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特許7705498空気入りタイヤ及び空気入りタイヤ成形用金型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-01
(45)【発行日】2025-07-09
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ及び空気入りタイヤ成形用金型
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20250702BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20250702BHJP
【FI】
B60C13/00 D
B29C33/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024024651
(22)【出願日】2024-02-21
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 信行
(72)【発明者】
【氏名】古谷 弘幸
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-024435(JP,A)
【文献】特開2003-252012(JP,A)
【文献】特開2012-006531(JP,A)
【文献】特開2008-201384(JP,A)
【文献】特開2019-093771(JP,A)
【文献】特開2012-101752(JP,A)
【文献】特開2008-254513(JP,A)
【文献】特開2020-138595(JP,A)
【文献】特開平04-218412(JP,A)
【文献】特開2010-52585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 13/00
B29C 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドの接地端よりタイヤ径方向内側で、かつリムラインよりタイヤ径方向外側のタイヤ軸方向外側面であるタイヤサイド面に形成され、タイヤ周方向に規則的に並んだ複数の筋状突起であるリッジを備え、
複数の前記リッジのそれぞれは、前記タイヤサイド面のタイヤ径方向に沿う方向を中心としてタイヤ周方向両側に60度傾く範囲内でタイヤ径方向外側に延びており、隣り合う前記リッジの頂部の中央間距離Lと前記リッジの高さHの比L/Hが2以上6以下であり、
前記リッジの表面の粗さ曲線における要素の平均長さLmと凹凸高さである十点平均粗さRzjisの比(Lm/Rzjis)である粗さピッチ比は、2以上6以下であり、
かつ、前記リッジの表面の算術平均粗さは、1.3μm以上1.9μm以下である、 空気入りタイヤ。
【請求項2】
トレッドの接地端よりタイヤ径方向内側で、かつリムラインよりタイヤ径方向外側のタイヤ軸方向外側面であるタイヤサイド面に形成され、タイヤ周方向に規則的に並んだ複数の筋状突起であるリッジを備え、
複数の前記リッジのそれぞれは、前記タイヤサイド面のタイヤ径方向に沿う方向を中心としてタイヤ周方向両側に60度傾く範囲内でタイヤ径方向外側に延びており、隣り合う前記リッジの頂部の中央間距離Lと前記リッジの高さHの比L/Hが2以上6以下であり、
前記リッジの高さH方向の中央を境として、上側を山側部分、下側を谷側部分としたときに、前記谷側部分の表面の算術平均粗さが、前記山側部分の表面の算術平均粗さより小さい、
空気入りタイヤ。
【請求項3】
トレッドの接地端よりタイヤ径方向内側で、かつリムラインよりタイヤ径方向外側のタイヤ軸方向外側面であるタイヤサイド面に形成され、タイヤ周方向に規則的に並んだ複数の筋状突起であるリッジを備え、
複数の前記リッジのそれぞれは、前記タイヤサイド面のタイヤ径方向に沿う方向を中心としてタイヤ周方向両側に60度傾く範囲内でタイヤ径方向外側に延びており、隣り合う前記リッジの頂部の中央間距離Lと前記リッジの高さHの比L/Hが2以上6以下であり、
複数の前記リッジは、前記タイヤサイド面において、サイドウォール基準面からタイヤ内面側に窪んだ凹部の底面から突出し、かつ、複数の前記リッジのそれぞれの頂部が前記サイドウォール基準面から突出するように形成される、
空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記凹部は、前記タイヤサイド面においてタイヤ周方向に沿って設けられた環状凹部である、
請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記リッジの高さHは、0.1mm以上1.1mm以下であり、前記リッジの延伸方向に対し直交する方向の前記リッジの幅Wは、前記リッジの高さHの1.5倍以上3.5倍以下である、
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
複数の前記リッジが、前記タイヤサイド面において、前記リムラインのタイヤ径方向位置を0とし、タイヤ断面高さを100としたときの5%以上、65%以下のタイヤ径方向範囲内に形成される、
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤを成形するための空気入りタイヤ成形用金型であって、
成形面に複数の前記リッジに対応する複数の凹部を有する、空気入りタイヤ成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ及び空気入りタイヤ成形用金型に関し、より詳しくは、リムラインよりタイヤ径方向外側のタイヤ軸方向外側面であるタイヤサイド面に形成された複数の筋状突起であるリッジを備える空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤの意匠性の向上や、タイヤサイド部の表示の視認性向上のために、タイヤサイド部に複数の筋状突起であるリッジを設けることが考えられている。例えば、特許文献1には、タイヤサイド部の視認性及び洗浄性能の向上のために、タイヤのサイドウォール部の所定領域に複数のリッジが配列された構成が記載されている。この構成において、複数のリッジは、互いに平行かつ周期的に基底面から隆起しており、リッジの断面視における1周期当たりのリッジの輪郭に沿った長さLrとの関係で、基底面に沿った複数のリッジの1周期の長さLbの範囲が規制される。また、特許文献1では、リッジ表面のゴムの算術平均粗さを0.1μm以上5μm以下とすることにより、リッジでの親水性を高めることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-24435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、タイヤの意匠性向上と共に、タイヤにおける空気抵抗の低減を図ることが望まれている。特許文献1に記載された構成のように、タイヤサイド部に複数のリッジを設ける場合には、タイヤの意匠性の向上を図れる可能性はある。しかしながら、特許文献1に記載された構成のようにリッジの1周期の長さをリッジの輪郭に沿った長さとの関係で規制したり、リッジの表面粗さを規制するだけでは、空気の剥離抑制による空気抵抗の低減効果を期待できない。このため、タイヤサイド面にタイヤ周方向に並んだ複数のリッジを有する構成において、空気抵抗を低減できるタイヤを実現する面から改良の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、タイヤサイド面にタイヤ周方向に並んだ複数のリッジを有する構成において、空気抵抗を低減できる空気入りタイヤ及びその成型用金型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッドの接地端よりタイヤ径方向内側で、かつリムラインよりタイヤ径方向外側のタイヤ軸方向外側面であるタイヤサイド面に形成され、タイヤ周方向に規則的に並んだ複数の筋状突起であるリッジを備え、複数の前記リッジのそれぞれは、前記タイヤサイド面のタイヤ径方向に沿う方向を中心としてタイヤ周方向両側に60度傾く範囲内でタイヤ径方向外側に延びており、隣り合う前記リッジの頂部の中央間距離Lと前記リッジの高さHの比L/Hが2以上6以下である、空気入りタイヤである。
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤ成形用金型は、本発明に係る空気入りタイヤを成形するための空気入りタイヤ成形用金型であって、成形面に複数の前記リッジに対応する複数の凹部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤ及び空気入りタイヤ成形用金型によれば、タイヤサイド面にタイヤ周方向に並んだ複数のリッジを有する空気入りタイヤにおいて、空気抵抗を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の一例である空気入りタイヤの子午線断面において、タイヤ輪郭形状を示す図であって、複数のリッジの形成範囲を示す図である。
図2】実施形態の空気入りタイヤのタイヤ周方向一部をタイヤ軸方向外側から見た図である。
図3】実施形態において、リッジ形成部分である環状部分を部分的に切断して示す斜視図である。
図4図1のA部の拡大断面図である。
図5】実施形態において、リッジに空気流が衝突した後、乱流により下流側の別のリッジに対する空気流の再付着が生じ、剥離点が下流側になり易いことを示す模式図である。
図6】リッジ間隔高さ比が2未満である比較例において、リッジを含むタイヤサイド面の表面が平滑面同様に乱流発生しないようになることを示す模式図である。
図7】リッジ間隔高さ比が2未満である比較例において、タイヤサイド面より空気流の下流側で、剥離した空気流れによる後流領域が生じることを円柱体Saで模擬して示す模式図である
図8】実施形態において、タイヤサイド面より空気流の下流側で、剥離した空気流れによる後流領域の幅が狭くなり、負圧の低減効果が高くなることを円柱体Sで模擬して示す模式図である。
図9】実施形態において、リッジの表面粗さ曲線における要素の平均長さLmを求める方法を示す図である。
図10】実施形態において、空気入りタイヤ成形用金型を示す断面図である。
図11】実施形態の別例の空気入りタイヤにおいて、リッジの断面形状を用いて、表面の算術平均粗さが異なる山側部分と谷側部分とを示す図である。
図12】実施形態の別例において、タイヤサイド面の複数のリッジのタイヤ周方向一部をタイヤ軸方向外側から見た図であって、タイヤ周方向を横方向に延ばして示す図である。
図13】実施形態の別例において、タイヤサイド面の複数のリッジのタイヤ周方向一部をタイヤ軸方向外側から見た図である。
図14】実施形態の別例の空気入りタイヤにおけるリッジの断面形状を示す図である。
図15】実施形態の別例の空気入りタイヤにおけるリッジの断面形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る空気入りタイヤ及びその成型用金型の実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態及び変形例の各構成要素を選択的に組み合わせることは本発明に含まれている。
【0011】
図1は、実施形態の一例である空気入りタイヤ1の午線断面において、タイヤ輪郭形状を示す図であって、複数のリッジの形成範囲を示す図である。図1に示すように、空気入りタイヤ1は、路面に接地する部分であるトレッド10を備える。以下、「空気入りタイヤ1」は、「タイヤ1」と記載する。トレッド10は、複数のブロックを含むトレッドパターンを有し、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。図示の例では、トレッド10を、単一のブロックで形成されるように示しているが、実際には、トレッド10は、タイヤ軸方向Xに分断された複数のブロックを含んでいる。複数のブロックは、タイヤ周方向に延びる周方向溝により分断される。トレッド10は、接地端Tを有する。図1では、タイヤ軸方向をXで示し、タイヤ径方向をYで示している。
【0012】
以下、タイヤ1の構成として、タイヤ軸方向X中央CLを中心として車両外側(OUT側)の部分を中心に説明する。タイヤ1は、後述のタイヤサイド面のリッジが設けられた環状部分100以外の形状について、タイヤ1の車両外側の部分と車両内側の部分とで対称である。
【0013】
タイヤ1は、トレッド10よりタイヤ軸方向X外側の端部に設けられ、最もタイヤ軸方向X外側に膨らんだサイドウォール12と、ホイールのリムに固定されるビード(図示せず)とを備える。サイドウォール12とビードは、タイヤ周方向に沿って環状に形成される。サイドウォール12は、トレッド10のタイヤ軸方向X両端部からタイヤ径方向Y内側に延びている。タイヤ1の径方向Y内側端部には、サイドウォール12に隣接して、ビードの外表面を形成するリムストリップ18が設けられる。
【0014】
タイヤ1は、所定圧の空気が充填される空気入りタイヤである。トレッド10は、トレッドゴムで構成される。サイドウォール12は、トレッドゴムとは異なる種類のサイドウォールゴムで構成される。
【0015】
本明細書では、特に断らない限り、タイヤの各部の寸法は、未使用のタイヤを正規リムに装着し、正規内圧となるように空気を充填した、無負荷の正規状態で測定した寸法である。
【0016】
「接地端T」とは、未使用のタイヤ1を正規リムに装着して正規内圧となるように空気を充填した状態で、正規内圧における正規荷重の88%の負荷を加えたときに平坦な路面に接地する領域のタイヤ軸方向X両端を意味する。
【0017】
ここで、「正規リム」とは、タイヤ規格により定められたリムであって、JATMAであれば「標準リム」、TRAであれば「Design Rim」、ETRTOであれば「Measuring Rim」である。「正規内圧」は、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。「正規荷重」は、JATMAであれば「最大負荷能力」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。
【0018】
タイヤ1は、カーカス、ベルト層、及びインナーライナーを備える。カーカスは、ゴムで被覆されたコード層であり、荷重、衝撃、空気圧等に耐えるタイヤ1の骨格を形成する。ベルト層は、トレッドゴム11とカーカスの間に配置される補強帯である。ベルト層は、カーカスを強く締めつけてタイヤ1の剛性を高める。ベルト層は、複数のベルトがタイヤ径方向Yに重なって形成される。各ベルトは、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に配列した複数のコードがゴムで被覆されて形成される。隣り合うベルトでは、互いのコードが交差するように、コードがタイヤ周方向に対し逆向きに傾斜している。コードは鋼等から形成される。
【0019】
ベルト層とトレッドゴムとの間には、タイヤ周方向に延び、ベルト層のタイヤ軸方向Xの全体を覆うベルト補強層が設けられる。ベルト補強層は、略タイヤ周方向に延びるコードがゴムで被覆されて形成される。コードは有機繊維等から形成される。
【0020】
実施形態のタイヤ1は、車両に対するタイヤ1の表裏の装着方向が指定されている。すなわち、タイヤ1は、車両の外側及び内側となる側がそれぞれ指定されている。図1では、タイヤ1を、右側が車両の外側(OUT側)で、左側が車両の内側(IN側)となるように、車両に取り付ける。
【0021】
タイヤ側面には、一般的に、セリアルと呼ばれる記号が設けられている。セリアルには、例えばサイズコード、製造時期(製造年週)、製造場所(製造工場コード)などの情報が含まれる。車両の外側に向くタイヤ側面(サイドウォール12)のみにセリアルを設ける、または車両外側に向く側面と車両内側に向く側面とで異なるセリアルを設けることで、車両に対するタイヤ1の装着方向が特定される。具体例としては、タイヤ1の両側面に製造工場コードおよびサイズコードを設け、車両の幅方向外側を向く側面のみに製造年週を設けることが挙げられる。
【0022】
また、車両の外側に向くタイヤ側面に文字または記号で、車両への装着状態で外側であることを示す表示が設けられてもよい。
【0023】
また、リムストリップ18を形成するリムストリップゴムの一部として、タイヤ軸方向外側に突出するリムプロテクタ19が設けられる。リムライン20は、リムプロテクタ19のタイヤ軸方向外端に位置する頂点に、タイヤ周方向に沿って環状に設けられる。リムプロテクタ19は、外傷からリムを保護する機能を有する。リムライン20は、タイヤ1がリムに適正位置で装着されていることをリムとの隙間で確認するためのラインである。図1ではリムプロテクタ19が設けられるが、図1に二点鎖線で示すように、リムプロテクタ19がない構成としてもよい。この場合でも、タイヤ1がリムに適正位置で装着されていることを確認するための、円環状に形成されたタイヤ軸方向外側に突出する突起であるリムラインがタイヤ側面に設けられる。
【0024】
本例では、トレッド10の接地端Tよりタイヤ径方向Y内側で、かつリムライン20よりタイヤ径方向Y外側のタイヤ軸方向X外側面であるタイヤサイド面13に、複数のリッジ30を含む環状部分100が設けられる。
【0025】
図2は、実施形態のタイヤ1のタイヤ周方向一部をタイヤ軸方向外側から見た図である。図2に示すように、車両外側に向くタイヤサイド面13には、タイヤ周方向の全周にわたってタイヤ径方向長さが一定の環状部分100が設けられる。環状部分100は、タイヤ周方向に等間隔で並んだ複数の筋状突起であるリッジ30が、環状凹部37からタイヤ軸方向外側に突出することにより形成される。各リッジ30は、タイヤ径方向に延びている。また、各リッジ30は互いに同一形状である。なお、後で説明するように、本発明のタイヤは、環状部分100及び環状凹部37の代わりに、タイヤサイド面のタイヤ周方向の一部または複数位置に設けられ、複数のリッジがタイヤ周方向に並んで形成された円弧状部分及び円弧状凹部をそれぞれ備える構成としてもよい。
【0026】
図3は、実施形態において、リッジ30形成部分である環状部分100を部分的に切断して示す斜視図である。複数のリッジ30は、タイヤサイド面13において、タイヤ周方向に沿って設けられた環状凹部37に配置される。環状凹部37は、サイドウォール基準面14(図2図3)からタイヤ内面側に向かって、全体的に略同一の深さで、かつ、同一のタイヤ径方向幅でタイヤ周方向の全周にわたって窪んでいる。
【0027】
サイドウォール基準面14は、タイヤサイド面13において、サイドブロック等の突起や凹部等の部分的な凹凸が形成されない部分における、サイドウォール5のタイヤ軸方向外側を向いた表面を意味する。
【0028】
複数のリッジ30は、環状凹部37の底面38からタイヤ軸方向外側に突出し、タイヤ周方向に等間隔で並んでいる。底面38は、突起形成基準面であり、タイヤサイド面13の一部である。底面38のうち、各リッジ30が立ち上がる部分の断面視は直線とすることができる。「等間隔に並ぶ」とは、同一のタイヤ径方向位置で隣り合うリッジ30の間隔が、複数のリッジ30の間で均一であることを意味する。これにより、複数のリッジ30は、タイヤ周方向に規則的に並んでいる。
【0029】
各リッジ30は、延伸方向に対し直交する断面形状が三角形であり、略同一の断面形状で延伸方向であるタイヤ径方向に連続している。これにより、各リッジ30は、タイヤサイド面13のタイヤ径方向に沿う方向を中心としてタイヤ周方向両側に60度傾く範囲内でタイヤ径方向外側に伸びている。
【0030】
各リッジ30の延伸方向両端は、環状凹部37のタイヤ径方向両端の壁面に接続される。各リッジ30の断面形状は、各リッジ30におけるタイヤ周方向中央を基準にタイヤ周方向両側で対称形状である二等辺三角形とすることができる。
【0031】
図4は、図1のA部の拡大断面図である。図3図4に示すように、各リッジ30の高さHは、環状凹部37の開口端39から底面38までの深さDより若干大きくなっている。これにより、各リッジ30の頂部である稜線31付近は、環状凹部37の開口端39よりも外側に突出している。
【0032】
図4に示すように、リッジ30の高さHは、例えば0.3mm以上1.1mm以下である。一方、環状凹部37の深さDは、0.2mm以上1.0mm以下であり、リッジ30は環状凹部37の開口端39から外側に0.1mm以上はみ出している。このように、リッジ30の一部が環状凹部37の開口端39から外側にはみ出しているので、外部からリッジ30の存在を強調できることにより、タイヤサイド面13の意匠性の向上を図れる。
【0033】
図3に戻って、リッジ30の延伸方向に対し直交する方向であるタイヤ周方向のリッジ30の幅Wは、リッジ30の高さHの1.5以上3.5以下である。
【0034】
また、隣り合うリッジ30の頂部の中央間距離である稜線31間距離Lとリッジ30の高さHの比であるリッジ間隔高さ比L/Hが、2以上6以下である。本例の場合、各リッジ30がタイヤ径方向に延びるので、稜線間距離Lは、タイヤ径方向の内側から外側に向かって広がっている。この場合でも、リッジ30の延伸方向の全体で、リッジ間隔高さ比L/Hは2以上6以下である。これにより、タイヤ1の空気抵抗の低減を図りつつ、見栄えの低下を抑制できる。
【0035】
図5は、実施形態において、底面38上のリッジ30に矢印αで示す空気流が衝突した後、乱流により下流側の別のリッジ30に対する空気流の再付着が生じ、剥離点が下流側になり易いことを示す模式図である。実施形態では、上記のリッジ間隔高さ比L/Hが2以上6以下となるので、底面38上のリッジ30に衝突した空気流が乱流となって下流側に向かい、その乱流が再度下流側の別のリッジ30に衝突し、繰り返される。これにより、タイヤサイド面13における空気流の剥離点が下流側にずれ易くなる。このため、後述のようにタイヤの空気流下流側において、タイヤサイド面13の剥離位置からの空気の剥離流れで両側から挟まれた部分により形成され、負圧となる後流領域の幅を小さくできる。このため、リッジ30の形成による圧力抵抗を小さくできるので、空気抵抗の増大を抑制できる。
【0036】
図6は、リッジ間隔高さ比L/Hが2未満である比較例において、リッジ30aを含むタイヤサイド面の表面が平滑面同様に乱流発生しないようになることを示す模式図である。上記のリッジ間隔高さ比L/Hが2未満では、図6に示すように、タイヤサイド面の単位面積当たりにおける複数のリッジ30aの密度が高くなる。これにより、タイヤサイド面が矢印αで示す空気流との関係で平滑面と同様になるので、空気流に乱流を生じ難くなる。このため、タイヤサイド面における空気流の剥離点が下流側にずれる効果が生じ難い。したがって、負圧の低減効果が低くなるので、空気抵抗の増大抑制効果が小さくなる。
【0037】
一方、上記のリッジ間隔高さ比L/Hが6を超える場合には、タイヤサイド面13におけるリッジ30の形成量が少なくなるので、負圧の低減効果が低くなる。この場合も空気抵抗の増大抑制効果が小さくなる。
【0038】
図7図8を用いて、実施形態の効果をさらに詳しく説明する。図7は、リッジ間隔高さ比が2未満である比較例において、タイヤサイド面13より空気流の下流側で、剥離した空気流れによる後流領域40が生じることを円柱体Saで模擬して示す模式図である。図7において、後流領域40の内部には、多くの乱流が形成される。図7図8では、タイヤを円柱体Saにより模擬して示している。
【0039】
図7に示す比較例では、上記のリッジ間隔高さ比が2未満であるため、上記のようにタイヤサイド面13が平滑面同様に乱流発生しないようになる。この場合に、車両走行時にタイヤの回転に伴ってタイヤサイド面13としての円柱体Saの表面に破線で示す空気流が衝突することを考える。この場合には、円柱体Saの空気流上流側には円柱体Saを下流側に押圧するように正圧が生じる。そして、円柱体Saの空気流上流側から円柱体Saの表面に沿って下流側に流れる際に、空気流は円柱体Saの表面から図13のC1,C2位置で剥離する。そして、円柱体Saの剥離位置からの空気の剥離流れで両側から挟まれた部分により、負圧となる後流領域40が形成される。図7の場合は、この後流領域40の幅(図7の上下方向長さ)が大きくなるので、負圧の低減効果が小さい。このことから、リッジ間隔高さ比が2未満では、タイヤにおける圧力抵抗増大抑制の効果が低いので、空気抵抗の増大抑制効果が小さくなる。
【0040】
図8は、実施形態において、タイヤサイド面13より空気流の下流側で、剥離した空気流れによる後流領域40の幅が狭くなり、負圧の低減効果が高くなることを円柱体Sで模擬して示す模式図である。図8では、タイヤ軸方向両側のタイヤサイド面13に複数のリッジ30が形成されていることを、円柱体Sの表面に形成された微小な突起により模擬している。
【0041】
図8に示すように、実施形態では、上記のリッジ間隔高さ比が2以上6以下であるので、図5で説明した理由から、タイヤサイド面13からの空気流の剥離点が下流側の位置であるC3,C4にずれ易くなる。これにより、タイヤを模擬した円柱体Sの下流側において、円柱体Sの表面の剥離位置からの空気の剥離流れで両側から挟まれた部分に形成され、負圧となる後流領域40の幅を小さくできる。図8では、タイヤ軸方向両側のタイヤサイド面13に複数のリッジ30が形成されていることを模擬しているが、実施形態のように、車両外側のタイヤサイド面13のみに複数のリッジ30が形成されている場合でも、後流領域40の幅は小さくなる。このことから、実施形態では、タイヤにおける圧力抵抗増大抑制の効果が高くなるので、空気抵抗の増大を抑制できる。
【0042】
さらに、実施形態では、各リッジ30の表面には微小な凹凸が形成され、その凹凸によりリッジ30の表面が適切な表面粗さとなっている。これにより、空気の流れについて適切な乱流境界層を、タイヤサイド面のリッジ30表面付近に形成しやすくなる。これにより、空気流がリッジ30から剥離する位置をより下流側にずらすことができる。このため、リッジ30の後流側に形成され、空気流の速度が小さくなる後流領域の幅を小さくできるので、タイヤ1の空気抵抗の増大をさらに抑制できる。
【0043】
具体的には、リッジ30の表面の粗さ曲線における要素の平均長さLmと凹凸高さである十点平均粗さRzjisとの比(Lm/Rzjis)である、粗さピッチ比は、2以上6以下である。図9は、リッジ30の表面粗さ曲線における要素の平均長さLmを求める方法を示している。「平均長さLm」は、粗さ曲線の基準長さにおける要素長さの平均値である。「基準長さ」は、十点平均粗さなどの粗さパラメータを求めるために、粗さ曲線から抜き取る一定の長さを有する部分である。
【0044】
具体的には、図9に示すように、リッジ30の表面粗さ曲線において、その凹凸の高さの平均線LGの方向に沿った基準長さ(0.5mm~5mmの範囲内で任意に設定される)Lxを抜き取って考える。この場合に、その抜き取り部分の平均線LGを基準に上側に越えた部分である山部と、平均線LGを下側に越えて低くなった部分である谷部とが1つずつ連続した部分1周期の1つの要素とする。そして、基準長さLxにおける第1周期から第N周期までの要素の平均線に沿った各長さであるL1、L2・・・LNの総和を周期数Nで割った値を、要素の平均長さLmと決定する。すなわち、
Lm=(L1+L2+L3+・・・+LN)/Nである。
【0045】
十点平均粗さRzjisの測定方法は、ISO4287-1987に準拠するJIS B 0601:2001に従う。具体的には、十点平均粗さRzjisを求める際には、上記の抜き取り部分において、平均線LGからの高さについて最も高い頂点を有する山から5番目に高い頂点を有する山までの5つの山の平均線LGからの高さの平均値の絶対値を求める。また、上記の抜き取り部分において、平均線LGからの低さについて最も低い谷点を有する谷から5番目に低い谷点を有する谷までの5つの谷の平均線LGからの低さの平均値の絶対値を求める。これらの高さの平均値の絶対値と低さの平均値の絶対値との和が、十点平均粗さRzjisである。本例の場合には、要素の平均長さLmと凹凸高さである十点平均粗さRzjisとの比(Lm/Rzjis)である、粗さピッチ比は、2以上6以下である。これにより、リッジ30の後流側に形成され、空気流の速度が小さくなる後流領域の幅を小さくできるので、タイヤ1の空気抵抗の増大をさらに抑制できる。
【0046】
また、実施形態では、複数のリッジ30は、タイヤサイド面13において、リムライン20のタイヤ径方向位置を0とし、タイヤ断面高さHtを100としたときの5%以上、65%以下のタイヤ径方向Y範囲内(図1に矢印βで示す範囲内)に形成される構成としてもよい。
【0047】
この構成によれば、タイヤサイド面13のタイヤ最大幅に対応するタイヤ軸方向外端(図1のP)付近からタイヤ径方向Y外側部分の、空気流が当たりやすい部分から、目立ちやすく意匠性の向上効果が高いタイヤ外周側部分の範囲にリッジ30を設けることができる。
【0048】
また、本例のリッジ30では、高さ方向に沿った断面形状が、先端に向かって横方向長さが小さくなる傾斜辺を持った三角形状である。これにより、リッジ30をタイヤ成型時に用いる金型に溝加工を施して形成する場合に、その溝の内面を幅が奥に向かって小さくなるテーパ面とすることができる。このため、切削工具を用いた機械加工またはレーザ加工を用いて、金型に溝を形成し易くなる。
【0049】
図10は、実施形態のタイヤ成形用金型を示す断面図である。本実施形態のタイヤ1は、タイヤ成形用金型70により形成する。以下、タイヤ成形用金型70は、金型70と記載する。金型70は、上述の図1図5に示したタイヤ1を成形する金型である。金型70によれば、タイヤサイド面13にタイヤ周方向に並んだ複数のリッジ30を有し、空気抵抗を低減できるタイヤ1を実現できる。
【0050】
以下では、金型70によって成形される上述したタイヤ1のタイヤ軸方向X及びタイヤ径方向Yに従って、各部材について説明する。
【0051】
金型70は、タイヤ1のトレッドの表面を成形するトレッド金型71と、サイドウォールの表面を成形する一対のサイド金型72とを有している。
【0052】
トレッド金型71は、トレッド成形面73を有する本体74と、トレッド成形面73から突出している突起75と、を有している。
【0053】
本体74は、金属材料によって構成され、例えばアルミニウム合金から構成されている。アルミニウム合金として、例えばAC4系、AC7系等が好適に用いられる。突起75は、タイヤ1に周方向溝を成形する部分である。突起75は、本体74を構成する金属材料と同じ材料である。
【0054】
サイド金型72は、サイド成形面77a、77bを有する本体76を有し、車両外側のタイヤサイド面を形成するためのサイド成形面77aには、サイド成形面77aから外側に突出する環状突部78を有している。本体76は、本体74と同様の金属材料によって構成されている。環状突部78は、タイヤ1に、複数のリッジ30が底面38から隆起する環状凹部37(図3図4)を形成する部分である。
【0055】
トレッド金型71は、環状体を周方向に複数分割することで形成された平面視扇形状である。複数に分割されたトレッド金型71は、後述の型締め状態で、成形するタイヤ1の外径に応じた内径を有するように、円環状に連続した連続体を形成する。上側のサイド金型72は円環状であり、加硫成形機を構成する図示しない上プレートの下面に固定され、第1昇降部材(図示せず)の昇降に伴って昇降する。下側のサイド金型72は円環状であり、床面に固定され、加硫成形機を構成する図示しない下プレートの下面に固定される。加硫成形機は、複数に分割されたトレッド金型71の外側に、1つのトレッド金型71に対し1つずつ設けられた複数のセグメント(図示せず)を、第1昇降部材により昇降させる。第1昇降部材の昇降と同時に、加硫成形機は、第1昇降部材とは独立して昇降する第2昇降部材(図示せず)の下端に設けた傾斜円筒面に複数のセグメントの外周面の傾斜面を上下方向にスライド移動させる。これにより、加硫成形機は、円環状に連続したトレッド金型71の中心軸に対し径方向に、複数のセグメントを往復移動させる。これにより、加硫成形機は、金型70を、型締め状態と型開き状態とに切り換える。
【0056】
このように構成された金型70には、型開き状態でタイヤ軸方向が上下方向に沿うように、グリーンタイヤを下側のトレッド金型71上に載置する。そして、グリーンタイヤの内側に膨張可能なブラダーを配置し、ブラダーに空気を供給することでブラダーを膨張させる。そして、ブラダーの外面でグリーンタイヤの内側面を保持した状態で、第1昇降部材及び第2昇降部材を昇降させ、金型70を型締めする。グリーンタイヤのゴムは、金型70からの押圧によってトレッド成形面73及びサイド成形面77a、77bに密着し、上プレートを固定した部材と下プレートを固定した部材に、所定温度に調整された熱交換媒体を常時流動させる。これにより、グリーンタイヤのゴムが加硫され、所定形状のタイヤ1が完成する。
【0057】
本実施形態では、車両外側のタイヤサイド面13を形成するためのサイド成形面77aにおいて、複数のリッジ30が隆起する環状凹部37を成形するための環状突部78が形成される。環状突部78の頂面78aは、環状凹部37の底面38に対応する。さらに、環状突部78の周方向複数位置に、タイヤサイド面13に設ける複数のリッジ30に対応する複数の凹部80が形成される。凹部80は、頂面78aから断面略三角形で延びる溝形状に窪んでいる。
【0058】
金型の複数の凹部80は、金型の環状突部78の頂面78aに溝加工を施すことにより形成することができる。例えば、溝加工としては、エンドミル等の切削工具を用いたNC加工、レーザ加工、または放電加工等を用いることができる。
【0059】
上記のタイヤ1及び金型70によれば、タイヤサイド面13にタイヤ周方向に並んだ複数のリッジ30を有するタイヤ1において、空気抵抗を低減できる。
【0060】
図11は、実施形態の別例のタイヤにおいて、リッジ30aの断面形状を用いて、表面の算術平均粗さが異なる山側部分81と谷側部分82とを示す図である。図11に示すように、本例の構成では、各リッジ30aにおける山側部分81と谷側部分82との表面粗さが異なっている。具体的には、リッジ30aの高さH方向の中央Cを境として、上側を山側部分81、下側を谷側部分82としたときに、幅方向両側の谷側部分82の表面の算術平均粗さが、幅方向両側の山側部分81の表面の算術平均粗さより小さくなっている。この場合でも、リッジ30aの山側部分81及び谷側部分82のそれぞれの表面の算術平均粗さは、1.3μm以上1.9μm以下であることが好ましい。
【0061】
本例の構成によれば、谷側部分82の表面の算術平均粗さが、山側部分81の表面の算術平均粗さより小さくなっている。これにより、車両走行時のタイヤの回転に応じて、リッジ30aが上下方向に対し斜め、または水平方向に沿って配置される場合に、山側部分81と谷側部分82のうち、空気抵抗が大きくなりやすい側である谷側部分82の内側を通過する空気に対する空気抵抗を低減できる。これにより、タイヤにおける空気抵抗をさらに低減できる。本例において、その他の構成及び作用は、図1図5図10に示した構成と同様である。
【0062】
図12は、実施形態の別例において、タイヤサイド面13の複数のリッジ30bのタイヤ周方向一部をタイヤ軸方向外側から見た図であって、タイヤ周方向を横方向に延ばして示す図である。本例の構成では、タイヤサイド面13の環状凹部37に設けられる複数のリッジ30bが、タイヤ径方向に対し、タイヤ径方向外側に向かってタイヤ周方向の一方側(図12の右側)に傾斜している。図12では、各リッジ30bについて、各リッジ30bの稜線のみを示している。
【0063】
そして、複数のリッジ30bは、環状凹部37の底面38からタイヤ軸方向外側に突出し、タイヤ周方向に等間隔で並んでいる。本例の場合も、「等間隔に並ぶ」とは、同一のタイヤ径方向位置で隣り合うリッジ30bの間隔が、複数のリッジ30bの間で均一であることを意味する。
【0064】
さらに、各リッジ30bは、タイヤサイド面13のタイヤ径方向に沿う方向(例えば図12の一点鎖線Laに沿う方向)を中心としてタイヤ周方向一方側に60度傾く範囲内の角度θaでタイヤ径方向外側に延びている。図12では、各リッジ30が、タイヤ径方向に沿う方向を中心としてタイヤ周方向一方側に略60度の角度θaで傾斜しているが、傾斜角度は、10度、20度、または30度等としてもよい。本例の場合も、隣り合うリッジ30の頂部の中央である稜線間距離Lとリッジ30の高さHの比L/Hが、リッジ30の延伸方向の全体において、2以上6以下である。本例において、その他の構成及び作用は、図1図5図10に示した構成と同様である。
【0065】
なお、図12において、一点鎖線γで1つのリッジ30cの稜線のみを示すように、実施形態の別例として、複数のリッジ30cのそれぞれは、タイヤサイド面13のタイヤ径方向に沿う方向(例えば図12の一点鎖線Laに沿う方向)を中心としてタイヤ周方向他方側に60度傾く範囲内の角度θbでタイヤ径方向外側に延びている構成としてもよい。
【0066】
図13は、実施形態の別例において、タイヤサイド面13の複数のリッジ30dのタイヤ周方向一部をタイヤ軸方向外側から見た図である。本例の構成では、図12に示した構成において、複数のリッジ30dのそれぞれが、タイヤ径方向外側に向かってタイヤ周方向一方側(図13の右側)に傾斜するように湾曲した曲線形状に沿って延びている。また、各リッジ30の稜線は、全体で、タイヤ径方向に沿う方向を中心としてタイヤ周方向一方側に60度傾く範囲内でタイヤ径方向外側に延びている。リッジ30dの稜線がタイヤ径方向に沿う方向を中心としてタイヤ周方向一方側に傾く角度は、リッジ30sdのタイヤ径方向内端からタイヤ径方向外端に向かって徐々に大きくなっている。これにより、リッジ30dのタイヤ径方向外端で、リッジ30dの稜線がタイヤ径方向に沿う方向を中心としてタイヤ周方向一方側に傾く角度θ2は、リッジ30dのタイヤ径方向内端で、リッジ30dの稜線がタイヤ径方向に沿う方向を中心としてタイヤ周方向一方側に傾く角度θ1よりも大きい。本例の構成のように、各リッジ30dは曲線方向に沿って延びる構成としてもよい。本例において、その他の構成及び作用は、図1図5図10に示した構成、または、図12に示した構成と同様である。
【0067】
上記の各実施形態では、リッジの断面形状が三角形である場合を説明したが、本発明では、リッジは、このような形状に限定するものではない。図14図15は、実施形態の別例の空気入りタイヤにおけるリッジ30e、30fの2例を示している。
【0068】
まず、図14に示す別例のリッジ30eでは、断面形状が横方向両側に傾斜辺32を有する台形状である。本例の場合、隣り合うリッジ30eの頂部33の中央Ld間距離Lとリッジ30eの高さHの比であるリッジ間隔高さ比L/Hが2以上6以下である。
【0069】
図15に示す別例のリッジ30fでは、断面形状が横方向両側に傾斜辺34を有する山形であり、上端に円弧部を有し外側に凸となる曲線部35が連結された形状である。本例の場合、隣り合うリッジ30fの頂部の中央Le間距離Lとリッジ30の高さHの比であるリッジ間隔高さ比L/Hが2以上6以下である。
【0070】
上記の各例のリッジ30e、30fでも、図1から図5に示した実施形態のリッジ30と同様に、リッジ30e、30fの高さ方向に沿った断面形状が、先端に向かって横方向長さが小さくなる傾斜辺32,34を持った形状である。これにより、リッジ30e、30fをタイヤ成型時に用いる金型に溝加工を施して形成する場合に、その溝の内面を幅が奥に向かって小さくなるテーパ面とすることができる。このため、切削工具を用いた機械加工またはレーザ加工を用いて、金型に溝を形成し易くなる。
【0071】
上記の各実施形態では、車両の外側に向くタイヤサイド面13のみにリッジを形成しているが、車両の両側のタイヤサイド面にリッジが形成されることにより、タイヤの装着方向を指定しない構成としてもよい。また、上記の各実施形態では、環状凹部の底面からリッジが突出した場合を説明したが、本発明はこれに限定せず、例えば、タイヤサイド面のサイドウォール基準面から、タイヤ周方向に規則的に並んだ複数のリッジが突出した構成としてもよい。この場合のリッジの高さは、例えば、0.1mm以上0.5mm以下としてもよい。
【0072】
また、上記の各実施形態では、タイヤサイド面に、複数のリッジがタイヤ周方向の全周で並んで設けられた環状部分100を設けた場合を説明したが、上記の各実施形態において、環状部分100の代わりに、タイヤサイド面において、タイヤ周方向の一部のみに設けられ、またはタイヤ周方向の複数位置に分かれて設けられ、複数のリッジがタイヤ周方向に規則的に並んで形成された円弧状部分を備える構成としてもよい。円弧状部分は、タイヤ周方向に沿った円弧状凹部の底面から複数のリッジが突出して形成されたものでもよいし、サイドウォール基準面のタイヤ周方向に沿った円弧状領域から複数のリッジが突出して形成されたものでもよい。円弧状部分及び円弧状領域は、タイヤ周方向の全周に対し25%以上のタイヤ周方向に延びる帯状範囲に形成されることが好ましい。
【0073】
また、図10に示した金型70のサイド成形面77aに形成された環状突部78の代わりに、複数のリッジが隆起する円弧状凹部を成形するための円弧状突部が形成され、円弧状突部に複数のリッジを形成するための複数の凹部が形成されてもよい。また、金型の成形面において、サイドウォール基準面から突出する複数のリッジを有する環状部分、または円弧状領域の複数のリッジを形成するための複数の凹部が形成されてもよい。
【0074】
本開示は、以下の実施形態によりさらに説明される。
構成1: トレッドの接地端よりタイヤ径方向内側で、かつリムラインよりタイヤ径方向外側のタイヤ軸方向外側面であるタイヤサイド面に形成され、タイヤ周方向に規則的に並んだ複数の筋状突起であるリッジを備え、
複数の前記リッジのそれぞれは、前記タイヤサイド面のタイヤ径方向に沿う方向を中心としてタイヤ周方向両側に60度傾く範囲内でタイヤ径方向外側に延びており、隣り合う前記リッジの頂部の中央間距離Lと前記リッジの高さHの比L/Hが2以上6以下である、
空気入りタイヤ。
構成2: 前記リッジの表面の粗さ曲線における要素の平均長さLmと凹凸高さである十点平均粗さRzjisの比(Lm/Rzjis)である粗さピッチ比は、2以上6以下である、
構成1に記載の空気入りタイヤ。
構成3: 前記リッジの表面の算術平均粗さは、1.3μm以上1.9μm以下である、
構成1または構成2に記載の空気入りタイヤ。
構成4: 前記リッジの高さHは、0.1mm以上1.1mm以下であり、前記リッジの延伸方向に対し直交する方向の前記リッジの幅Wは、前記リッジの高さHの1.5倍以上3.5倍以下である、
構成1から構成3のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
構成5: 前記リッジの高さHの中央を境として、上側を山側部分、下側を谷側部分としたときに、前記谷側部分の表面の算術平均粗さが、前記山側部分の表面の算術平均粗さより小さい、
構成1から構成4のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
構成6: 複数の前記リッジは、前記タイヤサイド面において、サイドウォール基準面からタイヤ内面側に窪んだ凹部の底面から突出するように形成される、
構成1から構成5のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
構成7: 複数の前記リッジが、前記タイヤサイド面において、前記リムラインのタイヤ径方向位置を0とし、タイヤ断面高さを100としたときの5%以上、65%以下のタイヤ径方向範囲内に形成される、
構成1から構成6のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
構成8: 構成1~構成7のいずれか1つに記載の空気入りタイヤを成形するための空気入りタイヤ成形用金型であって、
成形面に複数の前記リッジに対応する複数の凹部を有する、空気入りタイヤ成形用金型。
【符号の説明】
【0075】
1 空気入りタイヤ(タイヤ)、10 トレッド、12 サイドウォール、13 タイヤサイド面、14 サイドウォール基準面、18 リムストリップ、19 リムプロテクタ、20 リムライン、30,30a,30b,30c,30d、30e、30f リッジ、31 稜線、32 傾斜辺、33 頂部、34 傾斜辺、35 曲線部、37 環状凹部、38 底面、39 開口端、40 後流領域、70 タイヤ成形用金型、71 トレッド金型、72 サイド金型、73 トレッド成形面、74 本体、75 突起、76 本体、77a,77b サイド成形面、78 環状突部、78a 頂面、80 凹部、81 山側部分、82 谷側部分、100 環状部分、T 接地端。
【要約】
【課題】タイヤサイド面にタイヤ周方向に並んだ複数のリッジを有する構成において、空気抵抗を低減できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】実施形態の一例であるタイヤは、トレッドの接地端よりタイヤ径方向内側で、かつリムラインよりタイヤ径方向外側のタイヤ軸方向外側面であるタイヤサイド面に形成された複数の筋状突起であるリッジ30を含む。各リッジは、タイヤサイド面13のタイヤ径方向に沿う方向を中心としてタイヤ周方向両側に60度傾く範囲内でタイヤ径方向外側に延びている。隣り合うリッジ30の頂部の中央間距離Lとリッジの高さHの比L/Hが2以上6以下である。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15