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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-02
(45)【発行日】2025-07-10
(54)【発明の名称】コイル、および、コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/28 20060101AFI20250703BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20250703BHJP
   H01F 19/04 20060101ALI20250703BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
H01F27/28 147
H01F5/00 E
H01F19/04
H01F37/00 C
H01F37/00 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024226832
(22)【出願日】2024-12-24
【審査請求日】2024-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2023218706
(32)【優先日】2023-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512135274
【氏名又は名称】富士ウェーブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100199761
【弁理士】
【氏名又は名称】福屋 好泰
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 麻子
(72)【発明者】
【氏名】増田 満
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-090930(JP,A)
【文献】実開昭63-143077(JP,U)
【文献】特開2004-242373(JP,A)
【文献】特開昭58-141513(JP,A)
【文献】特開昭50-047160(JP,A)
【文献】特開平03-283404(JP,A)
【文献】特開2002-208524(JP,A)
【文献】特開平01-287903(JP,A)
【文献】実開平04-105512(JP,U)
【文献】特開2008-228541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/28
H01F 5/00
H01F 19/04
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電性薄膜を第1絶縁性薄膜で挟み込んで構成される第1フィルム本体と前記第1フィルム本体に取り付けられた第1コネクタとから構成される第1コイル部品と、
第2導電性薄膜を第2絶縁性薄膜で挟み込んで構成される第2フィルム本体と前記第2フィルム本体に取り付けられ前記第1コネクタと着脱可能に設けられる第2コネクタとから構成される第2コイル部品と、
を含み、
前記第1コイル部品および前記第2コイル部品は、前記第1コネクタおよび前記第2コネクタを介して接続したときに前記第1フィルム本体と前記第2フィルム本体の間に隙間が形成される、
コイル。
【請求項2】
前記第1フィルム本体および前記第2フィルム本体は可撓性を具備している、
請求項1に記載のコイル。
【請求項3】
前記第1コネクタおよび前記第2コネクタは、前記第1フィルム本体および前記第2フィルム本体の互いに対向する面にそれぞれ配置されている、
請求項1に記載のコイル。
【請求項4】
請求項1に記載のコイルを構成するためのコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル、および、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波電流をコイル等の導体に流す場合において、導体の表面付近にしか電流が流れない表皮効果が発生することが知られている。このため、円形断面の導体では電気抵抗が大きくなる。一方、平角銅線のような矩形断面を有する導体の場合には円形断面の導体よりも表皮効果による影響が比較的少なくなるためより大きな電流を流すことが可能となる。そのため、平角銅線などを短辺方向に曲げて形成されたエッジワイズコイルが用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、中空構造を有する平導体(平角銅線)を用いることにより導体内部を空気が移動可能とすることで放熱性を向上させたエッジワイズコイルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-119729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のエッジワイズコイルを製作する場合には平角銅線を曲げにくい短辺方向に金型などを用いて曲げる必要があるため製作に手間を要し、製造コストが増大しやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、製造コストの低減を図ることが可能なコイル、および、コイル部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコイルは、第1導電性薄膜で挟み込んで構成される第1フィルム本体と第1フィルム本体に取り付けられた第1コネクタとから構成される第1コイル部品と、第2導電性薄膜を第2絶縁性薄膜で挟み込んで構成される第2フィルム本体と第2フィルム本体に取り付けられ第1コネクタと着脱可能に設けられる第2コネクタとから構成される第2コイル部品と、を含み、第1コイル部品および第2コイル部品は、第1コネクタおよび第2コネクタを介して接続したときに第1フィルム本体と第2フィルム本体の間に隙間が形成されるものである。
【0008】
本発明に係るコイルにおいて、第1フィルム本体および第2フィルム本体は可撓性を具備してもよい。
【0010】
本発明に係るコイルにおいて、第1コネクタおよび第2コネクタは、第1フィルム本体および第2フィルム本体の互いに対向する面にそれぞれ配置されてもよい。
本発明に係るコイル部品は、上記発明のコイルを構成するコイル部品でもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るコイルによれば、薄膜を重ね合わせて構成されたコイル部品同士を互いに接続することによりコイルを製作することができるため製造コストを低減することができる。
【0012】
本発明に係るコイル部品によれば、コイル製作における製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)は、第1実施形態に係るコイルの全体構成を示す平面図である。図1(b)は、図1(a)に示すA方向から見たときのコイルの構成を模式的に示す図である。図1(c)は、図1(a)に示すコイルを各パーツに分解した状態で示す図である。図1(d)は図1(c)に含まれる上部パーツの断面構成を模式的に示す図である。図1(e)は、第1変形例に係る上部パーツの断面構成を模式的に示す図である。
図2図2(a)は第1実施形態に係るコイルの構成部品である端子付き直線パーツを上部パーツの左端部と接続した状態を示す図である。図2(b)は、図2(a)に示す上部パーツの右端部を下部パーツの右端部にさらに接続した状態を示す図である。図2(c)は、図2(b)に示す下部パーツの左端部に上部パーツの左端部をさらに接続し、上部パーツの右端側に端子付き直線パーツの他端部を接続する様子を模式的に示す図である。
図3図3は、図1(A)に示すB方向から見たときのコイルの側面構成を模式的に示す図である。
図4図4(a)は、第1実施形態の第2変形例であるコイルの全体構成を示す平面図である。図4(b)は、図4(a)に示すコイルを各パーツに分解した状態で示す図である。
図5図5(a)は第2実施形態におけるコイルの構成を示す平面図であり、図5(b)は図5(a)に示すコイルを各パーツに分解した状態で示す図である。
図6図6(a)は第3実施形態に係るコイルの構全体構成を示す平面図であり、図6(b)は、図6(a)に示すコイルを各パーツに分解した状態で示す図である。
図7図7(a)は第3実施形態に係るコイルの構成部品である端子付き直線パーツを上部パーツの左端部と接続した状態を示す図である。図7(b)は、図7(a)に示す上部パーツの右端部を直線パーツの一端部にさらに接続した状態を示す図である。図7(c)は、図7(b)に示す直線パーツの他端部に下部パーツの右端部をさらに接続した状態を示す図である。図7(d)は、図7(c)に示す下部パーツの左端部に直線パーツの一端部をさらに接続した状態を示す図である。図7(e)は、図7(d)に示す直線パーツの他端部を上部パーツの左端部にさらに接続した状態を示す図である。
図8図8(a)は第4実施形態に係るコイルの全体構成を示す図であり、る。図8(b)は図8(a)に示すコイルを各パーツに分解した状態を示す図である。
図9図9(a)は第1実施形態のコイルのシミュレーションモデルに係るコイルの構成を示す斜視図であり、図9(b)は第1実施形態のコイルのシミュレーションモデルに係るコイルの側面構成を示す側面図である。
図10図10(a)は比較例1に係るコイルの構成を示す斜視図であり、図10(b)は比較例1に係るコイルを展開した状態を示す図である。
図11図11(a)は比較例2に係るコイルの構成を示す斜視図であり、図11(b)は比較例2に係るコイルを展開した状態を示す図である。
図12】電磁界解析シミュレーションにおける第1実施形態のコイルのシミュレーションモデルおよび比較例1,2に係るコイルの設定条件と計算結果を示す表である。
図13】電磁界解析シミュレーションによって計算された第1実施形態のコイルのシミュレーションモデルおよび比較例1,2に係るコイルのインダクタス値と供給する交流電源の周波数との関係を示すグラフであり、縦軸をインダクタンス値とし、横軸に印加する電源(電圧)の周波数を示すグラフである。
図14】電磁界解析シミュレーションによって計算されたQ値と供給する交流電源の周波数との関係を示すグラフであり、縦軸にQ値を、横軸に印加する電源(電圧)の周波数を示すグラフである。
図15】高周波交流電圧を印加したときのインダクタ(コイル)の等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態であるコイル10について、図面を参照しながら説明する。図1(a)は、本実施形態におけるコイル10の全体構成を示す図である。図1(b)は、図1(a)に示すA方向から見たときのコイル10の構成を示す図である。図1(c)は、図1(a)に示すコイル10を構成する各部に分解した状態を示す図である。
【0015】
図1(a)~図1(c)に示すように、コイル10は、一端側に端子22A,24Aが設けられた端子付き直線パーツ(フィルム本体、コイル部品)22,24と、環状をなす環状部30(囲繞部とも表現できる)とを含む素子である。端子付き直線パーツ22は、図1(c)に示すように、一端側に端子22Aが設けられており他端側の表面には凸型コネクタ(接続部)22Bが設けられた帯状を呈するフィルム状のパーツである。一方、端子付き直線パーツ24は、一端側に端子24Aが設けられるとともに他端側の裏面に凹型コネクタ(接続部)24Bが設けられた帯状を呈すフィルム状のパーツである。
【0016】
図1(a)および図1(b)に示すように、環状部30は、2つの上部パーツ(フィルム本体、コイル部品)32,34と1つの下部パーツ(フィルム本体、コイル部品)36を互いに接続して構成される。上部パーツ32,34は、左端側の裏面に凹型コネクタ(接続部)32A,34Aが各々設けられるとともに右端側の表面に凸型コネクタ(接続部)32B,34Bが設けられた略半環状(換言すると、半円弧状)の外形を有するフィルム状部材である。図1(b)に示すように、上部パーツ32,34は、A方向から見たときに上部パーツ32の上に上部パーツ34が重なるように配置されている。一方、下部パーツ36は、図1(c)に示すように、左端側の表面に凸型コネクタ(接続部)36Aが設けられ右端側の裏面に凹型コネクタ(接続部)36Bが設けられた略半環状(換言すると、半円弧状)を呈するフィルム状部材である。
【0017】
上述した凸型コネクタ22B,32B,34B,36Aはいずれも同一の構成を具備し、凹型コネクタ24B,32A,34A,36Bに各々着脱可能に構成される。凸型コネクタ22B,32B,34B,36Aおよび凹型コネクタ24B,32A,34A,36Bは、互いに接続されることにより各パーツ22,24,32,34,36を電気的に接続する役割を有する。
【0018】
図2(a)~図2(c)は、コイル10の組み立て手順を示す図である。図2(a)に示すように、最初に、上述した端子付き直線パーツ22の他端側表面に設けられた凸型コネクタ22B(図1(c)参照)を上部パーツ32の左端側裏面に設けられた凹型コネクタ32A(図1(c)参照)に接続する。次に、図2(b)に示すように、上部パーツ32の右端側表面の凸型コネクタ32B(図2(a)参照)を下部パーツ36の右端側裏面に設けられた凹型コネクタ36B(図1(c)参照)に接続する。続いて、図2(c)に示すように、下部パーツ36の左端側表面の凸型コネクタ36A(図2(b)参照)を上部パーツ34の左端側裏面に設けられた凹型コネクタ34A(図1(c)参照)に接続する。そして、最後に、図2(c)に示す上部パーツ34の右端側表面に設けられた凸型コネクタ34Bを端子付き直線パーツ24の他端側裏面に設けられた凹型コネクタ24Bに接続する。このように各パーツ22,24,32,34,36に設けられている凸型コネクタ22B,32B,34B,36Aおよび凹型コネクタ24B,32A,34A,36Bを互いに接続することによりコイル10が構成される。
【0019】
本実施形態では、上部パーツ32および下部パーツ36のコネクタ32B,36Bを互いに連結させ、上部パーツ34および下部パーツ36のコネクタ36A,34Aを互いに連結させることにより環状部30を構成しているが、コネクタを用いずに上部パーツ32,34および下部パーツ36を一体に構成するようにしてもよい。
【0020】
次に、コイル10の内部構造について説明を行う。ここで、上述したコイル10の構成部品である端子付き直線パーツ22,24および上部パーツ32,34、下部パーツ36はほぼ同一の内部構造を具備するため、上部パーツ32を例に挙げてコイル10の内部構造について説明を行うとともに他のパーツ22,24,34,36の内部構造については適宜説明を省略する。図1(d)は上部パーツ34の断面構成を模式的に示す図である。
【0021】
図1(d)に示すように、上部パーツ34は、基材(絶縁性薄膜)L1、銅箔(導電性薄膜)L2、接着層L3、カバーレイフィルム(絶縁性薄膜)L4をこの順に重ね合わせてなる積層構造を含み可撓性を有する。上部パーツ34の基材L1は、ポリイミド樹脂などの絶縁性フィルムで構成されており、表面側に銅箔L2が圧着固定される。なお、図1(d)では、上部パーツ34の断面構成を模式的に示すため銅箔L2の両端面が露出しているが、実際には基材L1およびカバーレイフィルムL4によって銅箔L2の両端面も被覆されるため外部には露出しないように設けられる。
【0022】
銅箔L2は、一例として35μmの厚みを有し、上部パーツ34の裏面(基材L1が構成する面)に取り付けられている凹型コネクタ34Aおよび上部パーツ34の表面(カバーレイフィルムL4が構成する面)に取り付けられている凸型コネクタ34Bにそれぞれ導通するように設けられている。銅箔L2は、腐食防止のために表面、すなわち、接着層L3側の面にメッキ処理が施されている。カバーレイフィルムL4は、基材L1と同様にポリイミド樹脂などの絶縁性樹脂で構成され、接着層L3を介して銅箔L2を覆うように接着固定される保護フィルムである。このように、銅箔L2は、基材L1およびカバーレイフィルムL4の間に挟み込まれた状態で積層される。
【0023】
また、上述のように銅箔L2をカバーレイフィルムL4および基材L1で挟み込むように圧着して覆うことにより銅箔L2が振動などによって破断することを防ぐことができるというメリットもある。
【0024】
第1実施形態のコイル10によれば、基材L1およびカバーレイフィルムL4の間に銅箔L2を挟み込んで構成された上部パーツ32,34、下部パーツ36、端子付き直線パーツ22,24を互いに接続することにより構成される。このため、例えば、平角銅線を用いてコイルの製作する場合のように金型を用いることなくコイルの製作が可能となる。この結果、コイル10の製造コストの低減を図ることができる。
【0025】
また、コイル10によれば、導体として銅箔L2を用いることにより、表皮効果による渦電流を低減することができる。この結果、高周波電流が銅箔L2内を流れるときに発生する電気抵抗も低減できる。
【0026】
上記第1実施形態におけるコイル10は可撓性を有するため、重なり合う上部パーツ32,34の間にスペーサ等を挟み込むことにより上部パーツ32,34の間隔を調節することができる。これにより、コイル10のインダクタンスの量を調整することも可能である。
【0027】
上記第1実施形態では、導電性薄膜として35μmの厚みを有する銅箔L2を用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。銅箔L2の厚みは250μm以下であればよく、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下とすればよい。この場合においても高周波電流が銅箔L2内を流れるときに発生する電気抵抗を低減することができる。
【0028】
図3は、図1(A)に示すB方向から見たときのコイル10の側面構成を模式的に示す図である。図3に示すように、端子付き直線パーツ24と環状部30の一部を構成する上部パーツ34は凹型コネクタ24Bおよび凸型コネクタ34Bを介して双方の端部同士が重なりあうように接続されている。ここで、凸型コネクタ34Bおよび凹型コネクタ24Bのうち少なくとも一方は、端子付き直線パーツ24の表面または裏面からわずかに突き出すように設けられている。
【0029】
ここで、仮に、端子付き直線パーツ24および上部パーツ34が密着した状態で重なり合うと、端子付き直線パーツ24および上部パーツ34双方の銅箔L2の間に絶縁体である端子付き直線パーツ24の基材L1と上部パーツ34のカバーレイフィルムL4とが挟み込まれた状態となる。このような状態で高周波交流電源が印加されると浮遊(寄生)容量が増加し伝送損失が増加してしまうこととなる。
【0030】
そこで、本実施形態のコイル10では、図3に示すように、双方のコネクタ24B,34Bを接続した状態において、端子付き直線パーツ24および上部パーツ34の間に隙間tが形成される。これにより、端子付き直線パーツ24および上部パーツ34が密着せずに離間した状態に保持されるため浮遊容量の増加を抑制できる。この結果、高周波電源を用いた無線電力伝送における伝送損失の増大を抑制することができる。本実施形態において、上記隙間tの大きさは一例として0.7mmとなるように設定しているが、隙間tの大きさは0.7mm未満でもよいし、0.7mmよりも大きくなるようにしてもよい。
【0031】
同様に、凹型コネクタ34Aおよび凸型コネクタ36Aを介して上部パーツ34と下部パーツ36が接続され、凹型コネクタ36Bおよび凸型コネクタ32Bを介して下部パーツ36と上部パーツ32が接続され、凹型コネクタ32Aと凸型コネクタ22Bを介して上部パーツ32と端子付き直線パーツ22が接続され、各パーツ22,32,34,36の間においても上記隙間tと同等の大きさの隙間が形成される。このため、上部パーツ32,34および下部パーツ36は密着しない状態に保持される。これにより、浮遊容量の増加を抑制できる。また、上述したように、各パーツ22,24,32,34,36の間に隙間を設けて接続することにより放熱性を向上させることもできる。
【0032】
なお、各パーツ22,24,32,34,36の間にスペーサを挟み込むことによりに各パーツ22,24,32,34,36の間の隙間をよりしっかりと確保して互いに接触しにくくなるようにしてもよい。
【0033】
さらに、上記第1実施形態では、環状部30の巻き数が1.5巻きとなるように、すなわち、2つの上部パーツ32,34と1つの下部パーツ36を用いて環状部30を構成しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、環状部30を構成する上部パーツ32,34および下部パーツ36の数を増加させることで環状部30の巻き数が2巻き以上となるようにコイルを構成してもよい。
【0034】
上記第1実施形態では、基材L1の片面側にのみ銅箔L2を取り付けることで上部パーツ32,34、下部パーツ36、および、端子付き直線パーツ22,24を構成する例を挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、基材の両面に各々銅箔を圧着固定することで上部パーツ32,34、下部パーツ36、および、端子付き直線パーツ22,24を各々構成するようにしてもよい。この場合の第1変形例に係る上記各パーツ22,24,32,34,36の断面構成について上部パーツ34を例に挙げて説明を行う。図1(e)は、この場合の第1変形例に係る上部パーツ34の断面構成を模式的に示す図である。
【0035】
図1(e)に示すように、上部パーツ34は、基材M4の両面側に銅箔M3,M5が各々圧着固定されており、さらに、接着層M2,M6を介してカバーレイフィルムM1,M7が銅箔M3,M5を各々被覆する断面構造を備えている。銅箔M3,M5の表面は、上記第1実施形態に係る銅箔L2と同様にメッキ処理が施されている。各パーツ22,24,32,36においても、上述した上部パーツ34とほぼ同一の断面構成を備える。また、各パーツ22,24,32,34,36のうち一部または全部のパーツにおいて、基材M4にスルーホール(through hole)を設け同ホール内にメッキ処理を施すことで銅箔M3,M5を互いに導通させてもよい。
【0036】
上記第1実施形態では、導電性薄膜として銅箔L2を用いる場合を例に挙げて説明しているが、銅以外の他の導電性を有する材料を導電性薄膜として用いてもよい。
【0037】
上記第1実施形態では、基材L1やカバーレイフィルムL4としてポリイミド樹脂を用いる場合を例に挙げて説明しているが、製品仕様などに応じてポリイミド樹脂以外の絶縁性を有する樹脂を用いて基材L1やカバーレイフィルムL4を構成してもよい。
【0038】
上記第1実施形態では、2つの上部パーツ32,34および1つの下部パーツ36を用いてコイル10を構成する例を挙げて説明しているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上部パーツ32および下部パーツ36からなる環状部31を用いてコイル40を構成するようにしてもよい。この場合の第2変形例に係るコイル40の構成について図4(a)および図4(b)を用いて説明を行う。以下の説明において、上記第1実施形態のコイル10と同一の構成部分については適宜同一の符号を付して示しつつ説明を適宜省略するとともに、構成の異なる部分について主に説明を行うものとする。
【0039】
図4(a)は第2変形例におけるコイル40の構成を示す平面図であり、図4(b)はコイル40を分解した状態で示す図である。図4(a)および図4(b)に示すように、コイル40は、環状部31と端子付き直線パーツ22,24とから構成される。環状部31は、上部パーツ32および下部パーツ36を含む。端子付き直線パーツ22の他端側表面に設けられた凸型コネクタ22Bを上部パーツ32の左端側裏面の凹型コネクタ32Aに接続し、上部パーツ32の右端側表面の凸型コネクタ32Bを下部パーツ36の右端側裏面の凹型コネクタ36Bに接続し、下部パーツ36の左端側表面の凸型コネクタ36Aを端子付き直線パーツ24の他端側裏面に設けられた凹型コネクタ24Bに接続する。この場合のコイル40においても上記第1実施形態におけるコイル10と同様の効果を得ることができる。
【0040】
上記第1実施形態では、上部パーツ32,34および下部パーツ36を用いてコイル10を構成する例を挙げて説明しているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上部パーツ32,34および下部パーツ36のように湾曲したパーツを用いる代わりに直線状に構成されたパーツを用いてコイルを構成するようにしてもよい。この場合における第2実施形態のコイル50の構成ついて図5(a)および図5(b)を用いて説明を行う。以下の説明において、上記第1実施形態のコイル10と同一の構成部分については適宜同一の符号を付して示しつつ説明を省略するとともに、構成の異なる部分について主に説明を行うものとする。
【0041】
図5(a)は第2実施形態におけるコイル50の構成を示す平面図であり、図5(b)は、コイル50を分解した状態で示す図である。図5(a)および図5(b)に示すように、コイル50は、端子付き直線パーツ(フィルム本体、コイル部品)61,62と5つの直線パーツ(フィルム本体、コイル部品)63,64,65,66,67とを備える。本実施形態において、端子付き直線パーツ61は、上述した直線パーツ22と同様の構成を備え、一端側に端子61Aが設けられ、他端側の表面に凸型コネクタ(接続部)61Bが設けられている。一方、端子付き直線パーツ62は、上述した直線パーツ24と同様の構成を備え、一端側に端子62Aが設けられ、他端側の裏面に凹型コネクタ(接続部)62Bが設けられている。
【0042】
図5(b)に示すように、直線パーツ63~67は、上部パーツ34とほぼ同一の機能および構成を備えるとともに直線状に形成されている。直線パーツ63~67は、一端側裏面に凹型コネクタ(接続部)63A~67Aが設けられており、他端側表面に凸型コネクタ(接続部)63B~67Bが設けられている。凹型コネクタ62B,63A~67Aは上記第1実施形態の上部パーツ32における凹型コネクタ32Aと同一の機能を備え、凸型コネクタ61B,63B~67Bと各々着脱可能に構成される。凹型コネクタ62B,63A~67Aは、凸型コネクタ61B,63B~67Bと互いに接続されることにより直線パーツ63~67を電気的に接続する役割を有する。
【0043】
上述した端子付き直線パーツ61の他端側表面に設けられた凸型コネクタ61Bは、直線パーツ63の一端側裏面の凹型コネクタ63Aに両パーツ61,63が略直角をなす状態で接続される。直線パーツ63における他端側表面の凸型コネクタ63Bは、直線パーツ64の一端側の裏面に設けられた凹型コネクタ64Aに両パーツ63,64が略直角をなす状態で接続される。直線パーツ64における他端側表面の凸型コネクタ64Bは、直線パーツ65の一端側裏面に設けられた凹型コネクタ65Aに両パーツ64,65が略直角をなす状態で接続される。直線パーツ65における他端側表面に設けられた凸型コネクタ65Bは、直線パーツ66の一端側裏面に設けられた凹型コネクタ66Aに両パーツ65,66が略直角をなす状態で接続される。直線パーツ66における他端側表面の凸型コネクタ66Bは、直線パーツ67の一端側裏面に設けられた凹型コネクタ67Aに両パーツ66,67が略直角をなす状態で接続される。直線パーツ67における他端側表面に設けられた凸型コネクタ67Bは、端子付き直線パーツ62の一端側裏面に設けられた凹型コネクタ62Bに両パーツ62,67が略直角をなす状態で接続される。上記構成のように直線パーツ63,64,65,66,67を互いに略直角をなすように順に連結することにより略四角枠状の外観形状を有するコイル50を製作することができる。
【0044】
この場合の第2実施形態におけるコイル50においても、上記第1実施形態におけるコイル10と同様の効果を得ることができる。
【0045】
上記第1実施形態では、上部パーツ32,34および下部パーツ36を用いてコイル10を構成する例を挙げて説明しているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上部パーツ32,34および下部パーツ36のように湾曲したパーツと直線状に構成されたパーツとを用いてコイルを構成するようにしてもよい。この場合における第3実施形態のコイル70の構成ついて図6(a)~図7(e)を用いて説明を行う。以下の説明において、上記第1実施形態のコイル10と同一の構成部分については適宜同一の符号を付して示しつつ説明を省略するとともに、構成の異なる部分について主に説明を行うものとする。
【0046】
図6(a)は第3実施形態におけるコイル70の構成を示す平面図であり、図6(b)は、コイル70を分解した状態で示す図である。図6(a)および図6(b)に示すように、コイル70は、角丸四角形状の外形を呈する環状部80と、端子付き直線パーツ(フィルム本体、コイル部品)81,82とを含む。環状部80は、2つの直線パーツ(フィルム本体、コイル部品)83,84と、2つの上部パーツ85,86(フィルム本体、コイル部品)と、1つの下部パーツ87(フィルム本体、コイル部品)とを備える。
【0047】
本実施形態において、端子付き直線パーツ81は、上述した直線パーツ22と同様の構成を備え、一端側に端子81Aが設けられ、他端側の表面に凸型コネクタ(接続部)81Bが設けられている。一方、端子付き直線パーツ82は、上述した直線パーツ24と同様の構成を備え、一端側に端子82Aが設けられ、他端側の裏面に凹型コネクタ(接続部)82Bが設けられている。直線パーツ83,84は、上部パーツ34と同一の機能および構成を備えるとともに直線状に形成されている点で相違する構成を具備している。直線パーツ83,84は、一端側裏面に凹型コネクタ(接続部)83A,84Aが設けられ、他端側表面に凸型コネクタ(接続部)83B,84Bが各々設けられている。上部パーツ85,86は上部パーツ34と同一の機能および構成を具備し、下部パーツ87は下部パーツ36と同一の機能および構成を具備する。
【0048】
図7(a)~図7(e)は、コイル10の組み立て手順を示す図である。図7(a)に示すように、上述した端子付き直線パーツ81の他端側表面に設けられた凸型コネクタ81B(図6(b)参照)を上部パーツ85の左端側裏面に設けられた凹型コネクタ(接続部)85A(図6(b)参照)に接続する。次に、図7(b)に示すように、上部パーツ85の右端側表面の凸型コネクタ(接続部)85B(図7(a)参照)を直線パーツ83の一端側裏面に設けられた凹型コネクタ83Aに接続する。そして、図7(c)に示すように、直線パーツ83の他端側表面に設けられた凸型コネクタ83B(図7(b)参照)を下部パーツ87の右端側裏面に設けられた凹型コネクタ(接続部)87B(図6(b)参照)に接続する。続いて、図7(d)に示すように、下部パーツ87の左端側表面の凸型コネクタ(接続部)87A(図7(c)参照)を直線パーツ84の一端側裏面に設けられた凹型コネクタ84A(図6(b)参照)に接続する。
【0049】
そして、図7(e)に示すように、直線パーツ84の他端側表面に設けられた凸型コネクタ84B(図7(d)参照)を上部パーツ86の左端側裏面に設けられた凹型コネクタ(接続部)86A(図6(b)参照)に接続する。最後に、上部パーツ86の右端側表面に設けられた凸型コネクタ(接続部)86Bに端子付き直線パーツ82の他端側裏面に設けられた凹型コネクタ82Bを接続する。このように各パーツ81~87に設けられている凸型コネクタ81B,83B,84B,85B,86B,87Aおよび凹型コネクタ82B,83A,84A,85A,86A,87Bを互いに接続することによりコイル70が構成される。
【0050】
この場合の第3実施形態におけるコイル70においても、上記第1実施形態におけるコイル10と同様の効果を得ることができる。
【0051】
上記第1~第3実施形態では、コイル10,40,70を例に挙げて説明しているが、本発明は、コイル10,40,70のように環状や四角枠状など周囲を囲む、いわゆる囲繞形状を有するコイルに限定されるものではない。例えば、非囲繞形状によって構成されたコイルに本発明を適用してよい。この場合における第4実施形態のコイル90の構成について図8(a)および図8(b)を用いて説明を行う。以下の説明において、上記第1実施形態のコイル10と同一の構成部分については適宜同一の符号を付して示しつつ説明を省略するとともに、構成の異なる部分について主に説明を行うものとする。
【0052】
図8(a)は、コイル90の全体構成を示す図である。図8(b)は、図8(a)にコイル90を分解した状態で示す図である。図8(a)および図8(b)に示すように、コイル90は、蛇行形状により構成された、いわゆる、ミアンダ配線により構成されたコイルである。コイル90は、端子付き直線パーツ(フィルム本体、コイル部品)91,92と、4つの直線パーツ(フィルム本体、コイル部品)93,94,95,96と、3つの上部パーツ101,102,103と、2つの下部パーツ104,105とを含む。
【0053】
端子付き直線パーツ91は、上述した直線パーツ22と同様の構成を備え、一端側に端子91Aが設けられ、他端側の表面に凸型コネクタ(接続部)91Bが設けられている。一方、端子付き直線パーツ92は、上述した直線パーツ24と同様の構成を備え、一端側に端子92Aが設けられ、他端側の裏面に凹型コネクタ(接続部)92Bが設けられている。
【0054】
直線パーツ93~96は同一の構成を備えるため、主に直線パーツ93を例に挙げて説明を行い、直線パーツ94~96については適宜説明を省略する。直線パーツ93は、上部パーツ34と同一の機能および構成を備えるとともに直線状に形成される。直線パーツ93は、一端側裏面に凹型コネクタ(接続部)93Aが設けられ、他端側表面に凸型コネクタ(接続部)93Bが設けられている。
【0055】
上部パーツ101~103はいずれも同一の構成を備えるため、以下の説明では上部パーツ101を例に挙げて説明を行い、上部パーツ102,103については適宜説明を省略する。上部パーツ101は、上部パーツ34と同一の機能および構成を備え、左端側裏面に凹型コネクタ(接続部)101Aが設けられており、右端側表面に凸型コネクタ(接続部)101Bが設けられている。
【0056】
また、下部パーツ104,105は、同一の構成および機能を備えるため、以下の説明では下部パーツ104について説明を行い、下部パーツ105については適宜説明を省略する。下部パーツ104は、右端側表面に凸型コネクタ(接続部)104Bを備え、左端側裏面に凹型コネクタ(接続部)104Aを備える点を除き下部パーツ36とほぼ同一の機能および構成を備える。
【0057】
次に、図8(a)を参照しつつコイル90の組み立て手順について説明を行う。図8(a)に示すように、端子付き直線パーツ91の他端側表面に設けられた凸型コネクタ91Bと、上部パーツ101の左端側裏面の凹型コネクタ101Aと接続する。そして、上部パーツ101の右端側表面の凸型コネクタ101Bと直線パーツ93の一端側裏面に設けられた凹型コネクタ93Aを接続する。続いて、直線パーツ93の他端側表面に設けられた凸型コネクタ93Bを下部パーツ104の左端側裏面に設けられた凹型コネクタ104Aに接続する。
【0058】
そして、上記と同様の手順によって、図8(a)に示すように、下部パーツ104の右端側表面に設けられた凸型コネクタ104Bに直線パーツ94の一端側を接続し、さらに直線パーツ94の他端側を上部パーツ102の左端側に接続する。次に、上部パーツ102の右端側に直線パーツ95の一端側を接続し、直線パーツ95の他端側を下部パーツ105の左端側に接続し、下部パーツ105の右端側を直線パーツ96の一端側に接続する。続いて、直線パーツ96の他端側を上部パーツ103の左端側に接続し、上部パーツ103の右端側に端子付き直線パーツ92の他端側裏面に設けられた凹型コネクタ92Bに接続する。これにより、コイル90の組み立てが完了する。
【0059】
この場合の第4実施形態におけるコイル90においても、上記第1実施形態におけるコイル10と同様の効果を得ることができる。
【0060】
続いて、第1実施形態に係るコイル10のシミュレーションモデルであるコイル110について図9を用いて説明する。図9はコイル110の構成を示す斜視図である。
【0061】
図9に示すように、コイル110は、後述する比較例1に係るコイル200および比較例2に係るコイル300のインダクタンス値と同等のインダクタンス値とするために環状部120の巻き数が上記第1実施形態のコイル10の環状部30の巻き数よりも多く構成されている点を除き上記実施形態のコイル10と同一の構成を具備する。
【0062】
ここで、上部パーツ32または下部パーツ36の1つあたりの巻き数を0.5と表記すると上記第1実施形態のコイル10における環状部30は3つの上部パーツ32,34および下部パーツ36から構成されているため巻き数が1.5と表記できる。これに対し、コイル110の環状部120は、上部パーツ32と同一構成を具備する9個の上部パーツU1,U2,U3,…(以下、特に区別する必要が無い場合には「上部パーツU」と適宜表記)と、8個の下部パーツB1,B2,B3,・・・(以下、特に区別する必要が無い場合には「下部パーツB」と適宜表記)とを順に連結して環状に構成される。環状部120の巻き数は、8.5と表記できる。
【0063】
コイル110は、上記第1実施形態のコイル10と同様に、各パーツU,B,22,24の間には上述した隙間t(図3参照)と同等の大きさの隙間が形成される。このように各パーツU,B,22,24の間に隙間を設けた状態で電気的に接続することにより、各パーツU,B,22,24の表面を各々構成するカバーレイフィルムL4と裏面を構成する基材L1とが密着せず空気層(隙間)を間に挟んだ状態で保持される。
【0064】
ここで、コイル110におけるカバーレイフィルムL4および基材L1の比誘電率は4.3であり誘電正接は0.025である。このため、仮に各パーツU,B,22,24の間に隙間が無い密着した状態で高周波交流電圧が印加されてしまうと、カバーレイフィルムL4および基材L1がコンデンサとして、換言すると、誘電体として機能し、伝送損失を増加させることとなる。
【0065】
これに対し、シミュレーションモデルに係るコイル110のように、各パーツU,B,22,24を密着させずに隙間を設けることにより、カバーレイフィルムL4や基材L1が誘電体として機能することを抑制できる。この結果、高周波交流電源を用いた無線電力伝送時に生じる伝送損失の発生を低減することが可能となる。
【0066】
続いて、図10図14を用いてコイル110と比較例1,2に係るコイル200,300の電磁界解析シミュレーションについて説明を行う。
【0067】
図10(a)は比較例1に係るコイル200の構成を示す斜視図であり、図10(b)は比較例1に係るコイル200を展開した状態を示す図である。図10(a)において第1フィルムLY1~第4フィルムLY4を積層させた状態を破線で示している。図10(b)において、表面側に配置されている銅箔部分を実線で示すとともに、裏面側に配置されている銅箔部分を破線で示している。
【0068】
図10(a)および図10(b)に示すように、コイル200は、平面視略四角形状の第1フィルムLY1~第4フィルムLY4を積層して構成される。以下の説明において、第1フィルムLY1および第3フィルムLY3の構成はほぼ同一であり、第2フィルムLY2および第4フィルムLY4の構成もほぼ同一である。以下の説明では、主に第1フィルムLY1および第2フィルムLY2の構成について主に説明を行い、第3フィルムLY3および第4フィルムLY4については説明を適宜省略する。
【0069】
図10(a)および図10(b)に示すように、第1フィルムLY1は、平面視略四角形状の基材K1と、基材K1の表面側に渦巻状に配置された渦巻部UZ1を有する銅箔D1とを備える。第2フィルムLY2は、平面視略四角形状の基材K2と、基材K2の裏面側に渦巻状に配置された渦巻部UZ2を有する銅箔D2とを備える。上述した渦巻部UZ1における銅箔D1同士の間隔DPは8mmに設定されている。また、渦巻部UZ2も渦巻部UZ1と同様に構成されている。ここで、基材K1,K2は上記実施形態における基材L1とほぼ同一の構成を具備し、銅箔D1,D2は、銅箔L2とほぼ同一の構成を具備する。第2フィルムLY2の銅箔D2の一端側はビア(不図示)を介して表面側に延伸しており、上述した第1フィルムLY1の銅箔D1の一端側と接続されている。
【0070】
コイル200は、第1フィルムLY1の表面側と第2フィルムLY2の表面側とが接し、第2フィルムLY2の裏面側と第3フィルムLY3の裏面側とが接し、第3フィルムLY3の表面側と第4フィルムLY4の表面側が各々接するように各フィルムLY1~LY4を折り畳んで構成される。これにより、各フィルムLY1~LY4は、各フィルムLY1~LY4における銅箔D1~D4の間に基材K1~基材K4が各々挟み込まれた密着状態で積層される。また、以下の説明において、特に区別する必要が無い場合には銅箔D1~D4を「銅箔D」と適宜表記する。
【0071】
図11(a)は比較例2に係るコイル300の構成を示す斜視図であり、図11(b)は比較例2に係るコイル300を展開した状態を示す図である。図11(b)において、表面側に配置されている銅箔E1を実線で示すとともに、裏面側に配置されている銅箔E2を破線で示している。図11(a)および図11(b)に示すように、コイル300は、電気的に接続された第1フィルムLM1~第15フィルムLM15を積層し、巻き数が7.5巻きとなるように構成される。
【0072】
ここで、奇数層、すなわち、第1フィルムLM1,第3フィルムLM3,・・・第15フィルムLM15はいずれも同一の構成を具備し、偶数層、すなわち、第2フィルムLM2,第4フィルムLM4,・・・第14フィルムLM14もいずれも同一の構成を具備する。以下の説明では、奇数層については主に第1フィルムLM1について説明を行い、偶数層については主に第2フィルムLM2について説明を行い、他のフィルムLM3~LM15については適宜説明を省略する。また、各フィルムLM1~LM15について、特に区別する必要が無い場合には「フィルムLM」と適宜表記する。
【0073】
第1フィルムLM1は平面視略四角形状の基材J1に下側に凸となる半環状部分を有する銅箔E1が設けられている。第2フィルムLM2は平面視略四角形状の基材J2に上側に凸となる半環状部分を有する銅箔E2が設けられている。第1フィルムLM1の銅箔E1と第2フィルムLM2の銅箔E2は端部側で電気的に接続されている。以下、特に区別する必要が無い場合には、各フィルムLMの基材J1~基材J15を適宜「基材J」と表記し、銅箔E1~銅箔E15を適宜「銅箔E」と表記する。
【0074】
そして、奇数層のフィルムLMの表面と偶数層のフィルムLMの表面とが接するとともに、偶数層のフィルムLMの裏面と奇数層のフィルムLMの裏面とが接するように順に折り畳むことにより各フィルムLMの銅箔E同士の間に基材Jが挟み込まれた状態で折り畳まれている。これにより、各フィルムLMの銅箔Eの間に基材Jが挟み込まれた状態で積層され各フィルムLMにおける基材J同士が互いに密着した状態に保持される。このようにして図11(a)に示すように平面視略円環状のコイル300が構成される。
【0075】
図12は、電磁界解析シミュレーションにおける設定条件と計算結果を示す表である。図12に示すように、シミュレーションモデルに係るコイル110の銅箔L2、比較例1に係るコイル200の銅箔D、比較例2に係るコイル200の銅箔Eはいずれも幅が8mmであり、厚みが0.095mmとなるように設定されている。
【0076】
図13は、上記電磁界解析シミュレーションによって計算されたインダクタス値と供給する交流電源の周波数との関係を示すグラフであり、縦軸をインダクタンス値とし、横軸に印加する電源(電圧)の周波数を示している。図13において、コイル110の算出値の曲線を実線で示し、コイル200の算出値の曲線を破線で示し、コイル300の算出値の曲線を1点鎖線で示す。
【0077】
図12および図13に示すように、13.56MHzの高周波交流(電圧)電源が印加された場合における本実施形態に係るコイル110のインダクタンス値は2.17μHであり、比較例1に係るコイル200のインダクタンス値は2.20μHであり、比較例2に係るコイル300のインダクタンス値は1.94μHであり、いずれもほぼ2μH前後の同等のインダクタンス値を有する。
【0078】
また、図13に示すように、コイル200については約15MHzよりも高い周波数の高周波交流電源が印加されるとインダクタンス値が急激に増加し、コイル300については約30MHzよりも高い周波数の高周波交流電源が印加されるとインダクタンス値が急激に増加している。これに対し、コイル110のインダクタス値は、40MHz付近まではほぼ一定であり、60MHz前後付近から増大していることが分かる。
【0079】
ここで、高周波交流電源を用いた無線電力伝送では、高周波交流電源の電源周波数である13.56MHz付近におけるインダクタンス値が大きく変動せず平坦な特性を有することが回路設計を行う上で好ましい。このため、インダクタンス値が40MHz付近までほぼ一定であり且つ60MHz付近まで急激に増加しないコイル110が無線電力伝送を行う上で最も好ましい特性を具備していると言える。
【0080】
図14は、上記電磁界解析シミュレーションによって計算されたQ値と供給する交流電源の周波数との関係を示すグラフであり、縦軸にQ値を、横軸に印加する電源(電圧)の周波数を示している。図14において、コイル110の算出値の曲線を実線で示し、コイル200の算出値の曲線を破線で示し、コイル300の算出値を1点鎖線で示す。ここで、図14に示すQ値(コイルの品質係数)は、電磁界解析シミュレーションにおいて、Sパラメータ(Scattering Parameter)に基づいて算出される無次元パラメータであり、Q値の値が大きいほど無線電力伝送において伝送損失が少ないことを意味する。
【0081】
図12および図14に示すように、無線電力伝送に用いられる13.56MHzの高周波交流電圧を印加した場合に、比較例1に係るコイル200のQ値は45であり、比較例2に係るコイル300のQ値は183であり、本実施形態のコイル110のQ値は387である。このことから、コイル110の伝送損失が最も少ないことが示されている。
【0082】
また、比較例1に係るコイル200の自己共振周波数は23.0MHzであり、比較例2に係るコイル300の自己共振周波数は43.2MHzであり、コイル110の自己共振周波数は82MHzである。
【0083】
ここで、図15は、高周波交流電圧を印加したときのインダクタ(コイル)400の等価回路を示す図である。図15に示すように、インダクタンス400Lはインダクタのインダクタスを、抵抗400Rはインダクタ400における直流抵抗を、線間容量400Cはインダクタ400の(巻線)構造による線間容量である。そして、インダクタンス400LをLと、線間容量400CをCと表記した場合に、自己共振周波数fとの間には以下の(数1)に示す関係が成立する。
【数1】
上記の(数1)に示すように、自己共振周波数fの大きさは、インダクタンス400Lと線間容量400Cの積の平方根と反比例する関係にあるため、インダクタンス400Lの大きさが一定である場合は線間容量400Cが大きいほど自己共振周波数fは低下することとなる。この線間容量400Cは、上述した浮遊容量に相当する。
【0084】
また、上述した線間容量400Cは個々のインダクタにおける個体差が大きく製造過程における性能のバラツキも大きくなりやすい。さらに、個々のインダクタにおいて自己共振周波数近傍では見かけ上のインダクタンス値の周波数に対する変動が大きくなるためインダクタとしての安定した性能を発揮させることが難しくなる。
【0085】
上記の点を考慮した場合、自己共振周波数は少なくとも使用する周波数(本実施形態では上述のように13.56MHz)の5倍(すなわち、本実施形態では67.8MHz)以上であることが伝送損失を抑制する上で望ましい。
【0086】
この点に関し、上記電磁界解析シミュレーションによれば、コイル110の自己共振周波数は無線電力伝送に用いられる13.56MHzの5倍以上の大きさであることが示されている。
【0087】
このため、高周波電源を用いた無線電力伝送にコイル110を適用した場合にはコイル200,300を用いた場合よりも伝送損失を抑制することが可能となる。上述のようにコイル110は高周波電源を用いた無線電力伝送に適した性能を具備する。また、このことからも第1実施形態のコイル10は高周波電源を用いた無線電力伝送に好適な性能を具備するものであり、第1変形例が適用されるコイルや、第2変形例および第2~第4実施形態に係るコイル40,50,70,90においても同様に高周波電源を用いた無線電力伝送に好適な性能を具備するものと言える。
【0088】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【符号の説明】
【0089】
10,40,50,70,90 コイル
22,24,61,62 端子付き直線パーツ(コイル部品、フィルム本体)
22A,24A,61A,62A,81A,82A,91A,92A 端子
30,31,80,120 環状部
32,34,85,86,101,102,103,U1,U2,U3、U 上部パーツ(コイル部品、フィルム本体)
36,87,104,105,B1,B2,B3,B 下部パーツ(コイル部品、フィルム本体)
22B,32B,34B,36A,61B,63B,64B,65B,66B
67B,81B,83B,84B,85B,86B,87A,91B,93B
101B,102B,104B 凸型コネクタ(接続部)
24B,32A,34A,36B,62B,63A,64A,65A,66A
67A,82B,83A,84A,85A,86A,87B,93A
101A,104A 凹型コネクタ(接続部)
63,64,65,66,67,83,84,93,94,95,96 直線パーツ(コイル部品、フィルム本体)
L1,M4 基材(絶縁性薄膜)
L2,M3,M5 銅箔(導電性薄膜)
L3,M2,M6 接着層
L4,M1,M7 カバーレイフィルム(絶縁性薄膜)
400 インダクタ
400C 線間容量
400L インダクタンス
400R 抵抗
t 隙間

【要約】
【課題】製造コストの低減を図ることが可能なコイル、および、コイル部品を提供する。
【解決手段】コイル10は、ポリイミド樹脂からなるフィルム状の基材L1とカバーレイフィルムL4とで銅箔L2を挟み込んで構成される各パーツ22,24,32,34,36と、各パーツ22,24,32,34,36に取り付けられた各コネクタ22B,24B,32A,32B,34A,34B,36A,36Bとを含み、各パーツ22,24,32,34,36は、各コネクタ22B,24B,32A,32B,34A,34B,36A,36Bを介して接続されることにより各パーツ22,24,32,34,36同士が密着しないように構成される。
【選択図】図1

図1
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