(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-01
(45)【発行日】2025-07-09
(54)【発明の名称】超伝導集積回路を製造するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H10N 60/12 20230101AFI20250702BHJP
H10N 60/01 20230101ALI20250702BHJP
【FI】
H10N60/12 C
H10N60/01 J
(21)【出願番号】P 2022529541
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 US2020063113
(87)【国際公開番号】W WO2021113513
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-11-29
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507209207
【氏名又は名称】ディー-ウェイブ システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,リチャード,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】リッチ,クリストファー,ビー.
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-200171(JP,A)
【文献】特開平03-257976(JP,A)
【文献】特開平08-255937(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0287118(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/12
H10N 60/01
H10N 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導集積回路であって、
前記超伝導集積回路内の第1の金属層の少なくとも一部を含む第1のデバイスであって、前記第1の金属層は、第1の臨界温度を有する第1の超伝導材料を含む、第1のデバイスと、
前記第1のデバイスから離間された磁束トラップ位置であって、
前記磁束トラップ位置は、前記超伝導集積回路の各超伝導層に開口し、かつ、それらを通じて延在する一つの開口部又は一連の整列された連続開口部を有する一つ以上の磁束トラップ開口であり、前記磁束トラップ位置は、前記磁束トラップ位置内にトラップされた磁束が前記第1のデバイスから分離されるように位置決めされている、磁束トラップ位置と、
第2の臨界温度を有する超伝導材料を含む磁束方向付け層であって、
前記磁束方向付け層は、前記磁束方向付け層が前記一つ以上の磁束トラップ開口に整列された開口部を含むように、前記磁束トラップ位置と連通して位置決めされている、磁束方向付け層と、
を含み、
前記第1の臨界温度及び前記第2の臨界温度は、前記超伝導集積回路が、前記第1の臨界温度及び前記第2の臨界温度の両方を下回る温度に冷却されるとき、磁束が前記第1のデバイスから離れて、及び前記磁束方向付け層に方向付けられ、及び前記磁束方向付け層が前記磁束トラップ位置内に磁束を方向付け、及びトラップするように相対温度差を有する、超伝導集積回路。
【請求項2】
前記磁束トラップ開口は、前記超伝導集積回路内に位置決めされた平行管開口部及び溝の1つを含む、請求項
1に記載の超伝導集積回路。
【請求項3】
超伝導材料を含む遮蔽体を更に含み、
前記磁束トラップ位置内にトラップされた磁束が前記第1のデバイスから分離されるように前記磁束トラップ位置と前記第1のデバイスとを分離するために、前記遮蔽体は、前記磁束トラップ位置を密封する、請求項1に記載の超伝導集積回路。
【請求項4】
前記第1のデバイスは、量子ビット及び結合器の1つを含む、請求項1に記載の超伝導集積回路。
【請求項5】
前記第1の金属層に隣接して位置決めされた第2の金属層を更に含み、前記第2の金属層は、前記第1のデバイスを遮蔽する遮蔽構造体を含み、前記第2の金属層は、第3の臨界温度を有する超伝導材料を含む、請求項1に記載の超伝導集積回路。
【請求項6】
前記第1の金属層は、前記磁束方向付け層の少なくとも一部の上に重なり、前記第1の金属層に隣接して位置決めされた第2の金属層を更に含み、前記第2の金属層は、前記第1のデバイスを遮蔽する遮蔽構造体を含み、前記第2の金属層は、第3の臨界温度を有する超伝導材料を含む、請求項1に記載の超伝導集積回路。
【請求項7】
前記第1の臨界温度は、前記第2の臨界温度を上回り、前記第2の臨界温度は、前記第3の臨界温度を下回り、前記第2の臨界温度と前記第3の臨界温度との間の相対温度差は、前記第1のデバイスから離れて、及び前記磁束トラップ位置に磁束を方向付けるように選択される、請求項6に記載の超伝導集積回路。
【請求項8】
前記磁束方向付け層の少なくとも一部の上に重なる1つ又は複数の追加の金属層を更に含み、それぞれの追加の金属層の臨界温度は、前記第2の臨界温度を上回る、請求項6又は7に記載の超伝導集積回路。
【請求項9】
前記磁束方向付け層は、前記第1の金属層の少なくとも一部の上に重なり、前記第1の臨界温度は、前記第2の臨界温度を下回る、請求項1に記載の超伝導集積回路。
【請求項10】
第2の金属層であって、前記第1の金属層は、前記第2の金属層の少なくとも一部の上に重なり、前記第2の金属層は、前記第1のデバイスを遮蔽する遮蔽構造体を含み、前記第2の金属層は、第3の臨界温度を有する超伝導材料を含む、第2の金属層を更に含み、及びベース金属層を形成することであって、前記第2の金属層は、前記ベース金属層の上に重なり、前記第3の臨界温度は、前記ベース金属層の臨界温度を上回り、及び前記ベース金属層の前記臨界温度は、前記第2の臨界温度を上回る、形成することを更に含む、請求項9に記載の超伝導集積回路。
【請求項11】
前記磁束方向付け層は、前記磁束トラップ位置の少なくとも一部の上に重なる磁束トラップ構造体を含む、請求項9又は10に記載の超伝導集積回路。
【請求項12】
前記磁束トラップ位置は、第2のデバイスを含む、請求項
1に記載の超伝導集積回路。
【請求項13】
前記磁束方向付け層は、高運動インダクタンス材料及び少なくとも1つのモートを含む、請求項
1に記載の超伝導集積回路。
【請求項14】
超伝導集積回路において磁束トラップを軽減する方法であって、
第1のデバイスを形成することであって、前記第1のデバイスは、前記超伝導集積回路内の第1の金属層の少なくとも一部を含み、前記第1の金属層は、第1の臨界温度を有する第1の超伝導材料を含む、ことと、
第2の臨界温度を有する第2の超伝導材料を含む磁束方向付け層を形成することと、
前記第1のデバイスから離間された磁束トラップ位置を形成することであって、前記磁束トラップ位置は、前記超伝導集積回路の各超伝導層に開口し、かつ、それらを通じて延在する一つの開口部又は一連の整列された連続開口部を有する一つ以上の磁束トラップ開口である、ことと、
を含み、
前記磁束方向付け層を形成することは、前記一つ以上の磁束トラップ開口に整列された開口部を形成することを含み、
前記第1の超伝導材料及び前記第2の超伝導材料は、前記超伝導集積回路が、前記第1の臨界温度及び前記第2の臨界温度の両方を上回る第1の温度から、前記第1の臨界温度及び前記第2の臨界温度の両方を下回る第2の温度に冷却されるとき、前記第1の臨界温度と前記第2の臨界温度との間の相対温度差が、前記磁束方向付け層に、前記第1のデバイスから離れて、及び前記第1のデバイスから離間された磁束トラップ位置に向かって磁束を方向付けさせ、前記超伝導集積回路が冷却されるにつれて、前記磁束が前記磁束トラップ位置でトラップされ、及び前記第1のデバイスから分離されるように選択される、方法。
【請求項15】
磁束方向付け層を形成することは、前記磁束トラップ位置と磁束伝達連通して位置決めさるべき前記磁束方向付け層を形成することを含み、前記磁束方向付け層に、前記第1のデバイスから離れて、及び磁束トラップ位置に向かって磁束を方向付けさせることは、前記磁束方向付け層に、前記磁束トラップ位置に磁束を方向付けさせることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の金属層に隣接して第2の金属層を形成することを更に含み、前記第2の金属層は、前記第1のデバイスを遮蔽する遮蔽構造体を含み、前記第2の金属層は、第3の臨界温度を有する超伝導材料を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
第1のデバイスを形成することは、前記磁束方向付け層の少なくとも一部の上に重なるように前記第1の金属層を形成することを含み、
第2の超伝導材料を含む磁束方向付け層を形成することは、前記第1の臨界温度を下回るように前記第2の臨界温度を選択することと、前記第3の臨界温度を下回るように前記第2の臨界温度を選択すること、前記第2の臨界温度と前記第3の臨界温度との間の相対温度差を提供して、前記第1のデバイスから離れて磁束を方向付け、及び前記磁束トラップ位置で磁束をトラップすることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記磁束方向付け層の少なくとも一部の上に重なる1つ又は複数の追加の超伝導金属層を形成することを更に含み、前記1つ又は複数の追加の超伝導金属層の各々の臨界温度は、前記第2の臨界温度を上回り、前記磁束方向付け層から前記第1の金属層及び前記1つ又は複数の追加の超伝導金属層の最上層まで層ごとに漸次的に増加するように各層のそれぞれの臨界温度を選択することを含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
第2の超伝導材料を含む前記磁束方向付け層を形成することは、前記第1の金属層の少なくとも一部の上に重なる磁束方向付け層を形成することと、前記第1の臨界温度を上回るように前記第2の臨界温度を選択することを含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項20】
第2の金属層を形成することであって、前記第1の金属層は、前記第2の金属層の少なくとも一部の上に重なり、前記第2の金属層は、前記第1のデバイスを遮蔽する遮蔽構造体を含み、前記第2の金属層は、第3の臨界温度を有する超伝導材料を含む、形成することを更に含み、及びベース金属層を形成することであって、前記第2の金属層は、前記ベース金属層の上に重なり、前記第3の臨界温度は、前記ベース金属層の臨界温度を上回り、及び前記ベース金属層の前記臨界温度は、前記第2の臨界温度を上回る、形成することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本開示は、概して、超伝導集積回路を製造するためのシステム及び方法に関し、特に、設計によって磁束トラップを含む超伝導集積回路の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
超伝導プロセッサ
量子プロセッサは、超伝導プロセッサの形態をとり得る。超伝導プロセッサは、量子計算を対象としないプロセッサを含み得る。例えば、超伝導プロセッサの幾つかの実装形態は、量子効果(例えば、量子トンネル現象、重ね合わせ及びエンタングルメント)に注目するのではなく、異なる原理(例えば、古典的コンピュータプロセッサの動作を制御する原理など)を強調することによって動作し得る。このような超伝導「古典的」プロセッサの実装形態への特定の利点が依然として存在し得る。自然の物理的特性のため、超伝導古典的プロセッサは、非超伝導プロセッサよりも速い切り換え速度及び短い計算時間を可能にすることができ、従って、超伝導古典的プロセッサで特定の問題を解決することは、より実用的である。本システム及び方法は、超伝導量子プロセッサ及び超伝導古典的プロセッサの両方を製造する際の使用に特によく適している。
【0003】
超伝導量子ビット
超伝導量子ビットは、超伝導集積回路に含まれ得る超伝導量子デバイスのタイプである。情報を符号化するために使用される物理的特性に応じて、超伝導量子ビットを幾つかのカテゴリーに分類し得る。例えば、超伝導量子ビットを電荷、磁束及び位相デバイスに分類し得る。電荷デバイスは、デバイスの荷電状態における情報を記憶及び操作する。磁束デバイスは、デバイスのある部分を通る磁束に関する変数における情報を記憶及び操作する。位相デバイスは、デバイスの2つの部位間の超伝導位相の差に関する変数における情報を記憶及び操作する。最近、電荷、磁束及び位相の自由度の2つ以上を用いたハイブリッドデバイスが開発されている。超伝導量子ビットは、通常、少なくとも1つのジョセフソン接合部を含む。ジョセフソン接合部は、別の連続超伝導電流路の小さい障害物であり、2つの超伝導電極間に挟まれた薄い絶縁障壁によって典型的に実現される。従って、ジョセフソン接合部は、通常、3つの層の又は「3層」構造体として形成される。更に、超伝導量子ビットは、例えば、米国特許第7,876,248号、米国特許第8,035,540号及び米国特許第8,098,179号に記載されている。
【0004】
集積回路製造
集積回路は、本出願ではチップとも呼ばれ、超伝導集積回路は、本出願では超伝導チップとも呼ばれる。
【0005】
従来、超伝導集積回路は、最先端の半導体製造工場で製造されていない。これは、超伝導集積回路に使用される材料の一部が半導体工場を汚染する場合があるためである。例えば、金は、超伝導回路における抵抗器として使用され得るが、金は、半導体工場で相補型金属酸化膜半導体(CMOS)ウェハーを製造するために使用される製造工具を汚染する場合がある。
【0006】
超伝導体製造は、典型的には、超伝導回路製造のための標準的な工業的技法を最適化することができる研究環境で行われている。超伝導集積回路は、半導体チップ又は集積回路を製造するために従来使用される工具を用いて製造されることが多い。超伝導回路に特有の課題のため、半導体処理及び技法の全てが超伝導チップ製造に必ずしも移転できるとは限らない。半導体処理及び技法を超伝導チップ及び回路製造用に変換することは、変更及び微調整を必要とすることが多い。このような変更及び調整は、典型的には、自明でなく、多くの実験を必要とし得る。半導体産業は、超伝導産業に必ずしも関連しない問題及び課題に直面する。同様に、超伝導産業に関連する問題及び課題は、標準的な半導体製造において殆ど又は全く関心事でないことが多い。
【0007】
超伝導チップ内の任意の不純物は、全体として個々のデバイス(例えば、超伝導量子ビット)及び超伝導チップの機能性を損なうか又は低下させ得るノイズになり得る。ノイズは、量子コンピュータの動作にとって重大な関心事であるため、できるだけノイズを減らす措置を講じるべきである。
【0008】
量子プロセッサのハミルトニアン記述
本システム及びデバイスの幾つかの実装形態によれば、断熱量子計算及び/又は量子アニーリングを実行するように量子プロセッサを設計し得る。一般的な問題ハミルトニアンは、対角単一量子ビット項に比例する第1の成分及び対角多量子ビット項に比例する第2の成分を含む。問題ハミルトニアンの形式は、例えば、以下のような形式であり得る。
【数1】
ここで、Nは、量子ビットの数を表し、
【数2】
は、i番目の量子ビットに対するパウリz行列であり、h
i及びJ
i,jは、量子ビットに対する無次元局所場及び量子ビット間の結合であり、εは、H
Pに対するある特性エネルギー尺度である。ここで、
【数3】
及び
【数4】
項は、「対角」項の例である。前者は、単一量子ビット項であり、後者は、2量子ビット項である。ハミルトニアンを様々な異なる方法、例えば超伝導量子ビットの実装によって物理的に実現し得る。
【0009】
量子プロセッサにおけるノイズ
低ノイズは、量子デバイスの望ましい特性である。ノイズは、全体として個々のデバイス(例えば、超伝導量子ビット)及び超伝導プロセッサの機能性を損なうか又は低下させ得る。ノイズは、量子ビットコヒーレンスに悪影響を与え、量子ビットトンネル現象の有効性を低下させ得る。ノイズは、量子プロセッサの動作にとって重大な関心事であるため、コヒーレント量子トンネル現象からインコヒーレント量子トンネル現象への転移を環境によって引き起こさないように、できるだけノイズを減らす措置を講じるべきである。
【0010】
不純物は、金属面に堆積され得、及び/又はエッチ/フォトレジスト化学的性質及び金属との相互作用から生じ得る。ノイズは、量子プロセッサの上面の不純物に起因し得る。場合により、ノイズの影響を受けやすい超伝導デバイスは、超伝導集積回路の上配線層に製造され、従って後製造処理に対して感受性である。後製造処理中にノイズを引き起こす不純物を取り込む危険性がある。ノイズを減らす1つの手法は、最上配線層の上に重なるように障壁パッシベーション層、例えば絶縁層を使用することである。量子プロセッサの上面の不純物からのノイズを最小化するために障壁パッシベーション層を使用することは、米国特許出願公開第2018/02219150A1号に記載されている。
【0011】
更に、ノイズは、外部環境又は超伝導プロセッサにおける周囲回路に起因し得る。量子プロセッサにおいて、磁束バイアスを掃引するときの量子ビット状態間の急な転移のため、量子ビット上の磁束ノイズは、量子プロセッサを適切にアニールすることを妨げる。磁束ノイズは、超伝導プロセッサに含まれる他のデバイスの配線を通る電流の結果であり得、各縮退点で量子ビットに特に悪影響を与え得る。例えば、磁束ノイズは、磁束バイアス及び結合強度値を設定する際の誤りのため、超伝導プロセッサによって実行される計算のエラーを引き起こし得る。このような値は、量子プロセッサの一部として集積回路を使用するために重要である。任意の非理想的磁束量子ビット挙動を離れて調整するための回路(例えば、オンチップ遮蔽体)を追加することにより、入念なレイアウト及び高精度磁束源を有するプロセッサから静的制御エラーの大部分を除去するように設計し得る。しかし、多くの場合、集積回路製造能力の制限は、プロセッサレイアウトを変更して回路を追加することにより、ノイズに対処することを困難にし得る。従って、低減された磁束ノイズを有する集積回路を製造するためのシステム及び方法が一般的に求められている。
【0012】
遮蔽
外因によって生成される磁場は、集積回路におけるデバイスとの望ましくない相互作用を引き起こし得る。従って、磁場及び電場などの干渉の強度を低下させるために、集積回路を装着するデバイスに近接する超伝導遮蔽体が必要であり得る。この例は、国際公開第96/09654号に記載されている。
【0013】
集積回路に組み込まれた超伝導遮蔽体は、さもなければ集積回路の動作を妨げ得る磁場及び電場などの直流及び交流ノイズから超伝導量子干渉デバイス(SQUID)パッケージを保護するために使用されている。集積回路の部位は、SQUIDパッケージの外部の磁場及び電場間の伝達を可能にするために遮蔽されていないことがある。この手法の例は、米国特許第5,173,660号に記載されている。
【0014】
さもなければデバイスに望ましくないバイアスをかけ得る直流電力線からデバイスを分離するために、超伝導遮蔽層が単一磁束量子(SFQ)又は高速単一磁束量子(RSFQ)技術で使用され得る。デバイスは、集積回路を装着するが、デバイスと直流電力線との間に接地面を置くことによって直流電力線から分離される。このタイプの手法の例は、例えば、Nagasawa et al.,“Development of advanced Nb process for SFQ circuits”Physica C 412-414 (2004) 1429-1436(本明細書ではNagasawaと呼ばれる)及びSatoh et al.,“Fabrication Process of Planarized Multi-Layer Nb Integrated Circuits”IEEE Transactions on Applied Superconductivity, Vol. 15, No.2, (June 2005)に記載されている。
【0015】
SFQ回路において、接地面及び遮蔽層は、交換可能に使用される用語である。SFQ集積回路における接地面は、無限の接地電位として回路内の殆どの信号のように見える金属の層である。接地面は、集積回路内のノイズを減らすのに役立ち、SFQ集積回路内の全構成要素が、電圧信号を比較するための共通電位を有することを保証するために使用され得る。Nagasawaは、SFQ回路全体にわたって配線層と接地面との間の接点の使用を示している。
【0016】
超伝導線に流れる超伝導電流は、常伝導金属線に流れる電子と同じ方法で関連磁場を有する。磁場は、超伝導線に誘導結合し、流れる電流を誘導し得る。超伝導集積回路を用いた量子情報処理は、線で移動する超伝導電流、従って関連磁場を必ず含む。量子デバイスの量子的特性は、ノイズに対して非常に感受性であり、超伝導量子デバイスにおける浮遊磁場は、このような回路の量子情報処理特性に悪影響を与え得る。
【0017】
関連する技術分野及びそれに関連する制限の上述の例は、例示的であり、排他的でないことを意図されている。関連する技術分野の他の制限は、本明細書を読んで図面を調べることで当業者に明白になるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
簡単な概要
態様によれば、超伝導集積回路において磁束トラップを軽減する方法であって、第1のデバイスを形成することであって、第1のデバイスは、超伝導集積回路内の第1の金属層の少なくとも一部を含み、第1の金属層は、第1の臨界温度を有する第1の超伝導材料を含む、形成することと、第2の臨界温度を有する第2の超伝導材料を含む磁束方向付け層を形成することとを含み、第1の超伝導材料及び第2の超伝導材料は、超伝導集積回路が、第1の臨界温度及び第2の臨界温度の両方を上回る第1の温度から、第1の臨界温度及び第2の臨界温度の両方を下回る第2の温度に冷却されるとき、第1の臨界温度と第2の臨界温度との間の相対温度差が、磁束方向付け層に、第1のデバイスから離れて、及び第1のデバイスから離間された磁束トラップ位置に向かって磁束を方向付けさせ、超伝導集積回路を冷却されるにつれて、磁束が磁束トラップ位置でトラップされ、及び第1のデバイスから分離されるように選択される、方法が提供される。
【0019】
他の態様によれば、磁束方向付け層を形成することは、磁束トラップ位置と磁束伝達連通して位置決めされた磁束方向付け層を形成することを含み得、磁束方向付け層に、第1のデバイスから離れて、及び磁束トラップ位置に向かって磁束を方向付けさせることは、磁束方向付け層に、磁束トラップ位置に磁束を方向付けさせることを含み得、方法は、磁束トラップ位置に磁束トラップ開口を形成することを更に含み得、磁束トラップ位置に磁束トラップ開口を形成することは、磁束トラップ位置に超伝導集積回路内の平行管開口部及び溝の1つを形成することを含み得、方法は、磁束トラップ位置を密封するための遮蔽体を形成することを更に含み得、磁束トラップ位置を密封するための遮蔽体を形成することは、超伝導集積回路内に複数の超伝導スタッドビアを形成することを含み得、磁束方向付け層を形成することは、磁束トラップ開口に整列された開口部を含む超伝導金属層を堆積させることを含み得、第1のデバイスを形成することは、量子ビット及び結合器の1つとして第1のデバイスを形成することを含み得、第1のデバイスを形成することは、磁束方向付け層の少なくとも一部の上に重なるように第1の金属層を形成することを含み得、磁束方向付け層を形成することは、第1の臨界温度を下回るように第2の臨界温度を選択することを含み得、方法は、第1の金属層に隣接して第2の金属層を形成することを更に含み得、第2の金属層は、第1のデバイスを遮蔽する遮蔽構造体を含み得、第2の金属層は、第3の臨界温度を有する超伝導材料を含み得、第2の超伝導材料を含む磁束方向付け層を形成することは、第2の臨界温度と第3の臨界温度との間の相対温度差を提供して、第1のデバイスから離れて磁束を方向付け、及び磁束トラップ位置で磁束をトラップすることを含み得、第1のデバイスを形成することは、磁束方向付け層の少なくとも一部の上に重なるように第1の金属層を形成することを含み得、磁束方向付け層を形成することは、第3の臨界温度を下回るように第2の臨界温度を選択することを含み得、方法は、磁束方向付け層の少なくとも一部の上に重なる1つ又は複数の追加の超伝導金属層を形成することを更に含み得、1つ又は複数の追加の超伝導金属層の各々の臨界温度は、第2の臨界温度を上回ることができ、第1の金属層を形成すること、1つ又は複数の追加の超伝導金属層を形成すること及び磁束方向付け層を形成することは、磁束方向付け層から第1の金属層及び1つ又は複数の追加の超伝導金属層の最上層まで層ごとに漸次的に増加するように各層のそれぞれの臨界温度を選択することを含み得、第2の超伝導材料を含む磁束方向付け層を形成することは、第1の金属層の少なくとも一部の上に重なる磁束方向付け層を形成することを含み得、方法は、第2の金属層を形成することを更に含み得、第1の金属層は、第2の金属層の少なくとも一部の上に重なり得、第2の金属層は、第1のデバイスを遮蔽する遮蔽構造体を含み得、第2の金属層は、第3の臨界温度を有する超伝導材料を含み得、方法は、ベース金属層を形成することを更に含み得、第2の金属層は、ベース金属層の上に重なり得、第3の臨界温度は、ベース金属層の臨界温度を上回ることができ、及びベース金属層の臨界温度は、第2の臨界温度を上回ることができ、第2の超伝導材料を使用して磁束方向付け層を形成することは、第1の臨界温度を上回るように第2の臨界温度を選択することを含み得、磁束方向付け層を形成することは、磁束トラップ位置の少なくとも一部の上に重なる磁束トラップ構造体を形成することを含み得、磁束トラップ構造体を形成することは、少なくとも1つのモートを形成することを含み得、方法は、磁束トラップ位置内に第2のデバイスを形成することを更に含み得、磁束トラップ位置内に第2のデバイスを形成することは、デジタル-アナログ変換器を形成することを含み得、第2の超伝導材料を含む磁束方向付け層を形成することは、高運動インダクタンス材料を含む磁束方向付け層を形成することを含み得、高運動インダクタンス材料を含む磁束方向付け層を形成することは、磁束方向付け層に少なくとも1つのモートを形成することを更に含み得る。
【0020】
態様によれば、超伝導集積回路であって、超伝導集積回路内の第1の金属層の少なくとも一部を含む第1のデバイスであって、第1の金属層は、第1の臨界温度を有する第1の超伝導材料を含む、第1のデバイスと、第1のデバイスから離間された磁束トラップ位置であって、磁束トラップ位置内にトラップされた磁束が第1のデバイスから分離されるように位置決めされた磁束トラップ位置と、第2の臨界温度を有する超伝導材料を含む磁束方向付け層であって、磁束トラップ位置と連通して位置決めされた磁束方向付け層とを含み、第1の臨界温度及び第2の臨界温度は、超伝導集積回路が、第1の臨界温度及び第2の臨界温度の両方を下回る温度に冷却されるとき、磁束が第1のデバイスから離れて、及び磁束方向付け層に方向付けられ、及び磁束方向付け層が磁束トラップ位置内に磁束を方向付け、及びトラップするように相対温度差を有する、超伝導集積回路が提供される。
【0021】
他の態様によれば、超伝導集積回路は、磁束トラップ位置に磁束トラップ開口を更に含み得、磁束トラップ開口は、超伝導集積回路内に位置決めされた平行管開口部及び溝の1つを含み得、超伝導集積回路は、磁束トラップ位置を密封する遮蔽体を更に含み得、遮蔽体は、複数の超伝導スタッドビアを含み得、磁束方向付け層は、磁束トラップ開口に整列された開口部を含み得、第1のデバイスは、量子ビット及び結合器の1つを含み得、第1の金属層は、磁束方向付け層の少なくとも一部の上に重なり得、第1の臨界温度は、第2の臨界温度を上回ることができ、超伝導集積回路は、第1の金属層に隣接して位置決めされた第2の金属層を更に含み得、第2の金属層は、第1のデバイスを遮蔽する遮蔽構造体を含み得、第2の金属層は、第3の臨界温度を有する超伝導材料を含み得、第2の臨界温度と第3の臨界温度との間の相対温度差は、第1のデバイスから離れて、及び磁束トラップ位置に磁束を方向付けるように選択され得、第1の金属層は、磁束方向付け層の少なくとも一部の上に重なり得、第2の臨界温度は、第3の臨界温度を下回ることができ、超伝導集積回路は、磁束方向付け層の少なくとも一部の上に重なる1つ又は複数の追加の金属層を更に含み得、それぞれの追加の金属層の臨界温度は、第2の臨界温度を上回ることができ、第1の金属層、1つ又は複数の追加の金属層及び磁束方向付け層の臨界温度は、磁束方向付け層から第1の金属層及び1つ又は複数の追加の金属層の最上層まで層ごとに漸次的に増加し得、磁束方向付け層は、第1の金属層の少なくとも一部の上に重なり得、超伝導集積回路は、第2の金属層を更に含み得、第1の金属層は、第2の金属層の少なくとも一部の上に重なり得、第2の金属層は、第1のデバイスを遮蔽する遮蔽構造体を含み得、第2の金属層は、第3の臨界温度を有する超伝導材料を含み得、及びベース金属層を形成することを更に含み得、第2の金属層は、ベース金属層の上に重なり得、第3の臨界温度は、ベース金属層の臨界温度を上回ることができ、及びベース金属層の臨界温度は、第2の臨界温度を上回ることができ、第1の臨界温度は、第2の臨界温度を下回ることができ、磁束方向付け層は、磁束トラップ位置の少なくとも一部の上に重なる磁束トラップ構造体を含み得、磁束トラップ構造体は、少なくとも1つのモートを含み得、磁束トラップ位置は、第2のデバイスを含み得、第2のデバイスは、デジタル-アナログ変換器であり得、磁束方向付け層は、高運動インダクタンス材料を含み得、磁束方向付け層は、少なくとも1つのモートを更に含み得、高運動インダクタンス材料に貯蔵されたエネルギーの少なくとも10%は、運動インダクタンスとして貯蔵され得、高運動インダクタンス材料の運動インダクタンス比は、0.1<α≦1であり得る。
【0022】
他の態様において、当業者によって認識されるように、上述の特徴は、任意の合理的な組み合わせで結合され得る。
【0023】
図面の幾つかの図の簡単な説明
図面において、同じ参照符号は、同様の要素又は動作を識別する。図面における要素のサイズ及び相対位置は、必ずしも原寸に比例しているとは限らない。例えば、様々な要素の形状及び角度は、必ずしも原寸に比例しているとは限らず、これらの要素の一部を任意に拡大及び位置決めして図面の視認性を向上させ得る。更に、図示のような要素の特定の形状は、特定の要素の実際の形状に関する任意の情報を伝えるように必ずしも意図されているとは限らず、図面における認識を簡単にするために選択されているにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2A】ハイブリッド材料を有する代替の超伝導集積回路の一部の断面図である。
【
図2B】ハイブリッド材料を有する代替の超伝導集積回路の一部の断面図である。
【
図3A】上部個別磁束方向付け層を有する超伝導集積回路の一部の各断面図である。
【
図3B】上部個別磁束方向付け層を有する超伝導集積回路の一部の各断面図である。
【
図4】デジタルコンピュータ及び本システム及び方法による超伝導集積回路を含むアナログコンピュータを含む計算システムを例示する概略図である。
【
図5】超伝導集積回路において磁束トラップを軽減する方法を例示するフローチャートである。
【
図6】複数の超伝導材料を有する超伝導集積回路の一部の断面図である。
【
図7A】接地面、遮蔽層及びスカイ遮蔽体をそれぞれ有する超伝導集積回路の一部の断面図である。
【
図7B】接地面、遮蔽層及びスカイ遮蔽体をそれぞれ有する超伝導集積回路の一部の断面図である。
【
図7C】接地面、遮蔽層及びスカイ遮蔽体をそれぞれ有する超伝導集積回路の一部の断面図である。
【
図8】磁束方向付け層を有する典型的な超伝導回路の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
下記の説明において、様々な開示の実装形態の詳細な理解を提供するために特定の詳細を記載する。しかし、当業者は、これらの特定の詳細の1つ又は複数の詳細なしで又は他の方法、構成要素、材料などを用いて実装形態が実施され得ることを認識するであろう。他の場合、実装形態の不必要に曖昧な説明を避けるために、コンピュータシステム、サーバーコンピュータ及び/又は通信ネットワークに関連する周知の構造は、詳細に示されていないか又は説明されていない。
【0026】
文脈上他の意味に解すべき場合を除き、下記の本明細書及び特許請求の範囲全体にわたり、用語「含む」は、「包含する」と同義であり、包含的又は非限定的である(即ち追加の非列挙要素又は方法動作を排除しない)。
【0027】
本明細書全体にわたる「1つの実装形態」又は「ある実装形態」の参照は、実装形態に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性を少なくとも1つの実装形態に含むことを意味する。従って、本明細書全体にわたる様々な箇所における用語「1つの実装形態では」又は「ある実装形態では」の出現は、全て必ずしも同じ実装形態を参照するとは限らない。更に、特定の特徴、構造又は特性を1つ又は複数の実装形態に任意の適切な方法で組み合わせ得る。
【0028】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、他に明示的に指示がない限り、複数の指示対象を含む。用語「又は」は、他に明示的に指示がない限り、「及び/又は」を含む意味で一般的に使用されることにも留意すべきである。
【0029】
本明細書で与えられる本開示の見出し及び要約書は、単に便宜のためであり、実装形態の範囲又は意味を解釈しない。
【0030】
超伝導材料は、臨界温度TCで超伝導挙動に転移する。TCよりも高いと、材料は、非超伝導状態である一方、TCよりも低いと、材料は、超伝導体として挙動する。臨界温度は、本出願では転移温度とも呼ばれる。
【0031】
超伝導体の特性の1つは、超伝導体が内部磁場を追い出すことである。構成超伝導材料の臨界温度を経て超伝導集積回路を冷却するときに存在する外部磁場がある場合、磁束がもはや超伝導材料を通過して他の位置に達することができないため、磁束は、超伝導集積回路内にトラップされた状態になり得る。
【0032】
磁束トラップは、例えば、超伝導集積回路の構成超伝導材料における欠陥又は不純物の位置において及び超伝導集積回路又は超伝導集積回路の構成デバイスの様々な構造的特徴で発生し得る。例えば、超伝導部位及び非超伝導部位の両方を有する超伝導回路では、非超伝導部位は、磁束がトラップされる好ましい場所になり得る。磁束トラップは、超伝導集積回路又は超伝導集積回路の構成デバイスの特定の構造又は実装形態の冷却動力に起因し得る。
【0033】
TCよりも低いと、磁束は、もはや超伝導体から外に又は超伝導体を通して移動することができず、そのようなものとして、超伝導集積回路内にトラップされたままであるため、磁束トラップが発生し得る。トラップ磁束は、超伝導集積回路内のノイズに寄与し得る。更に、トラップ磁束は、超伝導量子干渉デバイス及び他のオンチップデバイスの動作点を移動させ得る。超伝導集積回路内のトラップ磁束を減少させ、及び/又は安全なピン止めサイトに磁束を方向付けることが望ましい場合がある。
【0034】
複雑な問題を解決する十分に多数の動作構成要素を有する量子コンピュータを形成するために、複数の超伝導構成要素を組み合わせて使用する必要がある。超伝導集積回路内の異なる位置に名目上同一のデバイスのグループを実装する際、オンチップ制御アーキテクチャを実装して個々の構成要素を調整する必要がある。例えば、磁気デジタル-アナログ変換器を使用して動作点の個々の変動を補償し得る。しかし、トラップ磁束は、デジタル-アナログ変換器が補償することができるものを超える磁束オフセットを引き起こし得、これによりデバイスを回路内で非機能的な状態にし得る。
【0035】
外部及び/又はオンチップ磁気遮蔽体を使用して、超伝導集積回路の冷却中に背景磁場を減らし得る(例えば、米国特許第8,441,330号を参照されたい)。その結果、超伝導集積回路内にトラップされる利用可能な磁束量が減少する。しかし、幾らかの背景磁場は、通常、残っており(残りの背景磁場は、本出願では残留磁場とも呼ばれる)、超伝導集積回路上の要素は、磁束を生成することができるため、外部及び/又はオンチップ磁気遮蔽体は、集積回路内にトラップされる磁束を十分に防止することができない。従って、得られるトラップ磁束は、超伝導集積回路内のノイズの原因であり得る。更に、トラップ磁束は、幾つかの超伝導デバイスの動作点を移動させ得、問題のある磁束オフセットになり得る。ここで使用されるように、「磁束感受性構成要素」は、トラップ磁束によって生成される超伝導集積回路内のノイズの影響を受ける構成要素及びこれらの構成要素の動作点を移動させるトラップ磁束の影響を受ける構成要素の両方を意味する。
【0036】
従って、超伝導集積回路の磁束感受性構成要素に対する磁束トラップの影響を減少させ、及び/又は防止するための要素を含む超伝導集積回路を設計することは、有益である。保護接地面孔及びモート(細長い孔又は凹部)は、トラップ磁束のための安全なピン止めサイトとしての機能を果たすために超伝導集積回路の設計で使用され得る。例えば、Robertazzi et al. FLUX TRAPPING EXPERIMENTS IN SINGLE FLUX QUANTUM SHIFT REGISTERS, IEEE Trans. On Appl. Supercond., Vol. 7, pp. 3164-3167, June 1997を参照されたい。
【0037】
上述のように、超伝導材料の臨界温度を経て超伝導集積回路の1つ又は複数の構成デバイス、線又は他の構成要素における超伝導材料を冷却するとき、磁束は、超伝導集積回路内にトラップされた状態になり得る。超伝導集積回路内にトラップされた磁束は、例えば、量子アニーリングからの計算結果にエラーを引き起こすノイズの原因であり得る。更に、超伝導集積回路内にトラップされた磁束は、制御デバイスの補償限界を超えてデバイスの動作点を移動させ得、デバイスを動作不可能な状態にし得る。
【0038】
超伝導集積回路を外部磁場から遮蔽することにより、磁束トラップを制限し得る。しかし、残留外部磁場及び超伝導集積回路の構成要素からの誘導磁場は、磁束を依然として生成し得る。磁束は、ノイズ、エラー及び動作不可能構成要素を引き起こし得、特に磁束感受性超伝導デバイスの近くにトラップされた状態になるはずであるか、又はこれらのデバイスの動作点が移動するようにする。
【0039】
本明細書全体にわたり、用語「磁束感受性超伝導デバイス」は、ノイズの影響を受けやすく、ノイズがない動作環境が超伝導集積回路(例えば、量子プロセッサ)の性能に対して非常に望ましい超伝導デバイスを記述するために使用される。更に、「磁束感受性超伝導デバイス」は、トラップ磁束によって超伝導デバイスの動作点が移動される影響を受けやすい超伝導デバイス(例えば、量子ビット)を記述するために使用される。同じデバイスは、ノイズ及びデバイスの動作点の移動の両方の影響を受けやすい場合があることが理解される。磁束感受性デバイスの悪い性能により、量子プロセッサは、問題の不正確な又は次善の解決策、例えば量子アニーリングの不正確な又は次善の結果を生成することになり得る。
【0040】
幾つかの実装形態において、超伝導集積回路は、量子プロセッサを含み、量子プロセッサは、超伝導量子ビットを含む。量子ビットは、磁束感受性デバイスと考えられる超伝導デバイスの例である。超伝導磁束量子ビットに近接する磁束ノイズ及び磁束トラップは、例えば、不正確な又は次善の結果を生成し、及び/又はプログラムされたものと異なる問題の解決策である結果を生成する量子プロセッサの性能を妨げ得る。
【0041】
幾つかの実装形態において、超伝導集積回路は、磁力計を含む。磁力計は、磁束を測定するために使用されるデバイスである。量子プロセッサにおける磁力計を使用して、外部磁場からの残留磁束及び量子プロセッサの構成要素からの誘導磁束を測定し得る。磁力計における磁束ノイズは、量子プロセッサの性能の劣化を殆ど又は全く生じない場合がある。従って、本明細書において、磁力計は、ノイズ又は磁束の影響をあまり受けないか又は影響を受けないと記述されるデバイスの例である。ノイズの影響をあまり受けないか又は影響を受けないと記述されるデバイスの別の例は、デジタル-アナログ変換器(DAC)であり得る。用語「ノイズ感受性」及び「ノイズの影響を受けやすい」は、ノイズ感受性であると記述されない他のデバイスに比べて、デバイス自体がノイズの影響を物理的に多かれ少なかれ受けやすいことを必ずしも示唆するとは限らないことに留意されたい。代わりに、「ノイズ感受性」は、所与のデバイス内の磁束ノイズに対するプロセッサ性能の感受性を意味するために使用される。磁束ノイズに対するプロセッサ性能の感受性は、ノイズの影響をあまり受けないと記述されるデバイスよりもノイズ感受性デバイスで高い。更に、ノイズの影響をあまり受けないデバイスは、トラップ磁束のため、デバイスの動作点の移動の影響もあまり受けない。
【0042】
超伝導集積回路の動作に対するトラップ磁束の影響を減らす1つの手法は、磁束感受性超伝導デバイスから離れて磁束をトラップすることができる位置を与えるように回路を構成することである。これらの位置は、本出願では、トラップ磁束のための安全な(又はより安全な)ピン止めサイトとも呼ばれる。
【0043】
冷却中に磁束感受性超伝導デバイスから離れて磁束を引く超伝導集積回路及びトラップ磁束のための安全なピン止めサイトに磁束のための移動通路を組み込み得る。冷却中に超伝導集積回路を通る磁束の移動通路は、各超伝導層の臨界温度に依存するため、超伝導集積回路を冷却するときに臨界温度の好ましい進行を与える超伝導材料を選択し得る。
【0044】
金属材料を流れる電流は、金属の磁場及び電荷担体(例えば、電子又はクーパー対)の運動エネルギーの両方にエネルギーを貯蔵する。非超伝導金属において、電荷担体は、格子と頻繁に衝突し、ジュール加熱として電荷担体の運動エネルギーを損失する。これは、散乱とも呼ばれ、エネルギーを急速に放出する。超伝導材料において、電荷担体は、散乱による散逸に対して保護されるクーパー対であるため、散乱は、大幅に減少する。これにより、超伝導材料は、運動インダクタンスの形態でエネルギーを貯蔵することができる。この現象により、運動インダクタンスは、超伝導材料内にエネルギーを効率的に貯蔵することができる。運動インダクタンスは、所与の材料の電荷担体の慣性質量によって少なくとも部分的に決まり、担体密度が減少するにつれて増加する。担体密度が減少するにつれて、より少数の担体は、同じ電流を生成するために、比例的に一層速い速度を有する必要がある。所与の領域に対する高運動インダクタンスを有する材料(後述)は、「運動インダクタンス材料」又は「高運動インダクタンス材料」と呼ばれる。
【0045】
運動インダクタンス材料は、高基底状態抵抗及び/又は小さい超伝導エネルギーギャップを有する材料であり、単位面積当たりのより高い運動インダクタンスになる。一般的に、超伝導材料の全インダクタンスLは、L=L
K+L
G(ここで、L
Gは、幾何学的インダクタンスであり、L
Kは、運動インダクタンスである)によって与えられる。略ゼロ温度における超伝導膜の運動インダクタンスは、有効侵入深さλ
effに比例する。特に、所与の厚さtを有する膜の場合、膜の運動インダクタンスは、膜の長さLに対する膜の幅Wの比に比例する(ここで、長さは、電流方向であり、幅は、長さに直交する(幅及び長さの両方は、厚さを測定する寸法に直交することに留意されたい))。即ち、所与の厚さを有する超伝導膜の場合、
【数5】
である。材料の運動インダクタンス比を、
【数6】
として特徴付ける。高運動インダクタンスを有すると考えられる材料は、典型的には、0.1<α≦1の範囲のαを有する。運動インダクタンスとして貯蔵されるエネルギーの10%未満を有する材料は、小さい補正を有する従来の磁気記憶インダクターと考えられる。
【0046】
超伝導集積回路を冷凍機によって冷却し得る。冷凍機は、例えば、希釈冷凍機及び/又は低温冷却器(例えば、本出願でパルス管冷凍機とも呼ばれるパルス管低温冷却器)であり得る。超伝導集積回路を1K未満の温度に冷却し得る。幾つかの実装形態において、超伝導集積回路を20mK未満に冷却する。幾つかの実装形態において、超伝導集積回路及び冷凍機は、超伝導コンピュータの要素である。幾つかの実装形態において、超伝導コンピュータは、超伝導量子コンピュータである。
【0047】
図1は、
図5の方法500によって製造された超伝導集積回路100の実装形態の例の一部の断面図を示す。
図5の方法500の説明については、下記を参照されたい。
【0048】
超伝導集積回路100は、第1のデバイス104を有する第1の金属層102を含み、第1の金属層102は、第1の臨界温度T
C1を有する超伝導材料から形成されている。第1のデバイス104は、上述のように、磁束感受性超伝導デバイスであり得る。例えば、第1のデバイス104は、超伝導集積回路100の一部として形成される量子ビット又は結合器であり得る。
図1に示され、第1のデバイス104として示される配線の一部は、第1のデバイス104の一部のみを形成し、超伝導集積回路100の他の部分で他の構成要素を有し、超伝導集積回路100の他の層にも延在し得ることが理解される。用語「デバイス」は、このように本明細書全体にわたって使用され、デバイスの一部のみが図面に示され得ることが理解される。
図1に示す特定の実装形態において、デバイス104は、量子ビット又は結合器の本体の一部であり得る。
【0049】
磁束トラップ位置(例えば、
図1の実装形態の例における開口106)は、磁束をトラップするために好ましい又は「安全な」位置である超伝導集積回路100内の位置で選択される。好ましい実装形態において、開口106の形態の磁束トラップ位置は、開口部を各超伝導層に設け、全超伝導集積回路を通して開口部を整列又は接続するように、超伝導材料を通して意図的に製造された一連の連続開口部である。開口106を第1のデバイス104から離れて配置する。超伝導集積回路100を冷却するとき、磁束を開口106内に優先的にトラップし、開口106内にトラップされた磁束を第1のデバイス104から分離するように開口106を位置決めする。
【0050】
本明細書において、用語「分離」は、開口内にトラップされた磁束が磁束感受性デバイスに十分な影響を与えて、エラーを引き起こすことを防止する間隔又は構成を意味するように使用される。エラーに対する許容範囲は、磁束感受性デバイスの感度及び超伝導集積回路の構成に左右されることが理解される。そのようなものとして、「分離」は、トラップ磁束と磁束感受性デバイスとの間の結合が回路要素の動作に影響を与えないように十分に小さい間隔又は構成を意味する。
【0051】
幾つかの実装形態において、開口106は、超伝導集積回路100に形成された箱形開口部若しくは凹部又は超伝導集積回路100の一部を介して位置決めされた溝であり得る。幾つかの実装形態において、開口106に大きい表面積を与えるために、螺旋状開口部又は凹部の形態で開口106を与えることは、有益であり得る。
【0052】
図1の実装形態の例は、磁束トラップ位置としての機能を果たす超伝導集積回路100に形成された開口106を示すが、磁束トラップ位置は、磁束感受性がない超伝導集積回路100の構成要素又は領域でもあり得ることが理解される。例えば、磁束トラップ位置は、磁束感受性デバイスから離れて位置決めされた超伝導集積回路100内の接合部又は継ぎ目であり得るか、又は磁束感受性デバイスから離れて配置された超伝導集積回路100の空領域であり得る。開口106の形態の磁束トラップ位置は、好ましくは、全超伝導集積回路を貫通する各超伝導層における一連の整列された開口部である。
【0053】
場合により、磁束トラップ位置を密封するために遮蔽体を設け得る。
図1に示すように、開口106を密封するために遮蔽体108を設け得る。有益には、開口106にトラップされた磁束が、第1のデバイス104に達するように遮蔽体108を貫通しない十分な厚さの超伝導材料の層から遮蔽体108を形成し得る。幾つかの実装形態において、開口106の周りに障壁を設けるために、集積回路100の層を通して形成された複数の超伝導スタッドビアから遮蔽体108を形成し得る。
【0054】
超伝導集積回路100は、第2の臨界温度T
C2を有する超伝導材料から形成された磁束方向付け層110を含む。幾つかの実装形態において、磁束方向付け層110を開口106と磁束伝達連通して位置決めする。本明細書で使用されるように、磁束方向付け層及び磁束トラップ位置が接触していなくてもよく、直接隣接していなくてもよいことが理解されるが、磁束伝達連通は、磁束を磁束方向付け層から磁束トラップ位置に伝達することができる十分な物理的近接及び配置を意味する。
図1の実装形態の例において、磁束方向付け層110は、超伝導集積回路100のベース層である。幾つかの実装形態において、磁束方向付け層110の一部を通して開口106を形成し得る。
【0055】
幾つかの実装形態において、第1の臨界温度TC1及び第2の臨界温度TC2が相対温度差を有するように、第1の金属層102及び磁束方向付け層110の材料を選択する。これらの実装形態において、第1の金属層102及び磁束方向付け層110は、冷却処理(本出願で冷却とも呼ばれる)中に異なる段階でこれらの層の臨界温度に達する。
【0056】
超伝導集積回路100を第1の臨界温度TC1及び第2の臨界温度TC2の両方を下回る温度に冷却するとき、更に後述するように、磁束は、第1のデバイス104から離れて、及び磁束方向付け層110に方向付けられ、磁束方向付け層110は、磁束を開口106内に方向付け、及びトラップする。
【0057】
図1に示す実装形態において、第1の金属層102は、磁束方向付け層110の少なくとも一部の上に重なる。1つの実装形態において、第2の臨界温度T
C2を上回る第1の臨界温度T
C1を用いて相対臨界温度を選択し得る。
【0058】
幾つかの実装形態において、超伝導集積回路100は、第1の金属層104に隣接して位置決めされた第2の金属層112を含む。幾つかの実装形態において、第2の金属層112は、第1のデバイス104を磁場から遮蔽するためにオンチップ遮蔽構造体を設ける。幾つかの実装形態において、オンチップ遮蔽構造体は、オンチップ遮蔽構造体が遮蔽するデバイスの磁束挙動を制御し得る。即ち、オンチップ遮蔽体は、第1のデバイス104が第1のデバイスの臨界温度を経過するとき、第1のデバイス104から離れて磁束を方向付け得、第1のデバイスの臨界温度は、磁束トラップにあまり関連がないようになる。更に、オンチップ遮蔽体を
図1の実装形態の例で設けているが、図示のようにオンチップ遮蔽体を設ける必要がないことが理解される。第1の配線層102は、磁束方向付け構造体を含み得るか、又は第1のデバイス104の性質は、第1のデバイス104が、第2の金属層112の支援なしで磁束方向付け層110によって制御されるように磁束を方向付けることができるような性質であり得る。
【0059】
オンチップ遮蔽、例えば磁束感受性超伝導デバイスに近い超伝導金属の層によって行われる遮蔽は、米国特許第7,687,938号及び米国特許第8,247,799号に更に記載されている。
【0060】
第3の臨界温度TC3を有する超伝導材料から第2の金属層112を形成し得る。磁束を第1のデバイス104から離れて方向付け、磁束方向付け層110に方向付けるように、第2の臨界温度TC2と第3の臨界温度TC3との間の相対温度差を選択し得る。
【0061】
1つ又は複数の追加の金属層(例えば、金属層114、116及び118)が超伝導集積回路100に含まれ得、それぞれの追加の金属層は、磁束方向付け層110の少なくとも一部の上に重なり、それぞれの追加の金属層(例えば、各金属層114、116、118)の臨界温度は、第2の臨界温度TC2を上回る。更に、追加の金属層114、116及び118は、磁束感受性超伝導デバイスを含み得る。
【0062】
幾つかの実装形態において、超伝導集積回路100で下層から上層(即ち本出願で磁束方向付け層110とも呼ばれるベース層から最上金属層114)まで層ごとに漸次的に増加するように臨界温度を選択し得る。
【0063】
図1に示す実装形態において、最高臨界温度を有し、最初に超伝導に転移する追加の金属層114でまず冷却処理が開始し、磁束を開口106及び下金属層(例えば、第1の金属層102)に押し込むように各臨界温度を選択し得る。転移への次の層は、第1の金属層102であり、次に遮蔽層112、追加の層116及び118であり、最後に磁束方向付け層110としての機能も果たすベース層110である。
【0064】
磁束方向付け層110は、磁束方向付け層110に下方へ連続的に押し込まれている残りの磁束を、磁束を第1のデバイス104から分離する開口106に方向付ける。上述のように、開口106は、磁束を第1のデバイス104から分離し、遮蔽体108を有することもできる磁束方向付け層110における位置であり得る。
【0065】
幾つかの実装形態において、超伝導集積回路100を単一超伝導材料(幾つかの実装形態において、例えばニオブ又はアルミニウムであり得る)から形成する。単一超伝導材料の異なる層は、超伝導集積回路100の形成中、例えば超伝導集積回路100を形成する際に複数の堆積段階中に処理した結果として、異なる臨界温度を有し得る。臨界温度のこの変化の1つの原因は、例えば、ニオブの臨界温度を下げる効果を有し得る処理中の酸化である。
【0066】
図1は、基板層120の上に形成された超伝導集積回路100を有する。超伝導集積回路100を他の構造体(例えば、他の配線層及び/又は誘電体層)の上にも置き得ることが理解される。幾つかの実装形態において、基板120をシリコン又はサファイアで形成し得る。
【0067】
更に、
図1は、誘電材料122で囲まれた超伝導集積回路100の構成要素を有する。誘電材料は、例えば、SiO
2、SiN又は当技術分野で知られているような任意の他の適切な誘電材料であり得る。
【0068】
超伝導集積回路における異なる配線層が、冷却する場合に各臨界温度を経過する順序は、トラップ磁束の位置に影響を与え得る。幾つかの実装形態において、有益には、超伝導集積回路内の配線層臨界温度の好ましい配置は、磁束感受性超伝導デバイスの近くでより少ない磁束をトラップすることになる。
【0069】
図1に示す実装形態の例において、磁束移動の一般的なパターンを層114、112及び110によって駆動する。冷却の第1の段階において、層114(
図1に示す層の最高臨界温度を有する)は、磁束を追い出す第1の層である。冷却の第2の段階において、遮蔽層112は、磁束を追い出す次の層である。遮蔽層112は、第1のデバイス104から離れて磁束を移動させ、超伝導集積回路、例えば層114と層112との間の壁(例えば、壁108)に磁束を通す。冷却の最後の段階において、磁束方向付け層110は、第1のデバイス104及び他の磁束感受性超伝導デバイスから離れて磁束をトラップする超伝導集積回路100における磁束トラップ位置に磁束を押し込む。これらの位置は、磁束感受性がない他のデバイス(例えば、デジタル-アナログ変換器(DAC)及び/又は磁力計)の近くであり得る。これらの位置は、好ましくは、開口106であり得る。
【0070】
図1に示す設計の代替の実装形態において、T
C2が、超伝導集積回路100に認められる他の臨界温度、特にT
C1を上回るように層の臨界温度を配置し得る。この実装形態において、磁束方向付け層110は、第1の金属層102の前に超伝導状態に転移する。磁束方向付け層は、磁束を開口106に方向付け、磁束感知デバイス104から離れて磁束を移動させる。残りの層が超伝導状態に転移するとき、磁束を開口106に方向付ける。この実装形態において、磁束感知デバイス104を含まない層が最初に超伝導状態になることができると、磁束方向付け層は、磁束トラップ挙動を制御することができ、感知デバイスを含む層が超伝導状態になる前に、これらの感知デバイスから離れて磁束を移動させることができる。一般的に、磁束感知デバイスを含む任意の層が、設けられた磁束方向付け層の臨界温度を下回るT
Cを有する場合、同様の回路を設計し得る。これにより、磁束感知デバイスを含む層は、磁束方向付け層による磁束の方向のために、磁束が既にない環境で層の臨界温度を経過することができる。
【0071】
図2Aは、
図5の方法500の代替の実装形態によって製造された
図1の超伝導集積回路100の一部の断面図を示す。
【0072】
超伝導集積回路200は、第1のデバイス204を有する第1の金属層202を含み、第1の金属層202は、第1の臨界温度TC1を有する超伝導材料から形成されている。第1のデバイス204は、上述のように、磁束感受性超伝導デバイスであり得る。例えば、第1のデバイス204は、超伝導集積回路200の一部として形成される量子ビット又は結合器であり得る。
【0073】
第2の臨界温度T
C2を有する超伝導材料から形成された磁束方向付け層210を集積回路200に設ける。
図2Aの実装形態において、磁束方向付け層210は、超伝導集積回路200の上層である。開口206の少なくとも一部の上に重なる磁束トラップ構造体224を磁束方向付け層210に設ける。
【0074】
図2の実装形態の例において、磁束トラップ構造体224は、磁束方向付け層210に設けられた一連のモートである。好ましくは、モートは、磁束方向付け層210に形成された単一捻転又は回旋(例えば、蛇行)モートとして形成される。モートを超伝導金属層に小さい間隙又は切り込みによって設け得、磁束をトラップするために使用し得る。
【0075】
開口206内にトラップされた磁束を第1のデバイス204から分離するように、第1のデバイス204から離れて配置された集積回路200内の位置として開口206を選択する。超伝導集積回路200を冷却するとき、開口206の上に重なり、開口206に磁束を方向付けるように、磁束トラップ構造体224を配置する。幾つかの実装形態において、開口206は、超伝導集積回路200に形成された箱、平行管、溝又は螺旋の形態であり得る。
【0076】
磁束方向付け層210は、第1の金属層202の少なくとも一部の上に重なり、第1の金属層202に隣接して位置決めされた第2の金属層212を超伝導集積回路200に設け、第2の金属層212は、第1のデバイス204を遮蔽するオンチップ遮蔽体としての機能を果たす。遮蔽層212は、第1のデバイス204に影響を与える磁束挙動を少なくとも部分的に制御し得る。磁束方向付け層210の臨界温度を上回る臨界温度TC3を有する超伝導材料から第2の金属層212を形成し得る。超伝導集積回路200の冷却中、第2の金属層212は、第1のデバイス204から離れて磁束を方向付け、磁束方向付け層210に磁束を方向付ける。磁束方向付け層の臨界温度TC2を経て磁束方向付け層210を冷却するとき、磁束トラップ構造体224は、開口206内に磁束をトラップする役割を果たし得る。
【0077】
ベース金属層214を超伝導集積回路200に含み得、ベース金属層214は、磁束方向付け層210の臨界温度TC2を上回り、第2の金属層212の臨界温度TC3を下回る臨界温度TC4を有し得る。この実装形態において、超伝導集積回路200を冷却するとき、最初に磁束を第2の金属層212から押し出し得る。その後、磁束をベース金属層214に押し込み、最後に磁束方向付け層210に押し込み得る。この実装形態において、臨界温度の関係は、TC3>TC4>TC2である。
【0078】
臨界温度間の所望の関係(例えば、上述の関係)を生成するように、超伝導集積回路200の超伝導材料を選択し得る。異なる材料を使用して、超伝導集積回路200の超伝導部分を形成し得る。例えば、米国仮特許出願第62/760,253号に記載のようなハイブリッドスタック手法を使用し得る。
【0079】
1つの実装形態において、約9.3Kの臨界温度を有するニオブから超伝導集積回路200の下層214、216及び218を形成し得る。約1.2Kの臨界温度を有するアルミニウムから上層210及び202を形成し得る。
【0080】
層212がベース層214の前に超伝導状態になることを保証するために、より低い臨界温度のニオブからベース層214を形成し得る。これは、例えば、超伝導集積回路200の形成中にニオブの意図的な酸化によって達成され得る。
【0081】
図2Aに示す実装形態の例を修正して、異なる層の上に異なる多くの材料を含み得ることが理解される。1つの実装形態において、3つの異なる材料を使用して超伝導集積回路200を形成し得る。別の実装形態において、超伝導集積回路200の1つ又は複数の層は、磁束をトラップしやすい位置の制御を可能にする運動インダクタンスを有するように選択され得、及び/又は周囲構造に対する結合を減らし得る。幾つかの実装形態において、1つ又は複数の層は、より詳細に後述されるように、高運動インダクタンス材料であり得る。
【0082】
第1のデバイス204から磁束トラップ位置(例えば、開口206)を分離するために遮蔽体208を設け得る。有益には、開口206にトラップされた磁束が、第1のデバイス204に達するように遮蔽体208を貫通しない十分な厚さを有する超伝導材料の層から遮蔽体208を形成し得る。幾つかの実装形態において、開口206の周りに障壁を設けるために、集積回路200の様々な層を通して形成された複数の超伝導スタッドビアから遮蔽体208を形成し得る。
【0083】
図2Aを参照すると、幾つかの実装形態において、開口206は、磁束感受性超伝導デバイスでない第2のデバイス226を含み得る。これは、超伝導集積回路100の回路密度を増加するのに有益である。第2のデバイス226は、例えば、デジタル-アナログ変換器(DAC)螺旋又は磁力計であり得る。
【0084】
図2Aは、基板層220の上に形成された超伝導集積回路200を有する。超伝導集積回路200を他の構造体(例えば、他の配線層及び/又は誘電体層)の上にも置き得ることが理解される。幾つかの実装形態において、基板220をシリコン又はサファイアで形成し得る。
【0085】
更に、
図2Aは、誘電材料222で囲まれた超伝導集積回路200の構成要素を有する。誘電材料は、例えば、SiO
2又は当技術分野で知られているような任意の他の適切な誘電材料であり得る。
【0086】
幾つかの実装形態(例えば、
図2Aに示す実装形態)において、磁束トラップを設計によって制御し得る。特に、磁束トラップ機構は、冷却中に臨界温度を下げる順序に依拠し得、遮蔽層212は、1番目に超伝導状態になり、ベース層214は、2番目に超伝導状態になり、上層210は、3番目に超伝導状態になる(T
C3>T
C4>T
C2)。
【0087】
幾つかの実装形態において、任意の磁束感受性超伝導デバイス(例えば、量子ビット又は結合器)の下に接地面を形成するために、遮蔽層212を連続層として形成することは、有益であり得る。次に、遮蔽層212は、臨界温度TC3を経過し、超伝導状態になり、超伝導集積回路200の遮蔽層212における孔(例えば、開口206)に磁束を追い出す。次に、ベース層214は、ベース層の臨界温度を経て転移し、遮蔽層212における孔内に磁束をトラップする。
【0088】
次に、磁束方向付け層210としての機能を果たす上層210は、上層の臨界温度T
C2を経て転移し、開口206内にトラップされた磁束は、磁束トラップ構造体224内に拘束された状態になる。幾つかの実装形態において、磁束トラップ構造体224は、少なくとも1つのモートを含む。
図2Aに示すように、開口206内に任意選択的な非磁束感受性デバイス226を有することができる。
図2Aに示す実装形態において、臨界温度の階層は、ベース層214の臨界温度を上回る遮蔽層212の臨界温度及び磁束方向付け層210の臨界温度を上回るベース層214の臨界温度を有する(T
C3>T
C4>T
C2)。
【0089】
幾つかの実装形態(例えば、
図2Bに示す実装形態)において、
図1の超伝導集積回路100の製造への第2の材料(例えば、アルミニウム)の導入は、磁束トラップ層210に存在する磁束トラップ構造体224の有無にかかわらず、より好ましい磁束トラップ機構を提供することができる。
【0090】
T1からT2への超伝導集積回路200の冷却中、遮蔽層212は、臨界温度TC3を経過し、最初に超伝導状態になり、第1のデバイス204の下の遮蔽体及び存在し得る他の磁束感受性超伝導デバイスから磁束を追い出す。これにより、磁束を領域(DAC板又は超伝導集積回路200に設計された他の磁束トラップ位置)に追い出すことができる。開口206を設けることにより、磁束を優先的に開口206に追い出し、開口206内にトラップする。
【0091】
これらの層を冷却した後、低臨界温度材料(例えば、アルミニウム層)は、層の臨界温度を経過し、遮蔽層212と磁束トラップ層210との間の壁の隙間に磁束がトラップされた状態になることができる。これにより、超伝導集積回路200における磁束感受性超伝導デバイスから離れて磁束を移動させる、
図1における実装形態に対して記載された構成と同様のトラップ磁束構成を提供することができる。同様のハイブリッド材料回路の場合、下層214の臨界温度を上回る臨界温度を遮蔽層212が有することを保証するのに十分である場合がある。有益には、磁束をこれらの層から追い出すとき、磁束を収容する位置に開口206を設ける。
【0092】
幾つかの実装形態において、かなり高い臨界温度を有する個別超伝導層(本出願でスカイ遮蔽体と呼ばれる)を磁束方向付け層として超伝導集積回路に導入し得る。
図3A及び
図3Bは、
図5の方法500の代替の実装形態によって製造された超伝導集積回路300a及び300bの一部の断面図を示す。
【0093】
図3Aを参照すると、超伝導集積回路300aは、第1のデバイス304を有する第1の金属層302を含み、第1の金属層302は、第1の臨界温度を有する超伝導材料から形成されている。第1のデバイス304は、上述のように、磁束感受性超伝導デバイスであり得る。例えば、第1のデバイス304は、超伝導集積回路300aの一部として形成される量子ビット又は結合器であり得る。
【0094】
第2の臨界温度TC2を有する超伝導材料から形成された磁束方向付け層310を集積回路300aに設ける。磁束方向付け層310は、超伝導集積回路300a及び300bの上層である。有益には、磁束方向付け層310を、少なくとも第1の金属層302及び磁束感受性超伝導デバイスを含む他の層の上に重なって置き得る。開口306の少なくとも一部の上に重なる磁束トラップ構造体324(例えば、上述のようなモート)を磁束方向付け層310に設ける。超伝導集積回路300aを冷却するとき、開口306の上に重なり、開口306に磁束を方向付けるように磁束トラップ構造体324を位置決めし得る。開口306内にトラップされた磁束を第1のデバイス304から分離する。
【0095】
幾つかの実装形態において、開口306は、超伝導集積回路300aに形成された箱、平行管、溝又は螺旋の形態であり得る。磁束方向付け層310は、第1の金属層302の少なくとも一部の上に重なる。超伝導集積回路300は、第1の金属層302に隣接して位置決めされた第2の金属層312を含み、第2の金属層312は、上述のように、第1のデバイス304を遮蔽するオンチップ遮蔽体としての機能を果たし、第1のデバイス304に影響を与え得る磁束挙動を制御する。
【0096】
幾つかの実装形態において、磁束方向付け層310は、超伝導集積回路300a全体にわたって置かれ、超伝導集積回路300aを形成する他の超伝導材料よりもかなり高い臨界温度を有する材料から形成されたスカイ遮蔽体である。例えば、約15Kの臨界温度を有するNb3Snから磁束方向付け層310を形成し得る。他の実装形態において、より詳細に後述されるように、より高い臨界温度を有する高運動インダクタンス材料から磁束方向付け層310を形成し得る。この場合、磁束トラップ構造体324(例えば、モートであり得る)を磁束方向付け層310にパターン化して、超伝導集積回路300aに見られる磁束を開口306に包囲し得る。超伝導集積回路300aのより低い層が、層の臨界温度(TC1、TC3)を経過して冷却され、超伝導状態になる前に、開口306への磁束の包囲が行われ得る。これにより、残りの層は、磁束がない環境で層の臨界温度を経過することができる。
【0097】
磁束方向付け層310が磁束方向付け層の臨界温度を経過し、磁束トラップ構造体324に磁束を追い出すと、超伝導集積回路300aの残りの層の臨界温度順序とは無関係に、上配線層326に残っている任意の磁束を、上配線層326にも形成されたモート328に導く可能性が高い。超伝導集積回路300aの他の配線層よりもかなり高い臨界温度を有する個別磁束方向付け層を使用すると、超伝導集積回路300aのより低い層の冷却中に磁束トラップを防止する役割を果たすことができる。
【0098】
幾つかの実装形態において、超伝導集積回路300aの様々な層の臨界温度は、磁束トラップのパターンにあまり影響を与えないことがあるが、超伝導集積回路300aの製造は、上述のようなハイブリッドスタック手法を含む。上述のように、第1のデバイス304から離れて磁束を方向付ける第2の金属層312を超伝導集積回路300aに設け得る。ベース金属層314は、第2の金属層312と同じ材料から形成され得るか、又はより低い臨界温度を有するように製造され得る。
【0099】
磁束トラップ構造体324の下の部位を密封するために遮蔽体308を設け得る。開口306にトラップされた磁束が、第1のデバイス304に達するように遮蔽体308を貫通しないように遮蔽体308を配置し得る。幾つかの実装形態において、開口306の周りに障壁を設けるために、集積回路300の層を通して形成された複数の超伝導スタッドビアから遮蔽体308を形成し得る。幾つかの実装形態において、スタッドビアを形成するように選択された超伝導材料のロンドンの侵入深さよりも少なくとも3倍厚い複数の超伝導スタッドビアとして遮蔽体308を形成することは、有益である。
【0100】
開口306は、磁束感受性超伝導デバイスでない第2のデバイス330を含み得る。幾つかの実装形態において、開口306を空の状態にしておくことが有益であるが、これは、超伝導集積回路300aの回路密度を増加するのに有益である。第2のデバイス330は、例えば、デジタル-アナログ変換器(DAC)螺旋又は磁力計であり得る。
【0101】
図3Aは、基板層320の上に形成された超伝導集積回路300aを有する。超伝導集積回路300aを他の構造体(例えば、他の配線層及び/又は誘電体層)の上にも置き得ることが理解される。幾つかの実装形態において、基板320をシリコン又はサファイアで形成し得る。更に、
図3Aは、誘電材料322で囲まれた超伝導集積回路300aの構成要素を有する。誘電材料は、例えば、SiO
2又は当技術分野で知られているような任意の他の適切な誘電材料であり得る。
【0102】
図3Bに示す実装形態において、超伝導集積回路300bは、磁束方向付け層310と上配線層326との間の間隔を除いて、
図3Aの超伝導集積回路300aと同じ構造である(T
C2>T
C3、T
C1)。磁束方向付け層310及び上配線層326が互いに離れて配置されている場合、誘電材料322の層を層間に設け得る。幾つかの実装形態において、量子ビット及び結合器の静電容量を増加することができる量を最小化するか又は少なくとも減少させるのに十分な厚さを有する誘電体の層を設けることにより、超伝導集積回路300bの他の要素から磁束方向付け層310を分離することは、有益である。幾つかの実装形態において、個別磁束方向付け層310と超伝導集積回路300bの残りの最上金属層との間の層間誘電体の厚さは、磁束トラップ構造体324の幅に比例し得る。磁束トラップ構造体324がモートの形態をとる実装形態において、誘電体の厚さは、1/w
3(ここで、wは、磁束方向付け層におけるモートの幅である)に比例し得る。所要の厚さは、回路を形成するために使用される材料、層に形成されるデバイスのタイプ及び回路内の磁束の量にも左右され得ることが理解される。
【0103】
上述の様々な実装形態において、磁束トラップ位置を含むように超伝導集積回路の製造の方法により、磁束トラップを最小化するか又は少なくとも減少させ、及び制御する。転移温度の階層を有する材料を用いて超伝導集積回路を製造し、トラップ磁束の影響をあまり受けない超伝導集積回路の領域に磁束を方向付けることにより、超伝導集積回路における磁束トラップを最小化するか又は少なくとも減少させ得る。
【0104】
超伝導集積回路における各層の臨界温度を材料選択又は材料に適用される処理によって制御し得る。材料に適用される処理は、製造中に超伝導集積回路の後の加工から生じる処理を含み得る。
【0105】
ニオブ層の臨界温度に影響を与えることが分かっている処理の1つの例は、超伝導集積回路の製造中に行われ得る酸化である。酸化を使用して、超伝導集積回路における金属層の臨界温度、これにより磁束トラップのパターンに影響を与え得る。特定の構造体(例えば、1つのモート又は複数のモート)を設け得、例えば単一捻転モート構造体により、又は超伝導体のストリップ間の間隙を狭くするか又は超伝導体に形成された切り込みを狭くすることにより、特定の構造体を設け得る。超伝導集積回路の磁束感受性超伝導デバイスにおいてエラーを引き起こさないか又はエラーを引き起こすことが少ない位置で磁束をトラップするためにモートを使用し得る。
【0106】
材料選択の1つの例は、高運動インダクタンス超伝導材料の選択を含む。高運動インダクタンスを有する超伝導材料は、高い臨界温度(TC)を有し得る。高運動インダクタンス材料に貯蔵されているエネルギーの少なくとも10%を運動インダクタンスとして貯蔵する材料又は高運動インダクタンス材料の運動インダクタンス比が0.1<α≦1である材料として高運動インダクタンス材料を定義し得る。幾つかの実装形態において、高運動インダクタンス材料は、WSi、MoN、NbN、NbTiN、TiN及び粒状アルミニウムの1つであり得る。
【0107】
図4は、デジタルコンピュータ402を含む計算システム400を例示する。デジタルコンピュータ402の例は、古典的デジタル処理タスクを実行するために使用可能な1つ又は複数のデジタルプロセッサ406を含む。デジタルコンピュータ402は、少なくとも1つのシステムメモリ422及びシステムメモリ422を含む様々なシステム構成要素をデジタルプロセッサ406に結合する少なくとも1つのシステムバス420を更に含み得る。システムメモリ422は、モジュール424のセットを記憶し得る。
【0108】
デジタルプロセッサ406は、任意の論理処理ユニット又は回路(例えば、集積回路)、例えば1つ又は複数の中央処理装置(「CPU」)、グラフィックス処理ユニット(「GPU」)、デジタル信号プロセッサ(「DSP」)、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、プログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)、プログラマブル論理制御器(「PLC」)など、及び/又はこれらの組み合わせであり得る。
【0109】
幾つかの実装形態において、計算システム400は、1つ又は複数の量子プロセッサ426を含むことができるアナログコンピュータ404を含む。量子プロセッサ426は、磁束感受性超伝導デバイスを含み、冷却中に磁束を有利にトラップする本出願に記載のシステム及び方法を用いて製造されている少なくとも1つの超伝導集積回路であり得る。量子プロセッサ426は、より詳細にここに記載のような方法を用いて製造された少なくとも1つの集積回路を含み得る。デジタルコンピュータ402は、例えば、制御器418を介してアナログコンピュータ404と通信し得る。より詳細に本明細書に記載のように、特定の計算をデジタルコンピュータ402の命令でアナログコンピュータ404によって実行し得る。
【0110】
デジタルコンピュータ402は、ユーザ入出力サブシステム408を含み得る。幾つかの実装形態において、ユーザ入出力サブシステムは、1つ又は複数のユーザ入出力構成要素(例えば、ディスプレイ410、マウス412及び/又はキーボード414)を含む。
【0111】
システムバス420は、メモリ制御器を有するメモリバス、周辺バス及びローカルバスを含む任意の既知のバス構造又はアーキテクチャを使用し得る。システムメモリ422は、不揮発性メモリ(例えば、読み出し専用メモリ(「ROM」)、スタティックランダムアクセスメモリ(「SRAM」)、フラッシュNAND)及び揮発性メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(「RAM」))(図示せず)を含み得る。
【0112】
更に、デジタルコンピュータ402は、他の持続性コンピュータ又はプロセッサ可読記憶媒体又は不揮発性メモリ416を含み得る。不揮発性メモリ416は、ハードディスク(例えば、磁気ディスク)に読み書きするハードディスクドライブ、取り外し可能光ディスクに読み書きする光ディスクドライブ及び/又はソリッドステート媒体(例えば、NANDベースのフラッシュメモリ)に読み書きするソリッドステートドライブ(SSD)を含む様々な形態をとり得る。不揮発性メモリ416は、システムバス420を介してデジタルプロセッサと通信し得、システムバス420に結合された適切なインターフェース又は制御器418を含み得る。不揮発性メモリ416は、プロセッサ又はコンピュータ可読命令、データ構造又はデジタルコンピュータ402のための他のデータ(プログラムモジュールとも呼ばれ得る)のための長期記憶装置としての機能を果たし得る。
【0113】
デジタルコンピュータ402は、ハードディスク、光ディスク及び/又はソリッドステート記憶媒体を使用するとして説明されているが、当業者は、他のタイプの持続性及び不揮発性コンピュータ可読媒体を使用できることが分かる。当業者は、幾つかのコンピュータアーキテクチャが持続性揮発性メモリ及び持続性不揮発性メモリを使用することが分かる。例えば、揮発性メモリにおけるデータを不揮発性メモリにキャッシュし得る。又は、ソリッドステートディスクは、集積回路を使用して不揮発性メモリを提供する。
【0114】
様々なプロセッサ又はコンピュータ可読命令、データ構造又は他のデータをシステムメモリ422に記憶し得る。例えば、システムメモリ422は、遠隔クライアントと通信し、デジタルコンピュータ402及びアナログコンピュータ404上の資源を含む資源の使用をスケジュールする命令を記憶し得る。更に、例えば、システムメモリ422は、少なくとも1つのプロセッサによって実行される場合、命令を実行する様々なアルゴリズムを少なくとも1つのプロセッサに実行させるプロセッサ実行可能命令又はデータの少なくとも1つを記憶し得る。幾つかの実装形態において、システムメモリ422は、アナログコンピュータ404に対する前処理、共処理及び後処理を実行するプロセッサ又はコンピュータ可読計算命令及び/又はデータを記憶し得る。システムメモリ422は、アナログコンピュータ404と対話するアナログコンピュータインターフェース命令のセットを記憶し得る。
【0115】
アナログコンピュータ404は、少なくとも1つのアナログプロセッサ(例えば、量子プロセッサ426)を含み得る。分離環境(例えば、熱、磁場及び他の外部ノイズから量子コンピュータの内部構成要素を遮蔽する分離環境)にアナログコンピュータ404を設け得る。分離環境は、アナログプロセッサを例えば約1K未満の温度に低温冷却するように動作可能な冷凍機(例えば、希釈冷凍機)を含み得る。
【0116】
アナログコンピュータ404は、プログラマブル要素(例えば、量子ビット、結合器及び他のデバイス)を含み得る。読み出しシステム428を介して量子ビットを読み出し得る。読み出し結果をデジタルコンピュータ402の他のコンピュータ又はプロセッサ可読命令に送信し得る。量子ビット制御システム430を介して量子ビットを制御し得る。量子ビット制御システム430は、目標デバイスにバイアスをかけるように動作可能なオンチップDAC及びアナログ線を含み得る。結合器制御システム432を介して、量子ビットを結合する結合器を制御し得る。結合器制御システム432は、同調要素(例えば、オンチップDAC及びアナログ線)を含み得る。量子ビット制御システム430及び結合器制御システム432を使用して、本明細書に記載のような量子アニーリングスケジュールをアナログコンピュータ404で実施し得る。プログラマブル要素を集積回路の形態で量子プロセッサ426に含み得る。第1の材料を含む集積回路の層に量子ビット及び結合器を位置決めし得る。第2の材料を含む集積回路の他の層に他のデバイス(例えば、読み出し制御システム432)を位置決めし得る。
【0117】
図5は、本システム及び方法による、磁束トラップを軽減することを含む超伝導集積回路の一部を製造する方法500を例示するフローチャートである。他の実装形態において、特定の動作を省略し、追加の動作を追加し、及び/又は動作を異なる順序で実行することができるが、方法500は、動作502~506を含む。方法500は、例えば、製造処理の開始に応じて集積回路製造装置によって実行され得る。
【0118】
動作502では、第1の金属層は、第1の臨界温度TC1を有する第1の超伝導材料を用いて超伝導集積回路内に形成される。第1のデバイスを第1の金属層内に形成する。第1のデバイスは、磁束感受性超伝導デバイス(例えば、量子ビット又は結合器)であり得る。
【0119】
第2の金属層は、第1の金属層に隣接して形成され得、第2の金属層は、第1の金属層における第1のデバイスを遮蔽し、第1の金属層の磁束トラップ挙動を少なくとも部分的に制御する遮蔽構造体を有する。第1の金属層と同じ材料又は第3の臨界温度TC3を有する異なる材料から第2の金属層を形成し得る。
【0120】
動作504では、磁束方向付け層は、第2の臨界温度TC2を有する超伝導材料を用いて形成される。冷却中に好ましい磁束トラップ挙動を与えるように磁束方向付け層の材料を選択し得る。
【0121】
動作506では、磁束トラップ開口を磁束トラップ位置に形成し得る。幾つかの実装形態において、磁束トラップ開口は、遮蔽壁を有する平行管開口部又は溝であり得る。磁束方向付け層を開口位置と磁束伝達連通して位置決めし、開口位置は、トラップ磁束を第1のデバイスから分離することができる位置に第1のデバイスから離れて配置されている。本明細書で使用されるように、磁束方向付け層及び磁束トラップ位置が接触していなくてもよく、相互に直接隣接していなくてもよいことが理解されるが、磁束伝達連通は、磁束を磁束方向付け層から磁束トラップ位置に伝達することができる十分な物理的近接及び配置を意味する。開口位置を磁束方向付け層の一部の内部又は超伝導集積回路の個別構成要素に形成し得る。開口位置の少なくとも一部の上に重なる磁束トラップ構造体(例えば、1つ又は複数のモート)を磁束方向付け層に形成し得る。
【0122】
上述の502及び504を実行する際、第1の臨界温度及び第2の臨界温度の両方を超える第1の温度(T1>TC1、TC2)から、第1の臨界温度及び第2の臨界温度の両方を下回る第2の温度(T2<TC1、TC2)に(例えば、低温冷凍機によって)超伝導集積回路を冷却するとき、第1の臨界温度と第2の臨界温度との間の相対温度差は、磁束方向付け層が第1のデバイスから離れて磁束を方向付け、超伝導集積回路を冷却するとき、磁束トラップ位置に磁束をトラップするように第1の超伝導材料及び第2の超伝導材料を選択する。
【0123】
遮蔽層を設ける場合、第2の臨界温度と第3の臨界温度との間の相対温度差を第2の超伝導材料に与えて、第1のデバイスから離れて磁束を方向付け、磁束方向付け層、これにより磁束トラップ位置に磁束を方向付け得る。
【0124】
上述のように、超伝導集積回路の構造に応じて、第1の金属層が最初に第1の金属層の臨界温度を経て冷却するか、又は磁束方向付け層が最初に磁束方向付け層の臨界温度を経て冷却することは、有益であり得る。
【0125】
磁束方向付け層が集積回路構造体の一部である場合、冷却中に最後に転移するように、磁束方向付け層が超伝導集積回路内で最低臨界温度を有するようにすることは、有益であり得る。第1の金属層は、磁束方向付け層の一部の上に重なり得るか、又は磁束方向付け層は、第1の金属層の上に重なり得る。
【0126】
磁束方向付け層を第1の金属層の上に個別遮蔽構造体として設ける場合、冷却中に最初に転移するように、磁束方向付け層が超伝導集積回路内で最高臨界温度を有するようにすることは、有益であり得る。
【0127】
幾つかの実装形態において、磁束感受性デバイスを含まない層が最初に転移するようにし、磁束方向付け層としての機能を果たし、磁束を含む安全開口に磁束を方向付けることは、有益であり得る。これにより、磁束感受性デバイスを含む層は、磁束がない環境で転移することができる。
【0128】
超伝導集積回路を形成することは、磁束方向付け層の上に重なるか又は磁束方向付け層の下に重なる1つ又は複数の追加の超伝導金属層を設けることを更に含み得る。幾つかの実装形態において、超伝導金属層は、上層から下層に減少する臨界温度値を有し得、磁束方向付け層は、下層であり得、基板に隣接し得る。
【0129】
磁束トラップ位置を密封するために遮蔽体を形成し得、超伝導集積回路内に堆積された複数の超伝導スタッドビアによって遮蔽体を形成し得る。磁束トラップ位置は、開口位置における超伝導集積回路内に箱形又は平行管形空洞又は溝を形成することによって生成可能な開口であり得る。第2のデバイス(例えば、DAC、磁力計)又はあまり磁束感受性がない他のデバイスを含む位置であるように開口位置を選択し得る。
【0130】
図6の実装形態の例において、超伝導集積回路600は、1つ又は複数の磁束感受性超伝導デバイス602及び磁束方向付け層604を有する。上述のように、磁束をトラップする好ましい場所としての機能を果たす非超伝導部位606(ここではモートと呼ばれる)を超伝導集積回路、特に磁束方向付け層604に設け得る。上述のように、磁束感受性がないデバイス(例えば、デジタル-アナログ変換器(DAC)及び/又は磁力計)の近くにモートを置き得るか、又はモート606にトラップされた磁束に対する任意の結合が磁束感受性デバイス602の動作に影響を与えないように十分に弱い任意の磁束感受性要素から十分に遠い部位(例えば、
図6における部位608)にモートを置き得る。磁束感受性デバイス602から離れて十分な磁束を保証するために、任意の数のモート606を回路に含み得ることが理解される。
【0131】
幾つかの実装形態において、磁束感受性デバイスの動作がトラップ磁束に対する結合によって悪影響を受けることを防止するために、モートを磁束感受性デバイスから十分に離れて配置する必要があるため、超伝導材料におけるモートの追加により、構成要素の回路密度を減少させ得る。高運動インダクタンス材料にトラップされた磁束は、周囲構造に対するより小さい結合を有し得、従って磁束感受性デバイスに悪影響を与えずに磁束感受性デバイスのより近くに置かれ得る。上述のように、エネルギーの少なくとも10%を運動インダクタンスとして貯蔵する材料又は運動インダクタンス比が0.1<α≦1である材料として高運動インダクタンス材料を定義し得る。フラクソイド量子化条件を以下の式によって与える。
(Lk+Lg)Is-Φa=nΦ0
【0132】
ここで、Lkは、モート材料の運動インダクタンスであり、Lgは、モート材料の幾何学的インダクタンスであり、Isは、遮蔽電流であり、Φaは、外部磁束(磁束感受性デバイスに加えられる可能性がある)であり、nは、整数であり、Φ0は、磁束量子である。n、Φa及びLgの同じ値の場合、より高い運動インダクタンス材料に形成されたモートは、より小さい遮蔽電流を有する。このより小さい遮蔽電流は、周囲構造に対するより小さい磁束結合になり得る。
【0133】
上述のような高運動インダクタンス材料は、超伝導集積回路600で超伝導デバイスのために使用される超伝導材料(例えば、Nb又はAl)を上回る臨界温度を有し得る。幾つかの実装形態において、磁束方向付け層604は、高運動インダクタンス材料で形成され、超伝導集積回路600の他の層の全部の前に磁束方向付け層のTCを経過し、磁束感受性デバイス602の動作に影響を与えないように磁束感受性デバイス602から十分に遠い部位608に周囲磁束をトラップするように磁束をモート(又は複数のモート)606に方向付ける。
【0134】
図7A、
図7B及び
図7Cは、それぞれ同じ番号が同様の構成要素を示す超伝導集積回路700a、700b、700cの一部の断面図である。超伝導集積回路700a、700b及び700cは、異なる層に位置決めされた第1及び第2の磁束感受性デバイス702を有する。図示のように、磁束感受性デバイス702は、量子ビット又は結合器のための配線の一部を形成することができる3層ジョセフソン接合部である。任意の磁束感受性デバイスを含み得ることが理解される。超伝導集積回路700aは、接地面の形態で磁束方向付け層704を有する一方、回路700bは、スタック内の遮蔽層の形態で磁束方向付け層704を有し、回路700cは、スカイ遮蔽体の形態で磁束方向付け層704を有する。何れの場合にも、磁束方向付け層704は、磁束トラップ位置708にモート706を有する。2つ以上のモート706を設けることができ、回路全体にわたって磁束トラップを制御するために、モートを超伝導集積回路内の様々な位置に置き得ることが理解される。超伝導集積回路700aの冷却中に回路を通る磁束の好ましい移動になるT
Cを磁束方向付け層704が有するように、磁束方向付け層704の材料を選択する。幾つかの実装形態において、磁束方向付け層704が冷却中に最後に転移し、これにより他の層から追い出される磁束の移動を制御するように、低いT
Cを有する材料であるように磁束方向付け層704を選択し得る。他の実装形態において、磁束感受性デバイスの近くで磁束トラップを防止するために、磁束方向付け層704が、回路の幾つかの層の後、磁束感受性デバイス702の前に転移するように、中間のT
Cを有する材料であるように磁束方向付け層704を選択し得る。他の実装形態において、磁束方向付け層704が、回路の任意の他の層の前に転移し、磁束感受性デバイス702が超伝導状態になる前に磁束トラップ位置708に磁束感受性デバイス702から離れて磁束を移動させるように、高いT
Cを有する材料であるように磁束方向付け層704を選択し得る。
【0135】
材料選択又はその材料に加えられる処理を介して磁束方向付け層704のTCを選択し得る。幾つかの実装形態において、材料運動インダクタンスに基づいて材料を選択し得る。多くの場合、より高いTCを有する材料は、より高い運動インダクタンスを更に有する。より高い運動インダクタンス材料は、より高い運動インダクタンス材料におけるモートに含まれる任意の磁束の周囲構造に対するより小さい磁束結合を有し得る。これにより、回路密度を増加することができ、モートを磁束感受性デバイスから離れて配置する必要がない。
【0136】
図8は、1つ又は複数の磁束感受性超伝導デバイス802a、802b(総称して802)及び磁束方向付け層804を有する典型的な超伝導回路800の上面図である。図示のように、磁束感受性超伝導デバイス802は、量子ビット802a及び結合器802bを含む。これらの磁束感受性超伝導デバイスは、単に典型的な構造であり、磁束感受性超伝導デバイス802の構造は、変わり得ることが理解される。超伝導回路800は、細長い溝の形態で磁束感受性超伝導デバイス802から離れて配置されたモート806を有する。上述のように、モートは、他の形(例えば、表面積を増加する螺旋)をとり得る。明確にするために開口部808を破線で示す。磁束方向付け層804は、磁束感受性デバイス802を収容する開口部を有することができるが、磁束方向付け層804は、磁束感受性デバイス802の上又は下に連続的であり得ることが理解される。超伝導材料の大部分は、磁束トラップの制御を向上させることができ、磁束をモート806に方向付けることを保証するのに役立つため、モート806の位置を除いて超伝導回路800にわたって連続的又は略連続的である磁束方向付け層804を有することは、有益である。
【0137】
上述の方法、処理又は技法は、1つ又は複数の持続性プロセッサ可読媒体に記憶された一連のプロセッサ可読命令によって実施され得る。上述の方法、処理又は技法の方法の幾つかの例は、専用デバイス(例えば、断熱量子コンピュータ又は量子アニール装置(例えば、少なくとも1つのデジタルプロセッサを含むコンピュータ)の動作をプログラムするか又は別の方法で制御する断熱量子コンピュータ又は量子アニール装置又はシステム)によって部分的に実行される。当業者は、代替形態において、特定の動作を省略し、及び/又は追加の動作を追加できることが分かるが、上述の方法、処理又は技法は、様々な動作を含み得る。当業者は、動作の例示の順序が単に例示的な目的で示され、代替形態で変わり得ることが分かる。上述の方法、処理又は技法の例示的な作用又は動作の一部を反復的に実行する。上述の方法、処理又は技法の幾つかの動作を各反復中、複数の反復後又は全反復の最後に実行し得る。
【0138】
要約書に記載の内容を含む例示の実装形態の上述の説明は、網羅的であるか又は実装形態を開示の正確な形態に限定するように意図されていない。特定の実装形態及び例は、例示の目的で本明細書に記載されているが、当業者が分かるように、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な均等な修正形態がなされ得る。様々な実装形態のここで与えられる教示を量子計算の他の方法(必ずしも一般的に上述の量子計算のための例示的な方法とは限らない)に適用し得る。
【0139】
上述の様々な実装形態を組み合わせて、更なる実装形態を与え得る。米国特許第8,441,330号、米国特許第8,247,799号、米国特許第7,687,938号、米国仮特許出願第62,760,253号、米国仮特許出願第62/944,143号及び米国非仮特許出願第16,481,788号(但し、これらに限定されない)を含む、本明細書で参照され、及び/又は出願データシートに列挙される同一出願人による米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許及び外国特許出願の全部は、全体として参照により本明細書に援用される。
【0140】
上述の説明を踏まえて、実装形態に対するこれら及び他の変更形態がなされ得る。一般的に、下記の特許請求の範囲において、使用される用語は、本明細書に開示の特定の実装形態に特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきではなく、特許請求の範囲は、このような特許請求の範囲に与えられる均等物の全範囲と一緒に全ての可能な実装形態を含むように解釈されるべきである。従って、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。