(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-01
(45)【発行日】2025-07-09
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
F02M 25/10 20060101AFI20250702BHJP
F02M 27/02 20060101ALI20250702BHJP
F02M 25/025 20060101ALI20250702BHJP
F02B 51/02 20060101ALI20250702BHJP
【FI】
F02M25/10 A
F02M27/02 U
F02M25/025 K
F02B51/02
(21)【出願番号】P 2021105674
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2024-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 竜二
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0084423(US,A1)
【文献】特開2017-148792(JP,A)
【文献】特開2001-050118(JP,A)
【文献】特開平11-221443(JP,A)
【文献】特開昭49-026607(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0048035(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/00
F02M 27/00
F02M 61/00
B01J 38/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
過酸化物の供給源と、
前記供給源に接続され、前記エンジンの吸気への噴射口を含む噴射ノズルと、
を備え、
前記噴射ノズルは、
前記供給源から受け取った前記過酸化物を収容するキャビティと、
前記キャビティを開閉する弁と、
前記過酸化物の流れにおいて前記キャビティよりも下流に設けられ、前記過酸化物を水および酸素に分解する触媒と、
を含
み、
前記触媒は、前記キャビティよりも下流の領域のうち、前記キャビティが閉じられているときに、前記キャビティに面しない位置に設けられる、
エンジンシステム。
【請求項2】
前記噴射ノズルは、前記触媒が設けられる位置に複数の孔を含む、請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項3】
前記噴射ノズルは、前記触媒が設けられる位置に複数の突起または溝を含む、請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項4】
前記噴射ノズルは、前記触媒を加熱するヒータを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンでは、燃焼を改善するために、燃料に水が噴霧される場合がある。例えば、特許文献1は、加速開始から所持時間内に限り、燃料噴射と同時に蒸気を気筒内に添加するディーゼル機関を開示する。このディーゼル機関では、燃料と蒸気とが一体型の弁から噴射される。この弁は、燃料の流路の周りに、同心状に設けられた蒸気の流路を含む。燃料および蒸気は、同一の孔から一定の割合で噴射される。蒸気の流路は、蒸気噴射管を介して過酸化溶液の供給源と接続される。蒸気噴射管は、過酸化溶液を加熱するヒータと、加熱された過酸化溶液を酸素および水蒸気に分解する触媒と、を含む。したがって、弁には、酸素および水蒸気を含む酸素含有蒸気が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、弁には、酸素および水蒸気を含む酸素含有蒸気の形態で、水が供給される。この酸素含有蒸気は、使用されない間に、水と酸素とに分離する可能性がある。この場合、十分に混合されていない水および酸素が噴射されるおそれがある。
【0005】
本発明は、噴射直前に過酸化物を水と酸素とに分解することができるエンジンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るエンジンシステムは、
エンジンと、
過酸化物の供給源と、
前記供給源に接続され、前記エンジンの吸気への噴射口を含む噴射ノズルと、
を備え、
前記噴射ノズルは、
前記供給源から受け取った過酸化物を収容するキャビティと、
前記キャビティを開閉する弁と、
前記過酸化物の流れにおいて前記キャビティよりも下流に設けられ、前記過酸化物を水および酸素に分解する触媒と、
を含み、
前記触媒は、前記キャビティよりも下流の領域のうち、前記キャビティが閉じられているときに、前記キャビティに面しない位置に設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、噴射直前に過酸化溶液を水と酸素とに分解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るエンジンシステムを示す概略図である。
【
図2】
図2は、閉位置にあるプランジャを含む噴射ノズルを示す概略的な断面図である。
【
図3】
図3は、開位置にあるプランジャを含む噴射ノズルを示す概略的な断面図である。
【
図5】
図5は、他の実施形態に係る噴射ノズルを示す断面図である。
【
図6】
図6は、さらに他の実施形態に係る噴射ノズルを示す断面図である。
【
図7】
図7は、さらに他の実施形態に係る噴射ノズルを示す断面図である。
【
図8】
図8は、さらに他の実施形態に係る噴射ノズルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料および数値等は、理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、明細書および図面において、実質的に同一の機能および構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係るエンジンシステム100を示す概略図である。エンジンシステム(本開示において、単に「システム」とも称され得る)100は、例えば、HEV(Hybrid Electric Vehicle)、ガソリン自動車、または、ディーゼル自動車等の車両500に適用される。システム100は、エンジン10を備える。
【0011】
本実施形態では、エンジン10は、ガソリンエンジンである。他の実施形態では、エンジン10は、ディーゼルエンジン、アルコールエンジン等であってもよい。エンジン10は、シリンダ11と、ピストン12と、を有する。ピストン12は、シリンダ11内を往復移動する。シリンダ11およびピストン12によって、燃焼室13が画定される。ピストン12は、コネクティングロッド14によってクランクシャフト18に接続される。
【0012】
上記のようなエンジン10では、燃焼室13において、空気および燃料の混合気が燃焼され、これによって、ピストン12がシリンダ11内を往復移動する。ピストン12の直線運動が、コネクティングロッド14によってクランクシャフト18に伝達され、クランクシャフト18の回転運動に変換される。なお、より良い理解のために、
図1ではシリンダ11およびピストン12の1つの組のみが示されるが、エンジン10は、シリンダ11およびピストン12の複数の組を有してもよい。
【0013】
エンジン10は、吸気口15と、排気口16と、を有する。吸気口15には、吸気バルブ15aが設けられ、排気口16には、排気バルブ16aが設けられる。吸気バルブ15aおよび排気バルブ16aの各々の動作は、例えば、不図示のカムシャフトによって制御される。カムシャフトは、例えば回転ベルト等を介してクランクシャフト18によって回転される。
【0014】
エンジン10は、燃料のインジェクタ17を有する。インジェクタ17は、燃焼室13に設けられ、インジェクタ17から燃焼室13内に燃料が噴射される(いわゆる、直接噴射式)。他の実施形態では、エンジン10は、予混合燃焼式であってもよい。インジェクタ17は、ECU(Electronic Control Unit)50と通信可能に接続される。例えば、ECU50は、インジェクタ17のニードルバルブのリフトを制御することによって、インジェクタ17からの燃料の噴射量を制御する。
【0015】
エンジン10は、点火プラグPを有する。点火プラグPは、燃焼室13に設けられ、燃焼室13において空気および燃料の混合気を着火する。点火プラグPは、ECU50と通信可能に接続される。ECU50は、点火プラグPの動作を制御する。
【0016】
吸気口15は、インテークマニホールドM1を介して吸気管2に接続される。吸気管2には、例えば、不図示のエアクリーナ等の構成要素が設けられ、これらの構成要素を通過した空気が吸気口15を介して燃焼室13に供給される。
【0017】
吸気管2には、スロットルバルブV1が設けられる。スロットルバルブV1は、吸気管2を流れる空気の流量を調整する。スロットルバルブV1は、ECU50と通信可能に接続される。ECU50は、スロットルバルブV1を制御することによって、吸気量を制御する。
【0018】
吸気管2において、スロットルバルブV1の下流には、噴射ノズル4が設けられる。噴射ノズル4は、過酸化物を収容するタンク(供給源)5と接続される。本実施形態では、タンク5は、過酸化物として過酸化水素水を収容する。システム100は、タンク5の過酸化物を噴射ノズル4に送るためのポンプ6を備える。
【0019】
噴射ノズル4は、タンク5から受け取った過酸化物を水および酸素に分解し、吸気管2中の吸気に対して水および酸素を噴射する。噴射ノズル4については、詳しくは後述する。噴射ノズル4およびポンプ6は、ECU50と通信可能に接続される。例えば、ECU50は、噴射ノズル4またはポンプ6の少なくとも一方を制御することによって、水および酸素の噴射量を制御する。
【0020】
インテークマニホールドM1と吸気口15とを接続する枝管21には、O2センサS1が設けられる。O2センサS1は、枝管21を流れる吸気中の酸素濃度を測定する。O2センサS1は、ECU50と通信可能に接続される。例えば、ECU50は、O2センサS1に測定される酸素濃度に基づいて、噴射ノズル4またはポンプ6の少なくとも一方を制御する。
【0021】
排気口16は、エキゾーストマニホールドM2を介して排気管3に接続される。
【0022】
システム100は、ECU(制御装置)50を備える。ECU50は、1または複数のプロセッサ51(例えば、CPU等)と、1または複数の記憶媒体52(例えば、ROMおよびRAM等)と、1または複数のコネクタ53と、を有する。ECU50は、他の構成要素をさらに有してもよい。ECU50の構成要素は、バスによって互いに通信可能に接続される。記憶媒体52は、プロセッサ51によって実行される1または複数のプログラムを記憶する。プログラムは、プロセッサ51に対する命令を含む。ECU50の動作は、記憶媒体52に記憶された命令をプロセッサ51で実行することによって、実現される。ECU50は、コネクタ53を介してシステム100の構成要素と通信可能に接続される。
【0023】
続いて、噴射ノズル4について詳細に説明する。
【0024】
図2は、閉位置P1にあるプランジャ8を含む噴射ノズル4を示す概略的な断面図である。また、
図3は、開位置P2にあるプランジャ8を含む噴射ノズル4を示す概略的な断面図である。なお、より良い理解のために、
図2および
図3では、噴射ノズル4の一部のみ、すなわち、噴射口73を含む部分が示される。例えば、噴射ノズル4は、後述する触媒9およびヒータHを噴射ノズル4が含む点において、一般的な燃料用のインジェクタと異なってもよく、噴射ノズル4のその他の構造については、一般的な燃料用のインジェクタのものと同じまたは同様であってもよい。
図2を参照して、噴射ノズル4は、スリーブ7と、プランジャ8と、を含む。
【0025】
スリーブ7は、内壁71と、第1の弁座面72と、噴射口73と、を含む。
【0026】
内壁71は、例えば、円筒形状を有する。本実施形態において、内壁71の中心軸線方向、径方向および円周方向は、他に指示が無い限り、それぞれ単に中心軸線方向、径方向および円周方向と称され得る。内壁71は、中心軸線方向におけるスリーブ7の端面74から離間して形成される。
【0027】
第1の弁座面72は、中心軸線方向において内壁71に連続して形成される。例えば、第1の弁座面72は、截頭円錐台形状を有しており、端面74に向かって先細りにされる。例えば、第1の弁座面72は、内壁71の直径と略同じまたは小さい最外径を有する。中心軸線方向において、第1の弁座面72は、端面74の手前の位置まで延在する。
【0028】
噴射口73は、中心軸線方向において第1の弁座面72に連続して形成される。例えば、噴射口73は、円筒形状を有しており、端面74まで延在する。噴射口73は、端面74に開口する。例えば、噴射口73は、第1の弁座面72の最内径と同じ直径を有する。
【0029】
図4は、
図2中のIV-IV線に沿った断面図であり、噴射口73の断面を示す。本実施形態では、噴射口73は、1つの貫通孔73aを含む。
【0030】
図2に戻り、プランジャ8は、スリーブ7内に収容され、スリーブ7内を中心軸線方向に移動する。プランジャ8は、概ね円筒形状を有し、内壁71と同心に配置される。プランジャ8は、中心軸線方向にスリーブ7の端面74から近い順に、第2の弁座面81と、シャフト82と、を含む。
【0031】
第2の弁座面81は、閉位置P1において、スリーブ7の第1の弁座面72と接触する。第2の弁座面81は、第1の弁座面72と相補的な形状を有する。例えば、第2の弁座面81は、第1の弁座面72に嵌合可能な円錐形状を有する。第2の弁座面81は、スリーブ7の内壁71の直径よりも小さい最外径を有する。閉位置P1において、第2の弁座面81は、第1の弁座面72を封止し、後述するキャビティCを閉じる。したがって、第1の弁座面72および第2の弁座面81は、キャビティCを開閉する弁として機能する。
【0032】
シャフト82は、中心軸線方向において第2の弁座面81に連続して形成される。例えば、シャフト82は、円筒形状を有する。シャフト82は、スリーブ7の内壁71の直径よりも小さい直径を有する。
【0033】
スリーブ7の内壁71およびプランジャ8のシャフト82の間に、キャビティCが画定される。キャビティCは、タンク5と連通し、タンク5から受け取った過酸化物を収容する。
【0034】
図3を参照して、プランジャ8は、例えばソレノイドまたはモータ等の不図示のアクチュエータによって、第2の弁座面81が第1の弁座面72から離間するように、中心軸線方向に開位置P2へと移動される。開位置P2において、第2の弁座面81は、第1の弁座面72から離間し、キャビティCを開く。したがって、キャビティC内の過酸化物は、第1の弁座面72と第2の弁座面81との間の隙間75を介して、噴射口73に向かって流れる。アクチュエータは、ECU50と通信可能に接続される。ECU50は、プランジャ8の動作、すなわち、弁の動作を制御する。
【0035】
このような噴射ノズル4は、過酸化物の流れにおいて、キャビティCよりも下流に触媒9を含む。触媒9は、過酸化物を水および酸素に分解する。触媒9は、例えば酸化マンガンであってもよい。
【0036】
図2を参照して、本実施形態では、触媒9は、第1の弁座面72、噴射口73および第2の弁座面81に設けられる。なお、触媒9は、キャビティCが閉じられているときに、すなわち、プランジャ8が閉位置P1にあるときに、キャビティCに面する位置には設けられない。すなわち、触媒9は、キャビティCよりも下流の領域のうち、キャビティCが閉じられているときに、キャビティCに面しない位置に設けられる。例えば、触媒9は、第1の弁座面72および第2の弁座面81において、キャビティCに近い位置には設けられない。
【0037】
他の実施形態では、触媒9は、第1の弁座面72、噴射口73および第2の弁座面81のうちの少なくとも1つに設けられてもよい。また、触媒9は、第1の弁座面72、噴射口73または第2の弁座面81のうちの少なくとも1つにおいて、触媒9が閉位置P1においてキャビティCに面しない限りにおいて、全面に設けられてもよいし、または、部分的な領域のみに設けられていてもよい。
【0038】
触媒9は、例えば、バインダーとの混合物を塗布後、焼成によって定着させられることによって、第1の弁座面72、噴射口73および第2の弁座面81に設けられる。
【0039】
噴射ノズル4は、ヒータHを含む。ヒータHは、触媒9を加熱するように構成される。例えば、ヒータHは、触媒9の近傍においてスリーブ7の外面に取り付けられてもよい。ヒータHは、例えばPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ等、様々なヒータであることができる。ヒータHは、ECU50と通信可能に接続される。ECU50は、過酸化物の分解を促進する温度に触媒9を加熱するように、ヒータHの動作を制御する。
【0040】
続いて、噴射ノズル4の動作について説明する。
【0041】
プランジャ8が閉位置P1にある場合、キャビティCは閉じられ、タンク5からの過酸化物を収容する。この位置では、触媒9は、過酸化物と接触せず、過酸化物を分解しない。
【0042】
図3を参照して、アクチュエータがECU50からの指令に基づいてプランジャ8を開位置P2に移動させると、第1の弁座面72と第2の弁座面81との間に隙間75が形成され、ポンプ6からの圧力によって過酸化物が噴射口73に向かって流れる。
【0043】
隙間75および噴射口73を通過する間、過酸化物は、触媒9と接触する。したがって、過酸化物は、触媒9によって水および酸素に分解される。また、触媒9はヒータHによって適温まで加熱されるため、過酸化物の分解が促進される。分解の後すぐに、水および酸素を含むガスGは、噴射口73から吸気管2内の吸気に対して噴射(噴霧)される。したがって、十分に混ざった水および酸素を含むガスGが、吸気に対して噴射される。エンジン10の吸気は、噴射ノズル4からの水によって冷却される。
【0044】
図1を参照して、噴射ノズル4からの水および酸素を含む吸気は、燃焼室13に流入し、インジェクタ17からの燃料と混合される。混合気は、燃焼室13において燃焼される。上記のように、吸気は噴射ノズル4からの水によって冷却されるため、燃焼温度を低減することができる。したがって、燃焼効率を向上することができるとともに、ノッキングを抑制することができる。また、吸気に対して噴射ノズル4から酸素が加えられるため、吸気の圧力を増加させることができる。したがって、この点からも燃焼効率を向上することができる。
【0045】
以上、実施形態に係るシステム100は、エンジン10と、過酸化物のタンク5と、タンク5に接続され、エンジン10の吸気への噴射口73を含む噴射ノズル4と、を備える。噴射ノズル4は、タンク5から受け取った過酸化物を収容するキャビティCと、キャビティを開閉する第1の弁座面72および第2の弁座面81と、過酸化物の流れにおいてキャビティCよりも下流に設けられ、過酸化物を水および酸素に分解する触媒9と、を含む。この構成によれば、キャビティCが閉じている間は、触媒9は、過酸化物と接触せず、過酸化物を分解しない。キャビティCが開くと、過酸化物は、キャビティCの下流の触媒9と接触し、触媒9によって水および酸素に分解される。分解の後すぐに、水および酸素は噴射口73から噴射(噴霧)される。したがって、システム100によれば、噴射直前に過酸化溶液を水と酸素とに分解することができる。
【0046】
また、システム100では、噴射ノズル4は、触媒9を加熱するヒータHを含む。したがって、システム100によれば、過酸化物の分解を促進することができる。
【0047】
図5は、他の実施形態に係る噴射ノズル4Aを示す断面図であり、
図2中のIV-IV線に沿った位置の断面を示す。すなわち、
図5は、
図4と比較可能である。噴射ノズル4Aは、噴射口73が複数の貫通孔73bを含む点で、上記の噴射ノズル4と異なる。噴射ノズル4Aのその他の構成は、噴射ノズル4のものと同じであってもよい。本実施形態では、噴射口73は、6個の貫通孔73bを含む。しかしながら、貫通孔73bの数はこれに限定されず、噴射口73は、6個以外の複数の貫通孔73bを含んでもよい。
【0048】
この実施形態に係る噴射ノズル4Aは、上記の噴射ノズル4と同様な効果を奏する。また、噴射ノズル4Aは、触媒9が設けられる位置に複数の貫通孔73bを含む。したがって、過酸化物と触媒9との間の接触面積を増加することができる。よって、過酸化物の分解を促進することができる。
【0049】
図6は、さらに他の実施形態に係る噴射ノズル4Bを示す断面図であり、
図2中のIV-IV線に沿った位置の断面を示す。すなわち、
図6は、
図4と比較可能である。噴射ノズル4Bは、噴射口73内にメッシュ76を含む点で、上記の噴射ノズル4と異なる。噴射ノズル4Bのその他の構成は、噴射ノズル4のものと同じであってもよい。メッシュ76は、触媒9を含むように形成される。メッシュ76は、複数の貫通孔76aを含む。
【0050】
この実施形態に係る噴射ノズル4Bは、上記の噴射ノズル4と同様な効果を奏する。また、噴射ノズル4Bは、触媒9が設けられる位置に複数の貫通孔76aを含む。したがって、過酸化物と触媒9との間の接触面積を増加することができる。よって、過酸化物の分解を促進することができる。
【0051】
図7は、さらに他の実施形態に係る噴射ノズル4Cを示す断面図であり、
図2中のIV-IV線に沿った位置の断面を示す。すなわち、
図7は、
図4と比較可能である。噴射ノズル4Cは、噴射口73内に複数の突起73cを含む点で、上記の噴射ノズル4と異なる。噴射ノズル4Cのその他の構成は、噴射ノズル4のものと同じであってもよい。突起73cは、触媒9を含む。本実施形態では、噴射ノズル4Cは、5個の突起73cを含む。しかしながら、突起73cの数はこれに限定されず、噴射ノズル4Cは、5個以外の複数の突起73cを含んでもよい。本実施形態では、各突起73cは、三角形の断面を有しており、噴射口73は、星形の断面を有する。例えば、突起73cは、スリーブ7と一体的に形成される。例えば、噴射口73の星形の断面は、中心軸線方向に沿って円周方向に捻じれていてもよい。連続する一対の突起73cは、それらの間に溝を画定する。したがって、別の観点では、噴射ノズル4Cは、触媒9が設けられる位置に複数の溝を含む。
【0052】
この実施形態に係る噴射ノズル4Cは、上記の噴射ノズル4と同様な効果を奏する。また、噴射ノズル4Cは、触媒9が設けられる位置に複数の突起73cを含む。したがって、過酸化物と触媒9との間の接触面積を増加することができる。よって、過酸化物の分解を促進することができる。
【0053】
図8は、さらに他の実施形態に係る噴射ノズル4Dを示す断面図であり、
図2中のIV-IV線に沿った位置の断面を示す。すなわち、
図8は、
図4と比較可能である。噴射ノズル4Dは、噴射口73内に複数の突起73dを含む点で、上記の噴射ノズル4と異なる。噴射ノズル4Dのその他の構成は、噴射ノズル4のものと同じであってもよい。突起73dは、触媒9を含む。本実施形態では、噴射ノズル4Dは、8個の突起73dを含む。しかしながら、突起73dの数はこれに限定されず、噴射ノズル4Dは、8個以外の複数の突起73dを含んでもよい。本実施形態では、各突起73dは、四角形の断面を有している。例えば、突起73dは、スリーブ7と一体的に形成される。例えば、噴射口73の断面は、中心軸線方向に沿って円周方向に捻じれていてもよい。連続する一対の突起73dは、それらの間に溝を画定する。したがって、別の観点では、噴射ノズル4Dは、触媒9が設けられる位置に複数の溝を含む。
【0054】
この実施形態に係る噴射ノズル4Dは、上記の噴射ノズル4と同様な効果を奏する。また、噴射ノズル4Dは、触媒9が設けられる位置に複数の突起73dを含む。したがって、過酸化物と触媒9との間の接触面積を増加することができる。よって、過酸化物の分解を促進することができる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
例えば、上記の実施形態では、単一の噴射ノズル4が、インテークマニホールドM1の上流の吸気管2に設けられる。しかしながら、他の実施形態では、噴射ノズル4は、複数の気筒の各々の枝管21に設けられてもよい。
【0057】
また、さらに他の実施形態では、噴射ノズル4は、各シリンダヘッド等、各燃焼室13中の吸気に対して、水および酸素を直接的に噴射可能な位置に設けられてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、枝管21にO2センサS1が設けられる。他の実施形態では、例えば、排気管3に一般的に設けられるO2センサによって、噴射ノズル4からの水および酸素の噴射量を充分に制御できる場合には、枝管21のO2センサS1は省略されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
4 噴射ノズル
4A 噴射ノズル
4B 噴射ノズル
4C 噴射ノズル
4D 噴射ノズル
5 タンク(過酸化物の供給源)
9 触媒
10 エンジン
72 第1の弁座面(弁)
73 噴射口
73b 貫通孔
73c 突起
73d 突起
76a 貫通孔
81 第2の弁座面(弁)
100 エンジンシステム
C キャビティ
H ヒータ