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特許7705831搬送装置、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-02
(45)【発行日】2025-07-10
(54)【発明の名称】搬送装置、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20250703BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20250703BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20250703BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
H01L21/56 T
H01L21/68 B
B29C45/17
B29C45/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022116957
(22)【出願日】2022-07-22
(65)【公開番号】P2024014263
(43)【公開日】2024-02-01
【審査請求日】2024-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 周平
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-064919(JP,A)
【文献】特開2022-093809(JP,A)
【文献】特開2022-038243(JP,A)
【文献】特開2014-212246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 21/677
B29C 45/17
B29C 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
張り出し部を有するポットブロックが設けられた下型に成形対象物を搬送する搬送装置であって、
前記成形対象物を保持する基板保持部と、
前記基板保持部を移動させる保持部移動機構とを備え、
前記保持部移動機構は、前記成形対象物が前記下型から離れた状態で、前記基板保持部を前記ポットブロックに向けて移動させて、前記成形対象物を前記ポットブロックにおける前記張り出し部の下の側面に接触させ、
前記基板保持部は、前記保持部移動機構により前記成形対象物が前記側面に接触した後に、前記成形対象物の保持を解除する、搬送装置。
【請求項2】
前記保持部移動機構は、前記成形対象物が前記下型の上面と前記張り出し部との間の高さ位置にある状態で、前記基板保持部を前記ポットブロックに向けて水平移動させて、前記成形対象物を前記側面に接触させる、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記基板保持部は、
前記成形対象物を保持する保持爪と、
前記保持爪による保持を解除する保持爪駆動機構とを備える、請求項に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記保持爪が少なくとも昇降移動可能に設けられるベース部材をさらに備え、
前記保持爪が前記ベース部材に対して上昇した位置で外部から前記成形対象物を受け取り、前記保持爪が前記ベース部材に対して下降した位置で前記成形対象物の保持を解除するものであり、
前記保持爪駆動機構は、
前記ベース部材に設けられた保持爪駆動部と、
前記保持爪が前記ベース部材に対して上昇した位置で、前記保持爪駆動部からの駆動力を前記保持爪に伝達する第1伝達部と、
前記保持爪が前記ベース部材に対して下降した位置で、前記保持爪駆動部からの駆動力を前記保持爪に伝達する第2伝達部とを有する、請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記ポットブロックに、前記保持爪との干渉を避ける凹部が形成されている、請求項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記基板保持部は、保持が解除された前記成形対象物を下型の上面までガイドするガイド部材を備える、請求項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記基板保持部は、
前記下型に載置された前記成形対象物を押さえる押さえ部材と、
前記押さえ部材を前記成形対象物に対して昇降移動させる昇降移動機構とを備える、請求項に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記基板保持部は、
前記下型に載置された前記成形対象物を押さえる押さえ部材と、
前記押さえ部材を前記成形対象物に対して昇降移動させる昇降移動機構と、
前記押さえ部材に上下方向に移動可能に設けられ、前記成形対象物を引っ掛けて保持する保持爪と、
前記押さえ部材の下降により前記保持爪が前記下型に接触しないように前記保持爪を所定の高さ位置に留めるストッパ機構とを備えている、請求項に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記基板保持部は、前記押さえ部材に上下方向に移動可能に設けられ、保持が解除された前記成形対象物を下型の上面までガイドするガイド部材をさらに備え、
前記ストッパ機構は、前記押さえ部材の下降により前記ガイド部材が前記下型に接触しないように前記ガイド部材を所定の高さ位置に留める、請求項8に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記ガイド部材は、前記成形対象物を下型の上面までガイドするガイド位置と前記ガイド位置から退避した退避位置との間で移動可能に設けられており、弾性部材の弾性力を受けて前記ガイド位置となり、前記押さえ部材の移動に伴い前記退避位置に移動可能に構成されている、請求項9に記載の搬送装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の搬送装置を有する樹脂成形装置。
【請求項12】
成形対象物に対して樹脂成形する樹脂成形品の製造方法であって、
請求項1乃至10の何れか一項に記載の搬送装置により前記ポットブロックに対して前記成形対象物を位置決めする位置決め工程と、
前記成形対象物が位置決めされた状態で、樹脂成形を行う成形工程とを備える、樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、張り出し部を有するカルブロックが設けられた下型に成形対象物を搬送する搬送装置としては、特許文献1に示すものが考えられている。
【0003】
具体的にこの搬送装置は、成形対象物を下型の上面に載置した後に、第1移動機構の第1接触部(寄せピン)により成形対象物をカルブロック側に移動させて、カルブロックの端面に成形対象物のポット側端面を接触させて位置決めする構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6655148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば下型に位置合わせ用のパイロットピンが設けられている場合には、当該パイロットピンに成形対象物が干渉し、カルブロックの端面に成形対象物のポット側端面を接触させることができない場合がある。また、例えば下型に離型フィルムを設ける場合には、第1接触部(寄せピン)が離型フィルムに接触して成形不良が発生する恐れがある。ここで、離型フィルムにも逃げ溝などを形成することが考えられるが、コストが増大してしまう。さらに、例えば成形対象物の下面に電子部品が固定されている場合には、成形対象物を下型に載置した状態で移動させると、成形対象物の下面に固定された電子部品が破損等する恐れがある。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、例えば下型にパイロットピン又は離型フィルムが設けられる場合や成形対象物の下面に電子部品が固定されている場合等であっても、搬送装置により下型に対して成形対象物を位置決めできるようにすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る搬送装置は、張り出し部を有するポットブロックが設けられた下型に成形対象物を搬送する搬送装置であって、前記成形対象物を保持する基板保持部と、前記基板保持部を移動させる保持部移動機構とを備え、前記保持部移動機構は、前記成形対象物が前記下型から離れた状態で、前記基板保持部を前記ポットブロックに向けて移動させて、前記成形対象物を前記ポットブロックにおける前記張り出し部の下の側面に接触させ、前記基板保持部は、前記保持部移動機構により前記成形対象物が前記側面に接触した後に、前記成形対象物の保持を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成した本発明によれば、例えば下型にパイロットピン又は離型フィルムが設けられる場合や成形対象物の下面に電子部品が固定されている場合等であっても、搬送装置により下型に対して成形対象物を位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る一実施形態の樹脂成形装置の構成を示す模式図である。
図2】同実施形態の成形モジュールにおいて(a)型締め前、(b)型締め時、(c)型開き後の状態を示す模式図である。
図3】同実施形態の搬送装置が成形対象物を保持した状態を模式的に示す正面図である。
図4】同実施形態の搬送装置が成形対象物を保持した状態(第2高さ位置)を模式的に示す側面図である。
図5】同実施形態のポットブロックの構成を模式的に示す平面図である。
図6】同実施形態の保持部移動機構の(a)成形対象物をポット側面に接触させる前の状態、(b)成形対象物をポット側面に接触させた後の状態を模式的に示す平面図である。
図7】同実施形態の搬送装置が成形対象物を移載高さ位置で保持した状態(第1高さ位置)を模式的に示す側面図である。
図8】同実施形態の搬送装置が成形対象物をポット側面に接触させた状態を模式的に示す側面図である。
図9】同実施形態の搬送装置が成形対象物の保持を解除し、成形対象物がガイドされている状態を模式的に示す側面図である。
図10】同実施形態の搬送装置が成形対象物の保持を解除し、成形対象物が下型に載置された状態を模式的に示す側面図である。
図11】同実施形態の搬送装置の押さえ部材が成形対象物を押さえた状態を模式的に示す側面図である。
図12】同実施形態の搬送装置が成形対象物を搬入した後に下型から退出する状態を模式的に示す側面図である。
図13】同実施形態の搬送装置が成形対象物を保持する前の状態を模式的に示す側面図である。
図14】同実施形態の(a)押さえ部材が第1高さ位置にある状態、(b)押さえ部材が押さえ位置にある状態におけるストッパ機構を模式的に示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る技術について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の技術により限定されない。
【0011】
本発明に係る技術1の搬送装置は、張り出し部を有するポットブロックが設けられた下型に成形対象物を搬送する搬送装置であって、前記成形対象物を保持する基板保持部と、前記基板保持部を移動させる保持部移動機構とを備え、前記保持部移動機構は、前記成形対象物が前記下型から離れた状態で、前記基板保持部を前記ポットブロックに向けて移動させて、前記成形対象物を前記ポットブロックにおける前記張り出し部の下の側面に接触させ、前記基板保持部は、前記保持部移動機構により前記成形対象物が前記側面に接触した後に、前記成形対象物の保持を解除することを特徴とする。
この搬送装置であれば、成形対象物が下型から離れた状態で成形対象物をポットブロックにおける張り出し部の下の側面に接触させ、その後に、成形対象物の保持を解除するので、例えば下型にパイロットピン又は離型フィルムが設けられる場合や成形対象物の下面に電子部品が固定されている場合等であっても、下型に成形対象物を位置決めして搬入することができる。そして、搬送装置により位置決めされた成形対象物を樹脂封止することができるので、樹脂バリの発生を低減して、品質の良い樹脂成形品を製造することができる。
【0012】
本発明に係る技術2の搬送装置は、上記の技術1の構成に加えて、前記保持部移動機構は、前記成形対象物が前記下型の上面と前記張り出し部との間の高さ位置にある状態で、前記基板保持部を前記ポットブロックに向けて水平移動させて、前記成形対象物を前記側面に接触させることを特徴とする。
この構成であれば、成形対象物が水平移動されるので、ポットブロックの張り出し部の下の側面と、成形対象物のポット側端面とを確実に接触させることができる。
【0013】
基板保持部の具体的な実施の態様としては、以下のものが考えられる。
つまり、本発明に係る技術3の搬送装置は、上記の技術1又は2の構成に加えて、前記基板保持部は、前記成形対象物を引っ掛けて保持する保持爪と、前記保持爪による保持を解除する保持爪駆動機構とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る技術4の搬送装置は、上記の技術3の構成に加えて、前記保持爪が少なくとも昇降移動可能に設けられるベース部材をさらに備え、前記保持爪が前記ベース部材に対して上昇した位置で外部から前記成形対象物を受け取り、前記保持爪が前記ベース部材に対して下降した位置で前記成形対象物の保持を解除するものであることが考えられる。
そして、本発明に係る技術4の搬送装置において、保持爪がベース部材に対して上昇した位置で成形対象物を受け取り、保持爪がベース部材に対して下降した位置で成形対象物の保持を解除するためには、前記保持爪駆動機構は、前記ベース部材に設けられた保持爪駆動部と、前記保持爪が前記ベース部材に対して上昇した位置で、前記保持爪駆動部からの駆動力を前記保持爪に伝達する第1伝達部と、前記保持爪が前記ベース部材に対して下降した位置で、前記保持爪駆動部からの駆動力を前記保持爪に伝達する第2伝達部とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明では、成形対象物を保持した基板保持部をポットブロックに向けて移動させるため、基板保持部の保持爪がポットブロックと干渉する恐れがある。
このため、本発明に係る技術5の搬送装置は、上記の技術3又は4の構成に加えて、前記ポットブロックに、前記保持爪との干渉を避ける凹部が形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る技術6の搬送装置は、上記の技術1乃至5の何れか1つの構成に加えて、前記基板保持部は、保持が解除された前記成形対象物を下型の上面までガイドするガイド部材を備えることを特徴とする。
この構成であれば、保持が解除された成形対象物が下型の上面に落下する際にガイド部材によりガイドされるので、成形対象物のポット側端面がポットブロックの側面に接触した状態を維持することができる。その結果、成形対象物が位置決めされた状態で下型に載置されることになる。
【0017】
本発明に係る技術7の搬送装置は、上記の技術1乃至6の何れか1つの構成に加えて、前記基板保持部は、前記下型に載置された前記成形対象物を押さえる押さえ部材と、前記押さえ部材を前記成形対象物に対して昇降移動させる昇降移動機構とを備えることを特徴とする。
この構成であれば、下型に載置された成形対象物を押さえ部材で押さえることにより、成形対象物の反りを抑えることができる。
【0018】
本発明に係る技術8の搬送装置は、上記の技術1又は2の構成に加えて、前記基板保持部は、前記下型に載置された前記成形対象物を押さえる押さえ部材と、前記押さえ部材を前記成形対象物に対して昇降移動させる昇降移動機構と、前記押さえ部材に上下方向に移動可能に設けられ、前記成形対象物を引っ掛けて保持する保持爪と、前記押さえ部材の下降により前記保持爪が前記下型に接触しないように前記保持爪を所定の高さ位置に留めるストッパ機構とを備えていることを特徴とする。
この構成であれば、押さえ部材に保持爪を設けているので、押さえ部材と保持爪と別々に設ける構成に比べて、小型化することができる。そして、このように押さえ部材に保持爪を設けた構成において、押さえ部材を下降させて下型に載置された成形対象物を押さえる際に、押さえ部材に上下方向に移動可能に設けられた保持爪がストッパ機構により所定の高さ位置に留められるので、保持爪が下型又は下型に設けられた離型フィルムに接触することを防止できる。
【0019】
本発明に係る技術9の搬送装置は、上記の技術8の構成に加えて、前記基板保持部は、前記押さえ部材に上下方向に移動可能に設けられ、保持が解除された前記成形対象物を下型の上面までガイドするガイド部材をさらに備え、前記ストッパ機構は、前記押さえ部材の下降により前記ガイド部材が前記下型に接触しないように前記ガイド部材を所定の高さ位置に留めることを特徴とする。
この構成であれば、押さえ部材にガイド部材を設けているので、押さえ部材とガイド部材と別々に設ける構成に比べて、小型化することができる。そして、このように押さえ部材にガイド部材を設けた構成において、押さえ部材を下降させて下型に載置された成形対象物を押さえる際に、押さえ部材に上下方向に移動可能に設けられたガイド部材がストッパ機構により所定の高さ位置に留められるので、ガイド部材が下型又は下型に設けられた離型フィルムに接触することを防止できる。
【0020】
本発明に係る技術10の搬送装置は、上記の技術9の構成に加えて、前記ガイド部材は、前記成形対象物を下型の上面までガイドするガイド位置と前記ガイド位置から退避した退避位置との間で移動可能に設けられており、弾性部材の弾性力を受けて前記ガイド位置となり、前記押さえ部材の移動に伴い前記退避位置に移動可能に構成されていることを特徴とする。
この構成であれば、保持爪に成形対象物を受け渡す際や押さえ部材が成形対象物を押さえる際にガイド部材が邪魔にならない構成にできる。
【0021】
また、上記の技術1乃至10の何れか1つの搬送装置を有する樹脂成形装置も本発明の一態様である。
【0022】
さらに、上記の技術1乃至10の何れか1つの搬送装置を用いた成形対象物の搬送方法であって、前記成形対象物が前記下型から離れた状態で前記成形対象物を前記ポットブロックに向けて移動させて、前記成形対象物を前記ポットブロックにおける前記張り出し部の下の側面に接触させ、前記成形対象物が前記側面に接触した後に、前記成形対象物の保持を解除する搬送方法も本発明の一態様である。
【0023】
その上、成形対象物に対して樹脂成形する樹脂成形品の製造方法であって、上記の技術1乃至10の何れか1つの搬送装置により前記ポットブロックに対して前記成形対象物を位置決めする位置決め工程と、前記成形対象物が位置決めされた状態で、樹脂成形を行う成形工程とを備える樹脂成形品の製造方法も本発明の一態様である。
【0024】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る樹脂成形装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0025】
<樹脂成形装置の全体構成>
本実施形態の樹脂成形装置100は、電子部品Wxが固定された成形対象物W1を、樹脂材料Jを用いたトランスファ成形によって樹脂成形するものである。なお、成形対象物W1は平面視において矩形状をなすものである。
【0026】
ここで、成形対象物W1としては、例えば金属製基板、樹脂製基板、ガラス製基板、セラミックス製基板、回路基板、半導体製基板、リードフレーム、シリコンウエハ、ガラスウエハ等であり、配線の有無は問わない。また、樹脂成形のための樹脂材料Jは例えば熱硬化性樹脂を含む複合材料であり、樹脂材料Jの形態は顆粒状、粉末状、液状、シート状又はタブレット状等である。また、電子部品Wxとしては、例えば半導体チップ、抵抗素子、キャパシタ素子等の電子素子、又はこれら電子素子の少なくとも1つが樹脂封止された形態の電子部品を挙げることができる。
【0027】
具体的に樹脂成形装置100は、図1に示すように、成形前の成形対象物W1及び樹脂材料Jを供給する供給モジュール100Aと、樹脂成形する成形モジュール100Bと、成形後の成形対象物W2(以下、樹脂成形品W2)を収容する収納モジュール100Cとを、それぞれ構成要素として備えている。なお、供給モジュール100Aと、成形モジュール100Bと、収納モジュール100Cとは、それぞれ他の構成要素に対して、互いに着脱されることができ、かつ、交換されることができる。
【0028】
供給モジュール100Aには、成形対象物W1を供給する成形対象物供給部11と、樹脂材料Jを供給する樹脂材料供給部12と、成形対象物供給部11から成形対象物W1を受け取り成形モジュール100Bに搬送し、樹脂材料供給部12から樹脂材料Jを受け取り成形モジュール100Bに搬送する搬送装置13(以下、ローダ13)とが設けられている。
【0029】
ローダ13は、供給モジュール100Aと成形モジュール100Bとの間を行き来するものであり、供給モジュール100Aと成形モジュール100Bとに亘って設けられたレール(不図示)に沿って移動する。なお、ローダ13の詳細は後述する。
【0030】
成形モジュール100Bは、図2に示すように、樹脂注入部14が設けられるとともに、樹脂材料Jが注入されるキャビティ15aが形成された下型15と、下型15に対向して設けられ、樹脂材料Jが注入されるキャビティ16aが形成された上型16と、下型15及び上型16を型締めする型締め機構17とを有する。下型15は、型締め機構17により昇降する可動盤101に下プラテン102を介して設けられている。上型16は、上部固定盤(不図示)に上プラテン103を介して設けられている。なお、図2は、樹脂注入部14の一方側(左側)のみを示し、他方側(右側)を省略しているが、図2において他方側の構成は一方側の構成と同一である。
【0031】
本実施形態の樹脂注入部14は、樹脂材料Jを収容するポット141aが形成されたポットブロック141と、ポット141a内に設けられたプランジャ142aを有するトランスファ機構142とを備えている。ここで、トランスファ機構142は、ポット141aに収容された樹脂材料Jを圧送するためのプランジャ142aと、当該プランジャ142aを駆動するプランジャ駆動部142bとを有している。なお、プランジャ142aは、ポット141aにおいて加熱されて溶融した樹脂材料Jを圧送するものである。
【0032】
ポットブロック141は、下型15に設けられており、下型15に対して昇降可能となるように弾性部材144により弾性支持されている。また、ポットブロック141の上端部には、下型15の上面である型面上に張り出した張り出し部141bが形成されている。張り出し部141bは、上型16及び下型15を型締めした状態で、その上面が上型16に接触するとともに、その下面が成形対象物W1を下型15の型面との間で挟むことになる(図2(b)参照)。また、張り出し部141bは、樹脂成形後に上型16及び下型15を型開きした状態で、樹脂成形品W2の上方に張り出した部分となる(図2(c)参照)。さらに、ポットブロック141の上面には、ポット141aから注入された樹脂材料Jをキャビティ15a、16aに導入する樹脂流路となるカル部及びゲート部(何れも不図示)を形成しても良い。
【0033】
下型15のキャビティ15aは、成形対象物W1の下面を樹脂封止するためのものであり、上型16のキャビティ16aは、成形対象物W1の上面を樹脂封止するためのものである。ここで、下型15のキャビティ15a又は上型16のキャビティ16aの少なくとも一方には、成形対象物W1の電子部品Wxが収容される。
【0034】
また、上型16には、ポットブロック141の張り出し部141bに対向する部分に凹部16bが形成され、カル部、及びゲート部とキャビティ15a、16aとを接続するランナ部16cが形成されている。なお、下型15に、カル部及びゲート部とキャビティ15a、16aとを接続するランナ部を形成しても良い。また、図示しないが下型15又は上型16には、ポットブロック141とは反対側にエアベントが形成されている。カル部とランナ部とゲート部が樹脂流路となって、ポットからキャビティに溶融した樹脂材料Jが供給される。
【0035】
そして、図2(b)に示すように、型締め機構17により下型15及び上型16を型締めすると、ポットブロック141が下降し、ポットブロック141の張り出し部141bの下面と下型15の上面との間に成形対象物W1のポット側端部が挟まれることになる。この状態でプランジャ142aにより溶融した樹脂材料Jをキャビティ15a、16aに注入すると、成形対象物W1の電子部品Wxが樹脂封止される。
【0036】
収納モジュール100Cには、樹脂成形品W2を収納する収納部18と、成形モジュール100Bから樹脂成形品W2を受け取り、収納部18に搬送する搬送装置19(以下、アンローダ19)とが設けられている。
【0037】
アンローダ19は、成形モジュール100Bと収納モジュール100Cとの間を行き来するものであり、成形モジュール100Bと収納モジュール100Cとに亘って設けられたレール(不図示)に沿って移動する。
【0038】
この樹脂成形装置100の基本動作について、図2を参照して簡単に説明する。以下の動作は、例えば供給モジュール100Aに設けられた制御部(不図示)が各部を制御することにより行われる。
【0039】
下型15及び上型16が型開きされた状態で、ローダ13により成形対象物W1が搬送されて、図2(a)に示すように、下型15に載置される。このとき、上型16及び下型15は、樹脂材料Jを溶融し硬化させることができる温度に昇温されている。また、ローダ13により樹脂材料Jが搬送されて、ポットブロック141のポット141a内に収容される。
【0040】
この状態で、型締め機構17により下型15を上昇させると、図2(b)に示すように、ポットブロック141が上型16に当たり、下型15に対して下降して、張り出し部141bの下面が成形対象物W1のポット側端部に接触する。また、上型16の下面が、キャビティ16a及びエアベントの部分を除き成形対象物W1に接触する。これにより下型15及び上型16が型締めされる。この型締め後にプランジャ駆動部142bによりプランジャ142aを上昇させると、ポット141a内の溶融した樹脂材料Jが樹脂流路を通ってキャビティ15a、16a内に注入される。そして、キャビティ15a、16a内で樹脂材料Jが硬化した後に、図2(c)に示すように、型締め機構17により型開きする。この型開きにより、ポットブロック141が下型15に対して上昇し、樹脂成形品W2に対してポットブロック141上の不要樹脂Kが分離される(ゲートブレイク)。その後、アンローダ19により樹脂成形品W2を搬出して、収納部18に搬送する。
【0041】
<ローダ13の具体的な構成>
次に、本実施形態におけるローダ13の具体的な構成について、図3図14を参照して説明する。なお、図3図4図7図14において、電子部品Wxの図示を省略している。また、図4図6図12は、樹脂注入部14の他方側(右側)のみを示し、一方側(左側)を省略しているが、図4図6図12において一方側の構成は他方側の構成と同一である。さらに、図4図7図12において、上型16の図示を省略している。
【0042】
ローダ13は、図3図4図7図13に示すように、レール(不図示)に沿って移動可能に設けられたベース部材2と、ベース部材2に設けられ、成形対象物W1を保持する基板保持部3と、ベース部材2に対して基板保持部3をポットブロック141に向けて移動させる保持部移動機構4とを備えている。なお、ベース部材2には、樹脂材料Jを保持する樹脂保持部(不図示)が設けられている。
【0043】
基板保持部3は、図3図4図6図13に示すように、成形対象物W1を保持する保持機構5と、下型15に載置された成形対象物W1を押さえる押さえ部材6と、押さえ部材6を昇降移動させる昇降移動機構7とを備えている。
【0044】
保持機構5は、図3図4図6図13に示すように、成形対象物W1の両端部を引っ掛けて保持する対をなす保持爪51と、当該保持爪51同士の間隔を拡大又は縮小する保持爪駆動機構52とを有している。保持爪駆動機構52により保持爪51の間隔を縮小させることによって成形対象物W1の下面の少なくとも一部を支持して保持し、保持爪51の間隔を拡大させることによって成形対象物W1の保持を解除する。
【0045】
本実施形態の保持爪51は、成形対象物W1のポット側端部と当該ポット側端部とは反対側の端部とを引っ掛けて保持する構成としてある。この構成において、保持爪51とポットブロック141との干渉を避けるために、ポットブロック141には、図4及び図5等に示すように、保持爪51と対応した箇所に保持爪51との干渉を避ける凹部141Kが形成されている。
【0046】
また、保持爪51は、押さえ部材6に上下方向に移動可能に設けられている。具体的には、保持爪51は、押さえ部材6に上下方向に移動可能に設けられたシャフト部材53に設けられており、これにより、押さえ部材6において上下方向に移動可能とされている。
【0047】
ここで、シャフト部材53は、図3図4図7図13に示すように、成形対象物W1の両端部に対応するように、押さえ部材6の両端部それぞれに設けられている。また、シャフト部材53は、保持爪51同士の間隔を拡大又は縮小するために、支持ブロック55によって、シャフト部材53の中心軸周りに回転可能に支持されている。さらに、支持ブロック55と押さえ部材6との間には、押さえ部材6に対する支持ブロック55(シャフト部材53)の上下方向の移動をガイドするガイド機構54が設けられている。なお、ガイド機構54は、例えば押さえ部材6に上下方向に沿って設けられたレール部材と、支持ブロック55に設けられ、レール部材をスライドするスライド部材とを有する。
【0048】
保持爪駆動機構52は、図3図4図6図13に示すように、ローダ13の筐体部分(不図示)に設けられた保持爪駆動部521と、保持爪駆動部521からの駆動力を保持爪51に伝達する伝達機構522とを備えている。ここで、保持爪駆動部521は、例えばエアシリンダを用いて構成されている。
【0049】
伝達機構522は、保持爪51が設けられたシャフト部材53に保持爪駆動部521からの駆動力を伝達してシャフト部材53を回転させるものである。シャフト部材53が回転することにより、保持爪51同士の間隔を拡大又は縮小する。
【0050】
具体的に伝達機構522は、保持爪駆動部521からの駆動力によりシャフト部材53を回転させるリンク部522aと、当該リンク部522aと保持爪駆動部521との間に介在する第1伝達部522b及び第2伝達部522cと、保持爪駆動部521に接触して駆動力をリンク部522aに伝達するガイド機構522dとを有する。
【0051】
リンク部522aは、ベース部材2に設けられた2つのシャフト部材53を連結するとともに、保持爪51が成形対象物W1を保持した保持状態と、保持爪51が成形対象物W1の保持を解除した解除状態とを切り替えるためのものである。具体的にリンク部522aは、2つのシャフト部材53を連結する連結リンク部522a1と、当該連結リンク部522a1に接続されて、保持爪駆動部521からの駆動力が作用する作用レバー部522a2とを有している。
【0052】
本実施形態では、ベース部材2に対して押さえ部材6が昇降移動することから、当該押さえ部材6に設けられたシャフト部材53(保持爪51)もベース部材2に対して昇降移動する。つまり、シャフト部材53に連結されたリンク部522aの作用レバー部522a2もベース部材2に対して昇降移動する。
【0053】
ここで、第1伝達部522bは、作用レバー部522a2がベース部材2に対して上昇した位置(図4図12図13参照)で、保持爪駆動部521からの駆動力を保持爪51に伝達するものである。具体的に第1伝達部522bは、保持爪駆動部521により移動して、上昇した作用レバー部522a2に作用する接触ローラ等の接触部を有している。なお、作用レバー部522a2がベース部材2に対して上昇した位置とは、押さえ部材6が後述する第2高さ位置Rにある状態の位置である。
【0054】
また、第2伝達部522cは、作用レバー部522a2がベース部材2に対して下降した位置(図7図11参照)で、保持爪駆動部521からの駆動力を保持爪51に伝達するものである。具体的に第2伝達部522cは、保持爪駆動部521により移動して、下降した作用レバー部522a2に作用する接触ローラ等の接触部を有している。なお、作用レバー部522a2がベース部材2に対して下降した位置とは、押さえ部材6が後述する第1高さ位置Pにある状態の位置である。
【0055】
ここで、作用レバー部522a2(押さえ部材6)がベース部材2に対して上昇した位置(第2高さ位置R)で第1伝達部522bにより作用レバー部522a2に駆動力を作用させると、保持爪51同士の間隔が拡大して、成形対象物W1を受け取ることができる(図13参照)。つまり、この作用レバー部522a2(押さえ部材6)がベース部材2に対して上昇した位置(第2高さ位置R)は、基板保持部3の保持爪51が成形対象物W1を受け取る受け取り位置となる。
【0056】
また、作用レバー部522a2(押さえ部材6)がベース部材2に対して下降した位置(第1高さ位置P)で第2伝達部522cにより作用レバー部522a2に駆動力を作用させると、保持爪51同士の間隔が拡大して、成形対象物W1の保持を解除することができる。つまり、この作用レバー部522a2(押さえ部材6)がベース部材2に対して下降した位置(第1高さ位置P)は、基板保持部3の保持爪51が成形対象物W1の保持を解除する移載高さ位置となる。
【0057】
上述した第1伝達部522b及び第2伝達部522cは、図3及び図6に示すように、ガイド機構522dによって、その移動がガイドされるように構成されている。ガイド機構522dは、ベース部材2に設けられたガイドレールと、当該ガイドレールにスライド可能に設けられたスライド部材とを有している。ガイドレールは、第1伝達部522b及び第2伝達部522cが作用レバー部522a2を操作する方向に沿って設けられている。
【0058】
押さえ部材6は、図3図4図7図13に示すように、成形対象物W1の外周縁部を押さえることによって、成形対象物W1の反りを抑えるものである。押さえ部材6の下面には、成形対象物W1の例えば外周縁部に接触する押さえ部(不図示)が設けられ、成形対象物W1に搭載された電子部品Wxを収容する凹部(不図示)が形成されている。この押さえ部材6は、例えば2つの連結シャフト60によりベース部材2に対して上下方向に移動可能に設けられている。なお、本実施形態の連結シャフト60は、ベース部材2を貫通しており、ベース部材2の上部に連結バー61で互いに連結されている。
【0059】
昇降移動機構7は、図3図4図6図13に示すように、ベース部材2上に設けられて、下型15又は下型15に載置された成形対象物W1に対する押さえ部材6の高さ位置を調整するものである。
【0060】
具体的に昇降移動機構7は、押さえ部材6が成形対象物W1に接近した第1高さ位置P(図7図10参照)と、押さえ部材6が成形対象物W1を押さえる押さえ位置Q(図11参照)との間で昇降移動させる第1昇降部71を有している。また、昇降移動機構7は、押さえ部材6を第1高さ位置Pよりも上側に位置する第2高さ位置R(図4図12図13参照)に昇降移動させる第2昇降部72を有している。第1昇降部71及び第2昇降部72は、例えばエアシリンダを用いて構成されている。本実施形態の第1昇降部71及び第2昇降部72は、連結バー61を昇降移動させることによって、押さえ部材6の高さ位置を調整する。
【0061】
ここで、押さえ部材6が第1高さ位置Pにある状態では、保持爪51により保持された成形対象物W1が、下型15の上面と張り出し部141bとの間の高さ位置にある状態である。この押さえ部材6の第1高さ位置Pは、基板保持部3の保持爪51が成形対象物W1の保持を解除する移載高さ位置となる。また、押さえ部材6の第2高さ位置Rは、当該押さえ部材6上にある基板保持部3の保持爪51が成形対象物W1を受け取る受け取り位置となる。
【0062】
保持部移動機構4は、図3図4図6図13に示すように、成形対象物W1を保持した基板保持部3をポットブロック141に向けて水平移動させて成形対象物W1をポットブロック141における張り出し部141bの下の側面141cに接触させるものである。このとき、基板保持部3に保持された成形対象物W1は、下型15から空間を空けて離れた状態(下型15の上面から浮いた状態)である。また、保持部移動機構4によりポットブロック141に向けて移動される前の成形対象物W1は、張り出し部141bよりも外側に位置している。
【0063】
本実施形態の保持部移動機構4は、押さえ部材6を水平方向に移動させて、保持爪51により保持された成形対象物W1を水平方向に移動させる。
【0064】
具体的に保持部移動機構4は、ベース部材2に対して押さえ部材6を水平方向に移動させるためのガイド機構41と、当該ガイド機構41に沿って押さえ部材6を移動させる水平駆動部42とを有している。
【0065】
ガイド機構41は、ベース部材2においてポットブロック141側に向かう第1方向に沿って設けられたレール411と、当該レール411上をスライド移動するスライド部材412とを有している。このスライド部材412には、押さえ部材6が上下方向にスライド可能に設けられている。また、水平駆動部42は、例えばエアシリンダを用いて構成されている。
【0066】
なお、本実施形態のベース部材2には、スライド部材412に接触してそれ以上のポットブロック141側への移動を規制する移動規制部2sが設けられている(図6参照)。この移動規制部2sは、成形対象物W1が、張り出し部141bの下方に位置する、ポットブロック141の側面141cに接触したタイミングで、水平駆動部42により移動したスライド部材412に当たり、それ以上移動しないようにする。これにより、側面141cに接触した成形対象物W1に過度の力が加わることを防止している。
【0067】
さらに、本実施形態の基板保持部3は、図3図4図7図13に示すように、保持が解除された成形対象物W1を下型15の上面までガイドする第1ガイド部材81を備えている。第1ガイド部材81は、成形対象物W1のポット側端部とは反対側の端部に接触又は近接して、成形対象物W1を下型15の上面までガイドするものである。
【0068】
具体的に第1ガイド部材81は、保持爪51が連結されたシャフト部材53に回転可能に設けられている。そして、第1ガイド部材81は、成形対象物W1を下型15の上面までガイドするガイド位置G1(図3図7図11参照)と当該ガイド位置G1から退避した退避位置H1(図4図12図13参照)との間で移動可能である。この退避位置H1は、ガイド位置G1から外側に回転した位置であり、保持爪51による成形対象物W1の受け取りを邪魔しない位置である。
【0069】
本実施形態の第1ガイド部材81は、弾性部材81aによりガイド位置G1となるように弾性力が与えられており、押さえ部材6が第1高さ位置P及び押さえ位置Qにある状態(図3図7図11参照)では、第1ガイド部材81はガイド位置G1となっている。一方で、押さえ部材6が第1高さ位置Pから第2高さ位置Rに上昇すると(図4図12図13参照)、第1ガイド部材81に設けられたカム部81bがベース部材2の下面2aに接触する。そして、押さえ部材6の移動に伴って第1ガイド部材81がシャフト部材53を回転中心として回転し、退避位置H1に移動する。このカム部81bとベース部材2の下面2aとにより、第1ガイド部材81を退避位置H1に移動させるカム機構81Kが構成される。
【0070】
さらに、本実施形態の基板保持部3は、図3図4図7図13に示すように、成形対象物W2の、ポットブロック141の側面141cに接触する端面を除く端面に接触又は近接して成形対象物W1を保持する際のガイドとなり、また、成形対象物W1を下型15に落下させる際のガイドともなる第2ガイド部材82を有している。
【0071】
この第2ガイド部材82は、押さえ部材6の下面に形成された凹部に弾性部材82aを介して収容されている。そして、第2ガイド部材82は、押さえ部材6の下面から突出して、成形対象物W1をガイドするガイド位置G2(図3図4図7図10図12図13参照)と、押さえ部材6の下面に埋没してガイド位置G2から退避した退避位置H2(図11参照)との間で移動可能に設けられている。この構成により、押さえ部材6が第1高さ位置P及び第2高さ位置Rにある状態(図3図4図7図10図12図13参照)では、第2ガイド部材82が下面から突出してガイド位置G2となり成形対象物W1をガイドする。また、押さえ部材6が第1高さ位置Pから押さえ位置Qに下降すると(図11参照)、第2ガイド部材82は、押さえ部材6の移動に伴って、下型15の上面(離型フィルムがある場合は、離型フィルム)に接触して埋没して退避位置H2となる。第2ガイド部材82が埋没して退避位置H2となることで、押さえ部材6が成形対象物W1を押さえる際に邪魔にならない。
【0072】
さらに、本実施形態のローダ13は、図3図14に示すように、押さえ部材6の下降により保持爪51及び第1ガイド部材81が下型15に接触しないように、保持爪51及び第1ガイド部材81を所定の高さ位置に留めるストッパ機構9を備えている。
【0073】
このストッパ機構9は、シャフト部材53を回転可能に支持する支持ブロック55に設けられた引っ掛かり部91と、ベース部材2に設けられ、引っ掛かり部91が引っ掛かるストッパ部92とから構成される。このストッパ機構9により、図14に示すように、押さえ部材6が第1高さ位置Pから押さえ位置Qに下降する途中で、支持ブロック55の引っ掛かり部91がストッパ部92に引っ掛かる。これにより、保持爪51及び第1ガイド部材81は、押さえ部材6の下降に追従せずに、所定の高さ位置に留まり、保持爪51及び第1ガイド部材81が下型15の上面(離型フィルムがある場合は、離型フィルム)に接触しない。
【0074】
<ローダ13の動作>
次に、ローダ13の搬送動作及び位置決め動作について図4図6図14を参照して説明する。
【0075】
供給モジュール100Aで、ローダ13に、成形対象物W1を保持させる。その後、ローダ13を成形モジュール100Bに移動させ、図4に示すように、成形対象物W1を保持したローダ13を下型15の上方に移動させる。このとき、押さえ部材6は第2高さ位置Rとされている。その後、昇降移動機構7の第2昇降部72により、押さえ部材6を第2高さ位置Rから第1高さ位置Pに下降させる(図7参照)。このとき、押さえ部材6に連結された連結バー61が昇降移動機構7の第1昇降部71に接触して、押さえ部材6は第1高さ位置Pとなる。これにより、保持爪51により保持された成形対象物W1の高さ位置は、下型15の上面と張り出し部141bとの間の高さ位置(移載高さ位置)となる。
【0076】
この状態で、図6及び図8に示すように、保持部移動機構4により、スライド部材412とともに押さえ部材6をポット側に水平移動させる。そして、保持部移動機構4は、保持爪51に保持された成形対象物W1のポット側端部を、ポットブロック141における張り出し部141bの下の側面141cに接触させる。これにより、平面視におけるポットブロック141に対する成形対象物W1が位置決めされる。なお、昇降移動機構7の第1昇降部71は、スライド部材412上に設けられており、スライド部材412のポット側への移動とともに昇降移動機構7の第1昇降部71もポット側に移動する。
【0077】
次に、図9に示すように、保持爪駆動機構52により保持爪51の間隔を拡大させる。このとき、第2伝達部522cの接触部がリンク部522aの作用レバー部522a2を押すことにより、保持爪51の間隔が拡大する。なお、ポットブロック141には凹部141Kが形成されているので、保持爪51とポットブロック141とは干渉しない。これにより、成形対象物W1の保持が解除されて、成形対象物W1が落下して下型15に載置される(図10参照)。この成形対象物W1が落下する際には、第1ガイド部材81及び第2ガイド部材82により、成形対象物W1はガイドされる。
【0078】
その後、図11に示すように、昇降移動機構7の第1昇降部71が押さえ部材6を第1高さ位置Pから押さえ位置Qに移動させて、押さえ部材6が位置決めされた成形対象物W1の外周縁部に接触して押さえる。この押さえ部材6の第1高さ位置Pから押さえ位置Qへの下降の途中において、ストッパ機構9のストッパ部92に引っ掛かり部91が引っ掛かり、保持爪51及び第1ガイド部材81は、押さえ部材6の下降に追従して下降せずに、所定の高さ位置に留まる(図11及び図14(b)参照)。これにより、保持爪51及び第1ガイド部材81が下型15の上面(離型フィルム)に接触しない。
【0079】
また、押さえ部材6が成形対象物W1に接触して押された状態で、下型15に設けられた吸着機構(不図示)により、下型15に成形対象物W1が吸着保持される。本実施形態では、成形対象物W1が変形していた場合でも押さえ部材6によって成形対象物W1を押さえるので吸着保持が可能となる。なお、下型15に離型フィルムが設けられている場合には、離型フィルムには、例えば下型15の基板吸着孔に対応した貫通孔が形成してある。
【0080】
吸着保持された後に、昇降移動機構7の第1昇降部71が押さえ部材6を押さえ位置Qから第1高さ位置Pに上昇させる。このとき、ストッパ機構9の引っ掛かり部91はストッパ部92から離れて、押さえ部材6上に保持爪51及び第1ガイド部材81等が載り、押さえ部材6の上昇に追従する。
【0081】
また、保持部移動機構4により押さえ部材6をポットブロック141から離れる方向に移動させる。その後、昇降移動機構7の第2昇降部72が押さえ部材6を第1高さ位置Pから第2高さ位置Rに上昇させる。このとき、第1ガイド部材81の上端部に設けられたカム部81bがベース部材2の下面2aに接触して、第1ガイド部材81がシャフト部材53を回転中心として回転し、退避位置H1に移動する(図12参照)。このように第1ガイド部材81が退避位置H1に移動することにより、図13に示すように、次の成形対象物W1を保持爪51により保持する際に、第1ガイド部材81が邪魔になることはない。
【0082】
この一連の位置決め動作(搬入動作)の後に、供給モジュール100Aで、ローダ13に成形対象物W1を保持させる際に樹脂保持部(不図示)に保持させた樹脂材料Jを、ポットブロック141のポット141a内に収容させる。このとき、昇降移動機構7の第2昇降部72は、押さえ部材6を第1高さ位置Pよりも上方の第2高さ位置Rに上昇させている。これにより、樹脂保持部によるポットブロック141への樹脂材料Jの供給動作において、押さえ部材6が成形対象物W1などに接触しないようにしている。
【0083】
<本実施形態の効果>
本実施形態の樹脂成形装置100によれば、成形対象物W1が下型15から離れた状態で成形対象物W1をポットブロック141における張り出し部141bの下の側面141cに接触させ、その後に、成形対象物W1の保持を解除するので、例えば下型15にパイロットピン又は離型フィルムが設けられる場合や成形対象物W1の下面に電子部品が固定されている場合等であっても、ローダ13により下型15に対して成形対象物W1を位置決めして搬入することができる。そして、ローダ13により位置決めされた成形対象物W1を樹脂封止することができるので、樹脂バリの発生を低減して、品質の良い樹脂成形品W2を製造することができる。
【0084】
また、本実施形態では、保持部移動機構4が成形対象物W1を水平移動させるので、ポットブロック141の張り出し部141bの下の側面141cと、成形対象物W1のポット側端面とを確実に接触させることができる。
【0085】
さらに、基板保持部3が第1ガイド部材81及び第2ガイド部材82を有するので、保持が解除された成形対象物W1が下型15の上面に落下する際に、成形対象物W1のポット側端面がポットブロック141の側面141cに接触した状態を維持することができる。その結果、成形対象物W1が位置決めされた状態で下型15に載置することができる。
【0086】
その上、基板保持部3が押さえ部材6を有するので、成形対象物W1の反りを抑えることができる。ここで、押さえ部材6に保持爪51及びガイド部材81、82を設けているので、押さえ部材6と保持爪又はガイド部材81、82と別々に設ける構成に比べて、小型化することができる。そして、押さえ部材6に保持爪51及びガイド部材81、82を設けた構成において、押さえ部材6を下降させて成形対象物W1を押さえる際に、押さえ部材6に上下方向に移動可能に設けられた保持爪51及びガイド部材81、82がストッパ機構9により所定の高さ位置に留められるので、保持爪51及びガイド部材81、82が下型15又は下型15に設けられた離型フィルムに接触することを防止できる。
【0087】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0088】
例えば、前記実施形態は、保持爪51又は第1ガイド部材81が押さえ部材6に設けられた構成であったが、保持爪51又は第1ガイド部材81を押さえ部材6とは別の部材(例えばベース部材2)に設けても良い。ここで、保持爪51又は第1ガイド部材81を押さえ部材6とは別の部材に設けた場合には、押さえ部材6は、水平移動しない構成としても良い。
【0089】
また、前記実施形態の保持機構5は、保持爪51により成形対象物を引っ掛けて保持する構成であったが、吸着パッドにより吸着保持する構成としても良い。
【0090】
さらに、前記実施形態では、押さえ部材6の昇降移動機構7を第1昇降部71及び第2昇降部72により構成しているが、1つの昇降部により第1高さ位置P、押さえ位置Q及び第2高さ位置Rの間で移動するように構成しても良い。
【0091】
その上、前記実施形態では、第1ガイド部材81の構成と第2ガイド部材82の構成とが互いに異なるものであったが、第1ガイド部材81の構成と第2ガイド部材82の構成を同じ構成としても良い。例えば、第1ガイド部材81及び第2ガイド部材82を、前記実施形態の第2ガイド部材82の構成、つまり、押さえ部材6の下面に形成された凹部に弾性部材を介して収容されており、押さえ部材6の下面から突出した状態と埋没した状態とを取り得るように構成しても良い。
【0092】
また、前記実施形態では、下型にキャビティが形成されたものであったが、キャビティが形成されていないものでも良い。また、下型の上面に位置決め用のパイロットピンが設けられたものでも良い。
【0093】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0094】
100 ・・・樹脂成形装置
W1 ・・・成形前の成形対象物
W2 ・・・成形後の成形対象物(樹脂成形品)
13 ・・・ローダ(搬送装置)
141 ・・・ポットブロック
141b・・・張り出し部
141c・・・張り出し部の下の側面
141K・・・凹部
15 ・・・下型
2 ・・・ベース部材
3 ・・・基板保持部
4 ・・・保持部移動機構
51 ・・・保持爪
52 ・・・保持爪駆動機構
521 ・・・保持爪駆動部
522b・・・第1伝達部
522c・・・第2伝達部
6 ・・・押さえ部材
7 ・・・昇降移動機構
81 ・・・第1ガイド部材
81a ・・・弾性部材
G1 ・・・ガイド位置
H1 ・・・退避位置
82 ・・・第2ガイド部材
82a ・・・弾性部材
G2 ・・・ガイド位置
H2 ・・・退避位置
9 ・・・ストッパ機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14