形態の思想及び範囲から逸脱することなく、様々な演算装置の機能を組み合わせるか、或いは統合することによって単一の演算装置としてもよいし、特定の演算装置の機能を1つ以上の他の演算装置に分散させてもよい。
【0035】
本明細書に記載の実施例は、例示的なものに過ぎない。当業者であれば、具体的に開示された実施例から様々な代替の実施形態を思いつくであろう。それらの代替の実施形態もまた、本開示の範囲内であることが意図されている。したがって、本開示の実施形態は、以下の請求の範囲及びその均等物によって限定されるものである。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15