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特許7705698車両事故などの緊急事態後の応答迅速化を支援するデータを自動的に送信する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-02
(45)【発行日】2025-07-10
(54)【発明の名称】車両事故などの緊急事態後の応答迅速化を支援するデータを自動的に送信する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20250703BHJP
   H04M 11/04 20060101ALI20250703BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20250703BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20250703BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20250703BHJP
   G08B 25/08 20060101ALI20250703BHJP
   G06Q 50/26 20240101ALI20250703BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G08G1/00 D
H04M11/04
G08B21/00 U
G08B25/04 K
G08B25/10 A
G08B25/08 A
G06Q50/26
G08G1/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023108077
(22)【出願日】2023-06-30
(65)【公開番号】P2024035085
(43)【公開日】2024-03-13
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2022136667
(32)【優先日】2022-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518293963
【氏名又は名称】マーク ヘイリー
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】マーク ヘイリー
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-344678(JP,A)
【文献】特開2000-200397(JP,A)
【文献】特開2020-061088(JP,A)
【文献】特開平07-047866(JP,A)
【文献】特開2002-127857(JP,A)
【文献】特開2002-056060(JP,A)
【文献】特開2008-204219(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099489(WO,A1)
【文献】特開2015-161977(JP,A)
【文献】特開2002-150471(JP,A)
【文献】特開2005-202810(JP,A)
【文献】特開2008-017174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
H04M 11/04
G08B 21/00
G08B 25/04
G08B 25/10
G08B 25/08
G06Q 50/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する車両および/または該車両の搭乗者のスマートフォンのGPSから、GPSデータをクラウドに継続的に送信するステップと、
前記GPSデータのみから車両の衝突その他の緊急事態を自動検知するステップと、
前記GPSデータと、車両の衝突データ履歴を含むデータベースと照合し、照合の結果必要に応じて、直ちに緊急電話番号に自動通報して前記緊急事態のGPS位置と深刻度とを含む衝突情報を提供するステップと、
前記緊急事態の被害者を識別して、該被害者の医療記録データおよび発信者番号を送信するステップと、
前記クラウドと前記車両の通信が途絶えた全ての車両を追跡するステップと、
車両の通信が途絶えた時間が予め設定された制限時間を超えた場合に、ドライバーが選択した時間経過後に、前記ドライバーに自動発信して前記ドライバーの状態を確認する、および/または自動で緊急電話通報をするステップと
を含む、緊急事態のデータ自動送信方法。
【請求項2】
前記車両の映像および/または音声、または、前記車両のコンピュータに自主的にアップロードしたアプリケーションデータを利用するステップと、
前記発信者番号を確認して、医療履歴と、警察の介入が必要であることを示す犯罪記録や精神病歴を含む警察報告書と、前記通報の事件種別プロファイルに関連付けられた適切な看護および対応を直ちに開始するために必要な関連データと、を取得するステップと、
前記クラウド上のビッグデータで1つの国または全世界の何百万台もの車両や個人を移動中に監視することで、監視対象者の医療記録データを、衝突事故後に最適な治療を行うために直ちに入手できる状態とし、先進事故自動通報システム(Advanced Automatic Collision Notification:AACN)および外傷重症度スコア(injury severity score:ISS)を利用して、衝突直後に提供される医療を向上するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
移動する車両および/または該車両の搭乗者のスマートフォンのGPSと、車両の衝突データ履歴を含むデータベースを有するクラウドと、該GPSのGPSデータを処理するコンピュータとを有する緊急事態のデータ自動送信システムであって、
前記GPSは、前記GPSデータを前記クラウドに継続的に送信する手段を備え、
前記コンピュータは、前記GPSデータのみから車両の衝突その他の緊急事態を自動検知し、前記GPSデータと前記データベースのデータとを照合し、照合の結果必要に応じて、直ちに緊急電話番号に自動通報して前記緊急事態のGPS位置と深刻度とを含む衝突情報を提供し、前記緊急事態の被害者を識別し、該被害者の医療記録データおよび発信者番号を送信する手段と、前記クラウドと前記車両の通信が途絶えた全ての車両を追跡し、車両の通信が途絶えた時間が予め設定された制限時間を超えた場合に、ドライバーが選択した時間経過後に、前記ドライバーに自動発信して前記ドライバーの状態を確認する、および/または自動で緊急電話通報をする手段とを備える、緊急事態のデータ自動送信システム。
【請求項4】
前記コンピュータが、移動する車両および/または該車両の搭乗者のスマートフォンのGPS位置、加速、減速、高度、速度、および車両のシステムの状態を前記クラウドから継続的に監視して該クラウドに保存し、前記データベースのデータと照合して、衝突、火災、その他の緊急事態が存在するか否かを判断し、緊急電話通報を行って負傷の恐れがある人に関連するすべての医療情報およびその他の記録を提供して救急隊員および/または警察官の事故現場への出動を要請する手段を更に備える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記コンピュータが、スマートフォンの発信者番号、車両のカメラ、ならびに顔および/または音声認識ソフトウェアのうちの1つ以上を使用して被害者を識別する手段を備え、
前記スマートフォンのアプリケーションが、該被害者の情報を前記クラウドに自主的に提供し、
前記コンピュータが、該コンピュータにリンクされた任意選択的な医療記録データと、前記被害者の情報を照合して、通報に関連して取得されるデータおよび履歴データの1つ以上に基づいて該被害者のプロファイルを生成、更新する手段を備え、
前記履歴データは、過去の通報・通話データ、警察記録、刑務所データ、ソーシャルメディアデータ、医療記録、セキュリティ記録、および顧客記録、のうちの1つ以上を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記クラウドにリンクされたスマートフォンのアプリケーションおよび/またはソフトウェアを使用して、
前記スマートフォンのGPSデータを継続的に送信して前記車両および/または人を追跡するステップと、
高度、加速、および減速データを類似車両の過去の衝突に関するデータベースと照合して、衝突の発生時間を確認するステップと、
それによって前記クラウドに正確な衝突その他の緊急事態の通知を行うとともに不正確な緊急電話通報を回避するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記GPSデータを介した追跡、ならびに前記スマートフォンのアプリケーションおよび/または前記車両のセンサから合意の上で共有された医療記録データにより、衝突その他の緊急事態後の対応者による医療支援を迅速化するステップをさらに含み、
前記追跡を行う装置を冗長化することにより、前記GPSデータの消失および/もしくは破損、ならびに/または機器の故障によるものではない緊急時において、緊急電話ネットワークへの自動通報を確実に行う、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記GPSは、車両およびその搭乗者を追跡する、スマートフォンからのGPSデータを含み、
前記コンピュータが、過去のデータと照合して前記GPSデータを補正することにより、GPS信号の途絶もしくは破損、または電源の喪失を含む異常を補完して欠陥のないGPSデータを作成して、該欠陥のないGPSデータを前記クラウドと共有し、該欠陥のないGPSデータを用いて、関連する高度、速度、加減速度、および他のデータを計算して、追跡中の前記車両の種別、ならびに前記車両の衝突その他の緊急事態の発生を確認し、該関連する高度、速度、加減速度、および他のデータを前記クラウドに保存して車両衝突データの分析を継続的に改善することにより、不正確な緊急電話通報の可能性を低減し、衝突を検知すると、緊急電話ネットワークに自動通報の発信および/または救難テキストメッセージの送信を行って、緊急対応者を要請し、衝突後、3Dマップに前記衝突をプロットする手段を更に備える、請求項3に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両および/または携帯電話(スマートフォンを含む)、衛星電話(以下、単に「電話」と呼ぶ場合がある)から自動でコンピュータによる119番通報を発信してGPS位置や速度などの情報と、当事者が事前に承認している場合にはその医療履歴とを含むデータを提供し、そのデータを継続的にクラウドにリンクさせることにより車両事故などの緊急事態後の応答時間を短縮する装置、システム、方法に関する。
車両に搭載されたカメラ、センサ、およびコンピュータ、および/または、電話が搭載するセンサ、コンピュータなどは、速度や減速などのデータを用いて衝突の発生時間を自動的に通知するものである。そして、可能な場合には複数のデータソースを利用して、データを検証するための冗長性を持たせ、不必要な119番通報を回避する。これにより、病院への搬送を迅速化し、事故後の生死を分けるゴールデンアワーにおいて、被害者に合わせた最適な医療を確実に提供することができる。このソリューションは、数十億台もの電話および/または車両を追跡する全世界のビッグデータネットワークを活用することで、国内外を問わず利用することができる。
【背景技術】
【0002】
本装置、システムおよび方法は、自宅内や車両の衝突など、あらゆる場所での、車両事故などの緊急事態発生後における救急隊員(Emergency Medical Technician:EMT)や警察などの応答を迅速化し、これにより、事故後に理想的な医療を確実に届けられるようにするものである。2018年の米国の交通事故死者数は36,560人であり、救急チームの応答時間を短縮すれば、事故被害者が助かる可能性が高まり、毎年数百人あるいは数千人の命が救われる可能性がある。しかし、2018年において、事故発生後10分以上経過してから通報が行われた死亡衝突事故は1割に上る。この数字が示しているのは、事故発生前の数秒間に自動的に衝突データを共有することをドライバーが許容する技術的、経済的動機があるということである。つまり、クラウドにGPSデータや医療履歴などのデータを常時接続、保存した上で、衝突などの緊急事態を検知すると、1000分の1秒という瞬時に119ネットワークに通報を自動発信して、テキストから生成した音声につなげるか、または119コールセンターの画面にすべての関連情報を表示することができる。GPSデータの送信は、車両および/または電話を拡張119クラウドネットワークに継続的に接続して行う。標準的なGPS技術では、100文字程度の緯度、経度、高度情報を含むデータを1秒間に1回程度の頻度で送信するが、そのような標準的なGPSデータ(標準的なGPSの例:$GPRMC,235316.000,A,4003.9040,N,10512.5792,W,0.09,144.75,141112,,*19)を用いて、追跡装置の位置や速度のピンポイントでの把握や、車両種別や衝突発生時間の確認を行うことができる。(なお、緊急時に通報する電話番号は日本では119番であるが米国では911番である。以下、119番、911番への通報を総称して緊急電話通報」という)
本発明が必要とするものは、スマートフォンまたは理想的には衛星電話など、GPSデータの収集・送信を行う通信機器のみである。対象者が、世界中をどのような乗り物(すなわち、乗用車、航空機、列車など。(以下、総称して「車両」という)に乗って移動する場合でも、当該機器が、GPSデータを使って衝突を検知し、救難テキストメッセージまたは緊急電話通報を送信する。GM社のOnStarなどの他のシステムは、加速度センサなどのセンサを使って、衝突発生の正確な判定や、エアバッグの展開、緊急電話通報などを行うものであり、コストが高く、車両へのセンサ搭載が必要である。一方、本システムは、車両種別および緊急事態の発生時間の特定に、GPSデータしか必要としない。
本願の発明者マーク・ヘイリーは、日本で教授職にあった2009年に本特許に含まれる技術を開発し、以来13年以上にわたり、当該GPS追跡技術を通信面で強化して、遠隔地の火災に向かってスカイダイビングをする精鋭の消防降下隊員(smokejumper)を含む世界中のスカイダイバーの訓練および追跡を行った。本発明者による特許文献1およびその対応日本特許である特許文献2(発明の名称:「スカイダイビングトラッカー:スカイダイビングの安全性を向上させるための飛行データ収集および仮想現実シミュレータのための統合システム」)を参照されたい。
本発明は、GPS及び通信機能を有する任意の機器、すなわちスマートフォン、で対象者を世界中追跡して保護し、緊急時には救難メッセージをテキストや通話で発信することができるため、費用対効果は非常に高い。その結果、世界中の数十億台もの電話(すなわち、スマートフォン、衛星電話など)で、乗用車、列車、飛行機、船舶などのどのような乗り物に乗って移動する世界中のいかなる人にも適用可能で、安全を提供することができる。
【0003】
1つのGPSデータポイントから、「テキサス州ダラス」などの位置が得られる。2つのGPSデータポイントから、88フィート/秒(約26.82メートル/秒)、時速60マイル(時速約48.28キロメートル)などの速度が、移動した距離/時間として得られる。3つのGPSデータポイントから、詳細な加減速情報が得られる。セメント壁への正面衝突事故の場合、2つ目のデータポイントから3つ目のデータポイントまでの動きがごくわずかとなることが考えられる。また、その種別の車両の履歴データを照合して、当該衝突の検証を行う。携帯電話トラッカと車両トラッカなど、データを冗長化することにより、緊急電話通報の誤発信を低減することができる。図7図11に示すように、車両の種別は、速度と高度のデータにより特定する。衝突後、関連する位置情報、衝突データ、医療記録がすべて含まれたテキストメッセージが緊急電話番号に送信される。また、任意選択的に、あらゆる言語でテキストの音声変換(例えば、IBMのWatsonなど)を行うこともできる。しかしながら、テキストメッセージだけでは、衝突の概要を理想的な形では得られなかった。
【0004】
なお、車両種別の識別は、車両自身が自動的に行う。しかし、スマートフォンの場合、それを携帯する人が乗用車や、列車、飛行機に搭乗中、さらには飛行機から飛び降りてスカイダイビング中であるとして、そのような車両種別の確認は、GPSデータを履歴データと照合して判定することしかできない。本発明者は、この技術を利用して、何百もの列車、飛行機、乗用車、スカイダイビングの追跡や事故調査を行った。その結果、GPSのデータベースが大きいほど高い精度が得られるものの、小さなGPSデータベースでも車両の種別を特定することができることが分かった。本方法およびシステムは、車両および/または電話のGPSデータを含む1つまたは複数のセンサを使用して、必要なときに自動的に緊急電話通報を行うものである(図1図6)。センサを冗長化することにより、緊急電話通報の誤発信のリスクを低減することができる。ただし、本方法およびシステムは、携帯型スマートフォンのGPSデータだけで、緊急電話通報をするのに十分な情報を取得することができる(図6)。
【0005】
米国において、車両の速度、位置、加速などに関する重要情報であるテレマティクス車両データの共有を許可しているドライバーは、2018年時点でわずか10%にとどまっている。しかし、データ共有によって提供される自動車保険の割引率が上がり、プライバシー保護が強化され、技術が向上すれば、より多くのドライバーがこのデータを共有するようになり、救急対応の応答時間が短縮されて、事故被害者が助かる可能性が高まると考えられる。欧州連合(EU)では、域内のすべての自動車製造業者に対して、2018年4月以降、自動緊急通報技術「eCall」を搭載することを義務付けているため、この点ではEUが米国を大きくリードしている。
【0006】
ビッグデータは、膨大な量のデータを高速に分析し、従来は解決できなかった問題を解決することができる技術である。ビッグデータは、車両および/または電話のデータ、クラウドのデータ、搭乗者が自発的に重要情報を開示している場合には、クラウドにリンクされた当該重要情報、ならびに、車両の速度や位置の監視を行うとともに車載カメラや顔認識ソフトによってドライバーの識別を行う車載カメラおよび車載センサからのデータを活用する(図1図3)。1台の車両から1日に数テラバイトのデータが生成され、追跡対象の車両は数百万台に上る。僻地や夜間など、手動では緊急電話通報ができない状況でも、重要な衝突データを自動的に緊急電話番号に送信する。このロボット通報によって、事故の場所や深刻度、ドライバーの医療履歴などが特定され、衝突後のゴールデンアワーの時間内に被害者救助を行うことに貢献する。ゴールデンアワーとは、その時間に救助を行うことで事故被害者が助かる可能性が最大となる衝突後の時間を指す。また、車載センサの故障や通信の途絶などによってデータを取得できない場合でも、車両を常時監視することで、トラブルや事故の可能性を示唆することができる(図4)。本システムは、国内外を問わず利用することができる(図5)。
【0007】
また、本発明は、交通事故発生後の初期対応者の応答時間を短縮し、人命救助や負傷者の低減に貢献する可能性を持った有望な技術である。交通量の多い米国の都市部の道路では、多くの人が事故発生後すぐに緊急電話通報を行う。また、自動的に救難通報を発信する車すらある。ところが、深夜や僻地では、事故の報告が何時間も行われない場合がある。しかし、ビッグデータとクラウドの組み合わせを拡張することより、事故後10分以内どころか衝突発生前の数秒間に、事故の報告を自動的に行うことが可能となる。
【0008】
現在の最新式の車載センサは、毎日数テラバイトものデータを収集し、その一部を車の自律走行や事故につながる恐れのある状況でのブレーキに利用している。本発明の装置、システムおよび方法は、事故後迅速に、このデータの重要な部分をクラウドに送信し、初期対応者に確実に通知することを目的とするものである。
【0009】
「ゴールデンアワー」-命を救うためには1時間以内の迅速な治療が重要
米国外科学会(American College of Surgeons)によれば、「ゴールデンアワー(Golden Hour)」とは自動車の衝突や銃創などにより重傷を負った患者に対して受傷後の最初の60分間に成功裏に治療を行うことが非常に重要であることを強調する概念である。このような重症外傷患者の初期治療は、外傷二次救命処置(Advanced Trauma Life Support:ATLS)と呼ばれる。外傷二次救命処置は、ベトナム戦争や米国内の危険な都市で重傷を負った人々を治療した経験をもとに1976年に開発された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第10782524号明細書
【文献】特許第7184566号明細書
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ビッグデータと緊急電話通報で救急医療を迅速化(概要)
図2】2021年型自律走行車に搭載されるセンサ/カメラの例
図3】eCallを第一歩に、第二歩のビッグデータ&クラウド追跡へ
図4】ビッグデータとクラウドが移動体通信網の空白地域でもドライバーを監視
図5】何百万台もの車両や電話からのGPSなどのデータをクラウドに送信し、救急対応を最適化
図6】GPSデータのみおよび/またはGPSなどのデータのみを使用した緊急時ネットワーク追跡
図7】飛行データの照合により、いかにインタラクティブな3Dプロットを行うための活動種類(飛行機、スカイダイビング)の識別と報告聴取(debrief)に最適なアングルの識別とを自動的に行うかを示すフローチャート
図8】動的にプロットを行うことにより、任意の種類の移動に対してカスタマイズされた3Dプロット/報告聴取をインタラクティブな3Dグラフィックで示すロジックを明らかにするフローチャート
図9】カスタマイズされた3Dプロット/報告聴取を作成するためのロジックを示すフローチャート
図10】カスタマイズされた3Dプロット/報告聴取を作成するためのロジックを示すフローチャート
図11】カスタマイズされた3Dプロット/報告聴取を作成するためのロジックを示すフローチャート
図12】飛行機、スカイダイビング、自動車の追跡がいつでもどこでも可能であることを示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の装置、システムおよび方法は、ビッグデータやクラウドを活用して、車両事故や通常の緊急電話通報に対して統合的な応答方法を提供するものであり、より詳細には、救急隊員や警察官などが被害者の医療的背景を把握し、病院への搬送中に迅速かつ適切に治療を行うための統合的な応答方法を提供するものである。本発明は、病院への被害者の移送を迅速化し、事故後のゴールデンアワーの時間内に理想的な医療を提供し、最良の医療結果を得ることを目的とする。車両事故の場合、車両データによって切迫した衝突の危険が示されると、装置(理想的には、煙探知機と同様に政府によって義務付けられた装置)が、緊急電話番号への救難通報を自動的に発信する。この通報は、車両が大破してすべての通信手段や車載コンピュータが使えなくなる場合に備えて、衝突の瞬間の直前に行われる。通報される情報には、ドライバーの身元情報が含まれる。身元情報は、最新車両に自律走行システムの一部として取り付けられている、顔/音声認識ソフトウェアを搭載したドライバー監視カメラによって取得する。これに代えて、搭乗者が医療記録(カルテ)を車両のコンピュータや電話に自発的に提供するオプションを利用することもできる。本システムが搭乗者を識別できない場合や、プライバシー上の懸念がある場合には、事故時にこのオプションによって、搭乗者が開示を望む医療履歴が提供される。
【0013】
図1のブロック1において、車両のセンサ、コンピュータ、ソフトウェアが、GPSデータと医療記録を利用して自動的に緊急電話通報を行って、救急隊員などの対応者を呼び出す。また、電話からの緊急電話通報の場合には、通報時に、電話がGPSデータを自動送信し、および/または音声認識によって医療記録を特定し、GPS位置情報と医療記録とを救急隊員に送信する(ブロック2)。
【0014】
音声/顔認識ソフトウェアによる通報または自発的にアップロードされたデータとクラウドデータとの照合結果により、車両事故であっても自宅からの119番通報であっても、被害者の位置や身元、医療的背景を把握することが可能となる。したがって、病院への搬送中に、救急隊員などの対応者は、患者に合わせて適切に治療を行うことができる。ブロック3では、顔/音声認識ソフトウェア、または発信者番号情報、または車両のコンピュータと連携する電話のアプリケーションからの自発的開示情報を用いて、クラウド上のビッグデータから被害者の医療記録を入手し、人工知能(AI)が被害者に応じた医学的課題や治療を常時検証する。そして、本システムによって患者に関連する医療履歴が特定されているため、ブロック4に示す病院への搬送中に、救急隊員はその患者に合わせた初期治療を行い、病院ではそれを引き継いで治療を行うことが可能となる。
【0015】
図2は、自律走行車が多数のカメラ、レーダ、LiDARを使用して、車両の周囲の世界をマッピングし、それによって最適かつ安全な走行を計画する様子を示す。2021年、業界最大手のテスラ社は、8台のカメラを使用して前方250m、後方50mまでの範囲で360度の視野を実現するとともに、超音波センサで車両周囲のマッピングを強化し、レーダで雨や霧の中や埃で汚れた状態でも前方認識を行うことを可能にした。
【0016】
しかし、車内カメラを利用してドライバーの状態を監視することに対しては、賛否が分かれている。この車内カメラには、衝突前も含めたドライバーの行動が記録され、クラウドにアップロードされる。この機能は、任意選択的であり、ユーザが拒否することもできるが、プライバシー上の懸念を生み出している。このようなプライバシーに関する懸念に対処するため、および、顔・音声認識ソフトウェアには限界があることから、搭乗者が車両に乗り込む際に、手動でまたは電話のアプリケーションで自動的に、医療情報などの情報を車両のコンピュータに自主的に開示することが考えられる。
【0017】
自動緊急通報はEUでは既に義務化、米国でも義務化が必須
図3に示すテレマティクスは、位置や、速度、急ブレーキ、急加速などの重要な情報の送信を行う車載追跡装置である。このデータの共有に対しては、いくつかの保険会社が割引を提供しており、そのため、米国では10%近くのドライバーがこの技術を利用している。しかし、欧州連合(EU)では、域内のすべての自動車製造業者に対して、2018年4月以降、自動緊急通報技術「eCall」を搭載することを義務付けたため、2021年時点で、EUが米国を大きくリードしていた。衝突発生時には、eCallによって、自動的に位置情報が送信され、エアバッグが展開したかどうかも通報される。これに対し、ビッグデータと顔・音声認識ソフトウェアを組み合わせた本技術では、GPSデータなどのセンサ情報を使って、ドライバーの身元や医療履歴など、被害者の治療に必要なすべての関連情報を特定する。
【0018】
Track Me-携帯電話のサービスエリア外が点在する場所でのオプション
図4に示すアイダホ州のフランク・チャーチ=リバー・オブ・ノー・リターン自然保護区(Frank Church-River of No Return Wilderness)は、237万エーカー(約9.6万km)の広さを有する、米国本土48州の中でも屈指の僻地である。同自然保護区では、携帯電話はほとんど通じない。例えば、アイダホ州のディクシー(2019年時点の人口3,237人)は、同自然保護区の近傍に位置するが、移動体通信のサービスエリアは一部の地域に限られている(2019年時点)。また、アラスカ州では、移動体通信のサービスエリア外が広範囲に広がっている。ビッグ・ベンド国立公園内に位置するテキサス州ウッドソンから、同じくビッグ・ベンド国立公園内にあるマリスカル鉱山までのドライブは、その課題と解決法を示すものである。この11マイル(約17.7km)を約55分かけて走行する間、移動体通信のサービスエリアは連続せず、通信が何度も途切れる。よって、ビッグ・ベンド国立公園や、自然保護区、多くの国立公園では、テレマティクス・オプションで、オプション機能の「Track Me」を起動して、移動体の電波が届かない状態にある車両の状況を本システムが監視できるようにする必要がある。その場合、予め設定した時間が経過すると、自動で電話をかけてドライバーの無事を確認する。そして、さらに指定された時間が経過すると緊急電話通報を行うこともできる。このオプションは、車載機器に故障が生じた場合や移動体通信網の一部に障害が発生した場合にも有効である。
【0019】
ここで図5を参照すると、矢印501で、本システムは、何百万台もの車両に関する情報をクラウドに送信し、救急対応を最適化する。車両および/または電話のアプリケーションから、GPS位置情報、速度、加速、ならびに、搭乗者の写真、音声および/または身元情報が自動的に送信され、これに加えて、搭乗者が自発的に提供した場合には、医療関係の身元情報も自動的に送信される。GPSデータを電話からも送信することにより、GPSデータを冗長化してクラウド側と衝突の確認を行い、不正確な緊急電話通報の数を最小限に抑えることもできる。クラウドが衝突データや車両の衝突データ履歴などを含む膨大なデータベースと照合して、搭乗者を特定し、ゴールデンアワーの時間内に被害者救助を行うために対応を最適化する。
【0020】
GPSデータは、スマートフォンや車載コンピュータを使って、80文字/秒程度の小さなパケットで送信することができる。追加データで本システムを補完することもできるが、衝突位置や衝突速度などを含む衝突の深刻度の確認はGPSデータで十分行うことができる。車両への人の乗り降りを想定すると、医療記録の変更は多くても10分毎にしか起こらないため、主要な医療データの平均サイズは40文字/秒未満となる。したがって、必要なデータは120バイト/秒のみである。ただし、必要なバイト数や時間間隔は、救急隊員の応答の迅速化を図るべく、ネットワークのストレージや帯域幅の問題に応じて調整することができる。将来的には、膨大な情報量を背景に、GPSや医療情報以外のデータが救急応答時間の改善につながる可能性があるが、その場合には、そのようなデータの送信も可能となるであろう。
【0021】
米国運輸省によると、2021年現在の米国における車両台数は2億7600万台であり、その内訳はトラック1億5600万台、乗用車1億800万台、自動二輪車850万台、バス57.5万台などとなっている。また、統計データによれば、2020年現在の米国におけるスマートフォンユーザは2億8000万人と推定される。データソースを冗長化することにより、不正確な緊急電話通報を低減することができる。例えば、携帯電話を持ってバイクに乗っている人が携帯電話を落とした場合、これが衝突発生を示してしまう可能性があるが、もしバイクに追跡装置が搭載されていれば、当該バイクが事故を起こしていないことを確認することができ、不必要な緊急電話通報を回避することができる。
【0022】
120バイト/秒でGPSデータおよび医療データを送信するために必要な帯域幅は、5Gネットワークなどのネットワーク上のどのような装置にとっても小さい。車両や電話の台数は何百万台にも上るため、1つ1つのデータパケットは小さくても、クラウドでは1秒間に数百ギガバイト、1時間に数テラバイトのデータが生成される。重要なデータは実際の衝突時や緊急時のデータのみであることから、プライバシー上の懸念や必要なストレージ容量の削減のために、クラウド上のデータは定期的に廃棄することができる。図5の矢印502で、衝突の発生を検証するために、AI(人工知能および/または統計)を使用するキューに対して、データを送信する。最後に、図5の矢印503で、クラウドが衝突のGPS位置と深刻度とを再確認し、ゴールデンアワーの時間内に被害者救助を行うために最適化した、被害者の医療記録などの情報を提供した上で理想的な対応者を派遣する。
【0023】
図6は、車両および/または携帯電話(図6の601)からのGPSデータのみを使用してシステムが機能する様子を示す。2022年時点では、ほとんどの車両が、GPSデータを自動送信する高度な電子機器を備えていない。人が手動で119番通報することもできるが、本システムによれば、携帯電話のアプリケーションが自動的に緊急電話通報を行い、衝突の速度や衝突の深刻度を含むGPSの位置データを提供するため、本システムが最適なソリューションである。本システムによれば、搭乗者が通報できない場合でも、緊急電話通報を自動的に行うことができる。車両の種別ごとにGPSデータや衝突データは異なるため、GPSデータの取得のみで、本システムは類似車両の履歴データベースとGPSプロファイルとを照合し、当該車両の種別、すなわち乗用車、列車、飛行機のいずれであるかを確認する(図6の602)。次に、当該車両の速度などのパラメータを使用して、衝突が発生したかどうかを判定する(図6の603)。そして、本システムは、AIおよび/または統計データを活用して、不要な119番通報を最小限に抑える。つまり、複数のセンサによる冗長性を有している通報への応答が最優先とされる(図6の604)。一方、緊急電話システムに過剰な負荷がかかるのを避けるため、携帯電話によって生成された通報のみからなる緊急電話通報に対しては、ネットワークが優先度を低く設定することができる(図6の605)。
【0024】
なお、図6では、GPS追跡を連続で行う例を示しているが、プライバシー上の懸念から、車両に人が乗り込むときや子供が家を出るときに自動的に追跡するように、ユーザが選択することもできる。究極的には、時間をかけて収集したビッグデータをもとに119番通報を行うべきかの判断をAIが行うことも可能であり、また、不正確な119番通報が多すぎる場合には、追跡対象を車両に限定するようなシステム調整も可能である。ビッグデータの収集期間が長くなり、何百万台というスマートフォンや車両からの衝突に関するデータの収集と分析を重ねることによって、より多くの不正確な緊急電話通報を排除することができる。
【0025】
図7図11は、トラッカデータをどのように用いて、移動種別(飛行機、スカイダイビングなど)を識別し、GPSデータの誤差を補正し、3Dインタラクティブマップまたは映像でプロットを表示する最適なアングルおよび視点を計算するかを示している。3Dインタラクティブマップまたは映像は、事故調査の際の報告聴取に使用できるものである。図7は、取得したデータを、(人から列車、円形パラシュート、ラムエアパラシュート、ヘリコプター、プロペラ機、ジェット機、宇宙船に至る)種々の移動種別のデータベースといかに照合するかを要約した図である。そして、3Dインタラクティブマップを、報告聴取や事故調査に最適なアングルで自動的に作成する。
【0026】
図12に、本発明の性能を概略的に示す。本発明により、ある人のスカイダイビングについて、その自宅からスカイダイビングの着地までを、数百回にわたり追跡した。自宅(図12の1201)から空港まで車で移動し、飛行機に搭乗し(図12の1202から1203まで)、円形パラシュートやラムエアパラシュートを使ってスカイダイビングをした(図12の1204から1205まで)人が陥る可能性のあった緊急事態を、本発明は検知した。この報告聴取用の追跡は、図12では特許申請書類に添付する図面の制約からモノクロ2Dで示されているが、実際には、カラーの3Dマップで表示される。車両種別ごとの履歴データと照合して誤差を補正したGPSデータのみを使用して、乗用車や飛行機に乗車中や、スカイダイビング中に衝突や緊急事態が発生すれば、それを示すことができる。業界標準の衝突判定機能である先進事故自動通報システム(Advanced Automatic Collision Notification:AACN)を利用できない僻地で、小型飛行機の操縦や、旧式車の運転、スカイダイビング、エクストリームスポーツなどを行う人に最適な技術である。
【0027】
本発明では、追跡に、GPS対応の携帯電話などの機器(例えば、衛星電話など)しか必要としない。衛星通信Starlinkなどの技術により、標準的な携帯電話での通信が、文字通りあらゆる場所において可能となったことから、いつでもどこでもすべての人を追跡することが可能になった。後述するように、本発明によれば、数百人の命、およそ100万台の電話を追跡するごとに1人の命、を救うことができるが、そのためには、すべての電話を常に追跡する必要がある。また、トンネル内や渓谷、建物内など、GPS衛星が見通せない場所では信号が途絶するなど、GPSには大きな制約があるため、途絶した信号などの異常を反映した誤差補正をGPSに行う必要がある。また、電話は、電源が切れていたり、故障したりすることがある上、電話上で使うセンサが多くなるほどその分早く電力を消耗してしまうことになる。これらの異常をクラウド上の履歴データと照合してチェックしなければ、不要な緊急電話通報が多発する恐れがある。ただし、事故の報告を行う目撃者がいない可能性がある僻地や深夜の携帯電話に対しては、注意を払う必要がある。そのような場合の緊急電話通報も、不要な緊急電話通報かもしれないリスクはあるが、安全確認を行うことがそのリスクに見合うと考えられるため、より余裕を持たせる必要がある。
【0028】
毎年数百人の命を救命
AACNでは、(1)加速度センサやエアバッグ展開センサなどのセンサを使用して衝突を検知し、(2)GPSは、位置情報のみに使用して、衝突の発生場所の特定には使用しない。AACNは強力ではあるが、コストが高く、複数のセンサを必要とするため電力も消耗する。また、誤差補正を行わないGPSでは、十分に正確なデータは得られない。一方、ビッグデータ119は、誤差補正されたGPSの加減速度のみで衝突を判定することができる点にその独自性がある。米運輸省の推計(AACN Research Report(No. DOT HS 812 729)2019年、5月)によれば、AACNが救った人命は360人であり、AACNから得られる便益がそのコストを21.8億ドル上回ったとされる。一方、GPSデータのみを利用する本発明は、車にAACNが搭載されていない場合や、スカイダイビングのような状況での救命を行うことができる。最大33%の車両が、AACN非搭載であった、または本発明により衝突予測の冗長性が得られたと仮定すると、本発明により、年間120人の命を救うことができ、純便益は7億2000万ドルになると言える。
【0029】
その他の問題
本発明は、世界中の何十億台もの電話や車両を追跡することができると考えられる。上述したように、本システムでは、システムを管理しやすくするため、GPSデータのみで車両の種別(飛行機や乗用車など)や衝突の有無を確認する。車両のデータを電話からのデータで補完、再確認することができるため、本システムは冗長化による強化も施されている。2014年には、通信が途絶し、墜落したマレーシア航空370便を数億円かけて探し出すという出来事があった。もし、このとき乗客の衛星携帯電話の電源が入っていれば、飛行機の位置を継続的に追跡することができたであろう。
【0030】
本システムは、飛行機の着陸時など、車両による移動を安全裡に終えたタイミングで、常にデータを廃棄することになる。それでも、データ量は膨大なものになると考えられる。世界各地のデータセンターが連携して、GPSデータなどのデータを共有することもできる。例えば、欧州の移動はEUが担当し、北米は米国が担当する、などである。最後のキーポイントはプライバシーである。GPSデータの開示は、ユーザが選択することになる。Googleなどの企業は広告のために大量のデータを収集しており、TicTokが中国政府のデータ収集に利用されているとの指摘もある。一方、本発明のために収集したデータは、事故を特定して人命を救うために利用される。また、自動車保険会社は、GPS車両追跡装置を持たない人が運転中に携帯電話の電源を単に入れたままにしておくインセンティブを与えることができる。これは、広告に売るためではなく、自身の安全を守るために行われる。
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図12