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特許77059593-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの合成方法及び触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-02
(45)【発行日】2025-07-10
(54)【発明の名称】3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの合成方法及び触媒
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/347 20060101AFI20250703BHJP
   C07C 69/716 20060101ALI20250703BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250703BHJP
   B01J 31/04 20060101ALN20250703BHJP
【FI】
C07C67/347
C07C69/716 A
C07B61/00 300
B01J31/04 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023568196
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 CN2022142370
(87)【国際公開番号】W WO2023216615
(87)【国際公開日】2023-11-16
【審査請求日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】202210513694.3
(32)【優先日】2022-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523414331
【氏名又は名称】浙江新化化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】523414342
【氏名又は名称】寧夏新化化工有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】朱 堅
(72)【発明者】
【氏名】応 思斌
(72)【発明者】
【氏名】呉 敬恒
(72)【発明者】
【氏名】応 登宇
(72)【発明者】
【氏名】羅 功禹
(72)【発明者】
【氏名】喬 園園
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-37756(JP,A)
【文献】特開2013-133330(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102391060(CN,A)
【文献】Michael additions catalyzed by phosphines. An overlooked synthetic method,Tetrahedron,2005年,Vol.61,pp.8598-8605
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/347
C07C 69/716
B01J 37/04
B01J 31/04
B01J 31/02
B01J 31/40
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-ペンチル-2-シクロペンテノン、マロン酸ジメチルを原料とし、触媒および単座ホスフィン配位子の存在で反応し、3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルを調製し取得する3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの合成方法であって、
記触媒は、含窒素複素環式化合物と脂肪族カルボン酸塩又はヒドロキシ脂肪カルボン酸塩又はフルオロリン酸塩とを撹拌して混合するステップを含む方法によって調製され、前記脂肪族カルボン酸塩又はヒドロキシ脂肪カルボン酸塩又はフルオロリン酸塩に対する前記含窒素複素環式化合物のモル比が0.5であり;
前記脂肪族カルボン酸塩又はヒドロキシ脂肪カルボン酸塩又はフルオロリン酸塩は、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、プロピオン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、ヒドロキシプロピオン酸ナトリウム、ヒドロキシ酪酸ナトリウム、トリフルオロリン酸ナトリウム、テトラフルオロリン酸ナトリウム及びヘキサフルオロリン酸ナトリウムのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択され;
前記含窒素複素環式化合物は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、4-ジメチルアミノピリジン及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エンのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される;
ことを特徴とする3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの合成方法。
【請求項2】
前記混合における温度は20~80℃であり、前記混合の時間は4~24時間であることを特徴とする請求項1に記載の合成方法。
【請求項3】
前記単座ホスフィン配位子は、トリフェニルホスフィン、[(4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン及び4-(ジメチルアミノ)フェニルジフェニルホスフィンのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される、
ことを特徴とする請求項に記載の合成方法。
【請求項4】
前記単座ホスフィン配位子と前記触媒とのモル比は1:(1~50)であることを特徴とする請求項に記載の合成方法。
【請求項5】
前記2-ペンチル-2-シクロペンテノンとマロン酸ジメチルとのモル比は1:(0.5~5)であり、且つ/或いは、前記触媒とマロン酸ジメチルとの質量比は1:(10~50)である、
ことを特徴とする請求項に記載の合成方法。
【請求項6】
前記合成方法は、マロン酸ジメチル、前記触媒及び前記単座ホスフィン配位子を混合させ、混合物を得て、前記混合物に2-ペンチル-2-シクロペンテノンを滴下し、滴下完了後、一定温度で撹拌して反応し続けるステップを含む、
ことを特徴とする請求項に記載の合成方法。
【請求項7】
前記滴下時混合物の温度は-10~30℃であり、滴下時間は1~10時間であり、且つ/或いは、前記一定温度は-10~50℃であり、一定温度の時間は1~30時間である、
ことを特徴とする請求項に記載の合成方法。
【請求項8】
前記合成方法は、反応終了後に反応系に水を添加して静置し層別化するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項に記載の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの合成方法及び触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
3-オキソ-2-ペンチルシクロペンチル酢酸メチルは、ジヒドロジャスモン酸メチル(Methyl Dihydrojasmonate,MDJ)とも称され、ジャスモン化合物に属し、重要な人工合成香料である。MDJは、外観が無色又は淡黄色である透明液体であり、化学性質が比較的に安定し、揮発が遅く、香りが長持ち、調香に用いても変色が発生しないという利点を有し、ジャスミン、スズラン、チュベローズなどのオリエンタルな香りの調合によく使用されている。
【0003】
産業で主にシクロペンタノン、n-バレルアルデヒド及びマロン酸ジメチルを原料としてジヒドロジャスモン酸メチルを合成する。具体的な工程プロセスとしては、1)シクロペンタノンとn-バレルアルデヒドが縮合脱水反応して2-ペンチリデンシクロペンタノンを生成する工程、2)2-ペンチリデンシクロペンタノンが異性化反応して2-ペンチル-2-シクロペンテノンを生成する工程、3)2-ペンチル-2-シクロペンテノンとマロン酸ジメチルがマイケル(Michael)付加反応して3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルを生成する工程、4)3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルが加水分解および脱カルボキシル化されて、ジヒドロジャスモン酸メチルが取得される工程である。
【0004】
2-ペンチル-2-シクロペンテノンとマロン酸ジメチルがMichael付加反応して3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルを生成することについて、現在、産業で主にナトリウムメトキシドを触媒として採用し、例えば中国専利CN101429122Bには、まず、2-ペンチルシクロペンテノンとマロン酸ジメチルに対してメタノール溶液中のナトリウムメトキシドによる触媒で付加と脱カルボキシルを行わせ、ジヒドロジャスモン酸メチルを取得するジヒドロジャスモン酸メチル合成の脱カルボキシル法が開示される。しかしながら、ナトリウムメトキシドを触媒として使用すると、初めに、ナトリウムメトキシドを再利用できないため、反応終了時に酸でクエンチング反応する必要があり、且つ多量の飽和重炭酸ナトリウム水溶液及び食塩水で有機相を洗浄する必要があり、多量の塩含有廃水が生成し、環境への負荷が高くなってしまい、次に、ナトリウムメトキシドが使用中に水に非常に敏感であるため、微量の水分でもナトリウムメトキシドの分解を引き起こし、反応の不安定性を招くことがあり、最後に、ナトリウムメトキシドの粘度が非常に高いため、反応中に多量のメタノールを溶媒として添加する必要があるが、溶媒の添加によっては分離用エネルギーの消費が高くなるだけでなく、廃棄物処理量を増加させるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の欠点及び不足に対して、本発明は、環境に優しく、反応が安定し、製造コストが低い改良した3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの合成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本発明で採用される技術的手段としては、
3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの合成方法であって、前記合成方法では、2-ペンチル-2-シクロペンテノン、マロン酸ジメチルを原料とし、触媒の存在で反応し、前記3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルを調製し取得し、触媒のpHが10以上であり;前記触媒は、含窒素複素環式化合物と脂肪族カルボン酸塩又はヒドロキシ脂肪カルボン酸塩又はフルオロリン酸塩とを撹拌して混合するステップを含む方法によって調製される。
本発明のいくつかの実施形態において、脂肪族カルボン酸塩又はヒドロキシ脂肪カルボン酸塩又はフルオロリン酸塩に対する含窒素複素環式化合物のモル比が0.5である。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態において、前記脂肪族カルボン酸塩は、RCOOH、HOOCRCOOHのうちの1つ又は複数の組み合わせの塩から選択され、前記ヒドロキシ脂肪カルボン酸塩は、OHRCOOHのうちの1つ又は複数の組み合わせの塩から選択され、前記フルオロリン酸塩は、トリフルオロリン酸塩、テトラフルオロリン酸塩及びヘキサフルオロリン酸塩のうちの1つ又は複数の組み合わせから選択され、RはC~Cのアルキル基から選択され、Rは単結合又はC~Cのアルキリデン基から選択され、RはC~Cのアルキリデン基から選択される。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態において、前記触媒のpHは12~14である。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態において、前記含窒素複素環式化合物は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、
【化1】
【0010】
4-ジメチルアミノピリジン
【化2】
【0011】
及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン
【化3】
【0012】
のうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、前記脂肪族カルボン酸塩は、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩のうちの1つ又は複数の組み合わせから選択され;前記ヒドロキシ脂肪カルボン酸塩は、グリコール酸塩、ヒドロキシプロピオン酸塩、ヒドロキシ酪酸塩のうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される。
【0014】
2-ペンチル-2-シクロペンテノンとマロン酸ジメチルは、触媒の作用でMichael付加反応して、3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルを生成し、反応式が下記である。
【0015】
【化4】
【0016】
発明者は、研究した結果、含窒素複素環式化合物から形成されるpH10以上の強アルカリ触媒を、2-ペンチル-2-シクロペンテノンとマロン酸ジメチルがMichael付加反応して3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルを生成する触媒として使用する場合に、この反応に溶剤の必要がなく、この反応環境に優しく、反応が安定し、製造コストを低くできることを発見した。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態において、前記反応は、単座ホスフィン配位子の存在で行われる。単座ホスフィン配位子の存在によっては、2-ペンチル-2-シクロペンテノンの転化率をさらに向上させることができる。
【0018】
さらには、前記単座ホスフィン配位子は、トリフェニルホスフィン、[(4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン及び4-(ジメチルアミノ)フェニルジフェニルホスフィンのうちの1つ又は複数の組み合わせから選択される。
【0019】
好ましくは、前記単座ホスフィン配位子と前記触媒とのモル比は、1:(1~50)である。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態において、前記2-ペンチル-2-シクロペンテノンとマロン酸ジメチルとのモル比は、1:(0.5~5)である。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、前記触媒とマロン酸ジメチルとの質量比は、1:(10~50)である。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態において、前記合成方法は、マロン酸ジメチル及び触媒を混合させ、或いは、マロン酸ジメチル、触媒及び単座ホスフィン配位子を混合させ、混合物を得て、前記混合物に2-ペンチル-2-シクロペンテノンを滴下し、滴下完了後、一定温度で撹拌して反応し続けるステップを含む。
【0023】
さらには、前記滴下時混合物の温度は-10~30℃であり、滴下時間は1~10時間である。
【0024】
さらには、前記一定温度は-10~50℃であり、一定温度の時間は1~30時間である。
【0025】
好ましくは、滴下完了後、反応系に対して-5℃まで冷却し、この温度そのままで撹拌して反応し続ける。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態において、前記合成方法は、反応終了後、反応系に水を添加して静置し層別化するステップをさらに含む。
【0027】
静置し層別化した後、上層が有機層、下層が水層であり、蒸留して水層における水を除去すると、アルカリ触媒を回収し取得することができる。
【0028】
本発明は、上記した触媒をさらに提供する。
【0029】
本発明は、含窒素複素環式化合物と脂肪族カルボン酸塩又はヒドロキシ脂肪カルボン酸塩又はフルオロリン酸塩とを撹拌して混合するステップを含み、前記脂肪族カルボン酸塩は、RCOOH、HOOCRCOOHのうちの1つ又は複数の組み合わせの塩から選択され、前記ヒドロキシ脂肪カルボン酸塩は、OHRCOOHのうちの1つ又は複数の組み合わせの塩から選択され、前記フルオロリン酸塩は、トリフルオロリン酸塩、テトラフルオロリン酸塩及びヘキサフルオロリン酸塩のうちの1つ又は複数の組み合わせから選択され、RはC~Cのアルキル基から選択され、Rは単結合又はC~Cのアルキリデン基から選択され、RはC~Cのアルキリデン基から選択される上記触媒の調製方法をさらに提供する。
【0030】
好ましくは、前記混合における温度は20~80℃であり、前記混合の時間は4~24時間である。
【0031】
上記した触媒は、淡黄色の透明液体である。
【0032】
従来技術に比べて、本発明は下記の利点を有する。
【0033】
含窒素複素環式化合物を用いて脂肪族カルボン酸塩又はヒドロキシ脂肪カルボン酸塩又はフルオロリン酸塩と混合し、pHが10以上である強アルカリ触媒を形成し、それを合成方法の触媒とすると、この合成方法に溶剤の必要がなく、反応条件が穏やかであり、且つ2-ペンチル-2-シクロペンテノンの転化率を向上させることができるように実現できる。
【0034】
本発明の触媒は、調製方法が簡単、且つ回収し再利用しやすく、複数回再利用した後、触媒の活性があまり変化せず、触媒の安定性がよい。
【0035】
本発明の合成方法は、溶剤の必要がなく、且つ触媒の回収時に水のみ使用さるため、廃棄物の排出が少なく、コストが低く、環境に優しい。
【0036】
本発明は、反応系に単座ホスフィン配位子を添加して2-ペンチル-2-シクロペンテノンの転化率をさらに向上させることができ、転化率が99%に達する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、実施例を参照しながら、本発明をさらに説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施例に限定されない。実施例で採用される実施条件は具体的な使用の異なる要求に応じてさらに調整されることができ、明示されていない実施条件は本業界での一般的な条件である。本発明の様々な実施形態に係る技術的特徴は、互いに矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0038】
実施例1
1)アルカリ触媒の調製
0.5molの1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1molの酢酸ナトリウムを量り取ってビーカーに置いて、30℃の一定温度で6時間撹拌すると、所要の触媒が取得され、そのpHが13.2である。
【0039】
2)3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの調製
2gの上記触媒と50gのマロン酸ジメチルを量り取って100mLの三口フラスコに置いて、三口フラスコを25℃のサーモスタットシンクに置いて、その後、56gの2-ペンチル-2-シクロペンテノンをゆっくりと滴下し、滴下時間を6時間として制御し、滴下終了後、ウォーターバスの温度を-5℃まで低下し、一定温度で6時間撹拌する。
【0040】
3)生成物分析
反応終了後、10gの脱イオン水を添加し、十分に撹拌してから静置し層別化する。上層は有機相であり、下層は触媒の水溶液である。生成物は、Agilent7890ガスクロマトグラフによって分析され、クロマトグラフカラムがHP-INNOWax、検出器がTCD検出器である。転化率及び選択性は、正規化方法で算出される。
【0041】
実施例2
実施例1とほとんど同じであるが、相違点としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンの代わりに、4-ジメチルアミノピリジンとし、触媒のpHが11.7であることのみである。
【0042】
実施例3
実施例1とほとんど同じであるが、相違点としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンの代わりに、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エンとし、触媒のpHが13.4であることのみである。
【0043】
実施例1-3について、2-ペンチル-2-シクロペンテノンの転化率、3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの選択性の結果を下記の表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1から分かるように、異なる窒素複素環塩基性触媒は、いずれも優れた活性を有し、2-ペンチル-2-シクロペンテノンの転化率≧90%であり、3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの選択性>95%である。
【0046】
実施例4
実施例1とほとんど同じであるが、相違点としては、酢酸ナトリウムの代わりに、酢酸カリウムとし、触媒のpHが13.3であることのみである。
【0047】
実施例5
実施例1とほとんど同じであるが、相違点としては、酢酸ナトリウムの代わりに、酢酸リチウムとし、触媒のpHが12.9であることのみである。
【0048】
実施例1、4~5について、2-ペンチル-2-シクロペンテノンの転化率、3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの選択性結果を下記の表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2から分かるように、ナトリウム、カリウム、リチウムの3つのカチオンは、含窒素複素環塩基性触媒の活性にもたらす影響が大きくなく、2-ペンチル-2-シクロペンテノンの転化率>90%であり、3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの選択性>95%である。
【0051】
実施例6~13
実施例1とほとんど同じであるが、相違点としては、酢酸ナトリウムの代わりに、表3における脂肪族カルボン酸塩又はヒドロキシ脂肪カルボン酸塩又はフルオロリン酸塩とすることのみである。実施例6-13の2-ペンチル-2-シクロペンテノンの転化率、3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの選択性の結果を下記の表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
表3から分かるように、選択された範囲において異なるアニオンで調製されたアルカリ触媒は、いずれも優れた触媒活性が表され、2-ペンチル-2-シクロペンテノンの転化率>88%であり、3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの選択性>90%である。
【0054】
実施例14
実施例1における触媒の水溶液に対してロータリー蒸しを行い、水を除去し、触媒は再利用されることができ、再利用方法が実施例1と同じである。再利用結果を下記の表4に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
表4から分かるように、5回再利用した後、触媒の活性はあまり変化せず、調製されたアルカリ触媒の性能が安定であることが示される。
【0057】
実施例15
1)アルカリ触媒の調製
調製方法は実施例1の通りである。
【0058】
2)3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの調製
2gの上記触媒、0.3gの[(4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン及び50gのマロン酸ジメチルを量り取って100mLの三口フラスコに置いて、三口フラスコを25℃のサーモスタットシンクに置いて、その後、56gの2-ペンチル-2-シクロペンテノンをゆっくりと滴下し、滴下時間を6時間として制御し、滴下終了後、ウォーターバスの温度を-5℃まで低下し、一定温度で6時間撹拌する。
【0059】
3)生成物分析
分析方法は実施例1の通りである。
【0060】
実施例16~18
実施例15とほとんど同じであるが、相違点としては、[(4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィンの代わりに、それぞれトリフェニルホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、4-(ジメチルアミノ)フェニルジフェニルホスフィンとすることのみである。実施例15~18の触媒性能を下記の表5に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
表5から分かるように、単座ホスフィン配位子を追加して2-ペンチル-2-シクロペンテノンの転化率を向上させることができ、2-ペンチル-2-シクロペンテノンの転化率>95%であり、3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの選択性>95%である。
【0063】
比較例1
実施例1とほとんど同じであるが、相違点としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンの代わりに、メチミダゾールとし、触媒のpHが8.7であることのみである。
【0064】
結果として、2-ペンチル-2-シクロペンテノンの転化率は41%であり、3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルの選択性は81%である。
【0065】
比較例2
1)2gの1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンと50gのマロン酸ジメチルを量り取って100mLの三口フラスコに置いて、三口フラスコを25℃のサーモスタットシンクに置いて、その後、56gの2-ペンチル-2-シクロペンテノンをゆっくりと滴下し、滴下時間を6時間として制御し、滴下終了後、ウォーターバスの温度を-5℃まで低下し、一定温度で6時間撹拌する。
【0066】
2)反応終了後、10gの脱イオン水を添加し、十分に撹拌してから静置し層別化する。上層は有機相であり、生成物がガスクロマトグラフィーによって分析される。
【0067】
比較例3~4
比較例2とほとんど同じであるが、相違点としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンの代わりに、それぞれ4-ジメチルアミノピリジン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エンとすることのみである。比較例2~4の触媒活性の結果を下記の表6に示す。
【0068】
【表6】
【0069】
表6から分かるように、単一の含窒素複素環式化合物は、マロン酸ジメチルと2-ペンチル-2-シクロペンテノンとの反応を触媒できるが、2-ペンチル-2-シクロペンテノンの転化率は明らかに低下し、含窒素複素環式化合物と脂肪族カルボン酸塩又はヒドロキシ脂肪カルボン酸塩又はフルオロリン酸塩とが触媒を形成した後、2-ペンチル-2-シクロペンテノンの転化率を向上させることができることが示される。
【0070】
比較例5
1)2gの酢酸ナトリウム、0.3gの[(4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]ジ-tert-ブチルホスフィン及び50gのマロン酸ジメチルを量り取って100mLの三口フラスコに置いて、三口フラスコを25℃のサーモスタットシンクに置いて、その後、56gの2-ペンチル-2-シクロペンテノンをゆっくりと滴下し、滴下時間を6時間として制御し、滴下終了後、ウォーターバスの温度を-5℃まで低下し、一定温度で6時間撹拌する。
【0071】
2)反応終了後、10gの脱イオン水を添加し、十分に撹拌してから静置し層別化する。上層は有機相であり、分析により分かるように、反応物において3-(3-オキソ-2-ペンチル)シクロペンチルマロン酸ジメチルが検出されていない。上記結果は、含窒素複素環式化合物が反応主活性部位であることが示される。
【0072】
上記実施例は、本発明の技術的思想及び特徴を説明するためのものに過ぎなく、その目的として、この技術を知っている人が本発明の内容を了解してこれによって実施することができるが、これにより本発明の保護範囲を制限することができない。本発明の思想によれば実質的に行われた同等変更又は修飾は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【0073】
本明細書に開示された範囲の端点及び任意の値はいずれも該精確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値はこれらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲については、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と単一点値との間、および単一点値の間は、互いに組み合わせて1つ又は複数の数値範囲を取得することができ、これらの数値範囲は本明細書に具体的に開示されていると見なすべきである。