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特許7705672核酸多量化を介した多価タンパク質薬物およびワクチンの構築方法と適用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-02
(45)【発行日】2025-07-10
(54)【発明の名称】核酸多量化を介した多価タンパク質薬物およびワクチンの構築方法と適用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20250703BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250703BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20250703BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20250703BHJP
   C07K 14/00 20060101ALN20250703BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
A61K47/26
A61P31/00
C40B40/06
C07K14/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023532213
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 CN2021133254
(87)【国際公開番号】W WO2022111598
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】202011340377.3
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519401664
【氏名又は名称】アッセンブリー メディシン,エルエルシー.
【氏名又は名称原語表記】ASSEMBLY MEDICINE,LLC.
【住所又は居所原語表記】2-3F,Bldg.1,No.88 Da‘erwen Road.China(Shanghai) Pilot Free Trade Zone,Pudong New Area,Shanghai 201203,China
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ファン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ジェイムス ジェイウェン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,リウジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イェンビン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,チャン
(72)【発明者】
【氏名】ルン,チャンチン
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-519696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/11
A61K 47/26
A61P 31/00
C40B 40/06
C07K 14/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相補的な核酸骨格ベースの多量体複合体であって、
前記複合体は、相補的な核酸骨格を有するn個の単量体で複合形成される多量体であり、ここで、各単量体は、核酸一本鎖を有するポリペプチドであり、nは、3~6の正の整数であり、前記多量体において、各単量体の核酸一本鎖およびほかの二つの単量体の核酸一本鎖は、塩基相補性により相補的な二本鎖を形成することにより、相補的な核酸骨格構造を形成し、
ここで、前記多量体中の一本鎖核酸配列は、一本鎖核酸配列セットからなり、前記セットは、相補的な核酸骨格ベースの三量体複合体、四量体複合体、または五量体複合体を形成するための、以下のグループ1~グループ4:
(グループ1)相補的な核酸骨格ベースの三量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列:
【表1-1】
【表1-2】
(グループ2)相補的な核酸骨格ベースの四量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列:
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
(グループ3)相補的な核酸骨格ベースの五量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列:
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
(グループ4)相補的な核酸骨格ベースの四量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列:
【表4】
に示される配列セットのいずれか1つから選択されることを特徴とする、前記多量体複合体。
【請求項2】
前記単量体は、式Iの構造を有し、
Z1-W(I)
式において、
Z1は、ポリペプチド部分(moiety)であり、
Wは、一本鎖核酸配列であり、
「-」は、リンカーまたは結合であることを特徴とする
請求項1に記載の多量体複合体。
【請求項3】
前記核酸配列Wは、式1に示される構造を有し、
X1-R1-X2-R2-X3(1)
ここで、
R1は、塩基相補的対合領域1であり、
R2は、塩基相補的対合領域2であり、
X1、X2およびX3は、それぞれ独立して、なしまたは冗長核酸であり、
「-」は、結合であることを特徴とする
請求項2に記載の多量体複合体。
【請求項4】
X2の配列は、A、AA、AGAまたはAAAからなる群から選択されることを特徴とする
請求項2に記載の多量体複合体。
【請求項5】
前記一本鎖核酸配列セットは、相補的な核酸骨格ベースの三量体複合体を形成するためのグループ1中の配列セット3-1~配列セット3-20のいずれか1つから選択されることを特徴とする
請求項1~4のいずれか1項に記載の多量体複合体。
【請求項6】
前記一本鎖核酸配列セットは、相補的な核酸骨格ベースの四量体複合体を形成するためのグループ2中の配列セット4-1~配列セット4-20のいずれか1つから選択されることを特徴とする
請求項1~4のいずれか1項に記載の多量体複合体。
【請求項7】
前記一本鎖核酸配列セットは、相補的な核酸骨格ベースの五量体複合体を形成するためのグループ3中の配列セット5-1~配列セット5-20のいずれか1つから選択されることを特徴とする
請求項1~4のいずれか1項に記載の多量体複合体。
【請求項8】
前記一本鎖核酸配列セットは、相補的な核酸骨格ベースの四量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列SEQ ID No:275~278からなるグループ4中の配列セットであることを特徴とする
請求項1~4のいずれか1項に記載の多量体複合体。
【請求項9】
医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、
(a)請求項1に記載の相補的な核酸骨格ベースの多量体複合体と、および
(b)薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする、前記医薬組成物。
【請求項10】
核酸配列ライブラリーであって、
前記核酸配列ライブラリーは、請求項に記載の相補的な核酸骨格ベースの多量体複合体を形成するための核酸配列を含むことを特徴とする、前記核酸配列ライブラリー。
【請求項11】
前記核酸配列Wは、式1に示される構造を有し、
X1-R1-X2-R2-X3(1)
ここで、
R1は、塩基相補的対合領域1であり、
R2は、塩基相補的対合領域2であり、
X1、X2およびX3は、それぞれ独立して、なしまたは冗長核酸であり、
「-」は、結合であることを特徴とする
請求項10に記載の核酸配列ライブラリー。
【請求項12】
請求項10に記載の核酸配列ライブラリーの使用であって、
請求項1に記載の多量体複合体または請求項1に記載の多量体複合体を含む医薬組成物の調製に用いられることを特徴とする、前記使用。
【請求項13】
相補的な核酸骨格ベースの多量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列を決定する方法であって、以下の段階:
(a)シミュレーテッドアニーリングのパラメーターを設定すること:
アニーリング初期温度、アニーリング終了温度およびアニーリング温度減衰係数ΔTを設定し、
最適化制約パラメーターを設定し、
(1)核酸一本鎖の数n、ここでnは3~6の正の整数であり、
(2)対合配列長さL、ここでLは12~16塩基であり、
(3)対合領域の解離温度閾値T
(4)特異的対合領域配列の自由エネルギー閾値ΔG°、
(5)非特異的対合の自由エネルギー閾値ΔGNS°、
(6)コネクタX2、ここでコネクタX2はA、AAおよびAAAからなる群から選択され、
(7)二次構造(ヘアピン(hairpin))解離温度閾値Tm-H
(8)対合配列内のCG比PCG、且つPCGの範囲は、[0.4、0.6)であり、
上記パラメーターに従って、配列セット
【数1】
を初期化し、
(b)前段階に記載のセットSの目的関数値Eを計算し、即ち、配列間と配列自体との非特異的対合の自由エネルギー(ΔGNS°)の合計を計算し、同時に、非特異的対合の自由エネルギー行列Cn×nを得、その上三角行列中の最小値に対応するSおよびS(1≦i≦n、1≦j≦n)を検索し、SおよびS非特異的対合の自由エネルギーΔGNS°(Si,)に従って、SまたはSをランダムに選択して更新操作を実行して、新しい核酸配列を得、更新された配列セットS’を得ること、
(c)前段階に記載のセットS’中の配列が段階(a)で設定した最適化制約パラメーター条件を満たすかどうかを判断し、特異的対合領域解離温度T、特異的対合領域配列の自由エネルギーΔG°、二次構造の解離温度Tm-HおよびCG比PCGを含むパラメーターを検証し、上記パラメーターが制約条件を満たすと、段階(d)を実行し、そうでない場合、段階(c)を繰り返し実行し、特定のアニーリング温度下で、段階(b)を15回連続して実行しても条件を満たすS’が得られないと、無限循環を防止するために、セットSをセットS’とし、次の段階を実行すること、
(d)前段階に記載のセットS’の目的関数値Eを計算し、EとEとを比較し、E≧Eの場合、非特異的対合の自由エネルギーが最適化されていることを示し、配列セットS’は、配列セットSになり、E<Eの場合、非特異的対合の自由エネルギーが最適化されていないことを示し、この場合Metropolis基準に従って、S’をSにセットするかどうかを判断すること、ならびに
(e)アニーリング温度を段階(a)で設定した減衰係数ΔTに従って減衰させ、前段階に記載のSについて段階(b)、(c)および(d)を繰り返し実行し、即ち、モンテカルロのシミュレーテッドアニーリングに基づいて、アニーリング温度がアニーリング終了温度に達するまで、前段階に記載の
【数2】
が相補的な核酸骨格ベースの多量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列になること
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項14】
(9)n=4の場合、対称配列を使用し、上記パラメーターに従って、配列セット
【数3】
を初期化する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
相補的な核酸骨格ベースの多量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列セットからなる核酸のセットであって
こで、前記一本鎖核酸配列セットは、相補的な核酸骨格ベースの三量体複合体、四量体複合体、または五量体複合体を形成するための、以下のグループ1~グループ4:
(グループ1)相補的な核酸骨格ベースの三量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列:
【表5-1】
【表5-2】
(グループ2)相補的な核酸骨格ベースの四量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列:
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
(グループ3)相補的な核酸骨格ベースの五量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列:
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
(グループ4)相補的な核酸骨格ベースの四量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列:
【表8】
に示される配列セットのいずれか1つから選択されることを特徴とする、前記核酸のセット
【請求項16】
前記一本鎖核酸配列は、左旋性核酸、ペプチド核酸、ロック核酸、硫黄修飾核酸、2’-フルオロ修飾核酸、5-ヒドロキシメチルシトシン核酸、ホスホロジアミデートモルホリノ核酸、およびその組み合わせからなる群から選択される核酸からなる配列であることを特徴とする
請求項1に記載の多量体複合体。
【請求項17】
前記一本鎖核酸配列は、ホスホロジアミデートモルホリノ核酸からなる配列であることを特徴とする
請求項1に記載の多量体複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー医学の分野に関し、具体的には、核酸多量化を介した多価タンパク質薬物およびワクチンの構築方法と適用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの生体高分子の場合、それらの凝集または多価状態は、それらのインビボでの活性および半減期に直接影響する。例えば、ほとんどの免疫受容体の活性化には、細胞膜での受容体の凝集が伴い、それによって、細胞内部の下流シグナル伝達経路を活性化する。従って、これらの受容体の天然リガンドまたは抗体は、多価または高価を形成する場合に、受容体を活性化する能力を大幅に向上させることがよくある。また、サイトカイン、成長ホルモン、合成ポリペプチド等の低分子量(MW40kDa)の一部のタンパク質薬物は、腎クリアランスが高く、生体内での半減期が短く、これらのタンパク質薬物は、高価を形成することで分子量を増加させ、半減期を延長することもできる。
【0003】
従って、タンパク質の多価化は、生物医学の分野で注目を集めているプロセスであり、既存の方法が多く存在するが、多くの化学架橋法の場合、結合特異性が低く、結合多量体が不均一であるという問題がある。現在、最も広く適用されている方法は、タンパク質を多価融合タンパク質の形態で細胞により発現、生産すること、有効機能のタンパク質領域と、オリゴマーを形成できるタンパク質とを融合させて、Fc二価融合タンパク質およびGCN4三価融合タンパク質等のキメラ体を形成することである。これらの融合タンパク質は、すべて均一なオリゴマーを形成できるが、融合タンパク質の細胞発現量および活性は、元のタンパク質薬物よりも低く、Fc領域の存在は、免疫系を活性化し、サイトカインの放出を誘導し、細胞毒性を引き起こすリスクをもたらす。従って、この分野では、検証されたタンパク質薬物から非融合タンパク質の携帯で均一な、特異性の高い多価タンパク質を形成できる、簡単で、柔軟かつ効率的な方法の開発が急務となっている。
【0004】
また、タンパク質の多価化は、ワクチン開発にとっても重要である。まず、B細胞ベースのワクチン設計では、ウイルスまたは細菌のタンパク質を抗原としてB細胞受容体(BCR)を活性化することが重要な段階である。BCRは、上記に記載の免疫受容体と同じものであり、その効果的に活性化には、細胞膜上に受容体が凝集する必要があるため、単量体抗原に比較して、高価抗原の方が、B細胞の活性化方面において絶対的に利点を有する。次に、高価抗原は、オリゴマーを形成するための単一の抗原である必要はなく、高価抗原は、あるウイルス内の異なるタンパク質または異なるウイルス株の同じタンパク質の突然変異型およびサブタイプを含むことができ、このように、多様な抗原提示は、理論的に宿主免疫系のポリクローナルB細胞応答(polyclonal response)を誘導して、より広範囲の中和抗体を生成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的は、多価薬物またはワクチンを形成するための核酸カップリングタンパク質薬物の効率的かつ安定な集合に適した、効率的かつ安定的に集合したn段階の核酸オリゴマー集合体骨格設計を提供することである。
【0006】
本発明の第2の目的は、タンパク質薬物を多価高分子に形成して、薬物の半減期を延長し、薬物の活性を増加させるための簡単で効率的な方法を提供することである。
【0007】
本発明の第3の目的は、免疫細胞を活性化し、ワクチンの免疫原性を向上させるために、同じまたは異なるタンパク質抗原と多価高分子複合体を形成するための、簡単で柔軟かつ効率的で、モジュール化の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、相補的な核酸骨格ベースの多量体複合体を提供し、前記複合体は、相補的な核酸骨格を有するn個の単量体で複合形成される多量体であり、ここで、各単量体は、前記核酸一本鎖を有するポリペプチドであり、nは、3~6の正の整数であり、前記多量体において、各単量体の核酸一本鎖およびほかの二つの単量体の核酸一本鎖は、塩基相補性により相補的な二本鎖を形成することにより、相補的な核酸骨格構造を形成する。
【0009】
別の好ましい例において、nは、3、4、5または6である。
別の好ましい例において、前記複合体は、三量体、四量体、または五量体であり、好ましくは前記複合体の構造は、図1に示されたとおりである。
【0010】
別の好ましい例において、前記単量体は、式Iの構造を有し、
Z1-W(I)
式において、
Z1は、ポリペプチド部分(moiety)であり、
Wは、一本鎖核酸配列であり、
「-」は、リンカーまたは結合である。
別の好ましい例において、「-」は、共有結合である。
【0011】
別の好ましい例において、前記核酸配列は、左旋性核酸、ペプチド核酸、ロック核酸、硫黄修飾核酸、2’-フルオロ修飾核酸、5-ヒドロキシメチルシトシン核酸、ホスホロジアミデートモルホリノ核酸(phosphorodiamidate morpholino)核酸、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0012】
別の好ましい例において、前記多量体において、各単量体のZ1は、同一であるか、または異なっている。
別の好ましい例において、前記多量体において、各単量体のWは、異なる。
【0013】
別の好ましい例において、前記単量体は、式IIの構造を有し、
D-[L-W]m(II)
ここで、
Dは、タンパク質の薬物要素部分であり、
Wは、核酸配列であり、
Lは、なしまたはリンカーであり、
「-」は、共有結合であり、
mは、1、2または3である。
別の好ましい例において、mは、1である。
【0014】
別の好ましい例において、前記単量体は、式IIIの構造を有し、
A-[L-W]m(III)
ここで、
Aは、ポリペプチド抗原要素部分であり、
Wは、核酸配列であり、
Lは、なしまたはリンカーであり、
「-」は、共有結合であり、
mは、1、2または3である。
別の好ましい例において、mは、1である。
【0015】
別の好ましい例において、前記核酸配列Wは、式1に示される構造を有し、
X1-R1-X2-R2-X3(1)
ここで、
R1は、塩基相補的対合領域1であり、
R2は、塩基相補的対合領域2であり、
X1、X2およびX3は、それぞれ独立して、なしまたは冗長核酸であり、
「-」は、結合である。
【0016】
別の好ましい例において、R1およびR2の長さは、それぞれ独立して、10~20塩基、好ましくは14~16塩基である。
別の好ましい例において、X1の長さは、0~5塩基である。
別の好ましい例において、X3の長さは、0~5塩基である。
別の好ましい例において、X2の長さは、0~3塩基である。
別の好ましい例において、X2の配列は、A、AA、AGAまたはAAAからなる群から選択される。
【0017】
別の好ましい例において、各単量体のR1は、左隣(または左側)の単量体のR2と塩基相補的対合構造を形成し、R2は、右隣(または右側)の単量体のR1と塩基相補的対合構造を形成する。
【0018】
別の好ましい例において、前記単量体配列は、相補的な核酸骨格ベースの三量体複合体を形成する一本鎖核酸配列SEQ ID No:1~60(表9-1を参照する)のいずれか一つの配列またはその配列セットから選択される。
【0019】
別の好ましい例において、前記単量体配列は、相補的な核酸骨格ベースの四量体複合体を形成する一本鎖核酸配列SEQ ID No:61~140(表9-2を参照する)のいずれか一つの配列またはその配列セットから選択される。
【0020】
別の好ましい例において、前記単量体配列は、相補的な核酸骨格ベースの五量体複合体を形成する一本鎖核酸配列SEQ ID No:141~240(表9-3を参照する)のいずれか一つの配列またはその配列セットから選択される。
【0021】
別の好ましい例において、前記単量体配列は、ホスホロジアミデートモルホリノ(phosphorodiamidate morpholino)核酸である。
【0022】
別の好ましい例において、前記単量体配列は、相補的な核酸骨格ベースの四量体複合体を形成する一本鎖核酸配列SEQ ID No:275~278のいずれか一つの配列またはその配列セットから選択される。
【0023】
本発明の第2の態様は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、
(a)第1の態様に記載の相補的な核酸骨格ベースの多量体複合体と、および
(b)薬学的に許容される担体とを含む。
別の好ましい例において、前記医薬組成物は、ワクチン組成物を含む。
別の好ましい例において、前記医薬組成物は、治療用および/または予防用の医薬組成物を含む。
別の好ましい例において、前記多量体複合体は、三量体複合体、四量体複合体および五量体複合体を含む。
【0024】
本発明の第3の態様は、核酸配列ライブラリーを提供し、前記核酸配列ライブラリーは、第1の態様に記載の相補的な核酸骨格ベースの多量体複合体を形成するための核酸配列を含む。
【0025】
別の好ましい例において、前記核酸配列は、
(a)相補的な核酸骨格ベースの三量体複合体を形成するための核酸配列と、
(b)相補的な核酸骨格ベースの四量体複合体を形成するための核酸配列と、および/または
(c)相補的な核酸骨格ベースの五量体複合体を形成するための核酸配列とを含む。
【0026】
別の好ましい例において、前記核酸配列Wは、式1に示される構造を有し、
X1-R1-X2-R2-X3(1)
ここで、
R1は、塩基相補的対合領域1であり、
R2は、塩基相補的対合領域2であり、
X1、X2およびX3は、それぞれ独立して、なしまたは冗長核酸であり、
「-」は、結合である。
【0027】
本発明の第4の態様は、第1の態様に記載の多量体複合体または前記多量体複合体を含む医薬組成物の調製に使用される、第3の態様に記載の核酸配列ライブラリーの使用を提供する。
【0028】
本発明の第5の態様は、相補的な核酸骨格ベースの多量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列を決定する方法を提供し、以下の段階を含む:
(a)シミュレーテッドアニーリングのパラメーターを設定すること:
アニーリング初期温度、アニーリング終了温度およびアニーリング温度減衰係数ΔTを設定し、
最適化制約パラメーターを設定し、
(1)核酸一本鎖の数n、好ましくは3~6の正の整数であり、
(2)対合配列長さL、好ましくはLは、12~16塩基であり、
(3)対合領域の解離温度閾値T
(4)特異的対合領域配列の自由エネルギー閾値ΔG°、
(5)非特異的対合の自由エネルギー閾値ΔGNS°、
(6)コネクタX2、好ましくはA、AAおよびAAAであり、
(7)二次構造(ヘアピン(hairpin))解離温度閾値Tm-H
(8)対合配列内のCG比PCG、好ましくは、PCGの範囲は、[0.4、0.6)であり、
(9)任意選択で、n=4の場合、対称配列を使用し、上記パラメーターに従って、配列セット
【数1】
を初期化し、
(b)前段階に記載のセットSの目的関数値Eを計算し、即ち、配列間と配列自体との非特異的対合の自由エネルギー(ΔGNS°)の合計を計算し、同時に、非特異的対合の自由エネルギー行列Cn×nを得、その上三角行列中の最小値に対応するSおよびS(1≦i≦n、1≦j≦n)を検索し、SおよびS非特異的対合の自由エネルギーΔGNS°(Si,)に従って、SまたはSをランダムに選択して更新操作を実行して、新しい核酸配列を得、更新された配列セットS’を得ること、
(c)前段階に記載のセットS’中の配列が段階(a)中で設定した最適化制約パラメーター条件を満たすかどうかを判断し、特異的対合領域解離温度T、特異的対合領域配列の自由エネルギーΔG°、二次構造の解離温度Tm-HおよびCG比PCGを含む等のパラメーターを検証し、上記パラメーターが制約条件を満たすと、段階(d)を実行し、そうでない場合、段階(c)を繰り返し実行し、特定のアニーリング温度下で、段階(b)を15回連続して実行しても条件を満たすS’が得られないと、無限循環を防止するために、セットSをセットS’とし、次の段階を実行すること、
(d)前段階に記載のセットS’の目的関数値Eを計算し、EとEとを比較し、E≧Eの場合、非特異的対合の自由エネルギーが最適化されていることを示し、配列セットS’は、配列セットSになり、E<Eの場合、非特異的対合の自由エネルギーが最適化されていないことを示し、この場合Metropolis基準に従って、S’をSにセットするかどうかを判断すること、ならびに
(e)アニーリング温度を段階(a)で設定した減衰係数ΔTに従って減衰させ、前段階に記載のSについて段階(b)、(c)および(d)を繰り返し実行し、即ち、モンテカルロのシミュレーテッドアニーリングに基づいて、アニーリング温度がアニーリング終了温度に達するまで、前段階に記載の
【数2】
が相補的な核酸骨格ベースの多量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列になること。
【0029】
別の好ましい例において、段階(a)におけるシミュレーテッドアニーリングパラメーターの設定は、
例えば、アニーリング初期温度T=50℃±2℃、アニーリング終了温度T=0.12℃±0.02℃に設定し、アニーリング温度減衰係数ΔTは、状況に応じて、一般に0.98±0.01であり、
最適化制約パラメーターを設定し、
(1)核酸一本鎖の数nは、3~6的正の整数であり、
(2)対合配列長さLは、状況に応じて決定し(好ましくは、Lは、12~16塩基である)、
(3)対合領域の解離温度閾値Tは、対合配列長さに応じて決定し(例えば、L=14塩基の場合、T>50℃であり、L=16塩基の場合、T>52℃である)、
(4)特異的対合領域配列の自由エネルギー閾値ΔG°は、対合配列長さに応じて決定し(好ましくは、L=14塩基の場合、ΔG°<-27kcal/molであり、L=16塩基の場合、ΔG°<-29kcal/molである)、
(5)非特異的対合の自由エネルギー閾値ΔGNS°は、配列長さに応じて決定し(好ましくは、ΔGNS°>-7kcal/molである)、
(6)コネクタX2は、状況に応じて決定し(A、AAおよびAAA等であり得る)、
(7)二次構造(ヘアピン(hairpin))解離温度閾値Tm-Hは、状況に応じて決定し(好ましくは、Tm-H<40℃±2℃である)、
(8)対合配列中CG比例PCGの範囲は、[0.4、0.6)であり、
(9)特に、n=4の場合、対称配列を使用し、上記パラメーターに従って、配列セット
【数3】
を初期化することができる。
【0030】
別の好ましい例において、前記各一本鎖核酸配列Wは、式1に示される構造を有し、
X1-R1-X2-R2-X3(1)
ここで、
R1は、塩基相補的対合領域1であり、
R2は、塩基相補的対合領域2であり、
X1、X2およびX3は、それぞれ独立して、なしまたは冗長核酸であり、
「-」は、結合である。
【0031】
別の好ましい例において、段階(d)において、前記最適化セットは、次の条件を満たすセットであり、
(C1)相補的な核酸骨格構造において、標的対合によって形成されたDNA二本鎖構造の自由エネルギー(ΔG°)が小さいか、または最小であり、ならびに
(C2)相補的な核酸骨格構造において、非標的対合のΔGNS°は、大きいか、または最大化される。
【0032】
別の好ましい例において、段階(d)において、前記利点セットは、次の条件をさらに満たし、
(C3)R1およびR2領域の対合解離温度T>50℃である(L=14塩基の場合)。
【0033】
別の好ましい例において、段階(c)において、最近傍法によりDNAオリゴマー(即ち、相補的な核酸骨格構造)の自由エネルギー(ΔG°)を計算する。
【0034】
別の好ましい例において、段階(c)において、DNAオリゴマー(即ち、相補的な核酸骨格構造)を10の異なる最近傍ペア相互作用に分解し、これらのペア相互作用は、AA/TT;AT/TA;TA/AT;CA/GT;GT/CA;CT/GA;GA/CT;CG/GC;GC/CGおよび和GG/CCであり、これらのペア相互作用のエンタルピー(enthalpy、ΔH°)およびエントロピー(entropy、ΔS°)に基づいて、対応するそれぞれのΔG°値を計算し、次いで相補的な核酸骨格構造に含まれるペア相互作用の自由エネルギーを合併し(または合計する)、相補的な核酸骨格構造の自由エネルギーを取得する。
【0035】
別の好ましい例において、前記方法は、反復プロセスに全体的な最適解を取得するために、段階(b)、(c)および(d)を複数買い繰り返す(即ち、n1回反復を実行する)。
【0036】
別の好ましい例において、前記反復プロセスにおいて、Metropolis基準に従って、アルゴリズムが終了時に可能な限り全体的な最適解を見つけることができるように、より悪い解は、限られた範囲で受け入れられ、より劣った解が受け入れられる確率は、徐々に0に近づく傾向がある。
【0037】
別の好ましい例において、次の最適化目的関数を使用してシミュレーテッドアニーリングの反復を模擬することによって、非標的対合領域の自由エネルギーを最適化し、
【数4】
ΔG°(Si,)は、配列Sおよび配列Sの非標的対合の自由エネルギーであり、
【数5】
は、すべての配列間の非標的対合の自由エネルギーの合計であり、その値は、負であり、ここで、この負の値が大きいほど、対象外の非標的対合減少に有利である。
【0038】
本発明の第6の態様は、相補的な核酸骨格ベースの多量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列セットを提供し、前記一本鎖核酸配列セットは、第5の態様に記載の方法によって決定される。
【0039】
別の好ましい例において、前記セットは以下からなる群から選択される。
(S1)相補的な核酸骨格ベースの三量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列:
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
(S2)相補的な核酸骨格ベースの四量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列:
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0040】
(S3)相補的な核酸骨格ベースの五量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列:
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0041】
本発明の第7の態様は、相補的な核酸骨格ベースの多量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列を決定するための装置を提供し、前記装置は、
(M1)シミュレーテッドアニーリングパラメーター、最適化制約パラメーターおよび任意選択の最適化される核酸配列を入力するために使用される、入力モジュールと、
ここで、前記シミュレーテッドアニーリングパラメーターの設定は、アニーリング初期温度、アニーリング終了温度およびアニーリング温度減衰係数ΔTを含み、
前記最適化制約パラメーターは、
(1)好ましくは3~6の正の整数である、核酸一本鎖の数nと、
(2)好ましくは12~16塩基である、対合配列長さLと、
(3)対合領域の解離温度閾値Tと、
(4)特異的対合領域配列の自由エネルギー閾値ΔG°と、
(5)非特異的対合の自由エネルギー閾値ΔGNS°と、
(6)好ましくはA、AAおよびAAAである、コネクタX2と、
(7)二次構造(ヘアピン(hairpin))解離温度閾値Tm-Hと、
(8)好ましくは、PCGの範囲は、[0.4、0.6)である、対合配列内のCG比PCGとを含み、
(M2)以下のサブ段階を実行することにより、最適化された一本鎖核酸配列またはそのセットを取得するように構成される、最適化操作モジュールと、
(z1)初期セットSの目的関数値Eを計算し、即ち、配列間と配列自体との非特異的対合の自由エネルギー(ΔGNS°)の合計を計算し、同時に非特異的対合の自由エネルギー行列Cn×nを得、その上三角行列中の最小値に対応するSおよびS(1≦i≦n、1≦j≦n)を検索し、SおよびS非特異的対合の自由エネルギーΔGNS°(Si,)に従って、SまたはSをランダムに選択して更新操作を実行して、新しい核酸配列を得、更新された配列セットS’を得、
(z2)前段階に記載のセットS’中の配列が設定した最適化制約パラメーター条件を満たすかどうかを判断し、特異的対合領域解離温度T、特異的対合領域配列の自由エネルギーΔG°、二次構造の解離温度Tm-HおよびCG比PCGを含むパラメーターを検証し、上記パラメーターが制約条件を満たすと、段階(z3)を実行し、そうでない場合、段階(z2)を繰り返し実行し、特定のアニーリング温度下で、段階を15回連続して実行しても条件を満たすS’が得られないと、無限循環を防止するために、セットSをセットS’とし、次の段階を実行し、
(z3)前段階に記載のセットS’の目的関数値Eを計算し、EとEとを比較し、E≧Eの場合、非特異的対合の自由エネルギーが最適化されていることを示し、配列セットS’は、配列セットSになり、E<Eの場合、非特異的対合の自由エネルギーが最適化されていないことを示し、この場合Metropolis基準に従って、S’をSにセットするかどうかを判断する必要があり、ならびに
(z4)アニーリング温度を、設定した減衰係数ΔTに従って減衰させ、前段階に記載のSについて段階(z1)、(z2)および(z3)を繰り返し実行し、即ち、モンテカルロのシミュレーテッドアニーリングに基づいて、アニーリング温度がアニーリング終了温度に達するまで、前段階に記載の
【数6】
を相補的な核酸骨格ベースの多量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列になり、ならびに
(M3)最適化された一本鎖核酸配列またはそのセットを出力するために使用される、出力モジュールとを含む。
【0042】
別の好ましい例において、前記最適化制約パラメーターは、四量体(n=4)の場合、対称配列を使用し、上記パラメーターに従って、配列セット
【数7】
を初期化することをさらに含む。
【発明の効果】
【0043】
本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と以下(例えば、実施例)に具体的に説明される各技術的特徴との間を、互いに組み合わせることにより、新しいまたは好ましい技術的解決策を構成することができることに理解されたい。スペースに限りがあるため、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】多量体の模式図を示す。
図2】当該特許に言及されるシミュレーテッドアニーリングのフローチャートを示す。
図3】三量体の配列特異的な対の模式図を示す。
図4】三量体の最適化配列核酸骨格集合のランニング図を示す。
図5】四量体の最適化後の配列特異的な対の模式図を示す。
図6】四量体の最適化配列間の非特異的対合領域の自由エネルギーの合計の統計図を示す。
図7】四量体の最適化配列核酸骨格集合のランニング図を示す。
図8】四量体から五量体への変換の模式図を示す。
図9】五量体変換スキーム1の最適化後の配列不対合領域の自由エネルギーの合計の統計図を示す。
図10】五量体変換スキーム1の最適化後の配列核酸骨格集合のランニング模式図を示す。
図11】五量体スキーム2の最適化後の配列特異的な対の模式図を示す。
図12】五量体変換スキーム2の最適化後の配列不対合領域の自由エネルギーの合計の統計図を示す。
図13】五量体変換スキーム2の最適化後の配列核酸骨格集合のランニング模式図を示す。
図14】G-CSFとL-DNAとのカップリングを示す。
図15】(L-DNA)-G-CSFコンジュゲートの精製効果図を示す。
図16】一価、二価および三価のG-CSF複合体集合の効果図を示す。
図17】G-CSFインビトロ活性に対するL-DNA四量体フレームワークの影響を示す。
図18】L-DNA四量体集合の二価および三価のG-CSFのインビトロ活性評価を示す。
図19】a.HiTrap Capto MMCを使用したSM(PEG)-PMO1の精製、b.SM(PEG)-PMO1と抗HSAナノボディとのカップリング効率の電気泳動ゲル図を示す。
図20】陽イオンモードの液体クロマトグラフィー質量分析によるPMO1(a)、SM(PEG)-PMO1(b)、抗HSA Nb(c)、抗HSA Nb-PMO1(d)の同定を示す。
図21】スーパーデックスTM 75増加 10/300 GLを使用したナノボディとPMO-ナノボディコンジュゲートとの分離を示す。
図22】NAPPA-PMO集合サンプルの電気泳動ゲル図および模式図を示す。左:pmo-NAPPA4-HSA(1,2,3)、右:pmo-NAPPA4-HSA(1)。
図23】抗HSA Nb、抗HSA Nb-PMO1およびpmo-NAPPA4-HSA(1)とヒト血清アルブミン(human serum albumin)タンパク質との結合活性のELISA検出を示す。
図24】pmo-NAPPA4-HSA(1)のヌクレアーゼ分解耐性実験を示す。左:三つのヌクレアーゼで処理したpmo-NAPPA4-HSA(1)のSDS-PAGE電気泳動ゲル図、右:三つのヌクレアーゼで処理したDDNA-NAPPA4のアガロースゲルの電気泳動ゲル図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明者らは、広範囲かつ詳細な研究の結果、多価タンパク質薬物およびそのライブラリー、ならびにその調製方法および適用を初めて開発した。本発明の薬物ライブラリー、調製方法を使用すると、必要に応じて、短時間作用型タンパク質薬物を、迅速、効率的、低コスト、高収率で多価複合体に形成して薬物半減期を向上させるか、または単量体抗原を高価抗原に形成してその免疫原性(immunogenicity)を向上させることができる。これに基づいて、本発明を完成させた。
【0046】
具体的には、本発明は、nタンパク質薬物ユニットを含む多価タンパク質薬物を提供し、ここで、各薬物ユニットは、同一種の薬物要素部分および前記薬物要素部分と結合された異なる核酸要素部分を含み、nは、≧2の正の整数であり、n個の異なる核酸要素部分は、核酸塩基相補性によりn量体を形成し、それによって前記多価タンパク質薬物を構成し、本発明の多価タンパク質薬物は、迅速な集合(例えば、1分間)によって安定な相補的核酸塩基対合構造を形成する(複雑なペプチド結合またはほかの化学修飾等ではない)。実験によると、本発明の薬物は、高価化によって分子量を増加させることにより、動物のインビボでの半減期を延長できることを示す。
【0047】
また、同じ実施形態に基づいて、前記薬物要素は、ワクチンの研究開発で使用される抗原でもあり得、違いは、各抗原ユニットが、同じまたは異なる抗原要素部分、および前記抗原要素部分と結合した異なる核酸要素部分を含むことであり、n個の異なる核酸要素部分は、核酸塩基相補性によりn量体を形成し、それによって前記多価抗原を構成する。
最後に、本発明は、上記に記載の薬物または抗原ユニットを多価高分子複合体に迅速かつ正確に自己集合させるために使用される効率的、正確に2~5量体に集合した核酸配列群を含む、高度に最適化された核酸配列ライブラリーを提供する。
【0048】
用語
特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
本明細書に使用されるように、具体的に記載された値に関連して使用される場合、「約」という用語は、当該値が記載された値から1%以下しか変化しない可能性があることを指す。例えば、本明細書に使用されるように、「約100」という表現は、99から101までの間のすべての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4等)を含む。
【0049】
薬物D
本発明において、前記薬物要素部分は、タンパク質薬物、ポリペプチド薬物である。
典型的には、前記タンパク質薬物は、サイトカイン、ホルモン(例えば、インスリン、成長ホルモン等)、抗体薬物、ポリペプチドを含むが、これらに限定されない。
本発明の好ましい実施例において、前記タンパク質薬物は、白血球減少症を治療するためのG-CSFである。
【0050】
抗原ライブラリーA
本発明は、抗原ライブラリーを提供し、前記抗原ライブラリーは、N抗原ユニットを含み、
ここで、前記抗原ユニットは、抗原要素部分、および前記抗原要素部分と結合した核酸要素部分を含み、異なる核酸要素部分は、核酸塩基相補性によりn量体を形成し、それによって多価抗原を構成し、
ここで、前記抗原要素部分は、タンパク質抗原、ポリペプチド抗原であり、
典型的には、前記タンパク質抗原、ポリペプチド抗原は、ウイルス,細菌タンパク質、その構造領域、および断片を含むが、これらに限定されない。
【0051】
本発明において、前記抗原要素部分は、ライブラリーM個の異なる抗原タンパク質から選択され、M≦Nであり、M個の異なる抗原タンパク質は、特定のウイルスの異なるタンパク質または異なるウイルス株の同じタンパク質の突然変異体を含む。
本発明の好ましい実施例において、前記タンパク質抗原は、新型コロナウイルスSARS-CoV-2由来であり、具体的には、ウイルススパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)によって形成される高価抗原である。
【0052】
左旋性核酸
左旋性核酸とは、自然界に存在する右旋性核酸(D-核酸)に対して、鏡像のような存在を指し、左旋性DNA(L-DNA)および左旋性RNA(L-RNA)に分けられる。左旋性(キラル中心)は、主に核酸のデオキシリボースまたはリボース部分に存在し、鏡像反転している。従って、左旋性核酸は、血漿中に遍在するヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ)によって分解されない。
【0053】
調製方法
1.L-核酸鎖フレームワークの設計および調製
本発明によれば、L-核酸鎖フレームワークは、2本およびそれ以上のL-核酸一本鎖の塩基対合によって形成される。各L-核酸一本鎖の5’または3’末端は、すべてその後の修飾のための基(例えば、NH2等)に活性化成され、次いでリンカー(例えば、SMCC、SBAP等)の一末端がL-核酸一本鎖上の活性化基にカップリングされる。リンカーを有するL-核酸は、所望のL-核酸鎖フレームワークに集合させることができる。別の好ましい例において、L-核酸一本鎖の5’または3’末端の活性化官能基(例えば、アルデヒド(aldehyde)、マレイミド(maleimide)等)は、核酸合成にすでに含まれている。リンカーを有するL-核酸が成功的にフレームワークに自己集合できることが確認された後、リンカーを有するL-核酸一本鎖をそれぞれ抗体にカップリングさせて、その後の集合を行うことができる。本発明のL-核酸フレームワークは、基本的に次のような段階によって調製されることができる。
【0054】
1.1.迅速に自己集合可能なL-核酸一本鎖の設計
必要な多価数n(例えば、三量体、四量体)を決定し、多価数nに応じて必要なL-核酸一本鎖数nを決定し、対応する数のL-核酸一本鎖配列を設計し、塩基対合を最適化することで標的核酸フレームワークの安定性を調節し、核酸鎖間の非特異的な対の可能性を減少する。核酸配列設計の詳細については、発明の概要および実施例に具体的に記載する。
【0055】
1.2.L-DNAまたはL-RNAの活性化
L-核酸の活性化は、その5’末端(X1)または3’末端(X3)の活性基の修飾、およびその後のリンカーカップリングを含む。活性基の修飾は、核酸合成会社によってカスタマイズでき、リンカーは、一般に二機能性基を有し、即ち、一方の末端は、核酸の活性基にカップリングでき、もう一方の末端は、タンパク質上の特異的部位(例えば、NH3,SH)に結合できる。
【0056】
本発明の好ましい実施形態によれば、フレームワークを構成するすべてのL-核酸は、5’末端でアルデヒド修飾を添加し、L-核酸の活性化を完了し、その後タンパク質のN末端α-アミン(amine)にカップリングすることができる。
【0057】
2.タンパク質-L-核酸複合体の調製方法
まず、L-核酸の5’末端または3’末端をアルデヒドで修飾し、次いで低pH(5-6)条件下で、還元的アミノ化反応(reductive amination reaction)を通じて、L-核酸のアルデヒド基をタンパク質のN末端NHに特異的に結合する。
【0058】
アルゴリズムおよびアルゴリズムによって最適化された核酸配列
本発明は、相補的な核酸骨格ベースの多量体複合体を形成するための一本鎖核酸配列を決定する方法および装置をさらに提供する。好ましくは、前記方法は、本発明の好ましいアルゴリズムを含む。
【0059】
典型的には、本発明のコンピューターアルゴリズムによって最適化された核酸配列ライブラリーは、(a)塩基相補的対合の自己集合によって三量体を形成できる核酸配列、(b)塩基相補的対合の自己集合によって四量体を形成できる核酸配列、ならびに(c)塩基相補的対合の自己集合によって五量体を形成できる核酸配列を含むことができる。
代表的な核酸配列によって形成される代表的な複合体は、例えば、図1に示される三量体、四量体、五量体分子である。
【0060】
好ましくは、本発明的に記載の核酸配列Wは、式1に示される構造を有し、
W=X1-R1-X2-R2-X3(1)
ここで、
R1は、塩基相補的対合領域1であり、
R2は、塩基相補的対合領域2であり、
X1、X2およびX3は、それぞれ独立して、なしまたは冗長核酸であり、
R1およびR2の長さは、14~16塩基であり、
X1およびX3の長さは、0~5塩基であり、
X2の長さは、0~3塩基であり、配列は、A、AA、AGAまたはAAAであり、
ここで、核酸配列のR1は、異なる核酸配列のR2と標的対合を形成し、核酸配列のR2は、別の核酸配列のR1と標的対合を形成する。
本発明において、前記核酸配列の任意の領域の自己集合は、非標的対合に属し、これは、設計において回避する必要がある。
【0061】
好ましくは、本発明に記載の核酸配列は、シミュレーテッドアニーリング(Simulated Annealing、SA)のコンピューターアルゴリズムによって設計または最適化されることができる。
【0062】
前記コンピューターアルゴリズムは、標的対合によって形成されるDNA二本鎖構造の自由エネルギー(free energy、ΔG°)を最小化し、同時に、非標的対合のΔG°を最大化し、
具体的には、DNA二本鎖構造の安定性は、配列中の各最近傍の塩基対に依存し、任意のワトソンクリックDNA二本鎖構造には、10個の異なる最近傍相互作用が存在する可能性があり、これらのペアの相互作用は、AA/TT;AT/TA;TA/AT;CA/GT;GT/CA;CT/GA;GA/CT;CG/GC;GC/CG;GG/CCである。
【0063】
より具体的には、上記に記載の10個の塩基対のΔG°値は、任意の温度化で、エンタルピー(enthalpy、ΔH°)およびエントロピー(entropy、ΔS°)によって計算されることができ、表1は、10配列のエンタルピー、エントロピーおよび自由エネルギーデータを統計した。
【表4】
注:ΔH°、ΔS°およびΔG°は、すべて1M NaCl、25℃、pH7の条件下で測定される。ΔG°は、IDTサイト(https://sg.idtdna.com/calc/analyzer)から測定される。
【0064】
表1の熱力学値を使用し、DNAオリゴマーのエンタルピー値ΔH°および自由エネルギー値ΔG°は、すべて最近傍法によって効果的に予測されることができる。GGAATTCC/CCTTAAGGの相補的対合を例として、最近傍法によってΔG°=-14.63kcal/molが計算される。
【0065】
前記シミュレーテッドアニーリングは、ΔGNS°値を最適化することに加えて、核酸配列対の解離温度(T)の制約を実施して、R1およびR2領域のT>50℃(L=14塩基の場合)を確保する。
【0066】
最近傍モデルは、熱力学計算に基づいて、DNA二本鎖の安定性を正確に予測し、所定の塩基配列に対する当該モデルの予測は、最近傍の塩基対に基づく。その融解温度の計算は、エンタルピー(enthalpy、ΔH°)およびエントロピー(entropy、ΔS°)に関し、その計算方法は、次のとおりであり、
【数8】
ここで、Rは、定数(1.987cal K-1mol-1)であり、CTは、0.1μMとして与えられる鎖濃度であり、ΔS°[Na]は、所定のナトリウムイオン濃度下でのDNA二本鎖のエントロピー値であり、ΔH°は、所定の条件下でのエンタルピー値である。
【0067】
シミュレーテッドアニーリングは、一般的な確率的アルゴリズムであり、それは、モンテカルロの考え方に基づいて設計された最適化問題を近似的に解く手法であり、一定期間内に広い探索空間における近似的な最適解を見つけることを目的とする。シミュレーテッドアニーリングのアイデアは、物理学における固体物質のアニーリングプロセスに由来し:まず固体を十分に加熱してからゆっくりと冷却し、加熱する場合、固体内部の粒子が自由に動き回る内部エネルギーが増大し、その後温度が徐々に低下すると、粒子は整然とし、各温度で平衡状態に達する傾向があり、凝縮点付近の温度低下速度が十分に遅い場合、基底状態に達し、内部エネルギーが最小限に抑えられる。Metropolis基準によれば、粒子が温度Tの場合に平衡をとる傾向がある確率は、exp(-ΔE/(KT))であり、ここで、Eは、温度Tの場合の内部エネルギーであり、ΔEは、その変化量であり、Kは、ボルツマン(Boltzmann)定数である。組み合わせ最適化問題にも同様のプロセスがあり、固体微小状態iを解Xとしてシミュレートされ、目的関数は、状態iの場合の内部エネルギーに相当し、制御パラメーターTで固体温度をシミュレートする。Tの値ごとに、「新しい解の生成→目的関数の差の計算→受け入れるかどうかの判断→受け入れる/破棄」という反復プロセスを繰り返し、T値を徐々に減衰させ、反復プロセスにおいて、Metropolis基準に従って、より不適切な解が限界的に受け入れられ、より不適切な解の確率は、徐々に0に近づく傾向があるため、アルゴリズムは、終了時に可能な限り全体的な最適解を見つけることができる。
【0068】
本発明において、多量体核酸の一本鎖間の非標的対合領域の自由エネルギーを内部エネルギーとしてシミュレートし、核酸一本鎖間の標的対合領域の自由エネルギーと解離温度とを確保する状況下で、シミュレーテッドアニーリングの反復により、非標的対合領域の自由エネルギーを最適化し、最後に最適化された一本鎖は、多量体の集合に有利する。使用される最適化目的関数は、次のとおりである。
【数9】
【0069】
ΔG°(Si,)は、配列Sと配列Sとの非標的対合の自由エネルギーであり、
【数10】
は、すべての配列間の非標的対合の自由エネルギーの合計であり、その地は、負であり、この値が大きいほど非標的対合の現象に有利する。従って、アニーリングアルゴリズムによるエネルギー最小化を解くという考え方に基づいて目的関数を構築し、ΔG°(Si,)の前に負の符号をつけて、それを正の数に変換し、この場合
【数11】
の値が小さいほど非標的対合の減少に有利する。
【0070】
代表的な本発明のアルゴリズムのフローチャートは、図2に示されたとおりである。
本発明において、シミュレーテッドアニーリングにランダムな要素を導入し、毎回の反復更新のプロセスでは、現在よりも悪い解が一定の確率で受け入れられるため、局所的な最適解を飛び出して全般的な最適解に達することが可能である。
【0071】
多価高分子複合体
本発明は、上記アルゴリズムで設計した核酸多量体を用いてタンパク質薬物を媒介して形成された多価高分子複合体をさらに提供し、前記複合体は、向上させた薬物の半減期および活性を有する。
【0072】
好ましくは、前記核酸配列は、核酸配列ライブラリーにおいてn量体に特異的に集合させた核酸配列群である。
好ましくは、本発明において、前記タンパク質薬物は、半減期または活性を向上させるための多価である必要があるタンパク質薬物である。
【0073】
典型的には、前記核酸配列群の各核酸鎖は、それぞれ前記タンパク質薬物に結合して、式2に示される構造を有するタンパク質薬物-核酸鎖ユニットを形成し、
D-[L-W]、i=1~n(2)
ここで、
Dは、タンパク質薬物要素部分であり、
各Wiは、独立して、核酸配列であり、前記核酸配列は、左旋性核酸、ペプチド核酸、ロック核酸、硫黄修飾核酸、2’-フルオロ修飾核酸、5-ヒドロキシメチルシトシン核酸、またはその組み合わせからなる群から選択され、前記核酸配列は、上記に記載のn量体を形成できる核酸配列群から選択される式1に示される構造を有し、
Lは、リンカーであり、前記リンカー部分は、Wiの合成または調製にすでに含まれており、WiのX1またはX3に結合し(式1を参照する)、
「-」は、共有結合である。
【0074】
別の好ましい例において、前記薬物要素部分は、分子量を増加させて半減期を向上させる必要があるタンパク質薬物およびポリペプチド薬物、ならびに多価を形成して活性を向上させる必要があるタンパク質薬物およびポリペプチド薬物からなる群から選択される。
【0075】
別の好ましい例において、Lは、D上のN末端のα-アミン(α-amine)またはリジン(lysine)e-アミンを結合するために使用される、D末端付近にアルデヒド(aldehyde)、NHSエステル(ester)または同様の官能基を有する。
【0076】
別の好ましい例において、Lは、D上の遊離チオール(free thiol)(-SH)官能基を結合するために使用される、D末端付近にマレイミド官能基またはハロアセチル(haloacetyl)(例えば、ブロモアセチル(bromoacetyl)、ヨードアセチル(iodoacetyl)等)の官能基を有する。
【0077】
別の好ましい例において、Dは、天然タンパク質、組換えタンパク質、化学修飾タンパク質、合成ポリペプチドからなる群から選択される。
別の好ましい例において、Dは、結合式1のL-Wを結合するために、部位特異的修飾またはアミノ酸の部位特異的付加を有することができる。
【0078】
前記タンパク質薬物は、n量体に集合できるそれぞれ異なるL-Wに結合して、タンパク質薬物の自己集合ユニットであるD-[L-W]、D-[L-W]、…、D-[L-W]を形成し、
タンパク質薬物の自己集合ユニットであるD-[L-W]、D-[L-W]、…、D-[L-W]は、溶液中で等モル混合することにより、タンパク質薬物の多価分子複合体に集合される。
【0079】
本発明は、上記アルゴリズムによって設計された核酸多量体を用いて一つまたは複数の種の抗原を媒介して多価高分子複合体を形成して、インビボで中和抗体を修道する際のワクチンの効果を向上させ、
ここで、前記核酸配列は、核酸配列ライブラリーにおいてn量体に特異的に集合させる核酸配列群であり、
ここで、前記抗原は、抗原または抗原ライブラリーであり、前記抗原ライブラリーは、M種の異なる抗原タンパク質を含み、1≦M≦nである。
【0080】
前記核酸配列群の各核酸鎖は、それぞれ前記抗原ライブラリー内の抗原に結合して、式3に示される構造を有する抗原-核酸鎖ユニットを形成し、
Ak-[L-W]、i=1-n、k=1-M(3)
ここで、
Akは、前記抗原ライブラリーの抗原kであり、一つのAkは、それぞれ一つまたは複数の種のL-W(例えば、:A1-[L-W]、A1-[L-W]、A-[L-W]、A-[L-W])に対応し、
式3の他の態様は、上記の式3と同じであり、
前記抗原タンパク質は、n量体に集合できる異なるL-Wにそれぞれ結合して、A-[L-W]、A-[L-W]、…、A-[L-W]等の抗原自己集合ユニットを形成する。
抗原自己集合ユニットは、溶液中で等モル混合することにより、多価抗原複合体に集合させる。
【0081】
本発明の主な利点は、次のとおりである。
(1)本発明は、融合タンパク質の再構築、または複雑な化学修飾および架橋を必要とせずに、既製の短時間作用型タンパク質薬物のタンパク質薬物の多価化を完了し、その半減期および活性を向上させることができ、L-核酸のアルデヒド修飾は、タンパク質のN末端アミンに特異的に結合して、オリゴマーに自己集合できるタンパク質薬物ユニットを形成することができる。
(2)本発明のタンパク質薬物ユニット(タンパク質-核酸リンカー)は、左旋性核酸鎖の媒介を利用して、タンパク質薬物の多価化を1分間内に完了することができる。
(3)ワクチン開発については、本発明は、単量体タンパク質抗原を高価に形成刑して、その免疫原性を向上させることができる。
(4)ワクチン開発については、本発明は、異なるウイルスまたは細菌毒株的抗原突然変異型およびサブタイプを多重高価抗原に集合して、より広範囲な中和抗体を誘導することもできる。
【0082】
以下、本発明は、具体的実施例と併せてさらに説明される。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例において、具体的条件を示さない実験方法は、通常、例えば、Sambrookら、分子クローニング:実験マニュアル(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)に記載される条件等の従来の条件、またはメーカーによって提案された条件に従う。特に明記しない限り、パーセンテージと部数は、重量のパーセンテージおよび重量の部数である。
【0083】
実施例1:三量体核酸骨格集合体の設計、合成および検証
図1(A)の形状に従って三つの対になることができる核酸を設計する。具体的には、R核酸一本鎖は、R核酸一本鎖と特異的な相補的対合を行うが、他の核酸一本鎖とは対にならず、同様に、R、Rは、それぞれR、Rと特異的な相補的対合になるが、他の核酸一本鎖とは対にならず、特異的な相補的対合の自由エネルギー(ΔG°)は、非特異的対合の自由エネルギー(ΔGNS°)よりもはるかに小さく、特異的な相補的対合の自由エネルギー(ΔG°)は、-29kcal/mol未満であるが、非特異的対合の自由エネルギー(ΔGNS°)は、すべて-7kcal/molより大きく、このように、三量体の形態は、反応系で最も安定する。三量体最適化の具体的な実施段階は、模式図2で説明されたとおりであり、そのアニーリングパラメーターは、アニーリング初期温度T=50℃、アニーリング終了温度T=0.12℃、アニーリング温度減衰係数ΔT=0.98(アニーリング初期温度は、毎回現在の0.98まで減衰する)であり、最適化制約パラメーターは、対合配列の長さL=16塩基、解離温度閾値T>54℃、対合配列の自由エネルギー閾値:ΔG°<-29kcal/mol、非特異的対合の自由エネルギー閾値:ΔGNS°>-7kcal/molに制約する。最適化の具体的な実施段階は、次のとおりである。
【0084】
配列初期化:パラメーター初期化対合配列
【数12】
に基づいて、塩基相補的対合に従って、R、RおよびRを得、六つの配列は、図1(A)に示されるようにスプライスされて、最終的に初期化配列セット
【数13】
を得る。
【0085】
新しい解の生成:新しい解S’は、すべて配列セットSを更新することによって得られる。まず、
【数14】
を計算し、これは、セットSの非特異的な対合で標的対合に最も大きな影響を与える二つの配列SおよびSを見つけるためであり、次いでΔG°(Si,)に従って、非標的対合領域は、SまたはSをランダムに選択して更新して、新しい核酸配列を得、この核酸配列の対合領域の解離温度(T)が54℃より高いかどうか、同時に対合領域の自由エネルギー(ΔG°)が-29kcal/mol未満であるかどうかを確認し、解離温度および対合領域の自由エネルギー(ΔG°)の制約要件が満たされないと、更新を繰り返し、解離温度および対合領域の自由エネルギー(ΔG°)の制約要件が満たされると、塩基相補的対合の原則に従ってSを更新して、最終的に新しい配列セットS’を得る。15回更新しても、得られた新しい核酸配列が解離温度および対合領域の自由エネルギー(ΔG°)の制約要件をずっと満たさないと、無限循環を防止するために、を新しい解S’にセットする。
【0086】
最適化判断:式2に従ってセットSおよびS’の目的関数値EおよびEi+1をそれぞれ計算し、Ei+1-E≧0の場合、更新により非標的対合の自由エネルギー(ΔGNS°)が最適化されることを意味すると、S←S’となり、新しい解S’は、Sになる。Ei+1-E<0の場合、更新により劣化した解が得られたことを意味し、Metropolis基準に従って、確率p=exp(-ΔE/T)を計算し、同時にr、rε[0,1)をランダムに生成し、p>rの場合、この劣化した解を受け入れ、そうでない場合、劣化した解を拒否する。最後にアニーリング初期温度は、現在の0.98まで減衰し、次の新しい解を生成し、アニーリング終了温度まで減衰するまで、最適化後の配列セットを得る。
【0087】
表2_1における最適化後の配列は、上記アルゴリズムの最適化によって得られ、各配列の5’末端Aの目的は、活性基の修飾およびその後のリンカーカップリングである。非標的対合の自由エネルギー(ΔGNS°)行列表および標的対合領域パラメーター指標表において、いくつかの主要なパラメーター値が統計される。三量体最適化後の配列特異的な対模式図については、図3を参照し、対応する核酸骨格ランニング図(図4)から、レーン(Lane)9は、人工的に設計された三量体であり、そのバンドは、不明瞭で尾を引いていることがわかり、レーン10は、最適化後の配列S、SおよびSによって形成されたメインバンドであり、三量体が形成されており、非常に高い安定性を示していることがわかる。
【0088】
【表5】
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【0091】
実施例2:四量体の核酸骨格集合体の設計、合成および検証
図1(B)の形状に従って対合することができる核酸を設計する。ここで、核酸一本鎖R、R、RおよびRは、それぞれ核酸一本鎖R、R、RおよびRと特異的な相補的対合を行うが、他の核酸一本鎖とは対にならず、特異的な相補的対合の自由エネルギー(ΔG°)は、非特異的対合の自由エネルギー(ΔGNS°)よりもはるかに小さく、特異的な相補的対合の自由エネルギー(ΔG°)は、-27.4kcal/mol未満であるが、非特異的対合の自由エネルギー(ΔGNS°)は、すべて-7kcal/molより大きく、このように、四量体の形態は、反応系で最も安定する。四量体最適化の具体的な実施段階は、模式図2で説明されたとおりであり、そのアニーリングパラメーターは、アニーリング初期温度T=50℃、アニーリング終了温度T=0.12℃、アニーリング温度減衰係数ΔT=0.98(アニーリング初期温度は、毎回現在の0.98まで減衰する)であり、最適化制約パラメーターは、対合配列の長さL=14塩基、解離温度閾値T>52℃、対合配列の自由エネルギー閾値:ΔG°<-27.4kcal/mol、非特異的対合の自由エネルギー閾値ΔGNS°>-7kcal/molに制約する。
【0092】
最適化の具体的な実施段階は、次のとおりである。
配列初期化:パラメーター初期化対合配列
【数15】
に基づいて、塩基相補的対合に従って、R、R、RおよびRを得、八つの配列は、図1(B)に示されるようにスプライスされて、最終的に初期化配列セット
【数16】
を得る。四量体実験中に、固定コア構造は、核酸配列の集合効率を効果的に向上させることができ、核酸配列式1に基づいて、核酸配列W2を発展させることができ、W2は、式4の構造を有し、
W2=X1-Q1-C1-X2-C2-Q2-X3(4)
ここで、C1およびC2は、固定コア構造部分であり、Q1およびQ2は、固定コア構造以外の配列である。
【0093】
【表8】
【0094】
新しい解生成:実施例1の新しい解の生成と同じ。一方、固定コア構造が使用される場合、更新には、固定コア構造部分を含まず、パラメーター制約を厳密に遵守するには、新しい核酸配列の対合領域の解離温度(T)が52℃より高く、同時に対合領域の自由エネルギー(ΔG°)が-27.4kcal/mol未満である必要がある。
最適化判断:実施例1の最適化判断と同じ。
【0095】
表4_1における最適化後の配列は、上記アルゴリズムの最適化によって得られ、その特異的な対の模式図は、図5に示されたとおりであり、四量体の最適化配列は、最適化中の非対標的の自由エネルギーの破線統計図は、6に示されたとおりであり、本発明は、コネクタを追加する場合、コネクタを追加しない最適化配列の自由エネルギー(ΔGNS°)に大きな影響を与えないことを追求するため、コネクタの追加の有無に関係なく最適化後の配列の自由エネルギー(ΔGNS°)行列の合計は可能な限り大きくなるため、最適化中には、コネクタを追加しない最適化配列の目的関数値を統計し、コネクタを追加した最適化配列のみを最終検出し、対応する核酸骨格ランニング図(図7)から、レーン15は、人工的に設計された四量体のバンドであり、尾を引く現象があり、レーン16は、アルゴリズム最適化後の配列S、S、SおよびSによって形成された約100bpのメインバンドであり、四量体が形成されたことを示し、非常に高い安定性を示していることがわかる。
【0096】
上記四量体実施段階で主に最適化するのは、配列間の非特異的対合の自由エネルギーであるが、配列自己折り畳みによって形成される二次構造も、四量体の集合に大きな影響を与える。配列自体が形成する二次構造の解離温度が高すぎると、一度このような安定な二次構造が形成されると、そのような状態を崩すことが難しくなり、四量体集合が困難になる。従って、四量体の集合を制御する必要がある四つの配列に対応する二次構造の解離温度は、高すぎてはならない。四量体の場合、四つの核酸配列の二次構造の解離温度を制御する必要があり、対称構造を使用すると(図1におけるR、R、R、Rは、それぞれR、R、R、Rと対称を保持する)、二つの配列間に類似な二次構造が出現し、両者の二次構造の解離温度に大きな差が生じなくなり、この場合二つの核酸配列の二次構造を制御するだけで前述の効果が得られるため、対称は、四量体最適化において二次構造の制御に有利する。
【0097】
【表9】
【0098】
【表10】
【0099】
【表11】
【0100】
実施例3:五量体核酸骨格集合体の設計、合成および検証
四量体の最適化配列は、四量体の中央部分が対合を形成していないことが主な理由として、非常に良好な集合効果を示し、つまり、固定コア構造により、中央領域に複雑な複合体を形成せず、四量体に十分な自由度が与えられる。従って、五量体配列の最適化において四量体配列および固定コア構造を統合するために、実施例2の四量体配列および固定コア構造を使用する二つのスキームを検討および設計する。
【0101】
第1の変換スキーム:図8(B)の形状に従って五つの対になることができる核酸を設計し、このスキームは、実施例2の四量体の部分配列および完全な固定コア構造を保持し、コア構造が開いていない。元の四量体のRおよびRにおいて、コア構造を除いて四量体を開き、長さが14である二つの核酸配列RおよびR10を追加する。ここで、核酸一本鎖R、R、R、RおよびRは、それぞれ核酸一本鎖R10、R、R、RおよびRと特異的な相補的対合になるが、他の核酸一本鎖とは対にならない。特異的な相補的対合の自由エネルギー()は、-27.4kcal/mol未満であるが、非特異的対合の自由エネルギー(ΔGNS°)は、-7kcal/molより大きく、このように、五量体の形態は、反応系で最も安定する。五量体の第1の変換スキームを最適化するための具体的な実施段階は、模式図2で説明されたとおりであり、そのアニーリングパラメーターは、アニーリング初期温度T=50℃、アニーリング終了温度T=0.12℃、アニーリング温度減衰係数ΔT=0.9であり(アニーリング初期温度は、毎回現在の0.9に減衰し、四量体部分配列の使用により更新領域が小さくなり、アニーリング温度の減衰が速くなる)、最適化制約パラメーターは、対合配列の長さL=14塩基、解離温度閾値T>52℃、対合配列の自由エネルギー閾値:ΔG°<-27.4kcal/mol、非特異的対合の自由エネルギー閾値ΔGNS°>-7kcal/molに制約する。
【0102】
このようなスキームには、完全な四量体固定コア構造が使用され、核酸配列式4に基づいて核酸配列W5を発展させ、核酸配列式4に基づいて核酸配列W6を発展させ、W5は、式7の構造を有し、W6は、式8の構造を有し、
W3=X1-R1-X2-C1-X2-C2-Q1-X3(5)
W4=X1-Q1-C1-X2-C2-X2-R1-X3(6)
このようなスキームは、式1、式4、式5および式6等の四つの構造の配列を含む。
【0103】
【表12】
【0104】
最適化の具体的な実施段階は、次のとおりである。
パラメーター初期化対合配列
【数17】
に基づいて、塩基相補的対合に従って、RおよびRを得、R、R、R、R、RおよびRは、実施例2の四量体最適化後の配列の同じ名称の配列に由来する。RおよびR10をスプライスしてSを得、RおよびRを式5に従ってスプライスしてSを得、RおよびRをスプライスしてSを得、RおよびRをスプライスしてSを得、RおよびRを式6に従ってスプライスしてSを得、最終的に初期化配列セット
【数18】
を得る。
【0105】
新しい解の生成:R、R、RおよびR10から一つの配列をランダムに選択して更新して、新しい核酸配列を得、この核酸配列の解離温度が52℃より高いかどうか、同時に対合領域の自由エネルギー(ΔG°)が-27.4kcal/mol未満であるかどうかを確認し、解離温度および対合領域の自由エネルギー(ΔG°)の制約要件が満たされないと、更新を繰り返し、解離温度および対合領域の自由エネルギー(ΔG°)の制約要件が満たされると、塩基相補的対合の原則に従ってSを更新して、最終的に新しい配列セットS’を得る。15回更新しても、得られた新しい核酸配列が解離温度および対合領域の自由エネルギー(ΔG°)の制約要件をずっと満たさないと、無限循環を防止するために、Sを新しい解S’にセットする。したがって、このようなスキームは、完全な固定コア構造および四量体配列の一部を使用し、新しい解の生成中に固定コア構造および保持された四量体配列部分が変化しないことを確保する必要がある。
【0106】
最適化判断:実施例1の最適化判断と同じ。一方、アニーリング初期温度は、現在の0.9に減衰する。
表6_1における五量体の第1の変換スキームの最適化後の配列は、このアルゴリズムの最適化によって得られ、図9は、この最適化中の配列間の非標的対合領域の自由エネルギー値の合計の破線統計図であり(SとS、SとS、SとSの間の非標的対合領域の自由エネルギーは、統計に参加しない)、図10におけるレーン9は、最適化後の配列集合によって形成されるメインバンドであり、五量体を形成したことを示し、非常に高い安定性を示していることがわかる。
【0107】
【表13】
【0108】
【表14】
【0109】
【表15】
【0110】
第2の変換スキーム:図8(C)の形状に従って五つの対になることができる核酸を設計し、このスキームは、四量体の固定コア構造配列のみを保持し、五量体に適応するために、コア構造は、RおよびRで開かれ、他の部分は、ランダムに生成されてから五量体の最適化を行う必要がある。ここで、核酸一本鎖R10、R、R、RおよびRは、それぞれ核酸一本鎖R、R、R、RおよびRと特異的な相補的対合を行うが、他の核酸一本鎖とは対合しない。特異的な相補的対合の自由エネルギー(ΔG°)は、-27.4kcal/mol未満であるが、非特異的対合の自由エネルギー(ΔGNS°)は、-7.2kcal/molより大きく、このように、五量体の形態は、反応系で最も安定する。五量体の第2の変換スキームを最適化するための具体的な実施段階は、模式図2で説明されたとおりであり、そのアニーリングパラメーターは、アニーリング初期温度T=50℃、アニーリング終了温度T=0.12℃、アニーリング温度減衰係数ΔT=0.98であり(アニーリング初期温度は、毎回現在の0.98に減衰する)、最適化制約パラメーターは、対合配列の長さL=14塩基、解離温度閾値T>52℃、対合配列の自由エネルギー閾値:ΔG°<-27.4kcal/mol、非特異的対合の自由エネルギー閾値ΔGNS°>-7.2kcal/molに制約する。
【0111】
【表16】
【0112】
最適化の具体的な実施段階は、次のとおりである。
配列初期化:最適化制約パラメーターに従って、対合配列Rおよびコア構造を除く長さが9である配列セット
【数19】
を初期化し、塩基相補的対合の原則に従って、R、Q、Q、QおよびQを得、表7に従ってスプライスして、最終的に初期化配列セット
【数20】
を得る。
【0113】
新しい解の生成:実施例1の新しい解の生成と同じ。一方、このスキームは、四量体の固定コア構造を使用し、新しい解の生成中に固定コア構造部分が変化しないことを確保する必要がある。同時に、パラメーター制約を厳密に遵守し、核酸配列の対合領域を更新するための解離温度は、52℃を超え、同時に対合領域の自由エネルギー(ΔG°)は、-27.4kcal/mol未満である。
最適化判断:実施例1の最適化判断と同じ。
【0114】
表8_1における五量体の第2の変換スキームの最適化後の配列は、このアルゴリズムの最適化によって得られ、その特異的な対合の模式図は、図11に示されたとおりであり、図12は、この最適化中の配列間の非標的対合領域の自由エネルギー値の合計の破線統計図であり、図13におけるレーン35は、配列S、S、S、SおよびSによって形成されるメインバンドであり、五量体は若干尾を引くが、集合効果は、良好である。
【0115】
【表17】
【0116】
【表18】
【0117】
【表19】
【0118】
さらに、実施例1、2および3を繰り返すことにより、表9-1、表9-2および表9-3(上記を参照する)に示される、相補的な核酸骨格ベースの三量体、四量体および五量体複合体を形成するために使用される一本鎖核酸配列およびそのセットを得る。
【0119】
実施例4:G-CSFとL-DNAとのカップリング
G-CSFとL-DNAとのカップリングは、還元的アミノ化反応法を採用して、5’末端のアルデヒド基修飾を有するL-DNAをG-CSFのN末端に選択的にカップリングする。希釈法またはゲルろ過クロマトグラフィー等の方法により、G-CSFの緩衝液を酢酸塩緩衝液(20mMの酢酸、150mMのNaCl、pH5.0)に置換し、かつサンプルを30mg/mLに濃縮する。5’末端にアルデヒド基修飾を有する100OD(1OD=33μg)のL-DNA乾燥粉末を取り、60μLの酢酸塩緩衝液に溶解する。30mgのシアノ水素化ホウ素ナトリウムを酢酸塩緩衝液に溶解し、濃度を800mMに調整する。それぞれ50μL、60μL、20μLの上記濃度のG-CSF、L-DNA、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを取り、かつ均一に混合し、室温下で暗所で回転させながら48時間インキュベートおよび反応させる。反応前後のサンプルをポリアクリルアミドゲル電気泳動によってカップリング反応の効果を検証し、(L-DNA)-(G-CSF)コンジュゲートは、カップリングしていないG-CSFと比較して、電気泳動ゲル図に明らかな偏移が発生しており、カップリング効率は、約70%~80%に達する可能性がある(図14)。
【0120】
実施例5:(L-DNA)-(G-CSF)コンジュゲートの精製
(L-DNA)-(G-CSF)コンジュゲートの精製は、二つの段階に分けられる。第1段階、Hitrap Q HPを使用して、反応していないG-CSFおよび二つのL-DNAに結合した(L-DNA)-(G-CSF)コンジュゲートを除去する(図15a)。実施例5で得られた反応混合液をQカラムのローディング緩衝液で10倍希釈してからローディングし、ローディング緩衝液で10倍のカラム体積を溶出して、反応していないG-CSFを除去し、その後0~100%線形勾配溶出の方式を使用して、50倍のカラム体積を溶出して、(L-DNA)-(G-CSF)コンジュゲートおよび(L-DNA)2-(G-CSF)コンジュゲートを分離し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して、各A280吸收ピークの成分の種類を同定し(図15b)、(L-DNA)-(G-CSF)コンジュゲート(反応していない核酸を含む)を収集する。第2段階では、Hiscreen Capto MMCを使用して反応していない核酸を除去し、最終的に分離して高純度の(L-DNA)-(G-CSF)コンジュゲート(図15c)を得る。段階1で収集したサンプルをHiscreen Capto MMCカラムに直接ローディングし、ローディング緩衝液で10倍のカラム体積を溶出して、反応していない核酸を除去し、その後100%溶出緩衝液で(L-DNA)-(G-CSF)コンジュゲートを溶出する。
【0121】
精製条件は、以下の表に示されたとおりである。
【表20】
【0122】
2段階の精製法で得られた(L-DNA)-(G-CSF)コンジュゲートサンプルを使用して、2%アガロースゲル電気泳動によってサンプルの純度を同定し(図15d)、ゲル図は、サンプル中に核酸バンドが一つだけ存在し、(L-DNA)-(G-CSF)コンジュゲートは、非カップリングL-DNAと比較して、電気泳動ゲル図に明らかな偏移があることを示し、これは、反応していない核酸、および(L-DNA)-(G-CSF)コンジュゲートがすでに除去されたことがわかる。
【0123】
実施例6:一価、二価および三価のG-CSF複合体の集合
それぞれNanodropにより、S1-G-CSF、S3-G-CSF、S4-G-CSF、S2、S3、S4の核酸濃度を測定する。一価、二価および三価のタンパク質複合体の構造設計に従って、上記の十分を定量と取り、上記成分を定量的に定量し、1:1:1:1のモル比に従って神々し、混合後に各集合ユニットは、塩基相補的対合の原則に従って自動的に集合される。集合前後のサンプルは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、集合効果およびサンプル純度を確認する(図16)。
【0124】
実施例7:G-CSFのインビトロ活性評価
M-NFS-60細胞(マウス白血病リンパ球/G-CSF依存性細胞)を蘇生培地(RPMI1640+10%FBS+15ng/mLのG-CSF+1Xペニシリン-ストレプトマイシン)に接種し、37℃、5%CO条件下で細胞を蘇生させ、細胞密度が80%~90%に達した後継代し、2回~3回継代した後に、96ウェルには細胞プレーティングする。細胞プレーティング実験は、corning 3599#96ウェルプレートを使用し、細胞プレーティング密度は、6000細胞/ウェルである。様々なサンプル(GCSF、NAPPA-GCSF、NAPPA-GCSF、NAPPA-GCSF)を勾配希釈し、作業濃度は、(0.001、0.01、0.1、1、10、100ng/mL)であり、最終体積は、100μLであり、PBSを対照として使用する。恒温インキュベーターで48時間培養した後、各ウェルに10μLのCCK8溶液を加え、培養プレートをインキュベーターで1~4時間インキュベートし、マイクロプレートリーダーで450nmでの吸光度を測定し、様々なサンプルの細胞増殖率を計算する。
【0125】
細胞増殖率(%)=[A(薬物添加)-A(0薬物添加)]/[A(0薬物添加)-A(空白)]×100
A(薬物添加):細胞、CCK溶液および薬物溶液を有するウェルの吸光度
A(空白):培地およびCCK8溶液を有するが、細胞を有さないウェルの吸光度
A(0薬物添加):細胞、CCK8溶液を有するが、薬物溶液を有さないウェルの吸光度
【0126】
上記の活性試験方法を用いて、G-CSF結合L-DNA四量体フレームワークに対して活性評価を行い、L-DNA四量体フレームワークがG-CSFの活性に影響がないことを発見した(図17)。同じ活性試験方法を用いて、L-DNA四量体と集合した二価および三価のG-CSFがG-CSFの活性にも負の影響がないことを発見した(図18)。
【0127】
実施例8:SM(PEG)-PMOコンジュゲートのカップリングおよび精製
本実施例において、ホスホロジアミデートモルホリノ核酸(phosphorodiamidate morpholino)核酸を使用して実験を実行する。具体的には、次のような四つのPMO一本鎖配列(5’から3’まで)を選択する。
【0128】
鎖1(PMO1):SEQ ID NO:275
5’-AGCAGCCTCGTTGAATCGCCAAGACACC-3’
鎖2(PMO2):SEQ ID NO:276
5’-AGGTGTCTTGGCGAAAGTTGCTCCGACG-3’
鎖3(PMO3):SEQ ID NO:277
5’-ACGTCGGAGCAACTAAGCGGTTCTGTGG-3’
鎖4(PMO4):SEQ ID NO:278
5’-ACCACAGAACCGCTATCAACGAGGCTGC-3’
【0129】
5’末端には、SM(PEG)のNHS活性基にカップリングするためのNH基修飾がある。
5’末端NH修飾を含むPMO一本鎖をリン酸緩衝液(50mMのNaHPO、150mMのNaCl、pH7.4)に溶解し、最終濃度が1mMであるストック溶液を調製する。SM(PEG)(リンカー分子)粉末をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、250mMのSM(PEG)ストック溶液を新たに調製する。PMO一本鎖ストック溶液に10~50倍モル量のSM(PEG)ストック溶液を加え、急速に混合した後に室温下で30分間~2時間反応させる。反応終了後に反応液に10%体積の1M Tris-HCl(pH7.0)を加えて、混合した後に室温下で20分間インキュベートして、過剰なSM(PEG)を停止して反応を継続させるために使用する。インキュベーション終了後、Hitrap Capto MMCを用いてSM(PEG)-PMOを精製し、反応していないSM(PEG)は、カラムに結合せずにそのまま流れ、カラムに結合したSM(PEG)-PMOは、溶離液(25mMのBICINE、200mMのNHCl、1Mの一塩酸アルギニン(Arginine monohydrochloride)、pH8.5)で溶出し、溶出結果は、図19aに示されたとおりである。
【0130】
陽イオンモード液体クロマトグラフィー質量分析によって、カップリング前後のPMOサンプルを分析する。図20aおよび図20bに示されるように、結果は、最終的に得られたSM(PEG)-PMO分子量が理論値と一致しており、カップリング反応効率が高いことを示す。
【0131】
実施例9:ナノボディ突然変異体の調製
ナノボディのカルボキシ基末端に、核酸カップリングのためにシステイン突然変異を導入する。抗HSAナノボディの遺伝子配列を酵母が好むコドンに最適化し、次いでpPICZ alpha Aプラスミドにサブクローニングする。抗HSAナノボディのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:279である。精製を容易にするために、ナノボディのN末端にHisタグを添加する。
【0132】
SEQ ID NO:279、抗HSAナノボディ突然変異体のアミノ酸配列:
HHHHHHAVQLVESGGGLVQPGNSLRLSCAASGFTFRSFGMSWVRQAPGKEPEWVSSISGSGSDTLYADSVKGRFTISRDNAKTTLYLQMNSLKPEDTAVYYCTIGGSLSRSSQGTQVTVSSGSC
【0133】
プラスミドを線形化した後にピキアパストリスX33にエレクトロポレーションし、ゼオシン(Zeocin)濃度勾配YPD観点プレートでスクリーニングして、標的遺伝子のコピー数が多い株を得る。GMGY培地を使用して、30℃、250rpm条件下でモノクローナル株を培養し、十分な菌数を得た後にGMMY培地を使用して、20℃、250rpm条件下で目的ナノボディの分泌および発現を誘導し、24時間ごとに1%メタノールを追加する。
【0134】
高コピーによってスクリーニングされた株の実験室グレードのガラスフラスコ内でのナノボディ発現収量は、40~80mg/Lに達することができる。
SDS-PAGE同定および分析によると、誘導72時間後の培養上清は、大量の標的ナノボディ単量体およびナノボディ二量体を含む。Hisタグアフィニティーカラムを使用して、培養上清中のナノボディを精製する。
【0135】
実施例10:ナノボディ-PMOコンジュゲートのカップリングおよび精製
Hisタグアフィニティークロマトグラフィーによって溶出したナノボディサンプル(実施例9)を、還元剤を含む透析緩衝液(20mMのTris、15mMのNaCl、pH7.4)で透析し、透析中に、C末端のスルフヒドリル基が還元され、同時に遊離の-SH基等の不純物小分子を除去する。還元されたナノボディおよびSM(PEG)-PMO一本鎖(実施例8で調製)を1:1~2のモル比に従って混合し、均一に混合した後に室温下で2時間反応させる。
【0136】
SDS-PAGE同定により、図19bに示されるように、結果は、カップリング効率が90%以上に達する可能性があることを示す。
反応していないSM(PEG)-PMO一本鎖をHisタグアフィニティーカラムで除去し、ナノボディおよびナノボディ-PMO混合物を収集する。
【0137】
スーパーデックスTM 75増加 10/300GL(SuperdexTM 75 Increase 10/300 GL)を使用してナノボディおよびナノボディ-PMOを分離し、図21に示されるように、ナノボディおよびナノボディ-PMOは、効果的に分離された。
核酸カップリング前後のナノボディを陽イオンモード液体クロマトグラフィー知る超分析計で分析し、図20cおよびdに示されるように、結果は、最終的に得られたナノボディ-PMO分子量が理論値と一致していることを示す。
【0138】
実施例11:NAPPA-PMO薬物の自己集合
以下、pmo-NAPPA4-HSA(1)を例として、NAPPA-PMO薬物の自己集合プロセスを紹介する。
抗HSA Nb-PMO1、PMO2、PMO3およびPMO4の濃度をそれぞれ測定する。上記成分を定量取り、37℃で5分間予熱した後、37℃条件下で1:1のモル比で混合し、1分間インキュベートする。即ち、pmo-NAPPA4-HSA(1)の集合が完了する。
【0139】
pmo-NAPPA4-HSA(1,2,3)の集合と同様に、必要な集合モジュールは、抗HSA Nb-PMO1、抗HSA Nb-PMO2、抗HSA Nb-PMO3およびPMO4である。
低温条件下で、SDS-PAGEを使用してサンプルの集合状況を同定し、図22に示されるように、結果は、集合したサンプルのバンドが均一であることを示す。
【0140】
実施例12:ナノボディ-PMO単量体および集合後のNAPPA-PMO薬物の結合活性の検証
以下、pmo-NAPPA4-HSA(1)を例として、ELISA法を使用して、抗HSAナノボディ、抗HSA Nb-PMO1単量体および集合したpmo-NAPPA4-HSA(1)と、HSAタンパク質(ACROBiosystems、HSA-H5220)との結合能を検出する。
【0141】
96ウェルELISAプレートの各ウェルを100ngのHSAタンパク質で4℃で一晩コーティングする。洗浄液(0.05%Tween-20を含むPBS)で洗浄し、ブロッキング液(3%BSAおよび0.05%Tween-20を含むPBS)でブロッキングした後に、勾配希釈した抗HSAナノボディ、PMOカップリングナノボディ抗HSA Nb-PMO1および集合したpmo-NAPPA4-HSA(1)を加え、室温下で1時間インキュベートする。3回洗浄した後に1:5000希釈した西洋わさびペルオキシダーゼカップリングウサギ抗キャメリンVHH抗体(GenScript、A02016)を加え、室温下で1時間インキュベートする。3回洗浄した後、テトラメチルベンジジン基質溶液(Beyotime、P0209)を加えて発色させ、停止液(Beyotime、P0215)を使用して発色を停止させ、マイクロプレートリーダー(MolecularDevices、SpectraMax i3x)を使用して、各ウェルの450nmでの吸光度を読み取り、対応するEC50を計算する。
【0142】
図23に示されるように、計算結果は、抗HSAナノボディ、抗HSA Nb-PMO1および集合したpmo-NAPPA4-HSA(1)と、HSAタンパク質との結合のEC50は、それぞれ0.577nM、0.391nMおよび0.529nMであることを示し、これは、PMOカップリングナノボディ方法がナノボディと対応する抗原との結合活性に影響せず、PMO集合方法もナノボディと対応する抗原との結合活性に影響しないことを示す。
【0143】
実施例13:NAPPA-PMO薬物のヌクレアーゼ耐性実験
核酸誘導体としてのPMOが様々なヌクレアーゼの分解に耐性があるかどうか、集合したNAPPA-PMO薬物がヌクレアーゼまたは解重合にも耐性があるかどうかを検証するために、以下の実験を設計した。実験では、三つの一般的なヌクレアーゼDNase I(Thermo Scientific、EN0523)、T7 エンドヌクレアーゼ I(NEB、M0302S)、S1 Nuclease(Thermo Scientific、EN0321)を選択し、PMO集合サンプルpmo-NAPPA4-HSA(1)およびD-DNA集合サンプルDDNA-NAPPA4(対照)を37℃で1時間インキュベートする。インキュベートしたpmo-NAPPA4-HSA(1)およびDDNA-NAPPA4をそれぞれSDS-PAGEおよび2%アガロース電気泳動で分析する。
【0144】
図24に示されるように、pmo-NAPPA4-HSA(1)は、三つのヌクレアーゼによって分解されないが(左図)、DDNA-NAPPA4は、DNase IおよびS1 Nucleaseによって完全に分解され、T7エンドヌクレアーゼIによって短い断片に切断される。従って、実験は、NAPPA-PMO薬物が一般的なヌクレアーゼによる分解に耐性があることを示す。
【0145】
本発明で言及されたすべての文書は、あたかも各文書が個別に参照として引用されたかのように、本出願における参照として引用される。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も、本出願の添付の請求範囲によって定義される範囲に含まれる。
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