(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-02
(45)【発行日】2025-07-10
(54)【発明の名称】多嚢胞性卵巣症候群の治療及び/又は予防するための製剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/605 20060101AFI20250703BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
A61K36/605
A61P15/08
(21)【出願番号】P 2024552485
(86)(22)【出願日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 CN2023079443
(87)【国際公開番号】W WO2023165584
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2024-09-12
(31)【優先権主張番号】202210211599.8
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522069873
【氏名又は名称】ベイジン ウィ-ハンド-バイオ ファーマスーティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BEIJING WEHAND-BIO PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.30 Tianfu Street, Daxing Biomedical Industrial Base, Zhongguancun Science Park Beijing, 102600, China
(73)【特許権者】
【識別番号】522069884
【氏名又は名称】グアンシー ウィ-ハンド-バイオ ファーマスーティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GUANGXI WEHAND-BIO PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.16 Jincheng Road, Qingyuan Town, Yizhou District, Hechi, Guangxi 546300, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 玉 玲
(72)【発明者】
【氏名】劉 圓 圓
(72)【発明者】
【氏名】李 慧 娟
(72)【発明者】
【氏名】劉 東 東
(72)【発明者】
【氏名】劉 志 華
(72)【発明者】
【氏名】王 新 剛
(72)【発明者】
【氏名】陳 艷 敏
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲ティン▼ ▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】鄒 媛 媛
(72)【発明者】
【氏名】楊 紅 振
(72)【発明者】
【氏名】高 麗 麗
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113143997(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114010683(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110898060(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
桑の抽出物を有効成分として含む多嚢胞性卵巣症候群の治療及び/又は予防するための
製剤であって、
前記桑の抽出物に
おける各成分の重量含有量が
アルカロイド 30~99%、
多糖類 0.2~35%、
フラボノイド 0~2%、
アミノ酸 0~30%、
ほかの成分 0~20%、
であ
り、
前記アルカロイドは、1-デオキシノジリマイシンを含み、
前記1-デオキシノジリマイシンの重量百分率が総アルカロイドの30%以上である、製剤。
【請求項2】
前記多嚢胞性卵巣症候群の治療及び/又は
予防は、
1)多嚢胞性卵巣症候群患者の性ホルモンの分泌レベルを調節すること、
2)多嚢胞性卵巣症候群患者の月経周期を整えること、
3)多嚢胞性卵巣患者の卵巣の多嚢胞化状態を改善すること
の少なくとも1つで表されることを特徴とする請求項1に記載の
製剤。
【請求項3】
前記性ホルモンは、テストステロン、エストラジオール、黄体形成ホルモン、プロラクチン、プロゲステロン、性ホルモン結合グロブリン及び抗ミュラー管ホルモンのうちの少なくとも1種から選択されることを特徴とする請求項2に記載の
製剤。
【請求項4】
前記桑の抽出物はヒト又は哺乳動物に作用することを特徴とする請求項1に記載の
製剤。
【請求項5】
前記桑の抽出物は桑の枝の抽出物、桑白皮の抽出物、又は桑の葉の抽出物である、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の製剤の製造方法であって、
1)桑科植物の粗抽出液を製造するステップと、
2)前記粗抽出液をカチオン樹脂及び/又は必要に応じ、アニオン樹脂により分離し、前記桑の抽出物を得るステップと、を含む、製剤の製造方法。
【請求項7】
前記方法はさらに、
3)ステップ2)の樹脂により分離された流出液に対してアルコール沈殿処理を実施し、上澄みを収集するステップと、
4)前記上澄みに対して濃縮乾燥処理を実施するステップと、を含むことを特徴とする
請求項6に記載の製剤の製造方法。
【請求項8】
前記方法はさらに、
ステップ2)の樹脂により分離された流出液に対して濃縮乾燥処理を実施するステップを含むことを特徴とする
請求項6に記載の製剤の製造方法。
【請求項9】
前記桑の抽出物における各成分の重量含有量が
アルカロイド 40~99%、
多糖類 0.2~35%、
フラボノイド 0~2%、
アミノ酸 0~30%、
ほかの成分 0~20%、
であることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
前記桑の抽出物における各成分の重量含有量が
アルカロイド 50~99%、
多糖類 0.2~35%、
フラボノイド 0~2%、
アミノ酸 0~30%、
ほかの成分 0~20%、
であり、又は、
前記桑の抽出物における各成分の重量含有量が
アルカロイド 50~99%、
多糖類 0.2~25%、
フラボノイド 0~1%、
アミノ酸 0~20%、
ほかの成分 0~20%、
である、請求項1に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬分野に属し、具体的には、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)治療薬の製造における桑の枝の総アルカロイドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic ovarian syndrome,PCOS)は、生殖年齢女性によくみられる内分泌疾患の1つであり、臨床上、高アンドロゲン、稀発排卵又は無排卵、及び卵巣の多嚢胞化形態への変化が現れる。PCOSは、様々な要因によって体の性ホルモンの分泌異常を引き起こし、その結果、卵胞の成長が途中で止まり、卵胞壁が過形成し、且つ卵巣内にとどまって嚢胞となるため、不妊症や子宮頸がんなど婦人科疾患の発症率を増加させるのみならず、例えばうつ病など様々な精神障害も引き起こす。また、研究によると、妊産婦がPCOSを患っていると、関連妊娠合併症のリスクが高まるだけでなく、エピジェネティクスにより子孫が様々な「精神障害」やPCOS等代謝性疾患を患うリスクも高まる。統計によると、PCOS妊婦の娘がPCOSを患うリスクは5倍も高まった。PCOSは様々な要因によって引き起こされた生殖内分泌疾患であり、異質性が高く、患者により病態生理学的特徴に差が大きい。現在、多嚢胞性卵巣症候群の医学的治療は依然として、例えば、月経周期を調整するための経口避妊薬の服用、アンドロゲンレベルを低減するためのエチニルエストラジオールシプロテロン錠剤等の使用、妊娠を希望される患者に対するクロミッド(CC)又はレトロゾールによる排卵誘発治療など、その臨床症状に対して治療を行う段階にとどまっている。しかし、臨床治療は効果に限界がある一方で、避妊薬の服用により体液貯留、肝機能異常、うつ病などの精神疾患が生じやすく、クロミフェンやクロミッド(CC)による排卵誘発治療では、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が生じやすいなど、多くの副作用を伴う。手術治療としては、現在、腹腔鏡下卵巣多孔術及び卵巣楔状切除術が一般的であるが、腹腔鏡下卵巣多孔術は治療効果が得られなかったり、骨盤内癒着が生じたり、卵巣機能が低下したりする恐れがあり、卵巣楔状切除術は手術創が大きく、術後の卵巣周囲の組織が癒着するなどのデメリットがあるため、臨床ではあまり行われていない。これらの治療方法によるPCOSの治療は理想的でなく、重篤な副作用がありながら、一部の症状しか緩和できない。したがって、如何に安全で効果的なPCOS治療薬を研究開発することにより、命の安全へのリスクを軽減し、生殖能力を向上させるかは、全世界的に早急に解決すべき大きな科学的課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、桑の抽出物又はその主な有効成分の新たな医薬用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明が提供する桑の抽出物又はその主な有効成分の新たな用途は下記(a1)~(a4)のいずれか1つである。
(a1)多嚢胞性卵巣症候群を治療するための製品の製造における桑の抽出物の使用、
(a2)多嚢胞性卵巣症候群を改善するための製品の製造における桑の抽出物の使用、
(a3)多嚢胞性卵巣症候群の治療における桑の抽出物の使用、
(a4)多嚢胞性卵巣症候群の改善における桑の抽出物の使用。
【0005】
前記多嚢胞性卵巣症候群の治療及び/又は改善は下記の少なくとも1つで表される。
1)多嚢胞性卵巣症候群患者の性ホルモンの分泌レベルを調節すること、
2)多嚢胞性卵巣症候群患者の月経周期を整えること、
3)多嚢胞性卵巣患者の卵巣の多嚢胞化状態を改善すること。
【0006】
中では、前記性ホルモンは、T(テストステロン)、E2(エストラジオール)、LH(黄体形成ホルモン)、PRL(プロラクチン)、P(プロゲステロン)、SHBG(性ホルモン結合グロブリン)及びAMH(抗ミュラー管ホルモン)のうちの少なくとも1種から選択される。
【0007】
本発明はまた、桑の抽出物又はその主な有効成分の使用であって、下記(b1)~(b6)のうちの少なくとも1種における使用に関する。
(b1)多嚢胞性卵巣症候群患者の性ホルモンの分泌レベルを調節する製品を製造すること、
(b2)多嚢胞性卵巣症候群患者の月経周期を整える製品を製造すること、
(b3)多嚢胞性卵巣患者の卵巣の多嚢胞化状態を改善する製品を製造すること、
(b4)多嚢胞性卵巣症候群患者の性ホルモンの分泌レベルを調節すること、
(b5)多嚢胞性卵巣症候群患者の月経周期を整えること、
(b6)多嚢胞性卵巣患者の卵巣の多嚢胞化状態を改善すること。
【0008】
前記製品は薬物又は薬物製剤である。
【0009】
前記桑の抽出物は桑の枝の抽出物、桑白皮の抽出物及び/又は桑の葉の抽出物である。
或いは、前記桑の抽出物は市販の桑の枝の総アルカロイド錠剤(国薬準字Z20200002)として提供されることもできる。
【0010】
1つの実施の形態において、本発明に係る桑の抽出物又はその主な有効成分はPCOS患者の卵巣の顆粒膜細胞のアポトーシスを改善することができる。
【0011】
1つの実施の形態において、本発明に係る桑の抽出物又はその主な有効成分はPCOS患者の体重及び卵巣の重量を減少させることができる。
【0012】
桑の抽出物はCN 113143997 Aに記載の方法を参酌して製造することができ、具体的な製造方法は、
1)桑科植物の粗抽出液を製造するステップと、
2)前記粗抽出液をカチオン樹脂、及び/又は必要に応じ、アニオン樹脂により分離し、前記桑の抽出物を得るステップと、を含む。
【0013】
前記方法はさらに、
3)ステップ2)の樹脂により分離された流出液に対してアルコール沈殿処理を実施し、上澄みを収集するステップと、
4)前記上澄みに対して濃縮乾燥処理を実施するステップと、を含んでもよい。
【0014】
前記方法はさらに、ステップ2)の樹脂により分離された流出液に対して濃縮乾燥処理を実施するステップを含んでもよい。
【0015】
前記桑の抽出物はヒト又は哺乳動物に作用する。
【0016】
前記桑科植物は、カントングワ、ログワ、マグワ、テンジクグワ、ヤマグワ又は雑種桑から選択されることができ、前記雑種桑は、好ましくは粤桑11号、桂桑優62号又は桑特優2号である。前記植物の葉、根、枝、皮、芽、茎、果実などの様々な部分を使用できる。
【0017】
前記桑の抽出物は桑のアルカロイドの抽出物であってもよい。
【0018】
本発明の1つの実施の形態において、前記桑の抽出物はアルカロイド、多糖類類、フラボノイド及びアミノ酸を含む。
【0019】
好ましくは、前記アルカロイドは1-デオキシノジリマイシン(1-deoxynojirimycin又はDNJ)、N-メチル-1-デオキシノジリマイシン(N-methly-1-deoxynojirimycin)、ファゴミン(fagomine又はFAG)、3-epi-ファゴミン(3-epi-fagomine)、1,4-ジデオキシ-1,4-イミノ-D-アラビニトール(1,4-dideoxy-1,4-imino-D-arabinitol又はDAB)、カリステギンB2(calysteginB2)、カリステギンC1(calysteginC1)、2-O-(α-D-ガラクトピラノシル)-1-デオキシノジリマイシン(2-O-(α-D-Galactopyranosyl)-1-deoxynojirimycin)、6-O-(β-D-グルコピラノシル)-1-デオキシノジリマイシン(6-O-(β-D-glucopyranosyl)-1-deoxynojirimycin)、1,4-ジデオキシ-1,4-イミノ-(2-O-β-D-グルコピラノシル)-D-アラビニトール(1,4-dideoxy-1,4-imino-(2-O-β-D-glucopyranosyl)-D-arabinitol)のうちの少なくとも1種を含む。
【0020】
中では、DNJの重量百分率が総アルカロイドの30%以上である。好ましくは、DNJの重量百分率が総アルカロイドの40%以上である。より好ましくは、DNJの重量百分率が総アルカロイドの50%以上である。
【0021】
好ましくは、前記桑の抽出物に対して、各成分の重量含有量が以下のとおりである。
アルカロイド 3~99%
多糖類 0.2~70%
フラボノイド 0~10%
アミノ酸 0~50%
ほかの成分 0~25%
【0022】
好ましくは、前記桑の抽出物に対して、各成分の重量含有量が以下のとおりである。
アルカロイド 30~99%
多糖類 0.2~35%
フラボノイド 0~2%
アミノ酸 0~30%
ほかの成分 0~20%
【0023】
より好ましくは、前記桑の抽出物に対して、各成分の重量含有量が以下のとおりである。
アルカロイド 50~99%
多糖類類 0.2~35%
フラボノイド 0~2%
アミノ酸 0~30%
ほかの成分 0~20%
【0024】
アルカロイドの含有量が60~70%又は70~80%であってもよい。
【0025】
さらに好ましくは、前記桑の抽出物に対して、各成分の重量含有量が以下のとおりである。
アルカロイド 50~99%
多糖類 0.2~25%
フラボノイド 0~1%
アミノ酸 0~20%
ほかの成分 0~20%
【0026】
1つの実施の形態において、前記桑の抽出物の製造は、粗抽出液を製造するステップ、必要に応じ、カチオン樹脂及び/又はアニオン樹脂により分離するステップ、必要に応じ、樹脂により分離された流出液に対してアルコール沈殿処理を実施するステップ、及び必要に応じ、濃縮乾燥処理ステップを含む。好ましくは、前記桑の抽出物の製造は、粗抽出液を製造するステップ1)と、カチオン樹脂、及び/又は必要に応じ、アニオン樹脂により分離するステップ2)と、必要に応じ、ステップ2)の樹脂により分離された流出液に対してアルコール沈殿処理を実施するステップ3)と、必要に応じ、濃縮乾燥処理ステップ4)とを含む。
【0027】
1つの実施の形態において、前記桑の抽出物は以下の手順に従って製造される。桑の枝、桑の葉又は桑白皮を粉砕し、水及び/又はアルコール溶液又は酸性水で加熱還流して抽出し、溶媒量を原薬材の3~20倍とし、抽出を1~3回繰り返し、抽出液を合併し、濃縮し、カチオン交換樹脂に注入し、吸着されない不純物を蒸留水で洗い落とし、0.2~3Nのアンモニア水で溶出し、溶出液を濃縮し、アニオン交換樹脂に注入し、吸着されない部分を収集し、エタノールを加え、沈殿させて不純物を除去し、遠心処理し、上澄みを減圧濃縮し、又は噴霧乾燥させ、又は凍結乾燥させ、抽出物を得た。
【0028】
1つの実施の形態において、前記桑の抽出物は以下の手順に従って製造される。桑の枝、桑の葉又は桑白皮を粉砕し、水及び/又はアルコール溶液又は酸性水で加熱還流して抽出し、溶媒量を原薬材の3~20倍とし、抽出を1~3回繰り返し、抽出液を合併し、濃縮し、カチオン交換樹脂に注入し、吸着されない不純物を蒸留水で洗い落とし、0.2~3Nのアンモニア水で溶出し、溶出液を濃縮し、アニオン交換樹脂に注入し、吸着されない部分を収集し、減圧濃縮し、又は噴霧乾燥させ、又は凍結乾燥させ、抽出物を得た。
【0029】
1つの実施の形態において、前記桑の抽出物は以下の手順に従って製造される。桑の枝、桑の葉又は桑白皮を粉砕し、水及び/又はアルコール溶液又は酸性水で加熱還流して抽出し、溶媒量を原薬材の3~20倍とし、抽出を1~3回繰り返し、抽出液を合併し、濃縮し、カチオン交換樹脂に注入し、吸着されない不純物を蒸留水で洗い落とし、0.2~3Nのアンモニア水で溶出し、溶出液を減圧濃縮し、又は噴霧乾燥させ、又は凍結乾燥させ、抽出物を得た。
【0030】
1つの実施の形態において、前記桑の抽出物は以下の手順に従って製造される。桑の枝、桑の葉又は桑白皮を粉砕し、水で加熱還流して抽出し、溶媒量を原薬材の3~20倍とし(好ましくは4~15倍),抽出を1~3回繰り返し(抽出時間は好ましくは0.5~3h/回)、抽出液を合併し、濃縮し、カチオン交換樹脂に注入し、吸着されない不純物を蒸留水で洗い落とし、0.2~3Nのアンモニア水で溶出し、溶出液を濃縮し、アニオン交換樹脂に注入し、吸着されない部分を収集し、エタノールを加え、沈殿させて不純物を除去し、遠心処理し、上澄みを減圧濃縮し、又は噴霧乾燥させ、又は凍結乾燥させ、抽出物を得た。
【0031】
好ましくは、カチオン樹脂をカラムに充填した後、酸性溶液の通液、塩基性溶液の通液、酸性溶液の通液の順で活性化する。好ましくは、溶出液のpHが8.0~9.5、好ましくは8.5~9.5となるまで塩基性溶液の通液を行う。好ましくは、前記塩基性溶液は、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液又は炭酸ナトリウム溶液から選択される。好ましくは、前記塩基性溶液の濃度は0.5~4mol/Lとする。好ましくは、溶出液のpHが3.0~7.0、好ましくは4.5~6.5となるまで酸性溶液の通液を行う。好ましくは、前記酸性溶液は、塩酸溶液、リン酸溶液、リン酸性水素二ナトリウム-クエン酸緩衝液から選択される。必要に応じ、前記カチオン樹脂は、最終回の酸性溶液の通液を行った後、さらにカラム体積に対して3~5倍の脱イオン水で洗浄してもよい。好ましくは、前記カチオン樹脂は、732型強酸性スチレン系カチオン交換樹脂、734型強酸性スチレン系カチオン交換樹脂及びD001型マクロポーラス強酸性スチレン系カチオン交換樹脂である。
【0032】
好ましくは、前記カチオン樹脂の使用量と植物原材料の投入量との重量比は1:2~20である。植物粗抽出液をカチオン樹脂に注入した後、溶出剤により注入後のカチオン樹脂に対して溶出を行う。好ましくは、前記溶出剤の濃度は0.5~2.5mol/Lである。好ましくは、溶出剤の流速は5~10BV/hである。
【0033】
好ましくは、前記アニオン樹脂は717型強塩基性スチレン系アニオン交換樹脂、D201型マクロポーラス強塩基性スチレン系アニオン交換樹脂及びD218型マクロポーラス強塩基性アクリル系アニオン交換樹脂である。好ましくは、前記アニオン樹脂の使用量と植物原材料の投入量との重量比は1:1~32である。液体がアニオン樹脂から流出すると、収集を開始する。好ましくは、収集液の体積が植物原材料の投入重量に対して0.1~5倍となる時点で収集を停止する。
【0034】
好ましくは、アルコール沈殿処理に用いられるエタノールと植物原材料の投入量との重量比は1:20~300である。アルコール沈殿処理において、撹拌速度は40~500rpmである。
【0035】
好ましくは、前記薬物はさらに、薬学的に許容される担体を含む。前記担体は、投与経路又は投与方法に適し、人体に毒性作用を及ぼさない不活性成分である。前記担体は固体賦形剤であってもよく、液体賦形剤であってもよい。固体賦形剤としては、例えば、微結晶セルロース、マンニトール、ラクトース、アルファー化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、架橋ポビドン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、アスパルテーム、リン酸水素カルシウム、乳酸ナトリウム、ポロキサマー、ラウリル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、キサンタンガム、ポビドン、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム及びタルクが挙げられる。液体賦形剤としては、例えば、水、エタノール、シロップ及びグリセリンが挙げられる。
【0036】
好ましくは、前記薬物は経口投与剤形であり、さらに好ましくは、前記薬物は錠剤、カプセル剤、経口液剤、経口乳剤、丸剤、顆粒剤、シロップ剤及び散剤である。
【0037】
本発明さらに、多嚢胞性卵巣症候群を予防及び/又は治療する方法であって、対象動物又はヒトに前記桑の抽出物又はその主な有効成分を投与することにより、多嚢胞性卵巣症候群を予防及び/又は治療するステップを含む、方法を提供する。
【0038】
本発明では、前記動物は哺乳動物であってもよい。
【発明の効果】
【0039】
PCOSは複数の要因によって引き起こされる代謝性疾患であり、漢方薬は複数の成分を有し、複数の標的で薬効を発揮することができ、且つ副作用が少なく、安全性が高いなどの利点を有する。
【0040】
本発明は薬効学的試験により下記のことを証明した。
1.SZ-AはPCOSラットの卵巣重量を減少させ、卵巣の病状を改善することができる。
2.SZ-A投与群は介入プロセスでPCOSラットの発情周期を整える。
3.SZ-A薬物はPCOSラットの性ホルモンの分泌レベルを有意に調節することができる。
【0041】
本発明の具体的な実施形態又は従来の技術における技術態様をより明確に説明するために、以下、具体的な実施形態または従来の技術の説明において使用する必要がある図面を簡単に紹介するが、以下の説明における図面は本発明の一部の実施の形態であり、当業者は創意工夫をせずとも、これらの図面に基づいてほかの図面を得ることができることは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】(A)は投与21日後のブランク群、モデル群、投与群の動物の卵巣の形態の写真であり、(C)は投与21日後のブランク群、モデル群、投与群の動物の体重であり、(B)は投与21日後の卵巣組織のHE染色切片の結果である。
【
図2】実験例9で投与21日後のブランク群、モデル群、投与群の動物の血清中テストステロン(T)レベルである。
【
図3】実験例9で投与21日後のブランク群、モデル群、投与群の動物の血清中エストラジオール(E2)レベルである。
【
図4】実験例9で投与21日後のブランク群、モデル群、投与群の動物の血清中黄体形成ホルモン(LH)レベルである。
【
図5】実験例9で投与21日後のブランク群、モデル群、投与群の動物の血清中プロラクチン(PRL)レベルである。
【
図6】実験例9で投与21日後のブランク群、モデル群、投与群の動物の血清中プロゲステロン(P)レベルである。
【
図7】実験例9で投与21日後のブランク群、モデル群、投与群の動物の血清中AMHレベルである。
【
図8】実験例9で投与21日後のブランク群、モデル群、投与群の動物の血清中SHBGレベルである。
【
図9】実験例10で投与21日後のブランク(blank)群、モデル(model)群、投与群の動物の血清中Tレベルである。#は、blank群と比べ、model群のP<0.05を表し、##は、blank群と比べ、model群のP<0.01を表す。*は、model群と比べ、投与群のP<0.05を表し、**は、model群と比べ、投与群のP<0.01を表す。
【
図10】実験例11で投与21日後のブランク(blank)群、モデル(model)群、投与群の動物の血清中Tレベル、SHBGレベル、E2レベル、Pレベルである。#は、blank群と比べ、model群のP<0.05を表し、##は、blank群と比べ、model群のP<0.01を表す。*は、model群と比べ、投与群のP<0.05を表し、**は、model群と比べ、投与群のP<0.01を表す。
【
図11】実験例11で投与21日後のブランク(blank)群、モデル(model)群、投与群の動物の卵巣の病理切片である。
【
図12】実験例11で投与21日後のブランク(blank)群、モデル(model)群、投与群の動物の卵胞数及び黄体数である。
【
図13】実験例11における治療期間中のラットの発情周期の分析グラフであり、(A)は各実験群の代表的な発情周期であり、(B)は各実験動物の発情周期の定量的分析であり、ただし、M/Dは、発情後期/発情休止期を表し、Eは、発情期を表し、Pは、発情前期を表す。#は、blank群と比べ、model群のP<0.05を表し、##は、blank群と比べ、model群のP<0.01を表す。*は、model群と比べ、投与群のP<0.05を表し、**は、model群と比べ、投与群のP<0.01を表す。
【
図14】実験例11で実験規模拡大後(18匹/群)の治療期間中のラットの発情周期の分析グラフであり、(A)は各実験群の代表的な発情周期であり、(B)は各実験動物の発情周期の定量的分析であり、ただし、M/Dは、発情後期/発情休止期を表し、Eは、発情期を表し、Pは、発情前期を表す。#は、blank群と比べ、model群のP<0.05を表し、##は、blank群と比べ、model群のP<0.01を表す。*は、model群と比べ、投与群のP<0.05を表し、**は、model群と比べ、投与群のP<0.01を表す。★は、Diane-35群と比べ、SZ-A群のP<0.05を表し、★★は、Diane-35群と比べ、SZ-A群のP<0.01を表す。
【
図15】実験例12で投与21日後のブランク(blank)群、モデル(model)群、投与群の動物の血清中Tレベル、E2レベルである。#は、blank群と比べ、model群のP<0.05を表し、##は、blank群と比べ、model群のP<0.01を表す。*は、model群と比べ、投与群のP<0.05を表し、**は、model群と比べ、投与群のP<0.01を表す。
【
図16】実験例12で投与21日後のブランク(blank)群、モデル(model)群、投与群の動物の卵巣の病理切片である。
【
図17】実験例12で投与21日後のブランク(blank)群、モデル(model)群、投与群の動物の卵胞数及び黄体数である。#は、blank群と比べ、model群のP<0.05を表し、##は、blank群と比べ、model群のP<0.01を表す。*は、model群と比べ、投与群のP<0.05を表し、**は、model群と比べ、投与群のP<0.01を表す。
【
図18】実験例13で投与21日後のブランク(blank)群、モデル(model)群、投与群の動物の血清中Tレベル、AMHレベル、GnRHレベル、SHBGレベルである。#は、blank群と比べ、model群のP<0.05を表し、##は、P<0.01を表し、*は、model群と比べ、投与群のP<0.05を表し、**は、P<0.01を表す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。これらの例示的な説明により、本発明の特徴及び利点がより明確になる。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。前記方法は、特に断りのない限り、すべて常法である。前記原材料は、特に断りのない限り、公開された商業経路から入手できるものである。
【0044】
ここの用語「例示的」とは、「例、実施例として用いられることまたは説明的なもの」を意味する。ここで「例示的」に説明されるいかなる実施例は他の実施例よりも優れると解釈されるべきではない。
【0045】
また、以下に説明する本発明の各実施形態における構成は、互いに矛盾するものでなければ、組み合わせることができる。
【0046】
本発明に係る成分含有量は、公開された方法により測定される(公開番号がCN111077247A及びCN110393738Aの特許に記載された方法を参照)。
【0047】
桑の抽出物の効果検証部分における略語は以下のとおりである。
T(テストステロン)、E2(エストラジオール)、LH(黄体形成ホルモン)、P(プロゲステロン)、PRL(プロラクチン)、LEP(レプチン)、SHBG(性ホルモン結合グロブリン)、AMH(抗ミュラー管ホルモン)、GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)。
【0048】
各ホルモンの測定方法は以下のとおりである。
E2:エストラジオール放射性免疫測定キット取扱説明書-原子高科股フン有限公司(国薬準字S20033010);
LH:ヨウ素[125I]ヒト黄体形成ホルモン放射性免疫測定キット(国薬準字S10950161);
PRL:ヨウ素[125I]プロラクチン放射性免疫測定キット取扱説明書(国薬準字S10950161);
T:ヨウ素[125I]テストステロン放射性免疫測定キット取扱説明書(国薬準字S10940093);
各動物の血清中ADP、GnRH、SHBG及びAMHはElisaキットを用いて測定する。
P:プロゲステロン放射性免疫測定キット取扱説明書-天津市協和医薬科技有限公司(国薬準字S10950202);
【実施例】
【0049】
一.桑の抽出物の製造実例
【0050】
実施例1 桑の抽出物の製造1
新鮮な桑の枝(テンジクグワ粤桑11号)1000kgを粉砕した後、水4000Lを加え、加熱還流法により2h抽出し、抽出液を合併し、ろ過して不溶物を除去し、粗抽出液を得た。粗抽出液を固形物の質量パーセント含有量が4%になるまで熱濃縮し、50℃に保持してカチオン樹脂カラムへの注入液とした。
【0051】
D113型マクロポーラス弱酸性アリルベンゼンカチオン樹脂150kgをカラムに充填し、溶出液のpHが4.5となるまで2mol/Lの塩酸溶液を通液し、溶出液のpHが8.5となるまで1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、溶出液のpHが4.5となるまで2mol/Lの塩酸溶液を通液し、さらにカラム体積に対して5倍の脱イオン水で洗浄することで、活性化した。濃縮処理された抽出液を注入し、そして2.5mol/Lのアンモニア水1000Lを用いて6BV/hの溶出速度で溶出し、カチオンカラムの流出液のpH>7を検出すると、溶出液を収集し、収集液が900Lになると、収集を停止し、収集液をそのままアニオンカラムで精製した。
【0052】
D218型マクロポーラス強塩基性アクリル系アニオン樹脂62.5kgをカラムに充填し、溶出液のpHが9.0となるまで1.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、溶出液のpHが3.5となるまで1.5mol/Lの塩酸溶液を通液し、溶出液のpHが9.0となるまで1.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、活性化した。収集されたカチオン樹脂の溶出液をアニオン樹脂に注入し、流出液が870Lになるまで流出液を収集した。
【0053】
収集液を遠心処理して不純物を除去した後、逆イオン浸透膜による濃縮を行い、濃縮後の液体比重が1.25となり、これをアルコール沈殿タンク内に移し、撹拌ブレード500rpmの条件下で無水エタノール25Lを加えた。エタノールの添加完了後、撹拌を停止し、24hアルコール沈殿し、上澄みを減圧濃縮することで、抽出物エキスを得た。
【0054】
流出液を減圧濃縮することで、桑の枝の抽出物エキスを得、そのうち、アルカロイドの質量パーセント含有量が52%(アルカロイドにおいて、DNJの質量パーセント含有量が69.5%であり、DABの質量パーセント含有量が11.5%であり、FAGの質量パーセント含有量が15%であった)であり、多糖類の質量パーセント含有量が22%であり、フラボノイドの質量パーセント含有量が0.8%であり、アミノ酸の質量パーセント含有量が20%であった。
【0055】
実施例2 桑の抽出物の製造2
新鮮な桑の枝(桑特優2号)10kgを粉砕した後、水150Lを2回に分けて加え、毎回煎出法により3h抽出し、抽出液を合併し、ろ過して不溶物を除去した。抽出液を固形物の質量パーセント含有量が8%になるまで熱濃縮し、これをアルコール沈殿タンク内に移し、撹拌ブレード300rpmの条件下で無水エタノール2367.9g(3L)を加えた。エタノールの添加完了後、撹拌を停止し、24hアルコール沈殿し、上澄みをカチオン樹脂カラムへの注入液とした。002SC型強酸性スチレン系カチオン樹脂5kgをカラムに充填し、実施例1の方法に従ってカチオン樹脂を活性化した。濃縮及びアルコール沈殿処理された抽出液を注入し、次に、5mol/Lの塩化カリウム100Lを用いて5BV/hの溶出速度で溶出し、20%のシリコタングステン酸により流出液を測定し、白い沈殿物が生じると、収集を開始し、収集液が25Lになると、収集を停止し、収集液をそのままアニオンカラムで精製した。
【0056】
711型強塩基性スチレン系アニオン樹脂10kgをカラムに充填し、実施例1の方法に従ってアニオン樹脂を活性化した。収集されたカチオン樹脂の溶出液をアニオン樹脂に注入し、流出液を収集し、流出液が15Lになると、収集を停止した。收集液を再度カチオン樹脂に注入し、上記の方法に従ってカチオン樹脂とアニオン樹脂の順で再度2回分離した。
【0057】
カラム分離が3回行われて得られた収集液を遠心処理して不純物を除去した後、逆イオン浸透膜による濃縮を行い、濃縮後の液体比重が1.25となり、これをアルコール沈殿タンク内に移し、撹拌ブレード1000rpmの条件下で無水エタノール125gを加えた。エタノールの添加完了後、撹拌を停止し、24hアルコール沈殿し、上澄みを減圧濃縮することで、抽出物エキスを得た。また、上記方法と同じ抽出方法及び条件で、新鮮な桑白皮及び桑の葉(桑特優2号)の抽出を行った。
【0058】
得られた桑の枝の抽出物は、アルカロイドの質量パーセント含有量が98%であり、多糖類の質量パーセント含有量が0.2%であり、フラボノイドの質量パーセント含有量が0.05%であり、アミノ酸の質量パーセント含有量が0であった。
【0059】
得られた桑白皮の抽出物では、アルカロイドの質量パーセント含有量が95%であり、多糖類の質量パーセント含有量が2%であり、フラボノイドの質量パーセント含有量が0.1%であり、アミノ酸の質量パーセント含有量が1%であった。
【0060】
得られた桑の葉の抽出物では、アルカロイドの質量パーセント含有量が90%であり、多糖類の質量パーセント含有量が4%であり、フラボノイドの質量パーセント含有量が0.1%であり、アミノ酸の質量パーセント含有量が3%であった。
【0061】
実施例3 桑の抽出物の製造3
新鮮な桑の枝(カントングワ)1000kgを粉砕した後、水11500Lを加え、2h加熱還流して抽出を行い、抽出液を合併し、ろ過して不溶物を除去し、粗抽出液を得た。粗抽出液を遠心処理して不純物を除去した後、固形物の質量パーセント含有量が1%になるまで逆イオン浸透膜により濃縮し、カチオン樹脂カラムへの注入液とした。
【0062】
D001型マクロポーラス強酸性スチレン系カチオン樹脂300kgをカラムに充填し、製造例1の方法に従ってカチオン樹脂を活性化した。濃縮処理された粗抽出液を注入し、0.04mol/Lの硝酸アンモニウム5000Lを用いて5BV/hの溶出速度で溶出し、20%のシリコタングステン酸により流出液を測定し、白い沈殿物が生じると、収集を開始し、収集液が1000Lになると、収集を停止した。
【0063】
カチオンカラムによる分離を経て得られた収集液をナノろ過膜により濃縮し、減圧濃縮することで抽出物エキスを得た。
【0064】
得られた桑の枝の抽出物は、アルカロイドの質量パーセント含有量が15%であり、多糖類の質量パーセント含有量が20%であり、フラボノイドの質量パーセント含有量が7%であり、アミノ酸の質量パーセント含有量が45%であった。
【0065】
実施例4 桑の抽出物の製造4
干された桑の枝(粤桑11号)333kgを粉砕した後、水4000Lを加え、加熱還流法により2回分けて抽出し、毎回、1h抽出し、抽出液を合併し、ろ過し、抽出液を1kg生薬量/Lまで濃縮した。
【0066】
D113型マクロポーラス弱酸性アリルベンゼンカチオン樹脂150kgをカラムに充填し、溶出液のpHが4.5となるまで2mol/Lの塩酸溶液を通液し、溶出液のpHが8.5となるまで1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、溶出液のpHが4.5となるまで2mol/Lの塩酸溶液を通液し、さらにカラム体積に対して5倍の脱イオン水で洗浄することで、活性化した。濃縮処理された抽出液を注入し、そして2.5mol/Lのアンモニア水1000Lを用いて6BV/hの溶出速度で溶出し、カチオンカラムの流出液のpH>7を検出すると、溶出液を収集し、収集液が900Lになると、収集を停止し、収集液をそのままアニオンカラムで精製した。
【0067】
D218型マクロポーラス強塩基性アクリル系アニオン樹脂125kgをカラムに充填し、溶出液のpHが9.0となるまで1.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、溶出液のpHが3.5となるまで1.5mol/Lの塩酸溶液を通液し、溶出液のpHが9.0となるまで1.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、活性化した。収集されたカチオン樹脂の溶出液をアニオン樹脂に注入し、流出液が870LになるまでpHが8よりも高い流出液を収集した。
【0068】
アニオンカラムによる分離を経て得られた収集液を精密ろ過膜によりろ過して不純物を除去した後、逆イオン浸透膜により濃縮し、濃縮後の液体比重が1.1となり、これをアルコール沈殿タンク内に移し、撹拌ブレード400rpmの条件下で無水エタノール15kgを加えた。エタノールの添加完了後、撹拌を停止し、24hアルコール沈殿し、上澄みを減圧濃縮することで、桑の枝の抽出物エキスを得た。試料の含有量は、アルカロイドの質量パーセント含有量が80%であり、多糖類の質量パーセント含有量が5%であり、フラボノイドの質量パーセント含有量が0.1%であり、アミノ酸の質量パーセント含有量が4%であった。
【0069】
実施例5 桑の抽出物の製造5
干された桑の枝(粤桑11号)400kgを粉砕した後、水4000Lを加え、加熱還流法により2回分けて抽出し、毎回、1h抽出し、抽出液を合併し、ろ過し、抽出液を1kg生薬量/Lまで濃縮した。
【0070】
D218型マクロポーラス強塩基性アクリル系アニオン樹脂62.5kgをカラムに充填し、溶出液のpHが9.0となるまで1.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、溶出液のpHが3.5となるまで1.5mol/Lの塩酸溶液を通液し、溶出液のpHが9.0となるまで1.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、活性化した。収集された抽出濃縮液をアニオン樹脂に注入し、流出液を収集した。
【0071】
アニオンカラムによる分離を経て得られた収集液を精密ろ過膜によりろ過して不純物を除去した後、逆イオン浸透膜により濃縮し、さらに減圧濃縮して乾燥させて桑の枝の抽出物エキスを得た。試料の含有量は、アルカロイドの質量パーセント含有量が3%であり、多糖類の質量パーセント含有量が70%であり、フラボノイドの質量パーセント含有量が10%であり、アミノ酸の質量パーセント含有量が10%であった。
【0072】
実施例6 桑の抽出物の製造6
新鮮な桑の枝(テンジクグワ粤桑11号)1500kgを粉砕した後、水6000Lを加え、加熱還流法により2h抽出し、抽出液を合併し、ろ過して不溶物を除去し、粗抽出液を得た。粗抽出液を固形物の質量パーセント含有量が4%になるまで熱濃縮し、50℃に保持してカチオン樹脂カラムへの注入液とした。
【0073】
D113型マクロポーラス弱酸性アリルベンゼンカチオン樹脂100kgをカラムに充填し、溶出液のpHが4.5となるまで2mol/Lの塩酸溶液を通液し、溶出液のpHが8.5となるまで1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、溶出液のpHが4.5となるまで2mol/Lの塩酸溶液を通液し、さらにカラム体積に対して5倍の脱イオン水で洗浄することで、活性化した。濃縮処理された抽出液を注入し、そして2.5mol/Lのアンモニア水1000Lを用いて6BV/hの溶出速度で溶出し、カチオンカラムの流出液のpH>7を検出すると、溶出液を収集し、収集液が900Lになると、収集を停止し、収集液をそのままアニオンカラムで精製した。
【0074】
D218型マクロポーラス強塩基性アクリル系アニオン樹脂62.5kgをカラムに充填し、溶出液のpHが9.0となるまで1.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、溶出液のpHが3.5となるまで1.5mol/Lの塩酸溶液を通液し、溶出液のpHが9.0となるまで1.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、活性化した。収集されたカチオン樹脂の溶出液をアニオン樹脂に注入し、流出液が870Lになるまで流出液を収集した。流出液を減圧濃縮することで、桑の枝の抽出物エキスを得、そのうち、アルカロイドの質量パーセント含有量が30%であり、多糖類の質量パーセント含有量が35%であり、フラボノイドの質量パーセント含有量が2%であり、アミノ酸の質量パーセント含有量が25%であった。
【0075】
実施例7 桑の抽出物の製造7
新鮮な桑の枝(テンジクグワ粤桑11号)1000kgを粉砕した後、水4000Lを加え、加熱還流法により2h抽出し、抽出液を合併し、ろ過して不溶物を除去し、粗抽出液を得た。粗抽出液を固形物の質量パーセント含有量が4%になるまで熱濃縮し、50℃に保持してカチオン樹脂カラムへの注入液とした。
【0076】
D113型マクロポーラス弱酸性アリルベンゼンカチオン樹脂100kgをカラムに充填し、溶出液のpHが4.5となるまで2mol/Lの塩酸溶液を通液し、溶出液のpHが8.5となるまで1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、溶出液のpHが4.5となるまで2mol/Lの塩酸溶液を通液し、さらにカラム体積に対して5倍の脱イオン水で洗浄することで、活性化した。濃縮処理された抽出液を注入し、そして2.5mol/Lのアンモニア水1000Lを用いて6BV/hの溶出速度で溶出し、カチオンカラムの流出液のpH>7を検出すると、溶出液を収集し、収集液が900Lになると、収集を停止し、収集液をそのままアニオンカラムで精製した。
【0077】
D218型マクロポーラス強塩基性アクリル系アニオン樹脂62.5kgをカラムに充填し、溶出液のpHが9.0となるまで1.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、溶出液のpHが3.5となるまで1.5mol/Lの塩酸溶液を通液し、溶出液のpHが9.0となるまで1.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、活性化した。収集されたカチオン樹脂の溶出液をアニオン樹脂に注入し、流出液が870Lになるまで流出液を収集した。流出液を減圧濃縮することで、桑の枝の抽出物エキスを得、そのうち、アルカロイドの質量パーセント含有量が40%であり、多糖類の質量パーセント含有量が25%であり、フラボノイドの質量パーセント含有量が0.5%であり、アミノ酸の質量パーセント含有量が25%であった。
【0078】
実施例8 桑の抽出物の製造8
干された桑の枝(粤桑11号)333kgを粉砕した後、水4000Lを加え、加熱還流法により2回分けて抽出し、毎回、1h抽出し、抽出液を合併し、ろ過し、抽出液を1kg生薬量/Lまで濃縮した。
【0079】
D113型マクロポーラス弱酸性アリルベンゼンカチオン樹脂150kgをカラムに充填し、溶出液のpHが4.5となるまで2mol/Lの塩酸溶液を通液し、溶出液のpHが8.5となるまで1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、溶出液のpHが4.5となるまで2mol/Lの塩酸溶液を通液し、さらにカラム体積に対して5倍の脱イオン水で洗浄することで、活性化した。濃縮処理された抽出液を注入し、そして2.5mol/Lのアンモニア水1000Lを用いて6BV/hの溶出速度で溶出し、カチオンカラムの流出液のpH>7を検出すると、溶出液を収集し、収集液が900Lになると、収集を停止し、収集液をそのままアニオンカラムで精製した。
【0080】
D218型マクロポーラス強塩基性アクリル系アニオン樹脂62.5kgをカラムに充填し、溶出液のpHが9.0となるまで1.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、溶出液のpHが3.5となるまで1.5mol/Lの塩酸溶液を通液し、溶出液のpHが9.0となるまで1.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を通液し、活性化した。収集されたカチオン樹脂の溶出液をアニオン樹脂に注入し、流出液が870LになるまでpHが8よりも高い流出液を収集した。
【0081】
アニオンカラムによる分離を経て得られた収集液を精密ろ過膜によりろ過して不純物を除去した後、逆イオン浸透膜により濃縮し、濃縮後の液体比重が1.1となり、これをアルコール沈殿タンク内に移し、撹拌ブレード400rpmの条件下で無水エタノール15kgを加えた。エタノールの添加完了後、撹拌を停止し、24hアルコール沈殿し、上澄みを減圧濃縮することで、桑の枝の抽出物エキスを得た。試料の含有量は、アルカロイドの質量パーセント含有量が63%であり、多糖類の質量パーセント含有量が23%であり、フラボノイドの質量パーセント含有量が1%であり、アミノ酸の質量パーセント含有量が5%であった。
【0082】
二.桑の抽出物の効果検証
【0083】
実験例9:多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の予防及び/又は治療に対する桑の抽出物の薬力学試験
1実験スキーム
1.1実験動物
23日齢で離乳したばかり、健康状態が良好で、毛並みに光沢のある雌SDラット9匹をSPFレベルで飼育した。
【0084】
1.2実験薬物
DHEA(デヒドロエピアンドロステロン):30mg/mL、30mgのDHEAを100μLの無水エタノールに溶解し、次いで大豆油を900μL添加したもの。
1%CMC:CMCを1g秤量し、純水100mLに加え、マグネチックスターラーに置いて、温度60℃、回転数500r/minでCMCが完全に溶解して透明になるまで撹拌したもの。
実施例1で製造された桑の抽出物SZ-Aを異なる濃度に調製し、1%のCMC溶液に溶解した。
【0085】
1.3モデリングと投与
ブランク群(3匹)の後頸部に等量のオイルを皮下注射し、モデル群(6匹)の後頸部にDHEA溶液0.2mL/100g(60mg/kg)を皮下注射した。投与回数が1日1回で、合計21日間注射した。
【0086】
モデリングの11日目から、毎朝の8時にラット膣分泌物を採取し、ラットに対して2周期(約10日間)の膣スメア検査を行い、発情周期をモニタリングした。モデリング21日目にそのテストステロン(T)を測定し、モデルを評価した。モデリング21日間後に、モデル群に発情周期の乱れと高アンドロゲンが認められ、PCOSモデリングが成功したことを示した。
【0087】
モデリングの成功後、ブランク群、モデル群、桑の抽出物SZ-A投与群(桑の枝の総アルカロイドを基準として100mg/kg/d)に無作為に分け、投与期間中、ブランク群とモデル群に等量の生理食塩水を与えた。投与21日目に各生化学的指標を測定した。
【0088】
1.4指標観察及び測定方法
(1)投与期間中、体重、動物の精神状態を測定した。
(2)膣スメア(1周期を測定し、通常、ラットは5日間を1つの発情周期とし、投与後15日~20日目から測定)。
(3)血清中の関連ホルモンの発現:投与後21日目に、T、E2、LH、FSH、P、PRL、GnRH、SHBG及びAMHを測定した。
(4)21日間の投与後に、ラットを殺して卵巣組織を採取し、HE染色を実施した。
(5)体重、卵巣重量を観察した。卵巣重量:ろ紙で卵巣組織の末梢血を吸引した後に秤量して統計した。
(6)統計分析:SPSSソフトを利用して分析した。
【0089】
2.測定結果
(1)薬物によるラット体重への影響
投与21日後の実験結果を
図1(C)に示す。ブランク群と比べ、モデル群体重が有意に増加し、投与による介入後にモデルラットの体重が有意に減少した。薬物はPCOSラットの体重を有意に調整できることを示した。
【0090】
(2)薬物によるPCOSラットの発情周期への影響
膣スメアの結果、正常対照群のラットは発情前期、発情期、発情後期、発情休止期の順で規則的な発情周期を示したが、PCOSモデル群の発情周期は不規則な変化を示した。投与群では、介入プロセスにおいて発情周期の変化が改善された。
【0091】
(3)薬物によるPCOSラットの卵巣への影響
卵巣の形態を観察し、その結果を
図1(A)に示す。各実験群ラットの卵巣組織の外観形態を観察したところ、ブランク群(blank)のラットの卵巣表面は鮮やかな赤色であり、明らかに拡張した卵胞が見られず、モデル群(model)の卵巣表面は青白くて大きさの異なる拡張卵胞が複数見られ、投与群では卵巣表面が血色の良く、光沢があり、モデル群に対して卵巣が青白い症状が有意に改善された。
【0092】
卵巣組織の染色切片の結果を
図1(B)に示す。正常対照群のラットの卵巣組織は、光学顕微鏡下で全体として正常な構造を有し、顕微鏡下で発育段階の異なる卵胞が見られ、成熟期に近い卵胞には卵細胞及び放線冠細胞が見られ、卵胞膜の細胞層数が少なく、嚢胞性卵胞がなく、卵巣の間質細胞が密に整然と配列していた。モデル群のラットの卵巣組織は、光学顕微鏡下で全体に明らかな異常が見られ、多嚢胞化形態への変化が明らかであり、成熟期に近い卵胞に卵細胞が見られず、顆粒膜細胞が緩く配列し、層数が減少し、一部が剥がれ、放線冠細胞が見られず、卵胞膜の細胞層が厚くなっていた。薬物介入群(SZ-A)のラットでは、卵巣の病状が有意に改善され、すべての卵巣に黄体と複数の卵胞が見られ、成熟期に近い卵胞には卵細胞及び放線冠細胞が見られ、顆粒膜細胞が密に整然と配列し、層数が増え、卵胞膜の細胞層が薄くなっていた。
【0093】
(4)薬物によるPCOSラット血清性ホルモンレベルへの影響
結果を
図2~8に示す。ブランク群と比べ、モデル群では、血清中T、LH、E2.PRL及びAMHの発現がすべて上昇し、SHBG及びプロゲステロンPの発現が減少した。モデル群と比べ、投与21日後、投与群では、T(テストステロン)、E2(エストラジオール)、LH(黄体形成ホルモン)、PRL(プロラクチン)及びAMH等ホルモンのレベルは異なる程度に低下し、SHBGは若干上昇した。薬物はPCOSラットの性ホルモンの分泌レベルを有意に調節できることを示した。
【0094】
実験例10:LZ誘導PCOSモデルに対する桑の抽出物の薬力学試験
1.薬物の調製
レトロゾール(単にLZという)調製濃度:0.25mg/mL、投与量:0.4mL/100g。
1%CMC:CMCを1g秤量し、純水100mLに加え、マグネチックスターラーに置いて、温度60℃、回転数500r/minでCMCが完全に溶解して透明になるまで撹拌したもの。
実施例1で製造された桑の抽出物SZ-Aを異なる濃度に調製し、1%のCMC溶液に溶解した。
【0095】
2.実験の群分け
【0096】
【0097】
3.実験方法
健康状況が良好で、毛並みに光沢のある6週齡の雌SDラットを18匹選び、3日間適応的に飼育し、ブランク群、モデル群及び投与群に分けた。ブランク群のラットに基礎飼料を与えるが、モデル群及び投与群ラットに基礎飼料を与えるとともに、LZ(1mg/kg/d)を6w強制経口投与し、ラットPCOSモデルを作成した。モデル評価に成功した後、投与群には表1に示す投与量及び投与方法に従って投与し、ブランク群及びモデル群には等量の生理食塩水を投与した。投与21日後にサンプルを採取し、実験例9と同じ測定及び分析方法で薬効評価を実施した。
【0098】
4.結果
モデル群(vsブランク群)では、テストステロン(T)レベルが有意に上昇し、SZ-A(100mg/kg)を投与して治療した後にTレベルが有意に低下した(
図9を参照)。
【0099】
実験例11:LZ+HFD誘導PCOSモデルに対する桑の抽出物の薬力学試験
1.薬物の調製
実験例10と同様にした。
【0100】
2.実験の群分け
【0101】
【0102】
3.実験方法
健康状況が良好で、毛並みに光沢のある3週齡の雌SDラットを18匹選び、3日間適応的に飼育し、ブランク群、モデル群及び投与群に無作為に分けた。モデル群及び投与群に高脂肪飼料を3w投与した後、LZ(1mg/kg/d)を6w強制経口投与するとともに、HFD(高脂肪飼料(research diets D12492))を投与し、ラットPCOSモデルを作成した。モデル評価に成功した後、投与群には表に示す投与量及び投与方法に従って投与し、投与期間中、ブランク群とモデル群に等量の生理食塩水を与えた。治療後の10日~19日目に、2周期の発情周期を測定し、治療後の21日目に、サンプルを採取し、薬効評価を実施した。具体的な測定及び分析方法は実験例9と同じであった。
【0103】
4.結果
1.SHBG(性ホルモン結合グロブリン)、E2(エストラジオール)、P(プロゲステロン)モデル群(vsブランク群)が有意に低下し、SZ-A(100mg/kg)が投与された後、有意に改善され、また、SZ-AはT(テストステロン)発現レベルを低下させることができた(
図10を参照)。
【0104】
2.卵巣の病状
結果を
図11~12に示す。
1)blank群の卵巣組織は、全体として正常な構造を有し、各段階の卵胞が見られ、卵胞内の構造が明瞭で、顆粒層が多くて整然と配列し、拡張性嚢胞がなく、黄体構造が明瞭でった。
2)model群の拡張性嚢胞数が有意に増加し、黄体数が減少した。
3)SZ-Aを投与して治療した後、拡張性嚢胞数が有意に減少し、黄体数が有意に増加し、卵巣の病状が有意に改善された。
【0105】
3.薬物によるPCOSラットの発情周期への影響
結果を
図13に示す。
その結果、ブランク群のラットの発情周期は約4~5日/周期と規則的であり、モデル群のラットは発情後期又は発情休止期が長かった。SZ-Aを投与して治療した後、PCOSラットの発情周期を有意に整えることができ、発情後期及び発情休止期の期間が有意に短縮され、正常化する傾向にあり、発情状態が有意に改善された。
【0106】
上記の実験に加え、LZ+HFD誘導PCOSモデルに対して、モデリング及び投与方法を変更せずに実験規模(18匹/群)を拡大し、陽性薬物ダイアン35(Daine-35)及びメトホルミン(Met.)群、並びにSZ-A低用量群、中用量群、高用量群を設計し、具体的な群分け及び投与を表3に示す。
【0107】
【0108】
治療の10日目に、ラットの発情状態を10日間モニタリングし(
図14)、その結果、ブランク群のラットの発情周期は約4~5日/周期と規則的であり(
図14 A-blank)、そのうち、発情前期(P)が約17%であり、発情期(E)が約24%であり、発情後期/発情休止期(M/D)が約59%であった(図
14 B-blank)。これに対して、モデル群のラットの発情周期が規則的でなく、長期間(97%)にわたってほぼ発情後期/発情休止期(図
14 A/B-blank)であった。薬物による治療後、モデル群と比べ、各投与群は発情後期/発情休止期の期間が短縮され、投与後期に規則的な発情周期が認められた。SZ-Aは投与量の増加に伴って、薬効が徐々に強くなり、SZ-A-Lは陽性薬物Diane-35と同等の改善効果が認められ(発情休止期/発情後期の割合:79%vs80%)、SZ-A-Hの薬効はDiane-35より有意に優れていた(発情休止期/発情後期の割合:72%vs80%)が、Met.よりもやや優れていた(発情休止期/発情後期の割合:72%vs74%)。
【0109】
実験例12:DHEA誘導PCOSモデルに対する桑の抽出物の薬力学試験
1.薬物の調製
DHEA(デヒドロエピアンドロステロン):30mg/mL、30mgのDHEAを1mLの大豆油に溶解し、マグネチックスターラーに置いて、50℃、回転数500r/minでDHEAが完全に溶解するまで撹拌したもの。
1%CMC:CMCを1g秤量し、純水100mLに加え、マグネチックスターラーに置いて、温度60℃、回転数500r/minでCMCが完全に溶解して透明になるまで撹拌したもの。
実施例1で製造された桑の抽出物SZ-Aを異なる濃度に調製し、1%のCMC溶液に溶解した。
【0110】
2.実験の群分け
【0111】
【0112】
3.実験方法
健康状況が良好で、毛並みに光沢のある3週齡の雌SDラットを18匹選び、3日間適応的に飼育し、ブランク群、モデル群及び投与群に無作為に分け、各群を6匹ずつとした。ブランク群のラットに基礎飼料を与え、溶媒(60mg/kg/d)を皮下注射し、モデル群及び投与群に通常飼料を与え、DHEA油溶液(60mg/kg/d)を42日間皮下注射し、ラットPCOSモデルを作成した。モデリングの成功後、ブランク群のラットには基礎飼料を与え続け、且つ生理食塩水(100mg/kg/d)を強制経口投与し、モデル群及び投与群には基礎飼料を与え続けるとともに、モデル群には生理食塩水(100mg/kg/d)を強制経口投与し、投与群にはSZ-A(100mg/kg/d)を強制経口投与した。21日間の治療後、サンプルを採取し、薬効評価を実施した。
【0113】
4.結果
1.性ホルモン指標
モデル群(vsブランク群)のラットでは、T及びE2レベルがいずれも有意に上昇し、SZ-A(100mg/kg)投与はT及びE2発現を有意に改善できた(結果を
図15に示す)。
【0114】
2.卵巣の病状
結果を
図16~17に示す。
図16~17から分かるように、blank群では、各段階の卵胞が見られ、卵胞内の構造が明瞭で、顆粒層が多くて整然と配列し、黄体構造が明瞭でった。model群では、拡張性嚢胞数が有意に増加し、黄体数が減少した。SZ-A投与後、拡張性嚢胞数が有意に減少し、卵巣の病状が有意に改善された。
【0115】
実験例13:DHEA+HFD誘導PCOSモデルに対する桑の抽出物の薬力学試験
1.薬物の調製
DHEA(デヒドロエピアンドロステロン):30mg/mL、30mgのDHEAを1mLの大豆油に溶解し、マグネチックスターラーに置いて、50℃、回転数500r/minでDHEAが完全に溶解するまで撹拌したもの。
1%CMC:CMCを1g秤量し、純水100mLに加え、マグネチックスターラーに置いて、温度60℃、回転数500r/minでCMCが完全に溶解して透明になるまで撹拌したもの。
実施例1で製造された桑の抽出物SZ-Aを異なる濃度に調製し、1%のCMC溶液に溶解した。
【0116】
2.実験の群分け
【0117】
【0118】
21日齢で離乳したばかり、健康状態が良好で、毛並みに光沢のある雌SDラットを選び、3日間適応的に飼育した後、ブランク群、モデル群、SZ-A-L群及びSZ-A-M群に無作為に分け、各群を6匹ずつとした。ブランク群のラットに基礎飼料を与え、溶媒(60mg/kg/d)を皮下注射し、モデル群及び投与群のラットにHFD(高脂肪飼料(research diets D12492))を与えるとともに、DHEA油溶液(60mg/kg/d)を皮下注射し、連続的にモデリングを7w誘導し、ラットPCOSモデルを作成した。
【0119】
モデル評価に成功した後、ブランク群のラットには基礎飼料を与え続け、且つ生理食塩水(100mg/kg/d)を強制経口投与し、モデル及び投与群には高脂肪飼料を与え続けるとともに、モデル群には生理食塩水(100mg/kg/d)を強制経口投与し、SZ-A-L群にはSZ-A(50mg/kg/d)を強制経口投与し、SZ-A-M群にはSZ-A(100mg/kg/d)を強制経口投与した。21d治療し続けた後に、サンプルを採取し、具体的に実験例9と同じ測定及び分析方法で薬効を評価した。
【0120】
4.結果
1)モデル群(vsブランク群)では、T、AMH及びGnRHレベルが有意に上昇し、SZ-A(50、100mg/kg)投与によりT及びAMH発現が有意に減少でき、また、SZ-A(100mg/kg)投与によりGnRH発現も有意に減少でき、SZ-A(50mg/kg)投与によりGnRH発現の減少傾向が認められた。詳細な結果を
図18に示す。
2)モデル群(vsブランク群)では、SHBGレベルが有意に減少し、SZ-A(50、100mg/kg)投与によりSHBG発現が有意に上昇した。具体的な結果を
図18に示す。
【0121】
上記薬効評価の測定結果により、SZ-AはPCOSに対して一定の治療効果を示すことが証明された。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明では、薬効学的試験により、SZ-AはPCOSラットの卵巣重量を減少させ、卵巣の病状を改善することができ、SZ-A投与群は介入プロセスにおいてPCOSラットの発情周期を整え、SZ-A薬物はPCOSラットの性ホルモンの分泌レベルを有意に調節することができることを証明できた。以上の結果から、SZ-Aを多嚢胞性卵巣症候群を治療及び/又は改善するための製品として開発できることが分かった。