(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-01
(45)【発行日】2025-07-09
(54)【発明の名称】3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-カルボン酸エチルの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 401/04 20060101AFI20250702BHJP
【FI】
C07D401/04
(21)【出願番号】P 2022525995
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(86)【国際出願番号】 US2020059923
(87)【国際公開番号】W WO2021096903
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-11-02
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391022452
【氏名又は名称】エフ エム シー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
(73)【特許権者】
【識別番号】518259165
【氏名又は名称】エフエムシー アグロ シンガポール プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】シューレン・ジー
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ルアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャンファ・マオ
(72)【発明者】
【氏名】ハオ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】イーフゥイ・シュー
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-502658(JP,A)
【文献】特表2008-533169(JP,A)
【文献】国際公開第2008/072745(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0317864(US,A1)
【文献】特表2017-525703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIの化合物
【化1】
(ここで、R
8は、水素及びC
1~C
4アルキルから選択され;
R
2~R
7のそれぞれは独立して、水素、ハロゲン、C
1~C
4アルキル、及びハロゲン化C
1~C
4アルキルから選択される)
の調製方法であって、
I)A)第1の量の式Iの化合物
【化2】
(ここで、R
1は、水素及びC
1~C
4アルキルから選択され;
R
2~R
7のそれぞれは独立して、水素、ハロゲン、C
1~C
4アルキル、及びハロゲン化C
1~C
4アルキルから選択される)と;
B)酸化剤と;
C)有機溶媒と、
を含む混合物を形成するステップと;
II)前記混合物を加熱するステップと;
III)前記混合物に酸を加えるステップと;
IV)前記混合物に第2の量の前記式Iの化合物を加えるステップと;
V)前記混合物の反応を完了させるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記酸化剤が、過酸化水素、有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、モノ過硫酸カリウム、モノ過硫酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化剤が
、1.0eq
~2.0eqの範囲内の量で前記混合物中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化剤が
、10μm
~200μmの範囲内のD50粒度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が、エーテル、エステル、非プロトン性有機溶媒、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記式Iの化合物の前記第1の量
は、前記式Iの化合物の総量
の5重量%
~40重量%
である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酸が、無機酸、有機酸、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記酸が
、0.05eq
~1.5eqの範囲内の量で前記混合物中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸が
、0.2eq未満の量で前記混合物中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物を形成する方法ステップが
、0℃
~60℃の範囲内の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物を加熱する方法ステップによって、前記混合物の温度
を50℃
~82℃の範囲内の温度に上昇させる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
第2の量の前記式Iの化合物を加える方法ステップが、前記第2の量の前記式Iの化合物を不連続に加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第2の量の前記式Iの化合物を加える方法ステップが、前記第2の量の前記式Iの化合物を連続的に加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
第2の量の前記式Iの化合物を加える方法ステップが、前記第2の量の前記式Iの化合物を滴下して加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
第2の量の前記式Iの化合物を加える方法ステップが
、3時間
~7時間の範囲内の時間にわたって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記式Iの化合物の前記第2の量が、前記式Iの化合物の前記第1の量よりも多い、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記式Iの化合物の前記第2の量が、前記式Iの化合物の前記第1の量の少なくとも2倍である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記式Iの化合物の前記第2の量が、前記式Iの化合物の総量の少なくとも70重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記式Iの化合物の前記第1の量が、前記式Iの化合物の総量の30重量%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの方法ステップが、前記混合物を撹拌することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月11日に出願された米国仮特許出願第62/933,553号明細書の利益を主張する。
【0002】
本開示は、3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-カルボン酸エチルの新規合成方法を対象とする。本明細書に開示される方法によって調製される化合物は、例えば殺虫剤のクロラントラニリプロール及びシアントラニリプロールなどの殺虫剤として関心が持たれているある種のアントラニルアミド化合物の調製に有用である。
【背景技術】
【0003】
3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-カルボン酸エチルは、3-ブロモ-N-[4-クロロ-2-メチル-6-[(メチルアミノ)カルボニル]フェニル]-1-(3-クロロ-2-ピリジニル)-1H-ピラゾール-5-カルボキサミド及び3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-N-[4-シアノ-2-メチル-6-[N-メチルカルバモイル]フェニル]-1H-ピラゾール-5-カルボキサミドの製造における中間体である。
【0004】
特許の国際公開第03016283A1号パンフレットに開示されるように、3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-カルボキシレートは、触媒として硫酸を用いて過硫酸カリウムの存在下でのアセトニトリル系における酸化反応によって3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボン酸エチルから生成される。報告される収率は約75~80%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第03016283A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-カルボン酸エチル及びその誘導体の調製に有用な新規方法を提供する。従来方法と比較した本開示の方法の利点は、多数存在し、利点としては、改善された全収率、コストの削減、及びプロセスの危険性の軽減が挙げられる。
【0007】
開示される方法では、約88%の全収率が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、式IIの化合物
【化1】
(ここで、R
8は、水素及びC
1~C
4アルキルから選択され;
R
2~R
7のそれぞれは独立して、水素、ハロゲン、C
1~C
4アルキル、及びハロゲン化C
1~C
4アルキルから選択される)
の調製方法であって、
I)A)第1の量の式Iの化合物
【化2】
(ここで、R
1は、水素及びC
1~C
4アルキルから選択される;
R
2~R
7のそれぞれは独立して、水素、ハロゲン、C
1~C
4アルキル、及びハロゲン化C
1~C
4アルキルから選択される)と;
B)酸化剤と;
C)有機溶媒と、
を含む混合物を形成するステップと;
II)上記混合物を加熱するステップと;
III)上記混合物に酸を加えるステップと;
IV)上記混合物に第2の量の式Iの化合物を加えるステップと;
V)上記混合物の反応を完了させるステップと、
を含む方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において使用される場合、「含む」(comprises)、「含むこと」(comprising)、「含む」(includes)、「含むこと」(including)、「有する」、「有すること」、「含む」(contains)、「含むこと」(containing)、「特徴とする」という用語、及びそれらのあらゆる別の変形は、明確に示されるあらゆる限定に従うことを条件とした非排他的な包含を扱うことが意図される。例えば、一連の要素を含む組成物、混合物、プロセス、又は方法は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明確に列挙されず、このような組成物、混合物、プロセス、又は方法に対して固有ではない別の要素を含むことができる。
【0010】
「からなる」という移行句は、明記されないあらゆる要素、ステップ、又は成分を排除する。請求項の場合、これによって、通常は関連している不純物を除けば記載のもの以外の材料の混入は、その請求項中では排除されるであろう。「からなる」という語句が、前文の直後ではなく、請求項の本文の節に現れる場合、これはその節に記載される要素のみが限定され、他の要素は全体としてその請求項から排除されない。
【0011】
「から本質的になる」という移行句は、追加の材料、ステップ、特徴、構成要素、又は要素が、請求される発明の基本的で新規な特性に実質的に影響しないのであれば、それらの材料、ステップ、特徴、構成要素、又は要素を、文字通り開示されるものに加えて含む組成物又は方法を規定するために用いられる。「から本質的になる」という用語は、「含む」と「からなる」との間の中間領域を占める。
【0012】
発明又はその一部が、「含む」などの制限のない用語を用いて規定される場合、(特に記載されるのでなければ)その記述は、そのような発明が「から本質的になる」又は「からなる」という用語を用いても記述されると解釈すべきであることが、容易に理解できるであろう。
【0013】
さらに、明確に逆のことが示されるのでなければ、「又は」は、包含の又はを意味し、排他的な又はを意味するのではない。例えば、A又はBという条件は、Aが真であり(又は存在し)、Bが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在せず)、Bが真である(又は存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)のいずれか1つによって満たされる。
【0014】
また、本発明の要素又は構成要素に先行する不定冠詞「a(1つの)」及び「an(1つの)」は、その要素又は構成要素の例(すなわち出現)の数に関しては非限定的であることが意図される。したがって「a」又は「an」は、1つ又は少なくとも1つを含むと読むべきであり、単数形の語形の要素又は構成要素は、その数が明らかに単数であることを意味するのでなければ、複数も含む。
【0015】
本明細書において、「約」という用語は、その値の±10%を意味する。
【0016】
「eq」という用語は、所与の化学反応において任意の量の別の物質と反応する(又は同等である)物質の量を意味する。
【0017】
「%検定」という用語は、所望の化合物の含有量を試料の全重量で割ったものを意味する。
【0018】
単独、又は「ハロアルキル」若しくは「ハロゲン化アルキル」などの化合物の単語又は表現中のいずれかにおいて、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を含む。さらに、「ハロアルキル」又は「ハロゲン化アルキル」などの化合物の単語又は表現中に使用される場合、上記アルキルは、同じ場合も異なる場合もあるハロゲン原子で部分的又は完全に置換されることができる。
【0019】
例えばR4など、ある基が、水素であってよい置換基を含む場合に、この置換基が水素であると解釈される場合、これは、上記基が非置換であることと同等であると認識される。
【0020】
本発明の特定の化合物は、1つ以上の立体異性体として存在することができる。種々の立体異性体としては、鏡像異性体、ジアステレオマー、アトロプ異性体、及び幾何異性体が挙げられる。ある立体異性体は、別の立体異性体よりも濃縮される場合、又は別の立体異性体から分離される場合に、活性がより高くなったり、及び/又は有益な効果を示したりする場合があることを、当業者は認識するであろう。さらに、当業者であれば、上記立体異性体の分離、濃縮、及び/又は選択的調製の方法を理解している。
【0021】
本開示の実施形態としては以下のものが挙げられる。
【0022】
実施形態1。式IIの化合物
【化3】
(ここで、R
8は、水素及びC
1~C
4アルキルから選択され;
R
2~R
7のそれぞれは独立して、水素、ハロゲン、C
1~C
4アルキル、及びハロゲン化C
1~C
4アルキルから選択される)
の調製方法であって、
I)A)第1の量の式Iの化合物
【化4】
(ここで、R
1は、水素及びC
1~C
4アルキルから選択され;
R
2~R
7のそれぞれは独立して、水素、ハロゲン、C
1~C
4アルキル、及びハロゲン化C
1~C
4アルキルから選択される)と;
B)酸化剤と;
C)有機溶媒と
を含む混合物を形成するステップと;
II)上記混合物を加熱するステップと;
III)上記混合物に酸を加えるステップと;
IV)上記混合物に第2の量の式Iの化合物を加えるステップと;
V)上記混合物の反応を完了させるステップと、
を含む方法。
【0023】
実施形態2。酸化剤が、過酸化水素、有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、モノ過硫酸カリウム、モノ過硫酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態1の方法。
【0024】
実施形態3。酸化剤が過硫酸カリウムである、実施形態1の方法。
【0025】
実施形態4。酸化剤が、約1.0eq~約2.0eqの範囲内の量で混合物中に存在する、実施形態1の方法。
【0026】
実施形態5。酸化剤が、約1.3eq~約1.7eqの範囲内の量で混合物中に存在する、実施形態1の方法。
【0027】
実施形態6。酸化剤が、約10μm~約200μmの範囲内のD50粒度を有する、実施形態1の方法。
【0028】
実施形態7。酸化剤が、約20μm~約100μmの範囲内のD50粒度を有する、実施形態1の方法。
【0029】
実施形態8。酸化剤が、約30μm~約80μmの範囲内のD50粒度を有する、実施形態1の方法。
【0030】
実施形態9。酸化剤が、約40μm~約60μmの範囲内のD50粒度を有する、実施形態1の方法。
【0031】
実施形態10。溶媒が、エーテル、エステル、非プロトン性有機溶媒、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態1の方法。
【0032】
実施形態11。エーテルが、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態10の方法。
【0033】
実施形態12。エステルが、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、ジメチルカーボネート、酢酸ブチル、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態10の方法。
【0034】
実施形態13。非プロトン性有機溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、アセトニトリル、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態10の方法。
【0035】
実施形態14。非プロトン性有機溶媒がアセトニトリルである、実施形態10の方法。
【0036】
実施形態15。式Iの化合物の第1の量が、式Iの化合物の総量の約5重量%~約40重量%である、実施形態1の方法。
【0037】
実施形態16。第1の量の式Iの化合物が、式Iの化合物の総量の約10重量%~約30重量%の範囲内の濃度で混合物中に存在する、実施形態1の方法。
【0038】
実施形態17。酸が、無機酸、有機酸、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態1の方法。
【0039】
実施形態18。有機酸が、酢酸、プロパン酸、p-トルエンスルホン酸、安息香酸、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態17の方法。
【0040】
実施形態19。無機酸が、硫酸、リン酸、オレウム、臭化水素酸、塩酸、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態17の方法。
【0041】
実施形態20。無機酸が硫酸である、実施形態17の方法。
【0042】
実施形態21。酸が、約0.05eq~約1.5eqの範囲内の量で混合物中に存在する、実施形態1の方法。
【0043】
実施形態22。酸が、約0.2eq未満の量で混合物中に存在する、実施形態1の方法。
【0044】
実施形態23。混合物を形成する方法ステップが、約0℃~約60℃の範囲内の温度で行われる、実施形態1の方法。
【0045】
実施形態24。混合物を形成する方法ステップが、約15℃~約35℃の範囲内の温度で行われる、実施形態1の方法。
【0046】
実施形態25。混合物を形成する方法ステップが室温で行われる、実施形態1の方法。
【0047】
実施形態26。混合物を加熱する方法ステップによって、混合物の温度を約50℃~約82℃の範囲内の温度に上昇させる、実施形態1の方法。
【0048】
実施形態27。混合物を加熱する方法ステップによって、混合物の温度を約55℃~約65℃の範囲内の温度に上昇させる、実施形態1の方法。
【0049】
実施形態28。混合物に第2の量の式Iの化合物を加える方法ステップが、約50℃~約82℃の範囲内の温度で行われる、実施形態1の方法。
【0050】
実施形態29。混合物に第2の量の式Iの化合物を加える方法ステップが、約65℃~約82℃の範囲内の温度で行われる、実施形態1の方法。
【0051】
実施形態30。第2の量の式Iの化合物を加える方法ステップが、第2の量の式Iの化合物を不連続に加えることを含む、実施形態1の方法。
【0052】
実施形態31。第2の量の式Iの化合物を加える方法ステップが、第2の量の式Iの化合物を連続的に加えることを含む、実施形態1の方法。
【0053】
実施形態32。第2の量の式Iの化合物を加える方法ステップが、第2の量の式Iの化合物を滴下して加えることを含む、実施形態1の方法。
【0054】
実施形態33。第2の量の式Iの化合物を加える方法ステップが、約3時間~約7時間の範囲内の時間にわたって行われる、実施形態1の方法。
【0055】
実施形態34。第2の量の式Iの化合物を加える方法ステップが、約3.5時間~約4.5時間の範囲内の時間にわたって行われる、実施形態1の方法。
【0056】
実施形態35。式Iの化合物の第2の量が、式Iの化合物の第1の量よりも多い、実施形態1の方法。
【0057】
実施形態36。式Iの化合物の第2の量が、式Iの化合物の第1の量の少なくとも2倍である、実施形態1の方法。
【0058】
実施形態37。式Iの化合物の第2の量が、式Iの化合物の総量の約70重量%である、実施形態1の方法。
【0059】
実施形態38。式Iの化合物の第1の量が、式Iの化合物の総量の約30重量%である、実施形態1の方法。
【0060】
実施形態39。少なくとも1つの方法ステップが、酸素センサーを用いて混合物のO2含有量を検出することをさらに含む、実施形態1の方法。
【0061】
実施形態40。混合物を加熱する方法ステップが、O2の非存在下で行われる、実施形態1の方法。
【0062】
実施形態41。約0.5重量%未満のO2が生成する、実施形態1の方法。
【0063】
実施形態42。O2を生成しない、実施形態1の方法。
【0064】
実施形態43。少なくとも1つの方法ステップが、混合物を撹拌することをさらに含む、実施形態1の方法。
【0065】
一態様では、スキーム1によって示される方法により、3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-カルボン酸エチルが調製される。
【化5】
【0066】
一態様では、スキーム2によって示される方法により、式IIの化合物が調製される。R基は、本開示のいずれかの場所で規定されている。
【化6】
【0067】
この態様は、第1の量の式Iの化合物と、酸化剤と、有機溶媒とを含む混合物を形成するステップと、その混合物を加熱するステップと、その混合物に酸を加えるステップと、その混合物に第2の量の式Iの化合物を加えるステップと、混合物の反応を完了させるステップとを含む。
【0068】
一実施形態では、酸化剤は、過酸化水素、有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、モノ過硫酸カリウム、モノ過硫酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、及びそれらの組み合わせから選択される。別の一実施形態では、酸化剤は過硫酸カリウムである。一実施形態では、酸化剤は、約1.0eq~約2.0eqの範囲内の量で混合物中に存在する。別の一実施形態では、酸化剤は、約1.3eq~約1.7eqの範囲内の量で混合物中に存在する。一実施形態では、酸化剤は、約10μm~約200μmの範囲内のD50粒度を有する。別の一実施形態では、酸化剤は、約20μm~約100μmの範囲内のD50粒度を有する。別の一実施形態では、酸化剤は、約30μm~約80μmの範囲内のD50粒度を有する。別の一実施形態では、酸化剤は、約40μm~約60μmの範囲内のD50粒度を有する。
【0069】
一実施形態では、溶媒は、エーテル、エステル、非プロトン性有機溶媒、及びそれらの組み合わせから選択される。別の一実施形態では、溶媒は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、及びそれらの組み合わせから選択されるエーテルである。別の一実施形態では、溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、ジメチルカーボネート、酢酸ブチル、及びそれらの組み合わせから選択されるエステルである。一実施形態では、溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、アセトニトリル、及びそれらの組み合わせから選択される非プロトン性有機溶媒である。別の一実施形態では、溶媒はアセトニトリルである。
【0070】
一実施形態では、式Iの化合物の第1の量は、式Iの化合物の総量の約5重量%~約40重量%である。別の一実施形態では、式Iの化合物の第1の量は、式Iの化合物の総量の約10重量%~約30重量%である。
【0071】
一実施形態では、酸は、無機酸、有機酸、及びそれらの組み合わせから選択される。別の一実施形態では、酸は、酢酸、プロパン酸、p-トルエンスルホン酸、安息香酸、及びそれらの組み合わせから選択される有機酸である。別の一実施形態では、酸は、硫酸、リン酸、オレウム、臭化水素酸、塩酸、及びそれらの組み合わせから選択される無機酸である。別の一実施形態では、酸は硫酸である。一実施形態では、酸は、約0.05eq~約1.5eqの範囲内の量で混合物中に存在する。別の一実施形態では、酸は、約0.2eq未満の量で混合物中に存在する。
【0072】
一実施形態では、混合物を形成する方法ステップは、約0℃~約60℃の範囲内の温度で行われる。別の一実施形態では、混合物を形成する方法ステップは、約15℃~約35℃の範囲内の温度で行われる。別の一実施形態では、混合物を形成する方法ステップは、室温で行われる。一実施形態では、混合物を形成する方法ステップは、混合物を撹拌することを含む。
【0073】
一実施形態では、混合物を加熱する方法ステップによって、混合物の温度を約50℃~約82℃の範囲内の温度まで上昇させる。別の一実施形態では、混合物を加熱する方法ステップによって、混合物の温度を約55℃~約65℃の範囲内の温度まで上昇させる。一実施形態では、混合物を加熱する方法ステップは、混合物を撹拌することを含む。
【0074】
一実施形態では、混合物に第2の量の式Iの化合物を加える方法ステップは、約50℃~約82℃の範囲内の温度で行われる。別の一実施形態では、混合物に第2の量の式Iの化合物を加える方法ステップは、約50℃~約82℃の範囲内の温度で行われる。一実施形態では、第2の量の式Iの化合物を加える方法ステップは、第2の量の式Iの化合物を不連続に加えることを含む。一実施形態では、第2の量の式Iの化合物を加える方法ステップは、第2の量の式Iの化合物を連続的に加えることを含む。別の一実施形態では、第2の量の式Iの化合物を加える方法ステップは、第2の量の式Iの化合物を滴下して加えることを含む。一実施形態では、第2の量の式Iの化合物を加える方法ステップは、約3時間~約7時間の範囲内の時間にわたって行われる。別の一実施形態では、第2の量の式Iの化合物を加える方法ステップは、約3.5時間~約4.5時間の範囲内の時間にわたって行われる。一実施形態では、第2の量の式Iの化合物を加える方法ステップは、混合物を撹拌することを含む。
【0075】
一実施形態では、式Iの化合物の第2の量は、式Iの化合物の第1の量よりも多い。別の一実施形態では、式Iの化合物の第2の量は、式Iの化合物の第1の量の少なくとも2倍である。一実施形態では、式Iの化合物の第2の量は、式Iの化合物の総量の約70重量%である。別の一実施形態では、式Iの化合物の第1の量は、式Iの化合物の総量の約30重量%である。一実施形態では、式Iの化合物の第2の量は、式Iの化合物の総量の約80重量%である。別の一実施形態では、式Iの化合物の第1の量は、式Iの化合物の総量の約20重量%である。一実施形態では、式Iの化合物の第2の量は、式Iの化合物の総量の約90重量%である。別の一実施形態では、式Iの化合物の第1の量は、式Iの化合物の総量の約10重量%である。一実施形態では、式Iの化合物の第2の量は、式Iの化合物の総量の約95重量%である。別の一実施形態では、式Iの化合物の第1の量は、式Iの化合物の総量の約5重量%である。
【0076】
一実施形態では、少なくとも1つの方法ステップは、酸素センサーを用いて混合物のO2含有量を検出することをさらに含む。一実施形態では、混合物を加熱する方法ステップは、O2の非存在下で行われる。一実施形態では、この方法によって、約0.5重量%未満のO2が生成される。別の一実施形態では、この方法によってO2は生成されない。O2の生成が少ない及び/又は検出不能であることで、プロセスの安全性が向上する。
【実施例】
【0077】
さらに説明することなく、以上の説明を用いることで、当業者は本発明を十分に利用できると考えられる。したがって、以下の実施例は、単に説明的なものと解釈すべきであり、本開示を限定するものと解釈すべきでは決してない。以下の実施例の出発物質は、必ずしも、手順が別の実施例に記載される特定の調製試験によって調製できるわけではない。本明細書に列挙されるあらゆる数値範囲は、その下限から上限までのあらゆる値を含むことも理解されよう。例えば、ある範囲が10~50と記載される場合、12~30、20~40、又は30~50などの値が、本明細書において明示的に記載されることが意図される。これらは単に特に意図された例であり、記載の最低値と最高値との間の数値及び両端の数値のあらゆる可能な組み合わせが、本出願に明確に示されていると見なすべきである。
【0078】
比較例1。酸素の発生を監視する方法
冷却器、温度計、滴下漏斗、及び窒素流入管を取り付けた2Lのフラスコに、153gの過硫酸カリウム、450gのアセトニトリル、及びその他の出発物質を加える。冷却器の上に酸素センサーを取り付ける。0.55L/分の速度で窒素を流すことで、反応器中の空気を置換する。酸素センサーが0.0%の酸素レベルを示してから、混合物を60℃まで加熱する。次に混合物に4.0gの硫酸を加え、混合物の加熱還流を維持する。このプロセス全体にわたって、酸素レベルを監視し、記録する。
【0079】
比較例2。反応開始時の3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボン酸エチルの一回の添加
174gの過硫酸カリウム(1.6eq)と、アセトニトリル中17%の3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボン酸エチル780gと、40gの濃硫酸(1.0eq)とを反応器に加える。反応混合物を撹拌し65℃まで加熱する。反応は明らかな発熱を示し、そのため自己発熱により還流する。反応混合物を還流状態でさらに3~4時間維持して反応を完了させる。プロセス全体にわたって、酸素は検出されない。70℃において混合物に350g水を加え、重硫酸カリウムを用い相分離させて、廃水を除去する。溶媒を除去し、次に結晶化させた後、約107gの3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-カルボン酸エチルの乾燥生成物が約96%検定及び約78%の収率で得られる。
【0080】
実施例1。反応開始時及び反応開始後における3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボン酸エチルの添加
アセトニトリル中の40%の3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボン酸エチル100gと、153gの過硫酸カリウム(1.4eq)と、450gのアセトニトリルとを反応器に加える。反応混合物を撹拌し、60℃まで加熱し、次に混合物に4.0gの濃硫酸(0.1eq)を加える。反応混合物を還流状態で1時間維持し、次にアセトニトリル中40%の3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-5-カルボン酸エチル230gを3~5時間の間に滴下して加える。すべての材料を加えた後、反応混合物を還流状態でさらに1~2時間維持して反応を完了させる。プロセス全体にわたって、酸素は検出されない。70℃において混合物に350gの水を加え、重硫酸カリウムを用いて相分離させて、廃水を除去する。溶媒を除去し、次に結晶化させた後、約120gの3-ブロモ-1-(3-クロロピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-カルボン酸エチルの乾燥生成物が約97%検定及び約88%の収率で得られる。
【0081】
ここに記載される説明には、最良の形態を含む本開示を例示するため、並びにあらゆる装置若しくはシステムの製造及び使用、並びに含まれるあらゆる方法の実施などの当業者による本開示の実施を可能にするために、例が使用されている。本開示の特許性のある範囲は、請求項の範囲により規定され、当業者が想定する別の例を含むことができる。このような別の例は、それらが請求項の文言と異ならない構造要素を有する場合、又はそれらが請求項の文言との差がわずかである同等の構造要素を含む場合には、請求項の範囲内となることが意図される。