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特許7705346ニトロシル化プロパンジオールの調製プロセス、それを含む組成物、医薬製剤、キットオブパーツ、及び組み合わせ生成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-01
(45)【発行日】2025-07-09
(54)【発明の名称】ニトロシル化プロパンジオールの調製プロセス、それを含む組成物、医薬製剤、キットオブパーツ、及び組み合わせ生成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 201/04 20060101AFI20250702BHJP
   C07C 203/04 20060101ALI20250702BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250702BHJP
【FI】
C07C201/04
C07C203/04
C07B61/00 300
【請求項の数】 45
(21)【出願番号】P 2021530311
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2019082800
(87)【国際公開番号】W WO2020109420
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】1819298.9
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521230137
【氏名又は名称】アッテジェノ アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】ATTGENO AB
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】アグヴァルド ペール ホーカン
(72)【発明者】
【氏名】アディング レイフ クリストフェル
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン クリストファー ボー インゲマル
(72)【発明者】
【氏名】ミニディス アンナ レーナ エリーサベト
(72)【発明者】
【氏名】マルムバリ ヨーアン サルマン
(72)【発明者】
【氏名】ミニディス アレクサンデル ボグダン エーミル
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08030511(US,B1)
【文献】国際公開第2014/160187(WO,A1)
【文献】特表2009-534298(JP,A)
【文献】特表2004-508337(JP,A)
【文献】特表2004-537587(JP,A)
【文献】特表平06-510800(JP,A)
【文献】米国特許第05646181(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 201/
C07C 203/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの1つ以上の化合物を含む組成物の調製のためのプロセスであって、
【化1】
式中、R、R、及びRはそれぞれ独立に、H又は-NOを示し、
nは、0又は1であり、
nが0である場合、RはHであり、
nが1である場合、RはHであり、
、R、及びRのうちの少なくとも1つは-NOを示し、
前記プロセスは、
(i)式Iの化合物であってR、R、及びRがHである化合物と、ニトライトの供給源を反応させるステップを含み、
前記ニトライトの供給源がニトライト部分を提供する有機化合物である場合、ステップ(i)は、適切な有機溶媒中で実行され、
前記ニトライトの供給源がニトライト部分を提供する無機化合物である場合、ステップ(i)は、水相及び非水相を含む二相の溶媒混合物の中で実行され、
前記式Iの1つ以上の化合物と、前記式Iの化合物であってR、R、及びRがHである化合物と、を組み合わせた混合物が、前記式Iの1つ以上の化合物を0.01重量%~9重量%含むように、前記式Iの化合物であってR、R、及びRがHである化合物のさらなる量を添加する、プロセス。
【請求項2】
ステップ(i)が適切な酸の存在下で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ニトライト部分を提供する無機化合物が金属亜硝酸塩である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記金属亜硝酸塩がアルカリ土類金属亜硝酸塩である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記金属亜硝酸塩がアルカリ金属亜硝酸塩である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項6】
前記アルカリ金属亜硝酸塩が亜硝酸ナトリウムである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ニトライト部分を提供する有機化合物が亜硝酸アルキルである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項8】
前記亜硝酸アルキルが亜硝酸tert-ブチルである、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記適切な酸が強酸である、請求項2~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記強酸が強鉱酸である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記強鉱酸が硫酸である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記非水相が水非混和性有機溶媒を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記水非混和性有機溶媒が、水非混和性非プロトン性有機溶媒である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記水非混和性有機溶媒がジクロロメタンである、請求項12又は13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記水非混和性有機溶媒がtert-ブチルメチルエーテルである、請求項12又は13に記載のプロセス。
【請求項16】
前記溶媒混合物が、前記式Iの化合物であってR、R、及びRがHである化合物を過剰にさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
ステップ(i)の後に、
(ii)前記溶媒混合物から水相のすべてを除去するステップをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
ステップ(i)の後に、
(ii)前記水相(すなわち水)の一部を除去するステップと、
(iii)残りの有機相を1つ以上のさらなる水相で洗浄するステップをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
ステップ(ii)において、前記水相(すなわち水)のすべてを除去する、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
ステップ(iii)の後に、ステップ(ii)及び(iii)を1回以上繰り返す、請求項18又は19に記載のプロセス。
【請求項21】
ステップ(iv)の後に、
(v)前記有機相を減少させる(すなわち、量/体積を減少させる)ステップをさらに含む、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
ステップ(v)の後に、
(vi)生成物を乾燥させるステップと、をさらに含み、
ステップ(ii)~(vi)は、ステップ(ii)~(iv)がステップ(v)及び(vi)の前に実行されるという条件で、任意の順序で実行され得る、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
組成物であって、
(a)式Iの1つ以上の化合物と、
【化2】
式中、R、R、及びRはそれぞれ独立に、H又は-NOを示し、
nは、0又は1であり、
nが0である場合、RはHであり、
nが1である場合、RはHであり、
、R、及びRのうちの少なくとも1つは-NOを示し、
(b)式Iの化合物であってR、R、及びRがHである化合物と、を含み、
当該組成物は、0.01重量%~9重量%の前記式Iの1つ以上の化合物を含み、
成分(a)及び(b)の合計量が少なくとも80重量%で存在する、組成物。
【請求項24】
前記組成物が、1重量%未満の水を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
組成物であって、
(a)式Iの1つ以上の化合物と、
【化3】
式中、R、R、及びRはそれぞれ独立に、H又は-NOを示し、
nは、0又は1であり、
nが0である場合、RはHであり、
nが1である場合、RはHであり、
、R、及びRのうちの少なくとも1つは-NOを示し、
(b)式Iの化合物であってR、R、及びRがHである化合物と、を含み、
当該組成物は、0.01重量%~9重量%の前記式Iの1つ以上の化合物を含み、
当該組成物は、1重量%未満の水を含む、組成物。
【請求項26】
前記組成物が、溶解した一酸化窒素を含まない、請求項23~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が、前記式Iの1つ以上の化合物と、前記式Iの化合物であってR、R、及びRがHである化合物とから本質的になる、請求項23~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
請求項23~27のいずれか一項に記載の組成物を含む、医薬製剤。
【請求項29】
前記医薬製剤が、1つ以上の医薬的に許容され得る賦形剤を含み、前記1つ以上の医薬的に許容され得る賦形剤が非水性である、請求項28に記載の医薬製剤。
【請求項30】
キットオブパーツであって、
(A)請求項28又は29に記載の医薬製剤と、
(B)適切な水性緩衝液と、を含み、
構成要素(A)及び(B)が、互いに投与するのに適した形態で提供される、キットオブパーツ。
【請求項31】
組み合わせ生成物であって、
(A)請求項28又は29に記載の医薬製剤と、
(B)適切な水性緩衝液と、をともに混合することによって形成された、組み合わせ生成物。
【請求項32】
前記医薬製剤と前記適切な水性緩衝液との体積比が3:7~1:99である、請求項30に記載のキットオブパーツ、又は請求項31に記載の組み合わせ生成物。
【請求項33】
前記適切な水性緩衝液が非求核性で弱塩基性である、請求項30又は32に記載のキットオブパーツ、又は請求31又は32に記載の組み合わせ生成物。
【請求項34】
前記適切な水性緩衝液が7.1~10のpHを維持する、請求項30、32及び33のいずれか一項に記載のキットオブパーツ、又は請求項31~33のいずれか一項に記載の組み合わせ生成物。
【請求項35】
前記適切な水性緩衝液が炭酸緩衝液もしくはリン酸緩衝液、又はそれらの混合物である、請求項30及び32~34のいずれか一項に記載のキットオブパーツ、又は請求項31~34のいずれか一項に記載の組み合わせ生成物。
【請求項36】
請求項31及び33~35のいずれか一項に記載の組み合わせ生成物を調製するためのプロセスであって、
(A)請求項28又は29に記載の医薬製剤と、
(B)請求項33~35のいずれか一項に定義されている適切な水性緩衝液と、をともに混合するステップを含む、プロセス。
【請求項37】
NOの投与が有益な効果を有する状態の治療に使用するための、請求項23~27のいずれか一項に記載の組成物、請求項28又は29に記載の医薬製剤、請求項30及び32~35のいずれか一項に記載のキットオブパーツ、又は請求項31~35のいずれか一項に記載の組み合わせ生成物。
【請求項38】
NOの投与が有益な効果を有する状態の治療に使用するための医薬製剤又は組み合わせ生成物であって、それを必要とする患者に治療有効量の当該医薬製剤又は当該組み合わせ生成物を投与する、請求項28又は29に記載の医薬製剤、又は請求項31~35のいずれか一項に記載の組み合わせ生成物。
【請求項39】
NOの投与が有益な効果を有する状態の治療に使用するためのキットオブパーツ又は組み合わせ生成物であって、それを必要とする患者に治療有効量の構成要素である、
(A)請求項28又は29に記載の医薬製剤と、
(B)請求項32~35のいずれか一項に定義されている適切な水性緩衝液と、を投与することを含み、
前記構成要素(A)及び(B)が、投与前に混合される、請求項30及び32~35のいずれか一項に記載のキットオブパーツ、又は請求項31~35のいずれか一項に記載の組み合わせ生成物。
【請求項40】
前記状態が、様々な起源の急性肺血管収縮;原発性高血圧及び続発性高血圧を含む様々な起源の肺高血圧症;血管拡張を必要とする様々な起源の状態;様々な起源の全身性高血圧;様々な起源の限局性血管収縮;様々な起源の局所血管収縮;急性心不全(保存された駆出率(HFpEF)の有無にかかわらず);冠状動脈性心臓病;心筋梗塞;虚血性心疾患;狭心症;不安定狭心症;心不整脈;心臓外科患者の急性肺高血圧症;アシドーシス;気道の炎症;嚢胞性線維症;COPD;不動繊毛症候群;肺の炎症;肺線維症;成人呼吸窮迫症候群;急性肺水腫;急性高山病;喘息;気管支炎;様々な起源の低酸素症;脳卒中;脳血管収縮;胃腸管の炎症;胃腸機能障害;胃腸の合併症;IBD;クローン病;潰瘍性大腸炎;肝疾患;膵臓疾患;尿道の膀胱の炎症;皮膚の炎症;糖尿病性潰瘍;糖尿病性ニューロパチー;乾癬;様々な起源の炎症;創傷治癒;虚血再灌流状態における臓器保護;臓器移植;組織移植;細胞移植;急性腎疾患;子宮の弛緩;子宮頸部の弛緩;及び平滑筋の弛緩が必要な状態からなる群から選択される、
請求項37に記載の組成物、請求項37又は38に記載の医薬製剤、請求項37又は39に記載のキットオブパーツ、又は請求項37~39のいずれか一項に記載の組み合わせ生成物。
【請求項41】
前記構成要素(A)及び(B)の前記混合が前記患者への投与の直前に実行される、請求項39又は40に記載のキットオブパーツ、又は請求項39又は40に記載の組み合わせ生成物。
【請求項42】
前記投与が同時投与によって行われる、請求項41に記載のキットオブパーツ、又は請求項41に記載の組み合わせ生成物。
【請求項43】
前記混合が混合流プロセスによって実行される、請求項39~42のいずれか一項に記載のキットオブパーツ、又は請求項39~42のいずれか一項に記載の組み合わせ生成物。
【請求項44】
前記混合流プロセスが前記患者への前記構成要素の投与の時点で行われる、請求項43に記載のキットオブパーツ、又は請求項43に記載の組み合わせ生成物。
【請求項45】
前記状態が原発性高血圧及び続発性高血圧を含む様々な起源の肺高血圧、ならびに急性心不全(保存された駆出率(HFpEF)の有無にかかわらず)からなる群から選択される、請求項40に記載の組成物、請求項40に記載の医薬製剤、請求項40に記載のキットオブパーツ、又は請求項40に記載の組み合わせ生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノおよびビスニトロシル化プロパンジオールの合成のための新規プロセス、ならびにこうした化合物を含む新規組成物および医薬製剤に関する。本発明はまた、こうした化合物、組成物または製剤を投与することによって、一酸化窒素(NO)の投与が有益な効果を有する状態を治療する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
この明細書における明らかに以前に公開された文書の列挙または考察は、必ずしも文書が最新技術または一般的な一般知識の一部であるという承認として受け取られるべきではない。
【0003】
肺高血圧症(PH)は、最近まで、安静時の25mmHg以上での平均肺動脈圧(mPAP)の増加として定義され、よりゆっくりと進行する慢性型(PH)および急性肺高血圧症(aPH)に分けられ得る。この定義は最近更新され、安静時の平均肺動脈圧(mPAP)が20mmHg以上に増加することと合わせて、ウッド単位の値が3を超えることとされた。aPHでは、急性に誘導された肺血管収縮によりmPAPが急速に増加する。これは、大手術(例えば心臓手術)、肺塞栓症、および敗血症などの多様な状態の反応として誘発される可能性がある。aPHでは、右心の適応は発展しないため、右心不全のリスクが増加し、さらに、患者は通常、aPHを誘発する状態のため重篤な病態になり、通常は全身血圧が非常に低くなる。より慢性的な型のPHの患者では、aPHが慢性PHに重なって、有害な高血圧を引き起こし、右心不全および死亡を引き起こす可能性がある。急性肺高血圧症は、世界中の何百万人もの人々に多数の死を引き起こし、苦痛をもたらす大きな問題であり、診断には通常、右心カテーテル検査が必要であり、効率的な肺選択的治療が不足しているため、問題は完全には登録されておらず、知られてもいない。
【0004】
通常の状態では、右心は体循環から脱酸素化された血液を受け取り、肺を通して血液を送り出す。肺循環の心拍出量は、他のすべての体の器官を循環する血液の体積に等しくなる。肺を通る高流量にもかかわらず、肺循環の血圧は体循環の血圧のわずか5分の1である。肺循環の抵抗が低いのは、肺動脈の断面積が大きく、肺血管が全身血管よりもはるかに短いためである。左心は、体循環の血流を、例えば肝臓、胃、腎臓、および心臓自体に流す強力なポンプ(高圧に逆らって働く)であり、体循環の高血圧が、心不全、脳卒中、腎臓病を含む多くの健康問題を引き起こす可能性があることは周知の事実である。
【0005】
多くの生理学的要因が、体循環および肺循環における血流の複雑な制御に影響を及ぼす。体循環中の血管は通常血管収縮の状態にある(血管壁の小さな筋肉が血管を収縮させる)が、肺循環の血管は一定の血管拡張下にあり(すなわち、弛緩した、広がった血管)、それによって、体循環と比較して、血流に対して非常に低い抵抗を維持し、非常に低い血圧を生じる。
【0006】
様々な生命を脅かす病気中および大手術後、激しい炎症反応を伴う病態生理学的反応により、全身および肺の血管の生理学的状態が変化する。これらの変化は一般に、全身の血管が突然拡張し、非常に低い全身血圧(全身性低血圧)が発生し、脳、心臓、肝臓、および腎臓などの重要な臓器への血流を減少させる可能性がある状態をもたらす。並行して、逆説的に、肺血管は突然収縮し、急性肺高血圧症と右心不全を引き起こし、これが心拍出量を低下させ、全身性低血圧をさらに悪化させる。これらの重症で血行力学的に不安定な患者は通常、集中治療室で治療する必要がある。集中治療室では、全身血圧を回復するための昇圧剤および心臓強化薬、ならびに急性の生命を脅かす肺高血圧症を軽減するための肺血管拡張薬を使用した薬物療法のバランスを取ることが課題である。
【0007】
急性PHはしばしば過小診断され、そして治療はしばしば遅延される(Rosenkranz,Stephan et al.,European Heart Journal,37(12),942-954(2016))。aPHが非常に致命的である理由は、右心が通常は低圧に対して機能する弱いポンプであり、肺循環の平均圧力が急速に40mmHgを超えると、機能不全(右心不全)のリスクがあるためである。急性PHは明確な重大な状態であり、慢性肺高血圧症と混同すべきではない(Tiller,D et al.,PLoS One,8(3),e59225(2013))。慢性疾患では、肺循環における圧力が時間の経過とともに徐々に増加すると、右心が順応してサイズおよび強度が増加し、はるかに高い流出圧力を維持し得る。健康な人でさえ、感染症、肺塞栓症(肺の血餅)を発症したり、または大手術を受けたりすると、合併症を悪化させてaPHを発症する可能性がある。
【0008】
急性肺高血圧症は、世界中の何百万人もの人々に痛みを伴う、早すぎる死と苦痛をもたらす巨大な問題であり、適切な診断および治療が不足しているため、問題は完全には登録されておらず、知られていない。
【0009】
aPHを発症している患者の治療選択肢は、今日、厳しく制限されている。これは、患者が通常、非常に低い全身血圧を示しているためである。静脈内(i.v.)血管拡張薬で治療しようとすると、今日利用可能な薬物は肺を通過し(通常は<30秒)、体循環に「こぼれる」ため、致命的な全身性低血圧につながることがよくある。したがって、aPHを治療するための最適な静脈内投与薬は、肺血管を拡張するだけで、体循環には影響を与えないものでなければならない。今日の時点で、静脈内肺選択的血管拡張薬は市場に出ていない。
【0010】
静脈内投与された血管拡張薬の全身性副作用を克服するために、一酸化窒素またはプロスタサイクリンの吸入による投与が開発された。残念ながら、これらの薬物は、場合によっては効果的であっても、標的の肺血管に到達する前に不活化されることが多いため、不十分なことがよくある。今日使用されている吸入薬のもう1つの大きな欠点は、静脈内に薬物を注入するよりも、吸入による投与が複雑であることである。吸入された一酸化窒素の投与は非常に複雑であるため、医療スタッフは特別なトレーニングを必要とし、そのため、多くの病院は、関連する費用がかかるため、機器さえ持っていない。
【0011】
一酸化窒素(NO)は、いくつかの生物学的系で重要な分子である。肺で継続的に生成され、呼気中のppb(10億分の1)レベルで測定可能である。呼気中の内因性NOの発見、および炎症の診断マーカーとしてのその使用は、1990年代初頭にさかのぼる(例えば、WO93/05709およびWO95/02181を参照)。今日、内因性NOの重要性は広く認識されており、臨床NOアナライザー(NIOX(登録商標)、喘息患者の日常的な臨床使用のための最初のテーラーメードNOアナライザー、AEROCRINE AB、ソルナ、スウェーデン製)が市販されていることからも明らかである。
【0012】
これらの初期の実験以来、内因性一酸化窒素(NO)が血管における血管拡張のメディエーターとして非常に重要であることが一般的に認識されるようになった。特に、一酸化窒素は肺血管緊張の調節に重要な役割を果たし、健康な成人の換気と灌流のマッチングを最適化する(すなわち、肺胞に到達する空気と毛細血管を介して肺胞に到達する血液をマッチングし、換気を介して提供される酸素が、血液を完全に飽和させるのにちょうど十分であるようにする。例えば、Persson et al.,Acta Physiol.Scand.,1990,140,449-57を参照)。呼気中のNOの測定は、肺における内因性NO産生または除去の変化を監視する良い方法である(Gustafsson et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,1991,181,852-7)。
【0013】
換気灌流マッチング障害および肺動脈血圧の上昇は肺塞栓症の特徴であるため、吸入NOが潜在的な治療法としてテストされている。例えば、US5,670,177は、虚血を治療または予防するのに有効な量でNOが存在する、NOおよび二酸化炭素を含むガス状混合物を血管内経路によって患者に投与することを含む、虚血を治療または予防する方法を記載している。US6,103,769は、NO飽和生理食塩水が使用されることを除いて、同様の方法を開示している。
【0014】
さらに、一酸化窒素/酸素ブレンドは、新生児患者の原発性肺高血圧症および先天性欠損症に関連する胎便吸引症候群を治療するための毛細血管および肺拡張を促進するためのクリティカルケアにおける最後の手段のガス混合物として使用される(Barrington et al.,Cochrane Database Syst.Rev.,2001,4,CD000399およびChotigeat et al.,J.Med.Assoc.Thai.,2007,90,266-71を参照)。同様に、NOは、肺塞栓症に続発する急性右心室不全の患者に救済療法として投与される(Summerfield et al.,Respir.Care.,2011,57,444-8)。吸入NOは、心臓外科患者の急性肺高血圧症の治療薬として欧州と日本でも承認されている。
【0015】
NOをガスとして、または溶液に溶解して提供する代わりに、NOを送達する化合物の使用を調査した研究者もいる。例えば、WO94/16740は、NO送達化合物のS-ニトロソチオール、チオナイトライト、チオナイトレート、シドノニミン、フロキサン、有機ニトレート、ニトロプルシド、ニトログリセリン、鉄-ニトロシル化合物などの、アルコール性肝障害の治療または予防のための使用を記載している。
【0016】
ニトレートは現在、狭心症(胸痛)の症状を治療するために使用されている。ニトレートは、血管を弛緩させ、心臓への血液および酸素の供給を増やしながら、その負荷を軽減することによって機能する。現在利用可能な硝酸薬の例は以下を含む。
a)ニトログリセリン(三硝酸グリセリル)(1,2,3-プロパントリオールナイトレート)。これは今日、狭心症の急性発作を抑えるために主に舌下投与される。しかし、急速で一般的な血管拡張作用による強い頭痛およびめまいが、しばしば副作用として起こる。ニトログリセリン注入濃縮物も利用可能であり、静脈内注入のために等張グルコースまたは生理食塩水で希釈される。
b)狭心症の予防薬として使用されている一硝酸イソソルビド(1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-グルシトール-5-ニトレート)。耐性の発達は、長期治療レジメンの問題である。頻繁な副作用には、ニトログリセリンで起こるような頭痛およびめまいが含まれる。
c)狭心症および心不全に対して急性および予防の両方で摂取される硝酸イソソルビド(1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-グルシトール-2,5-ニトレート)。
d)有機ニトレートのグループである硝酸ペンタエリスリチルは、現在特定されていないメカニズムによって、長期的な抗酸化作用と抗アテローム生成作用を発揮することが知られている。四硝酸ペンタエリスリチルは、ニトレート療法で発展する望ましくないニトレート耐性の背景で調査され、肺高血圧症で実験的にテストされている。
【0017】
これらのニトレート化合物の多くは、他のニトレートおよびニトライト化合物と同様に、インビボでテストされ、NOを生成することがわかっている。例えば、ウサギモデルにおいて、三硝酸グリセリル、亜硝酸エチル、硝酸イソブチル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸イソアミルおよび亜硝酸ブチルがテストされており、NOのインビボ生成と血圧への影響との間に有意な相関関係を与えることが見出された(Cederqvist et al.,Biochem.Pharmacol.,1994,47,1047-53)。
【0018】
したがって、特定の有機ニトライトは、陰茎への局所投与または海綿体内投与を通じて、男性のインポテンスおよび勃起不全を治療するのに有用であることが示唆されている(US5,646,181を参照)。
【0019】
比較的最近、特にアルギニン-一酸化窒素系におけるNOの内因性産生および宿主防御におけるその役割が発見されたため、食餌性ニトレートおよびニトライトの役割が再評価された(Larsen et al.,N.Eng.J.Med,2006,355,2792-3)。したがって、L-アルギニン、ならびにエチル-、メチル-およびブチル-L-アルギニンなどのそのエステルは、NOの内因性産生を増加させるために使用されてきた。
【0020】
WO2006/031191は、ガス状一酸化窒素の治療的送達に使用するための組成物および方法を記載している。ガス状NOの送達のためのそのような組成物は、アルコール、炭水化物およびタンパク質などの、NOへの可逆的結合または会合を形成可能である化合物を含む。
【0021】
WO2007/106034は、一価/多価アルコール、またはそのアルデヒドもしくはケトン誘導体である化合物から有機ニトライトを製造するための方法を記載している。この方法は、こうした化合物の水溶液の脱気と、それに続くガス状一酸化窒素(NO)によるパージを含む。
【0022】
Nilsson,K.F.et al.,Biochem Pharmacol.,82(3),248-259(2011)は、新しい生物活性有機ニトライトの形成および同定について論じる。
【0023】
最近の進歩にもかかわらず、先行技術の化合物、組成物および調製方法に関連する多くの不利な点がある。
【0024】
例えば、現在利用可能な化合物および組成物の中で、多くは、毒性の問題、作用遅延、不可逆作用または長期作用などの望ましくない特性または副作用に関連している。NO供与化合物を注入の形式で投与するときに頻繁に生じる1つの特定の問題は、メトヘモグロビン(metHb)の生成である。
【0025】
さらに、既知の有機ニトライトおよびそれらの治療的使用は、おそらく組成物中に存在する不純物および分解生成物に起因する問題にしばしば関連している。使用される混合ステップおよびビヒクルがさらなる分解を引き起こす可能性があるため、有機ニトライトを含む医薬製剤を調製することも困難である。
【0026】
さらに、吸入された一酸化窒素および酸素の使用は、投与中は継続的に監視する必要がある二酸化窒素の生成のため、重大な問題を抱えている。
【0027】
先行技術のいくつかの調製方法は、水溶液中の有機ニトライトを比較的低濃度でしか提供しない。これは、そのような製剤の保管および輸送特性がしばしば満足のいくものではないことを意味する。
【0028】
さらに、先行技術の調製方法は、所望の有機ニトライトに加えて、溶液に溶解されたかなりの量のNOガスおよび無機ニトライトをもたらす。NOは反応性が高いため、突然の自発的な分解を回避するために、溶液の取り扱いおよび保管には注意が必要である。また、NOガスが保管容器内のプラスチック材料と反応する可能性もある。
【0029】
さらに、無機ニトライトの存在は、血液のメトヘモグロビン画分を増加させる。これは、用量を制限する副作用である。
【0030】
したがって、先行技術の調製方法および組成物に関連する1つ以上の不利な点を克服する、NO送達化合物およびそれを含む組成物の調製方法に対する重要かつ緊急の必要性が存在する。そのようなプロセスから得られた化合物および組成物の使用を可能にする方法の必要性も存在する。
【発明の概要】
【0031】
本発明者らは、先行技術の調製方法に関連する1つ以上の不利な点を克服する、NO送達化合物を調製するためのプロセスを予想外に発見した。
【0032】
例えば、本発明のプロセスは、溶液中に比較的高濃度の本発明の化合物を提供し、それにより、取り扱いを容易にし、保管量および輸送コストを最小化する。さらに、本発明のプロセスは、溶解した一酸化窒素ガスまたは無機ニトライトをもたらさないため、突然の自発的な分解のリスクを最小限に抑え、プロセスの生成物を治療に使用する場合の副作用の可能性を低減する。本発明のプロセスはまた、非常に低レベルの他の不純物の生成しか生じない。
【0033】
さらに、本発明者らは、そのようなプロセスが、これらの化合物を含む化学的に安定な非水性組成物および製剤を送達可能であり、治療使用前の便利な輸送および保管を可能にし得ることを見出した。さらに、本発明者らは、適切な水性緩衝液と組み合わせて投与することにより、そのような組成物および製剤を使用するための便利な手段を開発した。
【0034】
プロセス
本発明の第1の態様によれば、式Iの1つ以上の化合物を含む組成物を調製するためのプロセスであって、
【化1】
式中、
、R、およびRはそれぞれ独立に、Hまたは-NOを示し、
nは、0または1であり、
nが0である場合、RはHであり、nが1である場合、RはHであるが、
但し、RおよびRのうちの少なくとも1つは-NOを示し、
こうしたプロセスは、
(i)式Iの対応する化合物であるが、R、R、およびRがHを示す化合物と、任意選択で、適切な酸の存在下で、ニトライトの供給源を反応させるステップを含み、
(a)ニトライトの供給源が有機ニトライトである場合、ステップ(i)は適切な有機溶媒中で実行され、
(b)ニトライトの供給源が無機ニトライトである場合、ステップ(i)は、水相および非水相を含む二相溶媒混合物中で実行される、プロセスを提供し、
以下、このプロセスは「本発明のプロセス」などと呼ばれ得る。
【0035】
誤解を避けるために、本発明のプロセスの生成物(すなわち、式Iの化合物)はまた(または代わりに)、モノ-およびビス-ニトロシル化1,2-プロパンジオールまたは1,3-プロパンジオール(またはそのような化合物の混合物、すなわち、1つ以上のモノ-またはビス-ニトロシル化1,2-または1,3-プロパンジオールを含む組成物)と呼ばれ得る。
【0036】
誤解を避けるために、式Iの対応する化合物であるが、R、R、およびRがHを示す化合物を、対応する1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール(すなわち、所望の生成物の構造に対応する)と称することも可能であり、これは次に、本発明のプロセスのための出発物質と称され得る。言い換えれば、式Iの対応する化合物は、以下に定義される式(Ia)による化合物であり得る。
【化2】
【0037】
誤解を避けるために、酸素原子に関連するような整数(nまたは1-n)が0である場合、酸素原子はまったく存在せず、置換基RおよびR(および式(Ia)の化合物中の対応するH)は、それぞれの炭素に結合している。
【0038】
当業者は、本明細書における本発明のプロセス(または同様に「本発明のプロセス」など)への言及は、すべての実施形態およびその特定の特徴への言及を含むことを理解するであろう。
【0039】
他に示されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0040】
本発明の開示から逸脱することなく、本明細書で言及される本発明のすべての実施形態および特定の特徴を単独で、または本明細書で言及される他のいずれかの実施形態および/または特定の特徴と組み合わせて採用され得る(したがって、本明細書に開示されるように、より具体的な実施形態および具体的な特徴を記載する)。
【0041】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、当技術分野でその通常の意味を取り、すなわち、構成要素が関連する特徴を含むがこれに限定されない(すなわち、とりわけ含む)ことを示す。したがって、「含む」という用語は、関連物質から本質的になる構成要素への言及を含む。
【0042】
本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、「から本質的になる」および「から本質的になっている」という用語は、関連する測定値に従って(例えば、その重量により)、指定された物質の少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%、例えば少なくとも99%)で形成される関連構成要素を指す。「から本質的になる」および「から本質的になっている」という用語は、それぞれ「からなる」および「からなっている」に置き換えられ得る。
【0043】
誤解を避けるために、「含む」という用語は、関連する物質からなる構成要素への言及も含む。
【0044】
したがって、当業者は、式(I)の1つ以上の化合物を含む組成物の調製への言及は、構成部分として、式Iに定義されるような構造の1つ以上の化合物のある量を、任意選択で、他の化合物と一緒に含む組成物の調製を指すことを理解するであろう。本発明のプロセスはまた、式Iの化合物を調製するためのプロセス(すなわち、式Iの1つ以上の化合物を調製するためのプロセス)と呼ばれ得る。
【0045】
当業者は、式Iの化合物を調製するためのプロセスであるプロセスへの言及は、本発明のプロセスが、本明細書において定義された式Iによってそれぞれ記載されるような1つ以上のタイプの化合物の調製をもたらす可能性があることを示すと理解されることを理解する(例えば、2つ以上のそのような化合物が、それらの混合物として存在する場合)。
【0046】
したがって、当業者はまた、本発明のプロセスで形成される化合物が、各モノニトライトおよびジニトライト生成物の混合物の形態をとることができ、それぞれの相対量が、式Iの化合物の濃度に応じて多様であることも理解するであろう。
【0047】
特に、本発明のプロセスは、R、RおよびRがそれぞれ独立に、Hまたは-NOを示すが、但し、R、RまたはRのうちの1つが-NOを示し、他の基がHを示すように、少なくとも50重量%、60重量%、70重量%または80重量%(例えば、少なくとも90重量%または少なくとも99重量%、例えば少なくとも99.9重量%)の式Iの化合物が、モノニトロシル化されている組成物の調製を可能にし得る。
【0048】
特に、本発明のプロセスは、式Iの1つ以上の化合物とともに、式Iの対応する化合物であるが、R、R、およびRがHを示す化合物(すなわち1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール、例えば未反応の1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール出発物質)、および任意選択で、他の化合物を含む組成物の調製を生じ得る。
【0049】
特定の実施形態では、本発明のプロセスは、式Iの1つ以上の化合物、および式Iの1つ以上の対応する化合物であるが、R、R、およびRがHを示す化合物(すなわち1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール、例えばそれらの混合物として)から本質的になる組成物を調製するためのプロセスであり得る。
【0050】
当業者は、「反応する」という用語が、化学反応が起こるような方法(例えば、適切な状態および媒体)で関連する構成要素を一緒にすることを指すことを理解するであろう。特に、出発物質(すなわち、1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール)をニトライトの供給源と反応させることへの言及は、出発物質とニトライト(すなわち、ニトライトの供給源によって提供されるニトライト)との間の化学反応を指す。
【0051】
当業者は、「ニトライトの供給源」への言及は、化学反応を経るニトライトの供給源によって提供されるニトライトであるため、代わりに単に「ニトライト」を指し得ることを理解するであろう。したがって、ニトライトの供給源への言及は、反応のために、ニトライト部分(存在するニトライトの供給源に応じて、イオン型または共有結合型のいずれかで存在し得る)を提供する化合物を指すと理解される。したがって、ニトライトの供給源は、反応性(または反応可能)ニトライト(またはニトライト部分)の供給源と呼ばれることがある。誤解を避けるために、ニトライトの供給源は、無機ニトライトまたは有機ニトライトであり得る。
【0052】
本明細書に示されるように、ニトライトの供給源が有機ニトライトである場合、ステップ(i)は適切な有機溶媒中で実行される。
【0053】
当業者は、亜硝酸アルキルなどの様々な有機ニトライトが本発明のプロセスで使用され得ることを理解するであろう。
【0054】
言及され得る特定の亜硝酸アルキルは、亜硝酸エチル、亜硝酸プロピル、亜硝酸ブチルおよび亜硝酸ペンチルを含む。特定の実施形態では、亜硝酸アルキルは、亜硝酸n-ブチル、亜硝酸イソブチル、または亜硝酸tert-ブチル、例えば亜硝酸tert-ブチルである。
【0055】
ニトライトの供給源が有機ニトライトである場合、当業者は適切な溶媒を選択することができるであろう。例えば、適切な溶媒は、二相性溶媒系の適切な有機構成要素として本明細書で言及されるもの、およびそれらの混合物を含み得る。
【0056】
誤解を避けるために、特に明記しない限り、適切な有機溶媒中で実行される本発明のプロセスへの言及は、水などの他の非有機溶媒が存在し得ることを示さない。
【0057】
本発明のプロセスが適切な有機溶媒中で実行される特定の実施形態では、溶媒は本質的に水を含まない(「水を含まない」または「乾燥」と呼ばれることがある)ことがあり、これは、溶媒が、約1重量%未満(例えば、約0.1重量%未満、例えば、約0.01重量%未満)の水を含むことを示し得る。
【0058】
「約」という用語は、本明細書では、定義された値が±10%、例えば±5%、例えば±4%、±3%、±2%、または±1%逸脱する可能性があることを意味するものとして定義される。「約」という用語は、本発明の教示から逸脱することなく、本明細書全体から削除され得る。
【0059】
本明細書に示されるように、ニトライトの供給源が無機ニトライトである場合、ステップ(i)は、水相および非水相を含む二相溶媒混合物中で実行される。
【0060】
当業者は、本明細書で使用される「二相溶媒混合物」という用語が、混合して単一の溶媒相を形成せず、代わりに2つの別個の(すなわち、非混合)相として存在する2つの溶媒または溶媒混合物で構成される系を指すことを理解するであろう。
【0061】
そのような溶媒混合物が水および有機溶媒(または有機溶媒の混合物)を含む場合、そのような溶媒系は「水相」および「有機相」を含むと言うことができる。誤解を避けるために、二相という用語は、溶媒系に加えて、固相を形成する物質など、他の相を形成する物質が存在する可能性がある(つまり、他の相も存在する可能性がある)ことを示さない。
【0062】
言及され得る無機ニトライトの特定の供給源は、アルカリ金属亜硝酸塩およびアルカリ土類金属亜硝酸塩などの金属亜硝酸塩を含む。イオン性液体も無機ニトライトの適切な供給源である可能性がある。
【0063】
誤解を避けるために、アルカリ金属という用語は、当技術分野の通常の意味を取り、つまり、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムを含む、IUPACグループ1の元素および陽イオンを指す。
【0064】
誤解を避けるために、アルカリ土類金属という用語は、当技術分野の通常の意味を取り、つまり、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムを含むIUPACグループ2の元素および陽イオンを指す。
【0065】
言及され得る、より具体的な無機ニトライトは、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウムおよび亜硝酸カリウムなどのアルカリ金属亜硝酸塩を含む。特定の実施形態では、ニトライトの供給源は亜硝酸ナトリウムである。
【0066】
あるいは、金属亜硝酸塩は、亜硝酸リチウム、亜硝酸マグネシウムまたは亜硝酸カルシウムなどのアルカリ土類金属亜硝酸塩であり得る。
【0067】
誤解を避けるために、当業者は、二相溶媒系の非水相が有機溶媒であることも可能であり、したがって有機相と呼ばれ得ることを理解するであろう。
【0068】
当業者は、水相の特性に基づいて、適切な非水性(すなわち、有機)溶媒を選択することができるであろう。例えば、水相がその中に溶解した特定のレベルの物質(例えば塩などのイオン性固体)を有する場合、二相溶媒系を形成するために、広範囲の有機溶媒を選択し得る。
【0069】
特定の実施形態では、非水相は、水非混和性有機溶媒からなる。より特定の実施形態では、水非混和性有機溶媒は、非プロトン性有機溶媒である。
【0070】
言及され得る特定の水非混和性有機溶媒(すなわち、非水相を形成する特定の溶媒)は、エーテル(例えば、tert-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル)およびジクロロメタン(DCM)を含む。
【0071】
言及され得る、より特定の水非混和性有機溶媒(すなわち、非水相を形成する特定の溶媒)は、ジクロロメタン、ジエチルエーテルおよびtert-ブチルメチルエーテルを含む。より特定の実施形態では、水非混和性有機溶媒は、tert-ブチルメチルエーテルである。
【0072】
言及され得る特定の実施形態では、溶媒混合物は、式Iの化合物であるが、R、R、およびRがHを示す化合物(すなわち、1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール)を過剰に含み得る。誤解を避けるために、そのような状況では、1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール(すなわち、式Iの化合物であるが、R、R、およびRがHを示す化合物)は、溶媒(例えば溶媒混合物の構成要素)および試薬のどちらとしても存在し得る。したがって、特定の実施形態では、プロセスは、式Iの対応する化合物であるが、R、R、およびRがHを示す化合物、すなわち、1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール(例えば、適切であるように、1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオールを含む混合物の形態)中の溶液として、式Iの化合物を調製するためのプロセスである。特定の実施形態では、ニトライトの供給源が有機ニトライトである場合、溶媒は、式Iの化合物であるが、R、R、およびRがHを示す化合物(すなわち、1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール)から本質的になり得る。すなわち、式Iの化合物であるが、R、RおよびRがHを示す化合物は、溶媒および反応物の両方として作用し得る。
【0073】
代替の実施形態では、ニトライトの供給源が無機ニトライトである場合、ステップ(i)は、単一の溶媒中で実行可能であり、この溶媒は、式Iの化合物であるが、R、R、およびRがHを示す化合物(すなわち、1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール)から本質的になり得る。すなわち、式Iの化合物であるが、R、RおよびRがHを示す化合物は、溶媒および反応物の両方として作用し得る。
【0074】
代替の実施形態では、本発明のプロセスは、式Iの出発物質であるが、R、R、およびRがHを示す物質(すなわち、1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール)に対して、過剰のニトライトを用いて実行し得る。
【0075】
本明細書で使用される場合、「過剰」という用語は、当技術分野でその通常の意味を取り、すなわち、構成要素が試薬である反応に対して化学量論量よりも多く存在することを示す。
【0076】
本明細書に示されるように、本発明のプロセス(特に、構成要素間の反応)は、任意選択で、適切な酸の存在下で実行される。
【0077】
言及され得る本発明の特定のプロセスは、出発物質(すなわち、1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール)をニトライトの供給源と反応させるステップが適切な酸の存在下で実施されるプロセスを含む。
【0078】
適切な酸として言及され得る特定の酸は、ブレンステッド酸(すなわち、プロトン供与酸)を含み、より具体的には、そのような酸は、強酸と呼ばれ得る。
【0079】
誤解を避けるために、「強酸」という用語は、当技術分野で通常の意味を取り、平衡状態の水溶液中で解離が実質的に完全であるブレンステッド酸を指す。特に、強酸への言及は、約5未満(例えば、約4.8未満)のpKa(水中)を有するブレンステッド酸を指す場合がある。誤解を避けるために、硫酸などの多プロトン酸の場合、強酸という用語は最初のプロトンの解離を指す。
【0080】
言及され得る特定の強酸は、約1未満、例えば約0未満(例えば、約-1または-2未満)のpKa(水中)を有するものを含む。例えば、言及され得る強酸は、約-3のpKa(水中)を有するものを含む。当業者は、当業者に知られているように、適切な酸が非求核性酸を含み得ることを理解するであろう。
【0081】
言及され得る特定の適切な酸は、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸および酢酸を含む。
【0082】
言及され得る、より特定の適切な酸は、硫酸などの鉱酸(例えば、強鉱酸)を含む。
【0083】
当業者は、本発明の教示の範囲内で、本発明のプロセスで使用するのに適切な量の試薬を選択することができるであろう。例えば、式Iの対応する化合物であるが、R、R、およびRがHを示す化合物対ニトライト対酸(存在する場合)の比(すなわち、モル比)は、約1:約1~約5:約0.5~約3.5、例えば約1:約1~約3:約0.5~約2(例えば、約1:4:2.7、または約1:2:0.95、または約1:2:1)である。誤解を避けるために、適切な酸が存在しない場合、式Iの対応する化合物であるが、R、R、およびRがHを示す化合物とニトライトとの間の比は依然として適用され得る。
【0084】
特定の実施形態では、プロセスステップ(i)は、約-30℃~約5℃、例えば、約-30℃~約0℃、例えば、約-30℃~約-10℃、好ましくは約-25℃~約-15℃の温度で実施される。
【0085】
特定の実施形態では、プロセスステップ(i)は、窒素またはアルゴン大気、好ましくはアルゴン大気などの不活性大気下で実施される。さらに、特定の実施形態では、プロセスの任意のステップは、窒素またはアルゴン大気、好ましくはアルゴン大気などの不活性大気下で実施し得る。
【0086】
特に二相溶媒系が使用される、言及され得る本発明の特定のプロセスは、プロセスが、ステップ(i)の後に(例えば、直後に)、
(ii)前記溶媒混合物から水相の実質的にすべてを除去する(すなわち、実質的にすべての水を除去する)ステップをさらに含むものを含む。
【0087】
当業者は、水相が、任意の適切なプロセスによって、および当技術分野で知られている任意の適切な装置を使用して(例えば、分液漏斗または同様の装置を使用することによって)溶媒混合物から除去され得ることを理解するであろう。
【0088】
本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、「実質的にすべて」という用語は、関連する測定値に従って(例えば、その重量により)、指定された物質の少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%、例えば、少なくとも99%)を指す。
【0089】
当業者はまた、「溶媒混合物から水相の実質的にすべてを除去する」への言及は、「溶媒混合物から水相の一部またはすべてを除去する」または単に「溶媒混合物から水相を除去する」への言及に置き換えられ得ることを理解するであろう。
【0090】
誤解を避けるために、その除去の文脈において、水相という用語は、水およびそこに溶解された構成要素から形成された(別個の)相を指す。
【0091】
特に二相溶媒系が使用される、言及され得る本発明の特定のプロセスは、プロセスが、ステップ(i)の後に(例えば直後に)(示される順序で)、
(ii)水相(すなわち水)の一部またはすべて(例えば実質的にすべて)を除去するステップと、
(iii)残りの有機相を1つ以上のさらなる水相で洗浄するステップと、
(iv)任意選択で、ステップ(ii)および(iii)を1回以上繰り返すステップと、をさらに含む、プロセスを含む。
【0092】
特に二相溶媒系が使用される、言及され得る本発明のさらなるプロセスは、プロセスが、ステップ(i)の後に(例えば直後に)(示される順序で)、
(ii)水相(すなわち水)の一部またはすべて(例えば実質的にすべて)を除去するステップと、
(iii)残りの有機相を1つ以上のさらなる水相で洗浄するステップと、
(iv)任意選択で、ステップ(ii)および(iii)を1回以上繰り返すステップと、
(v)任意選択で、水非混和性有機溶媒(例えば、1,2プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール以外の有機溶媒)の一部または実質的にすべてを除去することなどにより、有機相を減少させる(すなわち、量/体積を減少させる)ステップと、
(vi)任意選択で、生成物を乾燥させるステップと、をさらに含み、
ステップ(ii)~(vi)は、ステップ(ii)~(iv)がステップ(v)および(vi)の前に実行されるという条件で、任意の順序で実行され得る、プロセスを含む。
【0093】
特定の実施形態では、プロセスステップ(ii)~(iv)は、約-20℃~約5℃、例えば、約-10℃~約5℃の温度で実施され得る。
【0094】
特定の実施形態では、プロセスステップ(v)は、約0℃~約30℃、例えば、約10℃~約30℃、例えば、約15℃~約30℃の温度で実施され得る。
【0095】
特定の実施形態では、プロセスステップ(v)は、6時間以内、例えば5時間以内、好ましくは4時間以内で実施される。
【0096】
特定の実施形態では、ステップ(ii)~(vi)のそれぞれが実行され、これらのステップは、示された順序で実行される。
【0097】
誤解を避けるために、当業者は、残りの有機相を1つ以上のさらなる水相で洗浄するステップは、水性溶媒(例えば水)のさらなる部分を添加するステップと、(別個の)有機相と混合する(例えば、一緒に撹拌および/または振とうすることにより)ステップと、水相の実質的にすべてを除去し、任意選択で、こうしたステップを1回以上繰り返すステップと、を含むステップを指すことを理解するであろう。
【0098】
当業者は、ステップ(iii)が、任意の適切なプロセスによって、当技術分野で知られている任意の適切な装置を使用して(例えば、分液漏斗を使用して)実行され得ることを理解するであろう。
【0099】
当業者は、ステップ(v)が、任意の適切なプロセスによって、当技術分野で知られている任意の適切な装置を使用して(例えば、減圧下での蒸発によって)実行され得ることを理解するであろう。
【0100】
ステップ(v)の文脈において、有機相のいくつかの除去への言及は、本明細書で定義されるように、特に実質的にすべての水非混和性有機溶媒の除去を指し得る。より具体的には、水非混和性有機溶媒の除去は、水非混和性有機溶媒の少なくとも99重量%(例えば、少なくとも99.5重量%、99.9重量%、または特に99.99重量%)の除去を指し得る。
【0101】
水非混和性有機溶媒のそのような除去はまた、そのような除去後の生成物が1重量%未満(例えば、0.5重量%未満、0.1重量%未満、例えば、0.05重量%未満、0.01重量%未満)の水非混和性有機溶媒を含むような除去を指し得る。
【0102】
誤解を避けるために、ステップ(v)の文脈において、水非混和性有機溶媒などの有機相の除去への言及は、本明細書で定義されるような任意の溶媒の除去(例えば、ジクロロメタンまたはtert-ブチルメチルエーテルの除去)を指す。さらなる有機溶媒(例えば、水に非混和性ではないもの、例えば、溶媒として作用する過剰な1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール)が存在する場合、そのような溶媒の一部もまた除去され得る(例えば、水非混和性有機溶媒とともに)。
【0103】
ステップ(vi)の文脈では、生成物の乾燥への言及は、前のステップの後に残っている物質からの水の除去を指す。そのような水の除去は、そのような乾燥後の生成物が1重量%未満(例えば、0.5重量%未満または0.1重量%未満、例えば、0.05重量%未満または0.01重量%未満)の水を含むような除去を指し得る。
【0104】
当業者は、ステップ(vi)が、任意の適切なプロセスによって、当技術分野で知られている任意の適切な装置を使用して(例えば、残りの有機相の無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウムなどの適切な乾燥剤との接触および/または分子ふるいによって)実行され得ることを理解する。
【0105】
言及され得る本発明の特定のプロセスは、式Iの1つ以上の化合物と、式Iの対応する化合物であるが、R、R、およびRがHを示す化合物(すなわち、1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール)の組み合わせ混合物が、約0.01重量%~約9重量%(例えば、約0.01重量%~約5重量%、例えば、約3重量%~約5重量%、または約5重量%~約7重量%)の本発明の1つ以上の化合物を含むように、プロセスが、さらなる量の式Iの対応する化合物であるが、R、R、およびRがHを示す化合物を添加するステップ(例えば、ステップ(i)の後、および存在する場合、他のステップの後に)をさらに含むものを含む。
【0106】
上に概説するように、本発明の開示から逸脱することなく、本明細書で言及される本発明のすべての実施形態および特定の特徴を単独で、または本明細書で言及される他のいずれかの実施形態および/または特定の特徴と組み合わせて採用され得る(したがって、本明細書に開示されるように、より具体的な実施形態および具体的な特徴を記載する)。
【0107】
例えば、約-30℃~約5℃の温度で実施されるプロセスステップ(i)は、約-20℃~約5℃の温度で実施されるプロセスステップ(ii)~(iv)の特徴、約0℃~約30℃の温度で実施されるプロセスステップ(v)の特徴、および/または6時間以内に実施されるプロセスステップ(v)の特徴と組み合わせられ得る。
【0108】
言及され得る、より特定のプロセスは、指定されたパラメータが本明細書で提供される例に従っているプロセスを含む。
【0109】
本発明のプロセスの特定の生成物は、式(II)による化合物
【化3】
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に、Hまたは-NOを示すが、但し、RおよびRのうちの少なくとも1つは-NOを示す)であり、プロセスは、1,2-プロパンジオール(すなわち、出発物質)を、本明細書に記載の条件下(そのすべての実施形態を含む)で、ニトライトの供給源と反応させるステップを含む。
【0110】
式(II)による化合物の2つのエナンチオマーが存在し、以下に示されるようにR型およびS型である。
【化4】
本発明のプロセスのさらなる特定の生成物は、以下に示されるような式(III)による化合物
【化5】
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に、Hまたは-NOを示すが、但し、RおよびRのうちの少なくとも1つは-NOを示す)であり、プロセスは、1,3-プロパンジオールと亜硝酸の供給源を反応させるステップを含む。
【0111】
式(II)および(III)による化合物の製造のための上記の2つの特定のプロセスは、一緒にまたは互いに独立して実施され得る。
【0112】
反応混合物の発生する二相性に基づいて、相間移動触媒(PTC)の任意の添加が生成物の形成をサポートし得る。一般的なPTCは、例えば、限定なしにMeN+、EtN+、BuN+、またはBu(N+)CHPHClなどのテトラアルキルアンモニウムイオンと、=Cl-、Br-、HSO4-などの対イオン、またはAliquat(登録商標)336などの他のタイプのアルキルアンモニウムPTCであり、1当量未満の化学量論量、例えば、排他的でなく、約0.05~約40mol%の範囲、例えば約0.1~約30mol%、例えば、約0.1~約20mol%である。
【0113】
本発明のプロセスのさらなる特定の生成物は、以下に示されるような式(IV)による化合物
【化6】
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に、Hまたは-NOを示すが、但し、RおよびRのうちの少なくとも1つは-NOを示す)である。
【0114】
したがって、本発明の特定のプロセスは、式(IV)の1つ以上の化合物を含む組成物の調製のためのプロセスであって、
【化7】
式中、RおよびRはそれぞれ独立に、Hまたは-NOを示すが、但し、RおよびRのうちの少なくとも1つは-NOを示し、
プロセスが、
(i)任意選択で、適切な酸の存在下で、1,2-プロパンジオールとニトライトの供給源を反応させるステップを含み、
(a)ニトライトの供給源が有機ニトライトである場合、ステップ(i)は適切な有機溶媒中で実行され、
(b)ニトライトの供給源が無機ニトライトである場合、ステップ(i)は、水相および非水相を含む二相溶媒混合物中で実行される、プロセスである。
【0115】
本明細書に概説されるプロセスステップのいずれも、式(IV)に関して上に記載された特定のプロセスと組み合わせ可能であり、特定の実施形態を以下に概説する。
【0116】
特定のプロセスにおいて、無機ニトライトは金属亜硝酸塩であり、任意選択で、金属亜硝酸塩はアルカリ金属亜硝酸塩またはアルカリ土類金属亜硝酸塩、好ましくはアルカリ金属亜硝酸塩である。
【0117】
特定の実施形態では、アルカリ金属亜硝酸塩は亜硝酸ナトリウムである。
【0118】
さらに特定の実施形態では、有機ニトライトは、亜硝酸tert-ブチルなどの亜硝酸アルキルである。
【0119】
特定のプロセスにおいて、適切な酸は、強鉱酸(例えば硫酸)などの強酸である。
【0120】
特定の実施形態では、非水相は、水非混和性非プロトン性有機溶媒などの水非混和性有機溶媒を含む。
【0121】
一実施形態では、水非混和性有機溶媒はジクロロメタンである。
【0122】
特定のプロセスにおいて、溶媒混合物は、過剰な1,2-プロパンジオールをさらに含む。
【0123】
さらに特定のプロセスでは、ステップ(i)の後、プロセスは、
(ii)溶媒混合物から水相の実質的にすべてを除去するステップをさらに含む。
【0124】
一実施形態では、ステップ(i)の後、プロセスは、
(ii)水相(すなわち、水)の一部またはすべて(例えば実質的にすべて)を除去するステップと、
(iii)残りの有機相を1つ以上のさらなる水相で洗浄するステップと、
(iv)任意選択で、ステップ(ii)および(iii)を1回以上繰り返すステップと、
(v)任意選択で、有機相を減少させる(すなわち、量/体積を減少させる)ステップと、
(vi)任意選択で、生成物を乾燥させるステップと、をさらに含み、
ステップ(ii)~(vi)は、ステップ(ii)~(iv)がステップ(v)および(vi)の前に実行されるという条件で、任意の順序で実行され得る。
【0125】
特定の実施形態では、プロセスは、式Iの1つ以上の化合物および1,2-プロパンジオールとの組み合わせ混合物が約0.01重量%~約9重量%の式IVの1つ以上の化合物を含むように、さらなる量の1,2-プロパンジオールを添加するステップをさらに含む。
【0126】
生成物および組成物
本発明の第2の態様では、本発明のプロセスを使用して調製された(すなわち、すべての実施形態およびその中の特定の特徴を含む、本発明の第1の態様に従って製造された)生成物(例えば本発明のプロセスによって得られたまたは得られ得る生成物)が提供される。以下、これらの生成物は「本発明の化合物」と呼ばれ得る。
【0127】
本発明の化合物は、上で概説したように不斉炭素原子を含むことも可能であり、したがって光学異性を示すであろう。多様な立体異性体は、従来の、例えば分別結晶法またはHPLC技法を使用して化合物のラセミ混合物または他の混合物を分離することにより単離され得る。あるいは、所望の光学異性体は、ラセミ化を引き起こさないであろう条件下で適切な光学活性出発物質を反応させること(すなわち「キラルプール」法)によって、適切な出発物質を、後に誘導体化(すなわち、動力学的分割を含む分割)によって適切な段階で除去され得る「キラル助剤」と反応させ、例えば、ホモキラル酸を用いて、次いで、クロマトグラフィーなどの従来の手段によるジアステレオマー誘導体の分離によって、または当業者に既知の条件下で適切なキラル試薬もしくはキラル触媒と反応させることによって作製され得る。すべての立体異性体およびそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0128】
本発明のプロセスは、有利に、本発明の1つ以上の化合物を含む実質的に非水性の組成物の調製を可能にする。特に、本発明のプロセスは、組成物中の本発明の1つ以上の化合物の比較的高濃度を可能にし、それにより、取り扱いを容易にし、保管量および輸送コストを最小化する。
【0129】
したがって、本発明の第3の態様では、実質的に非水性の組成物であって、
(a)本明細書で定義される式Iの1つ以上の化合物と、
(b)式Iの1つ以上の対応する化合物であるが、R、R、およびRがHを示す化合物(例えば1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール)と、を含む組成物を提供し、
この組成物は、以下、「本発明の実質的に非水性の組成物」と呼ばれ得る。
【0130】
当業者は、本発明の実質的に非水性の組成物への本明細書中の言及が、そのすべての実施形態および特定の形態への言及を含むことを理解するであろう。
【0131】
本明細書で使用される場合、「実質的に非水性」への言及は、1重量%未満(例えば、0.5重量%未満または0.1重量%未満、例えば、0.05重量%未満、0.01重量%未満)の水を含む構成要素を指す。
【0132】
言及され得る本発明の特定の実質的に非水性の組成物は、組成物が約0.01重量%~約9重量%(例えば、約0.01重量%~約5重量%、例えば、約3重量%~約5重量%、または約5重量%~約7重量%)の本発明の1つ以上の化合物(すなわち、式Iの化合物)を含むものを含む。
【0133】
言及され得る本発明の特定の実質的に非水性の組成物は、組成物が式(II)による化合物を含むものを含む。好ましくは、式(II)による化合物はS型である。
【0134】
式(II)による化合物のS型は、R型よりも代謝速度が高いので好ましい。さらに、S型には異なる代謝分解経路があり、R型よりも毒性の低い代謝物が生成される。
【0135】
言及され得る本発明の特定の実質的に非水性の組成物は、組成物が式(III)による化合物を含むものを含む。
【0136】
好ましくは、式(II)による化合物はS型であるが、生成物は式(II)のS型およびR型の両方の混合物であり、S型は好ましくは鏡像体過剰(ee)で存在することが想定される。
【0137】
プロセスの生成物が式(II)による化合物である特定の実施形態では、式(II)による化合物は、化合物のS型の鏡像体過剰であり得る。つまり、生成物の50ee%以上がS型であり、例えば、生成物の60ee%以上、70ee%以上、80ee%以上、90ee%以上、95ee%以上、98ee%以上がS型である。
【0138】
化合物(II)のS型のエナンチオマー過剰に到達するために、一実施形態では、出発物質(すなわち、1,2-プロパンジオール)は、S型のエナンチオマー過剰で存在し得る。すなわち、出発物質(すなわち、1,2-プロパンジオール)の50ee%以上がS型であり、例えば、出発物質の60ee%以上、70ee%以上、80ee%以上、90ee%以上、95ee%以上、または98ee%以上がS型である。
【0139】
生成物が式(II)によるモノニトロシル化化合物である実施形態では、生成物の50重量%超が2位でニトロシル化され(すなわち、Rは-NOである)、例えば、約55重量%~約80重量%、例えば、約55重量%~75重量%が、2位でニトロシル化される。
【0140】
言及され得る本発明の特定の実質的に非水性である組成物は、組成物が、式Iの1つ以上の化合物、および式Iの対応する化合物であるが、R、R、およびRがHを示す化合物(すなわち1,2-プロパンジオールおよび/または1,3-プロパンジオール)から本質的になるものを含む。
【0141】
特に、出発物質が1,2-プロパンジオールである場合、本発明の実質的に非水性の組成物は、式IIの1つ以上の化合物および1,2-プロパンジオールを含み得る(または、特に、これらから本質的になり、または、より具体的には、これらからなる)。
【0142】
同様に、出発物質が1,3-プロパンジオールである場合、本発明の実質的に非水性の組成物は、式IIIの1つ以上の化合物および1,3-プロパンジオールを含み得る(または、特に、これらから本質的になり、または、より具体的には、これらからなる)。
【0143】
「本質的にからなる」という用語によって、これは、少なくとも90重量%の定義された特徴、例えば少なくとも95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、または99重量%の定義された特徴が存在することを意味する。
【0144】
さらに、言及され得る本発明の特定の実質的に非水性の組成物は、組成物が式(II)および(III)の1つ以上の化合物を1,2-プロパンジオールおよび1,3-プロパンジオールとともに含む(または、特に、これらから本質的になり、または、より具体的には、これらからなる)ものを含む。
【0145】
言及され得る本発明の特定の実質的に非水性の組成物は、溶解した一酸化窒素を組成物が実質的に含まないものを含む。
【0146】
「実質的に含まない」という用語によって、本発明の非水性組成物が5重量%未満、4重量%、3重量%、2重量%または1重量%未満、例えば、0.5重量%未満または0.1重量%未満の溶解一酸化窒素を含むことを意味する。
【0147】
さらに、本発明の特定の実質的に非水性の組成物は、
(a)式IVの1つ以上の化合物
【化8】
(式中、RおよびRはそれぞれ独立に、Hまたは-NOを示すが、但し、RおよびRのうちの少なくとも1つは-NOを示す)と、
(b)1,2-プロパンジオールと、を含み得る。
【0148】
本発明の化合物および本発明の実質的に非水性の組成物は、医薬品として有用である。このような化合物は、単独で投与され得て、または既知の薬学的組成物/製剤を経由して投与され得る。
【0149】
したがって、第4の態様では、本発明の実質的に非水性の組成物および任意選択で、1つ以上の医薬的に許容され得る賦形剤を含む医薬製剤が提供され、これらの製剤は、以下「本発明の医薬製剤」と呼ばれ得る。
【0150】
当業者は、本発明の医薬製剤への本明細書中の言及が、そのすべての実施形態および特定の形態への言及を含むことを理解するであろう。
【0151】
本明細書で使用される場合、「医薬的に許容され得る賦形剤」という用語は、ビヒクル、アジュバント、キャリア、希釈剤、pH調整剤および緩衝剤、張性調整剤、安定剤、湿潤剤などへの言及を含む。特に、そのような賦形剤は、アジュバント、希釈剤、またはキャリアを含み得る。
【0152】
言及され得る本発明の特定の医薬製剤は、医薬製剤が少なくとも1つの医薬的に許容され得る賦形剤を含むものを含む。
【0153】
言及され得る本発明の特定の医薬製剤は、1つ以上の医薬的に許容され得る賦形剤が実質的に非水性であるものを含む。
【0154】
誤解を避けるために、特定の使用(および同様に、本発明の化合物に関する使用および使用方法)のためである本発明の化合物に対する本明細書での言及はまた、本明細書に記載の本発明の化合物を含む組成物および医薬製剤に適用され得る。
【0155】
驚くべきことに、本発明の化合物は、適切な水性緩衝液と組み合わせて患者(すなわち、被験体)に投与され得ることが見出された。特に、本発明の化合物は、水性緩衝液、より具体的には水性緩衝液が非求核性で弱塩基性である場合に、水性緩衝液中で適切に安定である(例えば、少なくとも15分間有意な分解なしに存在する)ことが予想外に見出された。
【0156】
本発明の第5の態様によれば、キットオブパーツであって、
(A)本発明の医薬製剤(すなわち、すべての実施形態およびその中の特定の特徴を含む、本発明の第4の態様におけるもの)と、
(B)適切な水性緩衝液と、を含み、
構成要素(A)および(B)が、互いに投与するのに適した形態で提供される、キットオブパーツを提供し、
以下、このキットオブパーツを「本発明のキットオブパーツ」と呼ぶ。
【0157】
言及される特定の実施形態は、緩衝液が非求核性であり、弱塩基性であるものを含む。
【0158】
言及され得る、より特定の実施形態は、炭酸(例えば、約7.4または約8.0のpHであり得るNaHCO)緩衝液または生理学的リン酸緩衝液(任意選択で、pH8)、またはそれらの混合物などの、緩衝液が約7.1~約10(例えば、約8または約9.2)のpHを有するものを含む。生理食塩水も緩衝液として使用され得る。
【0159】
特に、緩衝液は、pH9.2の炭酸緩衝液またはpH8.0のリン酸緩衝液(例えば、0.154モル緩衝液)、またはpH8.0のNaHCO緩衝液など、本明細書で以下に説明する実施例5で使用される緩衝液であり得る。
【0160】
本発明の第6の態様によれば、組み合わせ生成物であって、
(A)本発明の医薬製剤(すなわち、すべての実施形態およびその中の特定の特徴を含む、本発明の第4の態様におけるもの)と、
(B)本発明の第5の態様(すべての実施形態およびその中の特定の特徴を含む)で定義される適切な水性緩衝液とをともに混合することによって形成される組み合わせ生成物を提供し、
以下、この組み合わせ生成物を「本発明の組み合わせ生成物」と呼ぶ。
【0161】
本発明の第7の態様によれば、本発明の組み合わせ生成物を調製するためのプロセス(すなわち、すべての実施形態およびその中の特定の特徴を含む本発明の第6の態様におけるもの)であって、
(A)本発明の医薬製剤(すなわち、すべての実施形態およびその中の特定の特徴を含む、本発明の第4の態様におけるもの)と、
(B)本発明の第5の態様で定義される適切な水性緩衝液(すべての実施形態およびその中の特定の特徴を含む)とをともに混合するステップを含む、プロセスを提供する。
【0162】
言及され得る本発明の特定のキットオブパーツおよび組み合わせ生成物は、本発明の医薬製剤および適切な水性緩衝液との体積比が約1:2~1:99、または約3:7~1:99(例えば約1:3~1:99)であるものを含む。
【0163】
あるいは、言及され得る本発明のキットオブパーツは、キットが、本発明の医薬製剤と適切な水性緩衝液の体積比が約3:7~1:99(例えば約1:3~約1:99)であるように、構成要素を(例えば、投与前に、例えば本明細書記載の技術を用いることによって)混合するための指示を含むものを含む。
【0164】
医療用途
上に論じるように、本発明の化合物、本発明の非水性組成物、本発明の医薬製剤、したがってそれを含むキットオブパーツおよび組み合わせ生成物は、NOの投与が有益な効果を有する状態の治療に有用である。
【0165】
本発明の第8の態様によれば、NOの投与が有益な効果を有する状態の治療に使用するための、前述のように定義された(すなわち、すべての実施形態およびその中の特定の特徴を含む、本発明の第3の態様における)非水性組成物、前述のように定義された(すなわち、すべての実施形態およびその中の特定の特徴を含む、第4の態様における)医薬製剤、前述のように定義された(すなわち、すべての実施形態およびその中の特定の特徴を含む、本発明の第5の態様における)キットオブパーツ、または前述のように定義された(すなわち、すべての実施形態およびその中の特定の特徴を含む、本発明の第6の態様における)組み合わせ生成物を提供する。
【0166】
本発明の代替の第8の態様では、NOの投与が有益な効果を有する状態を治療する方法であって、それを必要とする患者に治療有効量の本発明の医薬製剤または本発明の組み合わせ生成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0167】
本発明のさらなる代替の第8の態様では、NOの投与が有益な効果を有する状態を治療する方法であって、それを必要とする患者に治療有効量の構成要素、
(A)本発明の医薬製剤(すなわち、すべての実施形態およびその中の特定の特徴を含む、本発明の第4の態様におけるもの)と、
(B)本発明の第5の態様で定義される適切な水性緩衝液(すべての実施形態およびその中の特定の特徴を含む)とを投与するステップを含む方法を提供する。
【0168】
言及され得る特定の方法は、構成要素(A)および(B)の混合が、それらの同時投与などによって、患者への投与の直前に行われる方法を含む。
【0169】
本発明者らは、本発明の化合物の投与が浸透圧ストレスによる溶血を介して血球に損傷を与える可能性があり、これらの効果は、適切な水性緩衝液中で本発明の化合物を投与することによって管理または回避され得ることを見出した。
【0170】
言及され得る、より特定の方法は、混合が、例えば、患者への投与の時点で起こる混合流プロセスによって実行される方法を含む。言及され得る、さらにより具体的な方法は、混合流プロセスがY部位コネクタを使用する静脈内注入である方法を含む。
【0171】
当業者は、特定の状態の「治療」(または同様に、その状態を治療すること)についての言及は、医学分野におけるそれらの通常の意味であると理解するであろう。特に、この用語は、上記状態に関連する1つ以上の臨床症状および/または徴候の重篤度の低下を達成することを指し得る。例えば、肺塞栓症の場合、この用語は、血管拡張を介して胸痛、息切れ、および/または肺高血圧症の重症度の軽減を達成することを指し得る。
【0172】
本明細書で使用される場合、患者への言及は、哺乳動物(例えば、ヒト)患者を含む、治療される生存被験体を指すであろう。特に、患者という用語は、ヒト被験体を指し得る。患者という用語は、家庭用ペット(例えばネコ、および特にイヌ)、家畜、ウマなどの動物(例えば哺乳類)を指し得る。
【0173】
本明細書で使用される場合、有効量という用語は、治療された患者に治療効果を与える化合物の量を指す。その効果は、客観的(すなわち、あるテストまたはマーカーによって測定可能)または主観的(すなわち、被験体が効果の指標を与えるか、および/または効果を感じる)であり得る。
【0174】
本明細書に示されるように、本発明の医薬製剤は、NOの投与が有益な効果を有する状態の治療において有用であり得る。
【0175】
言及され得る特定の状態は、様々な起源の急性肺血管収縮、原発性高血圧および続発性高血圧を含む、様々な起源の肺高血圧症;血管拡張を必要とする様々な起源の状態;様々な起源の全身性高血圧;様々な起源の限局性血管収縮;様々な起源の局所血管収縮;急性心不全(保存された駆出率(HFpEF)の有無にかかわらず);冠状動脈性心臓病;心筋梗塞;虚血性心疾患;狭心症;不安定狭心症;心不整脈;心臓外科患者の急性肺高血圧症;アシドーシス;気道の炎症;嚢胞性線維症;COPD;不動繊毛症候群;肺の炎症;肺線維症;成人呼吸窮迫症候群;急性肺水腫;急性高山病;喘息;気管支炎;様々な起源の低酸素症;脳卒中;脳血管収縮;胃腸管の炎症;胃腸機能障害;胃腸の合併症;IBD;クローン病;潰瘍性大腸炎;肝疾患;膵臓疾患;尿道の膀胱の炎症;皮膚の炎症;糖尿病性潰瘍;糖尿病性ニューロパチー;乾癬;様々な起源の炎症;創傷治癒;虚血再灌流状態における臓器保護;臓器移植;組織移植;細胞移植;急性腎疾患;子宮の弛緩;子宮頸部の弛緩;緑内障などの目の病気および平滑筋の弛緩が必要な状態からなる群から選択される状態を含む。
【0176】
言及され得る、より具体的な状態は、原発性高血圧および続発性高血圧、急性心不全(保存された駆出率(HFpEF)の有無にかかわらず)を含む、様々な起源の肺高血圧症である。例えば、状態は、手術に起因する肺高血圧症である可能性がある。
【0177】
肺高血圧症は、安静時の20mmHg以上での平均肺動脈圧(mPAP)の増加と、ウッド単位値3超の組み合わせとして定義される。
【0178】
当業者は、本明細書に記載されるような医薬製剤が、適切な緩衝液とともに、治療においてどのように投与され得るかを決定することができるであろう。特に、本明細書に記載の医薬製剤および緩衝液のそのような組み合わせは、静脈内または動脈内に投与され得る。
【0179】
当業者は、使用される製剤の性質(例えば、本明細書に記載の医薬製剤および適切な緩衝液の組み合わせ)、治療される状態、および患者の状態(例えば疾患の状態)に基づいて、治療に使用される活性成分の適切な用量を決定することができる。例えば、ヒト成人に静脈内または動脈内投与する場合、適切な用量は、約0.5~約3,000nmol/kg/分、例えば、約1~約3,000nmol/kg/分、例えば、約5~約3,000nmol/kg/分の式Iの化合物であり得る。そのような用量は、長期間(例えば、1~2時間または最大1週間)にわたる注入などの注入(連続的またはパルス的のいずれか)によって投与可能であり、または単回(ボーラス)用量として投与可能である(1回限りの用量または必要に応じて単回用量などの治療介入ごとの単回用量、または治療中の24時間ごとの単回用量など)。
【0180】
当業者は、本発明の製剤(すなわち、式Iの化合物を含む医薬組成物)が形成され、および/または治療中に投与される(すなわち、被験体に投与される)温度が、投与が行われる環境の温度(すなわち、室温)であることも可能であり、または温度を制御することも可能であることを理解するであろう。例えば、そのような製剤は、室温または低温(すなわち、室温より低い温度)、例えば、約0~約25℃で形成および/または投与され得る。
【0181】
特定の実施形態では、式(II)の化合物は、ヒトでの使用に特に重要であり、式(III)の化合物は、獣医用途での使用に特に重要である。
【0182】
理論に拘束されることを望まないが、患者に投与すると、式Iの化合物が加水分解されて一酸化窒素を放出し、これが所望の治療効果を提供すると考えられる。本明細書に記載のプロセスは、予想外に、必要な活性成分を含む適切な濃縮された安定な組成物の調製を可能にすると考えられる。さらに、特定のタイプの緩衝液が、活性成分を著しく分解することなく、そのような組成物の安全な投与を可能にすることが予想外に見出されたと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0183】
図1】本明細書の実施例5に記載する、多様な緩衝液中の本発明の組成物の安定性の分析結果を示す。
図2】本明細書の実施例6に記載する、吸入一酸化窒素と比較した場合の、治療における本発明の組成物の効果を比較するインビボ研究の結果を示す。PDNOの静脈内注入(重炭酸ナトリウムのキャリアフロー[50mg ml-1;PDNO注入速度の10倍の注入速度で]内への15、30、45、および60nmol kg-1-1;n=6)または肺血管収縮剤U46619(60~150ng kg-1-1)の静脈内注入中のNOの吸入(5、10、20、および40ppm;n=7)のいずれかを受けた、麻酔され機械的換気されているブタにおける、平均肺動脈圧(MPAP、パネルa)および肺血管抵抗(PVR、パネルc)、および平均動脈圧(MAP、パネルb)、全身血管抵抗(SVR、パネルd)およびメトヘモグロビン濃度の変化。吸入されたNOの用量をnmol kg-1-1に変換した。x軸は対数目盛である。データは中央値および四分位範囲として表される。は、各薬物におけるU46619のみからの示された用量の統計的に有意な効果を示す。φは、45nmol kg-1-1でのPDNOと、5ppmでの吸入NO、つまり同等の量のNO送達との間の統計的差異を示す。
図3】実施例13に概説した実験手順で、1,2-PDNO-R、1,2-PDNO-Sおよび1,3-PDNOを使用して平均全身および肺動脈圧を低下させた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0184】
本発明を以下の実施例により説明するが、限定されることを意図しない。
【0185】
略語
aq 水性
conc 濃度
GC ガスクロマトグラフィー
NMR 核磁気共鳴
equiv.同等のもの
rel.vol.相対体積
【0186】
一般的な手順
下記の調製において特定された出発物質および化学試薬は、Sigma Aldrichなどの多数の供給業者から市販されている。
【0187】
すべてのNMR実験は、Bruker Topspin 2.1ソフトウェアを使用して、Zグラジエントを備えたQNPプローブヘッドを装備したBruker 500MHz AVI機器上、298Kで実行された。特に明記しない限り、シグナルは、7.27ppmの残余のCHClを基準とした。
【0188】
安定性アッセイ
安定性サンプルのアッセイは、以下の条件下で、GC/FIDによって実行した。1,4-ジオキサンを内部標準(IS;CHCN中、約0.50mg/ml)として使用した。
【0189】
GCカラム:Rxi-5Sil MS、20m×0.18mm、0.72μm
キャリアガス:ヘリウム
流入口:200℃、分割比30:1
定流量:1.0ml/分
オーブン温度プロファイル:40℃(3分)、10℃/分、250℃(3分)
FID:温度300℃;H流量30ml/分、気流400ml/分、メイクアップフロー(N)25ml/分
【0190】
インビボ研究
実験の前に、リンヒェービング地域動物倫理委員会(リンヒェービング、スウェーデン、承認番号953)から倫理的承認を受けた。最近、麻酔管理、手術器具、および測定方法が説明された(Dogan et al.2018、Sadeghi et al.2018)。
【0191】
簡潔には、8頭のオスおよびメスのブタ(スウェーデン国産種、ハンプシャーおよびヨークシャー間の交雑種、生後3~4か月、平均体重27kg、範囲21~34kg)は、農場でアザペロンの前投薬を受け、実験室に運ばれた。実験室では、チレタミン、ゾラゼパム、アザペロンの混合物(筋肉内注射)で麻酔を導入した。必要に応じて、プロポフォールを耳静脈の末梢静脈カテーテルに投与した。アトロピンおよびセフロキシムのボーラス用量を静脈内投与した。動物は気管内挿管され、機械的に換気された(呼気終末陽圧で5cm HO、分時換気は正常換気に調整された)。全身麻酔は、継続的な静脈内注入を介してプロポフォールおよびフェンタニルで維持され、必要に応じて追加のボーラス投与が行われた。水分の喪失を補うために、リンゲル酢酸グルコース溶液を継続的に静脈内投与した。手術器具使用後、静脈内ボーラス用量としてヘパリンを与えた。実験後、プロポフォール注射とそれに続く塩化カリウム(40mmol)の急速静脈内注射による全身麻酔で動物を殺し、心静止を確認した。
【0192】
動物は、全身の動脈血圧および心拍数の測定、ならびに動脈血サンプリングのために、右頸動脈に動脈カテーテルを備え付けられた。肺動脈カテーテルを導入するために、シースを右外頸静脈に配置した。このカテーテルは、肺動脈血圧、半連続心拍出量、および断続的な肺動脈楔入圧の連続測定に使用された。薬物および液体投与のために、中心静脈カテーテルを左外頸静脈に挿入した。すべての液体および薬物の投与は、電動シリンジまたはドリップポンプによって行われた。膀胱にカテーテルを挿入した。気管内チューブで呼吸ガス、圧力、および体積を測定した。呼吸および血行力学的変数は、Datex AS/3(ヘルシンキ、フィンランド)によって測定され、データはコンピューター化されたシステム(MP150/Acknowledge 3.9.1、BIOPACシステム、ゴレタ、カリフォルニア、米国)によって収集された。血液ガスおよびメトヘモグロビン濃度は、血液ガス装置(GEM 4000、Instrumental Laboratory、レキシントン、マサチューセッツ、米国)によって測定された。肺および全身の血管抵抗は、標準的な式で計算された。手術器具使用後、1時間の介入なしの期間が続いた。
【0193】
データは、非正規分布のため、中央値および四分位範囲として提示された。吸入NOのppm投与量は、理想気体の法則および分時換気量を使用し、肺へのNOの完全な取り込みを想定して、nmol kg-1-1の投与量に変換された。薬物データ内で、事後多重比較のためのウィルコクソンの符号付き順位検定を使用したフリードマン検定で分析された。マンホイットニーU検定を使用して、最大用量と同様のNO送達の用量(45nmol kg-1-1のPDNOおよび5ppmの吸入NO)での薬物を比較した。0.05の臨界P値が使用され、多重比較でBenjamini-Hochbergのステップアップ手順によって調整された。
【0194】
実施例1-亜硝酸ナトリウムを用いた1-(ニトロソオキシ)-プロパン-2-オール、2-(ニトロソオキシ)-プロパン-1-オールおよび1,2-ビス(ニトロソオキシ)プロパンの調製。
1,2-プロパンジオール(15mL、205mmol)、水(100mL)、ジクロロメタン(200mL)、および亜硝酸ナトリウム(57g、826mmol)を500mLの3つ口丸底フラスコに加えた。混合物を氷浴で0℃に冷却した。濃硫酸(30mL、546mmol)および水(30mL)を滴下漏斗に加え、冷蔵庫で5℃に冷却した。漏斗を丸底フラスコに適合させ、酸をニトライト混合物に2時間加えた。混合物を磁石で20分間撹拌し、次に、より多くのジクロロメタン(100mL)および水(100mL)とともに分液漏斗に注いだ。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発器上で減少させて、1,2-プロパンジオール(3重量%)、1-(ニトロソオキシ)-プロパン-2-オール(23重量%)、2-(ニトロソオキシ)-プロパン-1-オール(13重量%)および1,2-ビス(ニトロソオキシ)プロパン(57重量%)の混合物を得た。
【0195】
実施例2-亜硝酸ナトリウムを用いた1-(ニトロソオキシ)-プロパン-2-オール、2-(ニトロソオキシ)-プロパン-1-オールおよび1,2-ビス(ニトロソオキシ)プロパンの調製
1,2-プロパンジオール(20mL、273.4mmol)、水(60mL)、ジクロロメタン(120ml)および亜硝酸ナトリウム(37.72g、546.7mmol)を、撹拌機を備えた0.5反応器に加え、窒素でフラッシュし、そして窒素下での次の反応の過程で維持した。マントルを0℃に冷却することにより、混合物を5℃未満に冷却した。濃硫酸(26.3g、260.1mmol)および水を滴下漏斗に加えた。漏斗を(反応器に取り付け、33分間ニトライト混合物に酸を加えた。混合物を54分間撹拌し、次に飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL)を含むフラスコに注いだ。混合物を分液漏斗に移し、有機相を洗浄した。水相を廃棄し、有機相を追加の飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、次に1,2-プロパンジオール(120ml、1640mmol)とともに1Lの丸底フラスコに移した。ジクロロメタンが除去されるまで、溶液を減圧下、回転蒸発器上で減少させた。ジクロロメタンの除去をNMRで監視した。1,2-プロパンジオール(82.8重量%)、1-(ニトロソオキシ)-プロパン-2-オール(10.4重量%)、2-ニトロソオキシ)-プロパン-1-オール(6重量%)および1,2-ビス(ニトロソオキシ)プロパン(0.8重量%)を含む透明溶液を得た。
【0196】
H-NMR、δppm:5.61(br s 1H)、4.75-5.58(m、2H)、4.11(br s、1H)、3.90-3.87(m、1H)、3.83-3.69(m、2H)、3.60(dd、J=3.0、11.2Hz、1H)、3.38(dd、J=7.9、11.2Hz、1H)、1.47(d、J=6.6Hz、3H)、1.39(d、J=6.4Hz、3H)、1.26(D、J=6.4Hz、3H)、1.15(D、J=6.3Hz、3H)、1,2-ビス(ニトロソオキシ)プロパンのCHおよびCHシグナルは検出限界未満であった。
【0197】
実施例3-亜硝酸tert-ブチルを用いた1-(ニトロソオキシ)-プロパン-2-オール、2-(ニトロソオキシ)-プロパン-1-オールおよび1,2-ビス(ニトロソオキシ)プロパンの調製
亜硝酸tert-ブチル(2mL、15.1mmol)を1,2-プロパンジオール(11mL、150.3mmol)とともに丸底フラスコに加え、得られた溶液を周囲温度で撹拌した。次に1mLの反応溶液を7.5mLの1,2-プロパンジオールと混合した。
【0198】
実施例4-1-(ニトロソオキシ)-プロパン-2-オール、2-(ニトロソオキシ)-プロパン-1-オールおよび1,2-プロパンジオールの非水性混合物の安定性
1,2-プロパンジオール中の1-(ニトロソオキシ)-プロパン-2-オールおよび2-(ニトロソオキシ)-プロパン-1-オールの3つの異なる濃度を調製し、冷蔵庫(5℃)および冷凍庫(-20℃)の両方で保存した。各溶液のアリコートを定期的に採取し、GCで分析して、1-(ニトロソオキシ)-プロパン-2-オールおよび2-(ニトロソオキシ)-プロパン-1-オールの濃度を測定した。
【0199】
GC分析の結果を以下の表に示す(カラム:Rxi-5Sil MS、20mx0.18mm、0.36膜厚、キャリア:He、流入口:250℃、分割比100:1、定流量:1.0mL/分;オーブン温度プロファイル:40℃(3分)、10℃/分、80℃(0分)、30℃/分、250℃(3分);FID:300℃、H流量30mL/分、気流400mL/分、メイクアップフロー(N)25mL/分;内部標準:1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン):
【表1】
【0200】
実施例5-1-(ニトロソオキシ)-プロパン-2-オールおよび2-(ニトロソオキシ)-プロパン-1-オール(PDNO)、および1,2-プロパンジオール(PD)の緩衝水溶液の安定性
安定性サンプルの100μlをGCバイアルに添加した。400μlの溶液PD/緩衝液(1:9)および400μlのCHCNを添加した。次に、500μlのCHClを添加し、1分間穏やかに振とうして混合物を抽出した。500μlの有機相(下相)を別のGCバイアルに移し、50μlのISを添加した。上記の条件に従って抽出物をGC/FIDで分析した。
【0201】
それぞれ1-ニトライトおよび2-ニトライトの検量線を作成した。ピーク面積比(ニトライト/IS)対ニトライトの量をプロットした。標準の調製には、高濃度のPDNO/PDのストック溶液を使用した。%w/wで表したニトライトの濃度を計算した。
【0202】
得られた結果を以下の表および図1に示す。
【表2】
【0203】
実施例6-インビボ研究
ベースラインデータを収集した後、トロンボキサンA2模倣9,11-ジデオキシ9α、11α-メタノエポキシPGF2α(U46619、Cayman Chemical社、ミシガン州、USA;酢酸メチル中で供給され、NaCl 0.9%中で希釈された、最終濃度30μg ml-1;目標平均肺動脈圧35~45mmHgまで、60~150ng kg-1-1)の連続静脈内注入によって、安定した肺高血圧症を誘導した。その後、薬物間のウォッシュアウト期間が30分の非ランダムクロスオーバー設計において、重炭酸ナトリウム(50mg ml-1;pH約8;Fresenius Kabi、ウプサラ、スウェーデン;注入速度はPDNO注入速度の10倍)溶液のキャリアフローへのPDNOの漸増用量(15、30、45、および60nmol kg-1-1)の連続静脈内注入、またはNOの吸入(5、10、20、および40ppm;窒素中1000ppmのタンクからの吸入NO投与ユニットを備えたServo 300換気装置の吸気肢に送達される[Siemens-Elema、ストックホルム、スウェーデン]のいずれか。吸入されたNOの正確な投与量をNO分析器でチェックした。各用量は5~10分間投与された。血行動態および呼吸データが抽出され、各投与の最後の瞬間に動脈血がサンプリングされた。
【0204】
U46619の静脈内注入は、それぞれNO吸入およびPDNO注入前、平均肺動脈圧が43(37~48)mmHgおよび43(41~46)mmHg、ならびに肺血管抵抗が8.3(6.7~11.7)mmHg 分 l-1および9.8(7.7~12.5)mmHg 分 l-1)の安定した肺高血圧症を誘発した。吸入NOおよび静脈内注入PDNOはどちらも、肺動脈圧および血管抵抗を有意に低下させたが、PDNOは吸入NOよりも効率的に平均肺動脈圧を低下させ(より急勾配)、PDNOは同等の投与量の吸入NOと比較して肺血管抵抗をより有意に低下させた(図2に示す通り)。平均動脈圧および全身血管抵抗に有意な影響を与える薬物はなかったが、PDNO群では、同等の用量の吸入NO群と比較して全身血管抵抗がわずかに低かった(図2)。どちらの薬物も、肺対全身の血管抵抗比を有意に低下させ、最高用量では、この比は、PDNO群と比較して吸入NO群でわずかに低かった(データは示していない)。心拍出量はU46619によってわずかに減少したが、心拍出量を有意に変化させる薬物はなかった(データは示していない)。メトヘモグロビン濃度に有意な影響を与える薬物はなかったが、吸入NO群で増加する傾向があり、メトヘモグロビン濃度は送達されたNOの用量に関連しているようであった(図2)。酸素の動脈分圧はU46619によってわずかに減少し、どちらの薬物もこの変数を正常に向かって増加させた(データは示していない)。
【0205】
実施例7 亜硝酸ナトリウムを用いた1-(ニトロソオキシ)-プロパン-2-オール、2-(ニトロソオキシ)-プロパン-1-オール、および1,2-ビス(ニトロソオキシ)プロパンの無溶媒調製
水(30mL)および亜硝酸ナトリウム(19.01g、272.8mmol)を100mLの3つ口丸底フラスコに加え、窒素でフラッシュし、外部クーラーで冷却した水浴で1℃に冷却した。1,2-プロパンジオール(10mL、136.7mmol)を加えた。濃硫酸(7mL、127.4mmol)および水(20mL)を室温に予冷し、滴下漏斗を介して1時間かけて滴下した。添加中に、水層は厚いスラリーを形成し、緑色の第2の層が形成された。酸の添加が完了する前に(残り5mL)、フラスコを冷浴から取り出し、緑色の層を分液漏斗にデカントし、2×飽和NaHCO水溶液で洗浄した。緑色の層は黄色に退色し、分離後、NaSO上で乾燥させ、シリンジフィルター(Acrodisc(登録商標)13mm、0.45μ MSUPOR(登録商標))でろ過して、約0.25/0.1/1の1-(ニトロソオキシ)-プロパン-2-オール/2-(ニトロソオキシ)-プロパン-1-オール/1,2-ビス(ニトロソオキシ)プロパンの混合物1.1gを得た。NMR感度の範囲内で出発物質の1,2-プロパンジオールは検出できなかった。
【0206】
H-NMR,δppm:5.81-5.76(m,br,1.0H),5.63(br,0.1H),4.93(br,2.08H),4.73-4.65(br,m,0.47H),4.14(br,0.19H),3.84-3.77(br,m,0.22H),1.49-1.48(br,m,3.21H),1.43(br,0.51H),1.28(br,0.72H)。
【0207】
実施例8 -(2S)-1-(ニトロソオキシ)-プロパン-2-オール、(2S)-2-(ニトロソオキシ)-プロパン-1-オールおよび(2S)-1,2-ビス(ニトロソオキシ)プロパンの調製
(S)-1,2-プロパンジオール(5mL、66.97mmol)、水(15mL)、ジクロロメタン(30mL)および亜硝酸ナトリウム(9.34g、134mmol)を100mLの3つ口丸底フラスコに加え、窒素でフラッシュし、外部クーラーで冷却した水浴上で1℃に冷却した。濃硫酸(3.5mL、63.69mmol)および水(10mL)を室温まで予冷し、シリンジポンプで1時間滴下した。添加後、混合物をさらに60分間撹拌した。2つの層を分離した後、DCM層を追加のDCM(15mL)で希釈し、飽和水性NaHCO(15mL)、続いてブライン(15mL)で洗浄し、次いでNaSO上で乾燥させ、焼結ガラスフィルターでろ過し、そして真空中で減少させた。残留物を再び30mLのDCMに取り、1.4%w/w重炭酸水溶液で洗浄し、次いで、NaSO上で乾燥させ、焼結ガラスフィルターでろ過し、真空下で減少させて、1gの生成物混合物を得た。NMRに基づき、混合物は(2S)-1,2-プロパンジオール(3%)、(2S)-1-(ニトロソオキシ)-プロパン-2-オール(23%)、(2S)-2-(ニトロソオキシ)-プロパン-1-オール(14%)および(2S)-1,2-ビス(ニトロソオキシ)プロパン(60%)からなった。
【0208】
H-NMR,δppm:5.83-5.74(m,1.0H),5.66-5.57(br,0.22H),4.99-4.85(br,1.98H),4.76-4.59(br,0.77H),4.17-4.07(br,0.38H),3.86-3.73(br,0.40H),1.8-1.6(br,0.97H),1.48(d,J=6.7Hz,3.12H),1.40(d,J=6.6Hz,0.63H),1.28(d,J=6.5Hz,1.15H)。
【0209】
実施例9-(2R)-1-(ニトロソオキシ)-プロパン-2-オール、(2R)-2-(ニトロソオキシ)-プロパン-1-オールおよび(2R)-1,2-ビス(ニトロソオキシ)プロパンの調製
(R)-1,2-プロパンジオール(5mL、66.97mmol)、水(15mL)、ジクロロメタン(30mL)および亜硝酸ナトリウム(9.34g、134mmol)を100mLの3つ口丸底フラスコに加え、窒素でフラッシュし、外部クーラーで冷却した水浴上で1℃に冷却した。濃硫酸(3.5mL、63.69mmol)および水(10mL)を室温まで予冷し、シリンジポンプで1時間滴下した。添加後、混合物をさらに55分間撹拌した。2つの層を分離した後、DCM層を追加のDCM(10mL)で希釈し、飽和NaHCO水溶液(20mL)で洗浄し、次いでNaSO上で乾燥させ、焼結ガラスフィルターでろ過し、真空で減少させた。NMRに基づき、混合物は(2R)-1,2-プロパンジオール(17%)、(2R)-1-(ニトロソオキシ)-プロパン-2-オール(16%)、(2R)-2-(ニトロソオキシ)-プロパン-1-オール(7%)および(2R)-1,2-ビス(ニトロソオキシ)プロパン(59%)からなった。
【0210】
H-NMR,δppm:5.83-5.74(m,1.0H),5.66-5.57(br,0.12H),4.99-4.85(br,2.10H),4.76-4.59(br,0.53H),4.17-4.07(br,0.24H),3.86-3.73(br,0.28H),2.4-2.1(br,0.38H),1.48(d,J=6.8Hz,3.20H),1.40(br,0.56H),1.28(br(d),0.88H)。
【0211】
実施例10-1-(ニトロソオキシ)プロパン-3-オールおよび1,3-ビス(ニトロソオキシ)プロパンの調製
1,3-プロパンジオール(2.5g、32.86mmol)、水(7mL)、ジクロロメタン(15mL)および亜硝酸ナトリウム(4.53g、65.7mmol)を100mLの丸底フラスコに加え、窒素でフラッシュして、外部冷却器で冷却した水浴上で15分間0℃に冷却した。濃硫酸(1.7mL、31.2mmol)および水(5mL)を室温に予冷し、5分間滴下した。添加後、混合物を0℃でさらに60分間撹拌した。次に、2つの層を分離し、有機相を追加のDCM(10mL)で希釈し、飽和NaHCO水溶液(2X25mL)で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、焼結ガラスフィルターでろ過した。最後に、1,3-プロパンジオール(16.4g 216mmol)を有機相に加え、続いて真空中でDCMを除去した。NMRに基づくと、混合物(18.1g)は、1,3-プロパンジオール(86.9重量%)、1-(ニトロソオキシ)-プロパン-3-オール(11.8重量%)、および1,3-ビス(ニトロソオキシ)プロパン(1.3重量%)を含んだ。
【0212】
1H-NMR、δ4.76-4.88(m、2H)、3.83(t、J=5.7Hz、2H)、3.73(t、J=6.1Hz、2H)、2.79(s、1H)、2.18(クインテット、J=6.3Hz、2H)、1.99(クインテット、J=6.2Hz、2H)、1.80(クインテット、J=5.7Hz、2H)。
【0213】
実施例11-亜硝酸ナトリウムを用いた1-(ニトロソオキシ)-プロパン-2-オール、2-(ニトロソオキシ)-プロパン-1-オールおよび1,2-ビス(ニトロソオキシ)プロパンの調製のためのスケールアッププロセス
11.1使用される化学物質
出発物質は、以下の表の供給業者のリストから購入した。特に断りのない限り、化学物質はさらに精製することなく受け取ったまま使用した。
【表3】
【0214】
11.2 DCMを溶媒として使用してPDNOを合成するための一般的な手順(起点プロセス)
丸底フラスコには、撹拌機および滴下漏斗が装備されていた。水(3.0当量)を加え、亜硝酸ナトリウム(2.0当量)をフラスコに入れた。溶液を冷却し(0℃)、PD(1.0当量)およびDCM(6相対体積)も加えた。さらに冷却している間、硫酸溶液(1.0当量HSO、2.0相対体積の水)を用意した。反応混合物を0℃~5℃の間に保ちながら、さらに硫酸溶液を反応混合物に滴下した。酸を完全に加えた後、溶液をさらに1時間撹拌して反応を完了させた。
【0215】
次に、反応を飽和NaHCO溶液(6.0相対体積)でクエンチした。相を分離し、有機層をさらにNaHCO溶液(6.0相対体積)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥し、ろ過し、PDで希釈し、回転蒸発器(水浴温度40℃)を使用して減圧下で濃縮した。
【0216】
生成物はわずかに黄色がかった液体として得られた。
【0217】
11.3 溶媒としてTBMEを使用したPDNOの一般的な合成
丸底フラスコには撹拌機および滴下漏斗が装備されていた。アルゴンを数分間フラッシュした。希硫酸溶液(1.0当量HSO、2.0相対体積の水)は、あらかじめ調製し、予冷(-30℃)した。フラスコに水を加えた(3.0相対体積)。亜硝酸ナトリウム(2.0当量)を水に加えた。TBME(7.5相対体積)を追加した。プロパンジオール(1.0当量)を加え、反応混合物を冷却し(-20℃)、アルゴンで絶えずフラッシュした。予冷した硫酸を滴下しながら反応混合物をよく撹拌した。酸の添加の間、常に反応温度を監視した。添加後、反応混合物を低温(-20℃)でさらに撹拌した(30~60分)。その後、反応混合物が温まることを可能にした(-5℃)。飽和NaHCO溶液(6.0相対体積)でクエンチすることにより反応を停止させた。相を分離した。7~8のpH値が得られるまで、有機層を飽和NaHCO溶液でさらに洗浄した。次に、有機相をMgSO上で乾燥させた。PD(3相対体積)で粗PDNO溶液を希釈し、周囲温度(25℃)、減圧下でさらに濃縮した。
【0218】
垂直管蒸発装置を使用して粗PDNO溶液をさらに精製した。
【0219】
PDNOはわずかに黄色がかった液体として得られた。
【0220】
11.4 溶媒としてTBMEを使用したPDNOの詳細な合成
このプロセスは、1回の合成(1回の「実行」)で約7.5Lの7%PDNO溶液を生成するように設計された。合成を数回実行し、所望のバッチサイズを得た。純度測定には、1回の実行ごとにGC分析を使用した。有機関連化合物の仕様の範囲内にある実行を混ぜて、1つのバッチを生成し得る。次に、粗PDNOバッチ全体を精製した。精製後、強力なPDNO溶液をPDでさらに希釈して、目的の濃度(通常は7%PDNO溶液)を得た。
【0221】
適切な二重壁反応器(60L)には、特定の「カップスターラー」、滴下漏斗、およびアルゴン用のアタッチメントが装備された。反応器を一定のアルゴン流で5分~10分間フラッシュした。水(3.0L)を反応器に加えた。反応器を通して亜硝酸ナトリウム(2.0当量、1886g)を加えた。すべての塩が溶解するまで反応物をさらに撹拌し、1,2-プロパンジオール(1.0当量、1040g、1L)を加え、続いてtert-ブチルメチルエーテル(7.5相対体積、7.5L)を加えた。次に、反応混合物を、連続撹拌およびアルゴン流により、-20℃の内部反応温度で冷却した。一方、硫酸(1.0当量、1340g、728mL)を水(2.0L)で希釈し、-30℃で冷却した。-20℃の内部反応温度に達した後、激しく撹拌しながら、希釈した酸を反応混合物に滴下して加えた。
【0222】
酸の添加中に撹拌速度を変化させた。約350rpmから開始し、反応の終わりまでに遅い撹拌速度(約180rpm)にした。撹拌速度のこの変動は、二相反応系と、反応のさらなる進行による硫酸ナトリウムのゆっくりとした沈殿(ますます多くの硫酸の添加による)によるものである。
【0223】
硫酸の添加の間、常に反応温度を監視した。温度は理想的には(-20±3)℃の範囲でなければならない。さらに、反応物を(-20±3)℃で30~60分間撹拌した。
【0224】
反応物を-5℃から0℃まで温めた。飽和NaHCO溶液(6.0相対体積、6.0L)を加え、続いて水(10L)を加えることにより、反応を停止させた。相を分離し、有機層を別の二重壁反応器に移し、0℃~5℃で冷却した。有機層を飽和NaHCO溶液(4.0相対体積、4.0L)で数回(約2~3回)洗浄した。各洗浄ステップの後に水相のpH値を監視した。pH値は約7~8であった。水相を廃棄した。有機層をMgSO上で乾燥し、ワットマンろ紙でろ過した。
【0225】
さらにPD(3.0相対体積、3.0L)を加えることにより、粗PDNO(TBME中の溶液)を希釈した。この粗PDNOを回転蒸発器に移し、減圧下で濃縮した。蒸発中の水浴温度は最高温度25℃に維持された。主要量のTBMEの蒸発は、1.5時間~2.0時間の時間範囲で除去された。
【0226】
次に、高真空ポンプを使用して、(0±2)℃の水浴温度で、有機溶媒の蒸発を数時間継続可能であった(発展中、これらの条件でPDNO純度を監視し、生成物の純度は6時間にわたって影響を受けなかった)。
【0227】
11.5 粗PDNO溶液のさらなる精製
PDNO溶液の最終精製を、垂直管蒸発によって行った。PDNO溶液を、0℃でPDNOの連続的な薄い蒸気を用いて高真空下で蒸留した。「粗」PDNO溶液の保管タンクを0℃で冷却した。全蒸留を0℃で実行した。「精製された」PDNOの保管タンクも-10℃~0℃に冷却した。バッチPDNO全体の蒸発を実行するたびに、GCを介して残留有機溶媒(TBME)を確認し得る。この蒸発を、残留溶媒の所望の限界が達成されるまで続けた。PDNOの場合、残留溶媒の制限は1000ppmである。
【0228】
11.6 最終希釈の調製
精製後、PDNOをさらに希釈して好ましい濃度に到達させた。最初のステップは、ワットマンフィルターを介してPDNO溶液をきれいなガラス瓶にろ過することであった。さらに、PDNO溶液のアッセイはq-NMRによって決定された。希釈用PDの量を計算し得る。PDを最初にワットマンフィルターでろ過した。最終希釈は周囲温度で行われ得る。計算された量のPDがPDNO溶液に追加された(またはその逆)。得られた混合物を数分間振とうして均一な溶液を得た。最終的なPDNO溶液を生成物ボトルに充填した。
【0229】
PDNO(7.5kg;7%溶液)はわずかに黄色がかった液体として得られた。
【0230】
実施例12-静脈内PDNOの血行力学的効果:麻酔されたブタにおける多様なキャリア溶液の影響
麻酔をかけたブタに静脈内投与した1,2-プロパンジオール(PDNO)の有機モノニトライトの血行力学的効果に対する多様なキャリア溶液の影響を研究した。
【0231】
実験の前に、リンヒェービング地域動物倫理委員会(リンヒェービング、スウェーデン、承認番号953)から倫理的承認を受けた。この研究は、科学的目的で使用される動物の保護に関する指令2010/63/EUに従って行われた。2頭の健康な国産3ヶ月齢のブタ(スウェーデン国産種、ハンプシャーおよびヨークシャー間の交雑種、体重26kgおよび27kg)が研究に含まれた。
【0232】
動物は農場でアザペロンを前投薬され、実験室に運ばれた。実験室では、チレタミン、ゾラゼパム、アザペロンの混合物(筋肉内注射)で麻酔を導入した。必要に応じて、プロポフォールを耳静脈の末梢静脈カテーテルに投与した。アトロピンおよびセフロキシムのボーラス用量を静脈内投与した。動物は気管内挿管され、機械的に換気された(呼気終末陽圧で5cm HO、分時換気は正常換気に調整された)。全身麻酔は、継続的な静脈内注入を介してプロポフォールおよびフェンタニルで維持され、必要に応じて追加のボーラス投与が行われた。水分の喪失を補うために、リンゲル酢酸グルコース溶液を継続的に静脈内投与した。手術器具使用後、静脈内ボーラス用量としてヘパリンを投与した。実験後、プロポフォール注射とそれに続く塩化カリウム(40mmol)の急速静脈内注射による全身麻酔で動物を殺し、心静止を確認した。
【0233】
動物は、全身の動脈血圧および心拍数を測定するために、右頸動脈に動脈カテーテルを備え付けられた。肺動脈カテーテルを導入するために、シースを右外頸静脈に配置した。このカテーテルは、肺動脈血圧および半連続心拍出量の連続測定に使用された。薬物および液体投与のために、中心静脈カテーテルを左外頸静脈に挿入した。すべての液体および薬物の投与は、電動シリンジまたはドリップポンプによって行われた。膀胱にカテーテルを挿入した。血行力学的変数はDatex AS/3(ヘルシンキ、フィンランド)によって測定され、データはコンピューター化されたシステム(MP150/Acknowledge 3.9.1、BIOPACシステム、ゴレタ、カリフォルニア、米国)によって収集された。手術器具使用後、少なくとも1時間の介入なしの期間が続いた。
【0234】
PDNOの静脈内注入は、重炭酸ナトリウム(14mg ml-1;pH7.4または8.0)、pH8の生理食塩水または生理食塩水のPDNO注入速度の9倍の注入速度で、30nmol kg-1-1で15分間、キャリアフロー内に投与された(Research Institutes of Sweden、セーデルテリエ、スウェーデン)。標準的な化学物質を使用して、キャリア溶液を生成した。各注入の終わりに血行力学的効果を測定した。
【0235】
その結果を以下の表に示す。PDNOおよびキャリア溶液の各静脈内組み合わせ前のベースライン値は、健康で麻酔をかけたブタでは正常であった。pH8の重炭酸緩衝液のキャリア溶液中の静脈内PDNOは、平均全身動脈圧(MAP)および平均肺動脈圧(MPAP)をそれぞれ-11±1.2mmHgおよび-2.4±0.8mmHg減少させ、一方、生理食塩水のキャリア溶液中の静脈内PDNOは、MAPおよびMPAPを-6.9±2.5mmHgおよび-2.4±0.1mmHg減少させた。pH7.4の重炭酸緩衝液およびpH8の生理学的リン酸緩衝液と組み合わせた静脈内PDNOは、生理食塩水と同様にMAPおよびMPAPに影響を及ぼした。心拍数および半連続心拍出量は、注入によってわずかにしか影響を受けなかった。
【0236】
多様なキャリア溶液と組み合わせて30nmol kg-1-1でPDNOを繰り返し静脈内注入された、麻酔され機械的換気されているブタの血行力学的変数(キャリア溶液あたりn=2)。
【表4】
【0237】
データは平均および標準偏差として表される。
【0238】
平均全身動脈圧(MAP)、平均肺動脈圧(MPAP)、心拍数(HR)、半連続心拍出量(CCO)。
【0239】
pH8の重炭酸緩衝液のキャリア溶液と組み合わせた静脈内PDNOは、pH7.4の生理食塩水、生理学的リン酸緩衝液および重炭酸緩衝液のキャリア溶液と比較して、より大きな血行力学的効果をもたらした。
【0240】
実施例13-麻酔したブタにおける1,2-PDNO-R、1,2-PDNO-Sおよび1,3-PDNOの薬理学的調査
実験の前に、リンヒェービング地域動物倫理委員会(リンヒェービング、スウェーデン、承認番号953)から倫理的承認を受けた。簡潔には、2頭のオスおよびメスのブタ(スウェーデン国産種、ハンプシャーとヨークシャー間の交雑種、生後3~4か月、24~26kg)は、農場でアザペロンの前投薬を受け、実験室に運ばれた。実験室では、チレタミン、ゾラゼパム、アザペロンの混合物(筋肉内注射)で麻酔を導入した。必要に応じて、プロポフォールを耳静脈の末梢静脈カテーテルに投与した。アトロピンおよびセフロキシムのボーラス用量を静脈内投与した。動物は気管内挿管され、機械的に換気された(呼気終末陽圧で5cm HO、分時換気は正常換気に調整された)。全身麻酔は、継続的な静脈内注入を介してプロポフォールおよびフェンタニルで維持され、必要に応じて追加のボーラス投与が行われた。水分の喪失を補うために、リンゲル酢酸グルコース溶液を継続的に静脈内投与した。手術器具使用後、静脈内ボーラス用量としてヘパリンを与えた。実験後、プロポフォール注射とそれに続く塩化カリウム(40mmol)の急速静脈内注射による全身麻酔で動物を殺し、心静止を確認した。
【0241】
動物は、全身の動脈血圧および心拍数の測定のために、右頸動脈に動脈カテーテルを備え付けられた。肺動脈カテーテルを導入するために、シースを右外頸静脈に配置した。このカテーテルは、肺動脈血圧、半連続心拍出量、および断続的な肺動脈楔入圧の連続測定に使用された。薬物および液体投与のために、中心静脈カテーテルを左外頸静脈に挿入した。すべての液体および薬物の投与は、電動シリンジまたはドリップポンプによって行われた。膀胱にカテーテルを挿入した。気管内チューブで呼吸ガス、圧力、体積を測定した。呼吸および血行力学的変数は、Datex AS/3(ヘルシンキ、フィンランド)によって測定され、データはコンピューター化されたシステム(MP100またはMP150/Acknowledge 3.9.1、BIOPACシステム、ゴレタ、カリフォルニア、米国)によって収集された。手術器具使用後、1時間の介入なしの期間が続いた。
【0242】
ベースラインデータを収集した後、1,2-PDNO-R(43nmol kg-1-1)、1,2-PDNO-S(43nmol kg-1-1)、および1,3-PDNO(30nmol kg-1-1)の10~15分の静脈内注入を重炭酸ナトリウム溶液のキャリアフロー(14mg ml-1;pH約8;注入速度はPDNO注入速度の9倍)内に投与した。血行動態および呼吸データを各投与の最後に抽出した。
【0243】
1,2-PDNO-R、1,2-PDNO-S、および1,3-PDNOは、平均全身および肺動脈圧を低下させた。これを図3に示す。結論は、1,2-PDNO-R、1,2-PDNO-S、および1,3-PDNOが全身および肺の血管拡張を引き起こし、したがってそれらは血管拡張能力を示すということである。
図1
図2
図3