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  • 特許-消火器監視装置 図1
  • 特許-消火器監視装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-03
(45)【発行日】2025-07-11
(54)【発明の名称】消火器監視装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 13/76 20060101AFI20250704BHJP
【FI】
A62C13/76 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2025040927
(22)【出願日】2025-03-14
【審査請求日】2025-03-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507259224
【氏名又は名称】サンコー防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092680
【弁理士】
【氏名又は名称】入江 一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴 木 文 三
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-313635(JP,A)
【文献】特開平2-131783(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0115325(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0128128(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0095261(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検対象である消火器を監視する消火器監視装置であって、
火災モード時に動作し、前記消火器の消火時の使用説明を示す音声を合成して出力する消火音声合成出力手段と、
点検モードに動作し、前記消火器の点検時の手順説明を示す音声を合成して出力する点検音声合成出力手段と、
を備えており、
前記火災モードの動作を、前記点検モードの動作よりも優先して行うことを特徴とする消火器監視装置。
【請求項2】
点検開始スイッチを設け、これが操作されたときは前記点検モードの動作を行うことを特徴とする請求項1記載の消火監視装置。
【請求項3】
前記消火器が設置されたことを検知して所定の点検期間のカウントを行うカウント手段と、
このカウント手段によるカウント終了時点で動作し、点検時期が来たことを通知する通知手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の消火器監視装置。
【請求項4】
前記消火音声合成出力手段は、
予め記憶手段に用意された消火時の使用説明を行う火災モード音声データに基づいて火災モード音声合成プログラムを実行し、合成された消火器の使用説明の音声をスピーカから出力することを特徴とする請求項1記載の消火器監視装置。
【請求項5】
前記点検音声合成出力手段は、
予め記憶手段に用意された前記消火器の点検モード音声データに基づいて点検モード音声合成プログラムを実行し、合成された消火器の点検手順の音声をスピーカから出力することを特徴とする請求項1記載の消火器監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消火器監視装置にかかり、特に消火器の点検に関連する改良に関する。
【背景技術】
【0002】
最近は、家庭内でも消火器が普及しているが、その操作方法は簡単ではなく、実際に火災が発生したときに消火器をうまく使用できなかったために初期消火に失敗したケースもある。そこで、下記非特許文献1にあるように、操作手順を音声で出力することで、消火器をうまく操作するようにした「しゃべる消火器」が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】『「しゃべる消火器」の開発』横浜市消防訓練センター研究開発課,33~35ページ(https://www.isad.or.jp/pdf/information_provision/information_provision/no32/33p.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、消防用設備は、建物の所有者や使用者に法的な点検義務があり、一定規模の建物に付帯する設備については、消防法の規定により、資格をもった専門業者などが行うこととされている。しかし、小規模のものや安全性の高い建物については、専門業者でなくても点検を行うことができることとなっている。
【0005】
ところが、点検報告率は全国的に約50%と低迷しているのが現状である。一方、2016年12月の糸魚川大火を受けた法改正により、小規模の飲食店にも消火器の設置が義務付けられたことから、点検報告率は更に下がることなどを危惧されている。このような背景から、小規模物件については、所有者や使用者に自ら消火器の点検を行ってもらう方向となっている。しかしながら、点検方法も簡単ではなく、消火器の点検作業を円滑に行うことができれば好都合である。
【0006】
本発明は、以上のような点に着目したもので、不慣れな人でも、良好に消火器の点検作業を行うことができる消火器監視装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、点検対象である消火器を監視する消火器監視装置であって、火災モード時に動作し、前記消火器の消火時の使用説明を示す音声を合成して出力する消火音声合成出力手段と、点検モードに動作し、前記消火器の点検時の手順説明を示す音声を合成して出力する点検音声合成出力手段とを備えており、前記火災モードの動作を、前記点検モードの動作よりも優先して行うことを特徴とする。主要な形態の一つによれば、点検開始スイッチを設け、これが操作されたときは前記点検モードの動作を行うことを特徴とする。
【0008】
他の形態によれば、前記消火器が設置されたことを検知して所定の点検期間のカウントを行うカウント手段と、このカウント手段によるカウント終了時点で動作し、点検時期が来たことを通知する通知手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
更に他の形態によれば、前記消火音声合成出力手段は、予め記憶手段に用意された消火時の使用説明を行う火災モード音声データに基づいて火災モード音声合成プログラムを実行し、合成された消火器の使用説明の音声をスピーカから出力することを特徴とする。また、前記点検音声合成出力手段は、予め記憶手段に用意された前記消火器の点検モード音声データに基づいて点検モード音声合成プログラムを実行し、合成された消火器の点検手順の音声をスピーカから出力することを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、火災モードと点検モードの2つの動作モードの音声出力を行うこととし、火災モードの動作を点検モードの動作よりも優先して行うこととしたので、消火作業を妨げることなく、消火器の点検を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)~(C)は消火器の設置の様子を示し、同図(D)は監視装置の構成例を示す。
図2】前記実施例の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1(A),(B)には、本実施例における消火器を収容する収容手段の例が示されている。同図(A)の例では、消火器10は、収容ボックス20内に収容されており。収容ボックス20は、正面側の扉22が開閉自在となっている。収容ボックス20の底には監視装置100が設置されており、その上面の検知スイッチ102の上に消火器10が設置されるようになっている。収容ボックス20の側面24には、監視装置100のスピーカ104が設けられており、収容ボックス20の上面26には点検ランプ106,点検開始スイッチ108が設けられている。
【0014】
同図(B)の例では、収容スタンド30は、底部の保持枠32と背面板34によって構成されており、保持枠32の底には監視装置100が設置されている。消火器10は、監視装置100上面の検知スイッチ102の上に設置されるようになっている。また、収容スタンド30の背面板34には、スピーカ104,点検ランプ106,点検開始スイッチ108がそれぞれ設けられている。同図(C)の例については後述する。
【0015】
図1(D)には、監視装置100の構成が示されており、上述した検知スイッチ102,スピーカ104,点検ランプ106,点検開始スイッチ108は監視制御装置110に接続されている。検知スイッチ102は、消火器10が設置されるとONとなり、消火器10が取り出されるとOFFとなる。これにより、火災が発生して消火器10による消火が行われることが検知される。スピーカ104は、消火時は消火器10の使用説明の音声案内を出力し、点検時は点検手順の音声案内を出力する。点検ランプ106は、点検が必要となったときにその旨を知らせる。点検開始スイッチ108は、消火器10の点検を行うときに点検を行う者が押すことで、点検モードの動作が開始される。
【0016】
監視制御装置110には、音声データメモリ120が接続されており、音声データとして、火災モード音声データ122及び点検モード音声データ124が予め保存されている。また、監視制御装置110には、カウンター130が接続されている。このカウンター130は、法定点検期間である6か月をカウントする機能を備えている。監視制御装置110は、マイコンなどによって構成されており、火災モード及び点検モードの動作制御を行うようになっている。
a,火災モード:消火器10による消火時に実行されて、火災モード音声データ122に基づく音声合成を行う火災モード音声合成プログラム112と、
b,点検モード:点検時に実行されて、点検モード音声データ124に基づく音声合成を行う点検モード音声合成プログラム114とが用意されている。
監視制御装置110は、火災モードを点検モードに優先して実行する。
【0017】
次に、図2の動作フロー図も参照して、本実施例の全体動作を説明する。例えば、新しい消火器10が収容ボックス20もしくは収容スタンド30に設置されたとすると(ステップSA)、監視装置100の検知スイッチ102がOFFとなる(ステップSB)。
【0018】
この状態で火災が発生して消火器10が収容ボックス20もしくは収容スタンド30から取り出されたとすると(ステップSC)、検知スイッチ102がONとなる(ステップSD)。すると、監視制御装置110は、点検開始スイッチ108がONかOFFかを判断する(ステップSE)。ここで、点検開始スイッチ108がOFFのときは(ステップSEのNo)、火災モードの動作を行う(ステップSF)。一方、消火器の使用者が点検を行うために点検開始スイッチ108を押してONとなったときは(ステップSEのYes)、点検モードの動作を行う(ステップSG)。このように、点検開始スイッチ108がおされたかどうかにより、火災モードの動作が優先的に行われる。
【0019】
火災モードの場合、監視制御装置110では、音声データメモリ120から火災モード音声データ122が読み込まれ、火災モード音声合成プログラム112が実行されて、消火器10の使い方を説明する音声がスピーカ104から出力される。使用者は、この音声を聞きながら消火器10を操作することで、消火作業を円滑に行うことができる。その後、新しい消火器10が収容ボックス20もしくは収容スタンド30に設置されると(ステップSA)、監視装置100の検知スイッチ102がOFFとなる(ステップSB)。
【0020】
一方、使用者が点検開始スイッチ108を押してONとなり、点検モードの動作が行われるときは、監視制御装置110では、音声データメモリ120から点検モード音声データ124が読み込まれ、点検モード音声合成プログラム114が実行されて、消火器10の点検の手順を示す音声がスピーカ104から出力される。使用者は、この音声を聞きながら消火器10を点検することで、点検作業を円滑に行うことができる。その後、点検後もしくは新しい消火器10が収容ボックス20もしくは収容スタンド30に設置されると(ステップSA)、監視装置100の検知スイッチ102がOFFとなる(ステップSB)。
【0021】
加えて、監視制御装置110では、カウンター130による6か月の期間のカウントが開始される。そして、6か月経過してカウント終了となると、点検ランプ106が点灯し、点検が必要である旨が表示される。
【0022】
以上のように、本実施例によれば、火災モードと点検モードの2つの動作モードの音声出力を行うこととし、火災モードの動作を点検モードの動作よりも優先して行うこととしたので、消火作業を妨げることなく、消火器の点検を行うことができる。
【実施例2】
【0023】
次に、本発明の実施例2について説明する。上述した実施例1では、図1(A),(B)に示したように、監視装置100を収容ボックス20もしくは収容スタンド30の底に設置し、消火器10を収納したり取り出したりすると検知スイッチ102がOFF・ONとなるようにした。これに対し、本実施例では、同図(C)に示すように、建物40の壁面42に監視装置101を設け、これに近接して消火器10が設置される。監視装置101には、上述した検知スイッチ102の代わりに近接センサ103が設けられており、またスピーカ104,点検ランプ106,点検開始スイッチ108も設けられている。
【0024】
本実施例では、消火器10が設置されると、検知スイッチ102の代わりに近接センサ103で検知される。以後の動作は、上記実施例と同様である。
【0025】
本実施例でも、検知スイッチ102と近接センサ103との相違はあるものの、基本的な動作は共通しており、前記実施例と同様に、火災モードの動作が点検モードの動作よりも優先して行われ、消火作業を妨げることなく、消火器10の点検作業を行うことができる。
【0026】
<他の実施例> なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した各部の形状や寸法は一例であり、同様の機能を奏するように適宜設計変更可能である。
(2)前記実施例は、消火器設置から6か月のカウントを開始したが、例えば、画像センサで消火器10の側面の表示から点検時期を読み取ってカウント動作するとともに、当該日時になったら点検ランプ106を点灯するようにしてもよい。あるいは、監視装置100に点検時期の入力画面を設け、この画面から使用者が点検時期を入力するようにしてもよい。
(3)前記実施例では、タンク式の消火器の例を示したが、どのようなタイプの消火器に対しても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、火災モードと点検モードの2つの動作モードの音声出力を行うこととし、火災モードの動作を点検モードの動作よりも優先して行うこととしたので、消火作業を妨げることなく、消火器の点検を行うことができ、小規模の飲食店等に設置される消火器に好適である。
【符号の説明】
【0028】
10:消火器
20:収容ボックス
22:扉
24:側面
26:上面
30:収容スタンド
32:保持枠
34:背面
40:建物
42:壁面
100,101:監視装置
102:検知スイッチ
103:近接センサ
104:スピーカ
106:点検ランプ
108:点検開始スイッチ
110:監視制御装置
112:火災モード音声合成プログラム
114:点検モード音声合成プログラム
120:音声データメモリ
122:火災モード音声データ
124:点検モード音声データ
130:カウンター
【要約】
【課題】 不慣れな人でも、良好に消火器の点検作業を行うことができる消火器監視装置を提供する。
【解決手段】 消火器10が収容ボックス20もしくは収容スタンド30から取り出されたとすると、検知スイッチ102がONとなり、監視制御装置110は、点検開始スイッチ108がONかOFFかを判断する。点検開始スイッチ108がOFFのときは、火災モードの動作を優先的に行い、消火器10の使い方を説明する音声がスピーカ104から出力される。一方、消火器の使用者が点検を行うために点検開始スイッチ108を押してONとなったときは、点検モードの動作を行い、消火器10の点検の手順を示す音声がスピーカ104から出力される。
【選択図】図1
図1
図2