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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-02
(45)【発行日】2025-07-10
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/042 20060101AFI20250703BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20250703BHJP
   F15B 11/16 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
F15B11/042
E02F9/22 L
F15B11/16 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022059585
(22)【出願日】2022-03-31
(65)【公開番号】P2023150467
(43)【公開日】2023-10-16
【審査請求日】2024-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 賢人
(72)【発明者】
【氏名】天野 裕昭
(72)【発明者】
【氏名】西川 真司
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
(72)【発明者】
【氏名】金濱 充彦
(72)【発明者】
【氏名】釣賀 靖貴
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/201158(WO,A1)
【文献】特開平6-193604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/042
E02F 9/22
F15B 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体に取り付けられる作業装置と、
原動機と、
前記原動機により駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプの吐出圧により動作し前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータと前記油圧ポンプとの間に設けられるとともに、前記油圧ポンプの吐出ラインにパラレルに接続され、前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れ方向を切り替える複数の方向制御弁と、
前記方向制御弁の上流に設けられ、前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流量を制御する複数の流量制御弁と、
前記複数の流量制御弁に指令圧を出力する複数の電磁弁と、
前記作業装置を操作するための操作信号を出力する操作装置と、
前記操作装置からの操作信号に基づいて、前記電磁弁を制御するコントローラユニットと、を備えた作業機械において、
前記流量制御弁は、
前記吐出ラインに接続されるポンプ通路と、
前記方向制御弁を介して前記油圧アクチュエータに接続されるアクチュエータ通路と、
前記ポンプ通路と前記アクチュエータ通路との間に設けられ、前記ポンプ通路と前記アクチュエータ通路との間の第1開口部を遮断可能であって、前記第1開口部の面積を調整可能なポペットと、前記ポペットの背面に形成され前記ポンプ通路と連通する背圧室と、を有するポペット弁と、
前記ポンプ通路と前記背圧室とを連通する通路に設けられ、前記ポンプ通路から前記背圧室への流れを許容し、前記背圧室から前記ポンプ通路への流れを禁止するチェック弁と、
前記背圧室と前記アクチュエータ通路との間に設けられ、前記背圧室と前記アクチュエータ通路との間の第2開口部を遮断可能であって、前記第2開口部の面積を調整可能なスプールと、前記電磁弁からの指令圧が入力される指令圧室と、を有するスプール弁と、を含み、
前記スプール弁の前後差圧を検出する差圧検出装置を備え、
前記コントローラユニットは、
前記差圧検出装置の検出結果に基づいて、前記スプール弁の前記油圧アクチュエータ側の圧力が、前記スプール弁の前記油圧ポンプ側の圧力よりも低い状態から高い状態に遷移したか否かを監視し、
前記スプール弁の前記油圧アクチュエータ側の圧力が、前記スプール弁の前記油圧ポンプ側の圧力よりも低い状態から高い状態に遷移した場合に、前記第2開口部が開口するように前記電磁弁を制御する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記油圧ポンプの吐出圧を検出するポンプ圧センサと、
前記油圧アクチュエータの圧力を検出するアクチュエータ圧センサと、を備え、
前記コントローラユニットは、
前記操作装置の操作量と前記ポンプ圧センサ及び前記アクチュエータ圧センサの検出結果に基づいて、前記流量制御弁の基準開口面積を演算し、
前記差圧検出装置によって検出された前記スプール弁の前後差圧に基づいて、前記流量制御弁の補助開口面積を演算し、
演算された前記基準開口面積及び前記補助開口面積のうちの大きい方を前記流量制御弁の目標開口面積として決定し、
決定された前記目標開口面積に基づいて、前記電磁弁を制御する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械において、
前記差圧検出装置は、前記ポンプ圧センサと前記アクチュエータ圧センサを有し、
前記コントローラユニットには、前記スプール弁の前後差圧と前記補助開口面積との関係を規定する開口特性が記憶され、
前記コントローラユニットは、
前記ポンプ圧センサによって検出される前記油圧ポンプの吐出圧と、前記アクチュエータ圧センサによって検出される前記油圧アクチュエータの圧力との差を前記スプール弁の前後差圧として演算し、
記憶されている前記開口特性と前記スプール弁の前後差圧とに基づいて、前記補助開口面積を演算する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項2に記載の作業機械において、
前記差圧検出装置は、前記ポペット弁の背圧室の圧力を検出する背圧センサと、前記アクチュエータ圧センサと、を有し、
前記コントローラユニットには、前記スプール弁の前後差圧と前記補助開口面積との関係を規定する開口特性が記憶され、
前記コントローラユニットは、
前記背圧センサによって検出される前記背圧室の圧力と、前記アクチュエータ圧センサによって検出される前記油圧アクチュエータの圧力との差を前記スプール弁の前後差圧として演算し、
記憶されている前記開口特性と前記スプール弁の前後差圧とに基づいて、前記補助開口面積を演算する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項3に記載の作業機械において、
前記コントローラユニットは、
前記スプール弁の前記油圧アクチュエータ側の圧力が、前記スプール弁の前記油圧ポンプ側の圧力よりも低い状態から高い状態に遷移してからの時間を計測し、
計測された時間が予め定められた時間閾値に達した場合に、前記流量制御弁の前記補助開口面積を小さくする
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧アクチュエータへの作動油の流量を制御する流量制御弁を備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械には、複数の油圧アクチュエータが設けられている。作業機械の油圧アクチュエータの制御方法として、油圧アクチュエータに対する作動油の給排方向を切り換える方向切換制御と、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの作動油の供給流量を制御するメータイン開口制御と、油圧アクチュエータから油タンクへの排出流量を制御するメータアウト開口制御と、を一本のスプール弁によって行う制御方法が知られている。
【0003】
メータイン開口制御とメータアウト開口制御とを一本のスプール弁によって行う場合、スプール弁への操作指令(操作圧)に対するメータイン側の開口面積とメータアウト側の開口面積との関係は一意的に決まる。
【0004】
それゆえに、複数の油圧アクチュエータを動作させる複合動作を行った場合に、複数の油圧アクチュエータの負荷の違いに起因して、油圧アクチュエータの動作がオペレータの意図した動作とならない場合がある。例えば、複合動作を行う際に操作指令を維持していたとしても、低負荷側の油圧アクチュエータの負荷圧とポンプ圧との圧力差が上昇したことに伴いメータイン流量が増加する、いわゆる流れ込みが発生し、低負荷側の油圧アクチュエータの速度がオペレータの意図する速度よりも大きくなってしまう場合がある。また、高負荷側の油圧アクチュエータへのメータイン流量が減少することにより、高負荷側の油圧アクチュエータの速度がオペレータの意図する速度よりも小さくなってしまう場合がある。このように、一本のスプール弁によってメータイン開口制御とメータアウト開口制御とを行う場合、操作性が低下してしまう可能性がある。
【0005】
そこで、油圧アクチュエータをオペレータの意図する速度で動作させるために、操作指令に応じてメータイン開口を変化させる方向制御弁(スプール弁)の上流に、方向制御弁への供給流量を制御可能な補助流量制御弁が配置された油圧回路が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献1に記載の油圧回路は、ブーム上げが検出された場合に、バケット用の方向制御弁の上流に設けられる補助流量制御弁によって、バケット用の方向制御弁への圧油の供給流量を制限する。
【0007】
特許文献1には、パイロットスプール弁(パイロット可変絞り弁)とポペット弁(シート弁)とを有する補助流量制御弁(特許文献1の図7図9)が開示されている。パイロットスプール弁は指令圧によって駆動される。パイロットスプール弁が開口することにより、パイロットスプール弁に流れが生じる。パイロットスプール弁の流れ量に応じて生じるポンプ通路とポペット弁の背圧室の圧力の差によって、ポペット弁が駆動される。ポペット弁の弁体(ポペット)は、弁体に作用する力がバランスする位置まで変位し、ポペット弁の開口面積が維持される。
【0008】
この構成によれば、ポンプ圧に比べて低圧の指令圧で駆動するパイロットスプール弁を小型化することで、パイロットスプール弁の弁体(スプール)に作用する慣性力及び摺動力を小さくすることができる。また、ポペット弁を指令圧よりも高圧のポンプ圧でポペット弁を駆動させることができる。その結果、補助流量制御弁は、応答性に優れている。また、ポペット弁の弁体の内部にチェック弁が内蔵されている。このため、ポンプ通路とアクチュエータ通路の圧力が逆転して、アクチュエータ通路の圧力がポンプ通路の圧力よりも高くなった場合に、作動油の逆流を防ぐことができる。
【0009】
特許文献2には、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの供給流量を制御する流量制御弁と、流量制御弁の下流側に配置され、油圧アクチュエータに対する作動油の給排方向を切り替えるとともに油圧アクチュエータからの排出流量を制御する方向制御弁と、を備えた油圧回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平08-013547号公報
【文献】特開2017-020604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
メータイン流量は、高応答で制御されることが要望されている。しかしながら、メータイン流量を高応答で制御するために、特許文献2に記載の流量制御弁に、特許文献1に記載のパイロットスプール弁及びポペット弁を採用した場合、以下のような課題が発生する。
【0012】
流量制御弁によって、油圧ポンプから油圧アクチュエータへの供給流量を0(ゼロ)から最大値まで制御する場合、パイロットスプール弁の開口は全閉から全開の間で制御される必要がある。パイロットスプール弁の開口が全閉とされた状態では、ポペット弁の背圧室の圧力とポンプ通路の圧力とが等しくなる。このため、パイロットスプール弁の油圧アクチュエータ側の圧力が、パイロットスプール弁の油圧ポンプ側の圧力よりも高くなると、ポペット弁が開いてしまうおそれがある。その結果、油圧アクチュエータから油圧ポンプの吐出ラインへの逆流が生じることに起因して、吐出ラインに接続されている他の油圧アクチュエータの動作が不安定になってしまうおそれがある。
【0013】
本発明は、メータイン流量を高応答で制御可能であって、かつ、油圧アクチュエータから油圧ポンプの吐出ラインへの逆流を防止することのできる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様による作業機械は、機体と、前記機体に取り付けられる作業装置と、原動機と、前記原動機により駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプの吐出圧により動作し前記作業装置を駆動する複数の油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータと前記油圧ポンプとの間に設けられるとともに、前記油圧ポンプの吐出ラインにパラレルに接続され、前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れ方向を切り替える複数の方向制御弁と、前記方向制御弁の上流に設けられ、前記複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流量を制御する複数の流量制御弁と、前記複数の流量制御弁に指令圧を出力する複数の電磁弁と、前記作業装置を操作するための操作信号を出力する操作装置と、前記操作装置からの操作信号に基づいて、前記電磁弁を制御するコントローラユニットと、を備える。前記流量制御弁は、前記吐出ラインに接続されるポンプ通路と、前記方向制御弁を介して前記油圧アクチュエータに接続されるアクチュエータ通路と、前記ポンプ通路と前記アクチュエータ通路との間に設けられ、前記ポンプ通路と前記アクチュエータ通路との間の第1開口部を遮断可能であって、前記第1開口部の面積を調整可能なポペットと、前記ポペットの背面に形成され前記ポンプ通路と連通する背圧室と、を有するポペット弁と、前記ポンプ通路と前記背圧室とを連通する通路に設けられ、前記ポンプ通路から前記背圧室への流れを許容し、前記背圧室から前記ポンプ通路への流れを禁止するチェック弁と、前記背圧室と前記アクチュエータ通路との間に設けられ、前記背圧室と前記アクチュエータ通路との間の第2開口部を遮断可能であって、前記第2開口部の面積を調整可能なスプールと、前記電磁弁からの指令圧が入力される指令圧室と、を有するスプール弁と、を含む。また、作業機械は、前記スプール弁の前後差圧を検出する差圧検出装置を備える。前記コントローラユニットは、前記差圧検出装置の検出結果に基づいて、前記スプール弁の前記油圧アクチュエータ側の圧力が、前記スプール弁の前記油圧ポンプ側の圧力よりも低い状態から高い状態に遷移したか否かを監視し、前記スプール弁の前記油圧アクチュエータ側の圧力が、前記スプール弁の前記油圧ポンプ側の圧力よりも低い状態から高い状態に遷移した場合に、前記第2開口部が開口するように前記電磁弁を制御する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、メータイン流量を高応答で制御可能であって、かつ、油圧アクチュエータから油圧ポンプの吐出ラインへの逆流を防止することのできる作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る作業機械の一例として示す油圧ショベルの側面図である。
図2A図2Aは、本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置の回路図であり、第1~第3油圧ポンプに接続される油圧機器について示す。
図2B図2Bは、本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置の回路図であり、パイロットポンプに接続される電磁弁、コントローラユニット及びコントローラユニットに接続される機器について示す。
図3図3は、流量制御弁の構造を示す断面模式図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係る流量制御弁の開口特性について示す図である。
図5図5は、ポペット弁の各受圧面積の関係について示す図である。
図6図6は、コントローラユニットの機能ブロック図である。
図7図7は、方向制御弁の目標開口特性を示す図である。
図8図8は、流量制御弁の補助開口特性を示す図である。
図9図9は、ブリードオフ弁の目標開口特性を示す図である。
図10A図10Aは、コントローラユニットにより実行される油圧ポンプの制御の処理の流れについて示すフローチャートである。
図10B図10Bは、コントローラユニットにより実行される方向制御弁の制御の処理の流れについて示すフローチャートである。
図10C図10Cは、コントローラユニットにより実行される流量制御弁の制御の処理の流れについて示すフローチャートである。
図10D図10Dは、コントローラユニットにより実行されるブリードオフ弁の制御の処理の流れについて示すフローチャートである。
図11図11は、油圧ショベルの各パラメータの時系列変化を示す図である。
図12図12は、本発明の第2実施形態に係る流量制御弁に設けられる圧力センサについて示す図である。
図13図13は、本発明の第2実施形態に係るコントローラユニットの機能ブロック図である。
図14図14は、本発明の第3実施形態に係るコントローラユニットの機能ブロック図である。
図15図15は、補助開口面積の補正特性を示す図である。
図16図16は、コントローラユニットにより実行される流量制御弁の制御の処理の流れについて示すフローチャートである。
図17図17は、流量制御弁の補助開口特性の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る作業機械について説明する。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る作業機械の一例として示す油圧ショベル901の側面図である。図1に示すように、油圧ショベル901は、機体220と、機体220に取り付けられるフロント作業装置(以下、作業装置と記す)203と、を備える。機体220は、クローラ式の走行体201と、走行体201に対して旋回可能に設けられる旋回体202と、を備える。
【0019】
走行体201には左右一対の走行用の油圧モータ(以下、走行モータと記す)が設けられる。左のクローラを駆動させる走行モータ(左走行モータとも記す)201L、及び図示されていない右のクローラを駆動させる走行モータ(右走行モータとも記す)により、左右のクローラが独立して回転駆動される。これにより、走行体201が前方または後方に走行する。
【0020】
旋回体202は、旋回フレーム202aと、旋回フレーム202aの前側に設けられる運転室207と、旋回フレーム202aの後側に設けられるカウンタウエイト209と、運転室207とカウンタウエイト209との間に設けられる機械室208と、を有する。運転室207には、作業装置203、走行体201及び旋回体202を操作するための操作信号を出力する操作装置(図2Bの操作装置95a,95bを含む)、及びオペレータが着席する運転席、及び、油圧ショベル901の各部を制御するコントローラユニット94等が配置されている。操作装置は、オペレータによって操作されるレバー、ペダル等の操作部材と、操作部材の操作量を検出する操作量センサと、を有する。操作量センサは、検出結果を表す信号を操作信号としてコントローラユニット94に出力する。
【0021】
機械室208には、原動機であるエンジン217、エンジン217により駆動される油圧ポンプ及び旋回用の油圧モータ(以下、旋回モータと記す)211などが搭載されている。カウンタウエイト209は、油圧ショベル901の重量バランスを確保するために設けられている。旋回体202は、旋回モータ211により走行体201に対して右方向または左方向に旋回される。
【0022】
作業装置203は、旋回体202に取り付けられる多関節型の作業装置であって、複数の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)、及び複数の油圧アクチュエータにより駆動される複数(本実施形態では3つ)の駆動対象部材を有する。駆動対象部材であるブーム204、アーム205及びバケット206は、直列的に連結されている。複数の油圧アクチュエータ(ブームシリンダ204a、アームシリンダ205a及びバケットシリンダ206a)は、後述する油圧ポンプ1,2,3(図2A参照)の吐出圧により動作し作業装置203を駆動する。複数の油圧アクチュエータにより作業装置203が駆動されることにより、掘削等の作業が行われる。
【0023】
ブーム204は、その基端部が旋回体202の前部に、ブームピンを介して回動可能に連結される。アーム205は、その基端部がブーム204の先端部に、アームピンを介して回動可能に連結される。バケット206は、アーム205の先端部に、バケットピンを介して回動可能に連結される。
【0024】
ブーム204は、油圧シリンダであるブームシリンダ204aの伸縮動作によって回転駆動される。アーム205は、油圧シリンダであるアームシリンダ205aの伸縮動作によって回転駆動される。バケット206は、油圧シリンダであるバケットシリンダ206aの伸縮動作によって回転駆動される。ブームシリンダ204aは、その一端側がブーム204に接続され他端側が旋回体202の旋回フレーム202aに接続されている。アームシリンダ205aは、その一端側がアーム205に接続され他端側がブーム204に接続されている。バケットシリンダ206aは、その一端側がバケットリンクを介してバケット206に接続され他端側がアーム205に接続されている。
【0025】
油圧ショベル901は、油圧ショベル901の姿勢及び動作状態を検出するための複数の姿勢センサを備えている。複数の姿勢センサには、作業装置203の姿勢及び動作状態を検出するためのIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)212,213,214と、機体220の姿勢及び旋回体202の回転速度を検出するためのIMU215,216と、が含まれる。
【0026】
ブーム204にはIMU212が取り付けられ、アーム205にはIMU213が取り付けられ、バケットリンクにはIMU214が取り付けられ、旋回体202にはIMU215,216が取り付けられている。IMU212~216は、ブーム204、アーム205、バケット206及び旋回体202の直交3軸の角速度及び加速度を取得し、コントローラユニット94に出力する。コントローラユニット94は、ブーム204のブームピン周りの角度及び角速度、アーム205のアームピン周りの角度及び角速度、バケット206のバケットピン周りの角度及び角速度、並びに、旋回体202のピッチ角、ロール角、旋回角及び旋回速度などの姿勢に関するパラメータを演算する。なお、IMUコントローラをコントローラユニット94とは別に設けて、IMUコントローラが複数のIMU212~216からの信号に基づいて、姿勢に関するパラメータを演算し、演算結果をコントローラユニット94に出力してもよい。
【0027】
作業装置203の姿勢センサとしては、上記IMU212~214に代えて、ブーム204、アーム205及びバケット206の回動角度に応じた電圧信号を出力するポテンショメータを採用してもよい。また、作業装置203の姿勢センサとしては、ブームシリンダ204a、アームシリンダ205a及びバケットシリンダ206aのストロークを検出するストロークセンサを採用してもよい。機体220の姿勢センサとしては、上記IMU215,216に代えて、傾斜角センサやロータリーエンコーダを設けて、機体220の傾斜角(ピッチ角及びロール角)や旋回体202の旋回角及び旋回速度を検出してもよい。
【0028】
図2A及び図2Bを参照して、油圧ショベル901の油圧駆動装置902について説明する。図2A及び図2Bは、本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置902の回路図である。図2Aは、第1~第3油圧ポンプに接続される油圧機器について示し、図2Bは、パイロットポンプに接続される電磁弁、コントローラユニット及びコントローラユニットに接続される機器について示す。
【0029】
図2A及び図2Bに示すように、油圧駆動装置902は、第1油圧ポンプ1と、第2油圧ポンプ2と、第3油圧ポンプ3と、パイロットポンプ4と、作動油タンク5と、複数の制御弁(方向制御弁6~16、流量制御弁21~31、ブリードオフ弁35~37及び合流弁17)と、複数の制御弁の動作を制御するコントローラユニット94と、を備えている。コントローラユニット94は、図2Bに示す電磁弁を制御することにより、図2Aに示す複数の制御弁を制御する。作動油タンク5には、作動油が貯留されている。
【0030】
図2Aに示す第1~第3油圧ポンプ1~3は、エンジン217によって駆動され、作動油タンク5内の作動油を吸い込んで吐出ライン41,51,61に吐出する。第1~第3油圧ポンプ1~3は、吐出容量(1回転あたりの押しのけ容積)を変更可能な可変容量形の油圧ポンプである。第1~第3油圧ポンプ1~3は、例えば、斜板式あるいは斜軸式のピストンポンプである。図2Bに示すパイロットポンプ4は、エンジン217によって駆動され、作動油タンク5内の作動油を吸い込んでパイロットライン96に吐出する。パイロットポンプ4は、吐出容量が一定の固定容量形の油圧ポンプである。
【0031】
図2Aに示すように、第1油圧ポンプ1の吐出容量(傾転角)は、第1油圧ポンプ1に付設されたレギュレータによって制御される。第1油圧ポンプ1のレギュレータは、指令圧室1aを含んでいる。第2油圧ポンプ2の吐出容量(傾転角)は、第2油圧ポンプ2に付設されたレギュレータによって制御される。第2油圧ポンプ2のレギュレータは、指令圧室2aを含んでいる。第3油圧ポンプ3の吐出容量(傾転角)は、第3油圧ポンプ3に付設されたレギュレータによって制御される。第3油圧ポンプ3のレギュレータは、指令圧室3aを含んでいる。
【0032】
第1油圧ポンプ1の吐出ライン41には、第1油圧ポンプ1と右走行モータ(不図示)との間に設けられ、第1油圧ポンプ1から右走行モータ(不図示)に供給される圧油の流れ方向を切り替える方向制御弁(以下、右走行用方向制御弁とも記す)6と、第1油圧ポンプ1とバケットシリンダ206aとの間に設けられ、第1油圧ポンプ1からバケットシリンダ206aに供給される圧油の流れ方向を切り替える方向制御弁(以下、バケット用方向制御弁とも記す)7と、第1油圧ポンプ1とアームシリンダ205aとの間に設けられ、第1油圧ポンプ1からアームシリンダ205aに供給される圧油の流れ方向を切り替える方向制御弁(以下、第2アーム用方向制御弁とも記す)8と、第1油圧ポンプ1とブームシリンダ204aとの間に設けられ、第1油圧ポンプ1からブームシリンダ204aに供給される圧油の流れ方向を切り替える方向制御弁(以下、第1ブーム用方向制御弁とも記す)9と、がパラレルに接続されている。
【0033】
右走行用方向制御弁6は、吐出ライン41から分岐する油路42を介して第1油圧ポンプ1に接続されている。バケット用方向制御弁7は、吐出ライン41から分岐する油路44を介して第1油圧ポンプ1に接続されている。第2アーム用方向制御弁8は、吐出ライン41から分岐する油路46を介して第1油圧ポンプ1に接続されている。第1ブーム用方向制御弁9は、吐出ライン41から分岐する油路48を介して第1油圧ポンプ1に接続されている。
【0034】
吐出ライン41には、過剰な圧力上昇から油圧回路を保護するために、吐出ライン41の最高圧力を規定する第1メインリリーフバルブ38が設けられている。第1油圧ポンプ1は、第1メインリリーフバルブ38を介して作動油タンク5に接続されている。吐出ライン41には、第1ブリードオフ弁35が設けられている。第1油圧ポンプ1は、第1ブリードオフ弁35を介して作動油タンク5に接続されている。
【0035】
第2油圧ポンプ2の吐出ライン51には、第2油圧ポンプ2とブームシリンダ204aとの間に設けられ、第2油圧ポンプ2からブームシリンダ204aに供給される圧油の流れ方向を切り替える方向制御弁(以下、第2ブーム用方向制御弁とも記す)10と、第2油圧ポンプ2とアームシリンダ205aとの間に設けられ、第2油圧ポンプ2からアームシリンダ205aに供給される圧油の流れ方向を切り替える方向制御弁(以下、第1アーム用方向制御弁とも記す)11と、第2油圧ポンプ2と第1特殊アタッチメント(不図示)を駆動する第1アクチュエータ(不図示)との間に設けられ、第2油圧ポンプ2から第1アクチュエータ(不図示)に供給される圧油の流れ方向を切り替える方向制御弁(以下、第1アタッチメント用方向制御弁とも記す)12と、第2油圧ポンプ2と左走行モータ201Lとの間に設けられ、第2油圧ポンプ2から左走行モータ201Lに供給される圧油の流れ方向を切り替える方向制御弁(以下、左走行用方向制御弁とも記す)13と、がパラレルに接続されている。なお、第1特殊アタッチメントは、例えばバケット206に代えて設けられる小割機である。第1アタッチメント用方向制御弁12は、バケット206に代えて小割機がアーム205に装着される場合に使用される。
【0036】
第2ブーム用方向制御弁10は、吐出ライン51から分岐する油路52を介して第2油圧ポンプ2に接続されている。第1アーム用方向制御弁11は、吐出ライン51から分岐する油路54を介して第2油圧ポンプ2に接続されている。第1アタッチメント用方向制御弁12は、吐出ライン51から分岐する油路56を介して第2油圧ポンプ2に接続されている。左走行用方向制御弁13は、吐出ライン51から分岐する油路58を介して第2油圧ポンプ2に接続されている。
【0037】
吐出ライン51には、過剰な圧力上昇から油圧回路を保護するために、吐出ライン51の最高圧力を規定する第2メインリリーフバルブ39が設けられている。第2油圧ポンプ2は、第2メインリリーフバルブ39を介して作動油タンク5に接続されている。吐出ライン51には、第2ブリードオフ弁36が設けられている。第2油圧ポンプ2は、第2ブリードオフ弁36を介して作動油タンク5に接続されている。
【0038】
第1油圧ポンプ1の吐出ライン41と第2油圧ポンプ2の吐出ライン51とは、合流弁17を介して接続されている。
【0039】
第3油圧ポンプ3の吐出ライン61には、第3油圧ポンプ3と旋回モータ211との間に設けられ、第3油圧ポンプ3から旋回モータ211に供給される圧油の流れ方向を切り替える方向制御弁(以下、旋回用方向制御弁とも記す)14と、第3油圧ポンプ3とブームシリンダ204aとの間に設けられ、第3油圧ポンプ3からブームシリンダ204aに供給される圧油の流れ方向を切り替える方向制御弁(以下、第3ブーム用方向制御弁とも記す)15と、第3油圧ポンプ3と第2特殊アタッチメント(不図示)を駆動する第2アクチュエータ(不図示)との間に設けられ、第3油圧ポンプ3から第2アクチュエータ(不図示)に供給される圧油の流れ方向を切り替える方向制御弁(以下、第2アタッチメント用方向制御弁とも記す)16と、がパラレルに接続されている。
【0040】
なお、第2アタッチメント用方向制御弁16は、第1特殊アタッチメントに加えて第2アクチュエータを備えた第2特殊アタッチメントが作業装置203に装着された際、または、第1特殊アクチュエータに代えて第1アクチュエータと第2アクチュエータの2つのアクチュエータを備えた第2特殊アタッチメントが装着された際に使用される。
【0041】
旋回用方向制御弁14は、吐出ライン61から分岐する油路62を介して第3油圧ポンプ3に接続されている。第3ブーム用方向制御弁15は、吐出ライン61から分岐する油路64を介して第3油圧ポンプ3に接続されている。第2アタッチメント用方向制御弁16は、吐出ライン61から分岐する油路66を介して第3油圧ポンプ3に接続されている。
【0042】
吐出ライン61には、過剰な圧力上昇から油圧回路を保護するために、吐出ライン61の最高圧力を規定する第3メインリリーフバルブ40が設けられている。第3油圧ポンプ3は、第3メインリリーフバルブ40を介して作動油タンク5に接続されている。吐出ライン61には、第3ブリードオフ弁37が設けられている。第3油圧ポンプ3は、第3ブリードオフ弁37を介して作動油タンク5に接続されている。
【0043】
右走行用方向制御弁6の上流の油路42には、右走行モータに供給される圧油の流量を調整する流量制御弁(以下、右走行用流量制御弁とも記す)21が設けられている。バケット用方向制御弁7の上流の油路44には、バケットシリンダ206aに供給される圧油の流量を調整する流量制御弁(以下、バケット用流量制御弁とも記す)22が設けられている。第2アーム用方向制御弁8の上流の油路46には、アームシリンダ205aに供給される圧油の流量を調整する流量制御弁(以下、第2アーム用流量制御弁とも記す)23が設けられている。第1ブーム用方向制御弁9の上流の油路48には、ブームシリンダ204aに供給される圧油の流量を調整する流量制御弁(以下、第1ブーム用流量制御弁とも記す)24が設けられている。
【0044】
第2ブーム用方向制御弁10の上流の油路52には、ブームシリンダ204aに供給される圧油の流量を調整する流量制御弁(以下、第2ブーム用流量制御弁とも記す)25が設けられている。第1アーム用方向制御弁11の上流の油路54には、アームシリンダ205aに供給される圧油の流量を調整する流量制御弁(以下、第1アーム用流量制御弁とも記す)26が設けられている。第1アタッチメント用方向制御弁12の上流の油路56には、第1アタッチメントに供給される圧油の流量を調整する流量制御弁(以下、第1アタッチメント用流量制御弁とも記す)27が設けられている。左走行用方向制御弁13の上流の油路58には、左走行モータ201Lに供給される圧油の流量を調整する流量制御弁(以下、左走行用流量制御弁とも記す)28が設けられている。
【0045】
旋回用方向制御弁14の上流の油路62には、旋回モータ211に供給される圧油の流量を調整する流量制御弁(以下、旋回用流量制御弁とも記す)29が設けられている。第3ブーム用方向制御弁15の上流の油路64には、ブームシリンダ204aに供給される圧油の流量を調整する流量制御弁(以下、第3ブーム用流量制御弁とも記す)30が設けられている。第2アタッチメント用方向制御弁16の上流の油路66には、第2アタッチメントに供給される圧油の流量を調整する流量制御弁(以下、第2アタッチメント用流量制御弁とも記す)31が設けられている。
【0046】
このように、油圧駆動装置902は、複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流れ方向を制御する複数の方向制御弁6~16と、複数の方向制御弁6~16のそれぞれの上流に設けられ、複数の油圧アクチュエータに供給される圧油の流量(すなわち、メータイン流量)を制御する複数の流量制御弁21~31と、を備えている。
【0047】
複数の流量制御弁21~31は同様の構成である。このため、図2Aでは、流量制御弁26を代表して、その構成を示しており、その他の流量制御弁21~25,27~31の構成を示す図は省略している。流量制御弁26は、シート形のポペット弁32と、ポペット弁32の開口面積を制御するパイロットスプール弁33と、を有する。パイロットスプール弁33は、電磁弁ユニット93(図2B参照)から出力される指令圧に応じて動作する。流量制御弁26の構造及び機能の詳細については、後述する。
【0048】
図2Bに示すように、パイロットポンプ4は、パイロット1次圧生成用のパイロットリリーフ弁92を介して作動油タンク5に接続されている。また、パイロットポンプ4は、パイロットライン96を介して電磁弁ユニット93に接続されている。電磁弁ユニット93は、油圧ポンプ1~3のレギュレータ、方向制御弁6~16、流量制御弁21~31、ブリードオフ弁35~37、及び、合流弁17に指令圧を出力する複数の電磁弁を備えている。複数の電磁弁は、それぞれコントローラユニット94からの制御信号に応じて、パイロットポンプ4の1次圧力を減圧して生成した2次圧力を指令圧として出力する電磁比例減圧弁である。
【0049】
なお、図2Bでは、複数の電磁弁のうち、第2油圧ポンプ2のレギュレータの指令圧室2aへ指令圧を出力する電磁弁93aと、第1アーム用方向制御弁11の指令圧室11aへ指令圧を出力する電磁弁93bと、第1アーム用方向制御弁11の指令圧室11bへ指令圧を出力する電磁弁93cと、第1アーム用流量制御弁26の指令圧室33aへ指令圧を出力する電磁弁93dと、第2ブリードオフ弁36の指令圧室36aへ指令圧を出力する電磁弁93eとを示し、その他の電磁弁の図示は省略している。
【0050】
図示が省略されている複数の電磁弁には、油圧ポンプ1,3のレギュレータの指令圧室1a,3aへ指令圧を出力する電磁弁、方向制御弁6~10,12~16の指令圧室へ指令圧を出力する電磁弁、流量制御弁21~25,27~31の指令圧室へ指令圧を出力する電磁弁、及び、ブリードオフ弁35,37のレギュレータの指令圧室35a,37aへの指令圧を出力する電磁弁がある。
【0051】
油圧駆動装置902は、第1ブーム用方向制御弁9、第2ブーム用方向制御弁10及び第3ブーム用方向制御弁15を切り換え操作可能な操作装置95aと、第1アーム用方向制御弁11及び第2アーム用方向制御弁8を切り換え操作可能な操作装置95bとを備えている。なお、説明を簡略化するため、右走行用方向制御弁6を切り換え操作する右走行用操作レバー、バケット用方向制御弁7を切り換え操作するバケット用操作レバー、第1アタッチメント用方向制御弁12を切り換え操作する第1アタッチメント用操作レバー、左走行用方向制御弁13を切り換え操作する左走行用操作レバー、旋回用方向制御弁14を切り換え操作する旋回用操作レバー、第2アタッチメント用方向制御弁16を切り換え操作する第2アタッチメント用操作レバーについては、図示を省略してある。
【0052】
図2Aに示すように、第2油圧ポンプ2の吐出ライン51には、第2油圧ポンプ2の吐出圧であるポンプ圧を検出し、検出結果を表す信号である検出信号をコントローラユニット94に出力する圧力センサ(以下、ポンプ圧センサとも記す)81が設けられている。第1アーム用方向制御弁11と、第1アーム用流量制御弁26とを接続する油路であるアクチュエータ通路54Aには、油圧アクチュエータ(アームシリンダ205a)の圧力であるアクチュエータ圧を検出し、検出結果を表す信号である検出信号をコントローラユニット94に出力する圧力センサ(以下、アクチュエータ圧センサとも記す)82が設けられている。
【0053】
図2Bに示すように、ポンプ圧センサ81及びアクチュエータ圧センサ82は、第1アーム用流量制御弁26のパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPを検出する差圧検出装置80を構成する。なお、図示しないが、流量制御弁21~25,27~31に対しても、同様に差圧検出装置80が設けられる。つまり、図示しないが、差圧検出装置80を構成するアクチュエータ圧センサ82は、複数の流量制御弁21~25,27~31のそれぞれに対して設けられている。また、図示しないが、流量制御弁21~24のパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPを検出する差圧検出装置80を構成するポンプ圧センサ81は、第1油圧ポンプ1の吐出ライン41に設けられている。さらに、図示しないが、流量制御弁29~31のパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPを検出する差圧検出装置80を構成するポンプ圧センサ81は、第3油圧ポンプ3の吐出ライン61に設けられている。
【0054】
コントローラユニット94には、操作装置95a,95b(図示されていない操作装置を含む)から出力される信号、圧力センサ81,82(図示されていない圧力センサ81,82を含む)から出力される信号、IMU212~216から出力される信号が入力される。コントローラユニット94は、電磁弁ユニット93の各電磁弁93a~93e(図示されない電磁弁を含む)へ制御信号を出力する。
【0055】
コントローラユニット94は、操作装置95a,95b(図示されていない操作装置を含む)からの操作信号、及び圧力センサ81,82(図示されていない圧力センサ81,82を含む)からの検出信号に基づいて、電磁弁93a~93e(図示されない電磁弁を含む)を制御する。
【0056】
コントローラユニット94は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等の処理装置94v、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の不揮発性メモリ94w、所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ94x、入力インタフェース94y、出力インタフェース94z、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。なお、コントローラユニット94は、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。また、処理装置94vとしては、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
【0057】
不揮発性メモリ94wには、各種演算が実行可能なプログラム、閾値、データテーブル等が格納されている。すなわち、不揮発性メモリ94wは、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体(記憶装置)である。処理装置94vは、不揮発性メモリ94wに記憶されたプログラムを揮発性メモリ94xに展開して演算実行する演算装置であって、プログラムに従って入力インタフェース94y、不揮発性メモリ94w及び揮発性メモリ94xから取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。
【0058】
入力インタフェース94yは、各種装置(操作装置95a,95b、圧力センサ81,82、IMU212~216等)から入力された信号を処理装置94vで演算可能なように変換する。また、出力インタフェース94zは、処理装置94vでの演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を各種装置(電磁弁93a~93e等)に出力する。
【0059】
図3を参照して、流量制御弁26の構造の詳細について説明する。図3は、流量制御弁26の構造を示す断面模式図である。なお、上述したように、他の流量制御弁21~25,27~31は、流量制御弁26と同様の構成であるため、説明を省略する。図3に示すように、流量制御弁26は、第2油圧ポンプ2の吐出ライン51に接続されるポンプ通路54Pと、第1アーム用方向制御弁11(図2A参照)を介してアームシリンダ205a(図2A参照)に接続されるアクチュエータ通路54Aと、ポンプ通路54Pとアクチュエータ通路54Aとの間に設けられるシート形のポペット弁32と、ポペット弁32の背圧室32eとアクチュエータ通路54Aとの間に設けられるパイロットスプール弁33と、を備える。
【0060】
ポペット弁32は、ポンプ通路54Pとアクチュエータ通路54Aとの間の開口部(以下、第1開口部と記す)121を遮断可能であって、第1開口部121の面積を調整可能なポペット(弁体)32aと、ポペット32aの背面に形成されポンプ通路54Pと連通する背圧室(圧力室)32eと、を有している。
【0061】
ポペット32aは、メインハウジング110に摺動自在に設置されている。メインハウジング110には、ポペット32aを収容する収容孔32fと、ポンプ通路54Pと、ポンプ圧室32cと、アクチュエータ通路54Aと、アクチュエータ圧室32dと、油路78bと、が形成されている。ポンプ圧室32cはポンプ通路54Pに連続して形成される。アクチュエータ圧室32dはアクチュエータ通路54Aに連続して形成される。油路78bはアクチュエータ圧室32dに連続して形成される。ポンプ通路54P及びアクチュエータ通路54Aは、吐出ライン51から分岐する油路54を構成する。
【0062】
ポペット32aは、ポンプ圧室32cに臨み、ポンプ圧室32cの圧力を受ける受圧部と、アクチュエータ圧室32dに臨み、アクチュエータ圧室32dの圧力を受ける受圧部と、背圧室32eに臨み、背圧室32eの圧力を受ける受圧部と、を有している。
【0063】
背圧室32eには、ポペット32aをポンプ圧室32c及びアクチュエータ圧室32dの圧力に抗して付勢するばね101が設けられている。ばね101の付勢力によって、ポペット32aは、シート部110aに着座する。ポペット32aがシート部110aに着座している状態では、ポンプ圧室32cとアクチュエータ圧室32dとの連通が遮断される。
【0064】
ポペット32aには、ポンプ圧室32cと背圧室32eとを連通する内部通路113が設けられている。内部通路113には、ポンプ圧室32cから背圧室32eへの流れを許容し、背圧室32eからポンプ圧室32cへの流れを禁止するチェック弁114が設けられている。
【0065】
チェック弁114は、内部通路113の背圧室32e側の開口を閉塞するプラグ114pと、内部通路113を遮断可能なボール114bと、プラグ114pとボール114bとの間に設けられボール114bをポンプ圧室32cの圧力に抗して付勢するばね114sと、を有する。内部通路113は、ボール114bが配置される大径部と、大径部よりも小径の小径部とを有し、ばね114sの付勢力によって、ボール114bが内部通路113の小径部を塞ぐ。
【0066】
ポペット32aの背圧室32e側の端部(図示上端部)の外周面には、背圧室32eに開口する連通溝32bが設けられている。ポペット32aには、内部通路113と連通溝32bとを連通する連通路が形成されている。ポンプ圧室32cの作動油は、チェック弁114及び連通溝32bを通じて背圧室32eに導かれる。ポペット32aと収容孔32fとの間の開口部(以下、第3開口部と記す)123は、背圧室32eとポンプ圧室32cとを連通する制御可変絞りを構成する。この制御可変絞りは、ポペット32aの移動量に応じて、その開口面積が変化する。制御可変絞りの開口特性は、連通溝32bの形状、大きさ、数により定められる。
【0067】
ポペット32aのポンプ圧室32c側の端部(図示下端部)の外周面には、ポンプ圧室32cに開口するノッチ102が複数形成されている。複数のノッチ102は、ポペット32aの周方向に離間して設けられている。ポペット32aがシート部110aに着座しているときには、ポンプ圧室32cとアクチュエータ圧室32dとの連通が遮断されている。ポペット32aがシート部110aから離間すると、ノッチ102を介してポンプ圧室32cとアクチュエータ圧室32dとが連通する。ノッチ102は、第1切り欠き部102aと第1切り欠き部102aに連続して形成される第2切り欠き部102bとを有している。シート部110aと、ノッチ102が形成されているポペット32aの下端部とによって、第1開口部121が形成される。第1開口部121は、ポンプ圧室32cとアクチュエータ圧室32dとを連通する可変絞りを構成する。この可変絞りは、ポペット32aの移動量に応じて、その開口面積が変化する。可変絞りの開口特性は、ノッチ102の形状、大きさ、数により定められる。
【0068】
パイロットスプール弁33は、背圧室32eとアクチュエータ圧室32dとの間の開口部(以下、第2開口部と記す)122を遮断可能であって、第2開口部122の面積を調整可能なスプール(弁体)112と、電磁弁93dからの指令圧が入力される指令圧室33aと、を有する。
【0069】
スプール112は、パイロットハウジング111に摺動自在に設置されている。パイロットハウジング111は、メインハウジング110に取り付けられる。パイロットハウジング111には、スプール112を収容する収容孔111aと、スプール112の一端(図示右端)に臨む指令圧室33aと、スプール112の他端(図示左端)に臨むばね室33bと、が形成されている。
【0070】
スプール112の一端部(図示右端部)には、指令圧室33a内に延在するロッド109が結合されている。ロッド109が指令圧室33aの壁面に当接することにより、スプール112の図示右方向への移動が規制される。ばね室33b内に設けられスプール112を指令圧室33aの指令圧に抗して付勢するばね107と、を備える。なお、ばね室33bは、大気圧に維持された作動油タンク5に連通されている。
【0071】
パイロットハウジング111の収容孔111aは、パイロットハウジング111の図示左端から図示右方向に向かって延在する非貫通孔である。収容孔111aの開口は、プラグ106によって閉塞されている。プラグ106とスプール112の左端部によってばね室33bが形成される。パイロットハウジング111の収容孔111aには、その軸方向に所定の間隔をあけて第1油室104と第2油室105とが形成されている。第1油室104は背圧室32eに連通する油路77に接続され、第2油室105は、油路78bを介してアクチュエータ圧室32dに連通する油路78aに接続されている。油路78a及び油路78bは、収容孔111aとアクチュエータ圧室32dとを連通する油路78を構成する。
【0072】
スプール112は、収容孔111aの内周面に摺接する円柱状の第1ランド部112a及び第2ランド部112bを有する。第1ランド部112aは、その外周面によって第1油室104と第2油室105とを遮断可能に構成される。第2ランド部112bは、その端面と上記プラグ106とによってばね室33bを形成する。
【0073】
第1ランド部112aの外周面には、複数のノッチ108が形成されている。複数のノッチ108は、第1ランド部112aの周方向に離間して設けられている。ノッチ108は、第1ランド部112aの第2ランド部112b側の端面からスプール112の軸方向に延在している。
【0074】
収容孔111aの内周面とノッチ108が形成されている第1ランド部112aとによって第2開口部122が形成される。第2開口部122は、第1油室104と第2油室105とを連通する絞り部を構成する。この絞り部は、スプール112の移動量に応じて、その開口面積が変化する。絞り部の開口特性は、ノッチ108の形状、大きさ、数により定められる。
【0075】
図4は、本発明の第1実施形態に係る流量制御弁21~31の開口特性について示す図である。横軸は、パイロットスプール弁33の指令圧室33aに入力される指令圧を示し、縦軸は、ポペット弁32及びパイロットスプール弁33の開口面積の大きさを示している。図4に示すように、ポペット弁32の第1開口部121の開口面積aMPは、指令圧が増加するほど減少し、指令圧が所定値P0以上になると全閉となる。パイロットスプール弁33の第2開口部122の開口面積aPSは、指令圧が増加するほど減少し、指令圧が所定値P0以上になると全閉となる。
【0076】
なお、ポペット弁32の開口特性及びパイロットスプール弁33の開口特性は、ノッチ102、連通溝32b、ノッチ108の形状、大きさ、数によって設定される。図4に示すポペット弁32の開口特性及びパイロットスプール弁33の開口特性は、一例であり、種々の開口特性とすることができる。例えば、図4に示す例では、ポペット弁32及びパイロットスプール弁33の開口面積が、同じ指令圧P0で0(ゼロ)になる例について示しているが、ポペット弁32の開口面積aMPが0(ゼロ)になる指令圧と、パイロットスプール弁33の開口面積aPSが0(ゼロ)になる指令圧とは異なっていてもよい。
【0077】
図5を参照してポペット弁32に作用する力の状態について説明する。図5は、ポペット弁32の各受圧面積の関係について示す図である。図5に示すように、ポンプ圧室32cにおけるポペット32aの受圧面積Apと、アクチュエータ圧室32dにおけるポペット32aの受圧面積Aaとの和は、背圧室32eにおけるポペット32aの受圧面積Acと等しい。
【0078】
ポンプ圧室32cの圧力であるポンプ圧Pp、背圧室32eの圧力である背圧Pc、及び、アクチュエータ圧室32dであるアクチュエータ圧Paと、ポペット弁32のポペット32aの各受圧面積Ap,Ac,Aaの関係からポペット32aに作用する力の状態を整理すると以下のようになる。
【0079】
-第1の状態-
パイロットスプール弁33が開口した状態であって、アクチュエータ圧Paよりもポンプ圧Ppが高い場合、各圧力Pp,Pc,Paの大小関係は以下の式(1)となり、ポペット32aに作用する力の関係は以下の式(2)となる。
Pp > Pc > Pa ・・・(1)
Ap × Pp + Aa × Pa = Ac × Pc ・・・(2)
式(2)において、左辺はポペット32aの開口方向の力、右辺はポペット32aの閉口方向の力である。
【0080】
パイロットスプール弁33が開口した状態であって、式(1)のように、ポンプ圧Pp、背圧Pc、アクチュエータ圧Paの順に圧力が低い場合、ポペット32aは力が釣り合う位置で第1開口部121の開口面積aMPが維持され、ポンプ圧室32cからアクチュエータ圧室32dへ作動油が流れる。
【0081】
-第2の状態-
パイロットスプール弁33が開口した状態であって、ポンプ圧Ppよりもアクチュエータ圧Paが高い場合、各圧力Pp,Pc,Paの大小関係は以下の式(3)となり、ポペット32aに作用する力の関係は以下の式(4)となる。
Pp < Pc = Pa ・・・(3)
Ap × Pp + Aa × Pa < Ac × Pc ・・・(4)
式(4)において、左辺はポペット32aの開口方向の力、右辺はポペット32aの閉口方向の力である。
【0082】
パイロットスプール弁33が開口し、ポンプ圧Ppよりもアクチュエータ圧Paが大きい状態では、式(3)のように、背圧Pcとアクチュエータ圧Paが等しくなり、ポペット32aの閉口方向の力が開口方向の力よりも大きくなる。そのため、ポペット32aは全閉となり、アクチュエータ圧室32dからポンプ圧室32cへの逆流を防ぐことができる。
【0083】
-第3の状態-
パイロットスプール弁33が閉口した状態であって、ポンプ圧Ppよりもアクチュエータ圧Paが高い場合、各圧力Pp,Pc,Paの大小関係は以下の式(5)となり、ポペット32aに作用する力の関係は以下の式(6)となる。
Pp = Pc < Pa ・・・(5)
Ap × Pp + Aa × Pa > Ac × Pc ・・・(6)
式(6)において、左辺はポペット32aの開口方向の力、右辺はポペット32aの閉口方向の力である。
【0084】
パイロットスプール弁33が閉口すると、式(5)のように、背圧Pcはポンプ圧Ppと等しくなり、式(6)のように、ポペット32aの開口方向の力が閉口方向の力よりも大きくなる。そのため、ポペット32aが開き方向に変位してしまい、アクチュエータ圧室32dからポンプ圧室32cへの逆流が発生してしまう可能性がある。
【0085】
アクチュエータ圧室32dからポンプ圧室32cへの逆流が生じると、油圧回路中に意図しない作動油の流れが生じ、油圧アクチュエータの制御性や操作性を損なう可能性がある。
【0086】
本実施形態に係る流量制御弁26は、第2油圧ポンプ2からアームシリンダ205aへの供給流量を0(ゼロ)から最大値まで制御する。このため、パイロットスプール弁33は、全閉から全開の間で制御される。しかしながら、パイロットスプール弁33が全閉であるときには、上記第3の状態となる可能性があり、アームシリンダ205aから第2油圧ポンプ2の吐出ライン51への逆流が生じることに起因して、吐出ライン51に接続されている他の油圧アクチュエータ(左走行モータ201L、ブームシリンダ204a等)の動作が不安定になってしまうおそれがある。
【0087】
そこで、本実施形態に係るコントローラユニット94は、差圧検出装置80の検出結果に基づいて、パイロットスプール弁33の油圧アクチュエータ側の圧力であるアクチュエータ圧Paが、パイロットスプール弁33の油圧ポンプ側の圧力であるポンプ圧Ppよりも低い状態から高い状態に遷移したか否かを判定し、アクチュエータ圧Paが、ポンプ圧Ppよりも低い状態から高い状態に遷移した場合に、パイロットスプール弁33の第2開口部122が開口するように電磁弁を制御する。
【0088】
図6を参照して、コントローラユニット94の機能について詳しく説明する。図6は、コントローラユニット94の機能ブロック図である。図6に示すように、コントローラユニット94は、不揮発性メモリ94wに記憶されているプログラムを実行することにより、アクチュエータ目標流量演算部94a、ポンプ目標流量演算部94b、ポンプ制御指令部94c、方向制御弁目標開口演算部94d、方向制御弁制御指令部94e、基準開口演算部94f、圧力状態判断部94g、補助開口演算部94h、流量制御弁目標開口決定部94i、流量制御弁制御指令部94j、ブリードオフ弁目標開口演算部94k、及び、ブリードオフ弁制御指令部94lとして機能する。
【0089】
アクチュエータ目標流量演算部94aは、操作装置から出力された操作量と、油圧アクチュエータ毎に予め定められた目標流量特性とに基づいて、油圧アクチュエータに供給する作動油の流量の目標値である目標供給流量を演算する。油圧アクチュエータの目標流量特性は、操作量と目標供給流量との関係を規定する特性であり、不揮発性メモリ94wにテーブル形式で記憶されている。油圧アクチュエータの目標流量特性は、操作量の増加に応じて目標供給流量が増加する特性である
ポンプ目標流量演算部94bは、アクチュエータ目標流量演算部94aにより演算された各油圧アクチュエータの目標供給流量に基づいて、油圧ポンプの吐出流量の目標値である目標吐出流量を演算する。
【0090】
ポンプ制御指令部94cは、ポンプ目標流量演算部94bにより演算された目標吐出流量と、予め定められたポンプ指令特性とに基づいて、ポンプ制御指令値を演算する。ポンプ制御指令部94cは、演算結果に応じた電気信号であるポンプ制御指令をポンプ流量制御用の電磁弁(例えば、図2Bに示す電磁弁93a)に出力する。ポンプ指令特性は、目標吐出流量と、ポンプ流量制御用の電磁弁に対するポンプ制御指令値との関係を規定する特性であり、不揮発性メモリ94wにテーブル形式で記憶されている。
【0091】
方向制御弁目標開口演算部94dは、操作装置から出力された操作量と、予め定められた方向制御弁の目標開口特性とに基づいて、方向制御弁の目標開口面積を演算する。方向制御弁目標開口特性は、図7に示すように、操作量と方向制御弁の目標開口面積との関係を規定する特性であり、不揮発性メモリ94wにテーブル形式で記憶されている。方向制御弁目標開口特性は、操作量の増加に応じて目標開口面積が増加する特性である。なお、方向制御弁目標開口特性は、メータイン流量を制御することを目的とした開口特性ではない。
【0092】
図6に示す方向制御弁制御指令部94eは、方向制御弁目標開口演算部94dにより演算された方向制御弁の目標開口面積と、予め定められた方向制御弁指令特性とに基づいて、方向制御弁制御指令値を演算する。方向制御弁制御指令部94eは、演算結果に応じた電気信号である方向制御弁制御指令を方向制御弁用の電磁弁(例えば、図2Bに示す電磁弁93b,93c)に出力する。方向制御弁指令特性は、方向制御弁の目標開口面積と、方向制御弁用の電磁弁に対する方向制御弁制御指令値との関係を規定する特性であり、不揮発性メモリ94wにテーブル形式で記憶されている。
【0093】
基準開口演算部94fは、アクチュエータ目標流量演算部94aにより演算された目標供給流量と、ポンプ圧センサ81により検出されたポンプ圧と、アクチュエータ圧センサ82により検出されたアクチュエータ圧とに基づいて、流量制御弁の基準開口面積を演算する。
【0094】
基準開口演算部94fは、以下の式(7)により、流量制御弁の基準開口面積a_BaseFcvを演算する。
a_BaseFcv=Q_TgtAct/(Cd×√(2(Pp-Pa)/ρ)) ・・・(7)
Q_TgtActは、アクチュエータ目標流量演算部94aにより演算された油圧アクチュエータの目標供給流量である。Ppは、ポンプ圧センサ81により検出されたポンプ圧である。Paは、アクチュエータ圧センサ82により検出されたアクチュエータ圧である。Cdは、流量制御弁の流量係数であり、ρは作動油の密度である。流量係数Cd及びρは、不揮発性メモリ94wに記憶されている。
【0095】
圧力状態判断部94gは、ポンプ圧センサ81により検出されたポンプ圧Ppとアクチュエータ圧センサ82により検出されたアクチュエータ圧Paとに基づいて、パイロットスプール弁33の前後差圧ΔPの状態を判断する。圧力状態判断部94gは、ポンプ圧センサ81により検出されたポンプ圧Ppからアクチュエータ圧センサ82により検出されたアクチュエータ圧Paを減算することにより、パイロットスプール弁33の前後差圧ΔPを演算する(ΔP=Pp-Pa)。圧力状態判断部94gは、ポンプ圧Ppがアクチュエータ圧Paよりも高い場合には、流量制御弁26の圧力状態は通常圧力状態であると判断する。圧力状態判断部94gは、ポンプ圧Ppがアクチュエータ圧Paよりも低い場合には、流量制御弁26の圧力状態は差圧逆転状態と判断する。
【0096】
圧力状態判断部94gは、差圧検出装置80の検出結果に基づいて、ポンプ圧Ppとアクチュエータ圧Paの差圧を監視している。また、圧力状態判断部94gは、差圧検出装置80の検出結果に基づいて、通常圧力状態から差圧逆転状態に遷移したか否か、及び、差圧逆転状態から通常圧力状態に遷移したか否かを監視している。
【0097】
補助開口演算部94hは、圧力状態判断部94gによる圧力状態の判断結果と予め定められた補助開口特性とに基づいて、流量制御弁の補助開口面積を演算する。図8に示すように、補助開口特性は、パイロットスプール弁33の前後差圧ΔPと、補助開口面積との関係を規定する特性であり、不揮発性メモリ94wにテーブル形式で記憶されている。例えば、補助開口演算部94hは、圧力状態判断部94gによって、流量制御弁の圧力状態が通常圧力状態であると判断されている場合、すなわち前後差圧ΔPが0以上である場合には、補助開口面積を0(ゼロ)として演算する。補助開口演算部94hは、圧力状態判断部94gによって、流量制御弁26の圧力状態が差圧逆転状態であると判断されている場合、すなわち前後差圧ΔPが負の値である場合には、補助開口面積を所定値aPS1として演算する。
【0098】
所定値aPS1は、ポペット弁32を全閉にすることができる程度の大きさであればよい。所定値aPS1が大きすぎると、差圧逆転状態から通常圧力状態に復帰したときに、ポペット弁32が急に開くことにより、ショックが発生するおそれがある。このため、所定値aPS1は、可能な限り小さい値とすることが好ましい。
【0099】
図6に示す流量制御弁目標開口決定部94iは、基準開口演算部94fにより演算された流量制御弁の基準開口面積と補助開口演算部94hにより演算された流量制御弁の補助開口面積とに基づいて、流量制御弁の目標開口面積を決定する。流量制御弁目標開口決定部94iは、流量制御弁の基準開口面積と流量制御弁の補助開口面積のうちの大きい方を流量制御弁の目標開口面積として決定する。なお、流量制御弁の目標開口面積とは、ポペット弁32とパイロットスプール弁33の合成開口面積の目標値のことを指す。
【0100】
流量制御弁制御指令部94jは、流量制御弁目標開口決定部94iにより決定された流量制御弁の目標開口面積と、予め定められた流量制御弁指令特性とに基づいて、流量制御弁制御指令値を演算する。流量制御弁制御指令部94jは、演算結果に応じた電気信号である流量制御弁制御指令を流量制御弁用の電磁弁(例えば、図2Bに示す電磁弁93d)に出力する。流量制御弁指令特性は、流量制御弁の目標開口面積と、流量制御弁用の電磁弁に対する流量制御弁制御指令値との関係を規定する特性であり、不揮発性メモリ94wにテーブル形式で記憶されている。
【0101】
ブリードオフ弁目標開口演算部94kは、操作装置から出力された操作量と、予め定められたブリードオフ弁目標開口特性とに基づいて、ブリードオフ弁の目標開口面積を演算する。ブリードオフ弁目標開口特性は、図9に示すように、操作量とブリードオフ弁の目標開口面積との関係を規定する特性であり、不揮発性メモリ94wにテーブル形式で記憶されている。ブリードオフ目標開口特性は、操作量の増加に応じて目標開口面積が減少し、操作量が所定値以上になると0(ゼロ)になる特性である。
【0102】
ブリードオフ弁制御指令部94lは、ブリードオフ弁目標開口演算部94kにより演算されたブリードオフ弁目標開口面積と、予め定められたブリードオフ弁指令特性とに基づいて、ブリードオフ弁制御指令値を演算する。ブリードオフ弁制御指令部94lは、演算結果に応じた電気信号であるブリードオフ弁制御指令をブリードオフ弁の電磁弁(例えば、図2Bに示す電磁弁93e)に出力する。ブリードオフ弁指令特性は、ブリードオフ弁の目標開口面積と、ブリードオフ弁用の電磁弁に対するブリードオフ弁制御指令値との関係を規定する特性であり、不揮発性メモリ94wにテーブル形式で記憶されている
図10Aを参照して、コントローラユニット94により実行される油圧ポンプの制御の一例について説明する。図10Aのフローチャートに示す処理は、図示しないイグニッションスイッチがオンされることにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0103】
図10Aに示すように、ステップS101において、コントローラユニット94は、操作装置が操作されているか否かを判定する。ステップS101において、複数の操作装置の少なくとも一つが操作されていると判定されると、処理がステップS102へ進む。ステップS101において、複数の操作装置のいずれも操作されていないと判定されると、本制御周期における図10Aのフローチャートに示す処理が終了する。
【0104】
ステップS102において、コントローラユニット94は、操作装置から出力された操作量と油圧アクチュエータの目標流量特性に基づいて、各油圧アクチュエータの目標供給流量Q_TgtAct(i)を演算し、ステップS103へ進む。iは、油圧アクチュエータを識別する記号である。
【0105】
例えば、コントローラユニット94は、ブーム204の操作装置95aから出力された操作量と、ブームシリンダ204aの目標流量特性とに基づいて、ブームシリンダ204aの目標供給流量Q_TgtAct(1)を演算する。また、コントローラユニット94は、アーム205の操作装置95bから出力された操作量と、アームシリンダ205aの目標流量特性とに基づいて、アームシリンダ205aの目標供給流量Q_TgtAct(2)を演算する。
【0106】
ステップS103において、コントローラユニット94は、ステップS102で演算された油圧アクチュエータの目標供給流量Q_TgtAct(i)に基づいて、各油圧ポンプの目標吐出流量Q_TgtPmpを演算し、ステップS104へ進む。例えば、コントローラユニット94は、第1油圧ポンプ1の吐出ライン41に接続される各油圧アクチュエータの目標供給流量の総和に基づいて、第1油圧ポンプ1の目標吐出流量を演算する。コントローラユニット94は、第2油圧ポンプ2の吐出ライン51に接続される各油圧アクチュエータの目標供給流量の総和に基づいて、第2油圧ポンプ2の目標吐出流量を演算する。コントローラユニット94は、第3油圧ポンプ3の吐出ライン61に接続される各油圧アクチュエータの目標供給流量の総和に基づいて、第3油圧ポンプ3の目標吐出流量を演算する。
【0107】
なお、油圧ポンプの目標吐出流量Q_TgtPmpは、ブリードオフ流量やドレン流量などを考慮して演算されることが好ましい。
【0108】
ステップS104において、コントローラユニット94は、ステップS103で演算された油圧ポンプの目標吐出流量Q_TgtPmpに基づいて、ポンプ制御指令を生成し、ポンプ流量制御用の電磁弁に出力して、本制御周期における図10Aのフローチャートに示す処理を終了する。
【0109】
例えば、コントローラユニット94から第2油圧ポンプ2の流量制御用の電磁弁93aにポンプ制御指令が出力されると、電磁弁93aはポンプ制御指令圧を生成し、第2油圧ポンプ2のレギュレータの指令圧室2aに出力する。指令圧室2aにポンプ制御指令圧が入力されると、第2油圧ポンプ2の吐出容量(傾転角)が変化し、第2油圧ポンプ2の吐出流量が目標吐出流量Q_TgtPmpとなるように制御される。
【0110】
図10Bを参照して、コントローラユニット94により実行される方向制御弁の制御の一例について説明する。各方向制御弁6~16の制御の内容は同様であるので、以下では、アームシリンダ205aに対する作動油の流れ方向を制御する方向制御弁11の制御の内容を代表して説明する。図10Bのフローチャートに示す処理は、図示しないイグニッションスイッチがオンされることにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0111】
図10Bに示すように、ステップS201において、コントローラユニット94は、操作装置95bが操作されているか否かを判定する。ステップS201において、操作装置95bが操作されていると判定されると、処理がステップS202へ進む。ステップS201において、操作装置95bが操作されていないと判定されると、本制御周期における図10Bのフローチャートに示す処理が終了する。
【0112】
ステップS202において、コントローラユニット94は、操作装置95bから出力された操作量と方向制御弁11の目標開口特性(図7参照)とに基づいて、方向制御弁11の目標開口面積a_TgtMSを演算し、ステップS203へ進む。
【0113】
ステップS203において、コントローラユニット94は、ステップS202で演算された目標開口面積a_TgtMSと、方向制御弁指令特性とに基づいて、方向制御弁制御指令を生成し、方向制御弁11用の電磁弁93b,93cに出力して、本制御周期における図10Bのフローチャートに示す処理を終了する。
【0114】
例えば、コントローラユニット94から方向制御弁11用の電磁弁93bに方向制御弁制御指令が出力されると、電磁弁93bは方向制御弁指令圧を生成し、方向制御弁11の指令圧室11aに出力する。指令圧室11aに方向制御弁指令圧が入力されると、方向制御弁11が動作し、方向制御弁11の開口面積が目標開口面積a_TgtMSとなるように制御される。
【0115】
図10Cを参照して、コントローラユニット94により実行される流量制御弁の制御の一例について説明する。各流量制御弁21~31の制御の内容は同様であるので、以下では、アームシリンダ205aに対する作動油のメータイン流量を制御する流量制御弁26の制御の内容を代表して説明する。図10Cのフローチャートに示す処理は、図示しないイグニッションスイッチがオンされることにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0116】
図10Cに示すように、ステップS301において、コントローラユニット94は、操作装置95bが操作されているか否かを判定する。ステップS301において、操作装置95bが操作されていると判定されると、処理がステップS302へ進む。ステップS301において、操作装置95bが操作されていないと判定されると、本制御周期における図10Cのフローチャートに示す処理が終了する。
【0117】
ステップS302において、コントローラユニット94は、操作装置95bから出力された操作量とアームシリンダ205aの目標流量特性に基づいて、アームシリンダ205aの目標供給流量Q_TgtActを演算し、ステップS303及びステップS304へ進む。
【0118】
ステップS303において、コントローラユニット94は、ステップS302で演算された目標供給流量Q_TgtActと、ポンプ圧センサ81により検出されたポンプ圧Ppと、アクチュエータ圧センサ82により検出されたアクチュエータ圧Paと、に基づいて、式(7)により、流量制御弁26の基準開口面積a_BaseFcvを演算し、ステップS306へ進む。
【0119】
ステップS304において、コントローラユニット94は、ポンプ圧センサ81により検出されたポンプ圧Ppとアクチュエータ圧センサ82により検出されたアクチュエータ圧Paとに基づいて、流量制御弁26のパイロットスプール弁33の前後差圧ΔP(=Pp-Pa)を演算し、ステップS305へ進む。
【0120】
ステップS305において、コントローラユニット94は、ステップS304で演算された前後差圧ΔPと補助開口特性(図8参照)とに基づいて、流量制御弁26の補助開口面積a_AuxFcvを演算し、ステップS306へ進む。
【0121】
ステップS303及びステップS305の双方の処理が終了すると、ステップS306の最大値選択処理が実行される。ステップS306において、コントローラユニット94は、ステップS303で演算された基準開口面積a_BaseFcvと、ステップS305で演算された補助開口面積a_AuxFcvのうち大きい方を選択し、選択した方を流量制御弁26の目標開口面積a_TgtFcvとして決定する。ステップS306の最大値選択処理が終了すると、処理がステップS307へ進む。
【0122】
ステップS307において、コントローラユニット94は、ステップS306で決定された目標開口面積a_TgtFcvと、流量制御弁指令特性とに基づいて、流量制御弁制御指令を生成し、流量制御弁26用の電磁弁93dに出力して、本制御周期における図10Cのフローチャートに示す処理を終了する。
【0123】
コントローラユニット94から流量制御弁26用の電磁弁93dに流量制御弁制御指令が出力されると、電磁弁93dは流量制御弁指令圧を生成し、流量制御弁26の指令圧室33aに出力する。指令圧室33aに流量制御弁指令圧が入力されると、流量制御弁26のパイロットスプール弁33が動作し、流量制御弁26の開口面積(ポペット弁32とパイロットスプール弁33の合成開口面積)が目標開口面積a_TgtFcvとなるように制御される。
【0124】
図10Dを参照して、コントローラユニット94により実行されるブリードオフ弁の制御の一例について説明する。各ブリードオフ弁35~37の制御の内容は同様であるので、以下では、第2油圧ポンプ2の吐出ライン51に設けられるブリードオフ弁36の制御の内容を代表して説明する。図10Dのフローチャートに示す処理は、図示しないイグニッションスイッチがオンされることにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0125】
図10Dに示すように、ステップS401において、コントローラユニット94は、第2油圧ポンプ2の吐出ライン51に設けられた油圧アクチュエータの操作装置が操作されているか否かを判定する。ステップS401において、各操作装置の少なくとも一つが操作されていると判定されると、処理がステップS402へ進む。ステップS401において、各操作装置のいずれも操作されていないと判定されると、本制御周期における図10Dのフローチャートに示す処理が終了する。
【0126】
ステップS402において、コントローラユニット94は、操作装置から出力された操作量とブリードオフ弁36の目標開口特性(図9参照)とに基づいて、ブリードオフ弁36の目標開口面積a_TgtBovを演算し、ステップS403へ進む。
【0127】
ステップS403において、コントローラユニット94は、ステップS402で演算された目標開口面積a_TgtBovと、ブリードオフ弁指令特性とに基づいて、ブリードオフ弁制御指令を生成し、ブリードオフ弁36用の電磁弁93eに出力して、本制御周期における図10Bのフローチャートに示す処理を終了する。
【0128】
コントローラユニット94からブリードオフ弁36用の電磁弁93eにブリードオフ弁制御指令が出力されると、電磁弁93eはブリードオフ弁指令圧を生成し、ブリードオフ弁36の指令圧室36aに出力する。指令圧室36aにブリードオフ弁指令圧が入力されると、ブリードオフ弁36が動作し、ブリードオフ弁36の開口面積が目標開口面積a_TgtBovとなるように制御される。
【0129】
図11を参照して、本実施形態に係る油圧ショベル901の主な動作と作用効果について説明する。図11は、本実施形態に係る油圧ショベル901の各パラメータ(操作量、油圧アクチュエータへの目標供給流量、圧力、パイロットスプール弁33の前後差圧ΔP、パイロットスプール弁33の開口面積、及び、ポペット弁32の開口面積)の時系列変化を示す図である。以下では、ブーム204とアーム205の複合動作が行われた場合の第3ブーム用流量制御弁30、第2ブーム用流量制御弁25、及び第1アーム用流量制御弁26の動作の一例について説明する。
【0130】
図11(a)~(f)の横軸は、操作開始(時点T1)からの時間を示している。図11(a)の縦軸は操作装置の操作量を示している。図11(a)において、実線はブーム204の操作装置95aの操作量LBmを示し、破線はアーム205の操作装置95bの操作量LAmを示している。
【0131】
図11(b)の縦軸は、コントローラユニット94により演算された目標供給流量を示している。図11(b)において、実線は、第3ブーム用流量制御弁30及び第3ブーム用方向制御弁15を通じてブームシリンダ204aに供給される作動油の流量の目標値QtBm3を示している。図11(b)において、一点鎖線は、第2ブーム用流量制御弁25及び第2ブーム用方向制御弁10を通じてブームシリンダ204aに供給される作動油の流量の目標値QtBm2を示している。図11(b)において、破線は、第1アーム用流量制御弁26及び第1アーム用方向制御弁11を通じてアームシリンダ205aに供給される作動油の流量の目標値QtAm1を示している。
【0132】
図11(c)の縦軸は、圧力を示している。図11(c)において、実線は、ブームシリンダ204aのアクチュエータ圧PaBmを示し、破線は、アームシリンダ205aのアクチュエータ圧PaAmを示している。図11(c)において、一点鎖線は、第3油圧ポンプ3のポンプ圧Pp3を示し、点線は、第2油圧ポンプ2のポンプ圧Pp2を示している。
【0133】
図11(d)の縦軸は、パイロットスプール弁33の前後差圧ΔPを示している。図11(d)において、実線は、第3ブーム用流量制御弁30のパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPBm3を示し、一点鎖線は、第2ブーム用流量制御弁25のパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPBm2を示し、破線は、第1アーム用流量制御弁26のパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPAm1を示している。
【0134】
図11(e)の縦軸は、パイロットスプール弁33の開口面積aPsを示している。図11(e)において、実線は、第3ブーム用流量制御弁30のパイロットスプール弁33の開口面積aPSBm3を示し、一点鎖線は、第2ブーム用流量制御弁25のパイロットスプール弁33の開口面積aPSBm2を示し、破線は、第1アーム用流量制御弁26のパイロットスプール弁33の開口面積aPSAm1を示している。
【0135】
図11(f)の縦軸は、ポペット弁32の開口面積aMPを示している。図11(e)において、実線は、第3ブーム用流量制御弁30のポペット弁32の開口面積aMPBm3を示し、一点鎖線は、第2ブーム用流量制御弁25のポペット弁32の開口面積aMPBm2を示し、破線は、第1アーム用流量制御弁26のポペット弁32の開口面積aMPAm1を示している。
【0136】
時点T1において、オペレータがブーム用の操作装置95aの操作を開始する。図11(a)に示すように、ブーム用の操作装置95aの操作量LBmは、時点T1から時点T2まで増加し、時点T2以降は最大値で維持されている。コントローラユニット94は操作装置95aの操作量LBmに応じた目標供給流量を演算する。コントローラユニット94は、第2油圧ポンプ2及び第3油圧ポンプ3に対応する電磁弁に目標供給流量に応じたポンプ制御指令を出力するとともに、第2ブーム用流量制御弁25及び第3ブーム用流量制御弁30に対応する電磁弁に目標供給流量に応じた流量制御弁制御指令を出力する。これにより、第2油圧ポンプ2の指令圧室2a及び第3油圧ポンプ3の指令圧室3aにポンプ制御指令圧が入力されるとともに、第2ブーム用流量制御弁25の指令圧室33a及び第3ブーム用流量制御弁30の指令圧室33aに流量制御弁指令圧が入力される。
【0137】
図11(b)、図11(e)及び図11(f)に示すように、目標供給流量QtBm3,QtBm2、パイロットスプール弁33の開口面積aPSBm3,aPSBm2及びポペット弁32の開口面積aMPBm3,aMPBm2は、時点T1から時点T2まで増加し、時点T2から時点T3まで最大値で維持されている。
【0138】
なお、図示しないが、コントローラユニット94は、第2油圧ポンプ2の吐出ライン51に設けられたブリードオフ弁36及び第3油圧ポンプ3の吐出ライン61に設けられたブリードオフ弁37に対応する電磁弁にブリードオフ弁制御指令を出力する。ブリードオフ弁36,37は、その開口面積が操作量の増加に応じて減少し、時点T1から時点T2の間で全閉となる。また、コントローラユニット94は、第2ブーム用方向制御弁10及び第3ブーム用方向制御弁15に対応する電磁弁に方向制御弁制御指令を出力する。方向制御弁10,15は、その開口面積が操作量の増加に応じて増加し、時点T1から時点T2の間で全開となる。
【0139】
図11(c)に示すように、第2油圧ポンプ2及び第3油圧ポンプ3から吐出された圧油がブームシリンダ204aへ流入するため、時点T1から時点T2にかけて、ポンプ圧Pp2,Pp3及びブームシリンダ204aのアクチュエータ圧PaBmが上昇する。また、図11(d)に示すように、時点T1から時点T2にかけて、第1アーム用流量制御弁26のパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPAm1も上昇する。
【0140】
時点T2から時点T3にかけて、ポンプ圧Pp3,Pp2及びアクチュエータ圧PaBmは最大値に維持されている。
【0141】
時点T3において、オペレータがアーム用の操作装置95bの操作を開始する。図11(a)に示すように、アーム用の操作装置95bの操作量は、時点T3から時点T4まで増加し、時点T4以降は最大値で維持されている。コントローラユニット94は操作装置95bの操作量Lamに応じた目標供給流量を演算する。
【0142】
ブーム204の単独操作からブーム204とアーム205の複合操作に移行した場合に、コントローラユニット94は、第2油圧ポンプ2の吐出ライン51に接続されるアーム205の動作を優先させるために、第2油圧ポンプ2から吐出される作動油の供給先を、ブームシリンダ204aからアームシリンダ205aに切り替える。
【0143】
具体的には、コントローラユニット94は、時点T3から時点T4にかけて、操作装置95bの操作量Lamの増加に応じて第2ブーム用流量制御弁25を通じてブームシリンダ204aに供給される作動油の流量の目標値(目標供給流量)QtBm2を減少させる。また、コントローラユニット94は、時点T3から時点T4にかけて、操作装置95bの操作量Lamの増加に応じて第1アーム用流量制御弁26を通じてアームシリンダ205aに供給される作動油の流量(目標供給流量)QtAm1を増加させる。
【0144】
したがって、コントローラユニット94は、操作装置95bの操作量Lamの増加に応じて第1アーム用流量制御弁26の基準開口面積を増加させるとともに、第2ブーム用流量制御弁25の基準開口面積を減少させる。
【0145】
コントローラユニット94は、第2ブーム用流量制御弁25及び第1アーム用流量制御弁26に対応する電磁弁に目標供給流量に応じた流量制御弁制御指令を出力する。これにより、第2ブーム用流量制御弁25の指令圧室33a及び第1アーム用流量制御弁26の指令圧室33aに流量制御弁指令圧が入力される。
【0146】
図11(b)、図11(e)及び図11(f)に示すように、目標供給流量QtAm1、パイロットスプール弁33の開口面積aPSAm1及びポペット弁32の開口面積aMPAm1は、時点T3から時点T4まで増加し、時点T4以降は最大値で維持されている。一方、目標供給流量QtBm2、パイロットスプール弁33の開口面積aPsBm2及びポペット弁32の開口面積aMPBm2は、時点T3から時点T4まで減少し、時点T4から時点T5まで0(ゼロ)で維持されている。
【0147】
図11(c)に示すように、時点T3において、第1アーム用流量制御弁26及び第1アーム用方向制御弁11を通じて、アームシリンダ205aに対する作動油の供給が開始される。時点T3において、アームシリンダ205aは停止している状態であるため、第2油圧ポンプ2の吐出ライン51とアームシリンダ205aとが連通した直後は、慣性負荷により、アームシリンダ205aのアクチュエータ圧PaAmが、ポンプ圧Pp2,P3及びブームシリンダ204aのアクチュエータ圧PaBm付近まで一時的に上昇する。
【0148】
その後、アームシリンダ205aが動き出すと、アームシリンダ205aのアクチュエータ圧PaAmは、アームシリンダ205aの負荷圧に近づく。このとき、アームシリンダ205aの負荷圧はブームシリンダ204aの負荷圧よりも小さい。また、第2油圧ポンプ2の吐出ライン51は、第2ブーム用流量制御弁25を介して、まだ、ブームシリンダ204aと連通しているため、ポンプ圧Pp2はポンプ圧Pp3やブームシリンダ204aのアクチュエータ圧PaBmと近い値となる。
【0149】
図11(d)に示すように、時点T3から時点T4にかけて、第2ブーム用流量制御弁25のパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPBm2は所定値(ほぼゼロ)に維持される。また、時点T3から第1アーム用流量制御弁26の前後差圧ΔPAm1は一時的に減少するものの、ポンプ圧Pp2の方がアームシリンダ205aのアクチュエータ圧PaAmよりも高い状態で維持されるため、前後差圧ΔPAm1は正の値で維持される。
【0150】
図11(b)に示すように、時点T4において、第2ブーム用流量制御弁25及び第2ブーム用方向制御弁10を通じてブームシリンダ204aに供給される作動油の流量の目標値QtBm2が0(ゼロ)になると、図11(e)及び図11(f)に示すように、第2ブーム用流量制御弁25のパイロットスプール弁33の開口面積aPSBm2及びポペット弁32の開口面積aMPBm2が0(ゼロ)になる。
【0151】
時点T4において、第2ブーム用流量制御弁25が全閉となったことで、第2油圧ポンプ2の吐出ライン61とブームシリンダ204aとの連通が遮断される。これにより、図11(c)に示すように、時点T4から第2油圧ポンプ2のポンプ圧Pp2が減少する。ポンプ圧P2が減少し始めたことで、第2ブーム用流量制御弁25のパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPBm2の正負が逆転する。つまり、時点T4以降、第2ブーム用流量制御弁25のパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPBm2が負の値となっている。
【0152】
ポンプ圧Pp2は、時点T5でアームシリンダ205aのアクチュエータ圧PaAmよりも小さくなる。このため、時点T5以降、第1アーム用流量制御弁26のパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPAm1が負の値となっている。
【0153】
時点T4において、コントローラユニット94は、第2ブーム用流量制御弁25のパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPBm2の正負の逆転を検出する。時点T4において、コントローラユニット94は、補助開口面積を所定値aPS1として演算する。時点T4において、基準開口面積は0(ゼロ)である。
【0154】
コントローラユニット94は、補助開口面積を目標開口面積として決定し、第2ブーム用流量制御弁25に対応する電磁弁に目標開口面積に応じた流量制御弁制御指令を出力する。これにより、第2ブーム用流量制御弁25の指令圧室33aに流量制御弁指令圧が入力され、第2ブーム用流量制御弁25のパイロットスプール弁33の開口面積が目標開口面積(補助開口面積aPS1)となるように制御される。時点T4以降、第2ブーム用流量制御弁25のパイロットスプール弁33の開口面積は補助開口面積aPS1となっている。
【0155】
第2ブーム用流量制御弁25の背圧室32eとアクチュエータ圧室32dとがパイロットスプール弁33を介して連通し、ポンプ圧Pp2よりもアクチュエータ圧PaBmが大きい状態では、背圧室32eの圧力がアクチュエータ圧室32dの圧力と同じになる。つまり、第2ブーム用流量制御弁25は、上述した第2の状態となり、第2ブーム用流量制御弁25のポペット弁32に対して閉じ方向の力が作用することで、ポペット弁32の開口は全閉となる。
【0156】
時点T5から所定時間経過した時点T6において、第2ブーム用流量制御弁25のパイロットスプール弁33は開口した状態が維持されている。つまり、時点T6では、第2の状態が維持されている。このため、第2ブーム用流量制御弁25のパイロットスプール弁33の前後差圧の大小関係が逆転している状態(PaBm>Pp2)であってもポペット弁32の開口は全閉状態に維持されている。
【0157】
図示しないが、時点T6の後、オペレータがアーム205の操作をやめると、コントローラユニット94は、第2ブーム用流量制御弁25の基準開口面積を増加させる。これにより、第2油圧ポンプ2から吐出された作動油が、再び、第2ブーム用流量制御弁25を通じてブームシリンダ204aに供給される。その結果、第2油圧ポンプ2のポンプ圧Pp2が上昇し、第2ブーム用流量制御弁25の圧力状態は、逆転差圧状態から通常圧力状態に遷移する。
【0158】
また、図示しないが、時点T6の後、ブーム204とアーム205の複合操作中に、アームシリンダ205aの負荷圧が上昇した場合には、第2油圧ポンプ2のポンプ圧Pp2が上昇するため、第2ブーム用流量制御弁25の圧力状態は、逆転差圧状態から通常圧力状態に遷移する。この場合、第2ブーム用流量制御弁25のパイロットスプール弁33は、全閉になる。
【0159】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。なお、括弧内の符号は、その構成の一例について示す。
【0160】
(1)コントローラユニット94は、操作装置(95a,95b)からの操作信号に基づいて電磁弁(93d)を制御することにより、流量制御弁(25,26,30)を制御する。コントローラユニット94は、操作装置(95a,95b)の操作量に応じて、パイロットスプール弁33の第2開口部122の開口面積が、0(ゼロ)から最大値まで変化するように、電磁弁(93d)を制御する。
【0161】
コントローラユニット94は、差圧検出装置80の検出結果(すなわち圧力センサ81,82からの検出信号)に基づいて、パイロットスプール弁33の油圧アクチュエータ側の圧力であるアクチュエータ圧Paが、パイロットスプール弁33の油圧ポンプ側の圧力であるポンプ圧Ppよりも低い状態から高い状態に遷移したか否かを監視する。コントローラユニット94は、流量制御弁(25)のアクチュエータ圧センサ82により検出されたアクチュエータ圧Paが、流量制御弁(25)のポンプ圧センサ81により検出されたポンプ圧Ppよりも低い状態から高い状態に遷移した場合には、流量制御弁(25)のパイロットスプール弁33の第2開口部122が開口するように電磁弁(流量制御弁25に対する流量制御弁指令圧を生成する電磁弁)を制御する。
【0162】
この構成によれば、コントローラユニット94が前後差圧ΔPの逆転を検知して、流量制御弁(25)のパイロットスプール弁33を開口させることで、ポペット弁32に対する閉じ方向の力を確保し、確実にポペット弁32をシート部110aに着座させることができる。これにより、逆流を生じさせることなく、駆動対象の油圧アクチュエータに正確に流量を供給し、良好な制御性および操作性を確保することができる。
【0163】
このように、本実施形態によれば、メータイン流量を高応答で制御可能であって、かつ、油圧アクチュエータ(ブームシリンダ204a、アームシリンダ205a及びバケットシリンダ206a等)から油圧ポンプ1~3の吐出ライン41,51,61への逆流を防止することのできる油圧ショベル901を提供することができる。
【0164】
(2)コントローラユニット94は、操作装置(95a)の操作量とポンプ圧センサ81及びアクチュエータ圧センサ82の検出結果に基づいて、流量制御弁(25)の基準開口面積を演算する。コントローラユニット94は、差圧検出装置80によって検出されたパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPに基づいて、流量制御弁(25)の補助開口面積を演算する。コントローラユニット94は、演算された基準開口面積及び補助開口面積のうちの大きい方を流量制御弁(25)の目標開口面積として決定する。コントローラユニット94は、決定された目標開口面積に基づいて、電磁弁(流量制御弁25に対する流量制御弁指令圧を生成する電磁弁)を制御する。
【0165】
パイロットスプール弁33の基準開口面積が0(ゼロ)であるときに、前後差圧ΔPが負の値になると、パイロットスプール弁33の第2開口部122の開口面積が、前後差圧ΔPに基づいて演算された補助開口面積となるように制御される。したがって、油圧ポンプ(2)から流量制御弁(25)を通じて油圧アクチュエータ(204a)に作動油が供給されていない状態であって、かつ流量制御弁(25)の圧力状態が差圧逆転状態(アクチュエータ圧Paがポンプ圧Ppよりも高い状態)において、コントローラユニット94は、流量制御弁(25)のパイロットスプール弁33を開口させることで、ポペット弁32を全閉にすることができる。これにより、油圧アクチュエータ(204a)から吐出ライン(51)への作動油の逆流を生じさせることなく、駆動対象の油圧アクチュエータ(205a)に対して、正確に流量を供給し、良好な制御性および操作性を確保することができる。
【0166】
(3)コントローラユニット94には、パイロットスプール弁33の前後差圧ΔPと補助開口面積との関係を規定する補助開口特性(図8参照)が記憶されている。コントローラユニット94は、ポンプ圧センサ81によって検出されるポンプ圧(油圧ポンプの吐出圧)Ppと、アクチュエータ圧センサ82によって検出されるアクチュエータ圧(油圧アクチュエータの圧力)Paとの差をパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPとして演算する。コントローラユニット94は、記憶されている補助開口特性とパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPとに基づいて、補助開口面積を演算する。
【0167】
この構成によれば、流量制御弁(25)の制御に用いられるポンプ圧センサ81とアクチュエータ圧センサ82とを差圧検出装置80として利用することができる。このため、ポンプ圧センサ81及びアクチュエータ圧センサ82とは別のセンサを設ける必要がない。その結果、油圧ショベル901の部品点数が増加することを防止できる。
【0168】
<第2実施形態>
図12及び図13を参照して、本発明の第2実施形態に係る油圧ショベル901について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照符号を付し、相違点を主に説明する。第1実施形態では、コントローラユニット94が、ポンプ圧Ppとアクチュエータ圧Paとの差をパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPとして演算する例について説明した。これに対して、第2実施形態では、コントローラユニット94Aが、ポペット弁32の背圧室32eの圧力である背圧Pcとアクチュエータ圧Paとの差をパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPとして演算する。以下、第2実施形態に係る油圧ショベル901の構成及びコントローラユニット94Aの機能について詳しく説明する。
【0169】
図12は、第2実施形態に係る流量制御弁26に設けられる圧力センサ82,83Aについて示す図である。第2実施形態に係る油圧ショベル901は、第1実施形態で説明した構成と同様の構成を有している。第2実施形態に係る油圧ショベル901は、第1実施形態で説明した構成に加え、流量制御弁26のポペット弁32の背圧室32eの圧力である背圧Pcを検出し、検出信号をコントローラユニット94Aに出力する圧力センサ(以下、背圧センサとも記す)83Aを備えている。背圧センサ83Aは、背圧室32eとパイロットスプール弁33とを接続する油路77に設けられている。なお、流量制御弁21~25,27~31にも、同様に背圧センサ83Aが設けられている。
【0170】
図13は、第2実施形態に係るコントローラユニット94Aの機能ブロック図である。図13に示すように、第2実施形態に係るコントローラユニット94Aは、第1実施形態で説明した圧力状態判断部94g及び補助開口演算部94hに代えて、圧力状態判断部94gA及び補助開口演算部94hAとしての機能を有する。第2実施形態において、パイロットスプール弁33の前後差圧ΔPを検出する差圧検出装置80Aは、アクチュエータ圧センサ82と、パイロットスプール弁33の油圧ポンプ側の圧力である背圧室32eの圧力を検出する背圧センサ83Aと、によって構成される。
【0171】
圧力状態判断部94gAは、背圧センサ83Aにより検出された背圧Pcとアクチュエータ圧センサ82により検出されたアクチュエータ圧Paとに基づいて、パイロットスプール弁33の前後差圧ΔPの状態を判断する。圧力状態判断部94gAは、背圧センサ83Aにより検出された背圧Pcからアクチュエータ圧センサ82により検出されたアクチュエータ圧Paを減算することにより、前後差圧ΔPを演算する(ΔP=Pc-Pa)。圧力状態判断部94gAは、背圧Pcがアクチュエータ圧Paよりも高い場合には、流量制御弁26の圧力状態は通常圧力状態であると判断する。圧力状態判断部94gは、背圧Pcがアクチュエータ圧Paよりも低い場合には、流量制御弁26の圧力状態は差圧逆転状態と判断する。
【0172】
補助開口演算部94hAは、圧力状態判断部94gAによる圧力状態の判断結果と予め定められた補助開口特性(図8参照)とに基づいて、流量制御弁の補助開口面積を演算する。補助開口特性は、パイロットスプール弁33の前後差圧ΔPと、補助開口面積との関係を規定する特性であり、不揮発性メモリ94wにテーブル形式で記憶されている。例えば、補助開口演算部94hAは、圧力状態判断部94gによって、流量制御弁の圧力状態が通常圧力状態であると判断されている場合、すなわち前後差圧ΔPが0以上である場合には、補助開口面積を0(ゼロ)として演算する。補助開口演算部94hは、圧力状態判断部94gによって、流量制御弁26の圧力状態が差圧逆転状態であると判断されている場合、すなわち前後差圧ΔPが負の値である場合には、補助開口面積を所定値aPS1として演算する。
【0173】
第1実施形態では、図11(e)に示すように、時点T4以降、パイロットスプール弁33の開口面積が所定値aPS1に維持されている。これに対して、本第2実施形態では、時点T4において、パイロットスプール弁33が開かれることにより、背圧Pcとアクチュエータ圧Paとが同じになりポペット弁32が全閉になるのは第1実施形態と同様である。しかしながら、本第2実施形態では、その後、コントローラユニット94が、背圧Pcとアクチュエータ圧Paとの差圧が0(ゼロ)であるため、補助開口面積を0(ゼロ)として演算することが第1実施形態と異なっている。第2実施形態では、ポペット弁32が全閉になった後、コントローラユニット94が、パイロットスプール弁33の目標開口面積を0(ゼロ)として決定する。コントローラユニット94は、決定した目標開口面積に応じた流量制御弁制御指令を出力する。流量制御弁制御指令が入力された電磁弁は、流量制御弁指令圧をパイロットスプール弁33の指令圧室33aに出力する。その結果、パイロットスプール弁33の開口が全閉となる。
【0174】
このような第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果に加え、次の作用効果を得ることができる。
【0175】
(4)差圧検出装置80Aは、ポペット弁32の背圧室32eの圧力を検出する背圧センサ83Aと、アクチュエータ圧センサ82と、を有している。コントローラユニット94Aは、背圧センサ83Aによって検出される背圧(背圧室32eの圧力)Pcと、アクチュエータ圧センサ82によって検出されるアクチュエータ圧(油圧アクチュエータの圧力)との差をパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPとして演算する。コントローラユニット94は、記憶されている補助開口特性(図8参照)とパイロットスプール弁33の前後差圧ΔPとに基づいて、補助開口面積を演算する。
【0176】
この構成によれば、流量制御弁の圧力状態が差圧逆転状態になった場合に、パイロットスプール弁33を開いてポペット弁32を全閉とした後、パイロットスプール弁33を全閉にすることができる。つまり、流量制御弁を、本来要求されている状態にすることができる。これにより、再び、流量制御弁によって油圧アクチュエータに供給する流量が制御される場合に、流量制御弁をスムーズに動作させることができる。したがって、本第2実施形態によれば、第1実施形態よりも良好な制御性及び操作性を確保することができる。
【0177】
<第3実施形態>
図14図16を参照して、本発明の第3実施形態に係る油圧ショベル901について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照符号を付し、相違点を主に説明する。第3実施形態に係るコントローラユニット94Bは、流量制御弁の圧力状態が通常圧力状態から差圧逆転状態に遷移してから所定時間が経過すると、パイロットスプール弁33を全閉に制御する。以下、第3実施形態に係る油圧ショベル901のコントローラユニット94Bの機能について詳しく説明する。
【0178】
図14は、第3実施形態に係るコントローラユニット94Bの機能ブロック図である。図14に示すように、第3実施形態に係るコントローラユニット94Bは、開口時間計測部94mB及び補助開口補正部94nBとしての機能をさらに有している。
【0179】
補助開口演算部94hは、第1実施形態と同様、圧力状態判断部94gによる圧力状態の判断結果に基づいて、流量制御弁の補助開口面積を演算する。
【0180】
開口時間計測部94mBは、アクチュエータ圧Paがポンプ圧Ppよりも低い通常圧力状態から高い差圧逆転状態に遷移してからの時間を計測する。アクチュエータ圧Paがポンプ圧Ppよりも低い通常圧力状態から高い差圧逆転状態に遷移するとパイロットスプール弁33が開口されるため、以下では、開口時間計測部94mBが計測する時間を開口時間Toとも記す。本実施形態では、開口時間計測部94mBは、補助開口演算部94hにより演算された補助開口面積が0(ゼロ)から0(ゼロ)よりも大きい値(所定値aPS1)に変化したタイミングで開口時間Toの計測を開始する。なお、開口時間計測部94mBは、圧力状態判断部94gによって演算された前後差圧ΔPが、0(ゼロ)以上の値から0(ゼロ)未満の値になったタイミングで開口時間Toの計測を開始してもよい。
【0181】
補助開口補正部94nBは、開口時間計測部94mBにより計測された開口時間Toと予め定められた補正特性とに基づいて、補正係数を演算する。補正特性は、図15に示すように、開口時間Toと補正係数Ccとの関係を規定する特性であり、不揮発性メモリ94wにテーブル形式で記憶されている。補正特性は、開口時間Toが0(ゼロ)から時間閾値αまでは補正係数Ccが1であり、開口時間Toが時間閾値α以上では補正係数Ccが0(ゼロ)になる特性である。なお、時間閾値αは設計者によって任意に設定される値である。
【0182】
補助開口補正部94nBは、演算した補正係数Ccを補助開口演算部94hにより演算された補助開口面積に乗算することにより、補助開口面積の補正を行う。
【0183】
図16を参照して、コントローラユニット94Bにより実行される流量制御弁の制御の一例について説明する。なお、各流量制御弁21~31の制御の内容は同様であるので、以下では、アームシリンダ205aに対する作動油のメータイン流量を制御する流量制御弁26の制御の内容を代表して説明する。
【0184】
図16は、図10Cと同様の図であり、第3実施形態に係るコントローラユニット94Bにより実行される流量制御弁の制御の処理の流れについて示すフローチャートである。図16のフローチャートでは、図10CのフローチャートのステップS305の処理とステップS306の処理の間にステップS310B,S311B,S312B,S313Bの処理が追加されている。
【0185】
図16に示すように、ステップS305において、コントローラユニット94Bは、ステップS304で演算された前後差圧ΔPと補助開口特性(図8参照)とに基づいて、流量制御弁26の補助開口面積a_AuxFcvを演算し、ステップS310Bへ進む。
【0186】
ステップS310Bにおいて、コントローラユニット94Bは、ステップS305で演算された補助開口面積a_AuxFcvが0(ゼロ)よりも大きいか否かを判定する。ステップS310Bにおいて、補助開口面積a_AuxFcvが0(ゼロ)よりも大きいと判定されると処理がステップS311Bへ進む。ステップS310Bにおいて、補助開口面積a_AuxFcvが0以下であると判定されると処理がステップS306へ進む。
【0187】
ステップS311Bにおいて、コントローラユニット94Bは、開口時間Toの計測を行って、ステップS312Bへ進む。つまり、コントローラユニット94Bは、ステップS305で演算された補助開口面積a_AuxFcvが、0(ゼロ)から0(ゼロ)よりも大きい値になったタイミングから開口時間Toの計測を開始する(ステップS310BでYes→S311B)。その後、補助開口面積a_AuxFcvが0(ゼロ)よりも大きい状態が維持されている場合には、開口時間Toに制御周期を加算することにより、開口時間Toの計測を行う。
【0188】
ステップS312Bにおいて、コントローラユニット94Bは、ステップ311Bで計測された開口時間Toと補正特性(図15参照)に基づいて、補正係数Ccを演算し、ステップS313Bへ進む。ステップS313Bにおいて、コントローラユニット94Bは、ステップS305で演算された補助開口面積a_AuxFcvにステップS312Bで演算された補正係数Ccを乗算することにより、補助開口面積a_AuxFcvを補正する。これにより、開口時間Toが時間閾値αに達すると、補助開口面積a_AuxFcvが0(ゼロ)に補正される。ステップS313Bの補正処理が終了すると、処理がステップS306へ進む。
【0189】
第1実施形態では、図11(e)に示すように、時点T4以降、パイロットスプール弁33の開口面積が所定値aPS1に維持されている。これに対して、本第3実施形態では、時点T4において、パイロットスプール弁33が開かれることにより、背圧Pcとアクチュエータ圧Paとが同じになりポペット弁32が全閉になるのは第1実施形態と同様である。しかしながら、本第3実施形態では、パイロットスプール弁33が開かれてからの時間(開口時間)Toが時間閾値αに達すると、コントローラユニット94Bが補助開口面積を0(ゼロ)として演算することが第1実施形態と異なっている。第3実施形態では、ポペット弁32が全閉になった後、コントローラユニット94が、パイロットスプール弁33の目標開口面積を0(ゼロ)として決定する。コントローラユニット94は、決定した目標開口面積に応じた流量制御弁制御指令を出力する。流量制御弁制御指令が入力された電磁弁は、流量制御弁指令圧をパイロットスプール弁33の指令圧室33aに出力する。その結果、パイロットスプール弁33の開口が全閉となる。
【0190】
このような第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果に加え、次の作用効果を得ることができる。
【0191】
(5)コントローラユニット94は、アクチュエータ圧Paがポンプ圧Ppよりも低い状態から高い状態に遷移してからの時間Toを計測する。コントローラユニット94は、計測された時間Toが予め定められた時間閾値αに達した場合に、流量制御弁の補助開口面積を小さくする。なお、本実施形態では、時間Toが時間閾値αに達すると、補助開口面積を0(ゼロ)にする例について説明したが、補助開口面積を0(ゼロ)よりも大きな値にしてもよい。
【0192】
この構成によれば、第2実施形態と同様、流量制御弁の圧力状態が差圧逆転状態になった場合に、パイロットスプール弁33を開いてポペット弁32を全閉とした後、パイロットスプール弁33を全閉にすることができる。つまり、流量制御弁を、本来要求されている状態にすることができる。これにより、再び、流量制御弁によって油圧アクチュエータに供給する流量が制御される場合に、流量制御弁をスムーズに動作させることができる。したがって、本第3実施形態によれば、第1実施形態よりも良好な制御性及び操作性を確保することができる。さらに、本第3実施形態によれば、第2実施形態のように、背圧センサ83Aを設ける必要がない。このため、第3実施形態では、第2実施形態に比べて、油圧駆動装置902を簡素な構成とすることができる。
【0193】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0194】
<変形例1>
第3実施形態では、コントローラユニット94が補正係数Ccを演算し、補助開口面積a_AuxFcvに乗算する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。図17に示すように、コントローラユニット94は、流量制御弁の圧力状態を監視し、流量制御弁の圧力状態が通常圧力状態から差圧逆転状態に遷移してからの時間Toに応じて補助開口面積を演算してもよい。
【0195】
<変形例2>
上記実施形態では、ブーム204の単独操作からブーム204とアーム205の複合操作に移行したことに起因して、第2ブーム用流量制御弁25の圧力状態が通常圧力状態から差圧逆転状態に遷移した場合に、第2ブーム用流量制御弁25のパイロットスプール弁33を開口させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。同じ油圧ポンプの吐出ラインに接続される複数の油圧アクチュエータを複合動作した場合にも同様の制御が行われる。
【0196】
例えば、ブーム204の単独操作からブーム204と旋回体202の複合操作に移行した場合に、コントローラユニット94は、第3油圧ポンプ3の吐出ライン61に接続される旋回モータ211の動作を優先させるために、第3ブーム用流量制御弁30を通じてブームシリンダ204aに供給される作動油の流量を減少させる。その結果、第3ブーム用流量制御弁30の圧力状態が通常圧力状態から差圧逆転状態に遷移した場合には、コントローラユニット94は、第3ブーム用流量制御弁30のパイロットスプール弁33を開口させる。これにより、ブームシリンダ204aから第3ブーム用流量制御弁30を通じて吐出ライン61に作動油が逆流することを防止できる。
【0197】
<変形例3>
第1実施形態及び第3実施形態では、差圧検出装置80が、ポンプ圧センサ81とアクチュエータ圧センサ82とによって構成される例について説明し、第2実施形態では、差圧検出装置80Aが、背圧センサ83Aとアクチュエータ圧センサ82とによって構成される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1実施形態及び第3実施形態において、ポンプ通路54Pとアクチュエータ通路54Aとを連通する通路に、単一の差圧検出装置(差圧センサ)が設けられていてもよい。また、第2実施形態において、背圧室32eとアクチュエータ通路54Aとを連通する通路に、単一の差圧検出装置(差圧センサ)が設けられていてもよい。
【0198】
<変形例4>
また、上述した実施形態では、原動機としてエンジンを例に挙げて説明したが、原動機はエンジンに限られず、電動モータや燃料電池等を原動機としても良い。また、これらを組み合わせたものを原動機としても良い。
【0199】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0200】
1…第1油圧ポンプ(油圧ポンプ)、1a…指令圧室、2…第2油圧ポンプ(油圧ポンプ)、2a…指令圧室、3…第3油圧ポンプ(油圧ポンプ)、3a…指令圧室、6~16…方向制御弁、21~31…流量制御弁、32…ポペット弁、32a…ポペット(弁体)、32b…連通溝、32c…ポンプ圧室、32d…アクチュエータ圧室、32e…背圧室(圧力室)、32f…収容孔、33…パイロットスプール弁、33a…指令圧室、41…吐出ライン、42,44,46,48…油路、51…吐出ライン、52,54,56,58…油路、54A…アクチュエータ通路、54P…ポンプ通路、61…吐出ライン、62,64,66…油路、77,78…油路,80,80A…差圧検出装置、81…ポンプ圧センサ(圧力センサ)、82…アクチュエータ圧センサ(圧力センサ)、83A…背圧センサ(圧力センサ)、93…電磁弁ユニット、93a~93e…電磁弁、94,94A,94B…コントローラユニット、94a…アクチュエータ目標流量演算部、94b…ポンプ目標流量演算部、94c…ポンプ制御指令部、94d…方向制御弁目標開口演算部、94e…方向制御弁制御指令部、94f…基準開口演算部、94g,94gA…圧力状態判断部、94h,94hA…補助開口演算部、94i…流量制御弁目標開口決定部、94j…流量制御弁制御指令部、94k…ブリードオフ弁目標開口演算部、94l…ブリードオフ弁制御指令部、94mB…開口時間計測部、94nB…補助開口補正部、94v…処理装置、94w…不揮発性メモリ(記憶装置)、95a,95b…操作装置、102…ノッチ、104…第1油室、105…第2油室、108…ノッチ、110…メインハウジング、110a…シート部、111…パイロットハウジング、111a…収容孔、112…スプール(弁体)、112a…第1ランド部、112b…第2ランド部、113…内部通路、114…チェック弁、121…第1開口部、122…第2開口部、123…第3開口部、201…走行体、201L…左走行モータ(油圧アクチュエータ)、202…旋回体、203…作業装置、204…ブーム、204a…ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)、205…アーム、205a…アームシリンダ(油圧アクチュエータ)、206…バケット、206a…バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)、207…運転室、208…機械室、211…旋回モータ(油圧アクチュエータ)、217…エンジン(原動機)、220…機体、901…油圧ショベル(作業機械)
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17