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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-02
(45)【発行日】2025-07-10
(54)【発明の名称】流体圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20250703BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
F15B11/00 V
F15B11/08 A
F15B11/08 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021130616
(22)【出願日】2021-08-10
(65)【公開番号】P2023025399
(43)【公開日】2023-02-22
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 俊輔
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/051824(WO,A1)
【文献】特開2004-84727(JP,A)
【文献】国際公開第2019/182128(WO,A1)
【文献】実開平6-25288(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00
F15B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を駆動するシリンダの伸縮作動を制御する流体圧制御装置であって、
流体圧供給源から前記シリンダへの作動流体の供給を制御する制御弁と、
パイロット圧供給源から前記制御弁に導かれるパイロット圧を制御するパイロット制御弁と、
前記制御弁が中立位置の場合に負荷による負荷圧が作用する前記シリンダの負荷側圧力室と前記制御弁とを接続するメイン通路と、
前記メイン通路に設けられる負荷保持機構と、を備え、
前記負荷保持機構は、
前記制御弁から前記負荷側圧力室への作動流体の流れを許容する一方、背圧に応じて前記負荷側圧力室から前記制御弁への作動流体の流れを許容するオペレートチェック弁と、
前記パイロット制御弁を通じて導かれるパイロット圧によって前記制御弁と連動して動作し、前記オペレートチェック弁の作動を切り換えるための切換弁と、
前記負荷側圧力室の圧力が所定圧力に達した場合に開弁するリリーフ弁と、を有し、
前記切換弁は、
前記パイロット制御弁を通じてパイロット圧が導かれるパイロット室と、
前記パイロット室のパイロット圧に応じて移動するスプールと、
前記スプールを閉弁方向に付勢する付勢部材が収容されたスプリング室と、
前記スプールを挟んで前記スプリング室とは反対側に設けられるドレン室と、
前記リリーフ弁に接続されると共に、前記ドレン室及び前記スプリング室の少なくとも一方に接続されたドレン通路と、
前記ドレン通路と前記スプールの下流側とを接続する導圧通路と、
前記導圧通路に設けられ、前記ドレン通路から前記スプールの下流側への作動流体の流れのみを許容するチェック弁と、を有することを特徴とする流体圧制御装置。
【請求項2】
前記切換弁は、背面にパイロット圧を受けて、前記スプールに前記付勢部材の付勢力に抗する推力を付与するピストンをさらに有し、
前記ドレン室は、前記スプールと前記ピストンで区画されることを特徴とする請求項1に記載の流体圧制御装置。
【請求項3】
前記パイロット室と前記ドレン室は、共通であり、
前記ドレン通路のうち、前記ドレン室と前記スプリング室を接続する通路には、通過する作動流体に抵抗を付与する絞りが設けられることを特徴とする請求項1に記載の流体圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の流体圧制御装置は、シリンダの負荷側圧力室の圧力が所定圧力に達した場合に開弁するリリーフ弁と、リリーフ弁から排出されたリリーフ流体をタンクへ導くリリーフ排出通路と、切換弁のドレン室とスプリング室とをリリーフ排出通路へ連通させるドレン通路と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-62010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された流体圧制御装置では、オペレータがレバー操作によりシリンダを伸長作動させている最中にリリーフ弁が開弁した場合には、リリーフ流体は、リリーフ排出通路を通じてタンクへ排出される一方で、ドレン通路を通じてドレン室とスプリング室にも流れ込み、切換弁のスプールが閉じる方向へ移動してしまい、オペレータが意図するシリンダの伸長速度が得られないおそれがある。このような場合において、オペレータが、意図する伸長速度を得るために、スプールに作用するパイロット圧を上昇させるようにレバー操作すると、スプールは開く方向へ移動し、スプールが閉じる方向へ移動したことにより圧力が低下していたスプールの下流側に作動流体が勢いよく流れ、シリンダが一時的に急加速してしまう。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、シリンダの急加速を防止する流体圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、負荷を駆動するシリンダの伸縮作動を制御する流体圧制御装置であって、流体圧供給源からシリンダへの作動流体の供給を制御する制御弁と、パイロット圧供給源から制御弁に導かれるパイロット圧を制御するパイロット制御弁と、制御弁が中立位置の場合に負荷による負荷圧が作用するシリンダの負荷側圧力室と制御弁とを接続するメイン通路と、メイン通路に設けられる負荷保持機構と、を備え、負荷保持機構は、制御弁から負荷側圧力室への作動流体の流れを許容する一方、背圧に応じて負荷側圧力室から制御弁への作動流体の流れを許容するオペレートチェック弁と、パイロット制御弁を通じて導かれるパイロット圧によって制御弁と連動して動作し、オペレートチェック弁の作動を切り換えるための切換弁と、負荷側圧力室の圧力が所定圧力に達した場合に開弁するリリーフ弁と、を有し、切換弁は、パイロット制御弁を通じてパイロット圧が導かれるパイロット室と、パイロット室のパイロット圧に応じて移動するスプールと、スプールを閉弁方向に付勢する付勢部材が収容されたスプリング室と、スプールを挟んでスプリング室とは反対側に設けられるドレン室と、リリーフ弁に接続されると共に、ドレン室及びスプリング室の少なくとも一方に接続されたドレン通路と、ドレン通路とスプールの下流側とを接続する導圧通路と、導圧通路に設けられ、ドレン通路からスプールの下流側への作動流体の流れのみを許容するチェック弁と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、切換弁は、背面にパイロット圧を受けて、スプールに付勢部材の付勢力に抗する推力を付与するピストンをさらに有し、ドレン室は、スプールとピストンで区画されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、パイロット室とドレン室は、共通であり、ドレン通路のうち、ドレン室とスプリング室を接続する通路には、通過する作動流体に抵抗を付与する絞りが設けられることを特徴とする。
【0009】
これらの発明では、ドレン通路とスプールの下流側とを接続する導圧通路に、ドレン通路からスプールの下流側への作動流体の流れのみを許容するチェック弁が設けられるため、オペレータがレバー操作により負荷側圧力室が収縮する方向にシリンダを作動させている最中にリリーフ弁が開弁した場合には、リリーフ流体は、導圧通路を通じてスプールの下流側へ導かれる。よって、シリンダの急加速を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シリンダの急加速を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】油圧ショベルの一部分を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る流体圧制御装置の流体圧回路図である。
図3】本発明の実施形態に係る流体圧制御装置の負荷保持機構の断面図である。
図4】ドレン通路の変形例を示す流体圧回路図である。
図5】ドレン通路の変形例を示す流体圧回路図である。
図6】ドレン通路の変形例を示す流体圧回路図である。
図7】本発明の実施形態の変形例に係る流体圧制御装置の流体圧回路図である。
図8】本発明の実施形態の変形例に係る流体圧制御装置の負荷保持機構の断面図である。
図9】ドレン通路の変形例を示す流体圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体圧制御装置について説明する。
【0013】
流体圧制御装置は、油圧ショベル等の油圧作業機器の動作を制御するものである。本実施形態では、図1に示す油圧ショベルのアーム(負荷)1を駆動するシリンダ2の伸縮作動を制御する油圧制御装置100について説明する。以下では、シリンダ2の作動流体として、作動油が用いられる場合について説明するが、作動油に代わり、例えば水溶性代替液等を用いてもよい。
【0014】
まず、図2を参照して、油圧制御装置100の油圧回路について説明する。
【0015】
シリンダ2は、筒状のシリンダチューブ2cと、シリンダチューブ2cに摺動自在に挿入されシリンダチューブ2c内をロッド側室2aと反ロッド側室2bに区画するピストン2dと、一端がピストン2dに連結され、他端側がシリンダチューブ2cの外部へ延びてアーム1に連結されるロッド2eと、を備える。
【0016】
油圧ショベルには、エンジンや電動モータの動力源が搭載され、その動力によって流体圧供給源としてのポンプ4及びパイロット圧供給源としてのパイロットポンプ5が駆動する。
【0017】
油圧制御装置100は、ポンプ4からシリンダ2への作動油の供給を制御する制御弁6と、パイロットポンプ5から制御弁6に導かれるパイロット圧を制御するパイロット制御弁9と、を備える。
【0018】
制御弁6とシリンダ2のロッド側室2aとは第1メイン通路7によって接続され、制御弁6とシリンダ2の反ロッド側室2bとは第2メイン通路8によって接続される。
【0019】
制御弁6は、油圧ショベルのオペレータが操作レバー10を手動操作することに伴ってパイロットポンプ5からパイロット制御弁9を通じてパイロット室6a,6bに導かれるパイロット圧によって動作する。
【0020】
具体的には、パイロット室6aにパイロット圧が導かれた場合には、制御弁6は位置6Aに切り換わり、ポンプ4から第1メイン通路7を通じてロッド側室2aに作動油が供給されると共に、反ロッド側室2bの作動油が第2メイン通路8を通じてタンクTへと排出される。これにより、シリンダ2は収縮作動し、アーム1は、図1に示す矢印80の方向へと上昇する。
【0021】
一方、パイロット室6bにパイロット圧が導かれた場合には、制御弁6は位置6Bに切り換わり、ポンプ4から第2メイン通路8を通じて反ロッド側室2bに作動油が供給されると共に、ロッド側室2aの作動油が第1メイン通路7を通じてタンクTへと排出される。これにより、シリンダ2は伸長作動し、アーム1は、図1に示す矢印81の方向へと下降する。
【0022】
パイロット室6a,6bにパイロット圧が導かれない場合には、制御弁6は位置6Cとなり、シリンダ2に対する作動油の給排が遮断され、アーム1は停止した状態を保つ。
【0023】
このように、制御弁6は、シリンダ2を収縮作動させる収縮位置6A、シリンダ2を伸長作動させる伸長位置6B、及びシリンダ2の負荷を保持する中立位置6Cの3ポジションを有し、シリンダ2に対する作動油の給排を切り換え、シリンダ2の伸縮作動を制御する。
【0024】
ここで、図1に示すように、バケット13を持ち上げた状態で、制御弁6を中立位置6Cに切り換えアーム1の動きを止めた場合には、バケット13及びアーム1等の自重によって、シリンダ2には伸長する方向の力が作用する。このように、アーム1を駆動するシリンダ2においては、ロッド側室2aが、制御弁6が中立位置6Cの場合に負荷圧が作用する負荷側圧力室となる。
【0025】
負荷側圧力室であるロッド側室2aに接続された第1メイン通路7には、負荷保持機構20が設けられる。負荷保持機構20は、制御弁6が中立位置6Cの場合に、ロッド側室2aの負荷圧を保持するものであり、図1に示すように、シリンダ2の表面に固定される。
【0026】
なお、ブーム14(図1参照)を駆動するシリンダ15においては、反ロッド側室15bが負荷側圧力室となるため、ブーム14に負荷保持機構20を設ける場合には、反ロッド側室15bに接続されたメイン通路に負荷保持機構20が設けられる。
【0027】
負荷保持機構20は、第1メイン通路7に設けられたオペレートチェック弁21と、パイロット制御弁9を通じて導かれるパイロット圧によって制御弁6と連動して動作し、オペレートチェック弁21の作動を切り換えるための切換弁22と、を有する。
【0028】
オペレートチェック弁21は、第1メイン通路7を開閉する弁体24と、弁体24が着座するシート部28と、弁体24の背面に臨む背圧室25と、弁体24に形成されロッド側室2aの作動油を背圧室25へと常時導く通路26と、を有する。通路26には、通過する作動油に抵抗を付与する絞り26aが設けられる。
【0029】
第1メイン通路7は、ロッド側室2aとオペレートチェック弁21を接続するシリンダ側第1メイン通路7aと、オペレートチェック弁21と制御弁6を接続する制御弁側第1メイン通路7bと、を有する。
【0030】
弁体24には、制御弁側第1メイン通路7bの圧力が作用する第1受圧面24aと、シリンダ側第1メイン通路7aを通じてロッド側室2aの圧力が作用する第2受圧面24bと、が形成される。
【0031】
背圧室25には、弁体24を閉弁方向に付勢する付勢部材としてのスプリング27が収容される。背圧室25の圧力とスプリング27の付勢力とは、弁体24をシート部28に着座させる方向に作用する。
【0032】
弁体24がシート部28に着座した状態では、オペレートチェック弁21は、ロッド側室2aから制御弁6への作動油の流れを遮断する逆止弁としての機能を発揮する。つまり、オペレートチェック弁21は、ロッド側室2a内の作動油の漏れを防止して負荷圧を保持し、アーム1の停止状態を保持する。
【0033】
切換弁22は、パイロット制御弁9を通じてパイロット圧が導かれるパイロット室23と、パイロット室23のパイロット圧に応じて移動するスプール56(図3参照)と、スプール56を閉弁方向に付勢する付勢部材としてのスプリング36が収容されたスプリング室54と、スプール56を挟んでスプリング室54とは反対側に設けられるドレン室51と、スプリング室54及びドレン室51をタンクTへ接続するドレン通路76と、を有する。
【0034】
切換弁22の上流側には、バイパス通路30及び背圧通路31が接続され、切換弁22の下流側には下流通路38が接続される。バイパス通路30は、ロッド側室2aの作動油をオペレートチェック弁21をバイパスして制御弁側第1メイン通路7bへと導くための通路である。背圧通路31は、背圧室25の作動油を制御弁側第1メイン通路7bへと導くための通路である。下流通路38は、バイパス通路30及び背圧通路31からの作動油を制御弁側第1メイン通路7bへと導くための通路である。
【0035】
切換弁22は、下流通路38に対するバイパス通路30及び背圧通路31の連通を切り換え、シリンダ2を伸長作動させる際にメータアウト側となる第1メイン通路7の作動油の流れを制御する。
【0036】
切換弁22は、バイパス通路30に連通する第1供給ポート32、背圧通路31に連通する第2供給ポート33、及び下流通路38に連通する排出ポート34の3つのポートを有する。また、切換弁22は、遮断位置22A、第1連通位置22B、第2連通位置22Cの3ポジションを有する。
【0037】
制御弁6のパイロット室6bにパイロット圧が導かれると、同時に、パイロット室23にもパイロット圧が導かれる。つまり、制御弁6を伸長位置6Bに切り換えた場合に、切換弁22も第1連通位置22B又は第2連通位置22Cに切り換わる。
【0038】
具体的に説明すると、パイロット室23にパイロット圧が導かれない場合には、スプリング36の付勢力によって、切換弁22は遮断位置22Aを保つ。遮断位置22Aでは、第1供給ポート32及び第2供給ポート33の双方が遮断される。
【0039】
パイロット室23に第1所定圧力以上第2所定圧力未満のパイロット圧が導かれた場合には、切換弁22は第1連通位置22Bに切り換わる。第1連通位置22Bでは、第1供給ポート32が排出ポート34と連通する。これにより、ロッド側室2aの作動油はバイパス通路30から切換弁22を通じて下流通路38へと導かれる。つまり、ロッド側室2aの作動油はオペレートチェック弁21をバイパスして制御弁側第1メイン通路7bへと導かれる。このとき、絞り37によって作動油の流れに抵抗が付与される。第2供給ポート33は遮断された状態を保つ。
【0040】
パイロット室23に第2所定圧力以上のパイロット圧が導かれた場合には、切換弁22は第2連通位置22Cに切り換わる。第2連通位置22Cでは、第1供給ポート32が排出ポート34と連通すると共に、第2供給ポート33も排出ポート34と連通する。これにより、背圧室25の作動油は、背圧通路31から切換弁22を通じて下流通路38へと導かれる。このとき、背圧室25の作動油は、絞り37をバイパスして制御弁側第1メイン通路7bへと導かれ、制御弁6からタンクTへと排出される。これにより、絞り26aの前後にて差圧が発生し、背圧室25内の圧力が小さくなるため、弁体24に作用する閉弁方向の力が小さくなり、弁体24がシート部28から離れ、オペレートチェック弁21の逆止弁としての機能が解除される。
【0041】
負荷保持機構20は、ロッド側室2aの圧力が所定圧力に達した場合に開弁して作動油の通過を許容し、ロッド側室2aの作動油を逃がすリリーフ弁41を有する。リリーフ弁41は、バイパス通路30における切換弁22の上流から分岐するリリーフ通路40に設けられる。リリーフ弁41から排出されたリリーフ圧油は、ドレン通路76を通じてタンクTへ排出される。なお、リリーフ通路40は、シリンダ側第1メイン通路7aから分岐して設けられてもよいし、ロッド側室2aに直接接続されてもよい。
【0042】
ドレン通路76は、ドレン室51に接続された第1ドレン通路76aと、スプリング室54に接続された第2ドレン通路76bと、リリーフ弁41に接続された第3ドレン通路76cと、第1ドレン通路76a及び第2ドレン通路76bと第3ドレン通路76cを接続する第4ドレン通路76dと、を有する。第1ドレン通路76aと第2ドレン通路76bは、直接連通して設けられる。
【0043】
ドレン室51は、第1ドレン通路76a及び第4ドレン通路76dを通じてリリーフ弁41の下流の第3ドレン通路76cに連通する。スプリング室54は、第2ドレン通路76b及び第4ドレン通路76dを通じてリリーフ弁41の下流の第3ドレン通路76cに連通する。第3ドレン通路76cは、負荷保持機構20のボディ60(図3参照)の外面に開口するドレンポート86に連通する。ドレンポート86は配管55(図2参照)を通じてタンクTに接続される。このように、リリーフ弁41から排出されたリリーフ圧油と、ドレン室51及びスプリング室54のドレンとは、ドレンポート86及び配管55を通じてタンクTへ排出される。切換弁22のスプール56の両側にそれぞれ設けられるドレン室51とスプリング室54は双方ともタンクTに連通するため、切換弁22が遮断位置22Aの際には、スプール56の両端には大気圧が作用し、スプール56が意図せずに移動するような事態が防止される。
【0044】
制御弁側第1メイン通路7bには、制御弁側第1メイン通路7bの圧力が所定圧力に達した場合に開弁するリリーフ弁43が接続される。
【0045】
次に、主に図3を参照して、切換弁22について詳細に説明する。図3は負荷保持機構20の断面図であり、パイロット室23にパイロット圧が導かれておらず切換弁22が遮断位置22Aである状態を示す。図3において、図2で示した符号と同一の符号を付したものは、図2で示した構成と同一の構成である。
【0046】
切換弁22は、負荷保持機構20のボディ60に組み込まれる。ボディ60にはスプール孔60aが形成され、スプール孔60aには略円筒形状のスリーブ61が挿入される。スリーブ61内には、スプール56が摺動自在に組み込まれる。
【0047】
スプール56の一端面56aの側方には、キャップ57によってスプリング室54が区画される。スプリング室54は、スリーブ61の端面に形成された切り欠き61aを通じて第2ドレン通路76bに接続される。スプリング室54に漏れ込んだ作動油は、第2ドレン通路76bからタンクTへ排出される。
【0048】
スプリング室54には、スプール56の一端面56aに端面が当接すると共に中空部にスプール56の一端面56aに突出して形成されたピン部56cが挿入される環状の第1バネ受部材45と、キャップ57の底部近傍に配置された第2バネ受部材46と、が収容される。スプリング36は、第1バネ受部材45と第2バネ受部材46との間に圧縮状態で介装され、第1バネ受部材45を介してスプール56を閉弁方向に付勢する。
【0049】
スプリング室54内での第2バネ受部材46の軸方向位置は、キャップ57の底部に貫通して螺合する調節ボルト47の先端部が第2バネ受部材46の背面に当接することによって設定される。調節ボルト47をねじ込むことによって、第2バネ受部材46は第1バネ受部材45に近づく方向に移動する。したがって、調節ボルト47のねじ込み量を調節することによって、スプリング36の初期のスプリング荷重を調整することができる。調節ボルト47はナット48にて固定される。
【0050】
スプール56の他端面56bの側方には、パイロット室23が区画される。パイロット室23は、スプール孔60aと連通して形成されたピストン孔60bと、ピストン孔60bを閉塞するキャップ58と、によって区画される。パイロット室23には、ボディ60に形成されたパイロット通路52を通じてパイロット圧が導かれる。パイロット室23内には、背面にパイロット圧を受けてスプール56にスプリング36の付勢力に抗する推力を付与するピストン50が摺動自在に収容される。
【0051】
ピストン孔60b内には、スプール56とピストン50によってドレン室51が区画される。ドレン室51は第1ドレン通路76aに接続される。ドレン室51に漏れ込んだ作動油は、第1ドレン通路76aからタンクTへ排出される。
【0052】
ピストン50は、外周面がピストン孔60bの内周面に沿って摺動する摺動部50aと、摺動部50aと比較して小径に形成され、スプール56の他端面56bに対向する先端部50bと、摺動部50aと比較して小径に形成され、キャップ58の先端面に対向する基端部50cと、を有する。
【0053】
パイロット通路52を通じてパイロット室23内にパイロット圧油が供給されると、基端部50cの背面と摺動部50aの環状背面とにパイロット圧が作用する。これにより、ピストン50は、前進し、先端部50bがスプール56の他端面56bに当接してスプール56を移動させる。このように、スプール56は、ピストン50の背面に作用するパイロット圧に基づいて発生するピストン50の推力を受け、スプリング36の付勢力に抗して移動する。基端部50cの背面がキャップ58の先端面に当接している場合であっても、基端部50cは摺動部50aと比較して小径であり、摺動部50aの環状背面にパイロット圧が作用するため、ピストン50は前進可能である。
【0054】
ピストン50の一端部はパイロット室23に臨み、他端部はタンクTに接続されたドレン室51に臨んでいるため、パイロット室23のパイロット圧に基づいて発生するピストン50の推力は効率良くスプール56に伝達される。
【0055】
スプール56は、一端面56aに作用するスプリング36の付勢力と他端面56bに作用するピストン50の推力とがバランスした位置で停止し、そのスプール56の停止位置にて切換弁22の切り換え位置が設定される。
【0056】
スリーブ61には、バイパス通路30(図2参照)に連通する第1供給ポート32、背圧通路31(図2参照)に連通する第2供給ポート33、及び下流通路38(図2参照)に連通する排出ポート34の3つのポートが形成される。
【0057】
スプール56の外周面は部分的に環状に切り欠かれ、その切り欠かれた部分とスリーブ61の内周面とで、第1圧力室64、第2圧力室65、第3圧力室66、及び第4圧力室67が形成される。
【0058】
第1圧力室64は、排出ポート34に常時連通している。
【0059】
第3圧力室66は、第1供給ポート32に常時連通している。スプール56のランド部72の外周面には、スプール56がスプリング36の付勢力に抗して移動することによって、第3圧力室66と第2圧力室65を連通する複数の絞り37が形成される。
【0060】
第4圧力室67は、スプール56に軸方向に形成された導圧通路68を通じて第2圧力室65に常時連通している。
【0061】
パイロット室23にパイロット圧が導かれない場合には、スプリング36の付勢力によってスプール56に形成されたポペット弁70が、スリーブ61の内周に形成された弁座71に押し付けられ、第2圧力室65と第1圧力室64の連通が遮断される。したがって、第1供給ポート32と排出ポート34との連通が遮断される。これにより、ロッド側室2aの作動油が排出ポート34へと漏れることはない。この状態が、切換弁22の遮断位置22Aに相当する。スプリング36の付勢力によってポペット弁70が弁座71に着座した状態では、第1バネ受部材45の端面とスリーブ61の端面との間には僅かな隙間が存在するため、ポペット弁70は弁座71に対してスプリング36の付勢力によって確実にシートされる。
【0062】
パイロット室23にパイロット圧が導かれ、スプール56に作用するピストン50の推力がスプリング36の付勢力よりも大きくなった場合には、スプール56はスプリング36の付勢力に抗して移動する。これにより、ポペット弁70が弁座71から離れると共に、第3圧力室66と第2圧力室65が複数の絞り37を通じて連通するため、第1供給ポート32は第3圧力室66、第2圧力室65、及び第1圧力室64を通じて排出ポート34と連通する。第1供給ポート32と排出ポート34の連通によって、ロッド側室2aの作動油は、絞り37を通じて下流通路38(図2参照)へ導かれる。この状態が、切換弁22の第1連通位置22Bに相当する。
【0063】
パイロット室23に導かれるパイロット圧が大きくなると、スプール56はスプリング36の付勢力に抗してさらに移動し、第2供給ポート33に第4圧力室67が連通する。これにより、第2供給ポート33は、第4圧力室67、導圧通路68、第2圧力室65、及び第1圧力室64を通じて排出ポート34と連通する。第2供給ポート33と排出ポート34の連通によって、背圧室25の作動油は、絞り37をバイパスして下流通路38(図2参照)へ導かれる。この状態が、切換弁22の第2連通位置22Cに相当する。
【0064】
次に、図2及び図3を参照して、油圧制御装置100の動作について説明する。
【0065】
制御弁6が中立位置6Cの場合には、ポンプ4が吐出する作動油はシリンダ2に供給されない。このとき、切換弁22のパイロット室23にはパイロット圧が導かれないため、切換弁22は遮断位置22Aの状態となる。
【0066】
このため、オペレートチェック弁21の背圧室25は、ロッド側室2aの圧力に維持される。ここで、弁体24における閉弁方向の受圧面積(弁体24の背面の面積)は、開弁方向の受圧面積である第2受圧面24bの面積よりも大きいため、背圧室25の圧力による弁体24の背面に作用する荷重とスプリング27の付勢力とによって、弁体24はシート部28に着座した状態となる。このように、オペレートチェック弁21によって、ロッド側室2a内の作動油の漏れが防止され、アーム1の停止状態が保持される。
【0067】
操作レバー10が操作され、パイロット制御弁9から制御弁6のパイロット室6aへとパイロット圧が導かれると、制御弁6は、パイロット圧に応じた量だけ収縮位置6Aへと切り換わる。制御弁6が収縮位置6Aへと切り換わると、ポンプ4の吐出圧がオペレートチェック弁21の第1受圧面24aへと作用する。このとき、切換弁22は、パイロット室23にパイロット圧が導かれず遮断位置22Aの状態であるため、オペレートチェック弁21の背圧室25は、ロッド側室2aの圧力に維持される。第1受圧面24aに作用する荷重が、背圧室25の圧力による弁体24の背面に作用する荷重とスプリング27の付勢力との合計荷重よりも大きくなった場合には、弁体24はシート部28から離れる。このようにしてオペレートチェック弁21が開弁すれば、ポンプ4から吐出された作動油はロッド側室2aに供給され、シリンダ2は収縮する。これにより、アーム1は、図1に示す矢印80の方向へと上昇する。
【0068】
操作レバー10が操作され、パイロット制御弁9から制御弁6のパイロット室6bへとパイロット圧が導かれると、制御弁6はパイロット圧に応じた量だけ伸長位置6Bへと切り換わる。これと同時に、パイロット室23へもパイロット圧が導かれるため、切換弁22は、供給されるパイロット圧に応じて第1連通位置22B又は第2連通位置22Cに切り換わる。
【0069】
パイロット室23に導かれるパイロット圧が第1所定圧力以上第2所定圧力未満の場合には、切換弁22は第1連通位置22Bに切り換わる。この場合、第2供給ポート33と排出ポート34との連通は遮断された状態であるため、オペレートチェック弁21の背圧室25はロッド側室2aの圧力に維持され、オペレートチェック弁21は閉弁状態を維持する。
【0070】
一方、第1供給ポート32は排出ポート34と連通するため、ロッド側室2aの作動油は、バイパス通路30から絞り37を通じて下流通路38へ導かれ、制御弁側第1メイン通路7bから制御弁6を通じてタンクTへと排出される。また、反ロッド側室2bには、ポンプ4から吐出される作動油が供給されるため、シリンダ2は伸長する。これにより、アーム1は、図1に示す矢印81の方向へと下降する。
【0071】
ここで、切換弁22を第1連通位置22Bに切り換えるのは、バケット13に取り付けた搬送物を、目的の位置に下ろすクレーン作業を行う場合が主である。クレーン作業では、シリンダ2を低速で伸長作動させてアーム1を矢印81の方向へとゆっくりと下降させる必要があるため、制御弁6のパイロット室6bに導かれるパイロット圧は小さく、制御弁6は伸長位置6Bにわずかに切り換えられるだけである。このため、切換弁22のパイロット室23に導かれるパイロット圧も小さく、第1所定圧力以上第2所定圧力未満となり、切換弁22は第1連通位置22Bまでしか切り換わらない。したがって、ロッド側室2aの作動油は絞り37を通過して排出されることになり、アーム1はクレーン作業に適した低速で下降する。
【0072】
また、切換弁22が第1連通位置22Bの場合において、制御弁側第1メイン通路7bが破裂などして作動油が外部へと漏れるような事態が発生したとしても、ロッド側室2aから排出される作動油の流量は絞り37によって制限されるため、バケット13の落下速度は抑制される。この機能をメータリング制御という。このため、バケット13が地面に落下する前に、切換弁22を遮断位置22Aに切り換えることができ、バケット13の急落下を防止することができる。
【0073】
このように、絞り37は、オペレートチェック弁21の閉弁時におけるシリンダ2の下降速度を抑えると共に、制御弁側第1メイン通路7bの破裂時におけるバケット13の落下速度を抑えるためのものである。
【0074】
パイロット室23に導かれるパイロット圧が第2所定圧力以上の場合には、切換弁22は第2連通位置22Cに切り換わる。この場合、第2供給ポート33が排出ポート34と連通するため、オペレートチェック弁21の背圧室25の作動油は、背圧通路31から絞り37をバイパスして下流通路38へ導かれ、制御弁側第1メイン通路7bから制御弁6を通じてタンクTへと排出される。これにより、絞り26aの前後で差圧が発生し、背圧室25内の圧力が小さくなるため、弁体24に作用する閉弁方向の力が小さくなり、弁体24がシート部28から離れ、オペレートチェック弁21の逆止弁としての機能が解除される。
【0075】
このように、オペレートチェック弁21は、制御弁6からロッド側室2aへの作動油の流れを許容する一方、背圧室25の圧力である背圧に応じてロッド側室2aから制御弁6への作動油の流れを許容するように動作する。
【0076】
オペレートチェック弁21が開弁すると、ロッド側室2aの作動油は第1メイン通路7を通りタンクTへと排出されるため、シリンダ2は素早く伸長する。つまり、切換弁22を第2連通位置22Cに切り換えると、ロッド側室2aから排出される作動油の流量が多くなるため、反ロッド側室2bに供給される作動油の流量が多くなり、シリンダ2の伸長速度は速くなる。これにより、アーム1は矢印81の方向へと素早く下降する。
【0077】
切換弁22を第2連通位置22Cに切り換えるのは、掘削作業等を行う場合であり、制御弁6のパイロット室6bに導かれるパイロット圧は大きく、制御弁6は伸長位置6Bに大きく切り換えられる。このため、切換弁22のパイロット室23に導かれるパイロット圧も大きく、第2所定圧力以上となるため、切換弁22は第2連通位置22Cまで切り換わる。
【0078】
ここで、オペレータが操作レバー10を操作してパイロット室23にパイロット圧を導いてスプール56を開く方向へ移動させ、シリンダ2を伸長作動させている状態で、ロッド側室2aの圧力が上昇してリリーフ弁41が開弁した場合には、リリーフ弁41から排出されたリリーフ圧油は、第3ドレン通路76cを通じてタンクTへ排出される一方で、第1ドレン通路76a及び第2ドレン通路76bを通じてドレン室51及びスプリング室54にも導かれる。ドレン室51へリリーフ圧油が導かれることによって、ピストン50はスプール56から離れる方向へと移動してしまうことがある。この場合には、パイロット圧によって発生するピストン50の推力がスプール56へ伝達されないため、スプール56はスプリング36の付勢力によって閉じる方向へ移動してしまう。この結果、オペレータが操作レバー10を操作してパイロット室6b及びパイロット室23にパイロット圧が導かれているにもかかわらず、オペレータが意図するシリンダ2の伸長速度が得られない。
【0079】
一方で、スプール56が閉じる方向へ移動したとしても、制御弁6のパイロット室6bにはパイロット圧が導かれているため、スプール56の下流側である下流通路38及び制御弁側第1メイン通路7bは、制御弁6を通じてタンクTに連通した状態となっている。したがって、下流通路38及び制御弁側第1メイン通路7bは、内部の作動油がタンクTへ排出され、圧力が低下する。下流通路38及び制御弁側第1メイン通路7bの作動油が、自重によりタンクTへ流れ込むことにより、下流通路38及び制御弁側第1メイン通路7bの内部が負圧になることもある。
【0080】
このような状況において、オペレータが、意図する伸長速度を得るために、スプール56に作用するパイロット圧を上昇させるように操作レバー10を操作すると、スプール56は再び開く方向へ移動する。この際、スプール56が閉じる方向へ移動したことにより、圧力が低下していたスプール56の下流側である下流通路38及び制御弁側第1メイン通路7bに作動油が勢いよく流れ、シリンダ2が一時的に伸長方向に急加速してしまう。
【0081】
この対策として、本実施形態では、図2及び3に示すように、切換弁22は、ドレン通路76とスプール56の下流側とを接続する導圧通路90と、導圧通路90に設けられ、ドレン通路76からスプール56の下流側への作動油の流れのみを許容するチェック弁91と、を有する。以下に、詳細に説明する。
【0082】
本実施形態では、導圧通路90は、一端部がスプリング室54を介して第2ドレン通路76bに接続され、他端部が下流通路38に接続される。導圧通路90の一端部は、スリーブ61の端面に形成された切り欠き61aを通じてスプリング室54に接続される。導圧通路90の一端部は、スプリング室54を介して第2ドレン通路76bに接続される構成には限定されず、スプリング室54を介さずに第2ドレン通路76bに直接接続されてもよいし、第1ドレン通路76a、第3ドレン通路76c、又は第4ドレン通路76dに接続されてもよい。また、導圧通路90の他端部は、スプール56の下流側に接続される構成であればよく、制御弁側第1メイン通路7bに接続されてもよい。
【0083】
図3に示すように、チェック弁91は、導圧通路90内に移動自在に収容されたポペット弁92と、導圧通路90内に形成された弁座93と、ボディ60の外面に開口する導圧通路90の開口部を封止するプラグ94と、ポペット弁92とプラグ94の間に圧縮して収容され、弁座93に向けてポペット弁92を付勢する付勢部材としてスプリング95と、プラグ94の外周面に設けられた環状のシール部材96と、を有する。
【0084】
ドレン通路76の圧力が下流通路38の圧力よりも大きくなると、ポペット弁92は、スプリング95の付勢力に抗して移動して開弁する。これにより、ドレン通路76から導圧通路90を通じて下流通路38への作動油の流れが許容される。一方、下流通路38の圧力がドレン通路76の圧力よりも大きい場合には、スプリング95の付勢力により、ポペット弁92は弁座93に着座し閉弁するため、下流通路38から導圧通路90を通じたドレン通路76への作動油の流れが遮断される。なお、チェック弁91は、ポペットタイプに限定されず、ボールタイプでもよいし、また、上流側の圧力をパイロット圧として開弁するオペレートチェック弁であってもよい。
【0085】
切換弁22が導圧通路90とチェック弁91を有することにより、以下の作用効果を奏する。
【0086】
オペレータが操作レバー10を操作してパイロット室23にパイロット圧を導いてスプール56を開く方向へ移動させ、シリンダ2を伸長作動させている状態で、ロッド側室2aの圧力が上昇してリリーフ弁41が開弁した場合には、上述したように、スプール56は閉じる方向へ移動してしまう。このとき、スプール56の下流側である下流通路38は、制御弁6を通じてタンクTに連通しているため、圧力が低下する。そして、ドレン通路76の圧力が下流通路38の圧力よりも大きくなると、チェック弁91が開弁し、ドレン通路76から導圧通路90を通じて下流通路38へ作動油が導かれる。これにより、ドレン通路76の圧力が低下し、ドレン室51及びスプリング室54の圧力も低下する。また、ドレン通路76から導圧通路90を通じてスプール56の下流側に作動油が導かれるため、下流通路38及び制御弁側第1メイン通路7bの圧力低下が抑制される。
【0087】
したがって、スプール56が閉じる方向へ移動した際に、オペレータが、意図する伸長速度を得るために、スプール56に作用するパイロット圧を上昇させるように操作レバー10を操作した場合には、ドレン室51及びスプリング室54の圧力低下により、スプール56は開く方向へスムーズに移動するため、オペレータが意図する伸長速度が速やかに得られる。また、下流通路38及び制御弁側第1メイン通路7bの圧力低下が抑制されるため、スプール56が開く方向へ移動した際に、スプール56の下流側に作動油が勢いよく流れてシリンダ2が一時的に伸長方向に急加速してしまうことが防止される。さらに、下流通路38及び制御弁側第1メイン通路7bの圧力低下が抑制されることによって、下流通路38及び制御弁側第1メイン通路7bが負圧になることが防止され、キャビテーションの発生が防止されるため、操作レバー10を操作した際の応答性が改善される。
【0088】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0089】
ドレン通路76とスプール56の下流側とを接続する導圧通路90に、ドレン通路76からスプール56の下流側への作動油の流れのみを許容するチェック弁91が設けられるため、オペレータがレバー操作によりシリンダ2を伸長作動させている最中にリリーフ弁41が開弁した場合であっても、リリーフ圧油は、導圧通路90を通じてスプール56の下流側へ導かれる。これにより、ドレン通路76の圧力が低下し、ドレン室51及びスプリング室54の圧力も低下する。また、スプール56の下流側の圧力低下が抑制される。よって、リリーフ弁41が開弁してスプール56が閉じる方向へ移動した際に、オペレータが、意図する伸長速度を得るためにスプール56に作用するパイロット圧を上昇させるように操作レバー10を操作しても、シリンダ2の急加速を防止することができる。
【0090】
以下に、上記実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0091】
(1)ドレン通路76は、上記実施形態のような構成には限定されない。例えば、図4に示すように、第4ドレン通路76dを設けず、第1ドレン通路76a及び第2ドレン通路76bと、第3ドレン通路76cとが直接接続される構成であってもよい。また、図5に示すように、第1ドレン通路76aと第3ドレン通路76cが接続される一方、第2ドレン通路76bが独立に設けられる構成であってもよい。この構成では、導圧通路90は、第1ドレン通路76aと第3ドレン通路76cを有するドレン通路76に接続される。また、図6に示すように、第2ドレン通路76bと第3ドレン通路76cが接続される一方、第1ドレン通路76aが独立に設けられる構成であってもよい。この構成では、導圧通路90は、第2ドレン通路76bと第3ドレン通路76cを有するドレン通路76に接続される。つまり、導圧通路90は、リリーフ弁41に接続されると共に、ドレン室51及びスプリング室54の少なくとも一方と接続されたドレン通路76に接続される。
【0092】
(2)図7及び図8を参照して、上記実施形態の変形例について説明する。図7は、本変形例に係る油圧制御装置101の油圧回路図であり、図8は、本変形例に係る油圧制御装置101の負荷保持機構20の断面図である。図7及び図8において、上記実施形態と同様の機能を有する構成には、上記実施形態と同じ符号を付し、その説明を省略する。本変形例では、上記実施形態のピストン50が設けられず、パイロット室23とドレン室51が共通の空間として設けられる。
【0093】
ドレン通路76のうち、ドレン室51とスプリング室54を接続する通路には、通過する作動油に抵抗を付与する絞りとしてのオリフィス97が設けられる。具体的には、本変形例では、ドレン室51に接続された第1ドレン通路76aと、スプリング室54に接続された第2ドレン通路76bとが接続され、その接続された通路にオリフィス97が設けられる。これにより、パイロット通路52を通じてパイロット室23に作動油が導かれると、パイロット室23にはオリフィス97の上流側の圧力が作用し、ドレン室51にはオリフィス97の下流側の圧力が作用する。したがって、スプール56は、オリフィス97の前後差圧による荷重と、スプリング36の付勢力とのバランスにより移動する。
【0094】
オペレータが操作レバー10を操作してパイロット室23にパイロット圧を導いてスプール56を開く方向へ移動させ、シリンダ2を伸長作動させている状態で、ロッド側室2aの圧力が上昇してリリーフ弁41が開弁した場合には、リリーフ弁41から排出されたリリーフ圧油は、ドレン室51とスプリング室54に導かれる。本変形例では、ピストン50が設けられないため、ドレン室51に導かれたリリーフ圧油によって、パイロット圧によって発生するスプール56の推力が減少するような状態にはならない。しかし、スプリング室54へ導かれるリリーフ圧油によって、スプール56には閉じる方向への力が作用するため、上記実施形態と同様に、スプール56には閉じる方向への力が作用する。よって、本変形例でも、導圧通路90とチェック弁91は上記実施形態と同様の作用効果を発揮する。
【0095】
(3)図7及び図8に示す形態の変形例を図9に示す。図9に示すように、ドレン通路76は、ドレン室51に接続された第1ドレン通路76aが設けられず、リリーフ弁41に接続された第3ドレン通路76cとスプリング室54に接続された第2ドレン通路76bとが接続される構成であってもよい。本変形例でも、導圧通路90とチェック弁91は上記実施形態と同様の作用効果を発揮する。
【0096】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0097】
負荷1を駆動するシリンダ2の伸縮作動を制御する流体圧制御装置100は、流体圧供給源4からシリンダ2への作動流体の供給を制御する制御弁6と、パイロット圧供給源5から制御弁6に導かれるパイロット圧を制御するパイロット制御弁9と、制御弁6が中立位置6Cの場合に負荷1による負荷圧が作用するシリンダ2の負荷側圧力室2aと制御弁6とを接続するメイン通路7bと、メイン通路7bに設けられる負荷保持機構20と、を備え、負荷保持機構20は、制御弁6から負荷側圧力室2aへの作動流体の流れを許容する一方、背圧に応じて負荷側圧力室2aから制御弁6への作動流体の流れを許容するオペレートチェック弁21と、パイロット制御弁9を通じて導かれるパイロット圧によって制御弁6と連動して動作し、オペレートチェック弁21の作動を切り換えるための切換弁22と、負荷側圧力室2aの圧力が所定圧力に達した場合に開弁するリリーフ弁41と、を有し、切換弁22は、パイロット制御弁9を通じてパイロット圧が導かれるパイロット室23と、パイロット室23のパイロット圧に応じて移動するスプール56と、スプール56を閉弁方向に付勢する付勢部材36が収容されたスプリング室54と、スプール56を挟んでスプリング室54とは反対側に設けられるドレン室51と、リリーフ弁41に接続されると共に、ドレン室51及びスプリング室54の少なくとも一方に接続されたドレン通路76と、ドレン通路76とスプール56の下流側とを接続する導圧通路90と、導圧通路90に設けられ、ドレン通路76からスプール56の下流側への作動流体の流れのみを許容するチェック弁91と、を有する。
【0098】
また、切換弁22は、背面にパイロット圧を受けて、スプール56に付勢部材36の付勢力に抗する推力を付与するピストン50をさらに有し、ドレン室51は、スプール56とピストン50で区画される。
【0099】
また、パイロット室23とドレン室51は、共通であり、ドレン通路76のうち、ドレン室51とスプリング室54を接続する通路には、通過する作動流体に抵抗を付与する絞り97が設けられる。
【0100】
これらの構成では、ドレン通路76とスプール56の下流側とを接続する導圧通路90に、ドレン通路76からスプール56の下流側への作動流体の流れのみを許容するチェック弁91が設けられるため、オペレータがレバー操作により負荷側圧力室2aが収縮する方向にシリンダ2を作動させている最中にリリーフ弁41が開弁した場合には、リリーフ流体は、導圧通路90を通じてスプール56の下流側へ導かれる。よって、シリンダ2の急加速を防止することができる。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0102】
1・・・アーム(負荷)、2・・・シリンダ、2a・・・ロッド側圧力室(負荷側圧力室)、4・・・ポンプ(流体圧供給源)、5・・・パイロットポンプ(パイロット圧供給源)、6・・・制御弁、7b・・・制御弁側第1メイン通路(メイン通路)、9・・・パイロット制御弁、20・・・負荷保持機構、21・・・オペレートチェック弁、22・・・切換弁、23・・・パイロット室、38・・・下流通路、41・・・リリーフ弁、50・・・ピストン、51・・・ドレン室、54・・・スプリング室、56・・・スプール、76・・・ドレン通路、76a・・・第1ドレン通路、76b・・・第2ドレン通路、76c・・・第3ドレン通路、76d・・・第4ドレン通路、90・・・導圧通路、91・・・チェック弁、97・・・オリフィス(絞り)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9