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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-02
(45)【発行日】2025-07-10
(54)【発明の名称】オーブン調理装置
(51)【国際特許分類】
   F24C 1/00 20060101AFI20250703BHJP
   A47J 37/06 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
F24C1/00 320Z
A47J37/06 371
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021178431
(22)【出願日】2021-11-01
(65)【公開番号】P2023067321
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2024-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】杉本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小野 啓太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 美帆
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-267493(JP,A)
【文献】特開2006-288338(JP,A)
【文献】特開2014-156966(JP,A)
【文献】中国実用新案第209331755(CN,U)
【文献】特開2011-149643(JP,A)
【文献】特開2012-122675(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013453(WO,A1)
【文献】特開2007-147275(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0120825(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 1/00-15/36
A47J 37/06-37/08
A21B 1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物を焼成するための焼成炉と、
前記焼成炉内の上部に配設されて前記焼成炉内を加熱するヒータと、
前記焼成炉内の上部にて前記ヒータの上側に配設されて前記焼成炉内にて蒸気を発生させる蒸気発生部とを備え、
前記蒸気発生部は、前記ヒータの上側に配設されて前記ヒータによって加熱される蒸気発生皿と、
前記蒸気発生皿の上面に水を供給する給水部と、
前記蒸気発生皿の周縁部にて外側に突出するように設けられて前記蒸気発生皿に残る水を排出する排水パイプとを備え、
前記排水パイプの先端部が前記焼成炉の一側壁部に配設された排水導入口から排水通路内に隙間を介して挿通されたオーブン調理装置であって、
前記排水パイプの先端部の外周面には先端開口より基端側に内側に凹む環状溝部を設けたことを特徴とするオーブン調理装置。
【請求項2】
被調理物を焼成するための焼成炉と、
前記焼成炉内の上部に配設されて前記焼成炉内を加熱するヒータと、
前記焼成炉内の上部にて前記ヒータの上側に配設されて前記焼成炉内にて蒸気を発生させる蒸気発生部とを備え、
前記蒸気発生部は、前記ヒータの上側に配設されて前記ヒータによって加熱される蒸気発生皿と、
前記蒸気発生皿の上面に水を供給する給水部と、
前記蒸気発生皿の周縁部にて外側に突出するように設けられて前記蒸気発生皿に残る水を排出する排水パイプとを備え、
前記排水パイプの先端部が前記焼成炉の一側壁部に配設された排水導入口から排水通路内に隙間を介して挿通されたオーブン調理装置であって、
前記排水パイプの先端部の外周面には外側に突出する環状突部を設けたことを特徴とするオーブン調理装置。
【請求項3】
被調理物を焼成するための焼成炉と、
前記焼成炉内の上部に配設されて前記焼成炉内を加熱するヒータと、
前記焼成炉内の上部にて前記ヒータの上側に配設されて前記焼成炉内にて蒸気を発生させる蒸気発生部とを備え、
前記蒸気発生部は、前記ヒータの上側に配設されて前記ヒータによって加熱される蒸気発生皿と、
前記蒸気発生皿の上面に水を供給する給水部と、
前記蒸気発生皿の周縁部にて外側に突出するように設けられて前記蒸気発生皿に残る水を排出する排水パイプとを備え、
前記排水パイプの先端部が前記焼成炉の一側壁部に配設された排水導入口から排水通路内に隙間を介して挿通されたオーブン調理装置であって、
前記排水パイプの少なくとも先端部を斜め下方に傾斜させたことを特徴とするオーブン調理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特許文献1には、パン生地を焼成するデッキオーブン(オーブン調理装置)が開示されている。このデッキオーブンは、本体枠内に3段の炉ユニットを備え、各炉ユニットの炉(焼成炉)内の下部には下火ヒータが配設され、下火ヒータの上側に被調理物を載せたトレイ等を載置できるようにした炉床が配設されている。また、炉内の上部には上火ヒータが配設されており、上火ヒータの上側には蒸気発生槽が配設されている。
【0002】
蒸気発生槽は、下側に配置される上火ヒータによって加熱されて蒸気を発生させるものであり、長方形の薄い皿状の蒸気発生枠と、内部に蒸気発生空間が画定されるように蒸気発生槽枠の上側を覆う蒸気発生槽蓋とを備えている。蒸気発生槽枠の底面部には、前部に左右に延びる蓄熱インゴットと、左右方向の中央部に前部から前後方向の中間部まで延びる蓄熱インゴットが設けられている。蒸気発生槽枠の前部には蒸気を発生させるための水を供給する水供給接続管が設けられており、蒸気発生槽枠の背面壁部には残留水分を排出すためのドレイン管(排水パイプ)が設けられている。
【0003】
このデッキオーブンで少なくとも上火ヒータにより炉内を加熱したときには、炉内の上部に配設された蒸気発生槽の蒸気発生槽枠は上火ヒータによって加熱されて蓄熱インゴットに蓄熱される。加湿焼成したいタイミングで水供給接続管を通して蒸気発生槽の内部へ水を供給すると、蒸気発生槽の内部に供給された水は蓄熱インゴットに触れて直ちに蒸気化され、蒸気発生槽の内部で発生した蒸気は蒸気発生槽と炉の天井壁との間に吹き出される。吹き出された蒸気は炉の天井壁に当たって四方へ放散され、蒸気発生槽の周縁と炉内の四方の周囲壁戸の隙間を通って炉床に向かって流れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-267493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1のデッキオーブンにおいては、水供給管を通して蒸気発生槽の内部に供給される水の殆どは蓄熱インゴットに触れて直ちに蒸気化され、蒸気発生槽の内部で発生した蒸気は蒸気発生槽と炉の天井壁との間に吹き出される。蒸気発生槽に過剰な水が送出されたときにはドレイン管から炉の後部に設けた排水通路を通って外側に排出される。この種のデッキオーブンにおいては、蒸気発生槽はメンテナンス可能にするために炉内に着脱可能に取り付けられており、蒸気発生枠の背面壁部から後方に突出したドレイン管は炉の後部に設けた排水通路内に隙間を介して挿通されている。ドレイン管から排出される水は水圧がかからず自然流出によって排水通路内に排出されるが、ドレイン管から排水通路内に流入した水がドレイン管の外周面と排水通路の内周面との間を表面張力によって炉内側に流れるようになり、ドレイン管から排出された水の一部が炉内に流れ落ちるおそれがある。この場合に、炉内が流れ落ちる水によって不衛生となるばかりでなく、炉内の後壁に流れ落ちる水の跡が残ることになっていた。本発明は、蒸気発生皿から排水パイプによって排水通路に送られる水が焼成炉内に流入しにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、被調理物を焼成するための焼成炉と、焼成炉内の上部に配設されて焼成炉内を加熱するヒータと、焼成炉内の上部にてヒータの上側に配設されて焼成炉内にて蒸気を発生させる蒸気発生部とを備え、蒸気発生部は、ヒータの上側に配設されてヒータによって加熱される蒸気発生皿と、蒸気発生皿の上面に水を供給する給水部と、蒸気発生皿の周縁部にて外側に突出するように設けられて蒸気発生皿に残る水を排出する排水パイプとを備え、排水パイプの先端部が焼成炉の一側壁部に配設された排水導入口から排水通路内に隙間を介して挿通されたオーブン調理装置であって、排水パイプの先端部の外周面には先端開口より基端側に内側に凹む環状溝部を設けたことを特徴とするオーブン調理装置を提供するものである。
【0007】
上記のように構成したオーブン調理装置においては、排水パイプの先端開口から排出される水が排水パイプの外周面と排水通路の内周面との間に形成される僅かな隙間を表面張力によって流れて焼成炉内に流れ落ちるおそれがある。このオーブン調理装置においては、排水パイプの先端部の外周面には先端より基端側に内側に凹む環状溝部が設けられているので、排水パイプは環状溝部が形成された部分で排水通路の内周面との間と離れることになり、排水パイプの先端開口から排出される水は環状溝部が形成された部分で表面張力が働かないようになる。これにより、排水パイプから排水通路に排出された水は焼成炉内に流入しにくくすることができる。
【0008】
本発明の他の実施形態は、被調理物を焼成するための焼成炉と、焼成炉内の上部に配設されて焼成炉内を加熱するヒータと、焼成炉内の上部にてヒータの上側に配設されて焼成炉内にて蒸気を発生させる蒸気発生部とを備え、蒸気発生部は、ヒータの上側に配設されてヒータによって加熱される蒸気発生皿と、蒸気発生皿の上面に水を供給する給水部と、蒸気発生皿の周縁部にて外側に突出するように設けられて蒸気発生皿に残る水を排出する排水パイプとを備え、排水パイプの先端部が焼成炉の一側壁部に配設された排水導入口から排水通路内に隙間を介して挿通されたオーブン調理装置であって、排水パイプの先端部の外周面には外側に突出する環状突部を設けたことを特徴とするオーブン調理装置を提供するものである。
【0009】
このオーブン調理装置においては、排水パイプの先端部の外周面には外側に突出する環状突部が設けられているので、排水パイプは環状突部が形成された部分よりも基端側で排水通路の内周面との間と離れることになり、排水パイプの先端開口から排出される水は環状突部が形成された部分よりも基端側で表面張力が働かないようになる。これにより、排水パイプから排水通路に排出された水は焼成炉内に流入しにくくすることができる。
【0010】
本発明の他の実施形態は、被調理物を焼成するための焼成炉と、焼成炉内の上部に配設されて焼成炉内を加熱するヒータと、焼成炉内の上部にてヒータの上側に配設されて焼成炉内にて蒸気を発生させる蒸気発生部とを備え、蒸気発生部は、ヒータの上側に配設されてヒータによって加熱される蒸気発生皿と、蒸気発生皿の上面に水を供給する給水部と、蒸気発生皿の周縁部にて外側に突出するように設けられて蒸気発生皿に残る水を排出する排水パイプとを備え、排水パイプの先端部が焼成炉の一側壁部に配設された排水導入口から排水通路内に隙間を介して挿通されたオーブン調理装置であって、排水パイプの少なくとも先端部を斜め下方に傾斜させたことを特徴とするオーブン調理装置を提供するものである。
【0011】
このオーブン調理装置においては、排水パイプの少なくとも先端部を斜め下方に傾斜させているので、排水パイプの先端開口の下部が排水通路の内周面と近づき、排水パイプの先端開口より基端側の下部が排水通路の内周面の下部との間と離れることになり、排水パイプの先端開口から排出される水は先端開口よりも基端側で表面張力が働かないようになる。これにより、排水パイプから排水通路に排出された水は焼成炉内に流入しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のオーブン調理装置の正面図である。
図2図1の扉を開放した斜視図である。
図3】ケーシングの上面パネルと右面パネルとを取り外した斜視図である。
図4】A-A断面図である。
図5】蒸気発生蓋を上側に移動させたB-B線での断面斜視図である。
図6】制御装置を示すブロック図である。
図7】他の実施形態のA-A断面図である。
図8】さらに他の実施形態のA-A断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明のオーブン調理装置の一実施形態を添付図面を参照して説明する。図1及び図2に示したように、本発明のオーブン調理装置10は、パン生地や焼き菓子の生地(被調理物)を自然対流式の焼成炉20内で加熱して焼成するものであり、焼成炉20の前面部に設けた扉21を開放することによって、前面開口部20aから焼成炉20内に被焼成物を搬入出可能としている。オーブン調理装置10は、店舗や工房等にてテーブル、カウンターまたはドウコンディショナー等の機器の上側に設置され、必要に応じて上下に多段状に設置される。
【0014】
図1図3に示したように、オーブン調理装置10は、略直方体形状のケーシング11を備え、ケーシング11内の右側部を機械室12とし、ケーシング11内の残る部分に焼成炉20が配設されている。焼成炉20はパン生地や菓子の生地等の被調理物を焼成するものであり、前面に被調理物を搬入出する前面開口部20aが形成された略直方体形状をしている。ケーシング11の前面下部には焼成炉20の前面開口部20aを開閉可能に塞ぐ扉21が水平軸線回りに回動可能に軸支されている。
【0015】
図3図5に示したように、焼成炉20の外周面にはガラスウールを用いた断熱材22が設けられており、断熱材22の外周面にはさらにステンレスの板金部材よりなる外板23が設けられている。焼成炉20内の熱は断熱材22によってケーシング11及び機械室12を含めた周囲に伝わりにくくなっている。図4に示したように、焼成炉20の後壁部(一側壁部)には断熱材22の内部に後述する蒸気発生部40にて余った水を外側に排出するための管部材を用いた排水通路24が設けられている。図4及び図5に示したように、排水通路24の排水導入口24aは焼成炉20の後壁部の上部に配置され、図3及び図5に示したように、排水通路24は機械室12を通ってケーシング11の外側まで延びている。排水通路24の導入端部は排水導入口24aから後方に延びてから焼成炉20の後壁部に沿って斜め右側方に延びている。
【0016】
図2及び図4に示したように、焼成炉20内の下部にはセラミック製の炉床板25が設けられており、被調理物を入れたトレイは焼成炉20内にて炉床板25の上側に載置可能となっている。炉床板25の左右両縁部には前後方向に沿って延びる左右のガイド26と、炉床板25の後縁部には左右方向に沿って延びるガイド27が設けられている。これらのガイド26,27はトレイが炉床板25の上側で左右及び後側に偏って載置されるのを防ぐ機能を有している。
【0017】
図4に示したように、焼成炉20内にはヒータ30が設けられており、この実施形態では、焼成炉20の下部にて炉床板25の下側に下側ヒータ31が設けられており、焼成炉20内の上部に上側ヒータ32が設けられている。下側及び上側ヒータ31,32は右側が開いた略U字形のシーズヒータよりなるヒータ素子を用いたものであり、下側ヒータ31は3つのヒータ素子を前後に並べて配置し、上側ヒータ32は4つのヒータ素子を前後に並べて配置している。被焼成物の上面に焼き色を付与しやすくするとともに、下側ヒータ31の上側に蓄熱性の高い炉床板25を配置しているので、上側ヒータ32は下側ヒータ31よりもヒータ素子の数を多くしている。
【0018】
図4に示したように、焼成炉20内の下部には下側温度センサ33が設けられ、焼成炉20内の上部には上側温度センサ34が設けられている。下側温度センサ33は、下側ヒータ31の最も前側のヒータ素子31aと前側から2番目のヒータ素子31bの間に配設されており、下側ヒータ31の制御をするのに用いられている。また、上側温度センサ34は、上側ヒータ32より下側で前側から2番目のヒータ素子32bと前側から3番目のヒータ素子32cとの間の位置に配設されており、上側ヒータ32の制御をするのに用いられている。なお、下側温度センサ33は焼成炉20の右側面下部に設けられ、上側温度センサ34は焼成炉20の右側面上部に設けられているので、下側及び上側温度センサ33,34は焼成炉20内の左側面側を示す断面図である図4では表示されない位置に配置されているが、図4では焼成炉20内の右側面に設けた下側及び上側温度センサ33,34の高さ及び前後位置を破線によって示している。
【0019】
図4及び図5に示したように、焼成炉20内の上部には蒸気発生部40が設けられており、蒸気発生部40は焼成炉20内にて上側ヒータ32の上側に配置されて、焼成炉20内にて蒸気を発生させるものである。蒸気発生部40は、上側ヒータ32の上側に配設される蒸気発生皿41と、蒸気発生皿41の上面前部に設けた蓄熱板42と、蒸気発生皿41の上側に水を供給する給水部43と、蒸気発生皿41に残る水を排出する排水パイプ46と、蒸気発生皿41の上側に蒸気発生空間が形成されるように覆う蒸気発生蓋47とを備えている。
【0020】
蒸気発生皿41は、長方形状の板金部材の前後左右の四方の縁部を上方に少し立ち上げて少しの水を溜めることができる浅い皿形をしている。蒸気発生皿41の左右の両側部には前部及び後部に外側に突出する係止アーム41aが設けられており、係止アーム41aは焼成炉20の左右の内側面上部に設けた前後に延びる支持ブラケット20bに係止されている。蒸気発生皿41が係止アーム41aによって焼成炉20内の支持ブラケット20bに係止された状態で、蒸気発生皿41は焼成炉20の内側面(前後及び左右の側面)との間に蒸気の通路41bが形成されている。蒸気の通路41bは焼成炉20内の上部にて蒸気発生皿41の上側で発生した蒸気を焼成炉20の下部に送出させる。
【0021】
蒸気発生皿41の上面前部には左右方向に延びる帯板状の蓄熱板42が設けられており、蓄熱板42は蒸気発生皿41の前部で蒸気を発生させるための熱を蓄熱可能としている。図3及び図5に示したように、給水部43は、蒸気発生皿41の上側に水を供給するものであり、給水源から導出された給水管44と、給水管44に介装された給水弁45とを備えている。給水管44は、ケーシング11の外側から機械室12を通って焼成炉20内に延び、給水管44の給水口部は蒸気発生皿41の前部の蓄熱板42の上側に導出している。給水管44には機械室12内で給水弁45が介装されており、給水源の水は給水弁45を開放したときに給水管44を通って蓄熱板42の上側に送出される。
【0022】
図4及び図5に示したように、蒸気発生皿41の後縁部(周縁部)には排水パイプ46が後方に突出するように設けられており、給水部43から蒸気発生皿41に供給されて蒸発せずに余った水は排水パイプ46から排出される。排水パイプ46の先端部は焼成炉20の後壁部の上部に配置される排水導入口24aから排水通路24の導入端部に挿通されている。排水パイプ46の外径は排水通路24の内径よりも少し小さな径となっており、排水パイプ46の先端部は僅かな隙間を介して排水導入口24aから排水通路24の導入端部に挿通されている。排水パイプ46の先端部の外周面には先端開口より基端側に内側に凹む環状溝部46aが形成されている。給水部43から蒸気発生皿41に供給されて蒸発せずに余った水は水圧がかかることなく自然流出によって排水パイプ46から排水通路24に排出される。排水パイプ46の先端開口から排水通路24内に排出された水は表面張力によって排水パイプ46の外周面と排水通路24の内周面との間を流れるようになり、排水が排水通路24の排水導入口24aから焼成炉20内に流入するおそれがある。排水パイプ46の先端部に環状溝部46aが形成されているので、排水パイプ46の外周面は環状溝部46aが形成されている部分で排水通路24の内周面と離れることになり、排水パイプ46の先端開口から排出される水は環状溝部46aが形成された部分で表面張力が働かないようになる。これにより、排水パイプ46から排水通路24に排出された水は焼成炉20内に流入しにくくなる。
【0023】
図4及び図5に示したように、蒸気発生皿41の上側には蒸気を発生させる蒸気発生空間が形成されるように覆う蒸気発生蓋47が設けられており、蒸気発生蓋47には前部から後部の全体に蒸気を上方に通過させる多数の蒸気通過孔47aが形成されている。蒸気発生蓋47は、蒸気発生皿41の上側の蒸気発生空間で発生させた蒸気を、蒸気通過孔47aが形成されている部分以外の部分により覆うことで上方への流れを抑制し、蒸気発生空間の主として前部で発生させた蒸気を後部まで行き渡らせるようにしている。この実施形態では、蒸気発生蓋47は、蒸気発生皿41の上側を覆う大きさをして、前部から後部の全体に多数の蒸気通過孔47aが形成されたステンレス製のパンチング板が用いられている。
【0024】
蒸気発生皿41の主として前部の蓄熱板42で発生させた蒸気は蒸気発生蓋47の蒸気通過孔47a以外の部分によって上方への流れが抑制されて、上方への流れが抑制された蒸気は前部から後部に流れる過程で多数の蒸気通過孔47aから蒸気発生蓋47の上側に放出される。蒸気発生蓋47の上側に放出された蒸気は、焼成炉20の天井面に当たってから蒸気発生皿41と焼成炉20の内側面との間の通路41bを通って焼成炉20の下部に流れ落ちる。このように、蒸気発生部40で発生させた蒸気は、焼成炉20の前部を主としつつ後部を含めた全体にも流れ落ちるようになる。
【0025】
図1図3に示したように、ケーシング11の前面右側には操作パネル50が設けられており、操作パネル50は表示部51と操作部52とブザー(図示省略)とを備えている。表示部51は、この実施形態では液晶パネル(LCDパネル)が用いられ、オーブン調理装置10の運転処理等の各種設定や、焼成炉20内の検出温度等を表示可能としている。操作部52は、この実施形態では、各種操作ボタンと、ジョグダイヤルが用いられ、焼成炉20を加熱する運転処理の温度設定や下側及び上側ヒータ31,32の出力設定、調理時間の設定等の各種設定、蒸気供給操作等の操作内容を入力可能としている。ブザーは、焼成炉20を加熱する運転処理の終了、調理時間の終了、エラー情報をブザー音等の音を出力することに報知可能としている。
【0026】
図6に示したように、オーブン調理装置10は制御装置60を備えており、制御装置60は、下側ヒータ31(ヒータ素子31a~31c)、上側ヒータ32(ヒータ素子32a~32d)、下側温度センサ33、上側温度センサ34、給水弁45、操作パネル50に接続されている。制御装置60はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM及びタイマ(いずれも図示省略)を備えている。
【0027】
制御装置60は、ROMに、焼成炉20内の温度を設定温度となるように下側及び上側ヒータ31,32の作動を制御する運転処理を備え、この運転処理を実行するときに、下側及び上側ヒータ31,32の設定出力を0%~100%で6段階に変更可能としている。運転処理は、焼成炉20内の温度と下側及び上側ヒータ31,32の出力を設定可能とするマニュアル運転と、焼成炉20内の温度と下側及び上側ヒータ31,32の出力が予め設定されているプログラム運転とを備え、マニュアル運転とプログラム運転とを選択可能としている。
【0028】
また、制御装置60は、運転処理を実行しているときに、被調理物を焼成調理する設定調理時間が終了するのをタイマによって計時するための計時処理を備えている。制御装置60は、計時処理を実行したときに、被調理物を焼成調理する設定調理時間が終了すると、表示部51とブザーに設定調理時間が終了した情報を出力させる。
【0029】
また、制御装置60は、運転処理を実行しているときに、焼成炉20内で蒸気発生部40によって蒸気を発生させる蒸気発生処理を実行可能としている。制御装置60は、蒸気発生処理を実行すると、給水弁45を予め設定した設定時間(1秒~5秒)で開放させて、給水管44から蒸気発生皿41の蓄熱板42の上側に水を供給し、蓄熱板42と蒸気発生皿41の上面に接触させて水を蒸発させて蒸気を発生させる。蒸気発生皿41の上側に発生した蒸気は蒸気通過孔47aを通って蒸気発生蓋47の上側に放出され、蒸気発生蓋47の上側に放出された蒸気は蒸気発生皿41と焼成炉20の内側面との間の通路41bを通って焼成炉20の下部に流れ落ちる。このように、蒸気発生処理を実行することによって、焼成炉20内で焼成調理をしている被調理物に一時的に蒸気を付与することができる。なお、給水弁45を開放させる設定時間(給水時間)は1秒から5秒の間の時間で設定可能となっている。
【0030】
次に、焼成炉20内の被調理物の焼成調理について説明する。操作パネル50の操作部52を操作してマニュアル運転またはプログラム運転よりなる運転処理の操作信号が入力されると、制御装置60は、下側温度センサ33の検出温度に基づき下側ヒータ31の通電(作動)を制御し、上側温度センサ34の検出温度に基づき上側ヒータ32の通電(作動)を制御して、焼成炉20内は設定温度となるように加熱制御される。焼成炉20内の下部は通電制御された下側ヒータ31の各ヒータ素子31a~31cが発熱することで加熱され、また、下側ヒータ31の各ヒータ素子31a~31cによって加熱されている上側の炉床板25から発生する輻射熱によって加熱される。また、焼成炉20内の上部は通電制御された上側ヒータ32の各ヒータ素子32a~32dが発熱することで加熱され、焼成炉20内の下部から自然対流によって上昇する熱によっても加熱される。
【0031】
扉21を開放して前面開口部20aから焼成炉20内にパン生地等の被調理物を入れたトレイを搬入し、前面開口部20aを扉21により閉じてから、操作パネル50の操作部52を操作して設定調理時間の計時を開始させる操作信号が入力されると、制御装置60は、設定調理時間が終了するまで計時処理を開始する。トレイに入れた被調理物は上述した運転処理により通電制御される下側及び上側ヒータ31,32によって焼成炉20内で加熱される。
【0032】
また、運転処理を実行しているときに、操作部52を操作して焼成炉20内で蒸気を発生させる蒸気発生処理を実行する操作信号が入力されると、制御装置60は、給水弁45を設定時間で開放させる。給水源から供給される水は、給水管44から蒸気発生皿41の蓄熱板42の上側に送出され、送出された水のほとんどが蓄熱板42に接触するときに気化して蒸気となり、一部の水は蓄熱板42から蒸気発生皿41に流れて気化して蒸気となる。蒸気発生皿41の主として前部の蓄熱板42で発生させた蒸気は蒸気発生蓋47の蒸気通過孔47a以外の部分によって上方への流れが抑制されて、上方への流れが抑制された蒸気は前部から後部に流れる過程で多数の蒸気通過孔47aから上側に放出され、焼成炉20の内周面との間の通路41bを通って焼成炉20の前部を主としつつ後部を含めた下部全体にも流れ落ちるようになる。焼成炉20内の被調理物は焼成炉20内の上部から流れ落ちる蒸気によって一時的に蒸気が付与される。なお、蒸気発生皿41に過剰な量の水が供給されたときには、蒸気発生皿41の上側で余った水は排水パイプ46から排水通路24に送られてケーシング11の外側に排出される。
【0033】
計時処理を開始してから設定調理時間となると、制御装置60は、設定調理時間が経過して焼成調理が終了した情報を操作パネル50の表示部51とブザーに出力すると、表示部51には設定調理時間が経過して焼成調理が終了した情報が表示され、ブザーから焼成調理が終了した情報が例えばブザー音によって発出される。
【0034】
上記のように構成したオーブン調理装置10は、パン生地等被調理物を焼成するための焼成炉20と、焼成炉20内の上部に配設されて焼成炉20内を加熱する上側ヒータ(ヒータ)32と、焼成炉20内の上部にて上側ヒータ32の上側に配設されて焼成炉20内にて蒸気を発生させる蒸気発生部40とを備えている。蒸気発生部40は、上側ヒータ32の上側に配設されて上側ヒータ32によって加熱される蒸気発生皿41と、蒸気発生皿41の上面に水を供給する給水部43と、蒸気発生皿41の後縁部(周縁部)にて後側(外側)に突出するように設けられて蒸気発生皿41に残る水を排出する排水パイプ46とを備えている。
【0035】
このオーブン調理装置10においては、蒸気発生皿41は焼成炉20の上部に着脱可能支持されており、排水パイプ46を排水通路24内に容易に挿通及び排水通路24から容易に引き出せるように、排水パイプ46は少しの隙間を介して排水導入口24aから排水通路24内に挿通されている。排水パイプ46から水を排出したときには、排水パイプ46の先端開口から排出される水が排水パイプ46の外周面と排水通路24の内周面との間に形成される僅かな隙間を表面張力によって流れて焼成炉20内に流入するおそれがある。このオーブン調理装置10においては、排水パイプ46の先端部の外周面には先端より基端側に内側に凹む環状溝部46aが設けられているので、排水パイプ46は環状溝部46aが形成された部分で排水通路24の内周面との間と離れることになり、排水パイプ46の先端開口から排出される水は環状溝部46aが形成された部分で表面張力が働かないようになる。これにより、排水パイプ46から排水通路24に排出された水は焼成炉20内に流入しにくくすることができる。
【0036】
この実施形態のオーブン調理装置10においては、排水パイプ46の先端部の外周面に環状溝部46aを形成することで、排水通路24内に排出した水が焼成炉20内に流入するのを防ぐようにしているが、図7に示した実施形態においては、排水パイプ46の先端部の外周面には外側に突出する環状突部46bを設けるようにしている。この実施形態のオーブン調理装置10においては、排水パイプ46は環状突部46bが形成された部分よりも基端側で排水通路24の内周面との間と離れることになり、排水パイプ46の先端開口から排出される水は外側に突出する環状突部46bが形成された部分よりも基端側で表面張力が働かないようになる。この実施形態のオーブン調理装置10でも、排水パイプ46から排水通路24に排出された水は焼成炉内に流入しにくくすることができる。
【0037】
図8に示したさらに他の実施形態においては、排水パイプ46を斜め下方に傾斜させている。排水パイプ46の先端開口が排水通路24の内周面と近づき、排水パイプ46の先端開口より基端側が排水通路24の内周面との間と離れることになり、排水パイプ46の先端開口から排出される水は先端開口よりも基端側で表面張力が働かないようになる。これにより、排水パイプ46から排水通路24に排出された水は焼成炉20内に流入しないようにすることができる。なお、排水パイプ46の排水通路24内に挿通される先端部のみを斜め下方に傾斜(少なくとも先端部のみを斜め下方に傾斜)させたものであってもよい。
【0038】
上記のように構成したオーブン調理装置10においては、排水パイプ46は蒸気発生皿41の周縁部として後縁部から後側に突出するように設けられており、排水パイプ46の先端部を焼成炉20の一側壁部として後壁部に配設された排水導入口24aから排水通路24内に挿通させているが、これに限られるものでなく、排水パイプ46は蒸気発生皿41の周縁部として左側縁部または右側縁部から左側または右側に突出するように設けるようにし、排水パイプ46の先端部を焼成炉20の一側壁部として左壁部または右側部に配設された排水導入口24aから排水通路24内に挿通させるようにしたものであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…オーブン調理装置、20…焼成炉、24…排水通路、24a…排水導入口、32…ヒータ(上側ヒータ)、40…蒸気発生部、41…蒸気発生皿、46…排水パイプ、46a…環状溝部、46b…環状突部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8