(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-01
(45)【発行日】2025-07-09
(54)【発明の名称】エラストマー物品の作製方法
(51)【国際特許分類】
B29C 39/24 20060101AFI20250702BHJP
B29C 39/26 20060101ALI20250702BHJP
【FI】
B29C39/24
B29C39/26
(21)【出願番号】P 2022507593
(86)(22)【出願日】2020-08-11
(86)【国際出願番号】 US2020045706
(87)【国際公開番号】W WO2021030316
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-07-28
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シャンボール、グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】デイ サンティ、ダビデ
(72)【発明者】
【氏名】ダビディアン、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グベルス、フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ファン ティフェレン、ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】サンドキューラー、ペーター ヘルマン ローランド
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/208348(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/160325(WO,A1)
【文献】特開2013-230618(JP,A)
【文献】特開2013-226693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/24
B29C 39/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温硬化性シリコーン組成物から成形されたシリコーンエラストマー物品を成型するための方法であって、
(i)2つ以上の事前定義された形状(6)を備える金型(4)上にフィルム(2)を掛けて、前記フィルム(2)と前記金型(4)中の各事前定義された形状(6)との間に排気可能な体積(8)を確立することと、
(ii)前記金型(4)の第1の事前定義された形状(6a)と前記フィルム(2)との間の排気可能な体積(8)に吸引を適用して、前記第1の事前定義された形状(6a)の前記排気可能な体積(8)内に少なくとも部分的な真空を確立し、その結果、前記フィルム(2)が、前記金型(4)の前記第1の事前定義された形状(6a)に適合するフィルム状の内張りを形成することと、
(iii)さらに、前記金型(4)の第2の事前定義された形状(6b)と前記第2の事前定義された形状(6b)が前記第1の事前定義された形状(6a)に隣接する前記フィルム(2)との間の前記排気可能な体積(8)に吸引を適用して、前記第2の事前定義された形状(6b)の前記排気可能な体積内に少なくとも部分的な真空も確立し、その結果、前記金型(4)の前記第2の事前定義された形状(6b)に適合するフィルム状の内張りも形成することと、
(iv)前記金型中の各事前定義された形状が、前記排気可能な体積(8)内に少なくとも部分的な真空を有し、前記フィルム(2)が、前記金型(4)の各それぞれの事前定義された形状(6)に適合するフィルム状の内張りを形成するまで、ステップ(iii)を順次繰り返すことと、
(v)前記金型(4)の1つ以上の事前定義された形状(6)に適合する前記フィルム状の内張りに室温硬化性シリコーン組成物を導入することであって、前記組成物は、それが導入されている前記金型(4)中の事前定義された形状(6)に適合するように設計されている、導入することと、
(vi)前記室温硬化性シリコーン組成物は、それが導入された前記事前定義された形状(6)で硬化して、成形されたシリコーンエラストマー物品を形成することを可能にすることと、を含む方法。
【請求項2】
前記事前定義された形状(6)が、基部ならびに第1の壁および第2の壁を有する細長いチャネルであり、前記第1および第2の壁が、互いに平行であり、かつ前記基部に垂直である、請求項1に記載の室温硬化性シリコーン組成物から成形されたシリコーンエラストマー物品を成型するための方法。
【請求項3】
前記フィルム(2)が、前記金型(4)の一方の縁に固定されている、請求項1又は2に記載の室温硬化性シリコーン組成物から成形されたシリコーンエラストマー物品を成型するための方法。
【請求項4】
前記フィルムが、前記金型(12、13)のいずれか一方の先端、または前記金型の先端の近くに位置しないチャネルの壁に沿ってクランプされる、請求項3に記載の室温硬化性シリコーン組成物から成形されたシリコーンエラストマー物品を成型するための方法。
【請求項5】
前記固定することが、前記金型(13)の長さに沿って単一のクランプを使用して、または前記金型(4)の前記長さに沿って互いに等距離に配置された一連のクランプ(12)によって所定の位置に固定されたバー(13)を使用して、前記フィルムをクランプすることによって実現される、請求項3または4に記載の室温硬化性シリコーン組成物から成形されたシリコーンエラストマー物品を成型するための方法。
【請求項6】
前記平行な壁が、丸みを帯びた縁を有し、前記金型(4)中で硬化される前記エラストマー物品の深さよりも深さが深くなるように設計されている、請求項3に記載の室温硬化性シリコーン組成物から成形されたシリコーンエラストマー物品を成型するための方法。
【請求項7】
前記金型が、1部ユニット(4)であるか、または2つの着脱可能な部分、上部または金型部分(4a)および下部または真空部分(10)が、いずれの場合も、基部の穴および/または前記事前定義された形状(6)の壁を通して真空を引き込むことができるように、適応されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の室温硬化性シリコーン組成物から成形されたシリコーンエラストマー物品を成型するための方法。
【請求項8】
ガイド(16)が、前記チャネルの各先端に挿入されて、前記フィルム(2)をそのそれぞれのそのチャネル(6)にガイドする、および/または前記金型(4)中の1つ以上のチャネル(6)の長さを調整する、および/またはプラグ(24)が、チャネル(6)に挿入されて、室温硬化性シリコーン組成物が、それが導入された前記チャネル(6)から漏出するのを防止する、請求項
2又は4に記載の室温硬化性シリコーン組成物から成形されたシリコーンエラストマー物品を成型するための方法。
【請求項9】
挿入物が、
(i)前記室温硬化性シリコーン組成物を導入する前、
(ii)前記室温硬化性シリコーン組成物が、硬化前もしくは硬化中のいずれかに導入された後、または
(iii)硬化後、に1つ以上のチャネル(6)に加えられ得る、請求項1から8のいずれか一項に記載の室温硬化性シリコーン組成物から成形されたシリコーンエラストマー物品を成型するための方法。
【請求項10】
前記フィルム(2)が、20~70μmの厚さを有し、および/またはポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびフッ素化エチレン-プロピレン(FEP)から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の室温硬化性シリコーン組成物から成形されたシリコーンエラストマー物品を成型するための方法。
【請求項11】
前記室温硬化性シリコーン組成物を成型するために使用される前記フィルム(2)を、前記シリコーンエラストマー物品の包装として使用することができ、および/またはコーティング表面処理の適用により処理される、請求項1から10のいずれか一項に記載の室温硬化性シリコーン組成物から成形されたシリコーンエラストマー物品を成型するための方法。
【請求項12】
前記室温硬化性シリコーン組成物が、
(i)分子当たり少なくとも1つの加水分解性および/またはヒドロキシル官能基を有する少なくとも1つの縮合硬化性シリル末端ポリマー、
(ii)
-分子基当たり少なくとも2つの加水分解性基、あるいは少なくとも3つの加水分解性基を有するシラン、および/または
-各シリル基が、少なくとも1つの加水分解性基を含有する少なくとも2つのシリル基を有するシリル官能性分子、の群から選択された架橋剤、
(iii)チタネートおよびジルコネートの群から選択される縮合触媒、を含み、
-ヒドロキシル基と加水分解性基とのモル比が、0.1:1~4:1であり、
-かつ、M-OR官能基とヒドロキシル基とのモル比が、0.01:1~0.6:1であり、Mがチタンまたはジルコニウムである、ことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の室温硬化性シリコーン組成物から成形されたシリコーンエラストマー物品を成型するための方法。
【請求項13】
細長いシリコーンエラストマー物品が、絶縁されたグレージングユニットの製造において、スペーサーとして利用される、請求項1から12のいずれか一項に記載の室温硬化性シリコーン組成物から成形されたシリコーンエラストマー物品を成型するための方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を含む、
絶縁されたガラスユニット中のスペーサーを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、室温硬化性シリコーン組成物からエラストマー物品を作製するための方法に関し、これは、押出技術を使用して加工されるのに実際には適していない。これらの物品は、例として、絶縁ガラスユニット(IGU)用のスペーサーとして使用するのに好適であり得る。
【0002】
2枚、3枚、またはそれを超えるガラス板からなる絶縁ガラスユニット(IGU)などの透明なユニットを形成することは長年の標準的な慣行であり、「エッジシール」プロセスによって適用される好適なスペーサーとシーラントとの組み合わせを使用して、各隣接するペアの板が離間される。エッジシールプロセスは、隣接する板を離間させる手段を提供すると同時に、ガラス板の内側に面する表面の周囲を囲むように延在するシールを提供して、ガラス板の間に実質的に密閉された絶縁スペースを画定する。そのようなエッジシールシステムでは、例えばガラスの板を離間するためにスペーサーが提供される。スペーサーは、ガラスに自己接着し得るが、ほとんどの場合、スペーサーのガラス板への十分な接着は、従来、一次シーラントによって提供される。スペーサーと一次シーラントとの組み合わせは、湿気、蒸気、および/またはガス不透過性になるように設計され、湿気または水蒸気がユニットの内部空洞に侵入して凝縮するのを防止し、ガス充填ユニットの場合は、ユニットからのガスの漏れを防止する。いわゆる「一次」シーラントは、例えば、「ブチルシーラント」、例えば、非自己接着性スペーサー、例えば、金属スペーサーをガラス板に結合し、スペーサーの周りの板に結合した二次シーラントを用いるために利用されるポリイソブチレンゴムベースの材料であり得る。
【0003】
前述の二次シーラント、多くの場合シリコーンシーラントは、二次シーラントの層がスペーサーの外面と接触するように、ガラス板の縁部の間の絶縁ガラスユニットの周囲に提供される。二次シーラントは、周囲温度、気圧、または風圧における変動などの外部要因によって課されるひずみを最小限に抑えることにより、自己接着性スペーサーまたは一次シーラントの結合の完全性を促進するのに役立つ。
【0004】
多種多様なスペーサーが提案されている。現在、より一般的には非接着性スペーサーが利用されている。これらは、発泡プラスチック材料、例えば、シリコーンフォームまたはエチレンプロピレンジエンターポリマーフォームなどのポリオレフィンフォーム、絶縁ガラスユニットを組み立てるときにガラスシートを必要な距離だけ離しておくのを助ける補強材を含有するマスチック、例えばポリイソブチレンマスチックを含み得る。あるいは、スペーサーは、アルミニウムもしくはステンレス鋼のような金属などの硬質材料、または例えば、ポリカーボネートもしくはポリメチルメタクリレート(PMMA)などの硬質プラスチック材料から作製され得る。これらの硬質スペーサーは、乾燥剤をその中空領域に導入することを可能にする中空であるように構築され得る。
【0005】
例えば、絶縁ガラスユニット構造の1つの典型的な形態では、エッジシールは、一次気密シールを提供するために一次シーラントによってガラス板の内側に面する表面に接着された中空の金属またはプラスチックスペーサー要素を備える。中空スペーサー要素は、絶縁ガラスユニットの性能および耐久性を改善するために、ガラス板の間の絶縁スペースと連通してそこから水分を吸収する乾燥剤材料で充填される。
【0006】
あるいは、自己接着性スペーサーが利用され得る。これらには、熱可塑性材料で作製されたスペーサーおよびWO2018/160325に記載されているものなどの自己接着性シリコーンスペーサーが含まれ得る。自己接着性スペーサーを有する絶縁ガラスユニットの組み立て中に、スペーサーは、それが使用される予定の基材に接着する細長いエラストマーの「ストランド」として適用される。
【0007】
IGU用の自己接着性スペーサーとして使用する場合、ストランドは、その縁に沿って2枚のガラス板のうちの第1のガラス板に適用される。ストランドの始まりと最後は接合され得る。次いで、第2のガラス板は、自己接着性スペーサーの真上に設置され、2枚の板は、スペーサーが絶縁ガラスユニットで有する幅に等しい所定の距離になるまで一緒にプレスされ、その結果自己接着性スペーサーのストランドが、ガラス板に押し付けられ、板をともに結合する。次いで、必要に応じて、二次シーラントまたは代わりに保護コーティングなどが適用され得る。
【0008】
しかしながら、これまで細長いストランドは、一般に押出方法論を使用して調製されてきたが、透明になるように設計されるWO2018/160325に記載の組成物は、それらが、ゆっくりと硬化し、硬化プロセスの開始から少なくとも数分間はゲル化点に到達せず、かつ実際に場合によっては数時間ゲル化点に到達しない凝縮硬化性熱硬化性材料であるため、押出技術には不適当である。ゲル化点による誤解を避けるために、タンデルタ(G”/G’)が1であるときの時間を意味し、すなわち、G”(せん断における貯蔵または弾性係数)とG’(せん断における損失または粘性係数)とは、等しい。これは、液体から固体材料への遷移を表す。この遷移点の周りで、材料は、粘弾性材料として挙動し、これは、材料に加えられる応力のレベルに応じて異なる変形をする。ゲル化点の前では、材料は、加えられたあらゆる応力に非常に敏感であり、これはその流れを誘発する可能性がある。ゲル化点を超えると、加えられた低い応力は、可逆的な変形を引き起こし、すなわち、材料は、応力が除去された後、その初期位置に戻る。材料のゲル化点は、例として、ASTM D4473-08(2016)における試験によるなど、いくつかの代替方法を使用して決定され得る。
【0009】
エッジシールシステムで利用される非接着性スペーサー、自己接着性スペーサー、一次シーラント、および/または二次シーラントの大部分は、黒、白、または不透明、さらにはそうでなければ着色されているため、光が通過し得る絶縁ガラスユニットの面積が減少する。
【0010】
したがって、現在、特にIGUを通した視界が重要な場合、例えば業務用冷蔵庫の用途など、IGU用の透明なスペーサーを生産したいという要望がある。現在の解決策では、ほとんどの場合、クリアな両面テープの使用を介してガラス上に固定されたポリカーボネートまたはポリメチルメタクリレート(PMMA)スペーサーなどのクリアな硬質プラスチックを使用する。しかしながら、これには特定の欠点があり、使用されるプラスチック材料は、典型的には、硬質であるため、移動能力が制限され、かつ輸送中または使用中のあらゆる移動によって接着性が損失する可能性があり、その結果、湿気がIGUの内部空洞に入り、凝縮および曇りにつながる可能性があるため、接着耐久性の欠点がある。
【0011】
WO2018/160325に記載されている透明なシリコーンスペーサーは、その柔軟性が良好で、長期間のエージング(例えば、高温または温水浸漬)後でもシリコーンのガラスへの化学的接着が維持されるという事実のため、前述の硬質プラスチックスペーサーのものよりもはるかに優れた接着耐久性を有する。
【0012】
したがって、押出の必要性を伴わない方法によって、室温硬化性シリコーン組成物からスペーサーとして使用するのに好適な細長いシリコーン成型品を製造することが望まれている。
【0013】
室温硬化性シリコーン組成物から成形されたシリコーンエラストマー物品を成型するための方法であって、
(i)2つ以上の事前定義された形状を備える金型上にフィルムを掛けて、フィルムと金型中の各事前定義された形状との間に排気可能な体積を確立することと、
(ii)金型の第1の事前定義された形状とフィルムとの間の排気可能な体積に吸引を適用して、該第1の事前定義された形状の排気可能な体積内に少なくとも部分的な真空を確立し、その結果フィルムが、金型の第1の事前定義された形状に適合するフィルム状の内張りを形成することと、
(iii)さらに、金型の第2の事前定義された形状と、第2の事前定義された形状が第1の事前定義された形状に隣接するフィルムとの間の排気可能な体積に吸引を適用して、該第2の事前定義された形状の排気可能な体積内に少なくとも部分的な真空も確立し、その結果、金型の第2の事前定義された形状に適合するフィルム状の内張りも形成することと、
(iv)金型中の各事前定義された形状が、その排気可能な体積内に少なくとも部分的な真空を有し、フィルムが、金型の各それぞれの事前定義された形状に適合するフィルム状の内張りを形成するまで、ステップ(iii)を順次繰り返すことと、
(v)金型の1つ以上の事前定義された形状に適合するフィルム状の内張りに室温硬化性シリコーン組成物を導入することであって、この組成物が、それが導入されている金型中の事前定義された形状に適合するために十分に流動するように設計されている、導入することと、
(vi)室温硬化性シリコーン組成物が、それが導入された事前定義された形状で硬化して、成形されたシリコーンエラストマー物品を形成することを可能にすることと、を含む方法が本明細書で提供される。
【0014】
上記の方法は、数分から数時間のゲル化点を有し、したがって、押出によって細長い「ストランド」を調製するために使用される硬化プロセスの初期段階中に構造的に十分な弾力性がない、WO2018/160325に記載された室温硬化性シリコーン組成物などの押出プロセスを介して調製するのが非現実的である材料との使用を意図としている。これは、一度混合された組成物が流動性であるのに十分に低い粘度を有する場合に特に当てはまり、充填剤が組成物中に最小限または全く存在しない場合のシナリオである可能性が高い。さらに、これらの組成物は、長期間にわたって、例えば、数時間から数日、例えば、7日以上、典型的には凝縮プロセスによって、凝縮プロセスを介して硬化する。
【0015】
誤解を避けるために、流動性の室温硬化性シリコーン組成物は、硬化プロセスの開始直前に十分に低い粘度を有し、重力の影響下で目に見えて流動性であり、および/またはセルフレベリングでさえある。構造的弾力性とは、例えば金型または他の形態の支持がない場合にその構造的形態を保持する能力を意味する。
【0016】
上記の方法は、成形されたシリコーンエラストマー物品、例えば、室温硬化性シリコーン組成物から細長いシリコーンエラストマー物品を製造するための好適な経路を提供する。平行な側面を備える細長いシリコーンエラストマー物品を生産することが望ましく、例えば、押出プロセスに依存する必要性を回避する絶縁ガラスユニット(IGU)のスペーサーとして使用される。したがって、上記の方法は、硬化の開始時に流動性であり得る室温硬化性シリコーン組成物から成形されたシリコーンエラストマー物品、特に細長いシリコーンエラストマー物品、例えばスペーサーを生産する手段を提供する。物品、例えば、WO2018/160325に記載されている予備硬化スペーサーは、自己接着性および透明性の両方であり、したがって、この方法は、そこに記載されているような組成物または同様の組成物を使用する場合、自己接着性透明スペーサーを製造するための手段を提供し、これは絶縁されたガラスユニットに導入されると、視聴者に良好な視聴能力を提供する。
【0017】
本開示の方法は、金型およびフィルムを利用するが、それは、エラストマーと金型壁との間に潜在的に接着の問題が発生する可能性があり、その結果、最終的に金型ポスト硬化から取り外されると、硬化シリコーンエラストマー物品の細長い形状に損傷を与える可能性があるため、必要と思われる場合を除いて、硬化期間全体にわたって、金型中の1つ以上の事前定義された形状を室温硬化性シリコーン組成物で充填したままにすることは望ましくないからである。
【0018】
本明細書で使用される金型は、2つ以上の事前定義された形状を備える。一実施形態では、2つ以上の事前定義された形状は、2つ以上の細長い平行チャネル、あるいは金型中の一連の細長い平行チャネルである。そのような場合、事前定義された形状は、任意の好適な断面であり得るが、少なくとも2つの平行な側面を有する硬化または部分的に硬化した細長いシリコーンエラストマー物品を提供するための長方形、あるいは正方形の断面が好ましい。例えば、一実施形態では、得られる硬化物品について意図された最終用途がIGU用のスペーサーとしてである場合、平行チャネルは、成型品に望まれる高さよりも高い、例えば成型品よりも少なくとも5mm高い壁によって形成される。壁は、任意の好適な構造のものであり得、例えば、それらは、丸みを帯びたまたは鋭利な縁を有し得る。
【0019】
成形されたシリコーンエラストマー物品は、任意の所望の形状およびサイズになるように、すなわち、それらの最終用途に好適であるように設計することができる。IGU用のスペーサーなどの細長いシリコーンエラストマー物品の場合、それらは、例えば、幅7.5~25mm、あるいは幅10mm~25mm、および深さ5~25mm、あるいは深さ10~25mm、あるいは深さ10~20mmであり得る。細長いシリコーンエラストマー物品の長さは、それが成型されているチャネルの全長までのどんなものでもあり得る。実際、必要に応じて、硬化の完了後、物品の長さは、所定のサイズに切断され得るか、または複数の異なる長さに切断され得る。しかしながら、例えば、物品は、例えば、長さが0.5~3m、あるいは長さが1~2.5mであり得る。
【0020】
金型中のまたは事前定義された各形状が細長いチャネルである場合、細長いチャネルは、長方形の断面、あるいは実質的に水平な基部、あるいは水平な基部、第1の側壁および第2の側壁を有する正方形の断面を有し得る。第1の側壁および第2の側壁は、実質的に垂直または垂直であり、互いに平行であり、基部に対してほぼ垂直または代替的に垂直に配置される。
【0021】
金型中の2つ以上の事前定義された形状の各々は、フィルムを金型中のそれぞれの事前定義された形状に掛けることによって作成されたそれぞれの排気可能な体積から空気および/または他のガスを排気することによって少なくとも部分的な真空を確立することを可能にするように設計された一連の開口部を含有する。開口部は、任意の好適な断面であり得るが、典型的には、円形、正方形、または長方形の断面、あるいは円形の断面であり得る。穴が円形の断面を有する場合、それらは、0.5~3mm、あるいは0.5~2mmの直径を有し得る。
【0022】
一実施形態では、2つ以上の事前定義された形状が金型中の一連の細長い平行チャネルであり、各平行チャネルが基部ならびに基部に対して約90°の角度で第1および第2の平行側壁を有する場合、開口部は、一方または両方の側壁に沿って、および/またはチャネルの基部に設定された距離で配置される。あるいは、開口部は、基部と第1の側壁との間のコーナーに設定された距離だけ離れて配置され、基部と第2の側壁との間のコーナーに設定された距離だけ離れて配置される。該開口部の配置は、吸引が排気可能な体積に適用されると、フィルムが金型の形状に適合することを確実にするので重要である。したがって、1つの代替案では、開口部は、金型の各チャネルの長さに沿って等距離に分布され得るか、または等距離に分布されて、それぞれのチャネルの全長に沿って一貫した真空を引き込むことを可能にする。
【0023】
適用された吸引により、開口部を通して真空が引き込まれ、事前定義された形状(例えば、チャネル)の排気可能な体積からガスが排気され、その結果、フィルムが事前定義された形状(例えば、チャネル)に引き込まれる。使用されるフィルムは、その形状に適合するように設計されて、それぞれの事前定義された形状、例えば、チャネルでフィルム状の内張りを作成する。任意の1つの事前定義された形状で引き込まれる真空は、金型中の他の事前定義された各形状における真空とは独立して引き込まれ得る。これは、個々のチャネルごとに操作される真空用のオン/オフスイッチを有することで実現され得る。
【0024】
任意の好適なタイプの真空発生器を使用して、金型の事前定義された形状とフィルムとの間の真空可能な体積に真空を適用し得る。例えば、ベンチュリチューブ(圧縮空気もしくは水流を使用)または真空ポンプ。金型中の他のすべての事前定義された形状から独立して事前定義された形状で吸引を開始可能にするために好適な切り替えメカニズムが利用可能であれば、上記リストからの1つの好適な真空発生器が金型ごとに利用され得る。あるいは、必要に応じて、または必要と思われる場合は、事前定義された各形状に対して個別の真空発生器が利用され得る。
【0025】
一実施形態では、金型は、金型部分および真空部分を有する単一のユニットを備え得、真空部分は、上記のように好適な真空発生器に接続され、かつそれぞれの事前定義された形状における開口部を通して真空を引き込むように設計されている。あるいは、金型部分および真空部分は、2つの相互接続可能な部分であり得、これらは、使用中、真空がフィルムと事前定義された形状との間の排気可能な体積に適用されるが、真空が不要になったとみなされたときに、真空部分が切断されることを可能にするために係合される。したがって、真空部分は、着脱可能であり得、例えば、それにより、長い硬化期間中に金型が最終物品を成型するために使用されている間、真空部分は、他の場所で説明されているように真空を引き込むことが可能なように、開口部がそれに整合する真空部分の上部に固定可能に設置され得る追加の金型で再利用され得る。
【0026】
金型の予め形成された形状でフィルム状の内張りを形成するために本明細書で利用されるフィルムは、そのような目的のための任意の好適なフィルムであり得る。フィルムは、3つの主要な基準に基づいて選択された:
(i)損傷または延伸することなく、本明細書で使用される方法を介して金型中の事前定義された形状に適合する能力、
(ii)事前定義された形状にフィルムを適切に適合させるためにフィルムを加熱する必要性の回避、
(iii)ポスト硬化を生じさせるために、自己接着性シリコーンエラストマー製品から解放可能であること。
【0027】
一実施形態では、使用されるフィルム材料は、フィルムが金型の内層として機能しているとき、すなわち、組成物が重力下で組成物/空気界面がほぼ水平である位置に流動したとき、組成物が最小のメニスカスを有することが望ましいという点で、事前定義された形状に導入される室温硬化性シリコーン組成物によるその「湿潤性」に関して選定され得る。このタイプの好適なフィルムには、例えば、ポリエチレン(PE)、特に低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびフッ素化エチレン-プロピレン(FEP)が含まれる。必要に応じて、該フィルムを改変して、例えば、滑り添加剤および/またはブロック防止剤などの添加剤が組み込まれ得る。湿潤性とは、固体表面との接触を維持する液体の能力を意味し、これは、2つが一緒になったときの分子間相互作用から生じる。これらのフィルムは、ガラス上に適用したときにスペーサーの接着特性に悪影響を及ぼさなかったため、上記が好適であることが見出された。
(i)それらのフィルム表面官能基、
(ii)異なる表面種、または
(iii)表面種の異なる配向、に依存するいくつかのフィルムは、
スペーサーがガラスのポスト硬化にどのように接着するかに影響を与える可能性があることが見出された。フィルムは、剥離フィルムであり得る。
【0028】
フィルムは、好ましくは柔軟性が高く、かつ10~100μm、あるいは20~70μmのフィルム厚を有する(薄いフィルムは、しわが寄る傾向があるが、厚いフィルムは、表面上にうまく適合しない)。
【0029】
本明細書で使用されるフィルムは、使用前に処理されて、室温での金型表面への接着または他の特性を強化し、真空がない場合でさえもその位置を維持し得る。これは、DowからのNUCREL(商標)酸コポリマー接着剤製品などの接着剤の適用または表面処理(例えば、コロナもしくはプラズマ活性化)による場合がある。一実施形態では、金型表面と接触するフィルムの表面は、金型中の事前定義された形状へのフィルムの適合性を強化する手段として使用する前に、コロナまたはプラズマ処理される。
【0030】
前述のように、金型中の事前定義された各形状が細長いチャネルである場合、金型中の各チャネルは、2つの端部を有する。両端は、所定の位置に固定され得るか、あるいは開放端であり得るか、または一端は、所定の位置に固定され、第2の端部は、開放端である。いずれの場合でも、細長い事前定義された形状(例えば、チャネル)の長さを変えるために、スライド可能なガイドが利用され得る。また、室温硬化性シリコーン組成物を事前定義された形状(例えば、チャネル)で硬化させることにより、細長いシリコーンエラストマー物品の形状に悪影響を与える、フィルムの延伸および/またはその事前定義された形状への不適合を回避するために、金型の各それぞれの事前定義された形状でフィルムの位置を維持することが重要な課題であることが見出されたため、フィルムがその所望の位置を保持することを保証するためのガイドとしても作用し得る。フィルムは、金型の事前定義された各形状の形状に適合するフィルム状の内張りを形成する必要がある。スライド可能なガイドは、使用時に、それぞれのその排気可能な体積内でより一貫して/効率的に真空を引くことを可能にすることも見出されている。同じ長さの複数の細長いシリコーンエラストマー物品が必要な場合、スライド可能なガイドは、単一の金型中の複数の隣接するチャネルにおけるチャネル端およびフィルム用のガイドとして作用するために使用されるコーム設計で提供され得る。好ましくは、スライド可能なガイドは、各チャネルにぴったりとはまり、したがって、特に流動性がある場合/ときは、その寸法的に不安定な初期形態から十分に硬化する前に、室温硬化性シリコーン組成物の漏れまたは漏出を防止するバリアとして作用する。スライド可能なガイドが十分に液密でないとみなされる場合は、金型に挿入するときに好適な材料のプラグがガイドの間に挿入され得、室温硬化性シリコーン組成物は、硬化の初期段階中の流動性である可能性があるときに、そこから室温硬化性シリコーン組成物が漏出するのを回避するために、事前定義された形状の金型に一度添加される。プラグは、例えば、速硬化性の1液型シリコーンシーラント、好ましくは独立気泡を有するフォームプラグ、およびパテなどの他の好適な材料から作製され得る。プラグは、室温硬化性シリコーン組成物を導入する前に、フィルム状の内張りに導入される。
【0031】
使用中、フィルムは、最初に金型上に掛けられて、フィルムと各事前定義された形状、例えば金型中のチャネルとの間に排気可能な体積を確立する。次いで、フィルムは、金型中の各事前定義された形状に引き込まれ、真空発生器によって引き起こされる開口部を通した吸引によって金型に適合し、その結果、フィルムは、事前定義された形状に適合する金型中の各事前定義された形状のフィルム状の内張りになる。このようにフィルムを使用することで、硬化中にエラストマーが金型の壁に接着するのを防止し、その結果、事前定義された形状から取り外したときに成形されたシリコーンエラストマー物品の損傷/機械的故障を防止する。フィルムはまた、得られた成形されたシリコーンエラストマー物品または部分的に硬化された成型品を、それが成型された事前定義された形状から取り外すために利用され得る。
【0032】
一実施形態では、最初に金型上に掛けられたフィルムは、金型の一方の縁で所定の位置に固定される。フィルムがクランプされたとき、真空が適用される第1のチャネルは、上で考察されたチャネル中の開口部を通して吸引が起こると、フィルムが前述のチャネルに引き込まれ、その形状に適合するフィルム状の内張りを形成するように固定手段に隣接するチャネルである。これが該第1のチャネルで完了すると、吸引が各チャネルに適用され、フィルムが各チャネルの形状に適合するフィルム状の内張りとして作用するまで、この方法が隣接するチャネルで繰り返される。これが完了すると、室温硬化性シリコーン組成物は、各チャネルに導入され得る。フィルムの固定は、フィルムをクランプすることによって行われ得る:
a.金型の一方の先端で、または
b.金型の先端近くに位置しないチャネルの壁に沿って。
【0033】
好ましくは、クランピングは、金型の全長に沿った単一のクランピング手段の使用によって、または該第1のチャネルの全長に沿った一連の細長いチャネルの場合に行われる。あるいは、複数のクランピング手段は、第1の細長いチャネルの長さに沿って離間して使用され得るが、前者が好ましい。
【0034】
一実施形態では、細長いエラストマー物品を成型するために使用されるフィルムは、シリコーン成型部品の包装として使用することができる。
【0035】
エラストマー物品を形成するために本明細書で使用される室温硬化性シリコーン組成物は、好ましくはいかなる無機強化充填剤も含有せず、このため硬化プロセスの開始時に流動性であり得る任意の好適な室温硬化性シリコーン組成物であり得る。例えば、利用される組成物は、参照により本明細書に組み込まれるWO/2018/160325においてスペーサーを作製するために使用されるものと同じまたは類似であり得る。組成物は、好適なエラストマー物品を生産する2液型の室温硬化性シリコーン組成物である。室温硬化性シリコーン組成物は、
(i)分子当たり少なくとも1つ、典型的には少なくとも2つの加水分解性および/またはヒドロキシル官能基を有する少なくとも1つの縮合硬化性シリル末端ポリマー、
(ii)
-分子基当たり少なくとも2つの加水分解性基、あるいは少なくとも3つの加水分解性基を有するシラン、および/または
-各シリル基が、少なくとも1つの加水分解性基を含有する少なくとも2つのシリル基を有するシリル官能性分子、の群から選択された架橋剤、
(iii)チタネートおよびジルコネートの群から選択される縮合触媒、を含み得、
-ヒドロキシル基と加水分解性基とのモル比が、0.1:1~4:1であり、
-かつ、M-OR官能基とヒドロキシル基とのモル比が、0.01:1~0.6:1であり、Mがチタンまたはジルコニウムである、ことを特徴とする。
【0036】
組成物は、早すぎる硬化を回避するために使用前に2液で貯蔵され、次いで、使用の直前に2液が事前定義された比率(例えば、重量比)で混合される。混合の直後に、得られた組成物の粘度は、組成物が流動性であるために十分に低くなり得る。WO2018/160325の一例では、組成物のパートAは、単に13,500mPa.s(25℃)のシラノール末端ポリジメチルシロキサンであり、組成物または硬化パッケージのパートBは、
100重量部の2,000mPa.sのトリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン(25℃)および
該トリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサンの100重量部当たり、0.3重量部のテトラ-n-ブチルチタネート、を含んだ。
【0037】
硬化材料は、組成物の2つの成分を、2300rpmの速度で30秒のスピードミキサーで4回混合した後、3:1のベース:硬化剤の重量比で一緒に混合することによって調製された。本開示では、記載されたように一度混合されたそのような組成物は、フィルムで裏打ちされた金型中の事前定義された形状に導入される。
【0038】
室温硬化性シリコーン組成物は、吹き付け可能であり得る、すなわち、それは、手動で、または他の方法で、シーラーガンの適用によって各チャネルに導入される。組成物がロボットまたは他の自動化システムによって導入される場合、そのオペレータは、各成型品が同一または実質的に同一であることを保証するために、各チャネルに導入される組成物の正確な量を設定することができる。これは、組成物が流動性であり、このため重力下で金型の形状に流動/沈降する場合に特に当てはまる。したがって、この用途では、フィルム状の内張りが良く配置され(フィルムと金型との間にクリアランスがない)、最終的な成型品の形状に影響を与えないようにすることが非常に重要である。フィルムと金型との間のクリアランスは、U字型の断面をもたらす場合があり、重要な場合、絶縁されたガラスユニット中のスペーサーとして使用する場合、スペーサーとそれに隣接するガラス板との間の接触を制限する場合があり、その結果、スペーサーの機械的故障になる場合がある(接着不良対凝集不良)。張力を加えてフィルムを延伸することを回避するために、加えられたフィルムは、真空で金型に吸い込まれ、チャネルごとに配置される。これにより、真空が切断された場合でも、フィルムは、所定の位置に留まり、成型品は、意図した形状を保持することができる。金型が2つの異なる部分で作製されている場合、金型の上部を下部(基部)に設置し、漏出しないようにロックする。一部の金型(例えば、PVC)は、上部が基部に固定された状態で1つのピースにすることができる。その場合、2部は、常に組み立てられる。使用する前に、金型は、水平面に設置され室温のシリコーン組成物を確保し、一度添加すると、チャネルの全長に沿って標準的な厚さのエラストマー物品を得るために均一に分散される。
【0039】
本開示によれば、押出の代替方法、成形されたシリコーンエラストマー物品を調製するために使用される室温硬化性シリコーン組成物の初期構造的弾力性の欠如、および数時間から数日、例えば7日以上かかる延長硬化プロセスのために必要とされる細長いスペーサー材料を調製するための現在の標準的な方法が提供される。本明細書における方法は、金型およびフィルムを利用して、該成形されたシリコーンエラストマー物品、例えば、流動性である可能性がある室温硬化性シリコーン組成物から細長いシリコーンエラストマー物品を調製して、柔らかい機械的特性を有するエラストマーを形成する問題を克服する。これらが絶縁グレージングユニット用の細長いスペーサーである場合、絶縁されたグレージングユニット中のスペーサーに必要な寸法および/またはそれらの組み合わせと一致するように、好ましくは定義された長さ、幅、および深さの2つの実質的に平行または平行な側面を有さなければならない。
【0040】
これを実現するために、金型中の2つ以上の事前定義された形状は、通常、一連の細長い平行チャネルの形態である。一連の細長い平行チャネル上に最初に掛けられたフィルムは、チャネルの形状に適合するフィルム状の内張りを形成するために、事前定義された各形状に引き込まれる必要がある。金型は、その中に成型されたエラストマー物品の変形を引き起こす場合のあるフィルムの損傷または延伸を回避する様式で真空が適用されるように設計されている。変形は、例えば、フィルムが、その中に室温硬化性シリコーン組成物を導入する前に、金型中の事前定義された形状に正確に適合しない場合に発生する可能性がある。
【0041】
これは、上記のように順次真空を適用する、すなわち、最初の事前定義された形状に2つの事前定義された形状を有する金型の場合、次いでフィルムが最初に定義された形状の形状に適合したときに、最初の形状で真空を維持し、金型中の第2の定義された形状の壁で真空を開始することによって、最もよく実現されると決定された。これは、フィルムが第2の定義された形状の位置にスライド/滑動して、いずれかまたは両方の定義された形状に適合するフィルムの損傷/延伸なしに第2の定義された形状の形状に適合するフィルム状の内張りを形成することができることを意味する。
【0042】
したがって、金型中の2つ以上の事前定義された形状が一連の細長い平行チャネルである場合、例えば、チャネルが金型中で右から左に順次1~7まで番号が付けられた一連の7つのチャネルの場合、次いで真空は、最初にチャネル1またはチャネル7に引かれる。簡単にするために、最初に真空がチャネル1に引かれると仮定する。真空が引かれると、金型上に掛けられたフィルムがチャネル1に引き込まれ、チャネル1の形状に適合するフィルム状の内張りを形成する。これが満足に完了すると、チャネル1中の真空が維持され、チャネル1に隣接するチャネル2中の真空が開始され、フィルムがチャネル1および2に満足に配置されるまでこの方法が繰り返され、次いで、真空がチャネル7に引かれるとき、真空が前の6つのチャネルで維持され、フィルムがそれぞれのチャネルの各々の形状に適合するように、この方法がチャネル3~7に対して順次繰り返される。フィルムが各チャネルと適合するようになると、選択された室温硬化性シリコーン組成物が、金型中の任意の順序で各チャネルに導入される。
【0043】
チャネルアプローチによる真空チャネルのこの順次適用を使用することにより、フィルムが金型中の各所望の形状のフィルム状の内張りとして設置された後に真空が切断された場合でも、フィルムは、金型中の事前定義された形状に適合する所定の位置に留まることが保証される。
【0044】
本明細書で記載する方法では、以下のステップが行われる可能性がある:
(i)好適な寸法のフィルムを提供する。それは、すべての事前定義された形状の形状に容易に適合し得るように、延伸する必要性または損傷することなく、金型中のすべての事前定義された形状にフィルム状の内張りを容易に形成するのに好適な割合でなければならない。例えば、真空が適用される第1の事前定義された形状の側面上でフィルムをクランプする。
(ii)真空が引き込まれるときにチャネルの2つの開いた先端を介して空気が漏出するのを回避するために、櫛状工具が利用され得、もしそうなら、チャネルの各端部にフィルムと密接に接触して設置され得、それによってフィルムガイドとしての二重の役割を有するだけでなく、フィルムの配置および真空の引き込みに悪影響を与える可能性のあるあらゆるエアギャップを閉じてもよい。
(iii)真空発生器、例えばポンプまたはベンチュリをオンにし、吸引が金型中の第1の事前定義された形状(すなわち、第1のチャネル)にのみ適用されるように、該真空システムのバルブを開く。吸引が開始されると、フィルムは、事前定義された形状に引き込まれてフィルム状の内張りを形成し、次いで、該第1の事前定義された形状が室温硬化性シリコーン組成物の導入の準備ができていることを確認する目的で、いかなるしわまたは他の欠陥もないかチェックされ得る。
(iv)満足したら、金型中の隣接する第2の事前定義された形状(例えば、チャネル)に開く真空ライン中のバルブも開き、上記のステップが繰り返される。次いで、すべての事前定義された形状(例えば、チャネル)が真空引きされ、それぞれのフィルム状の内張りがその形状に適合するまで、同じことが順次完了する。
(v)前述の櫛状工具が、室温硬化性シリコーン組成物が供給されるチャネルから漏出するのを防止するためにチャネルに十分に良くはまっていないと考えられる場合、好適な材料のプラグ、例えば、速硬化性の1液型シリコーンシーラント、独立気泡を有するフォームプラグ、およびパテなどの他の好適な材料。
(vi)上記に続いて、室温硬化性シリコーン組成物は、金型中にフィルム状の内張りを有する事前定義された形状に導入され得る。室温硬化性シリコーン組成物は、通常、硬化プロセスの早すぎる開始を回避するために、使用前に2液で貯蔵される。典型的には、パートAおよびパートBと呼ばれる2液は、好適なミキサーを使用して、必要な重量比で混合される。
(vii)室温硬化性室温硬化性シリコーン組成物が混合されると、それは金型中で事前定義された形状に分配され、次いで室温硬化性シリコーン組成物を硬化させる。
【0045】
組成物は、それがもはや金型を必要とせずにその形状を維持するのに十分な機械的強度を有するとみなされるまで、金型中で硬化するために放置される。この期間は、エラストマー物品を作製するために使用される組成物の含有量に依存するが、例えば約1週間にわたって硬化する組成物の場合、硬化組成物は、典型的には、室温で1~4日間、あるいは1.5~3日間金型中に放置される。
【0046】
この期間後、部分的に硬化した材料は、フィルムにそれを保持しながら金型から取り外され得、硬化プロセスは、再び室温で、必要な限りおよび/または必要と思われる限り継続される。
【0047】
硬化プロセスの完了に続いて、得られた細長いエラストマー物品は、最終用途のために包装され、出荷され得る。
【0048】
前に考察されたように、上記のプロセスによって調製されたエラストマー物品は、絶縁されたガラスユニットのスペーサーとして好適である。絶縁されたガラスユニットのスペーサーとしての使用に好適であるためには、細長い物品は、少なくとも実質的に平行な2つの側面を有する必要があり、そのため、硬化に長期間を必要とする低粘度組成物に好適な代替プロセスが開発されている。そのようなクリアなスペーサーを提供することにより、例えば冷蔵庫などのディスプレイユニットを覗き込むなど、人の視界能力を大幅に改善することができる。奇形の丸みを帯びた形状は、ガラスに適切に接着しないため、スペーサーがガラス窓と良好に接触していることが重要である。
【0049】
典型的なスペーサーは、2枚のガラス板を離しておくように設計されており、本開示では、各ガラス板とスペーサーとの間に強力な接着結合がある。多くのウォームエッジタイプのシーリングソリューションでは、スペーサーをガラス基材に接着するために一次シーラントが必要である。この場合、そのようなシーラントは、必要でなくてもよい。
【0050】
本明細書に記載の方法から得られる成形されたシリコーンエラストマー物品が、触ると十分に粘着性であり得る場合、過剰な加水分解性基の存在を考慮すると、実質的に硬化または完全に硬化したシリコーンベースの材料が基材表面と接触したときに物理的接着が発生する。しかしながら、接着のレベルが十分に強いとみなされない場合、基材は、本明細書におけるプロセスから生産された成形されたシリコーンエラストマー物品間の接着を強化するために、前処理され得る。
【0051】
ここで、本明細書に記載の方法を、本明細書に添付された図とともに、1つ以上の実施形態に関連して説明する。誤解を避けるために、任意の1つの特定の実施形態または関連する特徴に関する考察は、それに限定することを意図するものではない。読者は、以下の考察から明らかになる多くのバリエーションおよび同等物があることを理解するであろう。これらの変形および同等物は、本明細書に記載されているかのように、本発明の範囲に包含されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1A】金型中でフィルムを事前定義された形状に適合させるための段階を示す図である。
【
図1B】金型中でフィルムを事前定義された形状に適合させるための段階を示す図である。
【
図1C】金型中でフィルムを事前定義された形状に適合させるための段階を示す図である。
【
図2】フィルムが、等間隔に間隔を空けた複数のクランプを使用して一方の縁でクランプされ、そうでなければ金型上に掛けられた、7つのチャネルを有する金型の俯瞰図である。
【
図4】フィルムが、一方の縁にクランプされ、櫛状工具を所定の位置に有する金型上に掛けられた、7つのチャネルを有する金型を示す端部俯瞰図である。
【
図5】フィルムを事前定義された形状に導入する際の金型の俯瞰図である。
【
図6】室温硬化組成物の硬化中に端部が詰まった状態で使用されている金型の俯瞰図である。
【
図7】2枚のガラス板を離間して使用する本明細書におけるプロセスによって作製することができるタイプのスペーサーの図である。
【0053】
図の以下の説明のために、各事前定義された形状は、同じであっても異なっていてもよいが、各事前定義された形状は、長方形の断面を有する金型中の細長いチャネルである。金型は、互いに平行で、例えば絶縁グレージングで使用するための細長いスペーサー材料を生産するように設計される複数のこれらのチャネルを含有する。そのようなシステムは、単なる一例であることが理解されよう。
【0054】
本明細書における図は、金型(4)中の一連のチャネル(6)にフィルム状の内張りを形成するためにフィルム(2)を適合させ、次いで、硬化の開始時に流動性であり得る室温硬化性シリコーン組成物を成型することに関与する段階および装置を示し、これは以前にフィルム(2)で裏打ちされたチャネル(6)において、少なくとも数時間、しかし典型的には、数日の延長された硬化時間を有する。
【0055】
最初に、
図1aに見られるように、フィルム(2)は、この例では、フィルムと金型(4)中の各チャネル(6)との間に排気可能な体積(8)を確立するために7つのチャネル(6)を備える金型(4)上に掛けられる。チャネルは、例えば、長さ2m、幅12.5mm、および深さ18mmであり得る。一連の穴(図示せず)が、各チャネル(6)の側壁、角、および/または基部に提供される。各穴は、それぞれのチャネル(6)に真空を引き込むための真空システム(10)に連結されており、これは、フィルム(2)をチャネルに引き込み、チャネル(6)にフィルム状の内張りを形成することを意図している。真空システム(10)は、真空が1つ以上の他のチャネルに引き込まれているかどうかに関係なく、真空が各チャネルに引き込まれ得るように設計されている。これは、各チャネルが個別の真空システムを有することによって実現され得るが、好ましくは、単一の真空システムおよび他のチャネルから独立して各チャネルに引き込まれる真空を制御するように設計された切り替え可能な弁を有することによって操作される。
【0056】
穴は、前で考察されたように損傷した、または誤った寸法のスペーサーユニットの硬化につながる可能性があるフィルム(2)への損傷を与えることなく、フィルム(2)が事前定義された形状の壁に適合するように作製されることを保証するように設計されたパターンで各チャネルにわたって分散される。
【0057】
図1b、1c、および2に見られるように、フィルム(2)は、金型(4)の一方の縁にクランプされている。好ましくは、バー(13)は、
図2においてほぼ等距離のクランプ(12)によって所定の位置に固定されているバー(13)によって示されるように、第1のチャネルの全長に沿って固定される。
【0058】
使用中、フィルム(2)が金型(4)上に掛けられ、一方の縁でクランプされた後、吸引は、クランプされた縁に隣接するチャネル(6a)で開始され、該チャネル(6a)中の排気可能な体積(8)を排気させ、フィルムをチャネル(6a)に引き込む。オペレータが満足するまでフィルムがチャネル(6a)を裏打ちすると、吸引は、チャネル6a中の真空を維持しながら次の隣接するチャネル(6b)、すなわち、クランピング手段(12、13)に最も近く、かつチャネル(6a)に隣接する2番目で開始される。このプロセスは、フィルム(2)がチャネル6aおよび6bの両方をオペレータが満足するように裏打ちするまで繰り返され、その後、次のチャネル中の真空が開始され、プロセスが繰り返される。これは、例えば、
図1bおよび2で、各チャネル(6)に関して、画像の右から左に、すべてのチャネル(6)に真空が適用されるまで順次起き、フィルム(2)は、オペレータが満足するまで(
図1c)各チャネル(6)に、そのそれぞれのチャネル(6)の形状に適合するフィルム状の内張りを形成し、その時点で、室温硬化性シリコーン組成物が金型(4)に導入され得、硬化させる。
【0059】
図1dに示される一実施形態では、金型(4)は、1つの金型(4a)が、数時間から数日間の硬化プロセス中に室温硬化性シリコーン組成物を成形するためだけに使用されている間、吸引の適用がもはや不要になれば、真空ユニット(10)から着脱され得るように、2つの分離可能な部分、金型部分(4a)および真空部分またはユニット(10)にあり得る。したがって、これにより、真空ユニット(10)を再利用して、上記の様式でさらなる金型(4a)を裏打ちすることが可能になる。金型/真空ユニットが金属から作製された場合に、この実施形態を利用するのに特に適していることが見出されたが、実質的にプラスチックで製造された場合、金型ユニットは、好ましくは単一のユニットであった。
【0060】
一実施形態では、本明細書に示されるように、金型(4)が一連の隣接する平行チャネル(6)を備える場合の方法に特有であり、
図3に示すように、各チャネル(6)の両端での櫛状工具(16)からの「歯」(18)の導入が有利であることが見出された。この工具(16)は、裏打ち段階中にフィルム(2)の損傷を防止するためのフィルム(2)のガイドとしても機能したが、その歯(18)はまた、必要に応じて、改善された/一貫した真空が各チャネル(6)に引き込まれるようにする最終手段として作用した。櫛状工具(16)は、任意の好適な材料から作製され得るが、好ましくは、硬化シリコーンエラストマー最終製品に非粘着性であり、したがって、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、低密度ポリエチレン(LDPE)、または鋼もしくはアルミニウムなどの金属からも作製され得る。
【0061】
使用中、工具(16)からの1つの歯(18)は、任意のチャネル(6)に真空を導入する前に、
図4に示すように各チャネル(6)の端部で金型(4)に挿入される。読者の利益のために、
図4はまた、真空ライン(20)が見え、各チャネル(6)に取り付けられた1つの潜在的な真空配置を示している。各チャネル(6)へのそのような真空ライン(20)は、スイッチを回して各それぞれのチャネル(6)に真空を適用することによって操作可能である。これは、自動化されても、必要に応じてオペレータが手動で操作してもよい。
【0062】
図5は、7つのチャネル(6)のうち4つがフィルム(2)で裏打ちされ、かつ3つのチャネル(6)で真空がまだ適用されておらず、フィルムが上に掛けられたままである、部分的に真空にされた金型(4)を示している。
【0063】
櫛状工具(16)がガイドとしておよび/またはチャネル(6)の各端部の有効端として有益である一方で、それにより、組成物が硬化すると細長いエラストマーの長さを画定することが見出され、歯(18)が、そこから取り外された場合、チャネルの形状を維持するのに十分な構造的弾力性がない硬化プロセスの初期段階中に金型(4)からの室温硬化性シリコーン組成物の漏出を防止するのに必ずしも十分に良くはまっていないことが見出された。該漏出を防止するために任意の好適な手段が利用され得るが、1つの簡単な方法論は、工具(16)の歯(18)の間に使い捨ての速硬化性1液型シーラントのプラグ(24)を導入し、続いて室温シリコーン硬化性組成物を導入することであることが見出された。このタイプのプラグ(24)を
図6に示し、これは、室温硬化性シリコーン組成物の硬化プロセス中の金型の一端を示している。
【0064】
上記に続いて、室温硬化性シリコーン組成物は、事前定義された形状、すなわち、金型(4)中のチャネル(6)に導入され得る。室温硬化性シリコーン組成物は、通常、硬化プロセスの早すぎる開始を回避するために、使用前に2液で貯蔵される。典型的には、パートAおよびパートBと呼ばれる2液は、通常、低粘度の液体(図示せず)を混合するのに好適な、好適な2部のミキサー、例えば、ドイツのキアシュペのReinhardt-Technik GmbHからのConti Flow Vario 2成分混合およびディスペンスシステム、または米国ミネソタ州のGraco Inc.からのGraco EFR 2部ディスペンシングポンプにおいて、必要な比率で一緒に混合される。選定された2部のミキサーは、使い捨ての静的または動的ミキサーを通して、事前定義された重量比でパートAとパートBとを混合するのに好適である。
【0065】
室温硬化性シリコーン組成物が各チャネル(6)に追加されたら、真空が停止され得、室温硬化性シリコーン組成物を、金型(4)を必要とせずにその形状を維持するのに十分な構造的弾力性を有するまで、金型中で1~3日間硬化するために放置される。この期間は、エラストマー物品を作製するために使用される室温硬化性シリコーン組成物の含有量に依存するが、例えば約1週間にわたって硬化する組成物の場合、硬化組成物は、典型的には、室温で1~4日間、あるいは1.5~3日間金型中に放置される。必要に応じて、室温硬化性シリコーン組成物を約80℃の温度まで加熱して、硬化プロセスを加速し得る。この期間の後、部分的に硬化した材料は、フィルム(2)に保ちながら金型(4)から離型され得、硬化プロセスは、硬化プロセスを完了するために必要であるおよび/または必要であるとみなされる限り継続可能であり、これも典型的には、室温であるが、最大約80℃までさらに加熱することで硬化を加速することができる。
【0066】
あるいは、室温硬化性シリコーン組成物が十分な構造的弾力性を有する程度に硬化するまで、真空を金型(4)中で1~3日間連続的に保ってもよい。さらなる実施形態では、真空を一時的に停止し(例えば、金型を貯蔵場所に移動する)、硬化時間の一部の間に再び真空を開始することも可能である。硬化プロセスの完了に続いて、得られた細長いシリコーンエラストマー物品は、最終用途のために包装され、出荷され得る。
【0067】
細長いシリコーンエラストマー物品をIGU用のスペーサーとして使用する場合、必要に応じて、細長いシリコーンエラストマー物品、例えばスペーサーの断面を得るために、スペーサーをフィルムから取り外し、+/-1mmの切片をブレードでスライスすることにより、スペーサーの品質が分析され得る。その分析は、光学顕微鏡を使用して行われ得る。必要に応じて、垂直方向および水平方向のクリアランスが測定され得る。誤解を避けるために、「クリアランス」は、金型中のそれぞれの事前定義された形状の表面上での不適合なフィルムコンフォメーションによって作成された制約のために、それが硬化したチャネルの形状に適合しないスペーサーの長さとして定義される。クリアランスの問題により適合しない表面領域は、ガラスに良く接着しないため、接着欠陥が発生する場合があり、ガラス基材上のスペーサーの凝集強度がより低下する可能性がある。
【0068】
細長いシリコーンエラストマー物品が完全に硬化すると、それらは、透明なユニットまたは絶縁ガラスユニットなどのデバイスを組み立てるための自己接着性の予備硬化シリコーンスペーサーとしてだけでなく、電子ディスプレイ、耐候性シーラント、光学デバイス、発光ダイオード、レンズなどにも使用され得る。
【0069】
WO2018/160325に記載されている組成物を使用して封入法によって調製された細長いシリコーンエラストマー物品は、自己接着性の透明なスペーサーを提供するであろう。場合によっては、透明スペーサーの最終強度が用途に十分である一方で、他の場合には、IGUの十分な強度を保証するために、上部および/または下部に追加の構造用接着剤の使用が必要になる。本方法を使用して適用される予備硬化されたスペーサーの高い透明性は、視覚的にクリアである審美的に心地よいスペーサーに寄与するであろう。
【0070】
そのような透明なスペーサーは、特に断熱が望まれる冷蔵庫のために、透明な内部仕切り、透明な窓、およびドアを構築するために使用され得ることが理解されるべきである。前述の方法を使用して生産された、得られた予備硬化スペーサーは、構造スペーサーの使用が明確な属性である、冷間または熱間曲げガラスユニットを組み立てるのにも有用であり得る。透明物品を組み立てることができれば、不透明物品は、透明物品と組み合わせて、または組み合わされずに検討することもできる。透明なスペーサーは、硬化前にスペーサーの本体に完全にまたは部分的に組み込まれた装飾的、光学的、および/または電子的デバイスを有し得る。次いで、該デバイスは、前で考察されたように通常の様式で硬化される。前述の方法を使用して生産された、得られた硬化した透明なスペーサーは、例えば、セキュリティ上の理由でフレームの後ろの視界から隠されていない限り、その中またはその上に該デバイスが見える。
【0071】
前述の方法を使用して生産された透明な構造スペーサーは、温度、紫外線、または液体に敏感な物品を組み立てるのにも有用であり得る。それは、電子物品、光学デバイス、ガラス、金属、またはプラスチック製のディスプレイを組み立てるのに有用であり得る。建物中の内部仕切りだけでなく、ファサードおよび屋根にもパネルを一緒に組み立てると有用である。それらはまた、アプライアンス、自動車、または航空宇宙、特に透明性が望ましい物品の組み立て用に有用であり得る。
【0072】
したがって、前述の方法を使用して生産されたスペーサーによって離間され得る基材には、フラットパネルディスプレイ(LED、LCDスクリーン)用のガラスシート、ファサードまたは自動車用のガラスパネル、金属、プラスチック、木材、建設用のコンクリートまたは石板、自動車、電子機器など、金属、プラスチック、木材、フック、ネジ、ナットのようなコンクリート固定具が含まれ得る。必要に応じて、スペーサーと基材との間の接着レベルを物理的に強化する必要がある場合、基材は、さらに下塗りされ得る。
【0073】
絶縁されたガラスユニットは、1つ以上のスペーサーを備え得る。例えば、前述の方法を使用して生産されたスペーサーは、不透明または着色されたスペーサーが普通なら不明瞭になるユニットの物品に使用される可能性があるが、他の標準的なスペーサーは、スペーサー材料がユニットを通して見ているユーザーの視界を不明瞭にしないエリアに使用され得る。
【0074】
一般に、記載されているユニットは、ガラスユニットと呼ばれることに留意されたいが、例としてガラスが使用されているが、状況に応じて、任意の代替の透明材料が使用され得ることを理解されたい。さらに、場合によっては、絶縁されたグレージングユニットは、1枚以上の透明なガラス板などおよびパターン形成などのために不透明にされる1枚の板を備え得る。
【0075】
本開示はまた、第1の主表面を有する第1のガラス板および第1の主表面を有する第2のガラス板を提供することによる、スペーサーとして前述した方法によって、作製されたような細長いエラストマー物品を使用して絶縁されたグレージングユニットを作製する方法にも及ぶ。
【0076】
本明細書に記載の方法を使用して調製された細長いエラストマー物品を、例えば(任意選択で透明な)スペーサーとして、第1のガラスパネルの第1の主表面に適用する。
【0077】
第2のガラスパネルの第1の主表面の領域をスペーサー上に配置し、スペーサーをガラス表面に接着させたままにする。次いで、必要に応じて、ガラスパネルの周囲を囲むような空洞を、好ましくは透明な二次シーラントで充填し、これは、湿気硬化性のホットメルトシリコーン接着剤組成物であり得、該空洞は、第1のガラスパネルの第1の主表面、透明なスペーサーの外面、および第2のガラスパネルの第1の主表面によって画定される。あるいは、二次シーラントではなく、保護コーティングがエラストマー物品/スペーサーの外面に適用され、使用中の物品/スペーサーへの損傷を防止する目的で保護非粘着層を形成し得る。
【0078】
一実施形態では、プラスチック、金属、ガラスなどで作製された挿入物は、得られた細長いシリコーンエラストマー物品、例えば、使用中のスペーサーをあらゆる機械的損傷から保護することができる物理的支持を備える透明なスペーサーを提供するために、室温硬化性シリコーン組成物を導入する前に1つ以上のチャネルに加えられ得る。あるいは、そのような挿入物は、室温硬化性シリコーン組成物の硬化前または硬化中のいずれかの後にチャネルに導入され得る。あるいは、この支持は、硬化後に提供され得、その場合、予備硬化されたスペーサーと挿入物との間の良好な接着を得るために、プライマーなどが必要とされ得る。
【0079】
上記の一実施形態では、任意の所望の順序で実施される以下のステップを含む絶縁ガラスユニットを作製する方法が提供される、すなわち、2枚のガラス板を調達し、前述の方法の方式で調製されたスペーサーのエンドレスストリップを2枚のガラス板の間に提供し、2枚のガラス板をスペーサーに対して互いに向かって押し付けて、板に接着するスペーサーを形成する。
【実施例】
【0080】
硬化材料は、組成物の2つの成分を3:1のベース:硬化剤の重量比で一緒に混合することによって調製された。ベース成分は、
・2,000mPa.s(25℃)のシラノール末端ポリジメチルシロキサン、であった。硬化剤成分は、
o100重量部の2,000mPa.sのトリメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン(25℃)および
o0.2重量部のテトラ-n-ブチルチタネート、であった。
【0081】
材料をスピードミキサーで2300rpmの速度で30秒で4回混合し、得られた混合物を上記のように金型に加え、次いで7日間硬化させることにより利用した。上記の方法を使用して生成される可能性のあるスペーサーのタイプの例を
図7として提供するが、これは、2枚のガラス板の間でスペーサーとして効果的に機能する各ガラス板の周囲に接着された硬化材料の連続リボンによって分離された2枚のガラス板を示している。
【0082】
描かれている下部ガラス板の上面および上部ガラス板の下面は、約30分間乾燥させたDOWSIL(商標)1200 OSプライマーなどのプライマータイプの材料でコーティングされ得る。
【0083】
前述の方法によって調製された硬化自己接着性エラストマー物品の事前に測定されたリボンを、下部ガラス板の上面の周辺に適用し、続いて、上部ガラス板の下面を、以前に下塗りした領域で硬化材料に接着した。構築のほぼ直後に、
図7に示すガラスユニットは、本明細書で説明するように形成された結合の強度により、構築物の構造を損なうことなく移動および取り扱うことができた。