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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-01
(45)【発行日】2025-07-09
(54)【発明の名称】駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/06 20060101AFI20250702BHJP
   B60W 50/10 20120101ALI20250702BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20250702BHJP
   B60R 99/00 20090101ALI20250702BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20250702BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W50/10
B60W50/14
B60R99/00 330
G08G1/16 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021121757
(22)【出願日】2021-07-26
(65)【公開番号】P2023017462
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2024-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古井地 正義
(72)【発明者】
【氏名】八木 音樹
(72)【発明者】
【氏名】グエン コンキエン
(72)【発明者】
【氏名】邉田 智美
(72)【発明者】
【氏名】原田 玲央
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-012908(JP,A)
【文献】特開2002-170103(JP,A)
【文献】特開2012-001144(JP,A)
【文献】特開2014-100958(JP,A)
【文献】特開2018-052462(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0307554(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0371181(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/06
B60W 50/10
B60W 50/14
B60R 99/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両を駐車場の駐車スペースに誘導させる駐車支援装置において、
前記自車両周囲の環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記自車両の駐車に必要な必要駐車幅を記憶する記憶部と、
前記環境情報取得部で取得した前記環境情報に基づいて前記駐車場に駐車している駐車車両を検出する駐車車両検出部と、
前記駐車車両検出部で検出した前記駐車車両の隣のスペースの幅と前記記憶部に記憶されている前記必要駐車幅とを比較して、該必要駐車幅以上のスペースか否かを判定するスペース判定部と、
前記スペース判定部で前記駐車車両の隣のスペースの幅が前記必要駐車幅以上と判定された場合、該スペースの奥に物標があるか否かを前記環境情報取得部で取得した前記環境情報に基づいて判定し、該物標が検出されていない場合、前記スペースは駐車不可であると判定する駐車可能スペース判定部と
を備え
前記駐車可能スペース判定部は、前記物標が検出された場合であっても、該物標が前記必要駐車幅内の奥で検出されない場合は前記スペースを駐車不可と判定する
ことを特徴とする駐車支援装置。
【請求項2】
前記駐車可能スペース判定部は、前記物標が前記必要駐車幅内の奥で検出された場合、前記スペースは駐車可能スペースであると判定する
ことを特徴とする請求項1記載の駐車支援装置。
【請求項3】
表示部を駆動させる表示駆動部を更に有し、
前記表示駆動部は、前記駐車可能スペース判定部で駐車不可と判定した前記スペースは表示せず、前記駐車可能スペースのみを前記表示部に表示させる
ことを特徴とする請求項2記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記表示部に表示された前記駐車可能スペースを運転者に選択させる選択部と、
運転者が前記表示部に表示された前記駐車可能スペースを選択した場合、該駐車可能スペースを目標駐車スペースに設定して、前記自車両を該目標駐車スペースに誘導する駐車誘導経路を設定する駐車支援部と
を更に有することを特徴とする請求項3記載の駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面に描画された駐車枠が認識できない駐車場での駐車支援に際し、駐車が禁止されている場所を駐車スペースとしてモニタに表示してしまうことを防止する駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車場に設定されている、駐車スペースを区画する駐車枠内に、運転者が自車両を駐車させる際の操作を支援し、運転者の負担を軽減する駐車支援装置が知られている。この種の駐車支援装置では、運転者が自車両を操作して駐車場内を走行させている際に、制御ユニットは、空いている駐車枠の候補を検出し、候補に掲げられた駐車枠をモニタに表示する。運転者は表示された駐車枠の候補から所望の駐車枠を選択する。
【0003】
すると、制御ユニットは、運転者が選択した駐車枠に自車両を駐車させるための駐車誘導経路を設定する。そして、制御ユニットが自車両を駐車誘導経路に沿って駐車枠に自動駐車させる。或いは、運転者がモニタに表示された駐車誘導経路に沿って、自車両を走行させて駐車枠に駐車させる。
【0004】
上述した従来の駐車支援装置では、自車両を駐車枠に駐車させるに際し、先ず、駐車可能な駐車枠を検出している。従って、駐車場の路面が積雪や冠水後に残った冠泥等によって覆われているために、路面に描画した駐車枠を認識することができない場合、駐車支援装置は自車両を駐車枠へ導く駐車誘導経路を構築することが困難になる。
【0005】
運転者は駐車支援装置による駐車支援を、好環境下よりも、駐車枠の認識が困難な悪環境下でより必要とする。例えば、特許文献1(特開2021-3926号公報)には、積雪により駐車場内の駐車枠が認識できなくなった場合、先ず、積雪上に刻まれた走行軌跡と判断される一対の轍の情報を取得し、駐車スペースの奥方向において当該轍が途切れる位置を、駐車時における自車両のタイヤの停止位置として設定する。そして、この停止位置に至るまでの一対の轍に沿って自車両を誘導する目標駐車誘導経路を設定するようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-3926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種の駐車支援制御では、先ず、駐車可能なスペース(駐車位置)をモニタに表示し、運転者が表示された駐車位置を選択することで、当該駐車位置に自車両を駐車させるための誘導経路を生成し、モニタに重畳表示させる。これを上述した文献に開示されている技術に適用すると、駐車場において一対の轍が検出された場合、当該スペースを目標駐車位置として設定してモニタに表示すると共に、誘導経路を重畳表示させることになる。
【0008】
しかし、雪上の轍は駐車スペースに形成されるばかりでなく、駐車場の通行帯にも形成される。特に、積雪量が多い場合、最初に形成された轍を、その後、何台もの車両がトレースして通過する場合が多い。その結果、駐車が禁止されている通行帯を駐車位置と誤認識してモニタに表示してしまう可能性があり、運転者に不快感を覚えさせてしまうことになる。
【0009】
本発明は、駐車スペースに駐車支援機能を利用して自車両を駐車させようとするに際し、路面に描画された駐車枠を認識することができない場合であっても、駐車が禁止されている位置を駐車スペースと誤認識する可能性を抑制し、運転者に与える不快感を軽減させることのできる駐車支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、自車両を駐車場の駐車スペースに誘導させる駐車支援装置において、前記自車両周囲の環境情報を取得する環境情報取得部と、前記自車両の駐車に必要な必要駐車幅を記憶する記憶部と、前記環境情報取得部で取得した前記環境情報に基づいて前記駐車場に駐車している駐車車両を検出する駐車車両検出部と、前記駐車車両検出部で検出した前記駐車車両の隣のスペースの幅と前記記憶部に記憶されている前記必要駐車幅とを比較して、該必要駐車幅以上のスペースか否かを判定するスペース判定部と、前記スペース判定部で前記駐車車両の隣のスペースの幅が前記必要駐車幅以上と判定された場合、該スペースの奥に物標があるか否かを前記環境情報取得部で取得した前記環境情報に基づいて判定し、該物標が検出されていない場合、前記スペースは駐車不可であると判定する駐車可能スペース判定部とを備え、前記駐車可能スペース判定部は、前記物標が検出された場合であっても、該物標が前記必要駐車幅内の奥で検出されない場合は前記スペースを駐車不可と判定する
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駐車車両の隣のスペースの幅が必要駐車幅以上と判定しても、この駐車スペースの奥に物標が検出されていない場合は駐車不可と判定するようにしたので、駐車スペースに駐車支援機能を利用して自車両を駐車させようとするに際し、駐車枠を認識することができない場合であっても、駐車が禁止されている位置を駐車スペースと誤認識する可能性が抑制され、運転者に与える不快感を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】駐車支援装置の概略構成図
図2】駐車支援制御ルーチンを示すフローチャート
図3】駐車支援モード実行サブルーチンを示すフローチャート
図4】悪環境下駐車支援サブルーチンを示すフローチャート
図5】駐車スペースの検索状態を示す俯瞰図
図6A】隣接する駐車車両からの自車両の必要駐車幅を示す説明図
図6B】駐車車両間の駐車スペース幅が自車両の必要駐車幅よりも狭い状態を示す説明図
図7】モニタの表示対象となる駐車スペースの俯瞰図
図8】モニタの表示対象とならない駐車スペースの俯瞰図
図9】駐車場全体で検出した駐車スペースを示す俯瞰図
図10A】HMIモニタに駐車スペースを俯瞰で表示した状態を示す説明図
図10B】HMIモニタに俯瞰で表示した駐車スペースを運転者が選択した状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1に示す駐車支援装置1は自車両M(図5参照)に搭載されている。この駐車支援装置1は運転支援制御ユニット11を備えている。この運転支援制御ユニット11は、CPU、RAM、ROM、書き換え可能な不揮発性メモリ(フラッシュメモリ又はEEPROM)、及び周辺機器を備えるマイクロコントローラで構成されている。ROMにはCPUにおいて各処理を実行させるために必要なプログラムや固定データ等が記憶されている。又、RAMはCPUのワークエリアとして提供され、CPUでの各種データが一時記憶される。尚、CPUはMPU(Microprocessor)、プロセッサとも呼ばれている。又、CPUに代えてGPU(Graphics Processing Unit)やGSP(Graph Streaming Processor)を用いても良い。或いはCPUとGPUとGSPとを選択的に組み合わせて用いても良い。
【0014】
この運転支援制御ユニット11は、運転者が所望の支援モードを設定すると、対応する支援モードによる運転支援を行う。運転支援制御ユニット11は、支援モードとして運転支援モードと駐車支援モードとを備えている。
【0015】
運転支援モードは、後述する地図ロケータユニット22のGNSSセンサ22aで取得した自車位置情報に基づき、道路地図データベース22bの道路地図上にマップマッチングし、予め設定されている目標進行路に沿って、自動運転が可能な区間を自律走行させる。又、この運転支援モードは自動運転が困難な走行路では、周知の追従車間距離(ACC:Adaptive Cruise Control)制御、車線維持(ALK:Active Lane Keep)制御、車線逸脱抑制(LDP:Lane Departure Prevention)制御を実行させて、自車両Mが車線に沿い、且つ先行車を検出した場合は、当該先行車に追従して走行する走行制御を実行させる。
【0016】
一方、駐車支援モードは、自車両Mが駐車場に進入し、運転者自らの運転で駐車場内を走行するに際し、運転者が当該モードを選択すると、運転支援制御ユニット11は駐車可能な駐車スペースを検索して、運転者に報知する。そして、運転者が駐車可能な駐車スペースの中から所望の駐車スペースを選択すると、選択した駐車スペースに自車両Mを自動的に駐車させる。或いは、当該駐車スペースに対して自車両を駐車させるための駐車誘導経路を、後述するHMIモニタ31に表示させた周辺画像と自車両Mの画像の俯瞰に重畳表示させて、運転者が自らの操作で駐車する際の駐車支援を行う。
【0017】
又、運転支援制御ユニット11の入力側には、運転支援モード、及び駐車支援モードを実行させる際に必要とする、自車両Mの走行状態情報(位置、方角を含む)、及び自車両Mの周辺環境情報を取得するセンサ・ユニット類が接続されている。
【0018】
各支援モードを実行するに際し必要とするセンサ・ユニット類として、本実施形態では、前方認識センサ21、地図ロケータユニット22、自律走行センサ23、ブレーキペダルの踏込みを検出してONするブレーキセンサ24、運転者がセレクトレバーを操作して選択したセレクトポジションを検出するセレクトポジションセンサ25、自車両Mの後方の環境情報を取得する後方センサ26、左右前側方センサ27、左右後側方センサ28、及び左右前側方認識カメラ29を備えている。尚、各センサ21、26~29で、本発明の環境情報取得部が構成されている。
【0019】
前方認識センサ21はイメージセンサであり、本実施形態ではCCDやCMOS等を撮像素子とする、メインカメラ21aとサブカメラ21bとからなるステレオカメラ、及び画像処理ユニット(IPU)21cを有している。両カメラ21a,21bは所定の基線長を有して、例えば車内前部のルームミラー上方であって、フロントガラスに近接する位置の車幅方向中央から左右に等間隔を開けて水平な状態で設置されている。前方認識センサ21は両カメラ21a,21bで撮像した所定領域の環境情報の画像をIPU21cで画像処理した後、運転支援制御ユニット11へ送信する。
【0020】
又、地図ロケータユニット22は、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサ22aと道路地図データベース22bとを備えている。GNSSセンサ22aは複数の測位衛星から発信される測位信号を受信して自車両Mの位置座標を取得する。又、道路地図データベース22bはHDD等の大容量記憶媒体であり、道路地図情報が記憶されている。この道路地図データベース22bに記憶されている道路地図情報としては、運転支援モード実行時に必要とする道路情報(一般道路、幹線道路、高速道路、道路形状、道路方位、車線数、車線幅等)、及び駐車支援モードを実行する際に必要とする駐車場の静的情報(駐車場への入出口の位置情報、敷地内のスペース情報等)が記憶されている。
【0021】
運転支援制御ユニット11は、GNSSセンサ22aが取得した自車両Mの位置座標(緯度、経度、高度)を、道路地図データベース22bに記憶されている道路地図情報上にマップマッチングして、道路地図上における自車位置(現在位置)を推定する。
【0022】
自律走行センサ23は、自車両Mを自律走行させる際に必要とするセンサの総称であり、自車両Mの車速(自車速)を検出する車速センサ、自車両Mに作用するヨーレートを検出するヨーレートセンサ、前後加速度を検出する前後加速度センサ等で構成されている。
【0023】
又、後方センサ26は、CCDやCMOS等を撮像素子とする単眼カメラと超音波センサ、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ、赤外線センサ、レーザレーダ、LiDAR(Light Detection And Ranging)等のうち少なくとも一つとの組み合わせで構成されている。或いは、この後方センサ26は、上述した前方認識センサ21と同様、メインカメラとサブカメラとからなるステレオカメラであっても良い。
【0024】
又、左右前側方センサ27は、例えば、自車両Mのフロントバンパの左右稜部にそれぞれ配設されて、自車両Mの左右斜め前方から側方にかけての領域(走査領域)を扇状に走査する。一方、左右後側方センサ28は、例えば、リヤバンパの左右稜部に配置されて、自車両Mの後方から左右にかけての、左右前側方センサ27では走査することのできない領域を扇状に走査する。この各側方センサ27,28は、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ、LiDAR等からなり、物標(駐車支援モードであれば駐車車両Pvや外壁)からの反射波を受信して、自車両Mから物標(駐車車両Pvや外壁)までの距離及び方角等の環境情報を取得する。
【0025】
更に、左右前側方認識カメラ29は、左右のサイドミラ付近に装着されて、前方認識センサ21の画角に収められない自車両Mの側方の駐車枠線の有無、轍の有無、足跡の有無などを認識する。この左右前側方認識カメラ29は、CCDやCMOS等の撮像素子と画像処理ユニットとを備えており、撮像素子で撮像した前側方の環境情報の画像を画像処理ユニットで画像処理した後、運転支援制御ユニット11へ送信する。
【0026】
又、運転支援制御ユニット11はHMI(Human Machine Interface)モニタ31と接続されている。このHMIモニタ31には、運転支援制御ユニット11において実行する支援モードとして、運転者が運転支援モードと駐車支援モードとの何れかを選択するモード選択画面、駐車可能な駐車スペースを表示して運転者に選択させる駐車スペース選択画面(図10A図10B参照)等が表示される。因みに、このHMIモニタ31はコンビネーションメータのマルチインフォメーションディスプレイやカーナビゲーションシステムのナビ表示装置(ナビモニタ)と兼用されていても良い。
【0027】
又、この運転支援制御ユニット11の出力側に駆動制御アクチュエータ32及び報知装置33が接続されている。この駆動制御アクチュエータ32は、自車両Mの走行状態を支援する、パワーアクチュエータ、電動パワーステアリング(EPS)アクチュエータ、ブレーキアクチュエータ等の総称である。ここで、パワーアクチュエータはエンジンや電動モータ等の駆動源の出力を制御する。EPSアクチュエータはEPSモータの駆動を制御する。又、ブレーキアクチュエータは、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに対して供給するブレーキ油圧を調整する。更に、報知装置33は、各支援モードを実行している際に必要とする各種インフォメーションを運転者に音声で報知するものである。
【0028】
運転支援制御ユニット11は、自車両Mを運転者に代わって駐車スペースに駐車させる、或いは運転者が自らの運転で自車両Mを駐車スペースに駐車させようとする際に支援する駐車支援制御機能を備えている。運転支援制御ユニット11で実行する駐車支援制御は、具体的には、図2に示す駐車支援制御ルーチンに従って処理される。このルーチンはシステムが起動した後、所定演算周期毎に実行される。
【0029】
このルーチンでは、先ず、ステップS1において、地図ロケータユニット22で推定した自車位置情報を取得し、ステップS2へ進み、自車位置情報に基づき、自車位置の周辺地図情報を地図ロケータユニット22から取得する。
【0030】
次いで、ステップS3へ進み、自車位置を周辺地図にマップマッチングし、自車両Mが駐車場に進入しているか否かを調べる。そして、駐車場に進入していると判定した場合は、ステップS4へ進む。又、駐車場に進入していないと判定した場合はルーチンを抜ける。
【0031】
ステップS4へ進むと、運転者に対して、支援モードを駐車支援モードに設定するか否かのアナウンスを報知装置33から音声で報知すると共に、HMIモニタ31に駐車支援モードの選択画面を表示してステップS5へ進む。ステップS5へ進むと、運転者が駐車支援モードを選択したか否かを判定し、運転支援モードを選択した場合、ステップS6へ進む。又、アナウンス後所定時間経過しても、運転者が運転支援モードを選択しない場合、或いは運転者が手動運転をHMIモニタ31上で選択した場合は、そのままルーチンを抜ける。
【0032】
ステップS6へ進むと、駐車支援モードを実行してルーチンを抜ける。この駐車支援モードは、図3に示す駐車支援モード実行サブルーチンに従って実行される。このサブルーチンでは、運転者自らの運転で自車両Mを駐車場の通行帯に沿って低速走行させている際に、先ず、ステップS11で、前方認識センサ21、左右前側方センサ27、及び左右前側方認識カメラ29で認識した前方・前側方環境情報を取得する。
【0033】
次いで、ステップS12へ進み、取得した前方・前側方環境情報から、通行帯の左右に駐車している車両(駐車車両)Pvを検出する。図5に示すように、自車両Mが通行帯を低速走行しながら、取得した前方・前側方環境情報に基づいて、通行帯の左右に並列駐車している車両(駐車車両)Pvを検出する。尚、このステップでの処理が、本発明の駐車車両検出部に対応している。
【0034】
その後、ステップS13へ進み、検出した駐車車両Pvの隣に駐車スペースがあるか否かを調べる。この駐車スペースは、後述する駐車枠で区画された所定の駐車幅を有する、通常駐車する際のスペースで、予め設定された固定値である。そして、駐車スペースが検出されない場合は、ステップS14へ分岐し、又、駐車スペースが検出された場合は、ステップS15へ進む。
【0035】
ステップS14へ分岐すると、駐車支援モードが終了したか否かを調べ、終了と判定した場合は、ルーチンを抜ける。一方、駐車支援モードが継続されている場合は、ステップS11へ戻り、ステップS11~S13の処理を繰り返す。駐車支援モードの終了は、運転者がHMIモニタ31等を介した操作で行う。或いは、この駐車支援モードは、運転支援制御ユニット11が自車両Mの駐車場からの退出を検出した際に自動的に終了される。
【0036】
一方、ステップS13からステップS15へ進むと、通行帯の左右に描画されている、駐車スペースを区画するために路面に描画された駐車枠が認識されているか否かを調べる。この駐車枠は、例えば、前方認識センサ21、左右前側方センサ27、及び左右前側方認識カメラ29で取得した前方・前側方環境情報から、路面と駐車枠のエッジとの輝度差、又は路面と駐車枠とからの反射光或いは反射波の強度の変化(反射率)から認識する。
【0037】
そして、運転支援制御ユニット11は駐車枠が認識されていると判定した場合は、ステップS16へ進み、好環境下駐車支援処理を実行してルーチンを抜ける。尚、この好環境下駐車支援処理は、駐車枠を基準として自車両Mを駐車スペースに誘導させる、従来の駐車支援と同じであるため説明を省略する。
【0038】
一方、駐車枠が認識できない、すなわち、駐車場の路面が積雪や冠水後に残った冠泥等によって覆われているために、路面に描画した駐車枠を認識することができないと判定した場合は、ステップS17へ進み、悪環境下駐車支援処理を実行してルーチンを抜ける。この悪環境下駐車支援処理は、図4に示す悪環境下駐車支援サブルーチンに従って実行される。
【0039】
このサブルーチンのステップS21では、検出した駐車車両Pvの隣にある駐車スペースの幅が予め設定されている必要駐車幅Ws以上あるか否かを調べる。尚、このステップでの処理が、本発明のスペース判定部に対応している。
【0040】
図6Aに示すように、必要駐車幅Wsは、自車両Mの車幅に、自車両Mの左右のドアを開けた際に乗員が充分に乗降できる余裕幅(2・Wm)を加算した値で、ROMや不揮発性メモリ等の記憶部に固定データとして予め記憶されている。
【0041】
駐車車両Pvの隣に必要駐車幅Ws分のスペースが空いているか否かは、当然1台の駐車車両Pvから必要駐車幅Wsだけ離間した場所に他の駐車車両Pvが存在していなければ、駐車スペースありと判定する。従って、駐車スペースがあるか否かは、図6Aに示すように、1台の駐車車両Pvを基準としてスペースが必要駐車幅Ws以上開いていれば良いため、必ずしも2台の駐車車両Pv間の幅を計測する必要はない。
【0042】
そして、必要駐車幅Ws以上の駐車スペースありと判定した場合は、ステップS22へ進む。又、図6Bに示すように、2台の駐車車両Pvが並列駐車しており、その間のスペースが、必要駐車幅Wsよりも狭い場合は駐車スペースなしと判定し、ステップS29へジャンプする。
【0043】
ステップS22へ進むと、駐車スペースの自車両Mを駐車させようとする必要駐車幅Wsの奥に物標が検出されているか否かを調べる。この物標は駐車車両Pvや外壁であり、前方認識センサ21、左右前側方センサ27、及び左右前側方認識カメラ29で取得した前方・前側方環境情報に基づいて認識する。尚、このステップS22での処理が、本発明の駐車可能スペース判定部に対応している。
【0044】
そして、当該駐車スペースであって、必要駐車幅Wsの範囲の奥に物標が検出された場合は、駐車可能と判定しステップS23へ進む。又、駐車スペースの奥に物標が検出されていない場合は、駐車不可と判定してステップS29へジャンプする。例えば、図5に示すように、右側手前と左側奥にハッチングで示す駐車スペースA,Cは、必要駐車幅Wsの範囲の奥に駐車車両Pvが駐車されているため駐車可能と判定される。一方、右側中程の一点鎖線で示す駐車スペースBは、少なくとも必要駐車幅Wsの範囲の奥に物標(図においては駐車車両Pv)が検出されていないため、駐車不可と判定される。
【0045】
又、例えば、図7に示すように、自車両Mが走行している通行帯に対して、入出可能に並列駐車している駐車車両Pvの隣に、必要駐車幅Wsよりも広い駐車スペースがあり、その必要駐車幅Wsの奥に物標である他の駐車車両Pvが駐車している場合、この駐車スペースは通り抜けできないため、駐車可能スペースPsであると判定することができる。その際、同図に示すように、当該駐車スペースに轍101や靴跡51が検出されたとしても、これらは、この駐車スペースに入出した車両の轍101、及び当該車両に乗降した乗員の靴跡51であると推定できる。
【0046】
これに対し、図8に示すように、駐車スペースの必要駐車幅Wsの範囲の奥に物標が検出されない場合、車両や通行人が通り抜け可能であり、通行帯や歩道等、駐車が禁止されている場所である可能性が高く駐車不可と判定する。
【0047】
そして、駐車スペースの奥に物標である駐車車両Pvが駐車していると判定し、ステップS23へ進むと、表示部としてのHMIモニタ31を駆動させて、このHMIモニタ31に当該駐車可能スペースPsを俯瞰表示させる。尚、このステップでの処理が、本発明の表示駆動部に対応している。
【0048】
次いで、ステップS24へ進み、報知装置33を駆動して、HMIモニタ31に表示された駐車可能スペースPsを選択するか否かのアナウンスを運転者に対して行う。図5にハッチングで示すように、駐車可能な駐車スペースは、自車両Mが当該駐車スペースに近づき、その脇を通過する際に検出され、図10Aに示すように、その都度、HMIモニタ31に駐車可能スペースPsを表示する。従って、自車両Mが、図5図9に示す駐車スペースBの横を通過しても、この駐車スペースBは駐車不可と判定されているため、HMIモニタ31には表示されない。
【0049】
その後、ステップS25へ進み、運転者が今回の駐車可能スペースPsを選択したか否かを判定する。例えば、図5に示す駐車場では、自車両Mが走行する通行帯の左右には、手前右側と奥左側にハッチングで示す駐車可能な駐車スペースA,Cがある。又、右中程の駐車スペースBは、少なくとも必要駐車幅Ws内の奥に物標が検出されていないため、駐車不可と判定される。尚、ステップS23~S25での処理が、本発明の選択部に対応している。
【0050】
駐車スペースCは、当該駐車スペースに自車両Mが差し掛かった際に、図10Bに示すように、HMIモニタ31に駐車可能スペースPsとして表示される。
【0051】
そして、ステップS25で、運転者がHMIモニタ31に表示された駐車可能スペースPsを選択したと判定した場合、ステップS26へ進む。又、アナウンス後所定時間経過し、或いは自車両MがHMIモニタ31に表示された駐車可能スペースの前を通過した場合、ステップと27へ分岐する。
【0052】
例えば、図5に示す右側手前の駐車スペースが、HMIモニタ31に駐車可能スペースPsとして表示された場合であっても、運転者は当該駐車可能スペースPsを選択せずに通過した場合、ステップS27へ分岐する。
【0053】
ステップS27へ分岐すると、HMIモニタ31に表示されている駐車可能スペースPsをクリアし、ステップS29へ進み、駐車支援モードが終了したか否かを調べ、終了と判定した場合は、ルーチンを抜ける。一方、駐車支援モードが継続されている場合は、図3のステップS11へ戻り、次の駐車車両Pvを前方・前側方環境情報に基づいて検出する。尚、駐車支援モードの終了は、上述したステップS14での処理と同じである。
【0054】
又、自車両Mが、図5の奥左側のハッチングで示す駐車スペースに差し掛かり、当該駐車スペースを駐車可能スペースPsと認識し、図10Bに示すようにHMIモニタ31に表示した際に、運転者が表示されている駐車可能スペースPsをタッチすると、ステップS25で選択ありと判定して、ステップS26へ進む。
【0055】
ステップS26へ進むと、運転支援制御ユニット11は、運転者が選択した駐車可能スペースPs(図5では奥左側)に目標駐車スペースPt(図9図10B参照)を設定して、ステップS28へ進む。ステップS28では、目標駐車スペースPtに自車両Mを誘導する目標駐車誘導経路Grを構築し、この目標駐車誘導経路Grに沿って自車両Mを自動駐車させる制御を実行してルーチンを終了する。尚、ステップS26,S28での処理が、本発明の駐車支援部に対応している。
【0056】
すなわち<、運転支援制御ユニット11による自動駐車支援では、先ず、図9に示すように、運転者が選択した駐車可能スペースPsに基準となる駐車車両Pv(図9では左奥手前の駐車車両Pv)から必要駐車幅Ws分の仮想駐車枠を設定し、この仮想駐車枠を目標駐車スペースPtとして設定し、この目標駐車スペースPtに自車両Mを誘導させるための目標駐車誘導経路Grを設定する。この目標駐車誘導経路Grは、目標駐車スペースPtの幅方向中央に、自車両Mの車幅方向中央が一致するように設定する。或いは、例えば、必要駐車幅Wsに対して、駐車可能スペースPsの幅が所定以下(例えば、2倍)の場合は、当該駐車可能スペースPsの幅方向中央を目標駐車スペースPtの幅方向中央に設定するようにしても良い。
【0057】
その後、運転支援制御ユニット11は自車両Mを目標駐車スペースPtに所定に自動駐車させた後、ルーチンを終了する。
【0058】
その結果、例えば、図9に示すように、自車両Mが駐車場の通行帯を周回することで、駐車場に駐車されている駐車車両Pv全体の位置情報を取得することができる。同図にハッチングで示す駐車可能スペースPsに自車両Mが差し掛かる都度、HMIモニタ31に当該駐車可能スペースPsを俯瞰で表示する。
【0059】
このように、本実施形態では、自車両を駐車場の駐車スペースに自動駐車させようとするに際し、先ず、駐車車両Pvの隣に自車両Mを駐車させる駐車スペースがあるか否かを調べ、駐車スペースが検出された場合、当該駐車スペースにおいて、駐車スペースを区画する駐車枠が認識されているか否かを調べる。そして、駐車枠が積雪や冠泥等で覆われて認識することができないとき、悪環境下駐車支援処理を実行する。
【0060】
悪環境下駐車支援処理では、駐車車両Pvの隣に検出した駐車スペースが必要駐車幅Ws以上あるか否かを調べる。そして、必要駐車幅Ws以上の駐車スペースが検出された場合であっても、この駐車スペースの奥に物標が検出されない場合は、駐車が禁止されている場所であると推定している。これにより、駐車が禁止されている位置を駐車スペースと誤認識する可能性が抑制され、運転者に与える不快感を軽減させることができる。
【0061】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば、上述したステップS29の処理では、HMIモニタ31に、駐車しようとする駐車スペース周辺の俯瞰に目標駐車誘導経路Grを重畳表示させ、運転者が自らの運転で自車両Mを目標駐車誘導経路Grに沿って駐車させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0062】
1…駐車支援装置、
11…運転支援制御ユニット、
21…前方認識センサ、
21a…メインカメラ、
21b…サブカメラ、
21c…画像処理ユニット(IPU)、
22…地図ロケータユニット、
22a…GNSSセンサ、
22b…道路地図データベース、
23…自律走行センサ、
24…ブレーキセンサ、
25…セレクトポジションセンサ、
26…後方センサ、
27…左右前側方センサ、
28…左右後側方センサ、
29…左右前側方認識カメラ、
31…HMIモニタ、
32…駆動制御アクチュエータ、
33…報知装置、
51…靴跡、
101…轍、
A~C…駐車スペース、
Gr…目標駐車誘導経路、
M…自車両、
Ps…駐車可能スペース、
Pt…目標駐車スペース、
Pv…物標(駐車車両)、
Ps…駐車可能スペース、
Ws…必要駐車幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B